このすばらしい仲間と恋愛を! 作:てつろう
最近、『この欲深い衣装に寵愛を!』を購入しました。クリスの色んな姿を見れるのが楽しみです。
翌日。俺達はバルバトスのギルドで作戦の概要を話していた。ギルドにはこの国の冒険者達が所狭しと座っている。街中の人の期待を背負っている為かその目には闘志が宿っていた。
「よし、当作戦の最終確認だ!これより俺達三人は、潜伏スキルを使いながら敵本陣に接近し、その後魔法の射程圏内に敵を捉えた後、爆裂魔法を叩き込む。もし敵の反撃を受けるようであればテレポートで帰還する!その後、敵がこの国に攻めてきた場合は、それを迎え撃って頂きたい!」
「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」
テレポート要員兼、いざという時の戦闘員としてゆんゆん。現場での咄嗟の判断と、潜伏スキルでの迷彩や敵感知スキルによる索敵を担当する俺。そして火力担当のめぐみんという、たった三人での反撃作戦だ。テレポートは俺も使えるが行き先が『アクセルの街』『ダンジョンの最奥』『天界』の三つなのでやめておいた。
「でもよ、いくら爆裂魔法と言っても相手は魔王の娘だぞ。一度当てたくらいじゃ倒せないんじゃないか?」
一人の冒険者から疑問の声が上がる。周囲の冒険者ももっともだと思ったのか反論の声を上げるものはいなかった。本当に倒せるのかと一瞬不安が過ぎる。俺は少しもったいぶって答えた。
「大丈夫だ。今回の目的はあくまで魔王の娘を倒すことではなく撤退させることだ。周囲のモンスターを強化してるなら娘に遠くに引っ越してもらえばいい。爆裂魔法は脅しの材料に過ぎない。それにだ……」
俺は背中に背負っているバッグを開け中身をその場にぶちまけた。出てくるのは昨日官吏から貰った大量のマナタイト。それも純度のかなり高いものだ。
「これだけマナタイトがあれば何回爆裂魔法を撃てるんだろうな!」
「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」
再び冒険者ギルドは歓喜に包まれる。一発でさえオーバーキルな爆裂魔法を何度も撃てるのだ。これで負けるとも思えないだろう。
ーー皆の見送りを受け、俺達三人は国の近くに広がる森へと潜伏し、敵の様子を探る。森の中はあちらこちらに隠れる場所がある。その為、敵に時折遭遇するが難なくやり過ごしている。敵感知の反応を頼りに敵が大勢いる方へと向かう。
やがてモンスターが大量にいる地帯へと着く。そこには巨大な爬虫類、暗黒騎士、戦闘部族のような獣人に至るまで多種多様なモンスターが集まっている。ここだけ明らかにモンスターの格が違う。つまり魔王の娘が周囲のモンスターを強化している訳だ。ここに魔王の娘がいる。ゆんゆんもその事が分かっているのか俺を握る手が強くなっている。
「カズマカズマ、あのモンスターの大群に爆裂魔法を撃っていいですか?もう我慢できません!」
「待て、もう少し潜伏して魔王の娘の位置を特定してから……」
『エクスプロージョン!!!』
特大の爆発音。爆風で俺達は地面を転げ回る。無慈悲な爆発は地面に大きなクレーターを作り敵に大打撃を与えた。
「何やってんのよめぐみん!待てって言われてたじゃない!!」
「仕方ないじゃないですか!大量の敵を前にして爆裂魔法を撃たないという選択肢はありませんよ!」
敵は突然の攻撃に面食らったのか大声で騒いでいる。よく見るとみんなが逃げる先が一方向に向かっている。恐らくモンスター達が向かう先に魔王の娘がいるだろう。
「今回に関してはめぐみんのお手柄かもな。娘の居場所がざっくり分かったぞ」
「ほら、見たことですか。私はここまで考えた上で撃ったのです。何も考えてないゆんゆんとは違うのですよ」
「絶対たまたまだよね!撃ちたいから撃っただけだよね!」
騒ぐ二人を引っ張り俺達は敵が向かっている本拠地へと向かう。そこにはかつて魔王城で見た娘とその側近達がいた。
「なんなのよこの騒ぎは!」
「魔王様、早くお逃げ下さい!我々の敷地に突如爆裂魔法が!」
「魔王様〜お助けを〜!」
魔王の娘は魔族の中ではいつの間にか魔王に昇格しているようだ。娘を逃がそうとする敵と助けを求める敵でその場が混乱している。
