生理が、こない。
――つまり、それは――
以前の戦場で出会った、あの。
――私を、犯した――
おぞましい、脂肪で身体を覆われた男の、子を。
「……クソ!!」
孕んだ、つまりは、望まない妊娠を示すサイン。
「……仕方がない」
カ、ラァ……
あの子が、闇のルートで購入したらしい、避妊薬。
「……まるで、男の品を模した、張り型ね」
いや、堕胎薬。
「……いやらしい形」
その、私の手のひらが握りしめている、それの形状は。
「……まるで、男の陰茎ね」
確かにその形は、女の膣内に押し込む、最適切である形だと「理屈」は解るのだが。
「……全く、誰にも見せれや、しないわ」
なぜ、あの子がこんな物をもっていたのかは解らないが。
「……だけど、時間が経てば経つほど」
堕胎は難しくなる。
「……ならば」
私は、一縷の望みに賭けるしかない。
――姉さん、可哀想……!!――
ニ、ヤァ……
たとえ、本性が解って、信頼が出来なくなったあの子、その「腐った女」の助け船とはいえ。
////////////////
ホゥ、ホ……
どこかで、フクロウが。
「……ン」
真夜中のテントで行っている、私の行為を嘲笑うかのような、声を上げている。
グゥ……
「……くぅ!?」
グゥウ、ヌ……
薄暗い、カンテラの明かりだけが頼りである、そのテント内での私の行為は。
……ズゥウ
「……グゥ!!」
グゥウ、グゥ……
「……キツい」
はた目から見た限りでは、私の行いはオナニー、自慰にしか見えないが。
「……そして、冷たくて、気持ち悪い」
これでも、真剣なのだ。
「……全く、中に薬剤が入っているとはいえ」
確かに私とて、自慰くらいはしたことがある。
「……これだけ太いと」
が、実の所、私は。
「指でスルのとは、訳が違う……」
張り型による陰部への行い、それはしたことがない。あまり関心がなかったのだ。
グニュ……
「……あの」
グゥ、ウゥ!!
「……クソ野郎!!」
私は、約二月ほど前に戦場で会った男、私の性器と、尻の孔を。
――ヘヘッ、ヘッ!!――
いや、下半身全てを犯した、あの男の強姦を受けて以来、誰とも性行を行っていない。
「……ん、もっと深く」
別に生娘みたいに、もう20才をとうに過ぎた私が、精神的なショックを受けている訳ではない。
「……入れなくては、いけない」
いや、そう言っては嘘になるが、少なくとも、命があるというだけでマシだという、折り合いが付けられる程には、私は傭兵稼業が長い。
「……もちろん、お尻のほうには」
別段、私は男嫌いという訳ではない、現にあの「汚れた心の小娘」
「これ、入れなくても、いいわよね……?」
この堕胎薬を譲ってくれた子、彼女の恋人である若い少年には、女としてではなく、人間として好感を抱いている。
「……まあ、そっちのお尻の孔では」
ズゥウ、チィ……
まあ、あの純朴な少年に、人を見る目が、恋人とすべき女を見る目が無い、というのは、残念だとは思うが。
ヌゥチ、クゥ……
「……妊娠しないし」
……グゥ
私も、悪くないと思った男とは、恋人関係であった事もあるし、肉体関係も持った。
……ゥン!!
「くぅ、ア……」
それに、私は。
「……それに、しても」
グゥ、グゥウ……
強姦、犯されたのは、今回が初めてではない。
グ、チュ……
「……なんで」
とはいえ。
……ブチュ、ウゥ
「……被害者の方が、犯された女の方が」
ヌゥ、チャ……
私も、この「処置」している陰部、割れ目があるように、女だ。
「……後始末をしなければ」
無理矢理、男に犯された事を「犬に噛まれた」と思える程の、世慣れを通り越して。
……グッウ
「……いけない」
チゥ、ウゥ……
「訳、なのよ!?」
ブジュ、ウ!!!!
病的とも言える、無感情の持ち主ではない。
「……クソ、あの野郎!!」
そして、この、今の行為の最中に、あの男の顔が
――ガヘェ、良い便器だァ!!――
醜く太った、剣の腕こそあったが、ゲス極まりない男の陰茎、それが。
「……クソ、チクショウ豚野郎!!」
目の前にちらつくのが、全くに。
「……あの下衆野郎、今度会ったら!!」
が、その私の怒り、憎しみに満ちた「女」の心と。
フ、チュ……
私の「オンナ」の肉体は、完全に別物だ。
「……しかし、だけどまあ、本当に」
ヌ、チャ……!!
「本当に、最低な、惨めな、気分だわ……!!」
グゥウ、チュ、ウ、グチュウ!!
