BF世界のヤツが自作ガンプラと転生して、コズミック・イラで生きていく話 作:sakitaro
オペレーションスピットブレイクとサイクロプスの起動。波乱に波乱を重ねたみたいな状況からなんとか生存できたのは良かったんだけど、ボロボロになってしまったアークエンジェルに帰艦したユウヒ、キラ、アスランの三人。ストライクA、イージスA、グリントの全てほぼ無傷ではあるけど、ムウさんの乗ってたストライクは中破、トールの乗ってたスカイグラスパーもガタガタになってしまった。そして、ボロボロなのはキミも同じだった。
先に帰投したキラとアスランは、整備班となったフレイや戦闘機乗りとなったトール、MS乗りになったムウなど、他のクルーと一緒に君が新しい機体から降りてくるのを待っている。キミはグリントの中でため息のような深呼吸をして気持ちを落ち着かせてからグリントのコクピットを開く。ザフトの赤いパイロットスーツに身を包んでいるキミに妙な違和感を抱くクルーたちだったけれど、無事に戻ってきたことに喜んでいた。キラやフレイに至っては涙すら流す始末。
「心配をかけて、悪かった」
ヘルメットを脱ぎ、長くなった髪と右目の眼帯という、長い年月の経過を思わせる風貌になったユウヒ。真っ先に近づいて行ったのはキラとアスランだった。
「ユウヒさん!よく、無事で──!」
「あの爆発でどうやって……いや、無事でよかった」
「無事──とは言い難いが、そうだな。ああ」
正史では片目の視力を失ったのはバルトフェルドさんだった。この世界ではその役目はキミが担ったかのように、大きな傷が眼帯からはみ出しているのを、クルーたちは目撃するが、誰もそれを気にする素振りはなく、誰もがユウヒの帰還を喜んだのだった。
「地球連合軍第8機動艦隊所属、ユウヒ・コマムラ中尉、帰還致しました。長らく艦を空け、ご心配ご迷惑をさせてしまい、申し訳ございません」
「いいのよユウヒくん。無事に戻ってきてくれただけで満足だから。それに、我々は既に連合軍所属ではないわ。先の作戦でアラスカ防衛の任から離れた時点で任務放棄と見なされ、脱走艦として扱われてしまうのだから……」
未来は分かっていたキミだったけれど、やはり悲痛な面持ちのままでいるクルーたちを見ると、キミも重苦しいきもちにさせられる。だけど俺たちは決めたはずだろう?もっと良い未来にしてみせるって。正史なんて関係ない、俺たちが望んだ未来を掴み取るって。だから、キミはキミの思うままに動いて良いんだ。
「安直に考えるのならば、オーブを頼ると言うのが早いでしょう。しかし脱走艦を匿ったとなれば、オーブ本国が戦いに巻き込まれる可能性もあります。それを良しとしない者たちも居るでしょうし……」
「連合の他の……基地は……」
「ザフトはアラスカの報復を行います。既に作戦が練られているでしょう。オレたちが向かって間に合う確約はできませんし、仮に他の基地を守れたとして連合軍へ復隊出来る可能性も低い。そして狙うは連合の宇宙拠点の弱体化。つまり」
「マスドライバーを待つ……パナマ……」
「しかし、連合もそれだけでは止まらない。オーブへマスドライバーを貸せと言い出す。しかし、表向きは中立を謳う国である以上、連合に味方するような真似をオーブは出来ない──それで起こるのは一つ」
「オーブが……戦場に──!」
俺から得た知識と、キミ自身が持つ高い先見の能力で、ほぼ確約されたこれからの全貌を語るキミ。それを聞いていたクルーたちによってブリッジがざわめき立った。クルーになった少年少女たちは自分の家をオーブに持っている。家族も居る。なんとしてでもオーブを守り抜かなければならない。
「……オーブが危ないなら、行くしか無いでしょ!」
「まぁ、ほぼ確定だろうな。けどよ、この艦で直接向かってオーブが話聞いてくれるもんなのか?こんなもん持ち込んじまったら、それこそ連合の思う壺だろ?脱走艦が逃げ込んだ事は分かっている。引き渡さないのなら侵攻を開始する……ってなもんで、むしろ連合に戦う理由を与えるようなもんじゃないか?」
