※この作品はR-18です。

朝田詩乃は悪の組織に忠誠を誓う   作:名無しの猫

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綾野珪子は悪魔の手で人を超える②

 廃工場の隅で特殊強化服を身につけた詩乃――シノンは仮面を抱え、その複眼に映る自分を見つめた。

 

 そこにいるのは一人の少女――決して怪人ではないただの人間の女の子。これまで自分は人間を超えたのだと思っていたが、思い知らされた。

 自分など、広い怪人の世界では取るに足らない存在なのだと。自分の無力さを。

 

「……シノン、準備は出来ましたか?」

 

 コツコツと靴を鳴らし側によるアリス。珪子の手術を終えた彼女はスーツに着替える間、少しだけ席を外していたのだ。

 

「……えぇ、と言ってもなんで準備が必要なのか分からないけど」

「これからあなたの力が必要になります。……今から彼女の手術の最終段階を執り行いますが、私一人で抑えられる自信はない」

「……最終段階?」

 

 アリスはサタンサーベルを握りしめ、目を閉じる。

 

 

 ――次に目が開かれた瞬間、アリスの青い瞳に赤の光が宿った。

 それは瞳のみならず、額と腹部からも胎動するみたいに輝きを放ち、彼女が呻き声を上げると同時に背中から這い出てきた無数の触手に、アリスのカラダは飲み込まれた。

 

「ウッ……、ウ゛ッ、ウ゛ウ゛ッッッ……!」

 

 やがて触手が引くとそこから現れたのは甲冑を着た少女。普段から着用している青いドレスの上に黄金の派手な装甲で覆った姿はシノンの目から見ずとも従来の怪人の姿からはかけ離れていた。

 

「……それがあなたの本当の姿? 随分と普通ね」

「えぇ、これが私の真の姿……古代甲冑魚怪人――またの名をビルゲニアとしての私の姿です」

「……ビルゲニア、ねぇ」

 

 上から下へ、ジロジロとアリスの怪人態を観察するシノン。

 組織が違えば怪人の姿も違う――とは言い訳できない程、怪人らしからぬアリスの姿に面食らうもその細部に至るまで戦闘に特化した造形、そして改造された強化感覚だからこそ分かるその使い込まれ戦い抜かれた肉体はかなりのものだった。

 

「全く、いつまで見てるつもりですか。いきますよ」

 

 アリスはそんなシノンの視線を振り払うように踵を返すと、未だ台に寝かせたままの珪子の元へ歩み寄る。

 台の上に拘束されたまま横たわる白猫の異形は浅く呼吸をしたまま身じろぎ一つしていない。

 懐から紫の結晶体を取り出すと、彼女の額にそれをかざした――瞬間、音もなくするすると吸い込まれるように結晶体は珪子の内部へと飲まれて消えた。

 

「今のは」

「……これはシンセサイズの秘儀。あなた達で云う脳改造と同様の処置で、脳が怪人の肉体に順応する為に必要な儀式です」

 

「ついでに……」と言いかけたところでアリスは口を閉ざし、続けて、持参した鞄の中から青緑色のゼリーが詰まったパックを手にした。

 

(……大切な非常食ですが、仕方ない)

 

 今では貴重品となったそれを前にアリスの心が揺らぐ。が、目の前で瀕死の少女――今は怪人となったが――を前に、それを切り捨てた。

 

 

 珪子の口をこじ開け、ゼリーを流し込む。

 直後、珪子の目が見開き肌に生気が戻る。少女の体内、血流が活発化して、心臓が激しく鼓動し、全身から蒸気が噴き出す。

 

「……あ、ああっ……!」

 

 拘束された肉体がビクビクと痙攣し、拘束具が軋む。全身が淡く発光して白く目が輝き、開いた口内で牙が鋭さを増し、爪も獣のように獰猛に変化していく。

 

「……シノン、今から彼女の自我が消えます。ゴルゴム怪人は肉体変化型の改造人間……改造直後は本能のままに暴れる獣になってしまう。だから、先程埋め込んだ結晶が『第三の眼』となって制御器官に変わるまで我々で彼女の相手をします」

 

 アリスが構えると同時に噴火するみたいに珪子のカラダから蒸気が湧き上がり、周囲を白い霧が包んだ。

 

