TSしたはいいけどドスケベボディ過ぎると思う。 作:サンゴ珊瑚
二、三話くらいで終わると思います。
茹だるような暑さを感じながら俺こと
なんでこんな暑い日に学校に集まらなきゃならんのだ。もっと涼しい時でもいいだろうとか思う。さっきまで夏休み明けにある体育祭についての話し合いがあったのだ。
不本意にも俺がクラスの副委員長と言うこともあり強制参加させられた。
男4で女2って結構窮屈なんだよなぁ…。まさか俺が女側に立つことになるとは思わなかったわ。
ごく普通の男子高校生だったのに4ヶ月前に朝起きたら女になってしまっていて、制服の変更や個人情報の変更などを余儀なくされたのだ。
突然変わったのだから突然戻るとかないのか?と思って気楽に過ごしていたら早4ヶ月。時間の経過とは恐ろしいもので、仕草や座り方などが徐々に女性になっていると妹に言われた時には凹んだ。
まあでも女になって感謝しているところもあるのだ。それは妹たちと仲良くなれたことだ。
俺には14歳と7歳の妹がいるのだが会話という会話がなかったのが、俺が女になってからはよく遊んでくれるし、話もしてくれるようになった。
それだけは本当に嬉しい。神様ありがとう。
「お〜い!むらちゃーん!!」
「げ」
後ろからこの世で一番聞きたくない声が聞こえてきたので振り向くことなく前を見たまま耳を塞ぐ。
「ちょっと!耳塞ぐことないじゃん!」
後ろから聞こえてくる足音からして小走りで迫ってくる女。素直に帰って欲しい。
「私を置いていくなんて酷いっ!むらちゃん唯一のお友達なのに!ぷんぷん!」
両肩を掴まれて動きを止められる。コイツ無駄に力強いんだよな…。本当無駄に。しかも足も速い。50mを8秒51で走りやがる。クソが。俺なんて9秒かかるんだぞ。ふざけんな。
馬鹿力で後ろにいる女と向かい合うことになる。黒髪を一つ結びにして綺麗な頸を惜しげもなく晒し黒く大きな瞳は吸い込まれそうになる。これまた端正な顔立ちをしている。所謂美人だ。
しかもコイツモデル体型の上に美乳に腰もくびれていて、尻も小さい。クソが。腹立つ。
対して俺は無駄にデカい乳に腰だけ細くて尻もデカい。安産型ってやつだろう。日に日に大きくなる乳が怖い。4ヶ月しか経ってないのに2回もブラのサイズ変えてるし、最近制服の胸辺りがキツイんだよな…。
ただでさえ白髪な上に赤い瞳、真っ白な雪を連想してしまうほどの白い肌。そこにデカい胸に尻ときた。それだけで十分視線を集めてしまう。もっと普通でよかったのにな…。
「き・い・て・る・の!?」
「え?ああ…聞いてなかった。なんか用?」
見上げるように晴天を見ていると目の前の女に引き戻された。俺がTSしてからやたら俺に声をかけてくるんだよな。他にも友達とかいるのにさ。
俺?もう友達なんて一人もいないよ。
「これから一緒にお昼でもって。一応むらちゃんの声も聞いておこうかと思って」
「参考にする程度かよ」
「だってむらちゃん雑なんだもん。ジャンクフードか丼ものしか食べないじゃない」
仕方ないだろ。両親いないし、金銭的な問題もあんだよって言いたいけど…言えるわけない。というのもあるけど。
「好きなもの食って何が悪いんだよ…」
やっぱりカツ丼とか八宝菜丼とか美味しいんだよな。洗い物も少なくて済むし。
「ちゃんと野菜も食べようね〜」
「苦手なんだよ…野菜…」
農家の方々には本当に申し訳ないが、どうも俺は野菜を好きになれなくてな…。結局肉か魚になっちまう。
その点コイツは野菜中心の食事ばかりしている。実に健康的な食事だ。
「ずっとお日様に照らされるのも大変だし移動しよっ!」
「は?どこに?」
「もちろんお店に!」
手を引かれて、このクソ暑い中店まで走らされた。マジでぶん殴ろうかと思った。
