俺は、夢はあまり見ない方だ。
澤村鰆(さわら)が、ウトウトしながらも辛うじて目を開ける。
ボヤけた目で天井を眺めながら、「たしたし」と枕元に存在するであろう眼鏡を手探りで探す。
しかし…いつもならすぐに手が届く位置にあるはずの眼鏡が、無い。
(…あれ、眼鏡が無い?)
たしたし…
(寝相が悪くて眼鏡を叩いてしまったか…いや、寝相は悪くないよな俺…?)
頭の中でグルグルと思考を巡らせている内に、はたと昨夜の不可思議な出来事を思い出した。
寝ぼけ眼が一気に覚める。
(…そうだった!!)
(俺は…昨日、息吹(いぶき)と一緒に…)
突如現れた猫耳少女の息吹。
全裸のケモミミという、まず生きている間には拝めないであろう存在と、同じ布団で寝ていた…ハズである。
(ちょっと待て…つまり眼鏡を探すフリをして息吹の胸に触れても……眼鏡が無くて見えないから仕方がないよなァ~!)
その後、息吹からどういう仕打ちを受けるか分かってはいる、分かってはいるのだが。
(い…行くしかねぇ……!ここかな~?)
たしっ
(…こっちかな~?)
たしたしっ
(……あれっ?)
たしっ
おかしい。
鰆の右手は、すぐ隣に寝ているであろう息吹の身体に…一向に触れられないのだ。
「!?」
ガバッ!
起き上がり、ようやく見つけた眼鏡を掛ける。
布団を見渡し、部屋を見渡しても、全裸の猫耳少女は…そこには居なかった。
「やっぱり…ご都合主義な夢でも見てたのか?話が上手過ぎたもんなぁ…」
再び部屋を見渡す。
時計は、午前6時前を指している。
「ふぅ………起きるか」
「朝からガッカリさせやがって…」
肩を落としながらも、身体は従来の習慣に従って動く。
本来ならば、もう必要のない行動ではあるのだが…習慣が抜けるには時間がかかるものだ。
半ば無意識で、自室の押入れから洗い溜めしてある作業着を取り出そうとするが…
「…ん?」
押入れには、見覚えのない張り紙が張ってあった。
「何だコレは?」
張り紙には、何か文字が書かれている様だ。
「え~と…『おこしたらコロス♡ いぶき』…息吹!?」
(夢じゃ…なかった!)
居ても立っても居られなくなり、張り紙の文言も忘れて勢いよく押入れを開ける。
カララ…ッタァアーン!
「息吹!居るんだろ?夢じゃないんだろ!!」
押入れの暗闇の中で、二連の星が怪しく瞬いた。
「…シャァアー!」
「…え?」
「おこ!」右袈裟のニャンx2クロー!
「すな!」続いて左袈裟のニャンx2クロー!!
「ヨ!!」鰆の鳩尾を捕らえる右ストレートキック!!!
ドスッ!
「ぐっはァ…!」
胸を押さえながら崩れる鰆。
「フン!」
カラララ…ピシャッ!
そのまま仰向けに倒れ、天井を仰ぐ。
「うぐ…いっつつつ……夢じゃ…なかった!!…ぐふっ」
昨日の奇跡は、夢では無かった。
痛みによってその確証を得ると、元気がみるみる湧いて来る。
「…うっしゃ!起きるか!」
まだ鈍く痛む鳩尾を押さえながら、フラフラと玄関へ向かう。
「牛乳牛乳っと…」
保冷材によって冷やされた瓶牛乳を取り出す。
何時もなら玄関先で一気に呷って冷たい喉越しを堪能するのだが…。
(今日は…後で、ね)
瓶牛乳をキッチンの冷蔵庫へ持って行く途中…鰆の空腹感を刺激する香りが漂って来た。
炊き立てのご飯の香りだ。
「コッチの方も…夢じゃなかった、かな?」
嬉しそうに呟き、急ぎ台所へと向かう。
「あるじどの!おはようございますわぅう!」
ガス台の土鍋の前で、元気に朝の挨拶をする疾風丸(はやてまる)。
「…土鍋炊き?」
(渋いな…)
「ご飯、もうすぐ出来ますわぅん!」
「へぇ、本格的だねぇ。昨日も炊飯器とか使わなかったの?」
「それはぁ…このお家の炊飯器、ボクが知ってるのよりずっと小さくて…使い方が分からなかったわぅ。」
「そっか。それじゃ…また後で使い方教えてあげるよ」
「了解わぅう!」
朝は味噌汁と卵焼き。
昨日の昼飯で分かってはいたが、やはり旨い。
(ただ…思ったより量が控えめかな?疾風丸は少食なのかな?)
