BF世界のヤツが自作ガンプラと転生して、コズミック・イラで生きていく話 作:sakitaro
キミが地球に向けて降下し始めた頃ぐらいの時間帯。キラちゃんはあの時カガリが乗り込んできたものと同じ、通常のフレームに差し替えられたアルカナに乗り込もうとしたところを、アスランに必死に引き止められていた。
「何をやってるんだキラ!」
「離してよアスラン!」
多くの国民は知らないと思うけれど、オーブ国防軍上層部やオーブの議会でもキミがオーブ周辺での戦闘の際にカガリの介入によって死亡した、って話は既に行き渡っているみたいで、キラやアスランはユウヒの想いを一度は受け止めてオーブで平和に暮らしていくつもりだったのだけれど、居ても立っても居られなくなったキラは無断でアルカナを持ち出そうとしてしまう。
「……アラスカにキミがその機体で現れてしまったら、彼の想いはどうなる!その機体は連合軍の秘密裏に開発された機体の中でも最も機密性の高い機体だって彼も言っていただろう!」
「……でも、いまあの船にはムウさんだけしか!」
「ここからアラスカまではそう遠くはない。流石に無事に辿り着いている筈だ」
「……それでも、私……行くよ」
キラは今にも泣き出しそうな表情でアスランにそう伝える。キラの頑固なところは変わっていない。アスランも幼少期からの仲だからこそ、それがよーく分かっていた。
「……分かった。だが、お前一人を行かせるわけにはいかない。俺も一緒に行く」
「えっ?でも、イージスはもう……」
そうキラが心配そうな表情をアスランに向けた時だった。本来民間人である二人がモルゲンレーテのMSデッキに居ること自体マズいのだけれど、それを咎めることもなく、キミや俺の姉……ミヤビが現れる。
「やっぱりそうよね。ユウヒと同じパイロットですもの。あの子がやられたって聞いて、居ても立っても居られない……」
「ミヤビさん!?」
「すみませんミヤビさん!勝手にこんなところまで来て……」
驚くキラと、すぐに頭を下げたアスランの対照的な反応は置いておくとして、ミヤビ姉さんは嬉しいような寂しいような表情を浮かべた。
「ついてきて、二人とも」
アスランの謝罪を受け取ることもなく、姉さんはただそう言ってどこかへ向かって歩いていく。二人は少し顔を見合わせた後、頷いてミヤビ姉さんの後をついていく。
俺やキミは姉さんにたくさんわがままを言ったね。オーブについてから、今後のことをずっと考えた。キミも、俺も。俺たちの世界への介入で、キラやアスランはフリーダムにもジャスティスにも乗ることがないかもしれない。ある種の詰みかもしれない。だから、この二人のために新たな剣を託したいと、俺たちは願ったんだ。それができるのはオーブしか無かった。
「ユウヒから、君たちがどうしても戦いに向かおうとするなら、託してほしいってお願いされてたの。
「これは──!」
「ガン──ダム……?」
俺たちは技術者じゃないから、サイコフレームが無い機体のことは何も分からない。だから、この時点でギリギリ達成可能なレベルまで引き上げられた機体を用意することにしたんだ。
「そう。あなたたちの新しい機体よ」
大きめの音と共にミヤビ姉さんたちがやってきた工場に光が灯る。そこにあったのは二機のガンダムだった。
