グランドラインに入ってから、ずっと慌ただしい日々だったこともあって、こうして1つの島に何日も滞在するのは今となっては珍しい。私たちはアラバスタに滞在して、それぞれが束の間の休暇を過ごしていた。
ビビたちに頼まれて、クロコダイルとの喧嘩に勝ったから、一件落着って感じだよね。
ほんと、あっという間に感じた。
クロッカスさんやラブーンに出会って。
ウィスキーピークに立ち寄って。
ドギーさんやブロギーさんに出会って。
病気で倒れて、ルフィたちに救われて。
「うぅ~」
あの夜のことを思い出すと、どうしても身体が
私が病み上がりだったこともあって、うやむやになっちゃったけど。
お礼としてルフィに『ご奉仕』をしたわけでして。
パタパタとお布団を足で叩く。
でも。
枕にボスンと顔を押し当てる。
「むぅ~~~」
だってルフィったら、あの時のことを全く気にしていないように過ごしているんだもん。今日のお昼だって一緒にアラバスタでデートしたのに、お城に帰ってみんなでご飯食べてお風呂入って、そのまま解散だもん。
そりゃみんなと過ごすのも楽しいけどさ。
「もっと、一緒にいたいじゃん……」
贅沢な悩みだって分かっている。
例えばマキノなんて10年以上、誰かを待って今も過ごしている。私はいまだにそんな薄情な男が、ベックマンなのか、それとも別の人なのかは分かっていない。村の内外問わず告白を受けるくらい、あんなステキな人を待たせるなんて許さないんだからね。
だって、この感情は日に日に大きくなっていくから。
それは、不安というもので。
他の子を好きになったらどうしようって。
同じ船員のナミとは何かと距離が近いし、航海士としてルフィの信頼は厚い。そのうちメリー号を空飛ばせてくれー なんてナミに頼んで、ナミは実現してしまいそうだ。
先日から同行していたビビだって、冒険心や強さという点で、ルフィには尊敬の念を持っているように思える。それが大好きな国を救ってくれた異性なんだから、惹かれるのも仕方がないところはある。
他にも多くの女の子が、カッコよくてかわいいルフィを好きになる気がする。だけど私は幼馴染で音楽家で、何年も一緒に過ごしているのに、ルフィと付き合えていない。
ご飯だってサンジにすぐ頼むし。
「私、重いのかなぁ……」
女遊びっていうのかな、そういうのはしないけど、ルフィは自由が好きだ。仲間がどんどん増えているように、今だって国で宴をするくらいに、たくさんの人と仲良くなる。
それに比べて私は、幼馴染って関係で縛り付けるし、友達づくりそんなに得意じゃないし、いわゆる男女の関係にだって進ませようとしているし。
「はぁ~、こんな
リボンのついた麦わら帽子を頭に乗せながら、私は女子部屋を出て夜風に当たることにする。
ビビのお父さんやゾロたちとお酒を飲みながら談笑していたけど、私はあまりお酒好きじゃないんだよね。だからルフィとウソップとチョッパーと合流しようと思ったら、3人は夜の街の探検に行ったって聞いたし。彼らに限って、そういうお店には行かないとはいえ、置いていくなんて。
この暖かな灯りが照らす夜景のどこかに、ルフィたちがいるのかな。
「あ、そうだ!」
見聞色の覇気で、ルフィの気配を探ればよかったんだ。
「えーと……」
ヘッドホンを付けたまま覇気を使ってみると、まだまだ練習段階だから、たくさんの人がいる街から特定の人を探すのは難しい。たくさんの幸せで楽しそうな声が聴きとれて、エースに言われたように、耳に頼っているとこはあるんだろうね。
おっ、あっちのほうかな。
ルフィが動いているみたい。
「おっ、いたいた!」
ほら、今だってルフィの声が近くから聴こえたくらいで。