と、疾風丸を見つめていると、申し訳なさそうに口を開いた。
「あるじどの…もう冷蔵庫の中に食材ないわぅう…」
「マジか」
(そういや一昨日、昨日と結局買出し出来なかったな…色んな事があり過ぎた)
「ふむ…それじゃ、後で買い物に行こうか」
「わぅ!」
食事を終えると、疾風丸とひとっ風呂浴びる。
生活リズムがズレた二人の居候がいる為、一緒に入浴するとなると二度風呂になる。
鰆は特に風呂好きというわけではなかったが、ケモミミ少女同伴となれば話は別だ。
貴重な裸でのスキンシップの機会は逃せない。
「あるじどの…今日は耳はダメわぅよ?」
「…ふぇい」
(こちらとしても迂闊にマーキングされるのは避けたい…いや、可愛いんだけどさ)
耳に注意しながら疾風丸の頭を撫でて、犬耳少女との裸の付き合いを堪能する。
風呂から上がってサッパリした後は、二人で仲良く瓶牛乳を半分こした。
「冷たくて美味しいわうぅ♡」
(…牛乳の本数、もう一本増やしてもいいかもな)
美味しそうに牛乳を飲む疾風丸を見ながら、ふと思った。
風呂からあがり、一息ついた鰆と疾風丸が仏間で向かい合う。
(…よし!戦支度だ!)
「さて、これより作戦行動前のミーティングを行う!」
「ふぃ?」
「あー…買出しの打ち合わせ、ね」
「わぅう!」
(ついノリで気合が入ってしまった…)
無理も無い。
ケモミミ少女とのお買い物…これには入念な準備が必要である。
ギャルゲー、エロゲー、ラノベ、アニメ…あらゆる媒体のケモミミモノで、まず最初に突き当たる問題がある。
ケモミミ少女である事を秘匿する為の隠蔽工作、つまり…
『ケモミミ、およびケモシッポがバレない様に隠す』
コレである。
鰆がケモミミモノにハマッて以来、何度も何度も何度も何度も脳内で繰り返した『空から降って来たケモミミ少女への対処』
それに対する妄想…もといシミュレーションがついに実を結ぶ時が来たのである。
「さて、疾風丸…これからその愛らしい犬耳と尻尾を隠す為の準備をするんだが…」
「ふぃ?耳と尻尾を隠したらいいわぅん?」
「あぁ、だからこの帽子と…」
正座からすくっと立ち上がると「うーん…」と力み始める疾風丸。
「お、おい…どうした?」
尻尾がピクピクっと震え、その場で可愛くクルリと一回転。
すると…
「え!?」
疾風丸の耳と尻尾が…「無い」
「これでいいわぅか、あるじどの?」
「どうやって無くしたんだ?」驚いて犬耳のあったであろう部位に触れてみる。
ふにゅ
「くすぐったいわぅう…♡」
「あれ?」
尻尾があった場所も触れてみると…
ふぁささ…
「ひうぅう…♡」
「…ある。尻尾の感触が…ある」
しかし耳と同じく、やはり鰆の目には映らない。
「えーとぉ…「にんしきそがい」とか言う事をすれば「見えるけど見えないモノ」になるよって言われたわぅ」
「…誰に?」
鰆の頭には、純100%狐な例の『管理人』が思い浮かんだが…敢えて聞いてみる。
「うぅ…思い出せないわぅ…ごめんなさいわぅ」
(…管理人が意図的に記憶を消してるのか?)