 

 直後、爆発と同時に煙幕から何かが飛び出した。

 

「……くぅ!」

 

 たまらず顔を庇うアリスの死角から迫る気配を察知し、寸前で防御する。

 彼女を襲った影は工場の中を縦横無尽に駆け回り、優れた改造人間であるアリスでさえそれを捉えることが容易ではない。

 

 

 やがて、白煙が消えて視界が明瞭になった時。工場の天井、その側に刺さった鉄骨の上に立つ異形を見つけた。

 全身が白い体毛で覆われた猫の怪人。白い尻尾をフリフリと靡かせ、毛づくろいのような仕草でアリスを見下ろす産まれたての改造人間――綾野珪子の成れの果てだ。

 

「…………」

 

 アリスは無意識にサタンサーベルに手を掛ける、が、これではあの怪人を殺してしまう危険性に気づき、離した。

 元々、アリスのように優れた剣戟を持つ使い手を更に強化するビルゲニアの力だが、相手を殺さぬ戦法となると取れる手段は限られてしまう。

 

 

 再度、跳躍しアリスに迫るネコ怪人を前に、左手を宙に翳して盾を召喚する。アリスの装着する鎧と同色の黄金盾は異形の突進を見事に威力を削ぎ、防ぎ切った。すかさず反撃に転じるアリス――が、ネコ怪人はそれよりも遥かに素早く距離を取り、死角に回っては強襲を繰り返してくる。

 

(この力……少なくとも下級ではない。上級か……)

 

 猛攻を盾で受けつつ、アリスは冷静に目下の怪人を観察する。アリス――ゴルゴム怪人に限らずショッカー怪人もだが、怪人には強さに応じた格付けが存在し。大まかに、常人より僅かに上程度の能力しか備えない者は下級、シノンやユウキのように遥かに上の力を誇り単独で武装した集団さえ沈められる程の能力を持つ怪人は上級(中にはアリスやショッカー大幹部のような更に上位も存在するが)に分類される。

 

 そして、アリスの見立てでは珪子の変身した怪人は上級クラスであることは確実であり、そうなれば覚醒まで拘束するのは困難であると歯噛みした。

 

(ならば……!)

 

 今度はアリスが距離を取り、盾を捨ててサタンサーベルを抜いた。

 刃を構え、ゆっくりと怪人を周りを回り始める。――すると、アリスの姿が一人、また一人と増え、囲むように無数の彼女が出現した。

 勿論本物は一人だが、怪人だろうが判別することが困難なほど高度な幻覚分身術は産まれたての異形を怯ませるには十分だった。

 

「はあぁぁ!」

 

 サタンサーベルが紅く煌めきオーラを高める。アリスは怪人目掛けて剣を振るうと、ロープ状に束られたエネルギーが四方八方からネコ怪人を縛り付け拘束した。

 

「ギッ、ギィィィィ……!!!」

 

 首や手足、腰に絡みつく電流の糸にネコ怪人は悲鳴を上げる。本来は殺傷目的の技を極力弱めたものではあったが、産まれたての怪人を抑えるには十分――ではなかった。

 

「……ぐっ!?」

 

 怪人は縄を掴むと逆に引き寄せて投げ飛ばした。

 生後間もないと油断していたわけではない。しかし、あまりにも簡単に宙へと投げ出され、アリスの顔に動揺が走った。

 

「ギッ、キィィィィィ……!!!」

「……っ!? 不味い……」

 

 ネコ怪人はアリスを尻目に廃工場から飛び出していく。

 自我の覚醒もまだな、獣の状態で見失えば事態の悪化に繋がりかねないと焦るアリス。だが遠方に対する攻撃をあまり持ち合わせていない彼女では打つ手はなくて、光の刺す出入り口へと飛び出していく異形の背中を見つめるしかなくて。

 

 

「……ギッ!?」

 

 

 ――だから、ネコ怪人の背後へと迫る矢尻にアリスもまた目を見開いて。

 

 寸前の所で回避されたものの、それは途切れる事なく降り注ぎ、ネコ怪人はバク転側転を駆使して逃げ惑う。

 

「……キッ、シャァァァッ……!」

 