「まずキラちゃんの機体から。この子はGAT-X111、ストライクA。ストライクをベースにした改修機よ。腰部アーマーシュナイダーはオミット。その代わりにビームサーベルを収納してあるわ。両肩部、両脛外部にサブスラスターの増設や、強化型バッテリーのパワーエクステンダーやフェイズシフト装甲の改良版であるトランスフェイズ装甲の実装ね。詳しい事はまた今後説明するわ。ストライカーパックにはアルカナストライカー。ユウヒのアルカナが使ってたウェイブライダー形態からインスパイアを受けた、高機動型のストライカーパックで、大きめの予備バッテリーと折りたたみ可能な主翼で構成されてるわ。自由に取り外しが可能で、胴体の部分には乗ることができて、グゥルの代わりにできるし、肩から飛び出すように設計したビーム砲もある」
追加で言うなら、脚部スラスターの形状はアカツキをイメージしてもらえると分かりやすいだろう。
リフターとなるアルカナストライカーには折りたたみ式の機首も存在し、パイロットが乗り込む事で戦闘機としての運用も可能だ。エールストライクAで出撃、バッテリー切れの後に戦場でそのままアルカナストライカーに換装……と言う流れが容易となり、リフターに乗ってウェイブライダー同様の大気圏の突入も可能である。
「そして、アスラン君の機体はGAT-X333、イージスAよ。改修部分は肩部の縮小化と、それに加えてサブスラスターの増設ね。それ以外はストライクAと同じね。腰部バインダーもストライクAみたいに一般的な形へ変更。逆に、イージスAにもアルカナストライカーみたいなのをつけてあって、それを頭からかぶって腰を折り曲げるように変形して戦闘機形態になるわ。だから脚部スラスターはストライクAよりも大きめ。その時に邪魔になるから肩部は縮小したの。それ以外はストライクAと同じ。両腕、両足部のサーベルはそのままの形で運用できるわ。アスラン君もその方が慣れてるでしょ?」
イージスはまるでフォビドゥンの先取り+ギャプランの変形と同様の変形機構を取り、戦闘機へと変形してウェイブライダー形態となる。もちろんアルカナストライカー同様大気圏突入が可能だ。脚部スラスターはストライクAよりも大型で、イメージしている形状はガンダムNT-1アレックスの膨らんだ脛部の大型スラスターをイメージして欲しい。
両機ともそれ以外の基礎的な武装には高出力化が施されている以外には外観に変更は無く、これまでの愛機と同じような操縦が可能だね。
「これを……ユウヒさんが?」
「あの人は……なんでこんな事をするぐらい自分のことを考えられなかったんだ……」
「あの子も自分の生き方を変えられない不器用な子だから。いつだって自分より他人。特にここではずーっと自分は要らない存在だって思い続けてきたの。今あの子が生きているのか死んでしまったのかすらわからないけれど……。もし死んでしまったのなら、あなたたち二人があの子の希望なんだからね……?」
ずっと機体を見上げて解説していたミヤビ姉さんはようやく二人の方へと向き直りながらそう話す。自分もこの世界には不純物でしかないと思ったことはあるみたいだけど、キミとは違ってパイロットじゃないしニュータイプ的な能力に恵まれた存在でもない。元々俺たちの姉で技術者で、その身体に憑依しただけだからね。こうしてキミの願いの手助けをしているだけ。そう割り切ってからは楽になったらしい。
「……行こう、アスラン。ユウヒさんが守りたかったもの、私も守りたい……!」
「ああ、俺の悩みを消し去ってくれた彼の……ユウヒの願い、俺たちが叶えるんだ……!」
よかったじゃんユウヒ。だから言っただろ?俺が居なくても大丈夫だって。キミは一人じゃない。こうやってキミを慕ってくれる人たちがいる。キミの願いも苦しみも、一緒に抱きしめてくれる人たちが居るんだ。だから……輝いて欲しい。どんな嵐の中ででもね!