少し考え込むが、意図が分からない。
「いや、いいよ。これで安心して買出しに行けるから、大丈夫だ」
優しく頭を撫でてやると、疾風丸は顔を綻ばせて嬉しそうに抱き付いてきた。
(お膳立ては出来ている…って事か)
食材も必要だが、鰆はそれより急ぎ買わねばならない物の事を考えていた。
それは…疾風丸の服である。
流石にいつまでも鰆の下着で…という訳にはいかないし、何よりそれは犬耳少女という素材を台無しにする冒涜的行為である。
「ご飯もだけど、疾風丸の服も買うから…好きな服を選ぶんだよ」
「え!ボクにお洋服買ってくれるわぅ!?ありがとーあるじどのー!!」
わっしと身体に張り付いた疾風丸を見ると、朗らかな気分になる。
「流石にそんな服じゃ疾風丸が可愛そうだからね」
ただでさえ愛らしい疾風丸が可愛い服を着ればkawaii x kawaii = ムゲンダイである。
(…ふむ)
ふと考え込む鰆。
「わぅう?」
(可愛い女の子の服を買いに行くのに、店の中で「疾風丸」って呼ぶのも…なんかおかしいんだよなぁ)
「疾風丸、これから外じゃ疾風丸じゃなくて『ハヤテ』って呼ぶから、覚えておくんだよ」
「わぅ!…でもどーしてハヤテわぅ?」
「うーん…「疾風丸」だとあんまり女の子っぽくないからね」
「ふぃ?」
(実は「ハヤテ」も十二分に女の子っぽくないけど…「疾風丸」よりはマシ…かなぁ)
鰆は苦笑した。
早速、近所の服屋を訪れる。
『どんぐりや』…ノーブランドや海外縫製のお手頃な服を扱う店である。
鰆は特に服装に拘りが無く、着れれば問題ない人間なので、この手の店のお得意様である。
本当は疾風丸にはすぐにでもお高い服を着せてあげたいと考える鰆ではあるが…。
(まずは疾風丸の服装が、俺の下着一式なのをどうにかしなきゃ…な)
鰆の下着の中でも、遠目でなら普通のショートパンツに見える柄をチョイスしてはいるが…その実トランクスである。
人の少ない時間帯の間にどうにか外を歩ける服を押さえておきたい。
「わふー…」
午前から一部戦場になっているバーゲンコーナーの人だかりを見て、疾風丸が呆然としている。
「ふふっ。大丈夫だよ、向こうには行かないからさ」
物珍しいのかキョロキョロと周囲を見渡す疾風丸の手を引いて店内を進む。
時々見かける可愛い服を見ていると、想定はしていたが先送りにした問題が頭を擡げる。
「ふぅむ…問題は尻尾穴なんだよなぁ…」
ふと呟く鰆。
流石にケモシッポ穴完備の服飾ブランドなど聞いた事が無い。
「あ、それならだいじょぶわぅう!ボクが自分でお裁縫するわぅ!」
まさかの解決策が提示された。
「お、エライなぁハヤテは!」
「ふにぅう」
撫でてやると目を細めて喜ぶ。
「よーし、それじゃあ好きな服を選びなさい」
「わぅ!」
とてててーと駆け出す疾風丸を見て、ついつい顔をほころばせる。
(子供を持つ父親ってのは、こんな気分…なのかな?)
子供と言うには大きいが、女性と言うには幼い。
元気一杯で素直な事もあってか、更に幼く見える。
微笑ましく疾風丸を追いかけていく鰆だったが…
(い、いや。確かに「幼い」とは思ったけどさぁ…)
「これがいいわぅ!」
疾風丸は、犬小屋の上で寝転がっている白いビーグル犬の描かれた下着を広げて見せる。
「…」
俗に言う女児ショーツと呼ばれるモノで、疾風丸の外見年齢だとそろそろ卒業しなければ恥ずかしい下着であった。
「…ダメ…わぅう?」
(困った…)
何が困ったのかというと…鰆の好みド真ん中直球ストライクであったからだ。
目の前のぱんつ一丁になって、部屋を走り回る疾風丸を想像していた鰆の相棒に…灯が入る。
【-Standing by-】
(違う!そうじゃない!待て、落ち着け…相棒!)
