BF世界のヤツが自作ガンプラと転生して、コズミック・イラで生きていく話 作:sakitaro
まだまだ活動するには無理があったキミは、ラクスの部屋のベッドに腰掛けるや否や、猛烈な眠さに襲われた事だろう。ラクスもそれを理解していた。むしろ、起きたそばから会いに来てくれたことに喜んだぐらいで、無理をさせた自分を恨めしくも思った。
「無理しないで、ユウヒ」
「話したいことがあって、寝てなんていられなくて」
キミは話し始めた。何も隠すことなく、全てを。
「どう説明したらいいんだろう。……少し前までオレの中には違う世界からきた人の心を宿してたんだ。オレと同じ、ユウヒ・コマムラって人間だった」
「……違う、世界?」
「うん。その世界にはモビルスーツなんてなかった。逆に、なんて言うのかな、小さなロボット同士を戦わせる大会が流行ってる……そんな平和な世界だったよ。その小さなロボットはオレたちのよく知ってるモビルスーツに似ていて……その世界のユウヒはそのロボットの操縦者で、俺たちのこの世界は……アニメや漫画の世界の出来事……そういう認識だったんだ」
キミは天井を見上げ、自分の中の認識を伝えられるように頭の中で言葉を考えながら紡いでいく。
「この世界が……漫画や、アニメ……?」
「そう。彼の世界には、この世界以外にもモビルスーツが出てくる作品が沢山あったんだ。……その色々ある世界の中の一つに“ニュータイプ”って概念があった。人類が地球を離れて宇宙に適応し、進化することで現れる新人類。まだ解釈がしっかり定まっていないモノで、隣人に優しくできることとか、認知の拡大とか、色々言われてる」
「その、もう一人のユウヒがあなたの中に居て……だから、ユウヒもニュータイプに……?」
「そう……なんじゃないかって思ってる。きっと厳密には違うんだと思う。なんていうか……ニュータイプが生まれるのも、サイコミュを使うにも、この世界に足りないものがあるし。だけど……」
「ユウヒ、大丈夫。みんなと違ってても、違う誰かの記憶を持っててもユウヒはユウヒ。心配してる私の事を想って、怪我をしていて辛いはずなのにすぐに来てくれて、今こうして話せてる。私、幸せだよ」
いろいろ話したキミだったけれど、ラクスにとっては瑣末な事だった。キミがいて、彼女がいて。……生きている。そして今、こうして隣に座って話している。ラクスにとってはそれが全てだ。
「分からない。彼の記憶の中のラクスと、今こうしてオレが話してるラクスは随分と違う。それを引き起こしてしまったのは、オレで……それが良かったのか……どうか」
「もう起きてしまったことだから……でも、少し前までその方がユウヒの心に居たってことは、今は……?」
「自分の帰るべき場所に帰るって、そう言ってた気がする。彼は向こうの世界で死んでしまって、心だけがこの世界に移動してきた、そんな感じみたいだった。気がつけばそうだったから……いまいち分からないんだけど」
「そう……じゃあ、もしまたその方に会えたらお礼を言わないと!」
「お礼?」
「私を、キミと出会わせてくれて、ありがとうって。今、すごく幸せだよって」
「ラクス……」
「ユウヒがどんなに特別な存在でも、私は変わらない。貴方を一人の人として、恋人として……愛してるから」
「オレが、考えすぎなのかな……」
「……うん。きっと」
「漫画やアニメの世界って言っただろ?だから、未来の道筋が見えてるようなもんなんだよ、オレ。その道筋に従わなきゃいけない……そう思ってたんだ。だけど、出会う人たちみんなに心があって、アニメや漫画のキャラクターなんかじゃなくて、心を通わせられて……」
「ユウヒは、どうしたい?」
「それは、彼にも聞かれた。オレは……オレが知ってるこの世界より、もっといい世界にしたい。平和になったこの世界でラクスと一緒に暮らして、くだらないことで笑って、泣いて、喜んで、時には喧嘩して……一緒にゆったりとした時間を過ごしていきたい」
「私も同じ気持ちだから、大丈夫」
ラクスはいつも同じ気持ちをキミに伝えていた。一緒に居たいんだ、と。それだけが彼女が求める世界であり、それが幸せなのだと。キミは小難しく考えすぎて答えを見失っていた。ラクスと平和な世界で幸せに過ごす為には、やるべきことだけは決まっている。これからも戦いは続くのかもしれない。コーディネイターとナチュラルの禍根は消えないのかもしれない。けれど、目指す未来だけは決まっている。争いのない世界を作る。それが決まっているのなら、突き進むだけなのだと。
「……作れるのかな、平和な世界」
「もちろん、私たちなら……きっと!」
「……わかった。オレ、頑張ってみる」
決着がついたから、キミはその場に寝転んだ。
「もう少し眠ってユウヒ。気が付いたとしても、まだ快復したわけじゃないんだから」
「……うん、そうする」
まだ若いはずのキミは、ここ数ヶ月の間に随分と苦い顔をしていたのか、眉間には皺が増えているように思える。ラクスはそんなキミに膝枕をして、優しく頭を撫でる。
「……ラクス」
「ん?」
「愛してる」
「うん、私も、愛してる」
