「これ良くない?」
「いい感じ。すごく似合ってる」
「えへへ~、六花にも似合うの選んであげるね? あ、これなんてどうかな?」
「え、それ? う~ん、私に似合うかな……」
店内の棚に置かれていたアクセサリーを手にし、身に着けてお互いに似合うものを見繕っているアカネと六花。花が咲くようなという表現が良く似合う、何とも穢しがたい美少女たちの日常風景だ。
俺はそれを、ソファーに座ってぼうっとしながら眺めていた。
今日は朝から映画館に行って、その後二人と街をぶらついていた。まだ午前中だというのに既にいろいろな場所に連れ回され、若干の疲労を感じている。体力的には全く問題ないはずなのに、精神のほうが音を上げている。
そんな俺に対して、二人は元気いっぱいだ。買い物における女子の熱量というものは物凄い。普段よりもテンションが高めで、財布の紐も緩んでいる。こんなに買ってお小遣いは大丈夫なのかと思えるほどに、俺の傍らには二人が購入した洋服などを収めた紙袋がズラリと置かれている。
二人の恋人として荷物持ちを買って出た俺だったが、そろそろ重量に負けそうだ。
「ねえねえ。これとこれ、どっちが六花に似合うと思う?」
「どっちも私には可愛すぎると思うんだけどなぁ……」
アクセサリーを手にしたアカネと、ちょっと恥ずかしそうな六花がこっちにやって来た。
白ブラウスにカーディガンを羽織り、スカートと黒ストッキングを着用したアカネ。
Tシャツの上に青いパーカーを着て、黒いスカートを穿いた六花。
清楚系な服装のアカネと、スポーティーなスタイルの六花。学校で見掛ける制服姿の二人とはガラリと印象が変わる。二人と一緒に過ごすようになったばかりだけど、二人のいろいろな一面を見ることができる。
二人との初めてのデート。こんな体験ができる俺はすごく恵まれているのだろう。
それを思うと、この疲労感も吹き飛びそうで。
「おーい、聞いてるー?」
「疲れちゃった? ごめんね、連れ回しちゃって」
「だ、大丈夫……」
アカネと六花に指で両方の頬を軽く突かれながら、心が癒される。とびっきりの美少女たちとの触れ合いのおかげで見る見る疲労が発散されていく。同時に体の一部分が反応してしまいそうになって、それを抑えるのが大変だった。
買い物を終えて、アクセサリーショップを出た俺たち。
両肩から紙袋を下げてしばらく二人と並んで歩いていると、何やら視線を感じるようになった。昼の時間帯になってきて人が増えたからなのかと最初は思ったのだが、そうでないことが途中からわかった。
擦れ違う人たちから向けられるのは、こちらを睨み据えるかのような鋭い眼差し。または、悔しがるような表情。いずれも、男たちからのものだった。何故? と考えてからようやく、俺の中で原因が明らかになった。
荷物の一部を片手に持って、俺と手を繋いでくる六花とアカネ。普通の繋ぎ方ではなく指と指を絡める恋人繋ぎだ。白昼堂々、二人の美少女を侍らせて往来を歩く。客観的に見れば男が羨む立場にいるのは当然であり、その事実に途中で気づいてからではあまりにも判断が遅すぎた。
「駄目だよ? 手、離しちゃ」
「そうそう。危ないからね」
二人は最初からわかっていたようだ。周りの人たちに見せつけるために、繋いだ手を離してくれない。それどころかより一層密着しようと、ぎゅっと握る手を強くしてくる。俺の手はとっくに手汗に塗れているというのに、さして気にすることもなく、細く、小さく、滑らかな手の感触を伝えてくる。
「あの、そろそろ……」
「だーめ」
「お店に入るまでは我慢して?」
と、俺の顔を覗き込みながら楽しげに言う二人を見ていると、手を振り解くことなどできるはずがない。俺はただされるがまま、二人に両手を委ね、引っ張られるように歩く。
