「ボチボチ順調にやっとるな…と思っとったんやけどなぁ……」
ムスッとした表情で、真空管テレビ「もどき」を眺めながら「管理人」が呟く。
「管理『人』」と言っても、その容姿は100%狐にしか見えない。
「アレだけのお膳立てしてもろといて…まだ童貞とか、おかしないか?」
画面には、ヘラヘラ笑ったりニマニマしている澤村鰆(さわら)の姿が映る。
『本人達は楽しんでるようですが?』
興味無さ気に鴉天狗面が、日本語ではない何らかの音声で答える。
「ワシはおもろないわい!盛り上がったの最初だけやんか…エロゲーやったら即日挿入やで!?」
『…そういう貴方は、交尾未経験だと思いましたが?』
「せやから見たいんや!…ったく!……コラちょいとせっつく必要があるかもなぁ…」
管理人があくどい表情でニヤリと笑う。
『本当に面倒な相手に関わってしまった様だ、この三人は…」
夕方と言えど、まだまだ暑い。
仏間のエアコンは全力稼働中である。
犬耳少女の疾風丸(はやてまる)を寝かせつけた鰆は、そのまま添い寝をしようかと横になるが…はた、と気付く。
「…そういやイブって、何時ぐらいに起きるんだ?」
攻略対象のタイムスケジュールを押さえるのは、基本中の基本。
鰆に気心の知れた男友達や、無駄にお節介な妹がいれば…容易く知れたのだが。
気になり始めると止まらない。
疾風丸を起こさないように仏間を出ると、自宅内を探索し始めた。
猫耳少女の息吹(いぶき)は、結構ランダムに家の中の暗所や閉所を移動しているらしい。
静かで暗くて狭くてヒンヤリする場所が寝床の目安というのは分かって来た。
大抵は鰆の自室の押入れに居るのだが、今日もそうとは限らない。
「警告の張り紙を探すか…」
まずは自室の押入れを探索。
「†このふすまをくぐるものはいっさいのきぼうをすてよ† いぶ」
ビンゴ!
…しかし、何だこりゃ?
音を立てない様、そーっと襖を開く。
前回痛い目にあったので、同じ轍を踏むつもりはない。
押入れの中の布団には…膝を抱えて丸くなってる、全裸の息吹がいた。
静かに寝息を立て、その呼吸に合わせて三毛斑の尻尾の先が「たしったしっ」と揺れる。
いつもの傍若無人っぷりが嘘のような、可愛い姿だが…
…スン……ック……ぐすん………
(ん?泣いてる…のか?気になるな…)
確かめる為に腰を屈めて、押入れの中段を潜り、丸まっている息吹に顔を近づけたその時…
…ぷすぅ
鰆の鼻先で、少々愉快な排気音がした。
「!?」
驚いて、押入れの中段に頭をしたたかぶつけた。
ドガッ!
「…あ」
キラーン!
またもや、怪しい二連の星が押入れの闇に輝く。
シャッ!シャッ!…ガスッ!!
鰆の顔が引っ掻かれ、今度は顔面に蹴りがクリーンヒット。
息吹の手によって前回よりも派手に痛めつけられた後、正座をさせられる。
「…アンタねー!寝てる女の子の傍で大音立てたりとか…何考えてるナ?そもそも何で覗くナー!?」
深い黒色のストレートヘアをボリボリと掻きながら、不機嫌そうな息吹に問い詰められる。
「い…いや!その…コッソリ静かに見るだけのつもりだったんだよ!ホントだって!!」
「そもそも開けるなって書いてあるでしょうが!って言うか、何であんなに大騒ぎしたのナー?」
「え、えと…その…怒らない?」
「言わなきゃ怒る!」
「…えっと、ですね?その…覗いたら俺の顔の前で…「ぷぅ」って…」
どすっ!
鳩尾に強烈な右ストレートを貰い、蹲る鰆。
「ひ、ひひひ人の寝てるトコを!…のぞの覗いただけに飽き足らず……アンタって…!!!」
「ご、ごめん!ちょっと不意打ちだったからその…つい…」
「んじゃ何ナー!?アンタはお…おな…おなら…しないっての!!」
「だからごめんって!!」
ぶすっとした表情で拗ねる息吹。
「…寂しい夢見ちゃって、ちょっとブルーだったのに…信じらんないナ!!」
(やっぱり、泣いてたのか…タイミング最悪だよ…申し訳無い)
息吹はまだご立腹だが、その目の周りは少し腫れていた。
どうにか謝罪したいと思っていた鰆だったが、それ以上に…慰めてあげたくなった。
(でも俺がやっても…うう、大丈夫かな?)