「我が名はめぐみん!爆裂魔法を操るものにして魔王となる者!魔王の娘よ、私の爆裂魔法で灰燼に帰すといいです!」
めぐみんがバサッとマントを翻し名乗りをあげる。娘はめぐみんを見るとわなわなと体を震えさせ声を発した。
「……あなた達が……!」
娘は興奮が最高潮に達したのか声にならない声を紡ぐ。
「いい加減にしなさいよ!魔王城でポンポンボンボン毎日毎日爆裂魔法を撃ちに来るし、そのおかげでこんな辺鄙な街に逃げてきたかと思えばまた爆裂魔法を撃つなんて、嫌がらせなの!?なんて陰湿なの!?もっと正々堂々と戦いなさいよ!」
それはもうお怒りだった。確かに今の俺達がしてきたことはひたすら魔王の娘に爆裂魔法を撃ちに来て嫌がらせしているだけにすぎない。だが今回は違う。魔王の娘に魔王城に帰ってもらうように交渉しなくてはならない。俺はギルドの職員から貰ったメガホンのような魔道具で敵に呼びかける。
「あーあーマイクテス……魔王の娘さん、今すぐこの森から離れて元いた魔王城へ帰るんだ。さもなくば俺達は毎日ここに爆裂魔法を撃ちに来るぞー!」
「あんた達が私の城に爆裂魔法を撃ちに来たんでしょうが!」
『エクスプロージョン!!!』
「ひぃっ!」
めぐみんが威嚇するように爆裂魔法を放つ。めぐみんの放った爆裂魔法は魔王の娘に直撃した。爆裂魔法は魔王を倒した後も威力を増し驚異的なものになっている。これには流石に魔王の娘も……
「けほっ……」
爆裂魔法を食らっても魔王の娘は生きていた。やはり強いのだろう。しかし、こちらには大量のマナタイトがある。
「ふはははは、我が爆裂魔法にひれ伏すがいいです。『エクスプロージョン!』『エクスプロージョン!』『エクスプロージョン!』」
「て、『テレポート』ーーッッ!」
魔王の娘はめぐみんの詠唱を聞くや否やテレポートで消え去ってしまった。周りの側近達も次々とテレポートで消えていく。残ったのはテレポートを使えずに魔王の娘の強化の効果が消えた脆弱なモンスターだけだ。その大量のモンスターもめぐみんの爆裂魔法で次々と倒されていく。
「『エクスプロージョン!』『エクスプロージョン』『エクスプロージョン』『エクスプロージョン』『エクスプロージョン』…………」
「もういいぞめぐみん。敵も粗方殲滅したしめぐみんも鼻血出てる。今日はこれで撤退しよう。」
めぐみんは自分の鼻をゴシゴシと擦り服に血が広がっている。俺は自分の持ってたハンカチに『クリエイトウォーター』で冷水を当て鼻に当ててやった。
「それでは行きますよ、『テレポート!』」
+
時刻は夜。魔王の娘を撤退させたとして冒険者ギルドは沸きに沸いていた。あれから爆裂魔法を食らった魔王軍から反撃を食らったが魔王の娘の強化もなくなり弱体化した上に数も少なくこの街の冒険者達に袋叩きにされていた。
「勇者様、爆裂魔法を是非とも!」
「めぐみん様も爆裂魔法を!」
「ふっふっふ、カズマ行きますよ!」
俺はめぐみんに頷き返し手を空に掲げる。
『『エクスプロージョン!!』』
俺とめぐみんはマナタイトを片手に空に向かって爆裂魔法を放つ。夜に爆裂魔法を撃てば近所迷惑で怒られること間違いなしだが今日はこの国の危機を救ったのだ。これくらい許してくれるだろう。みんなは爆裂魔法の風を浴びながら鑑賞していた。少し暑い今の季節にこの風は心地いい。
「最高でぇす……」
めぐみんは俺の方に倒れてくる。マナタイトを使ったので立っていられるはずだがいつもの癖で俺はめぐみんをおぶった。実はこうして二人一緒に爆裂魔法を撃つのは初めてだ。
「今日のは気分に身を任せていて精密さに欠けている感じだったな。だが今日の功績を考えて90点といったところか」
「カズマのは街の人に配慮したのか威力が物足りなかったですね。60点くらいでしょうか。」
俺達は俺達にしか分からない爆裂魔法の採点をする。互いの僅かな動作から相手の考えまでも分かっている。俺はめぐみんを宴会の席の一つに下ろし、シュワシュワを飲む。するとどこか怒った様子のアイリスがやって来た。
「お兄様、私に何か言うことはありませんか?」
はて……一体何のことだろう。何かアイリスの機嫌を損ねるような事をしただろうか。
「強いて言うなら今日もアイリスは可愛いってことくらいかな」
「そんな事じゃありません!」