そうしてユウヒはゆっくりと目を閉じて、そのまま寝息を立て始めた。そんな頃。アークエンジェルではザフトによるヘリオポリス襲撃事件からの詳細の聞き取りが行われているようだ。本来の歴史なら軍法会議とも言えるソレだったけれど、事実関係の改竄データをキミが作っていて、ムウが扱えるストライクのOSも準備できていて、あまり大きな問題は起きていない。ムウもユウヒも運良く連合軍の軍人だったからね。原作にあったような『ラミアス艦長の判断ミス』という表現は成されていない。なにせ、キミが合流してからのアークエンジェルの戦績のおよそ8割はキミの功績によるものが大きいからね。そこにはデータの改竄は無い。それほどまでに、ニュータイプとしての能力というのは圧倒的だったんだ。
「しかし、惜しいことをした。アルカナをアレほどまでに操縦し、ほぼ独力で守り続けてきた勇敢な戦士を失ってしまうとは……」
そのデータを受け取った連合軍上層部は、ブルーコスモスのアズラエル理事にユウヒの身柄を受け渡す算段を立てていたみたいだけれど、それは頓挫したみたいだ。結果……あの三人と三機が戦場に出張ってくることはほぼ確定……。ラミアス艦長やムウさんは、ここまでアークエンジェルとストライクを持ち帰った功績として昇進もしているけれど……まぁ、そんなところだ。トールやミリアリア、その他工業カレッジ組ももれなく全員生存。キミは、頑張ったって言っていい。本来の歴史なら守れなかった命を守っている。それは……ザフトのパイロットも含めてね。
オペレーション・スピットブレイク。全軍の配置が完了すると同時。それは奇しくもキラの傷が癒えた頃と同じ時期。そんなタイミングでキミの身体も快復した。アレから何度となくラクスと語り合い、混ざり合ったキミだったけど、もちろん自身が乗り込むはずの新型機も開発を手伝っていて、そんな今日。それが完成した。トゥルーエンド……そう名付けようとしていたキミだったが、ラクスはキミの生き様を見て名付けた『グリント』──と。
「グリント……」
「ユウヒと出会ったあの日の目の輝き……。それが貴方とは別のユウヒのものだったのかもしれないけどね?彼が居たから今のユウヒがあると思うの。ユウヒがもつ、あなただけの輝きを、世界に見せてあげてほしいから……」
「オレだけの輝き……」
当初の予定通り、角がついた細身のシナンジュ・スタインにフリーダムのパーツをミキシングしたかのような外見に仕上がったグリントを見上げているのは、ザフトのパイロットスーツを着込んだキミだ。グリントはキミが現れるや否や、スライドして変身するのであろう装甲の隙間から赤い光を覗かせている。
「久しぶりだな、相棒。……悪いな、随分待たせた。新しい姿はどうだ?」
キミの質問に機体が答えることはない。だが、待ち侘びていた。そう言うかのように一人でに腹部のコックピットハッチが開く。
「……すごい、これがサイコミュの同調……」
「まだまだ分からないことだらけの技術で……相棒がどうしてオレを選んでくれてるのかも、わからない。だけどさ、相棒。お前が居てくれたから、オレは愛する人たちを守ることができた。ありがとう。そして、これからもよろしく頼む」
「ふふっ、もう……大丈夫。だね?」
「ああ、また迎えにくる。だから今はごめん。ラクス、オレは……行くよ」
そう言ってラクスを抱きしめたキミは、一筋の涙を流したラクスの涙を指で掬うように拭い、グラントに向かって飛んだ。
「待ってる!」
そう叫んだラクスに親指を立てて見せて、キミはグリントのコクピットに潜り込んだ。
「……待たせたな相棒。行こう、みんなが待ってる」
キミが乗り込んだグリントのコクピットが閉まると同時、迎えるべき主人を迎えた『アルカナ』は即座にその性能の全てを開放した。サイコフレームの赤い輝きは、キミとの同調を経て翠緑の輝きを放ち始める。
「ユウヒ・コマムラ……ガンダムグリント……行きます!」
普通のモビルスーツが動き出すのとは大きく異なり、翠緑の輝きを纏った黒い装甲のグリントはゆっくりと浮かび上がる。スラスターやバーニアなどの推進剤を使用しない、共振したサイコフレームによる超常的な加速によってグリントは宇宙空間へと飛び出した。
しかし、飛び出したのはプラント本国付近。緊急事態では無いとしても、常に防衛のために数機のモビルスーツが周囲を巡回しており、ザフトのデータベースに存在しない機体が出現したことを認識する。
「行けッ……!」
グリントの両腕部に装備されたシールドにもサイコフレームが組み込まれており、シールド裏面には四発の熱源誘導式ミサイルとビームカノンが装備されている。そんな専用シールドのサイコフレームがキミの意識に反応してオートでグリントの腕から離れていく。
『そこの所属不明機!所属を言え!さもなければ撃墜を……!』
「断る!」
『ええい撃墜だ!すぐに脅威を排除しろ!』
迫る二機のジンがマシンガンを放つがその弾丸は、自在に浮遊して飛び回るシールドに防がれる。流れ弾すらもサイコミュ的な軌道によってふわりと回避される。さらに、シールドビームカノンをジンに向けて発射、ジン二機の頭部を正確に破壊してグリントの腕に自動的に戻ってくる。
「シールドが……!?」
「な、なんなんだ……あの機体は……」
(悪いな、先を急ぐんだ)
そうして、グリントは既存の機体には不可能なほどの速度で地球に向けて飛翔するのだった。