ーーー
「お前の…ハァ、ハァ…速度に…俺が合わせ…られる…わけ…ねぇ…だろう……が!ふざ…けんな…!」
もう今すぐに倒れ込みたい。早く店内に入らせてくれ。クソ暑い。汗が気持ち悪い。
「お前じゃないですー。私には
うぜぇ…。あんなに走ったのにコイツ息切れもしてない。ちょっとだけ汗かいてる程度。運動部め。
「ほらほら行くよっ!」
「お、おい!汗くらい拭かせ、引っ張るなぁー!」
強引に引っ張られ動きたくないと主張する足を動かして店内へ。
「涼しい〜」
「オアシス…」
店に入った瞬間は正にオアシス。空調万歳。偉大なる先人達に感謝しかない。店員さんに案内され席に座る…のだが。
「なんで隣に座るんだよ。暑苦しい」
俺の鞄とコイツの鞄は対面のソファに二つ置かれ、俺と光が一緒のソファ席に座る。しかも汗かいてる俺にべったりひっついて来やがる。うぜぇ。
「え〜?いいじゃん。どうせあーんするんだし」
「やらねぇよ。公共の場で何見せようとしてんだアホ」
お昼時ということもあり周りは結構埋まっていて隣や前後の席には他の客がいるのにだ。こう言うことを平然と言うしなんなら有言実行してくるのが光の怖いところだ。
店員さんがお冷やを持ってきてくれたのでそれをありがたく飲む。冷えた水が喉を通る度に全身が喜んでいるようにも感じる。それが夏の良いところでもあると思う。
「オイ」
「ん?」
「『ん?』じゃねぇよ。何自然に俺の口つけたやつ飲もうとしてんだ」
流れるような動作で俺が置いたお冷やを掴みそのまま飲もうとしている。恐ろしい程自然に。俺がメニュー表に手を伸ばした瞬間に光が動き出したのを俺は見逃さなかった。ていうかこういうことを光は何度もしてきたからこそ反応出来た。
これに何度やられたことか。ある時は水筒を。ある時は自販機で買った水を。ある時には飲食店で。本当に勘弁してくれ。
「私たちの仲だし良いよね?」
ニコッと花が咲くような見惚れるような笑顔を浮かべているが俺は騙されない。
「ダメに決まってんだろ。自分の飲め」
そう言った途端に笑顔は膨れ顔になる。両頬を膨らまして唇を尖らせる。
自身の顔の良さを良くわかっている。
「ケチ」
「光。何頼む?」
話を切り替える為にもそう呼び掛ければ、嬉しそうに俺と顔を並べてメニュー表を見る。
「んー…むらちゃん何にするの?」
「俺はー…グラタンにしようかな」
「なら私ポテトとサラダにするね」
注文をして後は待つのみ。俺はスマホでもいじろうかと思ったが鞄は向こう。取りに行こうにも光がいて取りに行けない。
隣を盗み見ると光は何が面白いのかずっと俺の顔を見ている。ていうか俺が光を見たのが秒でバレてクッソニコニコしている。ムカつく。
「むらちゃん」
「ん?どうした?」
無言の見つめ合いをしてしまっていたら光が口を開く。流石に耐えかねたのだろう。後少し遅かったら俺が口を開いてた。
「今日三年の田中先輩に告白されてたよね」
「……なんで知ってんの?」
確かに今日帰る前に先輩に呼び出されて告白されたけど。屋上は俺と先輩以外いなかったし、帰る時も階段やその周囲には人はいなかったはずなのに。
「学年一位の成績に野球部キャプテンでエース。おまけに人柄もいいし、家族関係も良好。プロからの声もかかってて将来有望。そこいらの人じゃ太刀打ちできないくらいに素敵な男性だよね。どうして断ったの?」
「それは…」
「それは?」
俺はそもそも体は女だけどそもそも男だし、何より田中先輩とは全く接点がなかったと言っていい。体育祭のことでほんのちょっとだけ話をした程度で時間にして10分にも満たない。というのもあるし、そもそも俺自身先輩のことを知らないし、好きでもないのだから付き合うのは失礼だろう。
