※この作品はR-18です。

朝田詩乃は悪の組織に忠誠を誓う   作:名無しの猫

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当初は5話の短編だった本作もおかげさまで50話突破いたしました
いつも応援ありがとうございます


怪奇の村、スパイダーの恐怖⑤

 雲が流れて日が落ちて、そして、朝がやってきた。

 とある埠頭へと海を越えて輸送されてきた巨大なコンテナ。その中には人間を改装人間へと変える恐怖のナノロボットが大量に積まれており、シザースジャガーその前に立ち、無数の戦闘員達を見下ろした。

 

「このナノロボットによって、もうじき世界はショッカーによって改造される! お前たちのその命を大いなる目的のために捧げるのだぁ!」

 

 ジャガーに鼓舞され、戦闘員たちは高らかに叫びをあげる。

 やがてコンテナの中身をトレーラーへと積み終えると、ショッカー達は出発した。

 内部からの情報漏洩を受けての厳重な警戒態勢。ダミーのトレーラーを複数並走させ、バイク隊やジープ隊で囲んでの移動。それと同様の囮車列を既に都内のいたるところを走らせ、攪乱も行っている。仮に敵が襲ってきても自分が撃退すればいいだけの話だ。リザード同様に自分の力を確信しているジャガーはそう思った。

 

 

 埠頭の影、彼らの移動を静かに見つめるのは、深澄。息を殺し、作戦が始まるのを静かに待った。

 明日奈から連絡を受け、作戦を阻止するべくこうして監視して好機を伺っていた深澄が彼女からそれ以来なんの指示も来ることはなく、焦りを募らせていた。見た限りでは、自分の力を過信している様子のあの新手の怪人――シザースジャガーに負ける気は一切しない。だが、彼に勝てたとしてもナノロボットを一つでも逃せば世界は終わる。詩乃達が拠点破壊に向かっているが、そこに辿り着かれてしまえば彼女たちが劣勢になるのは見えている。

 なんとしてもここで食い止めねばならない。そのためにも、万全を期すべく二人での作戦実行が望ましかった。

 

 けれども、それはいつまで待っても訪れる気配はなくて。結局は乗っていたバトルホッパーのエンジンを噴かせ、一人で立ち向かった。即座に向けられる激しい迎撃の雨を擦り抜けて、腹部にベルトを露出させて突き進んだ。

 

 

※

 

 

 人っ子一人いなくなった怪奇の村。森に潜んだ敵を迎え撃つべく一夜にして攫ってきた村の子供とまとめ全員を工場の一角に押し込み、完全に無人と化したそこに戦闘員たちが跋扈していた。全員が武器を構えた戦闘準備を整え、じきに現れるであろう敵を警戒していた。

 工場で最も見晴らしがいい場所に立つのはスパイダー。そしてその腕に抱えているのは縄で一くくりに縛り上げたるりとあすか。敵は必ず二人と、村の住人を取り返しにやってくる。その時こそすべてを終わらせるべく、彼は仮面の奥で牙をとがらせていた。

 

「お前たちを助けた奴の最後だ……特等席で見せてやる……!」

 

 凄むスパイダーを前にしても二人は口を閉ざした。

 スパイダーの自信も当然で、村へ入る唯一の道は既に封鎖済みでその中も戦闘員で包囲してある。おまけに人質も取った状況でこちらには自分とユウキの改造人間が二人いるのだ。敵が勝つ確率など皆無であろう。

 

「……っけない」

 

 小さな声がして、下を向けばあすかが芯のある目で睨んでいた。

 

「……おねーちゃんはまけないっ、ぜったいに、あんたたちなんかやっつけちゃうんだから……!」

「お姉ちゃん……敵は女か。楽勝だな……」

 

 敵の性別が女であることを知り、ほくそ笑んだスパイダー。――その直後、大きな唸りが山中に響き渡った。

 

「……なんだ」

 

 敵襲を予感し、スパイダーは周囲を警戒する。だが、どんなに遠くを見ても音の元であろうものは影一つ見えず、村にも異変はない。

 