「そ、そそそうだね、同じ犬だし可愛いぱんつだね…肌触りもふかふかしててこう頬ずり…じゃなくてその…」
「ふぃ?」
アタフタしている所を、買い物に連れて来られたであろう姉妹に「じー」っと見られる鰆だった。
(違うんです!本当に!!)
…ふと我に返る。
「あー…そのー…えーと…そうだ!ハヤテ…コレ、お尻に尻尾穴開けるとここ一面無くなっちゃうよ?いいの?」
「ふみ?あぁー!それダメわうぅ!」
「…コッチのなら前に絵が入ってるよ?コレにする?」
「はいわぅん!」
如何にも「目の前の女の子の父親なんです」という雰囲気を醸し出し、周囲にアピールする。
(キケンジンブツジャナイデスヨー…)
その後も、疾風丸のシャツや上着、スカート等を買って店を出る。
(長居は無用だ…)
本当は息吹の服や下着も…とも考えたが、流石に女性下着売り場に単騎突入する度胸は鰆には無かった。
更に、こういう店だとデザインはどうしても野暮ったくなる。
かといって疾風丸とお揃いのを購入したら…どう蔑まれるやら。
(いや、俺は合うと思うんだよ。猫耳少女に女児ショーツ…)
後ろ髪を惹かれる思いで服屋を後にする。
『どんぐりや』を出て、次は食材を買いに行く。
自分の服の入った袋をぎゅっと抱いて、ニコニコしている疾風丸の手を引く。
次はスーパー『にしとも』へ。
最近リニューアルし、店舗が綺麗になって、商品の価格も安くなりありがたい限りだ。
「ああああるじどのの…さささむいわうぅぅ…」
ただ、冷凍食品売り場前の過冷却だけはどうにかして欲しい…と思う鰆だった。
「さて、それじゃ必要な物から…ハヤテ?」
鰆の右足にしがみつくと、俯いて離れない。
「ハヤテ?どうした?」
(見慣れない人混みを見て落ち着かないのだろうか?)
確かに、今日は思ったより売り場が混んでいて、人が多く感じる。
「あるじどの…その…ボクぅ…」
「うん?」
(外には連れ出すには早かったか?もう少し順序を踏んで慣らした方がよかったか?)
そんな風に考えを巡らせている鰆に、恥ずかしそうに疾風丸が呟く。
「あるじどのぉ…おしっこ」
だあぁ
「王道」に従ってズッコケる所であった。
(何だ、トイレか。さっきの冷凍商品売り場で豪快に冷えたからなぁ)
「分かった。それじゃ先に行こう。一大事だからね」
「かたじけないわぅう…」
「いいよ。えーと、トイレはどっちだ…」
簡略化された男女のシルエットが描かれた札を追い、トイレに辿り着く。
「ほら、俺はここで待ってるから」
「…わぅ」
急ぎ足で個室に消えてゆく疾風丸。
「はぁ…何事かと思ったけど、大した事じゃなくてよかった」
ところがどっこい、大した事であった。
「あるじどのぉぉぉおおぉ!!」
泣きながら走ってきて、また足にしがみ付く疾風丸。
「どうしたんだハヤテ?おしっこは?」
「かかかかわやに…ば、ばけ化け物がぁ!」
…は?
「大丈夫だよ、落ち着いて」
落ち着けようとするものの、疾風丸は頭をプルプル振ってしがみ付くばかりである。
(化け物というのがよく分からない…最近のスーパーはトイレに何か飼ってるのか?)
ただ呑気に構えてもいられない。
疾風丸のタイムリミットは、近い。
「それじゃ俺が一緒に付いて行くから、ね?」
「ほんとわぅ?」
鼻をすすりながら見上げられると抱きしめたくなるが、今はトイレが先だ。
流石に女子トイレに入るわけにはいかないので、無人な事を確認し、男子トイレの個室へ入る。
ウイィィィイィ…
「ぴゃうぅぅー!!」
(もしかしてコレが化け物…か?)