鰆は少し、迷った。
でも…
(…まぁいいか、「アンタには似合わない」って笑われるなら、それはそれでイブは元気になれる)
「えっと…無神経な真似して悪かった…御免な、イブ…」
謝りながら、息吹の背中をぎゅっと抱きしめる。
首筋の汗の匂いが、妙に艶かしい
不意に抱きつかれて驚いた様だが、先程みたいに怒鳴ったり蹴ったりせず、じっと肩を震わせている。
怒っている…ようではなさそうだ。
息吹の前に回した鰆の腕を、両手で握り返してくれているから。
「…ダメ、やっぱり許さないナ……」
突然、握っていた手を振り解く。
「…ギュってするなら……前からしなさい。ん!」
クルリをターンして、両手を広げる。
「…仰せのままに」
今度は前から、再び息吹を抱きしめる。
先程の肩の震えは治まっていた。
(…イブの胸が押し付けられて…ドキドキする)
「…ん」
顔を上げ目を瞑り、唇を尖らせる息吹。
「え…えと…その…いいの?」
「…ん!!」
少し険しい表情になり、より強く唇を尖らせる。
「さっさとするナー!」と、催促されている様だ。
「うぅ…そ、それでは失礼して…」
意を決し、鰆は息吹の唇に口付けをした。
…お互い不慣れな者同士の、唇を合わせるだけの口付け。
(うわわわ…俺…初めてキスしちゃったよ!)
…26歳の言うセリフでは無いのだが、鰆は鰆で色々あったのだ。
「…んぅ」
唇と唇が、離れた。
どうやら息吹の機嫌も落ち着いたらしい。
鰆は最近、疾風丸の頭を撫でる癖が付いた様だ。
つい流れで…鰆は息吹の頭頂部をポンポンと優しく撫でてしまった。
だが…どうやら息吹は、それを「子供扱いされた」と勘違いしたらしい。
息吹としては、常に鰆より上でないといけないのである。
悲しみや羞恥で混乱し、気持ちが揺れてたじろいだが…もう息吹の気分は落ち着いている。
今はどうやって鰆をからかってやろうか…と、思案に暮れていた。
無論鰆は、知る由もない。
「ふふーん♡ちょっとキスしただけなのに…何かナー…コ・レ♡」
突然息吹が鰆の股間に手を回し始める…その華奢な手には硬くなった相棒が触れている。
「そりゃ…興奮するよ。初めてのキスなんだから、さ」
「いい年してるのに…童貞はコレだからナ♡」
「じゃあイブはキスに慣れてるのかよ…?」
「…ノーコメントナー」
社会の窓からするりと侵入する白い指が、相棒を撫でる。
「ちょ、ちょっと、イブ…」
泣いた猫がもう笑った…のはいいのだが、振り回され放題で癪だと思えて来る。
鰆も反撃に打って出る。
息吹の尾骨から指を滑らせて、中指の腹で菊門を焦らす様に擦る。
シッポをぴぃんと立てて少し身をよじらす息吹。
「イブって本当にココ弱いんだな…気の強い女はアナ…」
ドスン!
鰆が言い終わる前に、自分の布団に押し倒された。
…少し調子に乗り過ぎたらしい。
「へぇ…そんなにお尻いじりたいんナ…だったらいっぱいさせてあげるわ変態♡」
鰆の顔面に跨り、尻を押し付けられる。
スンスン…
「いい香り」とは違うが、何故か嗅ぎたくなる。
「癖になる」匂いの菊門に鼻先をくっ付け嗅いだ後、そこをチロチロ舐め始める。
鰆の唾液で溢れた菊の花弁を、大きな音を立てながら啜り上げた。
じゅるる…じゅぶ…
「ちょ、ちょっと!音出すナー!!」
息吹は恥ずかしくなり尻を浮かせて逃げようとするが、鰆は逃がさない。
中指を軽くしゃぶると、菊門に指を突き立て…ゆっくりと沈める。
「あン♡……んッ……んぁン!」
「変態!」と鰆を罵る息吹ではあるが…
指をゆっくりと抜くと尻尾がヘナヘナ…と力なく倒れて、再度指を入れるとぴぃん!と尻尾が屹立する。
「イブはホントわかりやすいなぁ」
鰆は更に攻勢に打って出ようと画策する。
具体的には挿入する指の本数を、増やしてゆく算段だ。
鰆は、ティッシュケースに偽装したオナニーセットを引き寄せる。
一人暮らしでもアダルトグッズは隠したくなる小心者故だったが、それが功を奏し息吹の目を逃れていた様だ。
でなければ、とっくの昔に息吹に発見され、玩具にされていたであろう。
その中から、使い切りのローションを取り出す。
