このすばらしい仲間と恋愛を! 作:てつろう
珍しくシリアスな内容です。イチャラブは控えめかも
「私と結婚してくれませんか?」
「それはできない」
俺は自分で言った言葉に驚いた。いつもの俺なら二つ返事で了承していたことだろう。
「俺はちょっと前まで引きこもりのニートでさ。それが魔王を倒して王女様と結婚できるなんて思いもしなかったからアイリスの気持ちはすげえ嬉しいよ」
「でも、今のアイリスはたまたま仲良くなった男の人が俺だけでそれを恋愛と勘違いしてるんじゃないかな。」
「そ、そんな事ないです。私はカズマ様のことが異性としてちゃんと好きなんです。」
アイリスの顔はとても悲しそうだった。そんな顔のアイリスを見るのは本当に辛い。胸が張り裂けそうだ
「アイリスは世間知らずな所があるからな。しばらくしたら自分の本当の気持ちに気づいて俺の事なんかどうでも良くなってるさ」
そう言うとアイリスの目から涙がこぼれた。彼女の涙は留まることを知らない。泣きじゃくり涙を拭っても拭ってもまた涙がこぼれてくる。俺はアイリスを抱きしめてあげた。
「ごめんなアイリス、お前の気持ちに応えてやれなくて」
「うぇ…………うっ…………ぐすっ」
アイリスは嗚咽を漏らし俺の肩の上で泣いていた。10分程経っただろうか。やがてアイリスは泣きやみ俺の肩に手を当てそっと俺から離れた。
「カズマ様が私と結婚しない本当の理由は何ですか?」
「……俺が結婚すると悲しむ奴がいるんだ。だからあいつの為にも俺は結婚できない」
「では、もしその人と愛が実らなかったら私と結婚してもらえますか?」
俺は少し考えるとこう答えた。
「そうだな……もしそうなったらアイリスを貰うよ」
「約束ですよお兄ちゃん」
俺たちはそう言ってまた夜空を眺めた。果てしなく遠くにある星々は俺たちの心をいくらか癒してくれた。その後しばらく庭で寝転がっていた俺たちは部屋に戻った。今日はとてもパーティに参加する気分じゃない。俺の部屋の前に誰もいないのを確認して自分の部屋に入る。一昨日はめぐみんが居座っていたが忠告が効いたのか今日は誰もいなかった。俺は今1人になって後悔の念が押し寄せてきた。はぁ……なんで婚約を断ったんだろう。素直に受けておけばなあ……あんなに可愛いアイリスをお嫁にできるんだぞ
…………ん?……今一瞬窓に人影が映ったような……俺が今泊まっている部屋はかなり高い場所だ。そんな所に普通人は来れない。
ガタッガタッ
窓が動く音がする。やはり誰かいる。窓に近づき様子を見る。
「誰だ!そこに居るのは分かってるぞ」
「その声は助手くん?ここを開けてくれない?」
「いや、助手くんじゃないです。そんな人は知りません」
「助手くんでしょ!何すっとぼけてるのさ!そんな事より大変なのさ!早くここを開けてよ」
仕方なく俺は窓を開ける。すると窓の横の僅かな出っ張りに足を置いたクリスが入ってきた。
「助手くん、何か怪しい人につけられてない?体は無事なの?」
「別に何ともないって。それよりどうしたんだ。状況を説明してくれ」
「うん、そうだね……ここに来たのはとある神器を回収するためだよ」
「あ、そういうの興味ないです。」
俺はクリスの話を聞かないように耳を塞ぐ。もうこれ以上面倒なことに巻き込まれるのはごめんだ。そういうのはどこかの魔剣の勇者にでも頼んでくれ
「なんでさ!今の流れはどう考えても私の話を聞く流れだったでしょ!」
「だって俺もう魔王倒したんだし残った余生をゆっくり過ごすって決めてるんだもん」
「相変わらずカズマくんは…………いい?今回ばかりはそんな事も言ってられないのさ。何と言ったってカズマくんの命が狙われてるの。」
俺の……?その発言を聞いて俺はガバリと身を起こす。
「なんで俺が……?俺人から恨まれるようなことしたか?もしかして俺にジャンケンで勝ったらかけた金を10倍にして返すって言って色んな人から金を巻き上げたこと?それとも露出の高い服を着たお姉さんを見つめすぎてその子の連れに怒られたこと?」
「よくもまあそんなに次から次へと出てくるね。どれも違うよ。問題は君がアイリスと結婚することさ。」
「アイリスと結婚?それならさっき断ったぞ。」
「えええ!!!断ったの!?あの気の多いカズマくんが!?」
「おい何だその反応は、俺はこれでも人からの好意には誠実に応えてるつもりだ。」
「もしかしてカズマくん知らないの?王族と結婚したら側室として他の女の人とも迎え入れることができるんだよ」
何だそれは、そんなこと聞いてないぞ。え?じゃあアイリスを正妻としてめぐみんやダクネスを側室として迎え入れるわけ?ハーレム作れるの?