赤外線センサーで自動で上がる便器の蓋は、口を開けて襲い掛かる化け物に…見えなくも無い。
「ホラホラ、大丈夫だからね。勝手に蓋が開くだけだよ。」
「…ふぃ?」
ようやく落ち着いた疾風丸に用を足す様に促し、個室から出ようとする…が
グイッとシャツの裾を引っ張られ、阻止されてしまう。
「あのー…ハヤテ、さん?」
「あるじどのぉ…怖いから離れないで欲しいわぅう…」
下着を脱ぎ、下半身何も纏わない状態になり、疾風丸は便座の上に和式便器の様に跨る。
普段ならフリフリ揺れているハズのふさふさの尻尾が、今は認識阻害で見えない。
つまり、可愛いお尻が丸見えである。
鰆はもう少しこの風景を楽しみたいとも思ったが…今は緊急事態である、そうも言ってられない。
「ハヤテ、そうじゃないんだ。こうやって座るの、こう…そうそう。」
脇に手を入れて疾風丸を持ち上げ、洋式便器の模範的な座り方に正してゆく。
「わふ…あるじどの、この椅子何か暖かいわぅ!」
「はは…そうだね」
鰆(と相棒)はそれどころではない。
先程からチラリチラリと両足の付け根の渓谷が見えて、相棒のテンションが上がりっぱなしだ。
「さ、早く出しちゃおう?ね?」
自分の自制心の弱さを重々承知している鰆は、気が気ではない。
「うぃ。…うー…うーん……わぅ?」
あれだけ慌ててた割に、一向に出て来ない様子だ。
「もうおしっこ出ない?」
「うー…おしっこはしたいけど…出ないわぅう…」
(慣れない環境と便器のせいかな…しかしあの慌て様だと家までは我慢出来ないだろうし…困った)
「むー」
疾風丸は苦しそうに唸る。
(出たらスッキリするだろうに、昨日の風呂みたいに…昨日…あ!)
「そうか!…御免なハヤテ!」
「ふぃ?…ひゃう!」
左手で疾風丸の耳(が存在するであろう位置)を探ると、ゆっくりと耳を持ち上げて、優しく撫でる。
「ひぅっ!?あるじど…そこ…ダメぇ♡」
右手の中指の腹を使って、疾風丸の渓谷を撫でてやる。
肉に閉じられた部分を優しく押し広げながら上下に擦り上げる。
「はっ…はぁ…はぅっ!んは…あるじどのぉ♡」
渓谷を弄る右手にしがみ付き、疾風丸の息は徐々に荒くなる。
(…相棒がズボンを持ち上げて邪魔でしょうがない!今は…堪えろ!!)
柔らかな頬を鰆の上腕に擦り付ける疾風丸。
鰆の肘から下は、吐息と共に溢れる雫が滴っている。
「ふに…あふ…ん♡…わふぁん!!」
じょぼぼぼぼぼぼぼぼ…
中指から掌に生暖かく叩きつける液体は、昨日より元気よく止め処なく流れ落ちる。
「んはっ…はっ……はっ…♡」
トロンとした目で鰆の右手に寄りかかる疾風丸。
とりあえずの危機は回避出来た…が。
(相棒によろしくないので勘弁して下さい…)
「さて、この後はどうするべきか…」
正直なところ、男の鰆はよく分からなかった。
自分ならちんちんをプルプルと振って終了…なのだが、やはり女性はそういうわけにはいかないのだろう。
とりあえずウォシュレットを通常より少し前に移動して、出してみる。
「にゃあ!ちべたいわうぅうん!」
身体をよじる疾風丸をなだめながら渓谷を洗ってやり、その後乾燥用の温風のスイッチを押す。
ゴオオオオォオオ
「わふっ!?何かいる!何かいるわぅぅ!!」
最近の水洗トイレは、疾風丸にとって相当怖かったらしい…。
右手を洗い、エアタオルで乾燥させると…そこには、神妙な面持ちの疾風丸が立っていた。
「ボク、あるじどのにご迷惑ばかりわうぅ…」
「いやいや、嬉しいよ」
「ふぃ?」
「ハヤテみたいな可愛い子に振り回されるなら、本望だからね」
流石に(性的な意味で)という理由の方は言えないが…