 やがて壁際まで追い込まれ、猫目を鋭く尖らせたまま周囲を警戒する異形。

 突如として感じた殺気と自身に被さる影を捉えて上を向き――回転切りで迫る新たなる怪人――シノンを捉えた。

 

「ギィィィッ……!?」

 

 咄嗟に腕で顔を庇うが、シノンは順手逆手にそれぞれ構えたナイフを振り下ろしネコ怪人の身体を縦一文字に切り裂いた。

 

「ギッ、ギャァァァァァッー!」

 

 激しく鮮血が散り仰反るネコ怪人。シノンは止まることなく今度は横切りで怪人の腹部へとナイフを振るって追撃を浴びせ、怯んだ所を蹴り飛ばして距離をつくった。

 

「シノン!? 一体今までどこにっ……」

「さっきのガニコウモルのお返しよ。……まぁ色々と準備に時間がかかったのだけど」

 

 腕を庇い駆け寄るアリスをよそに、シノンは仮面の複眼を点灯させて珪子――ネコ怪人を見据える。

 今の攻撃、ユウキとの模擬戦の成果もあってか全て致命傷となるような箇所は避けており、動きを鈍らせる程度には留めている。元より、怪人の回復力ならどれくらいなら支障がないことは己の身で知っているので、加減など不要なことくらい知ってはいるが。

 

 事実、ネコ怪人も最初こそシノンから受けた傷を庇いはしたものの痕さえ今では消え失せて、変わりに体毛が黒く艶のある物へと変色して、白かった目も青く色づき始めていた。

 

「……あれは、クロネコ怪人か。シノンをベースにしたから何が出るかと思えば、まさかこうなるとは」

「手術したのはあなたなのに、随分と知らない事が多いのね」

「怪人をベースに別の怪人を新たに作るなんてやったことありませんから。シノン、軽口はそこまでに」

 

 クロネコ怪人は頭を抑えて膝をつく。

 額の中心――先程アリスが結晶を埋め込んだ部分に亀裂が走り、中から薄紫の光が漏れていた。

 

「……自我の覚醒が始まりましたか。シノン、あと少しだけ彼女を抑えますよ」

「言われなくてもそのつもりよ」

 

 クロネコ怪人が臨戦態勢に入ると同時に、アリスは剣を、シノンは爪を構え迎え撃つ。

 クロネコ怪人の目が発光し、レーザーが打ち出された。二人はそれを回避すると、まず初めにアリスが切りかかった。

 

「やぁぁぁーーー!!!」

 

 サタンサーベルの大振りな一撃をクロネコ怪人は軽く飛び上がることで回避する。

 簡単に躱されてしまった剣戟は地面に大きなクレーターを造った。

 

 反動で動けないのか、止まったアリスを見逃すほどクロネコ怪人は優しくはない。空中で反転してその鋭い牙で彼女の喉元を狙う。

 

「させないわよ!」

 

 ――そこへシノンが乱入して、爪を振り下ろす。

 クロネコ怪人は再度体勢を変えてシノンを迎え撃ち、爪を受け返す。爪同士が擦れ合い、火花を散らし、撃ち合う。

 

 ――カキンッ、と響き合って弾け合い、反発して跳ね返る。2体の猫怪人達は同時に着地するとアリスを余所に再びぶつかり合うと宙へと跳んだ。

 

「シャアァァァァァーーー!!!」

 

 クロネコ怪人の爪が振るわれシノンの腕を掠めると、シノンは回し蹴りで応戦して爪先でクロネコ怪人の腹部を抉った。

 常人離れした一撃を受け互いに怯むが、クロネコ怪人より早くシノンは立て直した。

 

「ハァァァッー!」

 

 壁を蹴り空中回転。シノンは飛び蹴りでクロネコ怪人の胸部を蹴り飛ばすと続けるようにもう一撃叩き込んだ。

 華麗に回転しながら着地して、地面に転がるクロネコ怪人を見据える。そして、複眼を蒼く輝かせると加速して爪に青いオーラを溜める。

 

「ヤアアアァァァァァッーーー!」

 

 音を置き去りにして、すれ違い様にクロネコ怪人の腹部を切り裂き、吹き飛ばす。

 声にならない断末魔で転がっていくクロネコ怪人。

シノンは渾身の一撃を放ち、全身から力が抜けそうになるが、必死に堪えた。

 

