和風エロゲー世界の失踪予定モブ退魔忍者に転生いたしましたが、全力で生き延び「んほぉぉぉぉぉぉ♡お゛っ♡お゛っ♡お゛っ♡」 作:第三世界(うたかたとわ)
「はっ――!?」
気がつくと私は寮の自室に戻っていた。
四月八日にマッサージを受けに行ったところから、私の記憶がない。
どうやら、リラクゼーションマッサージ中に、私は何かのトラブルに巻き込まれたようだ。
「うーん。ま、いっか……」
とりあえず、リラックスのためにマッサージを受けるという目的は達したことだし、細かいことは気にしないでおこう。
私は頭からわき出てくる思考に誘導されるように、気持ちを切り替える。
金輪際、リラクゼーションセンターに近寄らなければ同じ問題は起きないはずだし、情報の少ない今はそれでいい。
少しずつ、ゲーム開始前に何があったのかを知っていこう。
私は死に戻りした経験を参考に、行動指針の修正を図る。
「これは、思ったより時間がかかりそうね……」
最初、私はゲームの知識を使えばすぐに魔族を討伐できると思っていた。
未来の知識を持っていれば、攻略なんて簡単だと思い込んでいた。
しかし、退魔のシノブ伝は一筋縄ではいかない世界のようだ。
魔族はいたる所に根を張っているし、ダンジョンの魔物は凶悪。
細い縄を手繰り寄せるように、正解の道を進まなければならない。
私はすぐバッドエンドに直行する世界に勝つために気合いをいれる。
「今は、入学式のあとね……」
カレンダーで日付を確認すると、今日は四月七日。
入学式が終わったあとの夜。
まだまだ時間はある。大丈夫。
私は心の中でそう言葉にして悔しい気持ちを抑えると、次の日に備えて眠った。
そして四月八日。
私はツクモ学園で、上級格闘訓練に参加することにした。
この前ダンジョンに潜って、自分の実力不足を思い知ったからだ。
ツクモ学園の授業訓練には初級、中級、上級の三種類があって、上級訓練は学園の最上級生である三年生が受ける授業である。
「シグレって一年生、すごいな……」
「すげー……」
しかし、シグレの肉体が持つポテンシャルから見たら、やはり授業は授業である。
でも、今の私が体の使い方を学ぶのにはちょうどいい授業でもあった。
これから、ダンジョンで強力なモンスターたちと戦うことを考えると、現時点での私の実力はかなり低いと言える。
戦闘技術を地道に上げることが、当面の目標だろう。
「八月までは、ダンジョンに潜らず基礎訓練に集中したほうがいいかしら……」
自室に帰宅したあと、訓練のことを考えながらソファーでくつろいでいると、私のスマホの音がなる。
「んっ? スマホにメッセージが……ってウルハお姉さま!!」
私のスマホに、メッセージアプリで連絡を送ってきた人物はウルハ・アオギリ。
幼い頃から一緒に退魔忍者の里で育ってきた、シグレの姉のような存在である。
「……ウルハお姉さまも、学園に潜入してるの?」
ゲームには出てこなかったキャラであるが、シグレの記憶にはウルハお姉さまとの思い出が確かにあった。
ゲームの登場人物以外も多数存在する、ここは現実なのだ。
ウルハお姉さまが、シグレにやさしく訓練をつけてくれた思い出。
退魔忍者としての心得を教えてくれた思い出。
そして、年上の女性に対するあこがれの気持ちを超えたシグレの想い。
(あれ? もしかして……シグレって百合系の人だった?)
頭の中から次々と出てくるシグレの恋心に引っ張られて、私もウルハお姉さまにドキドキとしてしまう。
しかし、今はそんなことはどうでもいい。
「え!? ウルハお姉さま、学園に潜入してくるの? やった!」
私に対する吉報だった。
ウルハお姉さまが、ツクモ学園の臨時講師として潜入に成功したというのだ。
ウルハお姉さまは薬術に精通している退魔忍者で、調薬、錬金術の教師として学園の教壇に立つことになる。
そして私へのメッセージは、学園の中に怪しい研究所があるかもしれないので、夜になったら敷地内を一緒に調査しようという誘いだった。
「やっぱり味方がいるというのは、頼もしいわね!」
私は孤立しておらずに、近くに味方がいるという安心感に心を踊らせる。
ウルハお姉さまが言っているのは、たぶん魔族の研究所のことだろう。
ゲームでは、シノブとセツナが魔族の地下研究所を見つけ出して、壊滅させるまでがストーリーだった。
非道な人体実験を繰り返す魔族の研究所を潰すのが、退魔忍者の使命とされている。
魔族の研究所を調査している退魔忍者はゲームには登場しないだけで、他にもたくさん存在するのだろう。
「実際に研究棟を見ておくのもいいかもしれないわね……」
ゲームの知識としては、私は魔族の研究所の場所を知っているが、実際に自分の目で確認したわけではない。
この前のダンジョンアタックで現実とゲームが違うことを学んだ私は、ウルハお姉さまの提案を受けて学園内の敷地の調査をすることに決めた。
「ふぅ……そろそろかしら……」
忍び装束に着替えた私は、ウルハお姉さまとの待ち合わせの時間を待つ。
そして、深夜のツクモ学園の調査に乗り出した。