「……どこだ、どこに隠れている……」

 

 仮面に穿たれた無数の複眼を凝らし、聴覚を最大にして探るがやはり見つからない。ならばと、今度は嗅覚を使えば、微かに混じるオイルの臭い。巧妙に隠されたエンジンの香りが、川の方から感じ取った。

 

「…………川かっ!?」

 

 スパイダーが勘付くと同時に、大型のバイクが水面を割って飛びだし、村へと侵入した。無人のまま、猛スピードで駆け抜けるそれは混乱する戦闘員達へと迫り、搭載されている小型ミサイルや弾丸を放って蹴散らしていった。

 

「……あれはサイクロン!? バカな、あれがなぜ……」

 

 既にサイクロンが組織より盗み出されていたことを知らない彼はその登場に動揺した。その隙、わずか一瞬程度の迷いを、見事に突かれた。

 

「――……っ!?」

 

 上空を飛ぶ謎の存在に気付くのが遅れ、素早く飛びついてきたそれに子供を奪還される。そして、サイクロンが工場の硬い門をぶち破る音が響くと同時に、内部へと突撃したバイクによって精密機械が破壊され、連動するかのように爆発が起こった。万が一に備えた証拠隠滅のための自爆プロトコルが誤作動を起こしたのだ。

 

「もう終わりよスパイダー。この子たちは返してもらう」

 

 工場の屋根に着地した敵が見下ろしてくる。――なぜか、周りにいた戦闘員が味方である自分へと組みついてきた。

 突如現れた敵の姿。そして、戦闘員を意のままに操ることができる力。――彼には、覚えがあった。

 

「貴様っ……生きていたのか!」

 

 自分を見下ろす死んだはずの女怪人――シノンへとスパイダーは叫んだ。それと共にすべての辻褄があった。彼女が生きているのなら、新型の怪人を破ることも、こうして計画を妨害することも容易いだろう。そんな単純なことに気づかなかった己を恨んだ。

 感情のない仮面どうしが睨みあう。

 

 詩乃達が宣戦布告を受けてから、何もしなかったわけがなかった。迎撃のために見回る戦闘員を捕獲し、その身体に噛みついて自身の命令に従う存在へと密かに変え、彼らから情報を聞き出す中で作戦を立てていったのだ。それも一人のみならず、大勢を操り人形にして、優位になるよう暗躍した。サイクロンという高性能マシンがあれば、侵入など容易であり、向こうが知らない利点を生かさない手はない。人質も彼らが態々集めてくれたことで助けに回る手間が省けた。今頃は手下にした戦闘員によって『捕虜』として潜り込ませた和人が救出しているころだろう。

 これも全て、むこうに死を偽装できていたが故の作戦だった。

 

「舐めるなっ! もう一度殺してやるだけだ!」

 

 ――が、これで引いてくれるほどスパイダーは甘くない。戦闘員の拘束を即座に振り払うと、シノンめがけ毒針を放った。それを落下ざまに払い除けて迎え撃つ。

 空中で組み合う二人の異形。性能では勝るシノンでも経験ではスパイダーの方が上だ。自身が所属する以前より怪人同士の戦いを経験している彼相手に中々優位に立つことは難しく、一進一退の攻防が続く。

こちらの蹴りがスパイダーの腹部を撃っても、彼は怯むことなく果敢に攻め続けてくる。

 

「工場は破壊した。勝負は既についているわ!」

「ふざけたことを、裏切者の貴様の首を首領に捧げ、俺はもう一度チャンスを貰う!」

 

 スパイダーが下がり、戦闘員達に囲まれる。今度は自分が懐柔した者はいないようで円を描くように囲み、にじり寄ってくる彼らの動きをじっと伺う。右へ、左へと回り、不気味に隊列を崩さない戦闘員達。

 いつ仕掛けてくるのか、焦りを堪えたその時、彼らは飛び込んできた。

 