「グッ、グゥゥゥゥゥ……」

 

 よろめきながら、起き上がりシノンに憎悪の目をぶつける。

 シノンは再び戦闘体勢で迎撃するべく構える――が、不意に構えを解いて肩でふっと笑った。

 

「……ごめんね」

「……??? ――ッ!?」

 

 戦意の消えたシノンの態度にクロネコ怪人は首を傾げた。

 

 

 ――直後、地面がひび割れて無数のエネルギー態が蛇のように生えてきてクロネコ怪人を取り囲み、首や胴、手足を縛り付けた。

 

「……グッ、ギッ、ガアァァァッ……!」

 

 振り解こうと悶える程に電流の縄は身体を締め付け、その数を増やしていく。激しい痺れに震えながら遠くを見れば、地面に突き刺したサタンサーベル――それを掴み技を使っているアリスが見つかった。

 彼女は不敵に笑うと剣を深く地面に押し込んで力を強め、クロネコ怪人はたまらず膝をついた。

 

「……ごめんなさい。私の囮に付き合ってくれて」

 

 コツコツと硬質な靴を鳴らし、クロネコ怪人に歩み寄るシノン。全ては二人が最初から仕組んだことであり、(工場の外に出ていった事は流石に予想外だったが)計画通りの結末に余裕を隠せずにいた。

 

「ウッ、ウウウッ……!」

「そろそろお目覚めの時間よ。寝坊助さん」

 

 拘束から逃れようと暴れるクロネコ怪人の前に立ち、第三の眼が覗く額を中指で弾いた。

 怪人の力強い一発に脳が揺れ、第三の眼が完全に開眼した。

 

 

 仮面を脱いだシノンは糸の切れた人形のように項垂れるクロネコ怪人を静かに見下ろしていた。

 

 

※

 

 

(ここは、一体どこ……)

 

 深い森の中で目を覚ました珪子は、未だぼんやりとした意識の中で周りを見渡していた。

 

 澄んだ空気が包む、美しく新鮮な気持ちになれる奇妙な森。

 初めて訪れた、でもどこか懐かしく馴染み深くさえ感じる不思議な場所。

 

 虫や小鳥達の鳴き声が聞こえるその場所で立ち上がり、当てもなく彷徨う。

 草むらを越えて、川を越えて、段上に連なる坂を登ってひたすら奥へと進む。

 

「うぅ……」

 

 不意に腹部が痛んで、着ていたシャツを捲る。

 そこには横一文字に切られた跡が刻まれていて、指先で触れてみると鋭い痛みが走って顔を顰めた。

 

「これ、何……?」

 

 心当たりがまるでないその傷を不思議そうに見ていると、ガサリ、と木々を踏む音が聞こえて振り向く。

 

「誰……?」

 

 幾十に重なり合うように立ち並ぶ木々の影、そこにいたのは一人の少女。

 赤いフードを被った彼女はどこか陰の刺した眼差しでこちらを見つめていて、視線が重なると背を向けて森の奥へと逃げていく。

 

「……っ、ま、待ってくださいっ!」

 

 痛む腹部を堪え、抜け出せる手がかりかもしれない少女を追う。

 赤い外套は深い森の闇の中でも目立っていて、必死に追いかけるが一向に追いつける気配がなかった。

 

「……待って!」

 

 やがて木々を抜け、開けた場所に出るとと少女の姿は消えた。

 きょろきょろと首を振り、どこに行ったのかと探すも見つからず。変わりに、ぽつん、と建てられた小さな社が見えた。

 

 恐る恐る社の戸を開けて、中に入る。

 だがそこには何もなくて、ただ狭いだけの空間が広がっていた。

 特に老朽化してもない、作られたばかりにも感じる不思議な一室。綺麗に掃除されてるようにも、放置されてしばらく経っているようにも見えて戸惑いばかりが増えていく。

 ふと、何気なく後ろへ振り向くと、そこには驚く事に女が一人、音もなく立っていた。

 目を見張るような美しい容姿。透き通るような白い肌に紫の長い髪が鮮やかに揺れ、宝石のように輝く瞳は吸い込まれそうなほど綺麗だった。

 産まれて一度も彼女と並ぶ美しさを持つ女性と出会った事はないと言えるほど人間離れした美貌を誇る目の前の女。

 彼女はゆっくりと珪子に近づいて、その小柄な身体を抱きしめた。一糸纏わぬ生まれたままの女の柔らかさに触れ、珪子も戸惑う。

 