当然、快楽を得る為の行為ではない。
――……チッ!!――
だが、実に忌まわしい事に、こんな、快感を得る目的で性器を、膣の襞肉を掻き回している訳でもないのに。
プ、チュ……
――……ンッ!!――
女の「業」を。
ヌ、チゥ……
膣内が感じてしまう刺激に、女の本能によって分泌される、粘着く潤滑油。
――……クソ、野郎!!――
チュ、プ……
微かな匂いを放って、垂れる自分の「女」が、実に忌々しい。
「……クッ!!」
すでに、この堕胎薬の尖端には、付属の薬品を塗り付けており、それが。
「……あっ、ようやく?」
コッ、ツ……
「奥に」
望まぬ、私の膣内からの愛液の分泌、それと混じり、気色悪い色合いをした、粘つく。
コッ、コツゥ……
「当たった、かな?」
大股に開いた、剥き出しの私の股間から、テントの下に引いてある、安物のカーペットに、ヌラヌラと、ランタンの光を反射して、テカりながら。
「……でも、流石にもう」
拡がる、青みがかった、私の女液。
「……慣れて、来たわね?」
そして、己の陰部への刺激、それに身体が、下腹部が慣れてきたと思った、その時。
「……?」
何か、その下腹部ではない。
モ、ゾゥ……
みぞおち、いやその少し上の心臓。
「……なんだろう、やってるのは下半身だけの、はず」
ドゥ……
「……!?」
クゥ……!!
「……クゥ!?」
その激しい動悸、そして吐息が、突如として、荒くなった私は。
「……もし、私が無意識に、これに興奮してるのだったら」
そっと、自らの心臓がある辺りへ。
「……自分で、自分を殴ってやりたい」
堕胎薬を使用していない方の手を、そっとあててみたが。
「……な!?」
乳房が、左の胸丘が堅い。
コッ……
コチコチに、硬く堅く、固くなっている。
「……何が!?」
あわてて、私は衣服を。
サ……
鎧ではない、普段着の裾を。
サ、アァ……
広げ、自分の乳房を。
タ、ユゥン……
それを、カンテラの灯りの中にさらけ出す、慌てている私の頭に、恥じらいなどは全くない。
「……!?」
その、左乳房を触ってみた感覚、いつもののフワリ、クリュリとした、オンナの弾力は一切無く。
ゴリィ、グゥ……
まるで腹筋、そのような変化を、私の手のひらが感じている。
「……だったら」
スゥ……
「……こっちは、大丈夫」
もう片方の乳房、右のそれは正常。
……ム、ニュ
いつもの、柔らかな弾力を手のひらに返し、妙な変質はしていない。
「……しかし、まあ」
気、にはなるが、無視しよう。
「副作用はあると、あの小娘も言っていた……」
そう、今は細かい事、この「大事」の前の小事に、こだわっている暇はない。
――……!?――
そして、その乳房の異変から、本当に僅かな時間が経った時。
――来た!?――
説明書に書いてあった、その感覚。
――子宮が、その下腹部の辺りがパンパンになり、心臓の鼓動のように、リズミカルに、ドクンドクンと動き始める、この時に!!――
そこで、私は堕胎薬の。
「……ん!!」
グゥ!!
それの持ち手に付いているレバーを、一気に引き上げる。
ギュム!!
その時、私の膣内に感じた感覚、いや。
「……グゥ!?」
不快感は、とても言葉では言い表せる物ではない。
……グチュ、ウ!!
膣の奥深く、子宮口をさらに突き抜ける、おぞましい、ヌメリとした物。
「……う、あ」
液体、ではあると思われるが。
「……まるで、男に射精されたかの、よう」
またしても、あの「下種男」の顔が頭に浮かぶ中。
――ゲヘェ!!――
「……くっ!!」
奴によって、子宮口をこじ開けられた記憶が浮かぶ中、で。
ビィ……!!
突如の凄まじい破裂音、まるで下痢を、排泄物を尻から放ち、飛散させるかのような音が、私の性器から轟いた。
「……!?」
まさしく、その刹那。
グチュウ!!
これは、本当に下痢のような、腹からの音。
「……グゥ!?」
ブニュ!!
私の膣管が、比喩ではなく本当に腹を下した時の腸のように。
グニュウ、ブリュ!!
それのように激しく動き、膣壁を、ヒダの一枚一枚を強く律動させ、内部から下劣な音色を響かせ。
「アッ、ガァ!?」
性的快感、などなく、単に凄まじい刺激、苦痛によって。
ヌゥウ……
私の陰核。
「……グゥウ!?」
ズ、グゥ!!
クリトリスが、薄皮を押し退けて、跳ね上がり、そして。
「……!?」
私は今の今まで、さすがに出産はしたことは無いが、これはまさしく。
――出る!?――
ドゥ……
破水のそれ。
――……ウッアァ!!――
バァア、シャ!!
悪臭を放つ、濁った汚水の洪水。
「いっ、痛……!!」
そして、数秒後の「破水」の停止。
「……痛い、クソォ!!」
膣内、そしておそらくは子宮からも。
ズゥ、キィ!!
もたらされる、締め付けられるような激痛に耐えながらも、私はようやく。
「フ、ハァア……!!」
ようやく、大きく一息、ため息を吐き出す事が出来た。
「ハァア、ハァ……!!」
これで、上手く行ったのだろうか?
「……ハァ、ウ」
確信はない、しかし。
――……これで――
良くも悪くも、ここまで劇的な「結果」が出たのだ。
――どうか、妊娠が避けられる事に、なりますように――
そう、私は頭の中で、自分の目前に拡がる、穢らしい汚液。
――あんな、クズの子供なんか――
何一つ、下着すら身に着けていない下腹部と。
――……絶対に!!――
はしたなく開脚された、両の素脚の真ん中で、青黒く、ギラギラと光る、ネバつく流動体、ポツリ、ポツリィと泡立つ粘着液の「湖」を、怒りに燃えた目で、見つめながら。
――絶対に!!――
そう、強く心に誓う。