BF世界のヤツが自作ガンプラと転生して、コズミック・イラで生きていく話 作:sakitaro
ここは、虹……?世界の果て……。暖かな、光……。
──誰かがキミを見つめている。その姿を見るのは初めてだったけれど、それが誰なのかはすぐにキミには理解できただろう。キミに似ているようで似ていない。背も少し低くて、体も細くて、とても戦う人間の体つきではないと分かった。でもキミの今の力そのものでも
『よっ、死にかけた割には元気そうじゃん』
お前は……オレなのか?
『そ。俺はお前。向こうの世界の俺だよ。いい機会だからお前にお別れを言いにきたんだ』
お前、お別れって……それじゃあこの世界に来た意味がないじゃないか。お前が願った世界はどうするんだ……それに、どうして今更?
『俺はただキッカケだったんだ。俺とキミの精神が入れ替わっていたのはキミが気を失っているほんの短い間でさ、後は俺とお前が混ざり合って、記憶や姉さんとの関係が変わって。その全部を糧にしてキミはここまで辿り着いてきた。それは俺じゃなくてキミの力で、俺自身は最初以外は何もしてないよ』
でも……それじゃあお前はただ向こうの世界で死んだと言うだけになる!オレは、ただお前の力と願いを借りてここまでやってきたんだ、オレには何もないんだ!力も、想いも……。
『何言ってんだよ。俺からすればアニメの世界だったこのコズミック・イラに来て、なんならモノホンのモビルスーツになった相棒のアルカナも操縦できてさ。あの世に行くまでの短くてすげーいい夢見てたようなもんだぜ?』
しかし……
『なんだよ。らしくないぞ、連合軍所属の中尉殿。普段みんなの前じゃそんなウジウジしてないじゃんか。いつもみたいに自信満々で居てくれよ。キミの中で活躍をずっと見てて、正直言って憧れてたんだけどな』
憧れなんて、違うんだオレは……。オレは何も成し遂げちゃいないんだ!ただ世界をかき乱してるだけで、本来起こるべき事を捻じ曲げて……お前からもらった力をワガママに使ってるだけなんだ!このオレの心に満ちる想いも願いも……お前がしたかった事じゃないか、オレのものじゃない!借り物の願いで世界をかき乱すなど……!
『それでいいじゃん。悪いことに使ってる訳じゃないんだし。つっても?いろんな女の子とよろしくやりすぎだなぁ?とは思うけどな』
う、ぐ……そ、それはお前だって見て居ただろう!……ほとんどは不可抗力だ。
『まぁまぁ!それにさ、みんなキミと一緒にいる時はいっぱい心配もしてるけど、楽しそうにしてたと俺は思うよ。アークエンジェルに乗り合わせてたった二ヶ月足らずだけど、みんなを守るために迷った素振りを見せずに戦ってるキミの姿はずっと見てた。だから託していける。それにラクスが好きとか、みんなを護りたいって気持ちはキミのモノであって、俺のじゃない。だって俺からすりゃみんなはアニメのキャラが目の前にいるってだけだからな!』
けど、オレは弱いんだ。一人じゃなにも出来ないんだ。だから、お前が居なきゃ……!
『いいや。俺の願いも想いも。もう全部キミの中にある。次に出会うとすれば……俺の心とキミの心が別々になって、新しい命になった時さ。お互いがお互いに気がつくかは分からないけど、その時はまた何度だって……また楽しくやろう!』
オレで……いいのか?お前だって、この世界でやりたい事がたくさんあったはずだろう!
『何言ってんの。短かったけど、俺にとってはこれ二回目の人生なんだぞ。でもキミにとってはこの命は一度きりで、キミだけのもの。本当は俺なんて不純物で、奇跡みたいなもんだから。これからの人生を生きていくのはキミじゃなきゃいけないんだ。キミならできる』
……できるかな?