「……っ!?」

 

 タイミングを微妙にずらし、迫りくる黒づくめの敵。シノンは軽やかにそれを避け、すれ違い様に拳や蹴りを叩き込む。彼らはかすり傷一つ彼女につけることは叶わず、泡となって消滅した。

 

「「いやー!」」

 

 戦闘員を片付けたその時、悲鳴がして見上げればこの間にスパイダーに捕まった二人を抱えて宙を飛ぶ異形が頭上を飛んで行った。

 

「ま、待て……!」

 

 シノンを通り越し、空中で一回転したスパイダーはそのまま待機させていたであろうトラックの上に降り、遠ざかっていく。

 あれが向かう先は恐らく日本支部、そこに彼女たちが連れていかれてしまえばどうなるかなど自分がよく知っている。焦りに駆られるままにシノンは飛び降りた。

 

 

――

――――

 

 

 地上でスパイダーとの死闘が始まったその頃、地下牢まで侵入した和人は人質たちを救うべく、壁に隠れ隙を伺っていた。そして、見張りの戦闘員が背をむけたタイミングを見計らい素早く駆け寄って、その後頭部を殴打した。消滅、はせずとも彼は気絶してその場に倒れた。

 

「凄い武器だな、これ……」

 

 和人が用いたもの。それはシノンが愛用している弓を簡易修復した棒状の武器だった。乱入してきた少女に半壊させられた物ではあるが、人間の和人が振るうだけならまだまだ使えて、人間であっても強化されている戦闘員に有効だとなる武器の性能に素直に感心した。

 これは彼女が自分に託してくれたものだ。自分が無茶をしないように、しても”自分のかわりとして”身を守ってくれるようにと願って。詩乃の思いが籠められたものだ。無駄にはできない。

 そのためにも人質を連れて脱出しなければならない。戦闘員の懐を探って鍵を探す――が、一向に見つからない。少し焦りを覚えはあ締めた時、物陰から何かが投げられて地面に転がった。

 

「これを探しているんでしょ。使いなよ」

「キミは……」

「ボクは木綿季。詩乃の友達だよ。”かつての”だろうけど」

 

 つい昨日、詩乃と死闘を繰り広げた木綿季の登場に和人は驚いた。投げ渡された鍵を拾い、彼女を見つめる。

 

「いいのか? 君もショッカーなんだろ?」

「――一応はね。でも、詩乃が生きてることバレちゃったし、もうすぐボクも追われる身だろうからね。それなら最後くらい好きにするよ」

 

 そう言って木綿季は再び闇へと足を踏み入れていく。その姿はあっという間に見えなくなって、和人は意識を人質の救出へと切り替えた。

 

 

※

 

 

 トラックの中へと入り、スパイダーは少女たちを睨んでいた。作戦が崩壊した一端はこのガキどもにある。これから自分は基地へと戻り、処刑されるだろう。その前にこの苛立ちのままに人間の子供をどうしてやろうかと考えを巡らせていた時。――どこからか、バイクの爆音が響いた。

 

「……っ、追ってきたか!」

 

 考えはもう一つ。作戦をぶち壊した大元凶であるあの裏切者は、必ず子供を追ってくると知っていたから。この先にある地雷原へと誘導し、自分ごと抹殺するためにスパイダーは走りだしたのだ。

 

「――行けぇ! 殺せっ!」

 

 森に待機させていたバイク部隊を呼び、シノンへと差し向けた。新たな敵の登場にも、彼女は冷静に対処する。

 並走を続けつつ、徐々に速度を上げていくと同時にチェイスの予感を覚えた。素早く状況を確認すれば、敵は全部で四台。左右後方にそれぞれ二台ずつ控え追跡してくるバイク部隊戦闘員。他の戦闘員達よりもマシンの操縦に特化して改造されている彼らは、手には爆弾入りのダーツを持ち、狙いを定めギラギラと輝いている。