トールはすぐにでもオーブに行って伝えるべき、ムウさんは慎重に動いた方がいいと暗に示している。そのすべての意見に一定の理解を示しているラミアス艦長も思案顔だ。
「……キラ、アスラン」
そんな時、キミはオーブから駆けつけてきた二人に振り返った。
「お前たちがここに居て、あの機体がここにあると言うことは……姉さんに会ったんだろう?」
キミのその表情は言葉で表現するには難しく、だれもその表情からキミの感情を推し量る事はできなかった。キラもアスランもキミが放つ言葉を黙って待つことしか出来ないでいる。
「今、オーブに違和感なく近づけるのはキミたちだけだ。あの国から出てきてあの国に戻る。単純な話だと思わないか?とは言え、オーブという国にとっては、連合軍人の宣ったただの予測の出来事でしかないが、一考の余地はあるはずだ。カガリにでも伝えてほしい」
「トンボ帰りだな……だが、了解だ、必ず伝えよう」
「わかりました、ユウヒさん」
そうと決まれば!と、言ってるみたいに二人はブリッジから駆け出して行った。随分と仲良くなったよね、あの二人。この調子でキラちゃんのキミへの気持ちも一過性のものとして流れて行ってくれると、キミとしては助かるんだろうなぁ……。でも、二人は特にキミを慕っている。やっぱり嬉しくなるね。
そう、そして、きっと誰もが気になっている俺……は……。そうだね、原作風に言うのなら「俺の想いがきっとキミを守るから」ってところかな。輝ける虹の彼方に今の俺は居る。いままで散って行った人たちの声がいつでも聞こえてくる。
命に貴賤はない。そして、死後の魂にも貴賎はない。むしろ、誰もが声を揃えているよ。
『争い合い、命を落としてからしか気づくことができなかった。誰もがみな……ただ生きていたいだけなんだ』と。しかし、生きる限りそこに欲が生まれ、争いが起き……憎み合う。でも、そうした世の中でも次世代は生まれる、そこに確かに愛はある。だから変えられる、俺がそう思えたのはここに来れたから──
「頼んだぞ、二人とも──」
「にしても、なんだかお前も随分変わっていくよな、明るくなったり暗くなったりお堅くなったり」
「オレもまだまだ若いってことなんだろうな。──この世界は恐ろしいほどに若者が死ぬ。戦って……死んでいく。最初はオレもそう思ってたんだ。軍人になったから、そのうち死ぬ。どうでもいいんだ──って。最初は、の話だぞ」
「どうでもいい……か」
「だけど、アイツが……オレを変えたんだ。生きていることの面白さを教えてくれたのは……アイツだった」
「あいつ?」
キミ……もしかして……?
「みんなには知ってて欲しい。ラクスにも話したことだ、すべてを話す。……元々のオレは当然モビルスーツを操縦したりする技能なんて持っていなかった。だが、元は父がコーディネイターだ。ハーフとは言え、オレも完全なナチュラルとは言えない。それは、もうみんなも知ってる事だと思う。だけど、アルカナを動かせたのはハーフコーディネイターだからじゃなかったんだ」
「どういうこと?そんな、自分の力の根源が、自分に分かっていると言うの……?」
「はい。あの日……ヘリオポリス崩壊に巻き込まれたオレは、アルカナを見つけ出していた。だが、操縦する事ができず、コクピットに潜り込んだまま崩壊に巻き込まれた。一時的な記憶喪失の時期があったことは、艦長や隊長がよく分かってるはず。あの時のオレは記憶喪失なんかじゃなかった。あの時のオレの中に、違う世界で違う人生を生き、死んだ──もう一人のオレの魂みたいなものが宿ってたんだ」
「別世界の自分だぁ?……なんだそのおとぎ話みたいな話は」
「詳細は省かせてもらう。だけど彼がオレを変えたのは確かだ。どこからどこまでが元の自分だったのかも分からないぐらい、気がつけばアルカナは動かせるようになっていたし、今もそれは変わらない。……そして、彼はオレの代わりにもう一度命を落とした。まるでオレの身代わりになるかのように、この体にはオレの魂しか残っていなかった。元々無くて当たり前なのに、今はそれが無い事が、おかしくて」