『もちろん。形は違っても、キミは“オレ”なんだろ?』
そう、らしい。あまり実感が湧かないんだ。ある日を境に見覚えのない景色や記憶や、知らない家族や友人の顔を知っていて、でもそれが二度と会うことのない人たちらしいって事はわかった。ただそれだけで……名前が同じらしい……それぐらいしか。
『じゃあ大丈夫。俺に出来る程度のことはできるさ!後のことは任せたからな!キミが願う最高の未来のために戦って見せてよ。今度はキミの中からじゃなくて……この虹の彼方。時間すら輝いて見えるこの場所で見てるよ!』
……分かった。やってみる。
──自分よりも小さな、でも優しい心を持った遠い世界の自分が透けていく。ただ口下手なだけだったキミへと最後に固く握手を交わして、
「……」
ゆっくりと、目を開ける。
「おや、目が覚められましたかな?」
彼の前にはどこか心配そうな表情を浮かべているように見える、目を閉じた黒髪の男性が立っていた。キミはその姿に見覚えがあった。そして、キミは自分の視界に違和感がある事に気がついただろう。
「……あなたは」
「はじめまして、マルキオと申します。随分とうなされておられたようですが……」
オーブ本島から程近い場所にある群島に教会を構えている人物であり、プラント、地球の両方である程度の影響力を持つ人物だ。キミは見覚えがあったりや話を聞いた事があることを思い出す。
「存じています、ご心配をおかけしました」
そう話しつつも、違和感のある右側の目に触れれば、それはどうやら医療用眼帯であることにキミは気がついた。そしておおよそ察して小さくため息をついてしまう。その様子を察してかマルキオ導師が状況をキミに説明した。
「なんとか救助はさせていただきましたが、その時既に破片が刺さっていて右目は完全に潰れてしまっておりました……」
「そうですか」
病室のような場所で目が覚めたキミは窓の外を眺める。その窓の外は宇宙空間のようで、随分離れたところまで来てしまったんだなとキミは思った。そして右目の視力を失って節々の身体の痛みを伴いながら、キミは俺の記憶通りに思惑を進める事ができたんだ。
「まだ身体も痛むでしょう。まだ安静にしていてください」
「いや、大丈夫みたいです」
片方の視力を失うと平衡感覚や距離感を失い易いと言うのは有名な話だ。片目を隠しながらなにか物を取ろうとした時、思っていたより遠かったり近かったりするだろう?今のキミにはそれがずっと付きまとうんだけど……。きっとキミは大丈夫なはず。なんせ……キミは変革した人類だ。遺伝子に左右されない因子。マルキオ導師はSEEDと呼んでいる。けど、キミが持つそれはSEEDよりももっと認識力とはもっと違う奥底で物事を感じる力だ。今のキミになら……死者の魂すら感じられるような、この世界には本来存在しないもの。
──二十九話『
どうやらここは未来でファクトリーと呼ばれるエターナルやストライクフリーダムなんかを秘匿していた秘密工場、ファクトリーと繋がりがある“ターミナル”の、まだその前身組織であるレジスタンスの施設みたいだ。既にシーゲル・クラインのプラント評議会議長としての任期は終わっていて戦時中ということもあってか、現在はパトリック・ザラが議長に就任している。典型的なタカ派のパトリックは現在強力な兵器の製造を推し進めているようだ。
「マルキオ導師、ありがとうございました。戦いが終わったらまた話しましょう。今は行くべきところがあるんです」
「ええ、分かっていますとも。お話は伺っておりますので」
「では」
導かれるようにキミは向かう。施設内ではザフトの軍服に身を包んでいる人たちが居るんだけど、なぜかキミの姿を見ては敬礼をしてくれている。なぜかって?それはキミがプラントの歌姫、ラクス・クラインを救った人だからに他ならない。そして……これからその歌姫が一振りの剣を託す人でもあるんだから。
「感じる……アルカナの力」
今まで通っていた通路の扉とは比べるほども無いほど重厚な隔壁の前に到着したキミ。その隔壁の前では暇そうにしていた顔見知りの姿があった。
「あら、目が覚めたのね。久しぶりね」
「アイシャさん」
「ふふっ、また強い目になったわね」
「ははっ……オレ、強くなれたんですかね」
まだまだどこか硬いままのキミだけど、それでも今まで見せる事なんてほとんどなかった自然な笑みを見せた事にアイシャは驚いたようだ。
「お姫様が待ってるわ。会ってあげて。ずっと坊やのこと待ってたみたいよ」
「分かってます」
隔壁を操作して開けてくれたアイシャにキミは小さく頭を下げて隔壁の奥へと漂っていく。