『おめでとう……私の愛しき子。これからは何も恐れる必要はない。私が、あなたの望むもの全てを与えてあげましょう』

 

 脳裏に流れ出した、心地の良い声に珪子の視界が揺らぐ。意識が蕩けて全身から力が抜けるのを感じた。

 

『産まれてきてくれてありがとう……。私の新しい子供――シリカ』

「シ、リカ……」

『そう、それがあなたの名前です。これからはそう名乗りなさい』

 

 子供をあやすような口調で囁いて、女は珪――シリカの唇を奪った。

 流し込まれる甘い唾液に喉を鳴らし、全身が温かい悦びに打ち震えて、幸福に包まれていく。

 

 傷口のあったシリカの腹部から光が漏れ、姿がクロネコ怪人へと変わる。

 眩い光に照らされた社の壁、そこには猫と巨大な飛蝗の異形のシルエットがうねり続けていた。

 

 

※

 

 

 クロネコ怪人の身体を蒸気が包み、やがて小さな少女のカラダへと戻っていく。

 術後間もない全裸の珪子の肉体に自身のジャケットを被せ、シノンはその華奢な肉体を抱きしめた。

 意識はまだ戻っていないが、その寝顔は安らぎに満ちていて、汗でしっとり濡れた珪子の髪をシノンは優しく撫でてあやした。

 

「きっと彼女は今頃創世王に会っている頃でしょう」

「創世王?」

「我々怪人達の王……やがて世界を統べる運命にある崇高なるお方です。そこで、彼女は怪人としての祝福と新たなる名前を与えられているはずです」

「……名前、ねぇ。もうツッコむ気にもならないわ」

「あなたにはいずれ全てをお話しますよシノン。あなたにはそれほどの価値がある」

 

 シノンの前に膝を付き、真剣な眼差しで顔を見つめるアリス。

 

「シノン、私はショッカーの敵ではない。しかし、ショッカーに完全な忠誠を誓っているわけでもありません」

「…………」

「……ですが、これだけは信じて欲しい。私は、私やあなたのような怪人達の為、そしてこの世界の為に行動しています。それは、いずれショッカーの利益にも繋がるはず……」

 

 アリスはシノンに手を差し出した。

 怪人化は既に解き、サタンサーベルも今は手元にない状態の無防備な格好。当初纏っていた鋭い戦意も消えて、今なら強化服を纏いすぐさま戦闘に移れるシノンの方が優位であろう。

 

 アリスを見つめしばし思索にふける。

 脳改造により、「ショッカーこそ全て」と脳に刻まれたシノンにとって、組織に少しでも懐疑的であるアリスなど例え大幹部といえど抹殺対象だった。

 

 しかし、そのショッカー自体が(理由があるだろうが)仲間であるはずの自分に敵の詳細を知らせていなかった事で組織への疑心が生まれたこと、そして、アリスが触れた『怪人の起源』に対する興味とその時生じた頭痛の正体が知れる機会かもしれないことが決断を鈍らせた。

 

「……まだあなたを完全に信じたわけじゃない。でも、あなたの力が組織に必要なのもわかる」

 

 思い知らされた。

 ショッカーの中では優秀だ最強だの言われても、外に出ればそれ以上の存在は他に幾らでもいること。そして、それらと渡り合うにはこれからアリスのような外部の怪人の力も必要になることも。

 

「……いいわ、今は観察だけにしてあげる。そのかわり、少しでもショッカーの不利益になるなら、躊躇わず殺す」

「それで構いません。……今はね」

 

 アリスの手を取り、シノンは彼女を仲間として認めた。

 

「……それから条件がもう一つ。わたしにもストーンを頂戴。あの力、絶対に物にしたいから」

「すぐにとはいかずとも必ずあなたにストーンは授けるつもりです。私はあなたにも創世王に会っていただきたいので」

 

 女同士、約束を結びながら二人は固い握手を交わした。

 夕暮れが空を染め上げていき、二人の長い1日は終わりを迎えつつあった。




かなり某作品に飲まれてるな。とは自分でも思います
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