アルミパウチを千切り封を切ると、右中指に馴染ませ、息吹の菊門の縁をなぞる。
にちゅ…
「ひゃん!?」
ローションの感触に驚き、身体を揺らす。
ずじゅ…にじゅ…ぬっじゅ…
ローションで塗れた鰆の中指は、容易く息吹の菊門に吸い込まれていった。
「こらぁ…アンタ何…して……♡」
何度かストロークをする内に少し解れて来た…ところにすかさず薬指を追加。
つぷ…
「んッ♡ちょっと!…エロゲーのやり過ぎナー!こんな…」
…人差し指も追加。
ぬずっ…
「くは…あぁあ♡」
最初は指の侵入に抵抗を続けていた菊門であったが、徐々に解れてきたのかスムーズにストロークされる様になった。
今は鰆の指三本を、美味しそうに頬張っている。
「イブ。その…挿れて……いい…かな?」
「んぁ…ダぁメ!……って言ったらどうする…ナー?」
「悔しいけど、諦める…」
「…バカ。嘘よ…察するナ…というかここまでしておいて挿れないとか言い出した…ら…はぁん♡」
「ゴメン、ちょっと待ってて。俺ゴム付けるのなんて初めてだから…」
指を抜き、ローションに塗れた手で、一度も封を切られた事の無いコンドームのパッケージを開けようとする。
しかし…
「鰆…ダメ。そのまま頂戴…何かに遮られるのは嫌…ナ♡」
「…いいの?」
「…アンタはどうなのよ?」
「是非生で…」
「ったく…♡」
ずっとお預け状態だった相棒に、残ったローションを全て纏わせる。
息吹のぽっかりと開いた菊門へ宛がうと…ゆっくりと、挿し込もうと試みる。
「ひぐっ!」
少し緊張して萎縮した菊門に抵抗され、そのまま力尽くで挿れるわけにもいかなさそうだ。
「んはっ♡…はぁ…はぁ…ん」
息吹の呼吸を見計らい、気を吐いたその隙に、無理の無い程度に押し込む。
ぬずずずずず…
「んはぁあん♡ん…んぁ……はぁぁあ…♡」
四つん這いの息吹に、後背位で挿入する。
負担の掛からないように、まずは途中まで挿れて様子を見る。
(お…思い切りピストンしたい…!でも…ここは我慢だ!)
少し緊張が解けたのか、穴は鰆の相棒を受け入れ始める。
(今なら…行けるか!?もう少し…深く!)
ずぬっ!
「なあぁあン♡」
ずっぶ…ずっぶ…じゅぶぶ…
捻じ込む時は「奥まで♡」とねだる様に緩く、
引き抜く時は「…やだ」と名残惜しそうに、強く相棒を締め付ける。
長らく独り身であった鰆の戦友(とも)のオナホも素晴らしいが…流石にホンモノは全然違う。
「熱くて……はぁぁあ♡硬いぃ♡…奥までぇ…欲しい…ナー……」
まだ物足りないらしい。
鰆は…限界まで自分の相棒を打ち込む。
「ん…んはぁ…はぁう!…んっ…んナァ♡」
ずっちゅずっちゅずっちゅずっちゅ…
(腰が…止まらない…!)
「くっ…い…イブ……もぅ!…ふぐっ…う」
「しょうが…ない…あッ!…ちょうだ…一杯…なぁン♡」
「ゴメン…出る!」
ぶびゅるる!…びゅぶぶっ……
「……なあぁぁあァ♡♡♡」
「はぁー…はぁー…こんなに…凄い……のか」
ぬぽり…と相棒が引き抜かれた後に、息吹に抱き付くように倒れこむ鰆。
「はぁ…はぁ…か、感謝しなさいよ…童貞卒業させたげたんだからナ…♡」
「はぁ…う、うん…あり…がとう」
(アナルは童貞卒業カウントでいいのかなぁ…?)
初めての交尾は凄く心地良く、恐ろしく疲れた。
「うぇ~…ホント遠慮なしに出すんだからぁ…ベットベトナー。お風呂連れて行くナー!5分以内!」
「へぇい…」
くたくたの身体を押して、息吹をお姫様抱っこで抱え、風呂へと向かい力なく歩く鰆。
洗い場で服を脱ぎ、湯を張っていると
「ほらほら、アタシの身体洗いなさい!…誰かにベトベトに汚されたからナー」
「はいはい…」
命令され、息吹の身体を洗おうとすると…可愛いお尻から相棒の「お裾分け」が溢れてくる。
(こんなに出したのか…俺)
「もー!最悪ナー!!」
「なんかお尻の中に精液が残ってると…下痢になっちゃう人もいるらしいよ?」
と、エロマンガ知識を披露する鰆。
「え!?そ、そうナ…?」
「…多分」
「じ、じゃあ…仕方ないナ…その…な…中まで綺麗にしなさい!」
「イブ…実は悦んでない?本当にお尻が好…」
ぱこーん!