それでも、今まで「何も無かった」無味乾燥の鰆の人生に華が咲いたのは…事実ではある。
「さ、食材買わなきゃ。ハヤテのご飯楽しみにしてるんだから、ね?」
「わぁう!」
二人でカーゴを押し、楽しく食品売り場を歩いた。
帰宅し、エアコンから吐き出される冷気を貪る。
「あぢ~…」
「あついわぅ…」
疾風丸は認識阻害を解き、尻尾をはたはたと振りながらへばりこんでいる。
「一休みするかぁ?」
「わぅう…」
なんとか落ち着き、昼食を終えた頃には2時辺りになっていた。
「洗い物は俺がやるよ…服、早く着たいんだろ?手直ししておいで」
「わふ!あるじどの大好きわぅ♡」
「俺もハヤテの服、見たいからね」
なんとなく呼び始めた「ハヤテ」という呼び名が気に入り、そのまま使っている鰆だった。
洗い物が終わり、シッポ穴作成の様子を見に行こうかと仏間を覗くと…
「うーん、今日は疲れたみたいだなぁ…色々あったから」
女児ショーツに突っ伏し、幸せそうに寝息を立てている疾風丸を抱きかかえ布団に寝かせる。
「…」
鰆も隣に寝っころがると、疾風丸のあどけない寝顔を眺めながら…眠りに落ちた。
「んぁ?」
日も傾き、そろそろうだる暑さが収まり始めた頃に、鰆が目覚める。
仏間の柱時計は夕方6時を指していた。
「あのまま寝ちゃったのか…しかしハヤテの寝相は本当に…」
隣の疾風丸は、寝始めた位置と正反対に転がって可愛いお腹をポリポリかいている。
もう一度布団の真ん中で寝かしてやり、仏間を離れる。
「次は気まぐれ我侭お嬢様に仕える時間だっけ…か?」
大袈裟に肩を竦めるものの、顔はニヤニヤ笑いが止まらない。
ワクワクしながら自室の襖を開ける。
カララッ
「…あれ?」
服を来た猫耳の女の子が、鰆のゲーミングチェアに座っている。
(猫耳少女は日替わりなんだろうか…?)
だが、よく見ると猫耳と尻尾は昨日の傍若無人な我侭娘の三毛斑である。
「いぶ…き?」
「んにゃ?」
猫耳からカナル型のイヤフォン外し、こちらを見つめるのは…確かに息吹だった。
「…何よ?」
「い、いやその…服着てるからさ…」
「裸がいいナー?」
視線をPCデスクのディスプレイに戻し、器用にマウスを操っている。
「い、いや!そういう訳じゃなくて…で、でも裸はそれはそれでよくて…でも…」
吃っている場合ではない。
「おい、人のパソコンで何やってるんだ?」
「んー?ネット。ナー」
「いや、そうじゃなくてさ…」
「いーじゃん別に。どーせ今更ネコミミ少女を○○して××をタップリ△△するゲームにドン引きしたりしないナー♡」
「そういう事じゃ……っておい!まさかアレ…やったのか?」
ケモミミ好きの仲間内で評判が高いので購入したはいいが、あまりにもアレで一通り触っただけの同人エロゲーを思い出す。
「そんな目で猫耳少女を見てるのね…ケダモノ以下だわ!!」
わざとらしく芝居がかった声で非難しながら、うるうるした瞳でじっと見つめる。
「だから違うって!それは買ったけど性に合わなくて1周しかやってないから…」
「みたいナー。シナリオもCGもフルコンプしといたから♡」
ガックリと畳に崩れ落ちる鰆であった。
(なんなんだこの傍若無人我侭猫耳娘は…)
我関せずとディスプレイを睨んでいた息吹が「んしょっ」とチェアから立ち上がり、近付いてくる。
「なーにやってるナー。別にいいじゃん、パソコンくらいさー」
「…む!」
ヒュイィィーーン!
(この角度、この体勢なら…見える!俺にもパンツが…)
ゲシッ!
「あーにしてんのよこの変態!」
鮮やかな青と白のサイハイソックスに包まれた細い足に、こめかみを踏みつけられる。
スンスン…
(うん、この匂い…?)