他の人に見られるのはもういいけど、せめて、学校の知り合いに見られませんように。
などと考えながら、俺は二人に店へと連れていかれた。
「はぁ……」
お昼時でごった返すファミリーレストランで、席に腰を落ち着けてため息を吐く。
手を繋いでいるまでは良かったけど、途中でさらに悪乗りした二人に腕に抱き着かれてからは、さすがに冷や冷やした。自宅でイチャイチャするのにもまだ完全に慣れていないのに、人前でなんてハードルが高すぎる。
俺はたぶん、駅で堂々とイチャイチャするような人にはなれないだろうな。
「お待たせ」
「はい。オレンジジュース」
「ありがとう……」
ドリンクバーで飲み物を取ってきて対面の席に座った二人に感謝し、ストローを咥えてオレンジジュースを飲み始める。オレンジのちょうどいい酸味と甘みが口の中に広がって、喉を潤してくれる。
ほっと息をつき、段々と心が落ち着いてくる。
余裕を取り戻してから、俺が二人を責めるようにジッと見つめると、六花は逃れるようにそっぽを向いてジュースを飲み始めた。アカネは俺から視線を逸らすことなく、にっこりと頬んだまま両手で頬杖を突いていた。
「ごめんって。いい加減機嫌直してよ」
「ぅ……」
仕方なく俺のほうから目線を横に外そうとしたとき、股間に何かが触れた。
靴を脱いだアカネが、靴下で包まれた足で俺の股間を撫でてきた。すりすりとズボンの上から肉棒の輪郭を辿るように。足で触られた経験というのはまだ少なくて、新しい刺激に股間が震えてしまう。
「ちょっと……」
後ろにも横にも、テーブル席には他の客がいる。そんな中、覗き込めば一発で丸わかりの愛撫をされている。さすがに止めたほうがいいと思って声を掛けるが、アカネは苛めるのを楽しむような嗜虐的な笑みを向けた。
「君だって、私と六花に抱き着かれて喜んでたでしょ? 腕におっぱいを押しつけられて勃起しちゃったんだよね? だから、もうこんなに硬くなってる」
「それは……」
「へえ、そうなんだ」
「り、六花……!」
たった今まで他所を向いていた六花が、攻め時と見るや否やアカネに加担してきた。左からアカネの足が、右から六花の足が伸びてきて、俺のズボンを這い回る。足で擦るのがそんなに楽しいものなのか、肉竿が軽く踏みつけられるような状態で二人の足の指でぐりぐりと弄り回される。
「まずいって……」
「大丈夫だよ。誰も見ないって」
六花はそう言うが、前後の席はともかく、隣のテーブル席にいる家族連れの客が横を向けば、見えてしまうはず。小さな子供の世話で手一杯になっているためか、母親と思われる女性はこちらに背を向けたまましばらく振り向くことはなさそうだが。
「お待たせいたしました」
不安に思っていたとき、注文していた料理を店員さんが運んできた。
大学生くらいの、華やかな雰囲気をした女の人。料理が盛られた皿をテーブルに並べながら俺へと笑いかけてくる。客に対する笑みにしては妙に熱っぽく、じっとりとしたそれを不思議に思っていると、向かいの席で途端にムッとした様子の六花が親指で股間を強く圧迫してきた。
「ひっ……」
「どうかされましたか?」
「い、いえ、なんでも……」
「そうですか。何かございましたら、遠慮なくお声がけください」
柔らかく微笑んで一礼してから、店員さんは席から離れた。
「へぇ~……。何だか嬉しそうだったね……」
いつもと比べてかなりトーンの低い声が聞こえてきた。アカネの声だ。その声に合わせて、六花と一緒に俺の股間に足の体重を預けてくる。怒っているようだ。理由はわかるけど、別に嬉しそうにしてはいないし、今のは俺に何の比もないと思う。
「年上の女性に色目使われて、良かったね……」
