ソフトSMっぽいイチャラブ。
※前回と話のつながりのない独立した話です。
暗闇の中、一つのろうそくに火がついた。
か細く小さい橙色の円光がぼうっと広がり、映し出すのは一組の男女の顔。
女は立ち、男は膝まずいている。
見下ろすヴィーラの表情は恍惚とした笑みを浮かべながら、顎から瞳へ行くにつれ影が深い。
見下されるグランは全裸、目隠し布と口噛み布が巻かれて視界と声が封じられ、後ろに回された両手にも布が巻かれて動きを封じられていた。
ヴィーラはグランの顎をくいと人差し指で下から押し上げると、唇を尖らせ「ふぅー……」とグランの耳に息を吹きかける。
グランの体がビクンと喜びで震え、ヴィーラは満足そうに「ふふ」と微笑みをこぼしながらグランの目隠し布を外す。
グランのうるんだ喜びの瞳に映ったのは、ろうそくの暖色の光を反射する、ヴィーラの黒光りのコスチューム。
いわゆるボンデージと呼ばれるものだった。黒い革製のカップはヴィーラのたわわな両の乳房を包みながらも肌色の谷間は全てむき出し、ウエストから下腹部までは複数の細く黒いベルトが斜めの網目状に配置され、腹部真ん中の露出したへそを嫌でも目立たせている。
下半身の極部を包むは限界まで幅を切り詰めた黒のTバック。ふとした弾みでずれてしまえば全てがさらけ出されること必定、一度視界に入れてしまえばそんな危惧と期待が入り混じった想いを抱くのは人としての性(さが)。
グランの歓喜と期待の視線をヴィーラは全身で感じ取り、愉悦の笑みを浮かべながらピクンと肌を揺らす。
(あぁ……この締め付けとグランさんを支配している喜び……!)
ヴィーラが性的快感と悦を得る度に、まるで身にまとうボンデージがギチギチと圧縮してくるかのよう。
締め付けられた肌から伝わる痛覚と快感の混合信号がヴィーラの思考と感覚を鋭敏にし、ヴィーラの持ちうる全ての心技体のベクトルが今、グランをサディスティックに撫でようとしていた。
「グランさん……あなたは何者ですか?」
ヴィーラは微笑みながら、グランの顎に触れた人差し指の先をつつと移動させていく。
顎から首筋、喉仏、肩、脇へと。
グランは「ふぅー! ふぅー!」と返答を試みているものの、口に巻かれた布とヴィーラの愛撫によってまともな言葉を発せていない。
ヴィーラは全く気にしたそぶりもなく、今度は笑みを消して冷たい口調で目線を細める。
「ちゃんと答えていただけませんか? お姉様と私の世界に横入りして、アルビオンで始まるはずだった、二人の愛の生活を犯したあなたが何者なのかと」
ヴィーラは早く静かで激しい口調で一度言葉を止めると同時に、グランの乳輪にそってつるりと半円を描くようになぞると、
「聞いているんです」
ピンッ、とデコピンでグランの乳首を弾いた。
「ふんぅううううー!?」
グランの顔が後ろへのけ反り、勃起したペニスが天へ反り返り、我慢汁がはじけ飛んだ。
飛んだ我慢汁の一滴がヴィーラへ迫るが、ヴィーラは表情をかえないまま裏拳で弾いて中空に飛散させる。
ヴィーラのさらに冷たくなった視線が、グランへ突き刺さる。
「いくつもの島を救い、さまざまな人を従えて、また新しい世界へと皆を導こうとする騎空団の”団長さん”が、果たして本当は一体何者なのか……。団の皆様が、ルリアちゃんが、カタリナお姉様が知ってしまったら……」
ヴィーラはグランと間近で視線を合わせると、一瞬で冷たい表情を微笑みに戻して、
「はたして、どう思うのでしょうね?」
「ふぅー……! ふぅー……!!」
グランの瞳が興奮で血走り、口布はかみちぎられそうなほどに絞られ、涎が口端から顎を伝って床へ落ちる。
ヴィーラはグランの目の前で椅子に腰かけ、股を広げた。
極部を覆うのはTバックの細い黒筋のみ、グランの目の前で湿り気を帯びたヴィーラの太ももがテカテカと光り、強い雌の香りが漂う。
「さあ、団長さん。あなたが何者なのか、口に出さないと伝わりませんよ? 今あなたが考えていることを……」
ヴィーラが前かがみになって、グランの後頭部へ手を伸ばし、口に巻かれた布の結び目をほどきにかかる。自然、グランの眼前にはヴィーラの豊満な乳房、彼女のうるおいを持った赤い唇。
「今あなたがしたいことは、冒険ですか? 空の旅ですか? 仲間達と絆を深めることですか? それとも……ふうぅ……」
くすぐるようなヴィーラの吐息が、グランの耳たぶを撫でる。
身を震わせるグランの目の前で、ヴィーラは「ちゅるん」と人差し指を舐めしゃぶると、そのまま湿った人差し指を反り立つペニスへと近づけ、
「んんぅー!!」
触らなかった。1ミリほどの距離で指を止め、それでも確実に指の気配を感じる距離で亀頭の外周をなぞっていく。
「団長さん、もう口布はほどけています、噛みしめないでください。まるで犬みたいですよ?」
「あっ……」
グランの口布が落ち、言語能力が回復する。視界には自身を見下す、ボンデージ姿で股を広げたヴィーラ・リーリエがいる。
今グランとヴィーラには、場所も時間の感覚もない。ただ暗闇の中一つの灯りを頼りに相手を見、得も知れぬ圧力を全身で浴びながら、欲望の深海に溺れようとしていた。
「ぼ……僕は……」
「グランさんは?」
ヴィーラの人差し指が、グランの顎をくいと押し上げ、ヴィーラの顔と正対させる。
「僕、グランは……」
「ふふふ……!」
「ヴィーラ、ヴィーラ・リーリエ様の——!」
「————!!」
声にならない悲鳴を上げて目を開いたのは、ヴィーラ・リーリエ。
「あ……!? え……!?」
発汗し、信じられないといった表情で愕然としている中、航行中のグランサイファーは朝陽を浴びている。船窓から明かりが差し込んでいた。
(私は……何を……!?)
ヴィーラの外衣がボンデージなわけがなく、今身にまとっているのは真白のネグリジェ。
鮮明に脳裏に浮かぶ夢の中の黒い自身と、ひざまずくグランの姿。
欲求不満の淫夢だとしても、ヴィーラの常識から大きく外れた光景に対して、彼女は混乱していた。愕然としていた。
だが、自分の顔に手を当てようとした時、
「……っ!!」
二度目の声にならない悲鳴。自身の右手が、湿り気を帯びた秘部に伸びていた。指先はクレバスへ深く入り込もうとしている。
よくよくヴィーラも自身の体の状況を確認してみると、体が上気し、乳首はつんと立ち、絶頂間近の心地よい焦燥が、突然中断された不満足感。
(わた……くしは……!?)
