このすばらしい仲間と恋愛を! 作:てつろう
過去最長です。8000字くらいあります。
視界がぐにゃりと曲がり眩い光に包まれる。目を閉じ、光が止むのを待っていると紅魔の里に着いていた。
「アイリス様っ!!!」
帰ってくるなりクレアがアイリスに後ろから抱きつく。そのままアイリスの稲穂のような金髪に顔を埋めスゥハァと匂いを嗅ぎ出した。アイリスは匂いを嗅がれてることに気づいてないみたいだが傍から見れば変態にしか見えない。
「クレア、私はこの通り無事ですから離してください」
「そうはいきません。アイリス様に会えない間、私がどれ程寂しかったことか。」
嫌がるアイリスにお構いなしにクレアは強く強く抱きしめアイリスはうざったそうにしている。変態的なクレアとは対称的にレインは落ち着いた様子で話す
「アイリス様、事の大きさが分かっていますか?王女様の失踪によって国王様は酷くご乱心になり国中の警察とギルドに捜索願いを出されています。万が一、アイリス様の身に何かあればクレアも私も首が飛んでもおかしくありません。二度とこのような真似はなさらないよう肝に銘じておいてください。」
レインがかなり真面目にアイリス様を叱っている。しかし、アイリスは怒られているにも関わらず終始ニコニコと顔が蕩けている。レインが訝しげに見て
「アイリス様?今は真面目な話をしているのですが、何故笑っているんです?」
「凄くいい事があったんです。後でレイン達にも教えてあげますね。」
その言葉を聞いてレインはますます訳が分からないようだ。どういうことだと俺の方に目を向ける。
「まあ別に今この場で言わなくてもいいだろう。後でアイリスから聞けばいいしさ」
俺は出来るだけ平静を装って話題を逸らそうとする。もしこの場でアイリスと付き合ったことを言えば修羅場になりそうだからだ。特にめぐみんやダクネスには絶対に言ってはいけない。
「何だか怪しいですね。アイリス、私にも教えてくださいよ。」
「ふふ、めぐみんさんにも教えてあげるつもりですよ。実は私、お兄様と……」
「わああああああああ!!!」
俺…………ではなく、ゆんゆんが大声を出してアイリスの声をかき消す。当然いきなり奇声を上げたゆんゆんは周りから変な目で見られる。
「とうとう頭がおかしくなったんですか?その……そこまでぼっちを拗らせてるとは思いませんでした。私でよければいつでも遊びに付き合ってあげますよ」
「やめて!頭は正常だから!そんな同情するような目を向けないで!」
ゆんゆんがめぐみんの肩をぐわんぐわんと揺らし否定する。めぐみんは穏やかな表情で諭すように話しかける。
「大丈夫です。私が居ますからあなたはぼっちじゃないですよ。」
「うわああああああん!!!」
ゆんゆんは泣きながら逃げていった。普段ゆんゆんにはツンデレなめぐみんがこんなに優しい言葉を投げかけるなんて珍しい。それだけゆんゆんがおかしく見えたのだろうか。
「では、私達も帰りましょう」
「めぐみんさん、ちょっと耳を貸してください」
レインがテレポートの詠唱を始める。アイリスがそっとめぐみんの耳に顔を近づけ何か喋った。口元を手で隠していたから『読心術』でも読み取れなかったがその顔はどこか優越感に満ちていた。
「私、正式にカズマ様の彼女になりました。これでカズマ様は私のものですね」
「…………は?」
アイリスが何を言ったかは分からなかったがそれを伝えると満足そうな様子でレインの元へ戻った。
『テレポート!』
ずっとアイリスがいた所を見続けるめぐみん。何かアイリスに言いたいことでもあったのだろうか。
「どうした?ぼーっとして、アイリスはなんて言ってたんだ?」
めぐみんはアイリスの言葉の意味を噛みしめるように考え込んでいる。暫くして絞り出すように声を発した
「……な、何でもありません」
「それじゃあ俺達も帰るか」
+
(めぐみん視点)
「ただまー」
「やっぱり我が家が一番だな」
紅魔の里からテレポートでアクセルの街に帰り、屋敷へと着いた。ゆんゆんは族長の座を正式に継ぐ為しばらく紅魔の里に留まるようだ。クリスも天界での仕事が溜まってるからと別れることになった。カズマは広間のドアを開けると同時に暖炉前のソファにダイブする。
