※この作品はR-18です。

これもリコリスのお仕事です   作:黒ゴマアザラシ

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リコリコ最新話を見たその日にこれを投稿する自分がとち狂っているのか


リコリコ最新話を見たからとち狂ってこれを投稿するのかわからなくなってきました


ちさとの隠し事 前編

「たきな~、5番テーブルの片付けお願い」

「はーい!」

レジからミズキさんの声にはっきりとした返事で答え、指示されたテーブルに置かれている皿やカップの片付けを始めた。

時刻は午後のピークを過ぎて客足が落ち着いてきた頃。この作業にも慣れてきたところだ。

四月の事件以降、私が喫茶リコリコに配属することになって早4ヶ月が経っていた。

闇取引の現場を写してしまった佐保里さんを武装集団から保護したこと。クルミがリコリコにやってきたこと。それとDA本部での一悶着に、松下さんの東京観光。リコリスとしてでは無く普通の女の子として出かけることもした。

言葉にしてみるとずいぶん淡白に聞こえるけど、実際はもっと色んなことがあって大変だった。

ここに来たばかりの頃は一刻も早く成果を上げて本部に戻ることばかり考えていたけれど、今は少し違う。

今は次に進むとき。

あの場所で言われたちさとの言葉。

まだ自分がどうしたいのかちゃんと決まってはいないけれど、今はここにいるみんなとの日々を過ごしていたい。

そう言えるくらいには自分もリコリコに馴染んできたという自覚があった。

だが一つだけ妙なことがある。

それはと言うと……

 

「それじゃあ、ちさとさん行ってきまーす」

 

いつもの調子いい声が響いてくる。

その声の主は聞くまでも無い。ちさとだ。

 

彼女も私と同じリコリス。指令からも最強のリコリスと謳われている彼女はリコリスなのに相手を殺さない変わった主義を持っている。

そのくせ、つかみ所の無い性格や態度にはイラっとさせられることも多いのだが、なぜか憎めない不思議な存在でもある。

まだ営業時間中だというのにちさとは店を飛び出していった。

「はぁ……ちさとのヤツ、またどっか行ってるし……」

その様子を尻目にテーブルを片付けているとミズキさんがため息交じりの愚痴をこぼしている。

「また警察署とかに向かったんじゃないんですか?」

ちさとがこの時間帯に店を飛び出すのは珍しいことではない。

警察署にヤクザの事務所、日本語学校に保育所などエトセトラ。

リコリスとして、困った人を助けるという謳い文句でちさとは色んなところに出歩く。

「ん~その辺りとかなら昨日行ってきたって話してたんだよね」

「え?そうなんですか?」

ミズキさんの話によると、ちさとはこの時間帯になると頻繁に外出するらしい。

しかし、その行き先に関しては一切口を割らないそうだ。

聞いても個人的にリコリスの依頼を受けてるだけとしか答えないのだそう。確かに、ちさとの言う通り『個人的な依頼』であればリコリスである彼女が口外しないのも納得できる。

ただ、気になる点もある。

「なんだろうね、もしかして……男と会ってたりして」

冗談めいた口調で言い始めたと思うと、その表情が殺意に満ち始めていき、眼鏡が光で反射して瞳が見えなくなっていく。

「わったしを差し置いて仕事中に男と乳繰りあってるとかだったらマジで許せないわ! なんで私にはそういう相手がいないのよぉ!!」

そしていきなりキレ始める始末。

普段から落ち着きのあるミズキさんだけど、時折こうやって情緒不安定になることがある。経験上、男性絡みになるといつもこうだ。

ハッキリ言って手に負えなくなるから勘弁して欲しいのに。

「お、落ち着いてくださいミズキさん」

「これが落ち着けるかぁ!!」

なんとか宥めようとするものの逆効果にしかならず、ミズキさんのボルテージはさらに上がっていく一方だ。

客足が落ち着いているとはいえ、店の中で騒ぐわけにもいかない。それにこれ以上ヒートアップすると厨房にいるミカさんが出てくる可能性もある。

「なぁにやってんだぁ」

と、予想外の声が出てきた。

「クルミ……」

店の奥から出てきたのはミズキさんや私よりもずっと背の小さい女の子。金髪ロングに緩やかなパーマがかかった髪型に、大きな耳がついたカチューシャが特徴的で、いつも眠たげな目をしている。