風呂桶のいい音が響き渡る。
「無駄口たたいてないでさっさと洗いなさい!」
「えーと…浣腸…だったかなぁ?」
知識を披露したものの、実際には乏しい脳内の知識を検索しながら鰆は考え込む。
「何言ってんのよ!そんな恥ずかしいのお断りナー!…そ…その…ちゃんと指で洗いなさいよね!」
え…?
…その後、「お裾分け」が排出され切ったと思われるまで、息吹の嬌声が三回響き渡り、大きな水溜りが出来ていた。
最後には「ご褒美」と称し、息吹が鰆の身体を洗いだした。
正直なところ洗い方は下手だったが…
鰆の体中そこいらにおっぱいの衝突事故が起こる為、鰆にとっては正真正銘のご褒美となった。
風呂から上がり、ビールを飲む二人。
鰆はあまり酒は呑まないのだが、息吹に強引に付き合わされる。
「でもイブが…その…そんなに俺の事……すすすす…好きだったなんてその…」
「は?…別にそうでもないナー?」
「何言ってんの?」とばかりに首をかしげながらあたりめをもっしもっしと噛む息吹。
「…え?」
「交尾したら即つがい!…とかホント『脱!童貞。』しても考え方が童貞ナー」
「童貞言うな!」
「それにぃ…つがいなんて言ってもさァ…アタシはまだ封を切ってないのよねぇ……ま・え・は♡」
結局風呂を上がっても全裸のイブが、股を開いて薄い茂みに覆われた渓谷を開いて見せつける。
「イブ…酔ってる?」
「たかだかビールで酔うわけないナー」
そう言う息吹の周りには、大量のビールの空き缶が転がっている。
ちなみに鰆はまだ一本目を開け切れていない。
「ん…まぁ…アンタの事は嫌いでもない…けど…ね。まぁアレよ、ちょっと寂しい夢見て肌恋しくて、ナ」
(そういえばそんな事を言ってたな…)
「…夢って?」
聞いていい事か悩んだが、やはり気になる鰆が尋ねる。
「うーん…誰か親しい人たちがアタシ呼ぶんだけど、あたしは川に流されてさ、『助けて』って叫んでもどんどん…」
「あー、ごめん、もういい」
…トラウマ系の夢だった様だ。
「いいわよ別に。ま、一発ヤったらスッキリしたし…フッ切れたナ♡」
「…オッサンかお前は」
「アンタさ、ヤらせて貰ったら「責任とって…ね?」とか「ご主人様酷いにゃあ…」とか言うとでも思ったナー?」
いちいち裏声で芝居がかったポーズをとる辺り、相当酒が回っている様だ。
「いやそこまでは…」
「別に交尾なんて…コミニュケーションの一環みたいなモンじゃない?人間は違うナー?」
「すみません、経験ないもので…」
今度は鰆のトラウマが引っ張り出される。
「その辺動物は大らからしいわよ?例えばキリンのつがいとかゴニョゴニョ…」
「まじか!?」
(※:気になる人は「動物の同性愛」で検索してみよう)
「ふむふむ…そーゆーのも面白いかもナー。アンタさ、今度カッコいい雄釣ってきなさいよ。そしたら3Pやらせたげるナ♪」
「いや…それは勘弁…」
「その代わり雄同士の交尾も見せてくれたら、だけどナ♡」
「…遠慮します」
「ふぅーん、他の雄と比べられたらアタシに蔑ろにされると思ってるんだー?かーわいー♡流石プロ童貞ナ♪」
「もういい…」
(ま、元気になったから大丈夫そうだな…元気過ぎるとも言うが)
テンションが上がり下品な話ばかりする息吹も、アルコールが回ったのか船を漕ぎ始める。
「うー…寝る。鰆、こっち来るナ…」
「はいはい…」
冷房を少し強めにすると、二人は同じ布団で抱き合いながら眠りに落ちた。
「よっしゃ!童貞卒業おめっとさーん♪…って!違うわアホぉ!!」
前足で「たしたし」と机を叩きながら、管理人が叫ぶ。
「ちゃうねん!いやな、何回か本番ヤった後に…って言うならそれも味があるで?何でいきなり尻やねん!!」
真空管テレビ「もどき」にかじり付きながら考え込む。
「よし、ほな次行くか…見とれよ!次こそ…」
『まだやるんですか…』
翌日、鰆は疾風丸を直視出来なかった。
別に浮気と言うわけではないのだが、何故かこう…罪悪感を感じる。
(外で浮気してきたおとっつぁんが、翌朝自分の娘に見つめられる…って感じかなぁ?知らないけどさ)
朝食を終えて少し横になる。
ここのところ、細かいサイクルで寝たり起きたりを繰り返すせいか…どうにも疲れている気はする。
充足した日常とケモミミ娘達の存在のお陰か、睡眠の質自体は高まっているのだが。
(…二人でこの始末なのに、ハーレムモノの主人公ってよくやっていけるなぁ)
そんな事をぼーっと考えてみる鰆だった。
ガララッ!