「ちょっとカズマさん、そこは私の特等席よ。早くどきなさいな」
「何言ってんだ。こういうのは早い者勝ちだろ?……おい俺の上に座るんじゃねえ。重いんだよ」
「重くないわよ!訂正して!私は羽衣くらい軽いって訂正して!」
ギャイギャイとアクア達が騒ぐ。いつもなら私もその喧騒に混ざっていただろうけど今はそんな気分にはなれなかった。私の心にはアイリスの言っていたことが延々と渦巻いてる。
『私、正式にカズマ様の彼女になりました。これでカズマ様は私のものですね』
あの発言は本当なのだろうか。……いや、そんな訳がない。ちゃんと私のことを好きと言ってくれたカズマのことだ。アイリスと付き合うはずがない。……大丈夫、きっと大丈夫だ。
「めぐみん?大丈夫か?酷く苦々しい顔をしているぞ」
ダクネスの言葉で我に返る。そうだ、こんなことでクヨクヨ悩んでるなんて私らしくない。私は紅魔族随一の天才にしてカズマに魔性の女とまで称された者です。もっと自信を持たなくては
「ええ、ちょっと考え事をしていただけですよ。」
「それなら良いのだが……めぐみん、これからギルドに行くのだが一緒に行かないか?」
「ギルドですか?それならみんなで行けばいいじゃないですか。」
「実はめぐみんにだけ話したいことがあるんだ。ついて来てくれないか?」
私に話?この様子だと説教でもなさそうですし何か相談事でしょうか。
「ふふっいいですよ、仲間の面倒を見るのも私の役目ですから。」
未だ喧嘩を続けるアクア達を放置して私達はギルドへと向かった。
+
私はダクネスと二人でギルドに来ている。なんでもダクネスが私にだけ相談したいことがあるそうだ。
「やっぱりダクネスはもっと可愛らしい服の方が似合うと思うのです。」
私はダクネスと二人で他愛もない会話をする。話題は心の底では乙女なダクネスに好みの服を着てもらうという話だ。
「そ、そうか。そこまで言うならたまには可愛い服も着てみるべきだろう。」
「ええ、なんなら今度私が持っている黒のワンピースを貸してあげますよ。きっとダクネスにも似合います。」
「ほ、本当か!?……でも、サイズが合わないんじゃないか?特に胸周りとか……」
「…………やっぱり貸してあげません。」
「ま、待ってくれ!じゃあせめて一緒に服屋へ来てくれないか?その……どうしても一人だとハードルが高いというか……」
「はぁ……仕方ありませんね。一回だけですよ」
ダクネスはもっと自分の気持ちに正直になるべきだ。普段はドMな性癖を前面に出しているのに純情な部分だけ隠す必要もないはずだ。
「それで話って何ですか?」
「ああ、そのことなんだが……」
「失礼します。ダクネスさん、例の作戦は順調でしょうか?」
ダクネスが話し出そうとした時、ギルドの人が話しかけてきた。
「ああ、カズマは屋敷に帰ってきて今頃昼寝でもしているだろう。作戦は今夜決行しよう。」
「分かりました。こちらでも手配しておきます。」
それだけ言い残すとギルドの人は帰って行った。
「ダクネス、作戦とはなんの事ですか?もしかしてそれが私に話したいことと関係あるのですか?」
「ああ、ここだけの話だが実は今夜冒険者達に税金を納めて貰おうと思っている。特にカズマは魔王討伐の莫大な賞金を貰っているからな。国としては是非とも納税させたいんだ。」
「なるほど、つまりカズマが逃げないように私達で足止めするという事ですね」
私は魔王討伐なんかはしているが手に入れた賞金もほとんどカズマに預けており雑費くらいしか使ってない。つまり徴税されても痛くも痒くもないのだ
「その通りだ。流石に魔法全般を封じるスクロールは手に入らなかったが事前にクレアから貰ったテレポートのみの使用を封じる魔道具があるから今夜はカズマもテレポートは使えない。」
準備は万全のように思えるがカズマのことです。何か姑息な手を使って私達の手から逃れるかもしれません。
「多分それだけだとカズマは捕まえられませんよ。もっとカズマの身動きが取れなくなるような方法を取らないと」
「ふむ、では昔やったみたいに私と手錠で結ぶか?」
「そんなことしたらまたダクネスとカズマがイチャイチャするだけでしょう。それなら私と手錠を結ぶ方がマシです。」