それじゃあまるで俺が相手をスペックと評判だけで選んだと言っているようなものじゃないか。
それに恋したことないからよく分かんないんだよな…。
「むらちゃんの顔から察するに…付き合いたくなかったとか?」
顎に手を当ててむむむと唸った後、光はそう呟き納得するように頷いた。
「何勝手に納得してんだよ」
「ん?いやーむらちゃんも難しい年頃ですなぁ…」
「はぁ?お前は一体何目線なんだよ…」
「保護者目線?」
「首傾げんな」
そんな言い合いをしていると店員さんが気まずそうに料理を運んできてくれていたので俺は背筋を伸ばしリセットし店員さんにお礼を言った。
「むらちゃんって店員さんにめっちゃお礼するよね」
店員さんが料理をテーブルに並べて去って行き俺がスプーンと箸を取ったところで光が呟くように言った。俺は光に箸を渡しながら返答する。
「これくらい普通だろ」
スプーンを左手に持ち狙いを定めて湯気が立ち昇るグラタンにスプーンを差し込んだ。
「いやーむらちゃんのは普通じゃないよ?だってむらちゃん食べ終わって食器返却とかの時に『ご馳走様でした』とか『美味しかったです』とか言うじゃん。あれ普通じゃないよ?」
熱々のグラタンを口の中に入れ舌が火傷するのを感じながら熱を逃すように小さく口を開く。
「ふぅ、ふぅ……皆んな口に出さないだけで、心の中じゃ感謝してるだろ」
熱いグラタンを咀嚼し飲み込む。そして光を見ることなく返答する。
なんか隣から不満ですオーラが感じられるけど放置。
「ほんと君のそういうとこが好きなんだよね…」
「なんか言った?」
「んーん。さりげなく私のお箸も渡してくれるむらちゃんは優しいなぁーって」
そう言いつつも手を合わせて小さく「頂きます」してるあたりコイツもちゃんとしてるのにな。
「これぐらい普通だろ。てか対面に座ってれば自分で取れたのに…なんでわざわざ俺なんかの隣に座るかね」
そう言うと明らかにコイツ分かってねぇーなって顔でこっちを見てくる。非常にムカつく。
「………はぁぁあ。ほんっとむらちゃんは乙女心が分かってない」
そう言いながら光はサラダから手をつけ始めた。キャベツからいくみたいだな。
「そんなクソデカ溜息するなよ。幸せ逃げちゃうぞー」
そう言いつつ俺はポテトを一つスプーンで掬い口へ運んだ。
「逃げないし。私がガッチリ捕まえてるから逃げられないし」
「は?」
「真顔で返すのやめな?マジ顔でビックリされるのが一番キツいんだから」
思わずポテトが口から出るところだった。危ない危ない。
「むらちゃん、はい。あーん」
ポテトを一つ食べ終わりグラタンを食そうとしていたら光がこちらに体を傾けてポテトを箸であーんしてきた。
「………それ食べたら間接キスじゃねぇか」
何個かツッコミを入れたかったが諦めて一番問題な点に触れる。
「今更間接キスぐらいで怯えてるの?あ、それともぉー…私だから緊張するとかそう言う「んなわけねぇだろがアホ」
最初は普通だったのに段々とニヤけ顔をして煽ってくるので俺は容赦なく差し出されたポテトに食らいついた。
「わ〜。豪快」
「………これ以上はしないからな」
「えー…折角二人っきりなのに?」
そう言って箸を持っていない右手で俺の腰に手を回して引っ付いてくる。
熱いからひっつくな。
「いや他にもお客さんいるし。それに同じ高校の奴ら来たらどうするんだよ」
「安心して。同じ高校の人は絶対に来ないし、この店でアルバイトしてる生徒もいないから」
「何を根拠に…」
「ふふっ…」
時折ゾクっとさせられる。妖艶な笑み。いつもの活発で、元気娘って感じから悪女のように笑うのだ。
「むらちゃんそんなボケっとしてるとグラタン冷めちゃうよ?」
「あ、ああ…」
まだ温かいグラタンを食しつつ、光と一緒にポテトを食べた。