「宅急便でーす、サインか判子お願いしまーす」
「わぅ!」
(おおハヤテはお利口さんだなぁ…)
…疾風丸は犬耳少女である。
「…って!ハヤテ!犬耳が……!」
その時、ふと先日の「認識阻害」の話を思い出す。
「ま、大丈夫か…」
再びウトウトし始める鰆だったが…何か引っかかる。
「…ん?何か宅急便で送って来るような物を頼んだか、俺?」
ここしばらくは息吹が使う以外は、殆どパソコンは立ち上がっていない。
何か宅急便で送って来るような注文をした覚えはないのだ。
(はて…?)
不思議に思い、玄関まで様子を伺いに行くと…
「わふ…こ、こんなのが…ズッポリと…入っちゃうわぅう…?」
「んー?ハヤテ、何読んでるんだー?」
…疾風丸の読んでいる同人誌の表紙を見ると、鰆は真っ青になった。
【股の上の同居人(パートナー) 獣八禁 こどもはよんじゃだめにゃ♪】
「うぉおい!」
(な、何故今更【またパ】が!?第二書庫(物置の奥のダンボール箱)に三冊はあったハズだ!)
「ふぃ?」
「発注者は…澤村息吹。……あンの猫ぉおぉ!!」
「あ、あるじどの…そ、その…ボク…知らなくて…」
「…な、なな何をだい、ハヤテ?」
ガキガキガキ…と、鰆は関節の錆びたブリキロボの様に振り返る。
「お世話になってる家主には…交尾しなきゃならないなんて初めて知ったわうぅ…」
「しなくていい!これはフィクション、作り話でロマンなの!」
「ボク、まだ交尾した事ないから…ちゃんと出来ないかもしれないわぅう」
俯きながらジリジリと近づく疾風丸の耳には、鰆の乾いた叫びは届いてないらしい。
「ハヤテさーん、もしもーし?」
疾風丸は意を決した様に力を入れると、鰆に近付いて来る。
「…んしょ」
鰆の目の前で服を脱いで…畳み始める。律儀である。
(ちゃんと尻尾穴開いてるなーハヤテは裁縫も上手いなー)
現実逃避している間に、全裸になった疾風丸がぺこりと頭を下げる。
「おまたせしましたわぅ!ボク、頑張るわぅん!」
「だーかーらー!」
強引にズボンを脱がされ、一連の騒動で灯が入った相棒が持ち上げているパンツも引っぺがされた。
「わふ!」
先端から既に先走っているの相棒の上に、無理矢理跨ろうとする疾風丸。
「お、おい!無茶だって!そんないきなりなんて…挿いりっこないって!」
交尾を良く理解していない疾風丸が濡れている訳もなく、閉じられている渓谷との摩擦に…疾風丸の表情が強張る。
「挿いるわけないって!ハヤテ、止めなさい!!」
頭ではすぐにでも止めさせたい。
何も分からない幼い女の子に、無理矢理交尾を強いるなんて人として許されない。
それが無理矢理交尾を強いられているのが鰆側であっても、だ。
しかし…残念ながら鰆の身体は正直だった。
いつしか抵抗する手の力は抜け、相棒は目的を達成の為に、先走りを増産して負荷を減らそうと試みる。
「わふ…んッ!……わぅ……ぅう」
苦悶の表情を浮かべる疾風丸の身体に、鰆の相棒の先端は少しだけ押し挿れられた。
…疾風丸は相棒を万力の様に締め上げる。
(まずい…)
こんなに強い刺激が続けば、中に放ってしまう事請け合いである。
いつもあんなにニコニコ笑っている疾風丸の辛そうな表情を見て尚、いや、ますます猛る相棒が…鰆は心底憎かった。
「ダメ…だッ!」
疾風丸の胴を持ち、一気に引き上げる。
びゅるる…びゅる……
その衝撃で達してしまうが、何とか中には出さなくて済んだ様だ。
「あるじどのぉ…」
痛々しく充血した渓谷には、細く紅い河が流れている。
「ハヤテ…気持ちはすっごく嬉しいんだ、な?」
「わぅ…」
「でも…痛かっただろう?」
「…ううう…痛かったわぅう…!!」
「じゃあ、もうやっちゃダメだからね?」
「でもボク…」
「……あぁ!ホラ、見てごらん!この漫画の女の子は、全部猫耳だろう?」
「おぉ!ホントわぅん!」
苦し紛れの言い訳は鰆の十八番である。
「だからハヤテは気にしなくていいんだよ、ね?」
「わかったわぅ!それじゃ…お片付けするわぅ…ひゃうん!!…痛いわうぅぅ…」
少し蟹股になり、鰆の足にもたれ掛かる疾風丸。
