男の娘フレイと男装TS夢主(キラカガリ三つ子姉) 作:篠原えれの
「あの機体、まだ調整が終わってないみたいだな」
ディザイアを動かしながら、オリバーは戦場の様子を観察した。避難しきれてないミリアリア達、キラが乗っている機体、奪取された赤い機体に、ジン。赤い機体は、使い慣れない機体だというのもあるのだろう、ジンが殿を努めるように撤退していった。いや、あの感じはあわよくば俺も機体を奪取するというパイロットの強い意思をオリバーは感じとった。
「コックピットはさすがに前世と同じ仕様じゃねえか。がんばるか」
前世のディザイアは、コックピット内が空洞になっていた。それでいて、操縦者の動きが、体を動かすだけで模倣できるタイプの自立型機動兵器だった。レバーやスイッチで動かすタイプではなかったため、オリバーは困惑したがモルゲンレーテで最低限訓練していたので操作に苦労はしなかった。自分の手足のように不思議と馴染んだ。
「って、こっちも調整終わってないな。うわ、こんなんでよく動かそう思ったな。そりゃ、お前も怒るよな。直すからまってろ。」
キラと一緒に学んだ知識をフルに活かしながら、オリバーもOSを自分が動かしやすいように修正していく。
「キラの奴、戦いながらOS修正してねぇ?よくやるよ」
ジンを相手に戦えば戦う程、キラが乗っている機体は装甲が硬くなり、拙い動きがどんどん緩和されていた。
「コロニー内で扱える武器っていったらこれしかないわな」
それはかつて、神の眷属と呼ばれた者達を屠るために開発されたもの。当然、戦艦クラスの装甲なんて余裕で大破できる。『ミーハの剣』。ディザイアに乗る前は一流の剣士として各国を旅していたオリバーに、剣を持たせればそれは最強の矛となる。また、この機体にフェイズシフトは搭載されていない。スフロン水晶特有の、別の防御手段があるからだが、フェイズシフト等なくても元から黒いその機体はとても目立った。
キラが操縦するモビルスーツから唯一見つけ出したであろう武器、アーマーシュナイダーでジンにトドメを刺した。電気系統がショートしてパイロットのミゲルは機体が操縦できないと確認すると、迷うことなく機体の自爆スイッチを起動した。
「あ、やべえ!ジンを撃退できたのはさすがだけどありゃ自爆するぞ」
コックピットからパイロットが脱出したのを見て、マリューもオリバーも相手が自爆すると気付いたが遅かった。
ストライクが避けられない状態で、ジンが自爆してしまう。
その衝撃で、ストライクは吹き飛ばされマリューは気絶してしまった。
■
キラ達はモルゲンレーテ近くの公園へと足を運んだ。気絶したマリューを介抱するためでもあるが、キラはなにより、姉の様態を心配していた。ミリアリア達と合流し、マリューをコックピットからおろして、公園のベンチに寝かした。
「キラ、大丈夫か」
「姉さんこそ。この人の手当をしたいけど……姉さんこそ、ほんとに大丈夫?なんともない?」
「なんともないが?」
「それならいいんだけど……(死人がでるブラックボックスって、大袈裟だなあ)」
そんな会話をしていると、オリバーの脳内に直接、ディザイアから警告アナウンスが流れてきた。
【警告:機体に触れるべからず。離れたし】
その警告アナウンスにびっくりしてオリバーはディザイアの方を見る。トール達が「かっこいいな、このモビルスーツ!」と触ってはしゃいでいるのだ。「乗れないの?」とオリバーに聞いてくる始末。実際、ストライクの方は安全に乗れる訳で、これはやばいと、オリバーとキラはそれぞれ違う危機感を感じた。オリバーはディザイアがどうにかしてくれと訴えている風に見えたし、キラは純粋にマリューからあの機体は死人が出ていると言われていたので命の危険を感じたのだ。
「おい、お前らそっちの白いのはともかく――」
オリバーがトール達に警告する前に、銃声が鳴り響いた。
「はやくそのブラックボックスから離れなさい、死にたいの?!」
気絶から回復したマリューが、トール達がディザイアに触れていることに驚き、警告を兼ねて発砲したのだった。慌てて、トール達は機体から離れた。