 このまま加速して、彼らの攻撃を利用してトラックを停止させることもできるがそれでは中の子供たちが危険に晒される。ならば、と――加速して一気にトラックを追い抜き、すれ違い様にタイヤをパンクさせる。停止するトラックを抜き去って、バイクも自分に続いて追ってきた。

 

「バカな奴だ。自ら地雷原に飛び込むとは……!」

 

 嘲笑するスパイダーを他所に、アクセルを握る手を緩めはしない。

 シノンとてこの先に何があるかなど知らないわけではない。だからこそ、利用させてもらうまでだ。

 先頭を爆走するシノンの背後で、一気に加速してくるバイクが二台。左右から挟むようにして接近して忍び寄り、彼女の横に並ぶと共に、ダーツ爆弾を構えた――同時に、シノンは急ブレーキを踏んだ。

 ターゲットを失い、、空中でぶつかり合う爆弾。そして、その後方から突き進んでいたバイクへとシノンは蹴りを浴びせた。蹴られた戦闘員は吹き飛び、地面に転がると同時に盛大に爆発した。

 すぐさま急発進して、再度先頭へと躍り出る。仲間を一人失っても彼らは構わず追ってくる。感情を殺されているのだから当然ではあるのだが。

 複眼を光らせて地雷を探る。ほとんど隙間なく敷き詰められた爆弾の海を確認し、アクセルを回し、エンジンを唸らせる。バイクは組織にいたころ木綿季や珪子と遊びで乗ったことがある。簡単な障害物を駆け抜けるゲーム。今回もそれと同じだと思えばいいのだ。

 ヘビのような走りで駆け抜け、瞬く間に戦闘員達を置き去りにしていく。足元に埋まる地雷をうまく避け、作動するよりも早く走っていく。従来のマシンなら既に死んでいるだろうが、このマシンはショッカーの技術の粋が詰まっている。爆弾如きなんてことはないのだ。――だが、戦闘員達は違う。感情を殺され、命令に従うしかない彼らに地雷は避けられない。勿論、彼らのマシンも高性能ではあるがサイクロンほどではない。三台あったのが、一台、また一台と爆散し、一台だけが生き残った。

 

 抜け出した最後の戦闘員はシノンへと距離を詰める。

 それを確認すると、彼女は急ブレーキを踏んでバイクを回転させた。車輪が軋み、タイヤがアスファルトに擦れて白煙を上げる。

 視界が閉ざされ、開けた瞬間、道を塞ぐかのように停まったサイクロンと衝突した。車体が宙に浮くと同時に戦闘員は投げ出され、地面に転がった。

 

 彼が泡となるのを見送って、シノンは走り出した。地雷を抜けるような真似はしない。足でバイクを挟んで飛べば、来た時を同じように山へと乗り上げた。

 ここを抜ければスパイダーの死角を突ける。それを確信して、アクセルを握りしめた。――直後、むき出しの首に糸が絡みついた。

 木の上に潜み、自分を追跡していたのであろう。混戦で注意を怠った隙を狙い、スパイダーが後方シートへと跨り、組みついてきた。

 

「……ぐっ、スパイダー……!」

「裏切り者には死があるのみだ。俺と共に死ねぇ!」

 

 もはや自棄を起こしていた彼は自分もろともシノンを葬ろうと首を締め上げてくる。足場の悪いこの中でもサイクロンに支障はない。だが、このまま暴れ続けられてしまえば、それも危うい。

 

 (私は、死ぬわけには……いかないっ!)