「このソックス、下ろしたてじゃないのか?」
顔を踏まれた後に発する言葉とは思えないセリフに、息吹が呆れる。
「何言ってんだろうナこのバカは…まぁ、そうよ。今日下ろしたばかりナ」
よく見れば…セーラー服風アレンジのブラウスも、かなり短めの紺のスカートも、随分新しく見える。
「さっき届いたばっかナー。通販って便利ナー♡」
「あの…お代は?」
「…アンタってさぁ、パソコンにセキュリティなーんもかけてないのね♡」
「あんたって人はあぁぁぁあぁ!!」
「でも…脱がす服があった方が…嬉しいんでしょ?チラッと見えるのも…ねぇ♡」
「ニッコリ」と鰆の前で笑う息吹…いや、「ニンマリ」か。
「…はい」
「よろしい」
鰆の横にばふっと座布団を放り投げると、よっこいせと座り込む。
「しかし…どうやって商品受け取ったんだ?服届くまでは裸だし…猫耳もあるだろ?」
「服は仕方無いからアンタの服で。ネコミミは認識阻害使って…ナー」
(またか…息吹も使えるのか、認識阻害?)
「認識阻害って…何?」
とりあえず知らないフリをして聞いてみる。
「うーん…」すっくと立ち上がる息吹。
「ねぇねぇ…んふン♡」
短いスカートをたくし上げる。
スカートの中からは、青縞の紐パンがチラリと覗く。
「おぉお!!」
「さて問題、アタシの服の胸の部分に書いてある文字は何でしょう?」
さっと手で胸の該当部分を隠した息吹が、唐突に質問を投げかける。
「え?え?いや、そんな事言われても…」
そんな事言われても…思い浮かぶのは紐パンばかりである。
「ブブー!失格でーす!…んで、コレが認識阻害の答えナ♡」
「へ?」
「アンタはいくらでも確認するチャンスがあったのに、アタシのパンツばかり見て胸の字を気にもしなかったよね?」
「アッハイ…仰るとおりです…」
「そこに実際あるんだけど、見る側がそれを認識しなけりゃ無いのと同じ…「見えるけど見えないモノ」っちゅーワケ、ナ」
えへんぷい、と偉そうに講釈を垂れる息吹。
「ま、使うと気を張ってなきゃいけないし…面倒だからなるべくやりたくないんだけどナー」
また座布団にどっかと座る。
「しかし、パソコンまで使えるのか。イブは」
「…イブ?」
聞き慣れない単語に反応する息吹。
「あぁ、いや。「息吹」ってあまり今風の女の子の名前じゃないし、イブって呼ぼうかなって思って……嫌だった?」
「んー…なーんかエロ漫画とかギャルゲーっぽいからアレだけど…」
(…なんでいちいち例えがアレなんだコイツは)
「でも…いいよ。その名前を考えてる間は…ずっとアタシの事考えてたんだよね?」
キュン…
(なんて不意打ちしやがるこの野郎!)
そしてその後「ハヤテの事があったし、そのついで」とは言えない空気になる。
「…どうしたのよ?」
「い、いえ、何でもないです…」
「…なーんか他の女の事考えてたでしょ?」
凄まじい勘である。
「いえいえそそそそんな事…」
「そうよねぇ…」
ぐにっ
「おぉぅ!」
青いストライプのハイサイソックスに包まれた、華奢で長い足の先端が鰆の相棒を踏みつける。
「いまだ童貞のアンタにそんな甲斐性あるワケないかナー♡ほーれほーれ♪」
息吹の右足親指の腹がスタンバイ中の相棒を撫でる様に優しく…と思えば急に力を入れたりと、楽しそうに動く。
「こ、こら!やめ…」
「あら、止めた方が…いいナー?」
口調は冷静になるが、顔の笑みは全く衰えない。
その問いの答えは聞くまでもない事なのは、重々承知だからだ。
「それはその…」
「その……なぁに?」
「お、お願いします…」
鰆は素直である。性的な事には尚更素直なのだ。
「しょうがないにゃあ・・」
カラコロとゲーミングチェアを引きずって来ると、その上に腰を下ろす。
「仰向けになりなさい♡」
「え?」