ヴィーラの唇がわなわなと震えだす。
(あのような外衣に身を包んで、グランさんを、あんな無様な姿でひざまずかせて、あまつさえ、その光景で、自分を……!?)
全ての事実を受け止めるのには、数分の時間を要した。心体を落ち着かせ、右手と股下を拭く。
「……ふぅ……」
一息つき吐いたヴィーラの表情に焦りや戸惑いはなく、思考は先ほどの夢の内容を冷静に分析していた。
(私にとってグランさんは……大切な戦友。もしくは、それ以上の……でも……あんな関係を望むなど、ありえません)
ヴィーラの恋慕と執着は青春時代からカタリナ一筋だったし、グランに対する大切な想いも、ヴィーラの中ではもっと清廉で尊いものだと思っている。
であるならば先ほどの夢は、今まで性欲の対象と見ていなかった友人の痴態を妄想し、尊厳を踏みにじったことに等しい。
(……夢の内容なんて支離滅裂ですし、自身で制御できるものでもない。夢を見たからと言って、それが自分の深層心理を具現化しているわけでも、ない……でも)
ヴィーラの表情には、底冷えしているような恐怖が浮かんでいた。
(あの……ボンデージ衣装は……)
ヴィーラが夢の中で着ていた衣装には、見覚えがあった。
「……シュヴァリエ」
ヴィーラの呼びかけに応じ、騎士の名を持つ星晶獣が顕現する。どこか可愛らしい小型妖精のような緑白色の姿をシュヴァリエはさらし、主であるヴィーラの周りを旋回した。
ヴィーラはベッドを抜け出し、衣装棚のとなりに置かれた大型の旅行鞄を開く。騎空団へと入団し、アルビオンからの衣装を運び入れて以来しばらく封印された鞄の奥底から、ヴィーラは夢に見た衣装を取り出した。
陰部を覆う部位を限界まで切り詰め、身にまとう者の素肌を拘束するように圧迫するクロスベルトの装飾。漆黒でありながら光を反射して輝くその衣装は、騎士道と無縁のボンデージ。
ヴィーラがこれを最初に見つけたのは、アルビオン領主の執務室の隠し棚。歴代の誰かが封印し、その存在を秘匿してきたものであるとは予測できた。
ヴィーラにこのような趣味はなかったが、一目見た時にある種洗練されたデザインに否応なく魔力のようなものを感じて無下に扱うこともできず、丁重に隠し棚を閉じて見なかったことにした。その後、このボンデージ衣装の事は記憶から薄れていった。
だが、アルビオン領主の呪縛から解き放たれ、グラン達と共に空へと旅立ったその日、あてがわれた船室でヴィーラは旅行鞄の底に収められていたこの衣装を見て驚愕した。
(な、なぜ領主の部屋にあったこれが!? ……まさか)
「シュヴァリエ、これは一体どういうことです? なぜこんなものを私に?」
シュヴァリエは答えない。旅行鞄に細工ができるとしたらこの星晶獣だけだった。
「これが……こんな卑猥なものが、私に必要になるとでも? 騎士を司るあなたが、どうして……」
結局ヴィーラがきつく問い詰めてもシュヴァリエは暖簾に腕押し、ヴィーラとしても、
(領主の部屋にあったものを、アルビオンを離れた私に、シュヴァリエが託した……。捨てるわけにも……)
結局、保留するしかなかった。衣装鞄の奥底に封印し、アウギュステのバカンスやクリスマスやバレンタインやら、シュヴァリエと真のパートナーとなって、グランとかけがえのない絆を紡いでいく中で、この衣装の存在は完全に記憶のかなたに消え去っていた。
先ほどの淫夢を見るまでは。
「……シュヴァリエ、もう一度お聞きします。これは一体何なのです? どうして私に託したのですか? あの夢はまさか……あなたが……?」
ヴィーラの声色には戸惑いがあった。今のシュヴァリエを疑いたくはないが、精神干渉を行ってきた前科がある。無論、その事件についてシュヴァリエに敵意がなかった事をヴィーラは理解している。
シュヴァリエは答えない。
「質問を変えます。あなたは今、私の精神に干渉していますか?」
今度はヴィーラのはっきりとした声色、シュヴァリエは即座に否定の意を示した。ヴィーラはシュヴァリエの意が真実だと即断し、思考を進める。
(シュヴァリエが精神干渉をしていないのならば、考えられるあの夢の意味は二つ。一つ目はただの偶然、二つ目は……)
ヴィーラの内なる欲望が、夢として現れたのではないか。
「……そんなわけありませんね」
自嘲するようにつぶやく。このヴィーラ・リーリエが、カタリナ・アリゼ以外に劣情を向ける? ましてや男に? こんな淫らな衣装を着て、あんな卑猥な行為を?
グランという、大切な初めての友に対して。
「ありえません。行きましょうか」
ヴィーラは朝の支度を終え、船室から出た。
そして彼女が最も愛する存在を廊下で待って、挨拶をした。毎日の幸せな日課だった。
「おはようございます、お姉様。ルリアちゃん。グ……グラン、さん」
言いよどんだヴィーラを気にしなかったのか、カタリナ、ルリア、グランはヴィーラに挨拶を返す。トカゲはいるがヴィーラの視界には入っていない。
そんな中、ヴィーラがグランの顔を見た瞬間、彼女の脳内では淫虐の光景が嵐のように思い出されていた。
『僕、グランは……』
『ヴィーラ、ヴィーラ・リーリエ様の——!」
(グランさんは……私の……?)
「ヴィーラ、どうしたんだい?」
「え? あ、いえお姉様。昨日その、少し夢見が悪かったものでして……ぼうっとしてしまいました」
「そうか、君にしては珍しいな。疲れがたまっていると夢見が悪いこともある。グラン、今日ヴィーラに仕事はあっただろうか?」
「いや、ヴィーラさんには無いと思うよ。次の島にはまだ遠いし、見張りも違う人がシフトだから」
「そうか、それならっ、久々に私の手料理はどうだ? 最近またアイディアが出てきてなっ。元気の出るような料理を君にご馳走してみせよう」
グランとヴィーラとビィの顔が恐怖に染まっている。ルリアは明るい笑顔で両手を広げ、
「わぁい! カタリナ、私もいいですか?」
「もちろんだルリア。では早速厨房に」
「お、お姉様、お気持ちは物凄く嬉しいのですが、少しお待ちを……!」
「ヴィーラさん、ここは僕に任せて!」
その後厨房で騒動があって、グランの活躍でなんとか皆に出される料理を正常に保つことができたのだが省略。
とにかくヴィーラにとって今日は、いや今日も、大切な人々と笑顔で過ごす、何気ない日常だったということだ。
「……では、おやすみなさい、シュヴァリエ」
ヴィーラは日記を閉じ、明かりを消してベッドの上で瞳を閉じる。
旅行鞄の奥底のもののことなど、すっかり忘れていた。
だが、彼女の非日常は、確実に足音を大きくしていた。
暗闇の中、一つのろうそくに灯がついた。
「犬は服従の意を示すために、お腹を見せるそうですよ」
つかつかとハイヒールの音を立て、ボンデージ姿のヴィーラが行く。
ちゃりんと金属音が鳴る。ヴィーラの右手から伸びるチェーンは、彼女の後ろから追従する4足歩行の生物の首輪に繋がっていた。
「わんっ!」
ヴィーラが振り返ると、その生物はゴロンと仰向けになり、はっはっと荒い息をしながらヴィーラに期待の笑顔を向けている。
「ふふ、よくできました。今日は気分がいいので、ご褒美をさしあげますね」
ヴィーラの両手が伸びた先には、仰向けになって天へ反り勃つ男性器。グランという雄のむき出しの弱点であり、服従の証だった。
グランの体が期待で発汗し、体の揺れに合わせてペニスがぶんぶんと上下に揺れる。ヴィーラは表情を変えることなく、両手でペニスの竿を包み込むと、
「はいっ」
ぎゅむぅぅ!!