一見するとただの子供のように見えるが、その正体はインターネットの黎明期から活躍する最強のハッカー『ウォールナット』。

故あって暗殺されかかっていたところを私達に護衛を依頼し、今は喫茶リコリコで居候として生活している。

「うっさいぞ~ミズキぃ。押し入れまで聞こえてきて集中できないよ」

「アンタはアンタで仕事しなさいよぉ!!」

クルミの言葉はミズキさんを鎮火させるどころかさらに燃え上がらせてしまったようだ。

「しかし、ちさとのことは気になるな。ホントに男と会ってたりして」

しかしクルミ自身はどこ吹く風。

いつもみたいにつまみ食いするようすで私達の話題に入ってくる。

それは当初の疑問だったちさとのこと。ちさとは一体どこに行っているのか。

ミズキさんもそれは気にしていたようで、私達は顔を見合わせるとそのまま首を傾げた。

尾行するにしても、ちさとに勘づかれないようにするのは私でも至難の業だ。どうしたものかと考えていると……

「おいおいお前達、僕を誰だと思ってるんだ?」

視界を下に降ろすと得意げな表情を浮かべているクルミが目に入る。

 

「あー、そっか。そういえばあんたが適任ね」

「ふふん」

ミズキさんが思い出したかのように呟くと、彼女は鼻高々といった様子だ。

私もすぐに合点がいく。

まだ営業時間だが、私達は店の奥に引っ込んでいった。

 

そこはクルミがここに過ごすようになっていつのまにか改造されていた押し入れの中。

ここに過ごすようになってまだ間もない私ですら、ここにあったのは布団などをしまう収納スペースだと認識していたのに今やクルミが持ち込んだパソコン機器が所狭しと並べられている。

「ちさとの位置情報はっと……お、でてきた」

押し入れの壁に取り付けられた一番大きなディスプレイに地図が表示され、その上を青いピンが動いている。

「ちさとはここから北の方に向かっている。多分駅に向かおうとしているんじゃないかな」

「アンタ、いつの間にこんなもの仕込んだのよ……」

ミズキさんが呆れたような声を出すが、それも無理は無い。

私も初めて見たときは驚いたものだ。

「この間の護衛事件の時にな。ちさとのヤツが発信器をそのままにしてたんだよ」

「ちさとはこういうのずぼらですからね」

「そういうことだ」

「ちょっと待って。それじゃああの子、電車に乗ってどこかに行くつもりなのよ?」

「そうなりますね……」

「アイツ、本当に何やってるんだろうな」

「全く、仕事さぼって何してんだか!」

ちさとの行き先が分かったところでミズキさんは怒りを露わにする。

今こうしている私達も仕事をサボっているのだが、そのことに関しては誰も突っ込まない。

「さて、後はどうするか。ドローンはちさとにバレるかもしれないからなぁ」

「そりゃあ、あとはたきなに任せるしか無いでしょ」

「え? 私ですか?」

「そうよ。他に誰がいるのよ」

突然の指名に驚く。

「こういうのはアンタの仕事でしょ? 私やクルミはそもそもそういうの向かないし」

「いやまぁ、確かにそうかもしれませんけど……」

ただ、この話の流れでは私はここで待機ということになりそうだ。

仕事中なのにいいのだろうかと迷う反面、ちさとの行く先に対する好奇心もある。

……仕方が無いですね。

少し考えた後、私は決断を下した。

 

「わかりました」

 

制服に着替えてお店を出る頃には、ちさとの位置情報はあるポイントから動かなくなった。

地図アプリで見ても大した情報がないただのマンションのようだ。

ちさとと街を歩くのは何度かあったが、一人で出かけることはあまり無かった。

だから、彼女が普段どんな生活をしているのか気になっていたのもあって、今回の件は丁度良い機会だったのだろう。

それに、私はまだちさとのことをほとんど知らない。

なんで人を殺さないようになったのか。

電波塔でなにがあったのか。

 