「…今日はもう休みなさい、いいね?」
「…はいわぅう」
疾風丸の渓谷を、優しく拭き清めて軟膏を塗り…寝かせ付ける。
その後、廊下を水葺きをして騒動の後片付けは終了した。
身体を洗う為に脱衣場入ると…黄ばんだ白にくすんだ紅が混ざった液体に包まれた相棒が顔を出す。
「なんとか阻止したとはいえ…少し挿いっちゃったなぁ…」
衰えない相棒とは対象的に、鰆の精神は憂鬱でしかなかった。
「ハァ…俺はなんてクズなんだ……」
「全くだよこの腰抜け!」
狐の管理人はご立腹であった。
『如何されました?』
管理人は横から問う鴉天狗面に、不機嫌そうにまくし立てる。
「あのアホが…あそこまでお膳立てされて一発ヤるどころか逃げくさった!」
『本当に趣味が悪いですね貴方は…』
「こうなったら「逃げられん状況」作ったろやないか…ククク…おい、ちょい手伝え!」
『またですか…全くあの青年、本当に性質の悪い相手に関ってしまった』
光の輪が一人と一匹を澤村家の仏間へと運ぶ。
「さて、と…覚悟完了してもらおかのぉ…おい、ここだけちょいと時間進めるで!」
『何か作業は?』
「本格的なのはいらへん。疾風丸は「犬」耳やからな…後は身体の方が頑張ってくれるわい…ククク」
一瞬の閃光の後、仏間の空気が水飴のような粘度になり、やがて何事もなかったように時間は進みだした。
その晩、息吹を同人誌の件で叱るが…
「あるなら見せなさいよ!本代が勿体無いじゃなナー!」と逆ギレされた。
昼の出来事の衝撃が抜けない鰆は、息吹より先に床に就いた。
「明日、なんて謝ろう…」
「何の事?」
ひょいと顔を近づける息吹。
「いや、何でもないよ…何でも…」
「ふぅ~ん…おやすみナー」
「うん、おやすみ」
何があろうと、それでも朝日は昇る。
玄関から牛乳瓶を持って、台所へ向かう。
(気まずい…)
台所には、鰆の想像を三段は越えたモノが…居た。
「あ、おはようございますわぅ♪」
ガコォン!ゴロゴロ…
持っていた牛乳瓶を落としてしまう。
…それだけの衝撃を受けるに値するモノを、見てしまったからだ。
幼く華奢な疾風丸…そのお腹は「ぼてっ」と、膨らんでいた。
「あ、あのね、あるじどの…ボク…お母さんになっちゃった…みたい……わぅ…」
エプロンの端をつまみあげてモジモジする疾風丸。
ポーズは物凄く愛らしいのだが、鰆はそれどころではない。
「ははハヤテ!そ、それはそれそれそれ…」
言葉が出ない、とはこういう事か。
「今朝、目が覚めたら掛け布団がぽっこりしてて…おかしいなーってめくったら…こうなってたわぅ…」
脳内を色々な情報が駆け巡る。
やっぱり中に出していたのか!?
いや、仮に出ていたとして…何故一日で?
つーかどうしたらいいんだ…犬耳のお産は何処に頼むんだ?
犬だから子沢山なのかな?
犬耳と人間どっちが生まれるんだろう?
狙い撃つぜ!初弾命中!!
…等の情報が、鰆の脳に溢れ出す。
「あるじどの?ご飯冷めちゃうわぅよ?」
「そうだな…とりあえず飯を食ってから考えるか…」
二人で食事の後片付けをする。
(俺がやるって言っても聞かないだろうしな…それなら協力して早く終わらせよう)
リビングのソファに疾風丸を楽な姿勢で座らせて、その横に鰆も座る。
「あるじどの、実はボク…少しだけどおっぱい大きくなったわぅ♪」
疾風丸が上着を脱ぐと、今までまな板だった胸が…ほんのり柔らかな曲線を描いて盛り上がっている。
「ほんとだ…うん?」
さくらんぼの先からうっすらと何かがにじみ出ている。
(まさか…)
恐る恐る顔を近づけ、吸い付いてみる。
ちゅぷ…ちゅむちゅむ…
「あふ♡…あるじどのぉ…赤ちゃんみたいわぅ…♡」
信じられないが、強く吸う度に…母乳らしきものが染み出してくる。
「ボク、夢を見たわぅ…ボクとあるじどのの子供に囲まれて、みんなでご飯を食べる夢わぁう♡」
(イブだけじゃなくハヤテも夢…妙にタイミングがいいな…)
「そ…そして…その夜…」
「その夜?」
俯く疾風丸に、優しく尋ねると
「あるじどのがボクと…いっぱいいっぱい交尾して、ボクにちゅーしてくれる夢…わぅ…ん♡」
ガタアァァァン!!