「ひぃぃん!?」
竿、亀頭と上へ擦り上げながら、ペニスを支点にグランの腰を少しだけ浮き上がらせた。
そしてまたすぐに両手で作ったオナホールを下へ戻す。
じゅちゅっ!!
「ふふっ」
「ひぃいあっ!?」
「あら、犬はそんな鳴き声はいたしませんよ」
返答を待たず、容赦のないヴィーラの両手コキが始まった。暖かいヴィーラの素の指と手のひらに包まれ、あふれ出した我慢汁が潤滑油となってじゅぶじゅぶと泡立ちひどい水音が漏れ始める。
グランの腰がヴィーラの愛撫によって上下に揺れ、中空に放り出したままの手足がガクガクと痙攣し始める。
「ふふ、でも今日は許容してさしあげます。厨房の場をうまく納めてくださいましたから……」
グランの二つの玉が膨らみ、その膨らみが竿に移動し、ヴィーラが両手でグランの熱を感じ取った瞬間、ヴィーラは両手コキのオナホールから顔を出した亀頭の鈴口に唇をピッタリとつけて、
「存分に吐き出してください……ちゅううううううううううううううぅぅぅぅ!」
ブビュウウウウウウウウウウウ!! ビュルルル!!!
「あああああっ!!」
「あむちゅるるちゅうううっ!」
ヴィーラは唇をすぼませ、射精の勢いに負けじと吸引を強める。ヴィーラの目は上目遣いでグランのとろけたイキ顔を凝視し、グランの絶頂による全身痙攣を肌で感じていた。
(ふふふ、ああグランさんこんなに気持ちよさそうに震えて……! 全てを飲み干して差し上げます! 私以外の事を考えられないように……!!)
「ちゅるるちゅぱっんむっちゅうううう♡」
ヴィーラの頬がすぼまり、両手コキがさらに激しく上下し、唇が亀頭を揉み解して鈴口を舌でほじくる。
(うふふあははっ! もっともっともっと! グランさん、あなたを、わた、くしの……♡)
ブビュウウウウウウ! ビュルルルビクビクビク!!
「んんぁああああああああっ♡」
ヴィーラの激しい嬌声が早朝のベッドから響く。足指がピンと張り、腰が浮き、指によって降ろされたパンツの隙間から潮が噴水のように弧を描いた。
「あっ……はぁ……はぁ……はぁ……ちゅむ……♡」
ヴィーラはグランへの愛虐が全て夢だったことを認識しながらも、精神は恍惚から抜け出せずにいた。ペニスに見立てた自身の左手の親指を、夢心地のまましゃぶる。
(……だめ……これは、普通じゃない……戻らないと……)
「……ちゅる……ちゅぱ……はぁ……はぁ…シュヴァリエ、本当に……何もしていないのですよね?」
顕現したシュヴァリエの返答は昨日と同じだった。
(……私が愛しているのはお姉様。グランさんは大切な戦友。夢は夢にすぎません。決して、私の欲望などではありません)
いつものヴィーラの服装に戻り、暗示のように思考を繰り返す。
(グランさんは皆の団長。夢であれ、このような妄想をすることなど……!)
しかし、ヴィーラの今の日常はカタリナとの日々。自然、ルリアとグランもすぐそばにいる。
ヴィーラの視界にグランが入る度に、
『わんっ!』
(……っ!?)
「ん? どうしたんだヴィーラ? そんなにグランを見つめて……」
「え!? い、いえなんでもありませんお姉様」
(お姉様が傍にいるのに、どうしてグランさんの事を!? あっ……?)
「少し、失礼しますね」
足早に去るヴィーラの笑顔がこわばっていたことを、カタリナとルリアとグランは少し心配していた。
とうのヴィーラはお手洗いの個室に入ると、すぐにパンツをずり降ろす。
糸を引いた液体が、クレバスからあふれ出していた。その原因は一つ。
夢の中のグランが、ヴィーラの脳内にあふれて止まらない。
(鎮めなければ……鎮めてしまえば、このような幻など……!)
「ん……ふぅん……っ!」
指が秘部へと導かれ、クチュクチュと水音を奏で始める。
なぜ性欲がコントロールできないほどに肥大化したのか、グランが対象なのか、ヴィーラにはわからない。
わからないが、わからない事よりもヴィーラにとって恐ろしいことがあった。
(なんで、グランさんを想いながら、するのが……こんなに……♡)
「んっ……ぁあっ……♡」
ビクッビクン……プシュ……プシャアァ……。
「はぁ……はぁ………ダメ……」
(このままでは……いずれ、グランさんを……!)
襲ってしまうかもしれない。ヴィーラには、自らの欲望のためにはひたすらに突き進む自覚があった。かつてカタリナに自身の理想を押し付けて失態を演じたのは、忘れられない痛恨の記憶だ。それを繰り返すわけにはいかない。
しかし、無視して溜め込むのも良いとはいえない。カタリナを愛していながら理性的な行動ができているのは、ヴィーラのカタリナへの欲求がある程度、常に満たされているからだった。今はカタリナの心と自身の心が繋がっている確信があり、同じ日常を過ごしていることでヴィーラは満たされている。
なら、グランとの関係はどうだろう。もし、連日の夢がヴィーラの深層心理ならば、その想いが今肥大していると仮定するならば、溜めに溜め込んだ結果、取り返しのつかない爆発を起こすかもしれない。
(……きっかけはわかりません。けれど、グランさんは私にとって……)
ヴィーラにもスーテラやコルワといった普通の女友達ができた。カタリナと生活を共にできている。そのすべてのきっかけはグランだ。ヴィーラを騎空団に迎え入れ、ヴィーラが抱えていた数多の問題に向き合い、ともに解決してくれた。
ヴィーラはグランを想うと暖かい気持ちになれる。
性欲は関係ない、もっと純粋な好意であることを、ヴィーラは肯定していた。
ヴィーラがシュヴァリエとわかり合う過程で昏睡した際、手を握ってくれていた存在の事を。
(あなたは、私にとって……特別な存在です。だからこそ、この新しい欲望は……)
ヴィーラは自室に戻り、旅行鞄を開けた。
ボンデージ衣装は、黒く輝いている。
溜め込めば、いずれ爆発する。
ヴィーラは誰にも言えないこの悩みを解決するために、正面から向き合うことを決めた。
(私の中で完結させ、発散させます)
ヴィーラは素肌になると、黒き魔性の衣装を身に着けていく。
(誰にも気づかせることなく……)
サイズが少し小さいのか、女性として完璧と言えるスタイルのヴィーラが身に着けても、ベルトや胸部を覆うカップから、肉が浮いてはみ出ている。
「ん……きつい……」
(けれど……どこか、心地いい……?)