ディザイアからの警告もストップしたので、これでトール達は大丈夫だとオリバーは思った。確かに、平和ボケした彼らにはこれぐらいしないと機体から離れないだろうとも。それでも機体に乗るだけで人が死ぬなんて実態を知らないオリバーにとっては、純粋にやり過ぎじゃね?とも感じとった。マリューからの警告に驚いたトール達が彼女に反発した。
「死ぬってなに?!俺達機体に触っただけだぜ?!」
キラがマリューに変わって警告する。
「本当みたいだよ。ストライクのコックピットで、あの機体に乗ったパイロットは次々に死んだから姉さんは諦めろって言われたぐらいだから。……姉さん、本当に大丈夫?」
「は?!嘘だろ。……俺は今のところ、大丈夫だぞ」
改めて、キラからそう言われてオリバーは自覚した。もしかして俺の愛機、相当やばい扱いを軍から受けてねえ?と。死人が出るから俺のことはあきらめろって何、と。当然、ディザイアという機体は、前世ではそこまで他者を拒絶してなかったのだ。だからオリバーとマリュー達の間で事実誤認が起きていた。ディザイアという機体は、前世では普通にオリバー以外の他人も乗せたし、他者の整備だって受け付けた。今世だって、戦闘行為こそまだしていないが体調に異変だなんて全然感じていないのである。前世と違うところは、ディザイアから声が聞こえるということろ。しかも、周囲の反応を見る限り、オリバーにだけ聞こえる。どんな仕組みかまでは分からないが、どうせスフロン水晶が絡んでいるのだろうと察したオリバーは深く考えないようにした。
「あなたが、ブラックボックスのパイロット?あの機体は、あまりにも死人が出るから近々破棄する予定だったのよ。今のところ異常はないみたいだけど、どうしてアレに乗ろうとしたのか教えて貰っても?場合によっては貴方も処罰の対象になるわ」
オリバーに銃口を向けながら、マリューは彼に説明を求めた。両手を上げながら、オリバーはマリューに言い訳をする。そんなこと言われても、彼にとってディザイアとは前世の愛機に過ぎないし、状況的に助けられるならキラを助けたかっただけなのだ。
「まさかそんなことになってるとは知らなくてだな。知ってたらそりゃ俺だって乗ろうとしなかったさ。でも機体に拒絶されなかったし……弟を助けようとしただけって言っても信じて貰えないか。信じる信じないはそちらに任せるわ。差し支えなければ……所属と名前を聞いても?あの機体はオーブ製だけど、地球軍のもんだよな。……俺の名前はオリバー・ヤマトだ」
「――私はマリュー・ラミアス。地球軍の将校です。理由はどうあれ、申し訳ないけどあなたたちをこのまま解散させるわけにはいけません。事情はどうあれ、軍の最高機密をあなたたちは見てしまった。しかるべき所と連絡が取れ、処置が決定するまで私と行動をともにしていただきます。それに、今は大丈夫でもいつブラックボックスの異変があなたたちの体に起きるか分からないわ。定期的な健康メンテナンスも受けることを進めます。」
オリバーはともかく、銃口を向けられた彼らはいっせいに反発した。
「冗談じゃないよ、なんだそれ……!なんでそんな物騒なもんを地球軍は開発してしまったんだよ?!」
「僕らはヘリオポリスの民間人ですよ?!姉さんは仕方ないかもしれないけど軍なんて関係ないはずです!」
「大体、なんで地球軍の機体がこんなところにあるのさ?!だからザフトの奴らが攻めてきたんだろ?!」
マリューはさらに銃を2発空に向かって撃つことでキラ達を威嚇した。
「黙りなさい!何も知らない子供が……!中立だと、関係ないと言ってれば今でもまだ無関係でいられる……まさか本当にそう思ってる訳じゃないでしょ?!ここに、地球軍の重要機密がある。あなたたちはそれを見た。それが今のあなたたちの現実です。」
「そんな乱暴な……!」
「乱暴もなにも、戦争をしているんです。プラントと地球、コーディネーターとナチュラル。あなた方の外の世界ではね。」
そして、キラ達はしぶしぶマリューの指示で動くことになった。生き残った他の地球軍と合流するために。
初戦闘言いながらOS調節してる間にキラがジンを倒しちゃったでござる。
キラ一人でいいんじゃねぇかなって思う。