「ラクス」
そこでは、どこか俺にとっては見覚えのある機体があって、その機体に祈りを捧げるように見上げていたラクスが居て、そんなラクスにキミは声をかける。驚いたように振り返ったラクスはキミの姿を見るや否や、嬉しそうに笑顔の花を咲かせてキミの方に向かって飛び出した。
「ッ……ユウヒ!」
「おっと、ナイトのお目覚めかね?」
その様子を見ていたバルトフェルドさんはキミを茶化すけれど、ナイトでもなんでも良いとキミは思っていたね。
「別にナイトなんて柄じゃないですけどね……ごめんラクス。随分待たせてしまった」
申し訳なさそうに笑ったキミは、飛んできたラクスを優しく愛おしそうに抱きしめていた。
「無茶、して……っ、ユウヒが死んじゃったら……どうしようって……ずっと、心配だったんだからっ!!」
怒ったような言い方なのに、その指先は愛おしそうにキミの左頬を撫でて。キミの痛ましい姿に……キミが目を覚ますまでにもたくさん泣いただろうに、また泣きそうになっていた。
「ありがとうラクス」
「また、戦うの?そんなになっても……沢山失っても……」
「ラクスを失うよりはいい。何を失っても、沢山失ってもさ。でも、オレ一人じゃ守れないから仲間を助けに行くんだ」
そう言いながらキミは新しい機体を見上げる。いつかラクスに見せただろうあの設計図の機体。黒いティターンズカラーに染め上げられたMSV版シナンジュ・スタインに各部装甲のスライド機構を加えてNT-Dを可能にしたもの。
ガンダムらしいV字アンテナも存在していて、でもどこかコズミックイラの機体らしく、本来のシナンジュスタインと比べて若干細身のようだ。背部にはシナンジュの推力偏向スラスターではなく、Hi-νガンダムのフィンファンネルが設置されている。サイドスカートにはフリーダムの物と思しきレールガンがあったりと結構な魔改造具合。
「まだ身体もちゃんと治ってないのに……」
「そんなにすぐに行くつもりはないよ。助けに行くにも、今行ったってきっと足手纏いになるだけだからな。少しだけ休ませてもらうよ」
バルトフェルドとアイシャは気づいていた。休むってそれ“ホテルで休憩”と同義だろうなって感じで。
「……違うからな?」
「何がかね?私は何も」
「……ッ」
ラクスがニュータイプかどうかの確証はない。心は目に見えるものじゃなくて感じるもの。だから、ラクスがニュータイプかどうかも感じるしかないのだけれど、きっと彼女にも伝わったのだろう。頬を赤らめて少しキミから離れて……でも離れたくなくて袖口を小さくつまんで、まるで年頃の女の子のような姿のラクスを見た周囲の整備員たちは彼女の可愛らしさに顔を綻ばせている。
「も、もう……。ひとまず!今は彼に無理をさせる訳には参りませんわ。……行きましょう、ユウヒ」
少しむくれた表情のラクスに手を引かれ、無重力空間を浮かんで立ち去る二人。
「……ありがとうバルトフェルド。ラクスを守ってくれて」
「なぁに、もとよりキミが居なくてもそのつもりだったさ」
フッと小さく笑ったキミはラクスに連れられるままに隔壁の外へ。隔壁の外で暇そうにしているアイシャからも見送られた二人は、ラクスが普段使っている休憩室へと向かうのだった。
「ユウヒと会うの……もっと遅くなると思ってた」
ラクス専用の休憩室らしいそこは、キミが眠っていた病室に比べて女の子らしい装飾が施されていて、ぬいぐるみやアスランから貰ったんだろうハロたちが居て部屋も一つでは無いようだ。
「できる限り急いだ」
「でも、結局怪我してる」
「それにしてもあの機体は?」
「あのモビルスーツ、きっともう保たないって分かったの。地球に降りる瞬間はアスランと乗り合わせてたから良く見えた。ユウヒ、たくさん無茶してた。私と離れた後も、きっとたくさん無茶するんだろうなぁって。だから力になりたかったの!……けど、どうしてもあのサイコフレームだけは作れなかったみたいで……」
そりゃあ無理でしょ、サイコフレームとかこの世界の理の外にある物質だからね。そもそもがニュータイプはまだキミしかいない。もしかしたらラクスもそうかもしれないけれど……それはきみと深く繋がったからかもしれない。
そもそも、ニュータイプという言葉も、その原点となったジオンも無いこの世界ではソレは認知どころか、存在すらしていない。サイコミュ兵器だって開発されていないのに、そのサイコミュ技術のほぼ最奥と言ってもいいサイコフレームがこんなところにある方がおかしいからね。……でも、この世界でもきっと現れるのだろうと思う。
「……ありがとう、ラクス」
「……うん」