全身に感じる圧迫感が、ヴィーラのあふれ出した性欲を抑えてくれているかのようだった。
夢の姿に自身が近づいたことで、ある程度の充足を得たのかもしれない。
(面積が少ないので当たり前ですが、動くこと自体に問題はないようですね。ただ、この圧迫感、激しい動きとなると抵抗が……)
「!」
ヴィーラはハッとして、グランサイファーに鳴り響く警報の鐘に気付いた。魔物接近の合図で、動けるものは迎撃に出なければならない。
(……大丈夫、動きには問題なし。すぐに向かわなければ)
ヴィーラはボンデージを身にまとったまま、すぐにいつもの赤色の服装を上に着込み、剣を手に甲板へ出た。
ほどなく魔物が襲来し、ヴィーラは剣を振るい迎撃する。
「んっ……!?」
ヴィーラの剣技は精細を欠くほどではなかったものの、平常時ではない、幾分かの揺らぎがあった。
(動くたびに、締め付けられる箇所が……!)
剣を振り、腕や脇や太ももが伸びる度、ギチギチと音を立てているかのように、ボンデージ衣装はヴィーラを圧迫した。
(痛……いっ? いえ、これは……どこか……!)
「ふふっ……あははっ……!」
戦闘時に昂ると出るヴィーラの狂笑。痛みではない、自分を締め付ける未知の感覚によって、ヴィーラの剣技は研ぎ澄まされていく。
マッサージというには攻撃的なボンデージの締め付けだったが、激しい動きの中でこそ、この衣装は本領を発揮することを、ヴィーラは本能で感じ取った。
剣閃によってひるんだ魔物が、次どのような動きをするのかヴィーラには手に取るように分かった。
相手の行動を読み、的確な行動をとり手玉に取る快感。
(これは、こういう衣装だったのですね……!)
魔物に止めを刺した瞬間、ヴィーラは絶頂していた。命の取り合いの中で膨張する生殖本能が、ギチギチと音を立ててボンデージに締め付けられる。
(……ああ、満たされていく……!)
ヴィーラの活躍は歴戦の団員達からしても目を見張るものだった。戦闘が終わると、陣頭指揮を取っていたグランがヴィーラを労いに来た。
「ありがとうヴィーラさん! すごい活躍だったよっ!」
「あっ……」
不意打ちだった。グランはヴィーラの洗練された剣技に興奮しているようで、感謝の気持ちもあいまってヴィーラの左手に両手で握手している。
もしこれが平常のヴィーラだったなら、グランの興奮をいさめる一言を発しつつ、他の女性陣からの嫉妬の目に少しだけ優越感を得て、自分から手を離していただろう。
だが、今のヴィーラは、
「グラン、さん……」
「?」
『僕は、ヴィーラ・リーリエ様の——!」
「あなたは……私の……」
「ん? ヴィーラさんの?」
「!? ……い、いえ、なんでもありません。被害状況を確認しましょう。人的被害はないようですが、船体は見なければならないでしょう」
「うん、そうだね」
グランとヴィーラの手が離れる。グランはすぐに他の仲間にも声をかけながら甲板の見回りに行ったが、ヴィーラはグランの温もりが残る自身の左の掌を、いつまでも見つめていた。
ヴィーラにとってグランが特別な存在だと確信したのは、ヴィーラとシュヴァリエが和解して目覚めた際に最初に感じた、グランの手の温もりだった。
当時、ヴィーラは自身の感情の激しい芽吹きに動揺して、戸惑いと嬉しさの混じった涙を流したものだったが、今、ヴィーラが感じた彼の手の温もりは、ヴィーラにとって全く新しい意味を持ち始めている。
(全然……全然違うっ。この手の温もりに比べれば、夢の中での感覚なんて……比べ物に……!)
ヴィーラは自室に鍵をかけるとすぐさま外衣を脱いでボンデージ姿になり、ベッドに腰かけて大股を広げ、自身の左の手のひらにキスをした。全ての動作がよどみなく迅速だった。
「あぁ……! んちゅ……グラン、さん……♡」
夢、妄想などというものは、現実の感触に比べればいかに儚く不確かなものかをヴィーラは実感していた。アルビオン領主時代、カタリナの事を想い一人泣いていた日々が、グランの騎空団での幸せな日々に塗りつぶされたように。連日夢と妄想に悩まされていたヴィーラは今、グランの感触と温度と幸せな思い出に支配され、喜びをさらに高めようとしていた。
「はあぁぁ……♡」
確かな感触の記憶がヴィーラの脳内妄想を加速させる。彼の手が、指が、この感触と温度ならば、他の部位は? 肌は、唇は、舌は、彼のもっとも秘められた部位は、きっと……!
(手を握っただけで、こんな……!)
ヴィーラの指はボンデージのTバック型のショーツに伸びる。
そこには背徳的な機能美があった。ショーツの中央には女性器に沿って走る、排泄のためではなく生殖のためだけにつけられた機能的なジッパー。
ヴィーラはゆっくりと降ろしたが、肌を傷つけない最大の配慮がされた作りをしていた。
現実を媒介に妄想を生成しながら、湿り気を帯びたその場所へ、舌で濡らした指を這わす。
(さあ、この昂ぶり……鎮めていただけますか?)
『はい、ヴィーラさん……』
くちゅ……。
「はぁあんっ♡ あっはぁあ……んむっちゅぶ……♡」
ヴィーラは右手で秘部を慰めながら、左手の指を口に差し込んで激しく舌と絡ませる。
今、ヴィーラの視界は一人の男の顔で埋め尽くされている。
(あぁっ! 足りません、まだ、まだ、まだ!!)
ビクビクビク! プシュ……プシャァ………!
両足がピンと張り、ヴィーラの視界が白く染まる。しばらくそうしていると、今度は股を広げたままベッドの上で膝立ちになり、
(まさか、一度で満足するとは思っていませんよね……? お姉様に不埒な視線を向けないよう、徹底的に躾て差し上げますっ!)