ちさとの機械心臓とは一体なんなのか。

そしてその心臓を移植してくれたのはだれなのか。

普段飄々としている彼女だが、肝心な部分を語らないのが私としては歯痒かった。

そんなことを考えながら端末に記された位置情報

を頼りに歩いていくと、やがて目的地が見えてくる。

そこは本当に普通のマンションだった。いや、普通というには少し古びているかもしれない。

「ここ……か」

端末から送られてくる位置情報に変かはない。つまりちさとはこのマンションの中にいるということだ。

マンションのロビーには管理人室があるだけで他には特に目立ったものは無く、入り口はオートロックも施されていないようだった。これならすぐにでも中に入ることができる。

「よし」

意を決して、私はエントランスへと足を踏み入れた。

エレベーターを使って三階へ上がると、廊下を進んで目的の部屋の前までやってきた。

「……」

普通に考えればチャイムの一つでも鳴らすのが礼儀なのかもしれないが、自分の胸中には得も言われぬ好奇心があった。

ミズキさん達にも話していない秘密が、この部屋にあるというのか。

もしかしてちさとの心臓のことになにか関係があるんじゃないのか。

そう考えると、不思議とドアノブに手が触れた。

何の変哲も無いそれは、妙な仕掛けが無いというのが一目でわかる。

「…開いてる?」

しかし、ドアを開けてみるとそれは勘違いであったことがわかった。

鍵はかかっていない。

そのままゆっくりと扉を開くと、そこには誰もいなかった。

「……?」

玄関から覗く風景を見渡すと廊下の奥に部屋が一つ。ワンルームで扉は閉じられたまま。

廊下は汚くはないけれど定期的に掃除もされてもいな。良くも悪くも生活感が感じられる。

その証拠に、奥の部屋からは人の気配がする。それも二人。

端末の位置情報から考えると、そこにいるのはちさとともう一人。

この部屋の家主だろうか。

そしてちさとはどうしてそこにいるのだろうか。

息を殺して靴を脱ぎ、そっと部屋に上がり込む。

同時に太ももに忍ばせてある銃に手をかけることを忘れない。

忍び足で進む私を咎める者はおらず、そのまま奥に足を進める。

部屋の扉までの距離が随分と長く感じる。この程度の間合いなら、外さない自信があるはずの距離。

それを埋めるのがどうしてか難しい。

「……っ」

ドアまで半分ほどに差し掛かったときにようやく気がついた。

奥から音がすることに。

周期的に何かが動く音。

それがどういうモノかは分からないが、普段の生活からは決して発せられないような異質な物だということだけは分かる。

まさかちさとは何かの事件に巻き込まれてる?

そう思うと居ても立ってもいられず、私は一気に駆け出した。

すぐにドアノブに手をかけて扉を開いた。

「ちさと! 大丈夫ですか!?」

銃を突きつけながらバンッと勢いよく開けた先には、私の想像だにしない光景が広がっていた。

 

「え?」

思わず声が出る。

目の前に広がるのはベッドの上で抱き合う男女の姿。

女の方はちさとで、男の方が恐らくこの部屋の家主なのだろう。

それだけならばまだ良かった。

問題はその二人が裸で絡み合っているということ。

しかも男の方は女の背中から手を回してしっかりと抱きしめている。

「え…たきな? な…なんでここに……」

あまりの勢いで飛び出してしまったせいか、こちらに気がついたちさとの顔は驚いたと言うより引きつった表情を浮かべていた。

おそらくだけど、自分の顔も彼女の同じように引きつった顔であっただろう。

「な……なに、してるんですか?」

 

右手に持っていた銃が、ゴトリと床に落ちた。

 

●

 

「……」

「……」

「……」

沈黙が流れる。

私は今、何をしているんだろう。

何をしているかを言葉で表すと、先ほどまで裸で抱き合っていた二人に服を着るよう催促し、そのまま床に正座させている。私は2人に向かい合うように座っているのだが自分でも未だにこの状況が飲み込めていない。

とにかく事情を2人から聞かないことにはどうしようもないと、まずは話をしようと口を開きかけたところでちさとがそれを遮るように話し出す。

「あのね、たきな。その……なんていうかこれもリコリスの仕事っていうか…困ってる人を助ける仕事……みたいな感じというか」

「もうそれただの売春じゃないですか」

「うぐっ……!」

図星だったのかちさとは黙り込んでしまう。

その横では、この部屋の主である男性が苦笑いをしていた。

その男性は決して若くは無い。年齢的にはミカさんより少し年下くらいだろうか。全体的にふくよかでお世辞にも整った顔つきとは言えないが、どこか人の良さそうな印象を受ける。