鰆の中で、何かが、閉ざされた。
ギリギリ引き返せると思っていた扉は閉まり、「ガチャリ」と重厚な施錠音が響く。
「あるじどの?」
不思議そうに見上げる疾風丸。
その腹には命を宿し、更に鰆に愛された夢を嬉しそうに語り…
「ゴメン…な…」
最後の理性で侘びを入れ、強引に疾風丸の唇を奪う。
「ふむっ!…ん………ぷはぁ!…わぅ♡」
潤んだ瞳で鰆を見つめ、優しくおねだりする。
「今度こそ…ちゃんとボクを食べてください、あるじどの♡」
「あぁ、夢の中よりも…一杯しような、ハヤテ」
おでこにもキスをし、その後優しく頭を撫でる。
そのまま掌を犬耳の隙間に差込み、内側の敏感な内部を指先で刺激する。
「んひゃあん!…そこ…すきぃ……わぅ♡」
鰆は左手で疾風丸の胸の先をキュウと摘み、溢れた分泌液を刷り込む様に胸を揉む。
「あるじどの…待ってて欲しいわぅ。すぐに…おっぱい大きくなるから」
「…俺はちっちゃいのも、好きだよ」
ちむっ…ちゅっぱ…ちゅっぱ…
音を立ててさくらんぼに吸い付きながら、ゆっくりと渓谷に手を伸ばしてみる。
(いくらハヤテがその気でも…ここがダメだと………え?濡れてる…)
くちゅ…ちゅく…
「ぱんつ…濡れちゃったわぅ…」
疾風丸は恥ずかしそうに俯いて、そのままゆっくりと女児ショーツを脱ぎ捨てる。
「でも、これならあるじどのと…」
ソファの上で股を開き、相棒を物欲しげに見つめる。
しかし…
「おっと、赤ちゃんが潰れちゃったら大変だ…ハヤテ、俺の上に跨れるかい?」
「わぅ…失礼します、わあぅ♪」
前回と違い、滴り落ちる程蜜溢れる渓谷に、相棒を宛がってゆっくりと座らせる。
ずぶぶぶ…
(マジかよ…昨日と全然違う。これなら…)
「痛くないかい、ハヤテ?」
「ちょっとヘンなカンジがするわぅ。でも…交尾出来るのが嬉しくて、気にならないわぅん♡」
鰆の眼前に、大きく張り出した腹部がゆっさりと揺れる。
幼い疾風丸の妊娠した姿はとても背徳的で…その笑顔をみる度に、自罰的感情と性的興奮が混ざり合う。
「ゴメンなハヤテ…痛かったらすぐ言うんだぞ。その…腰が止まりそうにないから」
「あるじどの…気持ちいいわぅ?…んっ……それならボクも…嬉しいわぅん♡」
犬耳少女を孕ませ、その上、また犯す。
鰆の生きてきた世界の常識では許される事ではないが、それ故に興奮せずにはいられないのだろうか。
ずっちゅ…ずっちゅ…ずっちゅ…
「わふぅん!…ボク…ちょっと…おかしく……んっ!…もっと…わふ…ん♡」
疾風丸は昨日よりずっと余裕を持って鰆の相棒を咥え込んでいるが…少し様子がおかしい。
「うん?…うっ…ふぁ…はァ……辛いの…かい?」
ずっこずっこずっこずっこ…
どれだけ割り切って振舞おうとしてみても、やはり疾風丸の様子が気にかかる。
「え、えとぉ…あるじどのぉ♡…ん…先に……ごめんなさいするわふ…はぅ…う♡」
「へ?」
(何がだ?)