「あんっ、はぁあっ、あはぁああん♡」
腰を激しく上下させるヴィーラの動きでギシギシとベッドが音を立て、秘部に差し込まれた指が抽送を繰り返す。
ヴィーラの中のグランの表情が、激しい快楽で歪み、ヴィーラに懇願する。
『ヴィーラさまっヴィーラさまぁっ! あぁああっ!』
(ああ! そう、その表情です! もっと、もっと私を楽しませてくださいっ♡)
ヴィーラの中でこの瞬間、現実と妄想の区別がなくなっていく。
体に感じる喜びだけが全てだった。
「はぁあっ中にっ、全部、吐き出しなさいっ! 私に、わたくしっ、だけにっ! はぁあああああ♡」
ビクビクビクビクビクビク! プシャアアアアァァァ…………。
ヴィーラは自身が望む以上の発散をもって、黒光りするボンデージを濡らし続けた。
ヴィーラは、肥大する新たな性欲との付き合い方を確立した。
シュヴァリエは決して干渉していない。あのボンデージに特殊な魔術がかけられていたわけでも、ない。
ただ、どこかでボタンを掛け違えたヴィーラの欲求と感情が、ボンデージの存在をきっかけに、加速度的にヴィーラを侵食していた。
ヴィーラは、その侵食を好意的に受け入れつつある。ボンデージを着込むことで、まるで血行がよくなるように、魂のよどみがほぐされていくかのような感覚を得ていた。
カタリナの日記を書き満足感を得、また違う満足感を得るために、ベッドの上で激しい妄想をしながら体を動かす。
そんな日課が定着し始めた数日後、グラン、ルリア、カタリナ、ヴィーラの4人で朝食をとっていると、不意にルリアが羨望の眼差しでヴィーラに話しかけた。
「最近のヴィーラさん、なんだかとても大人っぽくて魅力的で、うまく言えないんですけど、憧れちゃいます……えへへ」
「あら、ありがとうございます。しかし急におだてられても、何もありませんよ?」
「いや、ヴィーラ。ルリアの言うとおりだと私も思うよ。落ち着きと言うかなんといえばいいかわからないが……最近の君は日々の動作や所作がより洗練されているように思える。グランも、この前そう話していたな?」
「うん、ヴィーラさん、率先的に周りの人を助けてくれたり気遣ったりしてくれて、団の人たちの間で最近評判になってるんだ。ありがとう、ヴィーラさん、みんなを助けてくれて」
「それは知らなかったっ。……ありがとうヴィーラ、私からも礼を言う」
「わぁ! ありがとうございます、ヴィーラさんっ!」
「まあそんな、お姉様まで……! 光栄です。あまり私自身の変化に自覚はありませんが、もしこの船で暮らす中で影響があったのだとしたら……それは、グランさんなのでしょうね」
「え、僕?」
「ふふ、なるほどな」
「なるほどですっ」
きょとんとするグラン、顔を見合わせ納得した微笑みのカタリナとルリア。絶対の信頼と好意があるのは、彼らと深い関係にないものでも見て取れる空間。
「……」
ヴィーラに去来する一瞬の寒さ。嫉妬なのか、嫉妬ならば誰に対する嫉妬なのか。あるいは、あの輪の中に自身が入っていない寂しさか。それら全てかもしれなかった。
(今日もまた、激しくなりそうですね)
ヴィーラは衣服の上から、腹部を格子状にしめつけるベルトをなぞる。その意味を知るのは、ヴィーラだけだった。
空の食器を乗せたトレーをそれぞれ持って立ち上がるカタリナとルリア、
「では、そろそろ行こうか」
「はい」
グランもそれに続こうとした、その時だった。
「あっ」
ルリアの足が机の脚に当たり、ルリアの体がぶれ、片足がアンバランスに上がり、食器が宙を舞う。
机の対面にいたヴィーラにできることはない。ルリアの隣に移動していたカタリナとグランが即座にトレー、食器を空中で掴むと、転びそうなルリアの腰を二人で抱えて支える。
自然、グランとカタリナの両手は埋まり、状況を最適な形にするために体が無意識に動いていた。お互いギリギリ衝突せず、ルリアと食器を救った素晴らしい反射神経だった。
ただ、あまりにギリギリすぎた。
『チュッ』
「「「!?!?!?」」」
グランとカタリナの頬が一瞬で真っ赤に染まり、ヴィーラの表情から色が失われる。ルリアは何も知らないし見ていない。傍から見ていたビィはルリアを心配している。
奇跡的な不可抗力は、近づきすぎたグランとカタリナの顔の一部分を触れ合わせ、さらには食器をつかんだグランの右手の指はカタリナの臀部の端に、左手の指は胸部の端に触れてしまっていた。
グランはすぐに「ごめ、ごめんなさいっ」と言いながら離れ、カタリナも「あ、ああ。問題ない」と咳払いしてルリアの無事を確認していた。
ヴィーラはその間、固まっていた。
(い、いま)
二人がつかんだ食器が死角になり、ヴィーラにしか見えなかった現実。
(お姉様の唇が、グランさんの頬に、グランさんの唇が、お姉様の、頬、に……)
これだけならただの事故であり、今までのヴィーラならば内心猛り狂いながらも、グランに釘をさす程度(物理ではない)で済んだだろう。
とどめとなったのは、カタリナが去り際に再び頬を赤く染め、名残惜し気に指先で、グランの唇が触れた場所をなぞる姿だった。
「ふふ、うふふふ」
ヴィーラの中の休火山が突如として燃えたぎり、壊滅的に噴出した。
トレーをもったヴィーラは早足で追いつき、微笑みと共にグランへ話しかける。
「グランさん、この後、お時間ありますか? ありますよね? あるに決まっています」
ヴィーラの肉を締めるボンデージが、ギチギチと悲鳴を上げ始めていた。
ヴィーラの部屋は暗く静まっていた。
カタリナへの不意の口づけを目撃され、ヴィーラの有無を言わさない雰囲気にすっかりのまれてしまったグランは、緊張でピンと背筋を正し、こちらに背を向けたままのヴィーラへ、精一杯の謝罪の意を込めて頭を下げた。
「ごめんなさい! カタリナさんに、とんでもないことをしてしまって……お詫びにできることなら、なんだってするよっ」
すでにカタリナには許してもらっているのだから、グランの謝罪行為は奇妙と言えた。しかしそれでもグランはヴィーラに対して、誠心誠意の謝罪と詫びをする必要があると心から思っていた。