「ストライク・アルカナ。キラ・ヤマト……行きます!」
「イージス・アルカナ。アスラン・ザラ、出るッ!」
ミヤビが持つ秘密工場から出撃する二機の願い。ストライクAから切り離されたアルカナストライカーへと乗って加速するストライクAと、変形して加速していくイージスA。共に速度に大きな差はなく、だけど現存するほとんどの機体を置き去りにするほどの超スピードでアラスカへ向けて飛翔していく。
オペレーション・スピットブレイク。本来ならばパナマ攻略作戦として展開される筈だった作戦だが、パトリック・ザラとラウ・ル・クルーゼの暗躍によってその攻撃目標はアラスカへ。そしてその情報は連合軍側へとクルーゼによってリークされ、アラスカ地下ではサイクロプスが起動する。アラスカ防衛隊は上層部に切り捨てられた舞台やユーラシア連邦の部隊で構成されている……と、そんなシナリオが仕組まれていた。
アークエンジェルもそんな切り捨てられる側の部隊であり、戦場の中で多くのザフトのMSたち相手に、一機のモビルスーツすらない状況下で防衛戦を強いられていた。そこへ駆けつけたムウの駆るエールストライクだったが、飛行能力を持たないストライクではアークエンジェルの護衛につくのが精々であり、本来の歴史ではありえなかった事に、トール・ケーニヒがスカイグラスパーに搭乗し、同じくアークエンジェルの防衛にあたりつつ、現戦闘海域を離脱しようとしていた。しかし、戦況は絶望的だった。
『聞こえるか!こちらアスラン・ザラ。これよりアークエンジェルの援護に入る!』
『こちらキラ・ヤマト!同じく援護に入ります!ミリアリア、トール、みんな無事?!』
そんなところへ駆けつけた二機の新型モビルスーツ。そして、キラとアスランの声。アークエンジェル内のクルーたちや、ストライクのムウ、スカイグラスパーのトールもにわかに喜びの声を上げた。
「粋なことしてくれるじゃねえか、坊主ども!よぉし、活路が見えてきた!このまま撤退だ!キラ、アスラン!このアラスカの地下にはサイクロプスってとんでもない代物が埋まってる!ここから半径10キロが溶鉱炉になっちまうんだ!来てもらったところ悪いが、さっさとここから撤退するぞ!」
ムウの号令に従うように、アークエンジェルやそれについてから艦隊を連れ立って、連合軍は撤退していき、キラのストライクAとアスランのイージスAが先陣を切り、ザフトの部隊を戦闘不能に追い込んでいくものの──
「新型……!?ストライクとイージスだと……?!ユウヒとか言ったか……ようやく出てきたな!」
「ぶっ壊して早々に改修機出してくるなんて、アラスカってのは相当手が早いらしいな……!」
先の戦闘にてユウヒの乗るイージスを撃破したイザークの駆るデュエルと、ディアッカの乗るバスターが現れ、戦場は更に泥沼化の様相を呈して行く。
「イザーク、ディアッカ!お前たちならもうやめろ!」
「アスランだと?!今更何を言っている貴様!」
「ここは囮なんだイザーク!このままここで戦っていては、俺たちはここで全滅することになる!」
「うるさい!裏切り者の言葉など信用するものか!」
かつての仲間に真相を話しても、誰も信じてはくれない。争いは新たな争いを生み、そうして人が生まれるよりも早く人が死に……いつか人は生き絶える。クルーゼが人にもたらしたモノは、もはや手をつけられない程に大きく膨れ上がった。
イザークとディアッカとの戦闘でキラとアスランが惹きつけられている間に、一機のグゥルに乗ったジンがアークエンジェルに迫る。そのマシンガンの銃口がブリッジに向けられる。
「はっ、あ!」
「ッ!やめろ!!やめてくれ!!」
「お願いッ!もう!!」
誰が叫んだか、ブリッジもパニックに陥った。キラやアスランがビームライフルを放とうものなら、ジンを貫通してブリッジが溶けて無くなってしまう。もう、誰にも止められない、アークエンジェルが落ちる。そう思われた時だった──!!