「は・や・く!」
息吹の命令通りに仰向けに寝転がると、先程と同じ様に股間の相棒をぐいぐいと踏みつけられる。
「んふ♪一丁前に硬くしちゃって♡」
息吹は足の親指と人差し指で挟み込みながら、上下に足をスライドさせる。
「ふ…んぁ…こら!…ふくぅ…」
「あらら、どしたの?足でいじられるの、そんなにいいナー?」
「ちょっと…ん!…このままだと…くふぅ…出るから…せめて脱がせて……」
「知らなーい♡だって丸出しのを踏んでたら…アタシのおニューの靴下、汚れちゃうナー♡」
踏む圧力を少し上げながら、足の全ての指を器用に使い、手で握る様に相棒を握り込む。
「んぐ!」
「いきなりアタシのお尻舐め出す変態には勿体無い位ナー♡」
(昨日の事…しっかり根に持っていやがった)
「うーりうり♡汚しちゃえ♡」
左右の足で包み込むようにグリグリと相棒を摩られ続ける。
「いや!ホントだめ…出る……やめろォ!………ぁあ」
鰆の下着の中は、タップリと生暖かいモノで…溢れた。
「うう…酷い…」
「ったく、なっさけない事言ってんじゃないナー…もう…しょうがないんだから」
息吹は鰆の社会の窓をゆっくりと開放する。
「あらあら♡…ホント一杯出したナー…」
じゅぶるる…ちゅぷ…ちゅ…
相棒や茂みに絡みついたミルクを丹念に舐め取り、わざと大きな音を立てながら啜り取る。
「イブ…」
「なっさけないわねぇ…もうちょっと我慢も出来ないようじゃ、当分交尾はお預けナー」
「うぐ…」
鰆の顔面に形の良いヒップを向けると、息吹がため息交じりで声をかける。
「ほーら、こっからはタダじゃないわよ?アンタもキリキリご奉仕するナ♡」
「だからいきなり後ろ舐める…あ♡…こら!何でそっちばっか……んはァ♡」
息吹のご要望通り、念入りにご奉仕した鰆は…顔面にタップリと引っ掛けられた。
「はぁ…はぁ……お風呂、入る」
「りょーかい。上がったら教えて。」
「…アンタも来なさい。アタシの背中ぐらい…流しなさいよ」
「…いいの!?」
返事をせず無言に風呂場へ向かう息吹を追う鰆。
(多分…ここでしつこく聞いたらヘソ曲げそうだしな)
風呂の洗い場で息吹の身体を丹念に磨く。
「アタシはお風呂上がったら寝るけど…途中でフラリと居なくなっても、気にしなくていいナー」
息吹が言うには、どうやらその時の気分や気温によってフラフラと寝床を変えるらしい。
「ただし…起こしたらコロスかんナ♡」
可愛い笑顔でとんでもない事を言う。
息吹が湯船に浸かって溶けている頃、鰆は自分の身体を流していた。
(そこは洗いっこの流れじゃないのかよ…)
ただ…風呂でひたすら気持ちよさそうな顔をしている息吹を見てると、どうでもよくなる。
「あぁ、そういえば…」
(流石にハヤテみたいな事は…無いよな?)
鰆は気になってた事を、ここぞとばかりに聞いてみた。
「イブはパソコンとか使ってるけど、トイレとかも普通に使えるよね?」
「は?」と言う顔をして、「当然ナー」と答える。
「それじゃあ…トイレは砂引きとかじゃなくてもいいんだよ、ね?」
軽い冗談のつもりだった。
「え?アンタ…そういうプレイが好きなの?」
「へ?」
「アタシが砂の上でトイレするが見たいの?引くナー…ホントどうしようもない変態ナー…」
「いえ、冗談です。忘れて下さい…」
流石に「見たい!」と言えず、誤魔化す鰆だった。
ケモミミが目の前に現れたら…ガッつくつもりだったけど…いざ現物が目の前に居たらそうもいかないもんだ。
(ギャルゲーやってる時は、主人公キャラの選択肢の不甲斐無さに腹立ててたってのに…)
よく分からない事を考えながら、自分の身体を洗う鰆だった。
すぐ隣の湯船で、水面でぷるぷる揺れる胸をみながら…ふと思う。
俺はあまり夢は見ない方だ…夢が現実になっちゃったし。