ヴィーラのカタリナへの激烈な好意は当然知っていたし、先ほどのグランとカタリナの触れ合いが事故だとしても、至近距離で目撃したヴィーラが被った精神的なショックはきっと絶大のはず。
ヴィーラは怒っているだろうし、悲しんでもいるだろう。それでも、なんとか感情を爆発させないように耐えているかもしれない。耐えているなら苦しいはずだ。
(ヴィーラさんの苦しみや怒りや悲しみを、少しでも和らげることができるのなら)
グランもまた、ヴィーラの事が大切で大好きだった。この騎空団では、楽しい日常を過ごしていてほしい。グランの「お詫びになんでもする」という言葉は、嘘偽りのない本心だった。
「今、なんでもすると言いましたね」
(ひっ)
振り返ったヴィーラの氷のような表情を見て、グランは恐怖した。グランからヴィーラへの誠実すぎる想いが一瞬で吹き飛ぶほどの氷の眼差しだった。
ヴィーラの口調は暗く冷たい。
「ご安心ください。お姉様に不埒な事をしたこと自体については、大したお詫びは望みません。お姉様自身が許していますし、あなたのことも信頼しています」
ヴィーラが近づいてくる。吐息がかかりそうなほどに顔をグランへ近づけると、
「座っていただけますか?」
ヴィーラが瞳を横に動かし、グランの視線を椅子へと誘導する。グランは「は、はい」と声を絞り出し、背もたれのある椅子に座った。
するとヴィーラがグランへ対面座位の形でグランの太ももの上に座り、
「えっちょっ!?」
グランが顔を真っ赤にして反応を返す前に、ヴィーラがすっと体を離して立ち上がる。
「え……あ!?」
グランが状況に気付いた。グランの腕が椅子を巻き込みながら後ろ手に縛られ、身動きが取れなくなっている。
「けれど……お姉様の心情をたぶらかす天然の人たらしの危険性は、矯正する必要があります」
「うっ」
ヴィーラを見上げるグラン、「なんでもする」と言ってしまったものの、さすがにこれはやりすぎではないだろうかと口を開いた瞬間、ヴィーラは、目の前で衣服を脱ぎだした。
「あっ……!」
グランは視線を外すことができない。ヴィーラの柔肌は水着で見たことがあったものの、女性が目の前で裸になろうとする過程など、グランは見たことがない。
ヴィーラは微笑みながらグランへ流し目を送り、しゅるりと胸のリボンを外した。まるで童貞をたぶらかす娼婦のようだった。
逆に赤い外衣を脱ぎ白いビスチェのみになった姿は、清廉な美女のよう。あまりに煽情的で魅力的な光景に、我を忘れて釘付けになっていたグランは慌てて視線を外し、「な、なにを!?」と声を上げた。
ヴィーラはグランの頬を包んで、鼻を触れ合わせるほどに顔を近づけ、冷えた声でつぶやく。
「見なさい。なんでもするのでしょう?」
「……!」
グランは蛇に睨まれた蛙と化し、ヴィーラは満足そうに微笑んで離れる。
ヴィーラは自身の白いビスチェに手をかける。グランはもう、見つめるしかない。
そこから現れるのはおそらく、彼女の輝くような素肌に違いない。拘束されたことを忘れ、背徳感と性的興奮に包まれ始めたグランが目にしたものは、
「えっ……!?」
ヴィーラが全ての外衣を脱ぎ、現れたのは、黒光りする革製衣装。あまりにきついサイズで、ヴィーラの豊満かつ完璧なくびれを持つ肉体を絞って浮き上がらせるボンデージ。
乳首と性器のみ露出から守り、それ以外の乳房と鼠径部はむき出しで、お腹や太ももには細いベルトをクロスさせ、肉を浮き上がらせる。
露出が多いグラマラスな女性団員を見てきたグランからしても、その姿は異様だった。ただ露出が多いだけのエロティックな衣装ではない、トーメンターのよう攻撃性が込められているのは見ただけでわかった。
そんな衣装にヴィーラが身を包み、自身を拘束している。忘れかけていた恐怖が、グランの心に這い始めていた。
「お姉様からの口づけをいただいたのは……こちらですね?」
ほの暗い闇の底から発したような声を響かせ、ヴィーラはグランの頬を人差し指でなぞった。グランから分泌された汗が一筋、ヴィーラの指先へ向かう。
グランからヴィーラの顔を見れば、まるでこのまま頬を引きちぎられるのではないかと思ってしまう程の威圧感がある。せめて、垂れた汗がヴィーラの指に触れないように顔の角度を若干動かしたとき、
「ちゅうぅぅ」
「!?!?!?」
ヴィーラの唇がグランの頬を、垂れた汗ごと吸引した。
未知の感覚に、グランは乾いた息を吐いて混乱した。今自分は、本当に現実の中にいるのか、状況に恐怖しすぎて逃避の妄想をしているのではないか。
ヴィーラの口づけは、触れたと呼ぶには激しすぎた。このまま吸い尽くされるのではないかとグランは錯覚した。
「ちゅぽんっ………ん……」
ヴィーラが唇を離し、少しとろけたような表情で頬を赤く染める。
そんなヴィーラを見て、グランからは恐怖の感情が消え始めた。あのヴィーラが、自分の頬に口づけた。いや、多分カタリナとの間接キスをしたのだろうが、だとしても、望外の喜びであり、現実感が無かった。信頼する仲間であり美女であるヴィーラから、こんな熱烈な愛の行動をしてもらえるなんて、男として喜ばないわけがない。
おそらく今、ヴィーラはカタリナと間接キスができて恍惚の最中にいるのだろう。そうグランが思った刹那、ヴィーラはグランの太ももの上にまたがり、再び対面座位の態勢に入る。
ヴィーラはグランの首に腕をまわし、唇を少しだけ突き出した表情でグランを見つめる。
グランはすっかり、ヴィーラに魅了されてしまっていた。これから何をしてくれるのだろうかと、抵抗を忘れて期待してしまっていた。
だが、ヴィーラはというと、
(わた……くしは……!)
今までヴィーラが生きてきた中で、おそらく最大の葛藤を迎えていた。
アルビオンで最愛の人との別離を体験し、また同じ場所で最愛の人との和解を経て自分の視野狭窄を実感し、空の旅を経て友人が増えていき自覚した心境変化。
シュヴァリエと向き合い、グランとの大切な繫がりを受け入れた今日(こんにち)、自らの欲望の暴走をきっかけとして、新たな扉を開こうとしている。
ヴィーラにだって恐怖はあった。グランに拒絶され、距離を取られたら?