謝るとしたら自分しかないと思っている鰆の思考が混乱するが、下半身は構わず快楽を貪り続ける。
「わふぅん♡」
ぎゅううぅぅぅう♡
相棒を一気に締め上げられ、鰆は根を上げる。
「ハヤテ…出るっ!ゴメン…出る!!」
「ボクも…ひゃン!…ふに…ぃ……あるじどのぉ…ごめんなさいわぅうン♡♡♡」
びゅるるる!…ぶびゅっ……びゅるる
ちょろろろろろろ…
射精の放出感に続いて…下腹部に生暖かい感覚が広がっていく。
「は、ハヤテ?」
「交尾気持ちよくて…その…漏れちゃった……わぅん♡」
またも盛大に縄張りを主張され、鰆に渦巻いていた毒気が…一気に抜かれてしまった。
「わふ…」
疾風丸を風呂に入れて身体を洗う。
渓谷には殆どダメージが無い様だが…
「今日はゆっくりお休みしなさい」と寝かしつける。
(こりゃあ…犬用のトイレシートを買った方が…いいかもなぁ)
リビングの惨状を片付けながら、鰆は考える。
しかし、そんな事はどうでもよかった。
(さて…どうやって責任を取ったものか)
以前までは一応定職に就いていたものの、今は失業保険と貯金暮らしで裕福とは言い難い。
そもそも、どこの病院に連れて行けばよいのだろう?
以前、空からケモミミ少女が降ってきた場合の住民票や保健証についてのシミュレーションを試みた事がある鰆だが…
結局「ご都合主義でどうにかなるだろう」と思考を放棄した事を思い出す。
一時の快楽の為に、疾風丸に辛い思いをさせてしまうのかと思うと…胃が痛くなる。
「それでも…どうにかしなきゃ、な」
「ま、心掛け自体は殊勝やな。後ろ向きが過ぎるけど」
突然、鰆の後ろから声がした。
空中に輝く光の輪が、例の狐の管理人を吐き出す。
「アンタか。どうせ今回色々あったのは…アンタが全部仕組んだ事なんだろ?」
頭痛の種が増えたとばかりに、わざとらしく大きく溜息を吐く。
「ご挨拶やなぁ。いつまで経ってもモジモジしてるさかいに、炊き付けただけや」
「…余計なお世話だよ」
仏頂面で返事を返す。
「お前は自分が買ったエロゲーがいつまでたってもエロシーンに行かなんだら…クレーム書いたりせんのんか?」
管理人はソファーの上にゴロリと寝転ぶと、身体を伸ばして欠伸をする。
「あのなぁ!だからって孕ませるなんて…やり過ぎだろうが!」
「ほう。コッソリと専用フォルダを作る位には「ロリ妊婦」は好みと調べは付いとるけどなぁ?」
「だーかーらー!そういう事じゃないんだよ!…今だってハヤテをどこの医者に見せるか悩んでたのに…」
明らかに苛立ちを見せながら訴える鰆に、管理人はノンビリと返す。
「そんな必要ないっちゅーねん。アレ「偽妊娠」やし」
「…ぎにんしん?」
「あぁ。犬とか兎はなぁ、実際に致しても未遂でも身体が「妊娠した」って勘違いして、乳が膨れる事もあるんよ。母乳も出る」
「確かにおっぱいが…いやいやいや!腹はどうなんだよ!錯覚がどうのってレベルじゃないって!」
危うく納得しかけた鰆だが、どうにも怪しい。
「あー…腹はなぁ。まあワシがちょちょい、と。ちぃーっと贅沢な肉が乗っとるだけや。」
「マジかぁ…」
はあああぁぁぁあ…
(これ程心底安心したのは、何時ぶりだろうか…)
「お前さんのこっちゃ、「もう妊娠してるんだ、それなら何回ヤっても問題ないよね!?」とでも思わせんと…ヤらんやろ?」
「じゃあハヤテは…」
「あぁ、疾風丸の運動量なら腹も直ぐに元に戻るわ。…乳も戻るけどな。」
(良かった…)
「まぁ精々今のうちに「にんっ!しんっ!」プレイ楽しむんやな♡」
心底安心し、心底呆れた鰆であった。
人生でこれ程精神を揺さぶられた事は無いので、どうにも身体に悪い。
「…アンタ、本当に神様の類なのか?」
「タダでこの状況が手に入ったと思ってないか?お前さんはエロゲーで言ったら「主人公」、んでワシは「プレイヤー」なんやで?」
「突然何を言い出すんだよ…?」
「最初のミスはワシの責任やけど、その失態を十二分に補う生活をお前さんには提供しとる」
少しトーンを落とした管理人の声に、鰆の背筋が伸びる。
「そこからはお前さん、疾風丸、息吹、んでワシと全員が相手を利用し利用されで成り立っとる「ゲーム」なんや」
「…え?」
(俺と管理人は分かる、しかし疾風丸と息吹「も」って…)
鰆は訝しんだ。
「まぁアレや、世の中助け合いっちゅーヤツよ。ワシはワシで娯楽が欲しいからな」
「娯楽って…」
「いやー、やっぱエロゲーでしか恋愛についての知識が無いヲタは、交尾の時のセリフもクサいのぉ♡」
「………」
近所のホームセンターで、刺股が19,800円で売っていたのを思い出した鰆であった。