※この作品はR-18です。

穢されても……俺は――   作:若杉優太(テト/teto)

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誰か、助けて……

「はぁ……ッ!はぁ……ッ!吾もここまでか……?」

 

 とある特異点の夜の山奥。大きな大木に寄り掛かり、出血した二の腕を押さえながら息を絶え絶えとさせているのは、人々から恐れられた存在である”鬼”の中でも有名な存在、茨木童子だった。

 鬼……そう聞けば強大で恐ろしいイメージを沸かせるが、金色の髪に端正で幼い顔、髪と同じ金色の目から覗かせる無垢な瞳はまるで人間の少女のようだ。

 

「追い詰めた、追い詰めたぞ……!ようやく大人しくなったな」

「……ッ!」

 

 額に生えた角と、顔に似つかない派手な金色の着物以外は少女と呼んで差し支えない見た目の茨木童子を、大木を囲うようにして数人の男達はじりじりと距離を詰める。

 

「く、来るな……!吾は鬼ぞ!貴様らなど、一瞬の内に喰らってやるわ……ッ!」

 

 出血していない片方の手を振り回し、茨木は迫り来る男達を睨みつける。

 だが、茨木は動けない……そう高を括った男達は怯むどころか、必死に睨みつける茨木を笑い飛ばす。

 

「っくくく……!バーカ!もう一歩も動けない奴に誰を喰らえるっていうんだ……?あ?」

「この……ッ!馬鹿にしよって……!吾も少しは――……うぐ……ッ!?」

 

 無防備に近づく男を焼き殺してやろうと思った手を痛みに苦しみ、突然がくりと地面に落とす茨木。

 出血多量の為か、その顔には余力が残っておらず、一歩でも間違ってしまえば”死”という名の消滅が待っていることは明らかだった。

 もはや抵抗すらできない程に衰弱しきった茨木。

 そんな茨木へ男達は無造作に近づく。

 

「ほう……お前、中々良い見た目をしているな……最初は殺そうかと思ったが、これなら少しばかり遊んでも良さそうだ……」

「そうだな……こいつは、いい」

 

 まるで物の品定めをするかのように、茨木を見つめる数人の男達。

 男達の顔は不細工で下品、そしてこの世全ての邪悪を詰め込んだような最低な顔をしている。

 これから、どう茨木を辱めるか?そして殺す時は、どんな声を出すのだろうか?鬼はどれだけの拷問をしたら死ぬのか?そんな心の声が、男達の顔からは透けて見えた。

 

「まぁ、すぐ死なれても困る。まずは止血をしなければ……」

「そうだな、止血をした後に俺らのアジトへ運んで……その後はお楽しみがあるってことか!」

 

 自分勝手な話を進める男達に、茨木は不意打ちの一つでも仕掛けてやりたかったが、最早身体を動かすこともできず、そして意識すら混濁し始めた茨木は男達の反吐が出るような会話を聞き続けるしかできなかった。

 

「(ま、マスター……すまぬ……吾が言うことを聞かなかったから……)」

 

 茨木は薄れゆく意識の中、数時間前に自分が行った独善的な行動を悔やむ。

 

「(敵エネミーが多過ぎるから行くな……そう忠告しておったのに、吾は……何も考えずに突貫してしまった。馬鹿と嘲笑われても、文句は言えん……)」

 

 ぼやけていく意識、遠くなってゆく男達の下種な笑い声。

 流れ出る血と共に意識すらも闇に墜ちていく。

 今までカルデアで過ごした日々が、走馬灯のように頭の中を駆け巡り始める。

 

「(酒吞……マス、ター……つな……)」

 

 少しばかりハチャメチャで、疲れる日々ではあったが、それでも茨木にとっては尊ぶべき日常であることは疑いようもなかった。

 ――消えたくない……また、カルデアに戻りたい……

 ほぼ閉じかけていた瞼から一筋の涙を流すと、茨木は手をだらりと地面につける。

 

「だれ、か……助け……て」

 

 最後に茨木は絞り出す様に声を出し、届くことの無い祈りを捧げると同時に瞼を完全に閉じたのだった。

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