六花もぎこちない笑顔のまま、アカネ共々俺の股間を攻めてくる。多少乱暴に足でズリズリと擦られ、内側で肉棒がビクンッと跳ねている。硬く大きくなっていくせいでズボンが膨れ、余計に二人の足攻めが苛烈さを増していく。
「アカネ、そろそろ食べよう?」
「そうだね。ほら、君も。食べないと冷めちゃうよ?」
「このまま……?」
問いかけるが、二人はただ笑うだけで何も答えてくれなかった。
食事中、隙あらば肉棒や太股を足で撫でられて、いつ他の人にバレるかと思っていると気が気でなかった。美味しそうなパスタも全然味がせず、さっきまでと比較にならないくらい落ち着かない昼食となった。
「ありがとうございました」
結局大して味わえないまま昼食の時間が過ぎ、お会計をして店を出た。レジの対応をしてくれたのはさっきの店員さんで、帰り際に紙切れを貰った。よくわからないまま店を出てから紙を開くと、中には連絡先とともに、一文が添えてあった。
『その子たちに飽きたら、お姉さんに連絡して? 可愛がってあ』
「はい没収」
全部読む前に、にこにこ笑顔のアカネに取り上げられてしまった。その笑顔のあまりの迫力に俺は何も言うことができず、店に来たときと同じように二人に両腕を拘束されたまま、人の多い街中を歩かされるのだった。
「そろそろ買い物も終わりにしようか」
それから二時間経った頃、アカネがそう切り出した。
これでデートも終わり。そう思うと何だか寂しくなるのが不思議だ。結局、二人に振り回されているように思えて、俺は俺でしっかり楽しんでいた。デートが終わったばかりだというのに、また次のデートをしたいと思えてくる。
「それじゃあ、本日最後の目的地に行きますか」
「はーい」
アカネの言葉を聞いて、俺は首を傾げた。買い物以外にまだ行きたい場所があったのか? それに六花が同意しているということは、六花も知っている場所なのか。俺だけが聞かされていないのだが、いったいどこに連れていかれるのだろうか。
そんな俺の疑問は、もはや当たり前のように二人に牽引されて連れていかれた場所で明らかになった。
「……え」
思わず呟く俺。見上げた視線の先には城があった。
いや、正確には城ではなく、城を模した大きな建造物。学生として普通に生活している限りでは、たぶん目にする機会は殆どないはず。それが今、俺の正面に堂々と佇んでいて、普通の建物からは感じられない妖しい雰囲気を漂わせていた。
入口付近に、休憩時間と料金が書かれた看板が立つその建物。
どう見ても、ラブホテルだった。
「いやいや」
未成年でラブホテルは駄目だろ。
そう思って左右の二人の顔を何度も見遣るが、二人によるエスコートは淀みない。
「本当に入るつもり!? 大人向けの場所だけど!」
「大丈夫大丈夫。今は制服姿じゃないし、堂々としていれば」
「最近は割とラブホテルを普段使いしてる子も多いよ。女子会とかで」
アカネに続いて、六花も俺を説得してくる。
「それに、ちゃんと調べて自動精算機で支払いができるラブホを選んだから。部屋から出るときに機械で精算を済ませる感じで、普通にしてればスタッフと顔を合わせることもないし、何も心配しなくていいよ」
「なるほど……」
アカネに言われ、それなら未成年だとバレることもないかと納得する。
それでも世間一般のルールを破っている事実は変わらない。こういうとき、真面目に考えてしまう自分が正しいのか、それとも少しくらい融通を利かせるべきなのか。
「疲れたから早く部屋で休憩しよ?」
「賛成。はいはい、入りましょうねー」
立ち止まって悩む俺を、六花とアカネは気にせずに引っ張っていく。
ここまで来て俺に決定権はなく、俺は美少女二人と一緒に初めてのラブホ入りを果たすのだった。