アイリスはずいと俺に近寄って言った。
「お兄様が昨日くれたこれですが……」
「ああ、マナタイトのことか。高級な物だから扱いには気をつけろよ。」
アイリスが持っているのは俺が昨日あげたマナタイトによく似たガラス細工だった。冗談であげたつもりだったがアイリスはマナタイトだと信じてしまいそんな高級な物を貰ったことに感動していた。
「どこがマナタイトですか!マナタイトだと思って使おうとしたら何も出なくて冒険者達に笑われたんですからね!」
「ふっ、アイリスもこれでまた一つ賢くなったな。」
「子ども扱いしないでください!」
アイリスはふんすと怒る。今度は私がカズマ様を騙してみせますなどとどうみてもフラグにしか聞こえないような発言をしながら俺の隣に座った。
「罰として私のお願いを一つ聞いてください。」
「お願い?」
「そうです、私の頭を撫でてください。」
アイリスに向かい合って俺は恐る恐る頭に触れる。そのまま優しく撫でた。アイリスは目を合わせるのが恥ずかしいのか少し俯いてされるがままになっている。
「気持ちいいです……」
「そ、そうか」
少し緊張するが手を動かすのをやめない。やがてアイリスが向かい合うのをやめ俺の左肩に頭を乗せてきた。俺は左手で後ろからアイリスの頭を撫でてやる。こうしていると恋人みたいだな。
ふとアイリスが俺の右手に手を重ねてきた。驚いて左手の動きを止めてしまう。
「ずっとこうしていたいですね……」
アイリスの心からの言葉だったのだろう。しかし、アイリスは王女様だ。無理してこうして一緒に冒険に来てるがこれが終わったら城に帰らないといけない。そんなアイリスを見ているとどこか放っておけない……
「アイリス」
「どうされました?カズマ様」
「……家出……してみるか?」
アイリスは俺の言った言葉の意味をよく理解できなかったのか呆然と俺を見ていた。
+
翌日。パーティメンバーに自分達の荷物を持って俺の部屋に集まってもらっていた。
「という訳でみんなでアイリスの家出を手伝うぞ!」
俺はパーティメンバーの前で高らかに宣言した。
「ちょっと待ってよ。一体どういうこと?アイリスさんが家出するの?」
「その通りだ。アイリスは俺達と冒険していたいからもうお城には帰らないんだとさ。」
「そ、そこまで言っていません!ただもう少し皆と一緒に居たいだけです。」
アイリスは俺の言葉を否定しつつもしっかりと自分の意見を言った。引っ込み思案だった性格も徐々に治りつつある。
「私は反対だぞ!アイリス様が城から逃げ出したたとなれば国中が大騒ぎになる。」
「わ、私も家出するのはやめた方がいいんじゃないかなと思います。皆さん心配するでしょうし……」
ダクネスとゆんゆんは反対のようだ。ゆんゆんはともかくダクネスが反対するのは想定内だ。
「ダクネス、アイリスがここまで我儘言ったことあったか?お前は小さい頃からアイリスを見てきたんだろう。最近はちゃんと自分の気持ちも喋るようになってきたじゃないか。今アイリスの我儘を止めたらまた元の内気な性格に戻ってしまうぞ。」
「そうは言ってもだな……流石に王女様が出ていくのは国が危ぶまれる。アイリス様、どうか考え直してください。」
ダクネスの説得は難しそうだな。ここは諦めてゆんゆんをこちら側に取り込もう。
「ゆんゆんは友達と一緒に家出するなんてワクワクしないか?」
「え!?と、友達とですか……確かに楽しそうですね。えへへ……」
俺はゆんゆんにこっそり耳打ちする。ゆんゆんはふんふんと頷く。
『テレポート!』
俺の指示によりゆんゆんはアクアめぐみんアイリスクリスの四人を紅魔の里へ送る。ダクネスは不味いと思ったのか俺の方に詰め寄ってきた。
『バインド!』
俺はダクネスにお手製のミスリル製ワイヤーを食らわせた。ダクネスはその場で手を後ろにして拘束される。
「お金と帰りの船に乗るチケットは渡しておくからな。頑張って一人で帰ってきてくれ」
「カズマさん、これは流石にやり過ぎでは……?」
「ハァ……ハァ……こんな仕打ちをされても少しいいと感じてしまう私はもう本当に手遅れなのだろうか?」
もう手遅れです。ゆんゆんがダクネスの返答を聞いて軽く引いている。うちの娘はこんな人なんです。
「それじゃ頼んだぞ。」
「はい!『テレポート!』」