「えっと…確か井上―」

「たきなで結構です」

「じゃ…・・じゃあたきなちゃんで」

目に見えて挙動不審になっているのはちさとと同じ理由だろう。でも問題はどうして彼がちさととあんなことをしていたのかだ。

「あーたきな。この人、前にお店に来た時に紹介したでしょ? それで――」

「それはいいです。いつもお店に来てくれる人ですよね」

「んぐぅ……」

ちさとの説明をぴしゃりとシャットアウトすると、彼女は苦虫を噛みしめた表情をしながら押し黙ってしまう。

だけど、確かにこの方には見覚えがある。確かになんどかリコリコにコーヒーを飲みに来てくれた人だ。

ちさとはいつも色んなお客さんと親しげに振る舞っているから印象に薄かった。なるほど、お互い見ず知らず相手じゃ無いのか。

でもそれはそれで別の問題が浮上してくる。

「あの、ちさとはもしかして他のお客さんともそういうことしてるんですか」

「し…してないしてない! そんなことするわけないじゃん!!」

「本当ですか?」

「そうだよ……」

「本当に?」

「ホント!!」

目を><という形にしながら賢明に訴えてくる千束を見てとりあえず安心する。

まだちさととはそこまで長い付き合いじゃないけれど、彼女は隠し事はしてもウソはつかない性格だ。だから、それはきっと本当のことなんだと思う。

ちさとが男の人とちゃんと同意の上でやっているなら今の疑問は払拭されたといってもいい。

だけど、当初の疑問がまだ定まっていない。

「……なら、このことはミカさん達、他のリコリコの皆は知ってるんですか?」

「それは……その…」

ちさとは目を泳がせながら言い淀む。

「話してるんですか?」

「えっと……」

「話してない?」

「…………はい」

「はぁ」

縮こまりながら白状するちさとに思わずため息が出てしまう。

当然だ。こんなことが知れ渡れば良識のあるミカさんや、男性に対して敏感なミズキさんが黙っているわけがない。

現に前の下着騒動で大騒ぎになったのだから。私だっていきなりミズキさんにスカートの中を見られて恥ずかしかったというのに。

「あの……たきな? もしかして怒ってる?」

「それは何についてですか?」

「えっと……それは……」

「少なくとも、この人とちさとが2人で何をしていても私に怒る権利はないので怒ってはいません」

「っ…なら――」

ただしと、露骨に目を輝かせるちさとを遮るように私は続けた。

「リコリコの皆が働いている間、自分はお店を抜け出してこんなことをしていることには怒っています」

「うぅ……っ」

普段から仕事中なのにお客さんと立ち話することはよくあったが、今回のはどう見ても度が過ぎている。

「ごめんなさい……」

しゅんと項垂れるちさとを見て、流石にこれ以上責めるのは可哀想だと思い私は矛先を男の方に向けた。

「あなたも、どうしてちさとを止めなかったんですか」

「そ、それは……」

男は視線を逸らしながら、何かを言いかけるがすぐに口を閉ざしてしまう。どうも煮えきらない態度に、段々と腹が立ってきた。

「こういうのは、ちゃんとした大人である貴方が止めるべきじゃないですか」

「た、たきな…おじさんは悪くなくてね」

「ちさとは黙っていてください!」

「っ……はい」

ちさとを一喝すると、私は再度彼に詰め寄る。

「とにかく、今後はこういうことはないよう努めてください。出来ない場合は……」

「出来ない場合は?」

「貴方には出禁にしてもらうようミカさんに伝えておきます。ちさとにも金輪際関わることは許しません」

「な……ッ!?」

彼は目を大きく見開き、絶句する。

厳しすぎるかも知れないが当然の措置だ。現にミズキさんやクルミも不審がっている。遅かれ速かれこうなっていただろうし、寧ろ私が見つけられてよかった。

「わ、わかった。気をつけるようにする」

「ちょっとたきな、いくらなんでもやりすぎじゃない?」

「それはちさとが言えた立場ですか?」

「っ……でもさぁ……」

尚も食い下がろうとするちさとに段々苛立って来た。

普段は明るい彼女がここまで必死になっているのは珍しい。だけど、それと同じくらいにやりきれない。

この2人、やっぱりそういう付き合いをしているのかと思うと、どうしてもモヤモヤした気持ちになってしまう。

特になんでちさとがこの人に執着しているのかわからない。確かに悪い人ではないけど……。

いや、そもそもちさととあんなことしてる時点で共犯者だ。

「……」

「?」

急にちさとの様子が変わった。

さっきまで苦し紛れの言い訳を繰り出したりしてごねてばかりだったのに、俯いて黙り込んでしまったのだ。

そのせいで顔が見えない。床を見ているその顔が、苦悶に歪んでいるのか、それとも何か企んでいるしたり顔なのか見当が付かない。

そのせいで顔が見えない。床を見ているその顔が、苦悶に苦悶に歪んでいるのか、それとも何か企んでいるしたり顔なのか見当が付かない。ちさとの心中を推し量ることができずにいた私は、彼女から目を離せないでいた。

 

「……たきな」

「はい?」

「ごめんね」

「え?」

――だからこそ、ちさとの動きに反応するのに遅れてしまった。

ちさとは突然立ち上がると私の手を掴んで引っ張った。不意打ちだったこともあって踏ん張りきれずバランスを崩す。

そしてそのまま押し倒される形でソファに仰向けになってしまった。私が両手を押さえられ身動きが取れなくなるのを確認すると、後ろを向いて声を上げる。

「おじさん! おじさんも手伝って!」

「えぇ!?」

先ほどまでほとんど空気扱いだったせいか、彼も異様に驚いているがそんなのお構いなしに私の上に跨がるちさと。

一体何をするつもりなのだろうか? 全く予想ができない状況に頭が混乱する。その間にも彼女の行動はエスカレートしていく。

「ち、ちさと?」

「大丈夫、私に任せて」

「任せてって……何を――」

「こーなったらたきなにも共犯になっちゃえ!」

「……は…はぁ!?」











というわけで、次回から井上たきなのタグが追加されます。
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