リスクと理性を天秤にかけ、それでも欲望へと傾いたとき、グランの耳元で囁かれたヴィーラの声色は、少しだけ優しくなっていた。
「ヴィーラ『様』と…………呼んで、いただけますか?」
時おりグランが聞くことができる、ヴィーラの穏やかな声色。
グランもこの状況、受け入れればどうなるかは予想できる。予想したうえで、
「ヴィーラ……さま……!」
血液を充填し始めた、男の象徴に従った。
「……ふふ……うふふ……あははっ……!」
ヴィーラが顔を上げ、グランを見下ろす。
ヴィーラの威圧感は増したが、表情は興奮と喜びに満ちていた。
「正直に答えなさい。お姉様に口づけをされた時、指の先端がお姉様のお体に触れた時、嬉しいと思いましたか? 心地よいと思いましたか? 性的興奮を覚えましたか?」
グランは、従順を覚えた。
「……戸惑ったけど…………嬉しいと、思った、思いました。心地よくて……今、思い出すと、その、興奮を……」
「これはいけませんね。お姉様に危険が及ばないようにしなければいけませんし、かといってグランさんが欲求を溜め込むのも健康的ではありません。では……」
グランのズボンを押し上げ始めた男根をヴィーラはさらりと指でなぞる。
「性欲を私だけに向けるよう、調教してさしあげ……いえ」
もしヴィーラが鞭をもっていたら、ピシャリと音を鳴らしていただろう。
「性欲を私だけに向けるよう調教してやります」
ヴィーラの迅速な行動、グランのズボンにパンツごと手をかけると、グランに腰を引かせて一気に降ろす。
「ふふ、何に興奮したのですか?」
ヴィーラはペニスを指先でなぞらず、鼠径部をなぞった。グランは声を上ずらせて答える。
「ヴィ、ヴィーラさんが」
「ヴィーラさん?」
「!? ヴィーラ様が、その、き、綺麗すぎて……!」
「あら、ふふ……悪い気はしません。まずはしっかりと、上下関係を刻んでさしあげます。しっかりと、その体に……ちゅ」
ヴィーラの柔らかな口づけは、再びグランの頬。ヴィーラが先ほど吸い過ぎて少し赤くなった箇所だった。
それだけで、グランは幸福と快楽で身を震わせてしまう。
「お楽しみはここからですよ?」
ヴィーラは立ち上がり、座るグランの右横に位置取ると、前かがみになって右手でグランの竿をつかんだ。
ヴィーラとて初めての経験だったが、そんな動揺はおくびにも出さない。女王様は従僕にそんな弱みは決して見せなかった。
「ちゅ、んちゅ、れろっ」
ヴィーラの唇が、舌が、グランの顔を犯し始める。
「うっうあっ!」
グランは身もだえしたが、グランからヴィーラに口づけすることはできない。ヴィーラの唇が口に近づいてきたときになんとか顔を寄せようとしたが、その度に、
「こらえなさいっ」
というヴィーラの言葉で、竿が痛みを伴わないギリギリの強さで上下にしごかれた。
「はうぅ!? は、はい、ヴィーラ、さまぁ……!」
ヴィーラの鋭利な声色に制された直後、「んちゅうぅれろぉ♡」と甘いヴィーラのディープキスがグランの耳を襲い、グランは混乱する快楽感覚の中、しごかれるペニスからビクビクと我慢汁を分泌するしかなかった。
「んちゅ、ちゅぱ♡ ふふ……決して出してはいけません。許しが出るまでこらえなさい……!」
ヴィーラはグランの顔中にキスをするが、唇にキスは決してしなかった。頬を、鼻先を、耳を舐めしゃぶり、吐息と甘い嬌声を絶えずグランへ浴びせ続ける。
「ちゅるる、ちゅぱ♡ れろぉん♡ ちゅぷはぁ、はぁん……♡」
グランは律義に下腹に力を込め、射精を耐えた。だが限界はある。
(も、もう無理だ! でも、ヴィーラ様の、期待に応えないとぉ……!)
そんなグランを知ってか知らずか、グランが気を失いそうなタイミングで、グランの顔をすっかり堪能したヴィーラが、愛撫に変化をもたらす。
(ふふ……私があなたと、このような関係になれたのは、この衣装のおかげ。ですからグランさんにも、この圧迫感を……!)
ヴィーラは右手でペニスをつかんだまま、左腕でグランの顔を抱え込み、
「まだまだ、果ててはなりませんよっ」
黒光りする衣装に包まれた双丘、そのむき出しの谷間へ、グランの顔を押し付けた。
「んむぅうう!?」
グランの顔を覆う、ヴィーラの雌の香り、柔らかくかつハリのある弾力。グランの顔全てを覆うかのように豊満なのに、後ろからヴィーラの左腕で抱え込まれて圧迫され、両横はボンデージの作用による乳房のきつい圧迫感。
「はぁん♡ 締め付けられる感覚はいかがですかぁ?」
しかもヴィーラは悩ましく激しく体を揺らすものだから、乳房から乳首がはみ出て、時々グランの唇と頬をなぞるように触れてしまっている。
ヴィーラの興奮も加速度的に上がり、手コキの速度もどんどん速くなっていった。
(ああ……グランさんの感情が、感覚が、手に取るように分かる……! 今グランさんは完全に、私のもの……!!)
(もうっ出るっ!! 出るぅううう!!)
グランが谷間の中で声にならない悲鳴を上げ、腰を突き上げようとした瞬間。
絶頂寸前で、ヴィーラの体が全て離れた。
「はい、おあずけ」
「……えっあっええええっ!?」
ぴゅっと、グランの我慢汁が噴出し、ヴィーラはパシンと音を立てて中空の我慢汁を右手で掴む。
そのままヴィーラは右手の我慢汁をぺろりと舐めると、微笑みながらも威圧感のある声で、
「あら、私を見くびらないでいただけますか?」
「へ? え?」
「私には、あなたが望むことが全てわかっているんです。本当はあなたが、私にどのように犯されて、どんな場所に欲望を解放したいのか……!」
ヴィーラは露出した乳房を左手で鷲掴み、指先で乳首をくりくりと刺激しながら、自身の太ももに右手の人差し指と中指を這わせ、股間に来ると、二つの指を広げた。
グランは、なぜここまで拷問的に焦らされているのか、全て理解した。
「今のあなたは、何も考える必要はありません。ただ私に従い、私のなすがままになさってください。それがグランさんの、至上の喜びとなります」
「ヴィーラ……さまぁ……!!」
「夢中で気づいていないみたいですが、もう拘束は解きましたよ」
「あっ……!」
グランは完全に自由になっていたが、椅子に座ったまま、姿勢を正して動かない。ただただ勃起し、ただただヴィーラの行動と命令を待っている。
「ふ、うっふふふふ、あはっ! あっはははははははははは!!!」
ヴィーラは立ったまま、のけ反って絶頂していた。夢が現実になった。
「さあ、裸になって! 仰向けになり、手足を曲げて体を開きなさい!」
「はいっヴィーラ様っ!」
すぐさま衣服を放り投げて全裸となったグランが、床に背中をつけて仰向けになり、両膝両肘をたたみ、胴体を見せつけるように、折り曲げた手足を外側へ。
全てをさらけ出した服従姿勢のグラン。
期待に呼吸を荒くするグランへ、ヴィーラは見せつけるように、自身の股間に指を這わす。
(ヴィーラ様が、目の前で、パンツを下ろ……!? い、いや、違う?)
「ふふふ……」
ヴィーラの黒革製のTバックの中心には、秘められた性器の形に沿うジッパー。決して内側にも外側にも傷をつけないよう配慮されて作られた、排泄のためではない、性的欲求のためだけの開通口。
ヴィーラはゆっくりとチャックを降ろし、最後まで下げ切ると、グランの両足首を掴んで、M字開脚したグランの亀頭へ、ゆっくりと腰を下ろしていく。
腰を下ろし股を広げることで、開かれたショーツの口がぱっくりと開く。亀頭と触れ合う直前で、だらだらとヴィーラの膣から涎が垂れていく。
「あっ、ああ! ヴィーラさまぁあ!」
(出せる! 出せるっ! 最高だっ! ヴィーラ様の中に、はやく、はやくっ!!)