「ユウヒくん……」
「これからは、以前のオレほど強くないかもしれない。弱音を吐く時だってきっと……ある。今みたいに。だけど……オレはこの世界を、今より少しはマシな世界にしたい。そのためには──」
ほんとうに、キミは真面目だよね。別に言わなくたって良かったのにさ、ありがとう。もう一人の俺。そんなにも大事に想ってくれてたんなら……構わないよ。俺はキミの……いや、お前の力の全てになるよ。
──ユウヒが話している時だった。不意にアークエンジェル内のモニター内の映像が変化する。そこにはまだユウヒ以外の誰も見覚えのないコクピットの座席が映り込んでいた。
「通信回線──?艦内の──グリントから?」
『戦争を止めなきゃだよな、ユウヒ』
聞こえてくるのはノイズ混じりだが、確かに人の声。そしてその声はユウヒにとてもよく似ているものの、ユウヒとは思い難い明るい声色だった。その機体は誰が乗り込むこともしていないのに、明るく輝き、翠緑の粒子が舞っているように見える。
「ッ、もしかして……お前、なのか?」
『俺に残された時間は少ない。だから、俺の全てをこのグリントに残していく。本当は……遠く離れたところで、見守るつもりだったんだけどさ』
「まだ、居てくれたんだな」
『だけど、もう見守ることはできなくなる。その代わり、お前が守るんだ。俺の全てをつかってな!大丈夫、世界は違ってもお前は俺だ。夢の中でも伝えたけど、いい機会だ、ちゃんと伝えておく。……アレは、お前の力だぞ、ユウヒ。がんばれよ』
そう言うと、グリント機体内部の光が消え、アークエンジェルブリッジのモニターが自動的に戻る。
「な、なんだったんだ……?」
「あの声が……もう一人のユウヒくんの声……?」
「あんな、ほとんど心霊現象じゃないですか!?」
「……だが、オレの話が真実だと、おそらく証明された。いつか誰もが未来で辿り着く存在……ニュータイプ。人はいつか肉体という枷から解き放たれる日が訪れる。さっきの……アイツみたいに」
「はーあ、恐ろしい話だぜ。だが、戦争を止めなきゃならんのは当然だ。しかし、問題はそれをどうすりゃいいかってところなんだが……」
「元凶はハッキリしてる。だが、それを討てば止まるとか、そんなものでもない。一度放たれた弾丸は抵抗のない場所では止まらないように……抵抗、そう。オレたちは抵抗するんだ、戦争という行為そのものに。連合、ザフト両軍の戦争行為に介入し、強制的に止める」
──戦争という行為を止められた世界で行われた、まさに蛮行とすら呼べるソレをユウヒは思いつき、行おうと発言した。だが、それを行うためには変革が起きなければならない。あの世界で起きたように、この世界にも変革者が必要だった。そして、今この世界において完成されつつあるのは……君だけだろう。ユウヒ──
「おいおいおいおい!!マジで言ってんのかユウヒ!!そりゃ、世界を敵に回すって事だぞ!!」
「分かっています。だから、これはオレ一人の決断です。誰に理解されなくても、戦争行為が自身にとって損害となるのなら、それを起こそうとする人は減る。オレはその楔になります」
「正気かユウヒ!おまえは人間なんだぞ!世界のシステムそのものになるつもりなのか!?ニュータイプ……つったか?!それは、本当にそんなモンなのか!?」
「わかりません……だけど、その戦いの中で答えが見つかるはずです」
「……っ、フラガ少佐、コマムラ中尉、その話はまた後ほどで。……いまここでどれだけ話し合っても、決まることではないと思うわ」
ラミアス艦長の鶴の一声によって、一時中断となったアークエンジェルの今後についての会議……とも呼べないアクシデントの連続。ひとまずはザフト連合両軍から身を隠し、少しずつでも艦の修理を継続しつつ、キラとアスランの帰りを待つ……ということになったのだった。