 

 シノンの仮面に光が宿り、力が漲る。ハンドルから手を離し、スパイダーの腕を掴んだ。バイクの上にシノンもまた飛び乗り、狭く揺れる足場を舞台に最後の戦いが始まった。

 首を掴まれている以上、シノンの方が劣勢だ。だが、それでも負けじと糸を掴み引き摺る。スパイダーも締め上げてきて息が詰まるが、離すことは決してしなかった。

 そして、彼の腕が空いたタイミングを狙い、胸部めがけて拳をぶつけた。渾身の一発は見事に決まり、スパイダーの糸が緩む。この隙に糸を剥がして、車体から投げ飛ばす。

 遥か前方へと投げ飛ばされたスパイダーはよろめきながらも立ちあがろうとする。

 シノンは、ここで決めるとアクセルを振り絞った。音すらも置き去りにする勢いで加速して、スパイダーめがけて突っ込んだ。

 断末魔を上げ、スパイダーは吹き飛んだ。

 

 地面に倒れ伏す彼を一瞥し、胸の奥でちちりと、痛みのようなものが走ったような気がして、最後の足掻きとばかりに立ち上がる彼をもうみることもなく。直後、背後で上がった爆炎を見る勇気は、シノンにはなかった。

 

 

※

 

 

 スパイダーとの死闘を潜り抜け、シノンはその足でるり達の元へと向かった。

 トラックの中、助けを信じて身を寄せていた二人に手を差し出す。今度は、怯えながらも、それ以上に安堵の表情で手を掴んでくれた。

 

 そのまま村へと戻って二人を下ろすとシノンは二人の頭をそれぞれ撫でた。

 不思議そうに首を傾げるるりと、和かな笑顔をむけてくれるあすか。

 人質も和人が解放してくれたようで、これ以上化物を見せて怯えさせるのもあれだと思って、シノンはこのまま立ち去ろうとアクセルを握った。――その時。

 

「ネコのおねーちゃん、まって!」

 

 呼び止めてくるあすかに背を向けたまま。

 彼女はシノンに小さな小袋を差し出してから。

 

「ネコのおねーちゃん、もしかしてあのおねーさんのおしりあい? よかったら、これわたしてほしいの……それから――」

 

 顔を赤く染めて、小さく口をもごもごさせるあすかにシノンは身を寄せた。

 

「……それからね。おねーちゃん、すっごくカッコよかったよ……! ……たすけてくれて、ありがとう!!!」

 

 満面の笑みで明るくそう囁いたあすかに、シノン――詩乃の胸に、何か熱く火照ったような感じに満ち溢れて。仮面を被っているのに、妙に気恥ずかしく、視線を泳がせ落ち着きなく指を動かした。そして、小さく頷いた。

 

「……ありがと」

 

 それだけを伝えて、和人がやってくるのが見えたからシノンはバイクで去っていった。

 

「……あれ、何であいつ慌てて走っていったんだ? あすかちゃん、何か知ってる?」

「しらないー! わたしとおねーちゃんのヒーミツ、だから!」

 

 いたずらに明るく笑うあすかはそのまま家族の元へと去っていった。

 今回ばかりは本当に訳が分からず。それでも、ショッカーという悪意から解放され、家族と再会できた少女を見て、和人もまた笑った。

 

 

 その後、和人は村の人々に別れを告げてから去った。少し歩いていけば、そこには詩乃がバイクを停めて待っていた。

 

「遅いわよ。何してたのよ」

「こっちも色々とあったんだ。そっちこそお疲れ様」

「お疲れ様。それとさっき深澄から連絡があったんだけど、向こうもナノロボットは処理したみたい」

「そっか、流石だな……」

 

 指示役であるシザースジャガーは奇しくも逃してしまったようだが大量のナノロボットは破壊。万が一に備えて解毒剤作成の為のサンプルも確保したと報告を受けている。

 これで全ての災いの種は消え去った――とは言い難いが、しばらくは平和を保てるであろう。

 

「……それじゃあ、帰りましょうか」

「……あっ、そういえば詩乃、さっきあすかちゃんと何話したか教えてくれよ」

「いーや、女同士の秘密なんだから」

「おいおい、またそれかよ……」

 

 ヘルメット越しに頭を掻いて、答えに苦笑する和人。振り落とされないように彼女の腰に腕を回す。

 詩乃が着ているジャケットの胸元――そこに付けられた花飾りが優しく香った。

 そして。

 これからも戦うという決意を胸に、明日を守るためにと思いを新たにバイクを走らせた。

 





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