※この作品はR-18です。

愛育   作:早見 彼方

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第9話

 隅々まで掃除が行き届いていて、清潔感のある広々とした空間。部屋の奥に置かれたダブルベッドも綺麗で、ふかふかとしていて寝心地が良さそうだ。恐る恐る端に座ってみると、沈みながらも俺の尻を受け止めてくれた。

 

「おぉっ……」

 

 体を動かすたびに反発してくるベッドのスプリングをしばらく楽しんでいた俺だったが、徐々に冷静になってくる。そうなるとやはり周りに視線を向けてしまい、普通のホテルにはない空気感に呑まれてしまう。

 

 ちょっとだけ薄暗いと感じる照明。そこに照らされる部屋の内装はピンク色を基調としていた。可愛らしいというよりは、妖しい。ただ眠るだけの空間ではなく、楽しむための空間というのがひしひしと伝わってくる。

 

「これが、ラブホ……」

 

 生で見るのは初めてだった。未成年だから当たり前だけど。

 

 まさか、この年でラブホに入ることになるとは思わなかった。いつかは利用したいとは思っていたけど、こんなにも早くこの空気感を経験するだなんて。昨日までの俺は想像もしていなかった。

 

「ちょっと落ち着こう……」

 

 無駄に緊張している気がする。

 

 軽く深呼吸し、気分転換でもしようと、俺はベッドの正面にあったテレビに目を向けた。

 

「リモコンは……あった」

 

 枕元にあったリモコンを手に取る。

 

 まだ時間に余裕はあるはず。六花とアカネは今、準備をしている最中だろうから。それまでの間テレビでも見ていようと、俺はリモコンのボタンを押し、テレビの電源を全く警戒なく点けた。

 

 ニュースでもバラエティでも何でもいい。普通の番組を見て日常を取り戻そう。

 

 そう思った俺だったが、直後に後悔した。

 

『んぁっ、あぁあっ、そこ、んっ、気持ち良いっ……! はぁっ、んぁあっ!?』

 

 流れたのは、アダルトビデオだった。

 

 絡み合う男と女。互いの身を包むものはなく、素肌を密着させている。ベッドに腰掛ける男に跨って、正面から抱き着く女が腰を振るたびに、激しく尻が揺れる。それに合わせて秘所から男の肉棒が出入りし、深いところを突かれた女が喘ぎ声を上げる。

 

 テレビの設定のせいか、やけに大音量で。

 

 この可能性は、考えていなかった。いや、もしかするとは思っていたけど。

 

「うわ……」

 

 落ち着くどころの話ではなくなった。目の前で流れる映像を目にして、体がその気になってしまう。抑えていたムラムラが湧き上がってくる。早くテレビを消せばいいのに、テレビの電源を切るという選択肢も、すぐに頭には浮かばなかった。

 

 判断が遅れ、電源を切ろうという考えるよりも前に、脱衣所の扉が開く音がした。

 

「あー、エッチなテレビ見てる~」

 

 揶揄うような声色に驚いて、俺はテレビの電源を切った。

 

 視線を振り向けた俺が見たのは、準備万端の格好をした二人の美少女の姿だった。

 

 胸元から下腹までを覆うエナメル素材のハイレグタイプのボディスーツ。程よく肌が透けて見える黒ストッキング。頭に装着したカチューシャから伸びて途中から手前に折れ曲がっている長い耳。手首につけているカフス。

 

 紛うことなき、バニーガールだ。アカネは白兎、六花は黒兎という違いはあれど、お揃いの衣装だ。俺と目が合ったアカネは両手を頭の上に添えて、兎のポーズをしている。その横で六花はちょっと恥ずかしそうに胸元を押さえている。

 

 胸元まで覆われていると言ったけど、非常に際どかった。胸の谷間は完全に正面から見えているし、乳首はギリギリ隠れているといった具合だ。胸元の生地を少しずらせば、桜色の乳首が見えてしまう。

 

「エッ……」

 

 思わず漏れそうになった魂の叫び。もっとも、口にしなくても俺の反応から本心がバレバレだろうけど。たった今までアダルトビデオに気を引かれていた俺は、それよりもバニー美少女を目に焼きつけるのに夢中になっていた。

 

「お待たせ~。どう? 似合ってるでしょ」

 

 言いながらアカネが歩み寄ってきた。

 

「うん、すごく可愛い……」

 