「探したぞ、ウタ!」
「ぎゃ~~~!?」
、私は両手を上げてビックリする。
だってパジャマ姿のルフィがロケットのように飛んできて。
「ちょっ!?」
「ししし 面白そうなとこ見つけたんだ」
私はお腹周りにグルグルと腕を巻かれてからその胸に抱えられて、
結っていない赤白髪の毛先が、彼の腕をぺしぺしと優しく叩くくらい、ドキドキしている。
「ほんとルフィったら」
「ん?」
大きな胸はポカポカする身体に密着していて、ちょうど会いたいって思っていたから。
さっきまでいろいろ悩んでたのに、会えただけで幸せになれるくらいに、私はあなたのことが好きなんだって、自覚できる。
「よーし、着いたぞ」
「なんか、カラフル?」
街外れまで連れてこられて、HOTELってピンクの蛍光灯で書いてあるから、ホテルなのかな。
見た目は小さなお城って感じで、なんだかかわいい。
「ウソップはチョッパーを連れて帰っちゃったしよ。で、俺だけで中に入ってみたらさ。ここは男と女で入る場所だって言われたんだ!」
「へぇー、確かにお部屋とか気になるかも」
ルフィだけじゃ入っちゃダメ、そう言われると中を見たくなるね。例えばホテルというのはカモフラージュで、この小さなお城は国王様の別荘かもしれないし。
幼馴染だけあって、私たちは しししと笑い合って、気になるお城の中へ入っていく。
「言われた通り、連れてきたぞ!」
ドンと宣言したルフィに、微笑ましい表情を見せた店員さんはあれこれ説明を始めた。
見た感じ、ただのホテルだなーって私はキョロキョロする。
「風呂がオススメなのか? ならその部屋でいいぞ?」
ルフィは鍵を受け取って、私の手を取って連れていってくれるけど。
「ねぇルフィ、ここに泊まる……ってこと? えっと、お金持ってきてないよ?」
お代は結構ですからー と店員さんが言ってくれていて、ちょっと安心した。海賊とはいえ、さすがにお金を払わないのは歌姫としてどうかと思うし。
案内された部屋の灯りは少し暗めで、あまり他のホテルと変わりはないと思う。
勘だけど。あの引き出しは開けないでおこっと。
「うひょ~ フカフカだ!」
「わ、ほんとだ!」
枕が2つあってベッドが1つしかないのは、ドキドキするね。私はちょこんとベッドに腰かけて、あちこち動き回るルフィを見つめていた。
「風呂もでかいなぁ。そうだ、久しぶりに一緒に入るか?」
「え、や……うん……」
私はコクッと頷いた。
確かに王宮のお風呂で、一緒に入ろうか的なこと言っていたよね。恥ずかしいけど、こんな機会は貴重だし、ルフィから誘ってくれたし。
「あ、あっち向いてて」
「ん? 先行ってるぞ?」
放り投げるように自分の衣服を脱いだルフィから、一度目を逸らすように、私は背を向ける。
また腹筋の割れ目が増えてたし、ゴムの性質もあって細マッチョだし、アソコも見えたし、なんでこんなにドキドキさせてくるのよ。
私もパジャマを床にパサリと落として、桃色のナイトブラを外せば、大きな胸は解放されたように揺れる。
そして鏡を見て、歌姫としてスタイルの良さを維持していて良かったとホッとした。下のほうも整えていたし。
ヘッドホンを机に置いて、さらにクルクルと赤白髪を纏めてヘアクリップで止めてから、ちょっと悩む。
バスタオルは巻かないことにして、大事なところを隠しながら彼のところへ向かう。
「は、入るよ?」
「……お、おう」
真っ白な浴槽にほんの少しお湯が張られている。あくまで能力者だから、全身浸かると溺れちゃうからね。ていうか、アラバスタでは水が貴重ということもあって、もしかしたら相当なお値段のするお部屋なのかも。
そんなことを考えつつ、かけ湯を何度かして身体を温める。