──第三十一話『輝きの剣』
『やらせない。もう』
「え──?」
天から信じられないスピードで落ちてくる二つのシールドがジンに激突。そのままグゥルもろとも墜落して行くジン。アークエンジェルを危機から救った謎の盾はアークエンジェルのブリッジを守るようにその場で浮遊していた。
「シールドが……浮いてる?」
そして、舞うように現れた一機の濃紺のような、黒いような……そんなモビルスーツ。聞き覚えのある声。誰もが生還を願ったひと。
『こちらユウヒ・コマムラ。この放送が聞こえているのならば聞いてくれ。ここアラスカ基地は囮だ。この場で戦う連合軍の兵士たちもろとも、この場でサイクロプスの暴走によって消されてしまう。あなた方には命を粗末にしてほしくはない。頼む、ザフト、連合両軍とも、撤退してくれ』
「ユウヒ、さ──ん?」
『繰り返す──』
その黒い機体が手を広げた時、フェイズシフトによってその漆黒の機体が白く染め上げられ、更にその装甲を開き、ツノが割れ、ガンダムの姿が現れる。その機体からは翠緑の輝きが優しげに溢れている。
「なんだ……あの機体は……!」
「アルカナとかいう……あれに似て……?」
いまだに戦闘をやめない機体を見て、翠緑の輝きを放つグリントに搭乗したユウヒは強く拳を握りしめた。
「ッ──まだ、戦いをやめないというのなら……!行けッ、サイコ・フィン・ファンネル!!」
グリント背部のパックパックに繋がれて翼のようになっていた6枚の板がグリントから分離し、超高速で飛び回りながら争い合うMSの武装だけを的確に狙ってビームを掃射し、破壊して行く。武装を失えば争うこともできず、撤退する。中にはグリントの輝きを見て撤退を選ぶ兵士たちの姿も散見された。
「……アークエンジェルならびに、それに続く連合軍艦隊も撤退を。この場はオレとグリントが引き受ける」
「ふざけるな、ふざけるなァァアアッ!!」
理不尽極まりないその姿を見たイザークがデュエルでグリントに特攻する。
「イザーク?!クッソぉ!」
イザークまでやられる訳にはいかず、ディアッカもバスターで援護を行うが、即座に集結したファンネルが張ったバリアがバスターの援護射撃を弾き、ビームサーベルで切りかからんとするデュエルの一撃も浮遊していたシールドが止める。
「なんなんだ貴様は……!!」
「もう、やめてくれ。イザーク・ジュール。キミなら分かってくれるはずだ……どれだけ争っても、結局何も生まないんだ。個人同士の争いだって、どちらかが許さなければ永遠と続いてしまう。誰かが許すところから始めなきゃならないんだ……」
「誰が……!何を許すというんだ!」
「オレたちが、コーディネイターもナチュラルも、全てを」
「貴様なんぞに、そんな権限が……!」
「オレも家族も友人も、全て奪われた側の人間だ……全員がそうなんだ。アスランも母を失った。キミたちも誰かを失った。みんな、全員だ。でも、誰かが許すところから始めなければ……世界は変わらない……変わることができない」
「ッ──そんなこと!」
「イザーク──撤退だ、どうあれサイクロプスなんてものが暴走しちまったら、ここら一体は電子レンジ状態なんだろ?巻き込まれるのはごめんだぜ」
「クソッ!!ジュール隊!撤退急げぇっ!」
諭されたのかどうかは分からないけれど、キミはなんとか二人を撤退させることに成功し、ひとまずの脅威を退けたため、アークエンジェルならびに連合艦隊の一部も撤退が完了した。グリントの圧倒的な力。まさに神の如き力を手に入れたとも思えるユウヒであっても、神ではない。全ての人を救うことはできない。遠方に見えるサイクロプスの爆発を見て、ユウヒはまた“守れなかった、助けられなかった”と、失った人々を見て涙する。またこうして誰かが誰かを恨んで……。
「……ユウヒさん、帰りましょう」
「キラ……ん、そうだな。帰ろう」
展開されていた装甲が閉じて行き、割れていたツノも閉じる。まるで漆黒のユニコーンのようになったグリントはストライクA、イージスAと共にアークエンジェルへと帰投するのだった。