「こんなことしてる場合じゃない!今すぐアイリスに結婚するって伝えに行かないと!」
「もう断ったんでしょ!それに結婚するってなると殺されるかもしれないよ?」
え?殺される?俺は一旦落ち着きクリスの話を真面目に聞くことにした。
「今回の神器はほんの小さな指輪なんだけどね。その正体はなんでも消し去る指輪だよ。この世のありとあらゆる物を消せるの。普通に使う分にはゴミを大量に処理したり、魔物に対して使用するけど、ただ問題はそれが例え人間であっても消し去ることが出来ることだよ。」
何でも消し去る神器か……本当に神様ってのはろくなものを送らないよな。少しは神器を回収しにくるクリスを見習って欲しい。
「その神器によって人を消し去ることが出来るのは分かったが何で俺が狙われるんだ?全く心当たりがないぞ」
「カズマくんが狙われているのはアイリス様と結婚すると思われてるからだよ。この世にはアイリス様と結婚することでベルゼルグ王国と良好な交友関係を結びたいと思う国が沢山あるの。その人たちにとってはカズマくんが邪魔でしょ?だから神器を使って殺しに来てるんだよ」
なるほど、実際には俺はアイリスと結婚しないのに。なんとまぁ迷惑な話だ。
「それでどうするんだ?俺はどこかに逃げて身を潜めればいいのか?」
「ううん、折角だからここで神器を回収しようと思ってね。カズマくんには囮になってもらいたいんだ。それに私の宝感知のスキルでここのパーティ会場に神器があることは分かっているのさ」
「だからお願い、神器の回収を手伝ってくれない?」
「しょうがねえなあああ!!!」
俺たちはそのままパーティ会場へと向かう。アイリスと一悶着あったのにまたこうして働くことになるとは。廊下を進んでいるとクリスが俺に忠告してきた。
「助手くん、そこの角から宝感知に反応がある。気をつけて」
しばらくすると初老の男性が歩いてきた。一見すると何の害もないただの人間だ。俺は警戒しながら歩き続ける。丁度その男の横を通り過ぎようとした所で、男の嵌めた指輪から光線が放たれた。俺は『回避』スキルで間一髪で避ける。
「あぶねっ!」
「先制攻撃に優る策は無いと思いましたが避けられるとは。流石幸運値が高い勇者なだけはありますね」
俺の後ろにあった絵画がその光線を浴びた瞬間突如消え去る。あの指輪が神器か
「おっさんが俺を暗殺しようとしてる貴族か?悪いが俺はアイリスと結婚する予定はないぜ。俺を襲うのはお門違いってやつだ。」
俺が男と話している間にクリスは潜伏スキルを使って少しずつ男の背後に回り込む。俺はクリスがいることを悟られぬように自然を装って会話する。
「アイリス様との結婚を断る勇者など居ないでしょう。私の名はベルノード・ポルナレフ。王の命を受けて貴方の命を頂戴しに来ました」
「悪いがおっさんはもう負けてるぜ。俺には最強の幸運の女神様が付いてるんだからな」
「それはどうでしょうか。」
次の瞬間男は粉を辺り一面にばら撒いた。近くにいた俺とクリスはまともにその粉を浴びてしまう。なんだ、なにをした?男はそのまま俺に詰め寄ってくる。だが指輪さえ奪えば俺たちの勝ちだ。俺は『スティール』を使おうとして、
声が出なかった
「私が今使った粉は『沈黙草』、詠唱を必要とするスキルや魔法を封じる粉です。後ろにお仲間がいたのですね。いやはや私は本当に運がいい。これもエリス様のご加護のおかげです。」
こいつ、エリス教徒かよ!すぐ後ろにエリス様がいるんだよ!俺は男から距離を取ろうとするが男の動きの方が素早い。ダメだ、追いつかれるーー
「これも我が国を守るためなのです。どうかご理解ください。安心してください。痛みは感じませんから」
男の指輪から光線が放たれ俺はそれを直に浴びてしまった。俺は消える直前にクリスを見た。
(逃げろ!!)