ーーーー
隣で美味しそうにグラタンを頬張る村正ちゃんを見て胸が満たされる。
4ヶ月前は私が声をかける度嫌そうな顔をしていたけど、今はだいぶマイルドになった。
村正君の時から人としては好きだったけど異性として見たことがなかった。成績も運動も上の中と言った感じで、大抵の事は人並み以上には出来るけど、一つを極めた人には勝てない系の人だ。
顔もイケメンではあったし、交友関係も狭過ぎず、広過ぎずといった正に中間。そのため彼はモテなかったわけじゃない。ただ割と奥手な子にモテていた。
まあそもそも私は女の子が好きなので恋愛対象から男の子は外れていたのだ。だが村正君から村正ちゃんになってからは、バリバリの恋愛対象になった。
見た目のインパクトもさながらだがそもそも私の性癖にもバッチリハマってしまったのがいけない。
白髪に綺麗な赤い眼。その上巨乳に安産型のしっかりしたお尻。最高としか言いようがない。
私の求めていた理想の女の子。村正君には悪いけど神様ありがとうと何度思ったことか。だけど村正君にとってはマイナスが大き過ぎた。
村正ちゃんになってからの交友関係は崩壊した。
まず男子たちはもう村正君ではなく、一人の女の子しか見れなくなっていて、視線が胸やお尻、太ももなどにしか行かなくなっていて、聞いてみたらオカズにしている男子が大半だった。
勿論最初は村正ちゃんを気遣っていた。けど数日もすれば男子たちは村正ちゃんを堕とすのは誰かとレースを始めた。
そんな態度を見て村正ちゃんは男子と関わるのをやめた。
そして私たち女子は割と受け入れ態勢が出来ていた。というのもあまりにも男子が酷かったためである。
だけど元男子として早々に切り替えられるほど村正ちゃんもできた人じゃない。ていうか本人は男に戻る気満々だったらしい。
だけど村正ちゃんになってから1ヶ月、2ヶ月と経過していくうちに戻れない可能性を感じたのか徐々に女性としての仕草などが出始めた。
それでもなお一匹狼状態で男子は私たちの目があるのでヘタなことは出来ず、女子は見守ることに徹していた。
まあそんなことお構いなく私はずーっとアプローチしているけどね。
これがまあ堅い。なんとか4ヶ月かけてここまで来たって感じ。
私個人としては早く恋人の関係になってゆくゆくは私の子供を産んでほしいんだけどなぁ…。毎日自家発電するのも大変なんだよね。
本当高校生2年生の体じゃないんだよね村正ちゃん。エロ過ぎるよ。
村正ちゃん口悪いけどやっぱり基本優しいから心配だなぁ…。
変な人に捕まってそのままオナホ奴隷にされそうで心配。ていうか攫われて快楽叩き込まれてメス堕ちしそうで怖い。
前に『オナニーしたことある?』って聞いたら『するわけねーだろが!』
って顔真っ赤にして言ってきたし。あの感じだと女の子になってからオナニーしたことないんだろうなぁ…。
大丈夫かな?快楽よわよわだったらどうしよう…はぁ……。
もういっそ強引に行っちゃう?んー…でも理想はちゃんと愛を育ててからの方が私的にも昂るしなぁ…。
「おい」
「え?あ、ごめん。何?」
ぐるぐると考え事をしていると横にいる村正ちゃんが明らかに心配してくれている。最近村正ちゃんは顔に出やすくなったから。
「ボケーっと考え事か?何かあるなら聞くけど」
「んー…あるけどまだむらちゃんには早いかな」
村正ちゃんはそんな返答を聞いて訝しむと同時に首をこてんと傾けた。
村正ちゃんの頭上にはハテナマークが見える。
「なら言いたくなったら言ってくれ」
村正ちゃんは言いたいことを言って残りのポテトに手をつけていく。
「………ばか」
「………」
私の呟きに聴こえているのかそれとも聴こえていないフリをしているのか。どちらにせよその後は二人で黙々とポテトを食べた。