「では、頑張ってくださいね?」
「へ……?」
ヴィーラは一瞬片手を離すと、器用に小型のベルトをペニスの根元に巻いて圧迫し、
ズチュン!!
腰を最後まで降ろし、グランのペニス全てを圧迫した。
「あぐっあがぁああああああ!?」
「あぁあんっ♡ いいっ♡ 硬くて、はぁあん♡ このまま、しごき下ろしてさしあげます♡」
グランにとっては天国にして地獄。あれだけ焦らされて、やっと挿れさせてもらったのに、女王様は、
バチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュ!!
腰を振り乱し、手コキとは比べ物にならない速さと圧力でペニスに最高の刺激をもたらしてくる。
しかもヴィーラは、泣き出しそうなグランへ甘い飴も忘れない。
「はぁっ好きぃ♡ 愛していますっ♡ グランさんっ♡ んちゅうううう♡」
「んむぅうっ!?」
決して唇にはキスをしなかったのに、ここに来てつながったままヴィーラから愛の告白と、激しいマウス・トゥ・マウス。唇だけのキスだったが、それが余計に乙女チックかつ激しい吸引で、キスの音を響かせる。
さらにヴィーラは掴んでいたグランの足首を離し、ヴィーラから両手をそれぞれグランの手と恋人繋ぎしていく。
「ちゅうぅううう♡ んむちゅうううううう♡ ぷはぁあん♡ あなたからも、言ってください♡」
「あっあっヴィーラ様っ! ヴィーラさまぁ! ぼくもっ、愛してますっ! 愛してます!! だから、だからああぁ!」
バチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュ!
ヴィーラの腰がさらに激しく上下していく。プシュプシュと潮がまき散らされ、勃起したヴィーラの乳首とクリトリスがグランの前で揺れ動く。
「はぁあぁん♡ 実はわたくしっ、危険日なのですけど、このまま射精したら、どうなってしまうのでしょう? あぁんっ♡」
「えっ、あっ、そっ、えぁあ!?」
グランの脳はとっくに限界を超えていた。ヴィーラ様以外のなにもかも彼方に消え、ただただ愛欲と性欲の最高到達点を追い求める。
「ヴィーラっ! ヴィーラ様にっヴィーラ様の中にっ! 子供がっ!」
「ふふっそうですねっ♡ そうなったら、大変なことですっ♡ ドプドプと白いものを吐き出したら、グランさんとっ私の、子供っ♡」
「うぐっあああああっ!?」
「さあっ、ちゃんと、最後は、口にしないと、伝わりませんっ! あなたがしたいことを、私にしてほしいことを! わたっくしの! 中に! あなたの欲望を全部、出して♡ さらけ出しなさいっ♡」
「ヴィーラ様、ヴィーラ様ぁああっ!!」
このまま射精したら、ショックで死んでしまうかもしれない。グランは本気でそう思った。が、だからなんだとすぐに思い直した。
(グランさん。私だけを、見て)
(もう、ヴィーラ様しか、見えない)
グランは、ヴィーラと共に望む言葉を、発射した。
「ヴィーラ様っ、僕の子供をっ、産んでくださいっ!!」
「はいっ♡」
ヴィーラの人差し指によってピンッと、ペニスの根元のベルトの留め金が解放される。
その瞬間、
「あむれろっんむちゅうううううううううぅぅぅ♡」
ヴィーラの唇と舌が、グランの唇と舌を舐めしゃぶって吸い尽くし、
バチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュンッッ!!
二人限界まで混じり合い、全てを解放した。
ドビュルルルルルル!! ブビュルルルルルルルル!! ブビュウウウウウ!!
プシャアアアアアアアアアアア!! ビクビクビクビクビクビク!!
ヴィーラとグランの視界と思考が弾け、全身が痙攣し、絶頂が止まらない。
(グランさん……グランさん……グラン……♡)
(ヴィーラさまぁ……!)
それでも二人の生殖本能だけは正常に激しく脈動し、深くつながった接合が離れることがない。
そればかりかボンデージによって圧迫されているヴィーラの体は膣圧にまで及び、二人の接合部からグランの精液は漏れ出さず、みっちりと密着した膣内がペニスをポンプのように搾り取り、ヴィーラの胎内を白濁液で満たしていく。
ブビュウウウウウウ……ビュウウウウウ……ブビュウウウウウウ………。
プシャアアアアアア……チョロロロ……ビクビク……ビクン……。
絶頂が小康状態になっていくにつれ、二人の目に光がもどり、繋がったままの唇の中で、舌と舌をねっとりと絡ませ合う。
「あむっれろっ……♡ よく、できましたね……褒めて差し上げます……ちゅるれろ♡」
「はいっ……ヴィーラ様ぁ……んんっ……」
ビュウウウウウ……ビュクビュク………ビュウウウウウ……。
二人の関係は、決定づけられた。
グランには二つの喪失感があった。1回の射精なのに、一生分射精したかのような体力の喪失と、今までとこれからの自分の尊厳が音を立てて崩れ去った喪失感。
(でも……ヴィーラ様に犯されて種付けさせてもらって……激しくキスもしてもらえる……これ以上の、幸せなんて……!)
そんなグランの全てを理解しているヴィーラは、舌を絡ませながら恍惚の笑みを浮かべ、絶頂の波を長引かせようと腰をくねらせる。
「ちゅるるっ♡ あなたはもう、私のものです。私の望みを叶え、私のやること全てに喜びを感じ、私のために生きなさい。それが、あなたの喜びなのですから……♡」
「はいっ……ヴィーラ様……!」
二人の絶頂が終わる。あれだけ焦らし、あれだけの交合と種付けを終えたのに、ヴィーラの欲望はとどまることを知らない。
「ふふ……愛しい人……ちゅぷちゅううれろっ♡ ちゅうううちゅるちゅる♡」
と、グランの舌をフェラチオし、「ちゅぽん♡」と唾を飛ばしながら唇を離すと、膣圧でぎゅむぎゅむとペニスを愛撫しながら、グランの瞳をのぞき込み、
「勃ちなさい」
「はいっ!」
と、再び接合部のつながりをみっちりと圧迫させる。
あなたに溺れるほどの幸福を、押しつぶされそうなほどの愛と悦楽を。
お互い言葉に出す必要がない。二人の永遠の誓が交わされた。
「ヴィーラ様……!」
二人は手を握り合う力を込めなおし、唇と唇が触れ合ったまま。
自身の望み、そしてグランの望み全てを叶えるため、ヴィーラは宣言する。
「孕むまで何度も犯してあげますからね。グラン♥」
skebでリクエストいただきました。
読んでいただきありがとうございます。
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