カズマくんが私の目の前から消えた。やってしまった。いつもみたいに『スティール』を使えばすぐに終わると思っていた。私の傲慢が原因だ。このままではダメだ。あの男を追跡しないといけない。
「さて、残りの仲間はどこに潜んでいるのですか?『潜伏』しているということは盗賊職かな?」
私は息を潜めて男から距離をとる。今度こそしくじってはダメだ。冷静になろう。
「実は私も元々冒険者でね。職業は暗殺者(アサシン)、盗賊の上級職ですよ。ここは逃げさせてもらいましょう。『隠密』」
すると男の姿が見えなくなった。何かの影に隠れないといけない私とは違い、何もせずとも男は姿を消せる。こうなってはダメだ。私にできることはない。
ダメだ……完全に相手の実力が上手(うわて)だった。盗賊の上級職の暗殺者(アサシン)、それにスキルを封印する為の用意周到、私たちで勝てるわけがない。カズマくん……私が囮にしようなんて言わずに素直に逃げてもらえばよかった、ごめんなさい。相手の実力をちゃんと調べておけばよかった、ごめんなさい。君にだけはいなくなって欲しくない、ごめんなさい。
……っ……!カズマくん……っごめんなさい……
私は大いに泣いた。もうカズマくんはいなくなってしまった。カズマくんカズマくんカズマくん……!!
「こんな所でなにしてるの?クリス」
見上げるとアクアさんが立っていた。私は『沈黙草』のせいで声も出すことができない。それでもアクアさんに縋り付き必死に説明しようとした。
「あなたもしかして喋れないの?『セイクリッド・ブレイクスペル!』ほら、もう大丈夫よ。」
「……うっ……カズマくんが、……カズマくんが!全部私のせいで……!」
「大丈夫よ、私がいるから。大変だったわね。きっとカズマさんも大丈夫よ。」
アクアさんは私を抱きしめ背中を撫でてくれる。普段は私に仕事を押し付けてくる困った先輩だが、今の私には慈愛に満ちた女神に見えた。5分ほどして私は今まで起きたことを説明し出した。アクアさんはうんうんと私の話を聞いてくれる。
「なるほどね。私にはよく分からないからダクネスたちに相談しましょう。」
…………さっきの私の感謝を返して欲しい
私は今、ダクネスとアクアさん、アイリス様と護衛のクレアさんとレインさん、めぐみんとゆんゆんに対してさっきの出来事について説明していた。
「お兄様が……消えた……」
アイリス様はかなりショックを受けたようで言葉を失っていた。めぐみんやダクネスも顔には出さないが内心酷く動揺しているだろう。
「アイリス様、お気を確かに。恐らくパーティ会場に犯人はもう居ないでしょう。至急各ギルドに捜索願いを出しましょう。」
「クレアさん、その人の行き先はそのうちわかると思うから私に任せてくれないかな?」
確か戦っていた時に『これもエリス様のご加護のおかげです』と言っていた。あの男がエリス教徒なら私に祈りを捧げてきた時に私の神権ですぐに分かるだろう。
「何か当てがあるのですか?」
「うん、この事はカズマくんと私の秘密だから言えないけどきっとそのうち分かるよ」
「クリスはカズマと随分仲が良いみたいですね。その秘密とは何ですか?」
めぐみんがジト目をこちらに向けてくる。めぐみんはカズマくんへの執着が凄いから秘密という単語にすぐに食いついてきた。
「めぐみんやめないか、今は仲間同士でいがみ合っている場合ではない」
「あのう、その犯人を見つけた所でカズマさんは戻ってるくるのですか?既に消されたそうですけど」
「それなら神器をアクアさんが封印すればカズマくんは戻ってくると思うよ。」
「女神である私の出番ね!任せてちょうだい!その犯人なんてすぐにとっちめてカズマさんを助けてあげるんだから!」
レイン「しかし、暗殺者(アサシン)となると騎士では相性が悪いですね。ここは、少数精鋭の部隊で相手に奇襲をかけるしかないと思います。」
誰が奇襲をかけるべきか。いつもはその作戦をカズマくんが考えていた。でも、今は彼はいない。ここは私たちだけで何とかするしかない。
「では、奇襲をかけるのは潜伏スキルを持つクリス、状態異常を回復できるアクア、力のあるダクネス、そして司令塔として私が行きましょう。ゆんゆん達はここでお留守番していてください。」
「皆さんどうかお兄様をよろしくお願いします。」
こうして私たちはカズマくん救出作戦を決行した。