 本心を俺が直球に伝えると、アカネがちょっとだけ面食らっていた。堂々と俺に褒められて少し照れたように笑った後、さらに距離を詰めてくる。その顔はほんのりと赤くなっていて、俺を見る目が蕩けていた。

 

「もう一度、言ってみて?」

 

「えっと、可愛い……」

 

「もっと低い声で、吐息たっぷりめで」

 

「か、可愛い……」

 

 何をさせられているのだろう。ちょっとだけ疑問を持ってしまったけど、思っていることをそのまま伝えるだけだから何も問題ない。俺は、遂には俺の膝に跨ってきたアカネと正面から視線を交わし、褒め続けた。

 

「本当に可愛いよ……。ずっと見ていたいかも……」

 

「やばいこれ、承認欲求が満たされる……」

 

 じゅるりと口から零れそうになった涎を啜り、アカネが危うげな笑みを作りながらそんなことを言っていた。たぶん、アカネよりも俺のほうが欲求が満たされていると思う。ただでさえ可愛い恋人が、バニー服に身を包んだのだ。それはもう世界一可愛くて、俺は誰よりも幸せだと感じた。

 

 しかも、俺の恋人はアカネだけじゃない。

 

「……って、あれ? 六花は?」

 

 アカネが思い出したように言って背後を見ると、まだ六花はもじもじしていた。

 

「もう、何してるの~?」

 

 アカネは立ち上がると、煮え切らない六花の下へ駆け寄った。

 

「ちょ、ちょっとアカネ」

 

 背後に回って背中を押してくるアカネに、六花は戸惑いの声を返していた。

 

「何恥ずかしがってるの? 前のドスケベメイド服より恥ずかしくないでしょ」

 

「言われてみれば、確かに……」

 

「説得されるの早っ……」

 

 思わず俺は声を上げてしまった。ビキニとメイド服を組み合わせたような以前の服装よりも、バニーガールの衣装は露出が少ない。バニー服は大人向けの服という印象があって六花が臆してしまう気持ちもわかるが、前のコスプレより着こなしていた六花には問題ないだろう。

 

「えっと、似合う……?」

 

「うん、似合ってるよ。本当に可愛すぎる」

 

 俺の言葉を受け、それまでぎこちなかった六花の表情が一点、華やいだものに変わる。

 

「あぁ、ヤバい無理……。私の彼氏最高……」

 

 とか言いながら、六花がふらふら寄ってきて、俺に抱き着いてきた。

 

「好き……」

 

「俺も好きだよ……」

 

 耳元で囁いてきたから、俺も囁き返した。

 

「私のほうが好きだから……」

 

「いや、俺のほうが六花のこと好きだよ……」

 

「いやいや、あり得ないから……。顔はイケメン過ぎるし、声も最高だし、性格も良いし……。体の相性抜群だし……。本当に理想の彼氏……。あぁ、駄目……。バニーの格好しているせいか知らないけど、さっきから妙にムラムラしてきちゃって……。あぁ、横顔格好いい……。ううん、どこから見ても目の保養……」

 

 超至近距離から俺の顔を覗き込む六花は、確かに発情しているように見えた。

 

 もしかして、さっきまでのは恥ずかしがっていたわけじゃなくて、発情する自分を抑えていたのか? コスプレ衣装に感情が引っ張られるなんてことがあるのかは知らないけど、そう言えばメイド服を着た六花はすごく従順だったことを思い出した。

 

 ということは、今はエッチな発情兎の気分なのだろうか。

 

「交尾したい……。交尾したい……。交尾したい……」

 

 発情兎の気分のようだ。

 

 俺を強く抱き締め、六花がそのまま押し倒そうとしてくる。

 

「また二人だけでイチャイチャしてる! 私も混ぜて!」

 

 不満げに口を尖らせたアカネが、横からダイブしてきた。

 

「ちょ、うわっ」

 

 六花とアカネ、二人分の重みには勝てず、俺はベッドに押し倒された。

 

 正面の天井を捉えていた視界に、ウサ耳をつけた六花とアカネの二人の顔が覗き込む。

 

「あ~……。もう我慢できないっ……」

 

「だって。六花兎が発情期に入っちゃったから、始めようか。今日のコスプレ子作りセックス。ドスケベ美少女兎二匹と、ラブホでぬくぬくイチャイチャしようね〜?」

 

 黒兎の六花と、白兎のアカネ。

 

 二人が同時に近づいてきたかと思うと、二人の舌がぬろぉっと俺の頬を舐め上げた。

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