そして私もゆっくり足先から入って、お尻を湯船につけた。
肩と肩が触れ合って、かすかな水音とお互いの呼吸だけが、浴室に反響していた。
「お互い、デカくなったな」
「うん。こんな大きいお風呂なのにね」
足や腕をいっぱい伸ばせるくらい大きいのに、2人で入ったらちょうどよく感じる。私はルフィの肩へもたれかかった。
「ウタはなんか、柔らかいな」
「そういうルフィはゴムなのに硬すぎ」
少ない湯船の中で指を絡め合って遊ぶ。
昔は、お湯のかけ合いを何度もしたよね。
「ねぇ、ギュってして?」
「ああ、いいぞ」
湯船から手を出して、お互いに腕を回す。
私の胸で固くなっているように、ルフィのアソコも固くなっていて、少なからず私にドキドキしているんだなって嬉しくて、ますますドキドキする。
服を着ている時でも幸せなのに、肌が直接触れ合っていて、もっと幸せに感じる。
私が一度連れ去られて、それでも助けに来てくれて、一緒に生きて勝ってくれた。もうお互いキズは塞がっていても、あの時は確かにボロボロだったから。
「ねぇルフィ、キス……していい?」
「……おう。何すればいい?」
「じっとしてて」、それだけ私は告げる。
やっとわかってきた。
ルフィは『恋』が分からない。
だって私にはマキノが教えてくれたけど、彼には教えてくれる人が側にいなくて、例えばキスのことだって知らなかったんだ。『愛情』は知っていても、『恋』は知らない。
それなのに私は恥ずかしいからって、いろいろ彼に求めちゃっていた。
「「ん」」
小鳥のように、つつき合うようなキス。
ルフィの唇が触れた、はず。
「ぅ~~~」
ポスンとおでこを彼の胸に当てる。
幸せすぎてどうにかなっちゃいそう。
「……もう一回、いいか?」
「うん! うん!! いいよ?」
とても嬉しい。
何度だって、『恋』を感じるのなら。
私は目を閉じてじっとしていると。
ちょこんと唇が触れ合う。
「ん……すき……」
「俺もすきだ」
ルフィが力強く、私を抱き寄せる。
離さないって思ってくれたのかな。
「あっ」
「きれいだな」
ルフィの手が当たったのか、ヘアクリップがポトリと落ちたことで、私の髪がパサリと広がった。そんなとき、黒くて綺麗な瞳でルフィはそう呟いてくれた。
にへらって私の頬が緩む。
「うれしい」
「おう。ウタはきれいだ」
今度は2人同時に顔を近づけて、キスをする。
「ん……あっ……」
ルフィの舌が、私の唇を開けるように動いた。
それを受け入れて、私は舌で絡める。
ちゅぱ ちゅぱって、そんな心地いい音が浴槽で響く。
ドキドキしている心臓の音もしっかり耳に入る。
「ん...」
ルフィのだ液、なんだか甘く感じる。それに、絡み合っている舌を、飴みたいにずっと味わっていたい。
うっすらと目を開ければ目の前にルフィがいて、頬はどんどん熱くなる。ルフィから声が漏れているのを聴いて嬉しくなって、私から声が漏れているのが恥ずかしくて。
とても幸せで。
「……すき ルフィ」
「……すきだウタ」
お湯の代わりに、お互いの身体を温めるように、ギューって抱きしめ合った。
お風呂から出て髪を乾かしている時も、一緒にベッドで横になった時も、時折りルフィからキスを求められた。
「明日は何する?」
「そうだなぁ。また2人一緒に出かけるか」
結局のところ、ルフィが『恋』を少しずつ自覚し始めたくらい。
一緒にベッドでぐっすりと眠ったくらいで、まだ男女としての『行為』をしたわけじゃない。ただ確かなのは、幼馴染という関係だけだった頃より、ルフィからスキンシップを求められることがもっと増えたことかな。
こういう関係を恋人って言うんだよ、ルフィ。