ダクネスが呆れたような視線を向けるが私は至って真剣だ。
「では、こうしましょう。二人ともカズマと手錠を繋ぎ、鍵をスティールで取られないように各自の部屋に保管しておきましょう。流石に二人も居ればカズマも簡単には逃げられないはずです」
ダクネスは私の案に賛成したのか大きく頷く。私達は固い握手を交わしてその場を後にした。
+
「ただいま帰りましたよ」
屋敷に着くとカズマとアクアがソファの上に座っていた。いや、正確には寝ているカズマの膝の上にアクアが真正面から抱きつくように座っている。
「何してるんですかアクア……」
「何って、ただ寛いでるだけよ?」
「寛ぐだけならカズマの上に座る必要はないでしょう!早くどいてください!」
「嫌あああ!ここは私の席なの!絶対動かないわよ!」
アクアを羽交い締めにして離そうとするがカズマに強く抱きついてるからか中々離れない。
「……んんっ、うるさいぞ……朝早くからそんなに騒がないでくれ……」
これだけ近くで大声を出していたのでカズマも起きてしまった。このまま寝ていたら納税騒ぎの時にギルドに来なかったかもしれないし丁度いい。
「今は夕方だ。カズマもそろそろ起きろ。そんな状態だとギルドに呼び出されてもすぐに向かえないじゃないか」
「ギルドに呼び出される……?なんで……?」
「あ、いや……それはだな……」
『緊急!緊急!冒険者は直ちにギルドに集まってください!繰り返します!冒険者は直ちにギルドにーーーー』
ダクネスがカズマへの返事に詰まっていると、けたたましいアナウンスが街に流れ始めた。
「……よし、寝るか」
「何二度寝しようとしてるんですか!今の警報を聞いてなかったんですか!?」
「ここ最近出かけてばかりだったじゃないか。たまにはゆっくり休みたいだろ」
カズマが屁理屈をこねて屋敷に引きこもろうとする。仕方ない、ここは一肌脱ぐしかありませんね。
「カズマ、もし一緒にギルドに行ってくれるなら後でぎゅってしてあげますよ」
私の言葉を聞いたカズマは一瞬目を大きく見開いたがすぐに頭を横に振った。
「……悪い、気持ちは嬉しいんだけどそういうのは遠慮しておくよ。」
あれ……?カズマの様子がおかしい。いつものカズマならどうせまたお預けするんだろとか言って不貞腐れた態度をとるのに今回はどこか誠意を感じるような態度だ。
「どうしたのだカズマ?口では文句を言いながらもめぐみんのご褒美にそわそわするのがいつものカズマじゃないか」
「べべべ別に、そわそわなんてしてないぞ!」
ダクネスの言葉に面食らったカズマは気怠そうに頭を掻きむしり、
「俺もそろそろ心を入れ替えようと思ってな。これからはお前らの色仕掛けに落ちたりなんてしないぞ……多分……」
何故急にそんな事を思い始めたのか。私には一つ心当たりがあった。
『私、正式にカズマ様の彼女になりました。これでカズマ様は私のものですね』
いや、そんな事あるわけない。大丈夫だ。きっとカズマは最後に私を選んでくれるはずだ。大丈夫……大丈……夫……。でももし、アイリスと既に結ばれていたとしたら……気づけば私の目からじわりと熱いものが込み上げてきていた。
「め、めぐみん!?どうした!?」
「うえっ……ぐずっ……うぐっ……ひくっ……!」
私の涙は留まることを知らない。泣いても泣いても次の涙が溢れてくる。
「カズマさんがめぐみんのハグを断ったからじゃないの!?」
「そ、それのせいか!めぐみんごめん!めぐみんにぎゅっとされたら本当に嬉しいから!すぐにでも冒険者ギルドに行きたくなってきたぞ!」
泣いてる私はカズマ達に引っ張られるように冒険者ギルドへと連れていかれた。
+
俺達はめぐみんをどうにか泣き止ませギルドに着いた所だった。
「さあ冒険者の皆さん、こちらに並んでくださいね。緊急です。緊急のお呼び出しです。申し訳ありません冒険者の皆様方」
日頃受付をしているギルド職員のお姉さんが、そんな事を言いながら冒険者達を並ばせていた。緊急とか言いながら、俺達をこんな所に並ばせる意味はあるのだろうか?
よく見るとギルドにはいつもの職員だけでなく公務員らしき人までいる。その人達は俺達冒険者を取り囲むように立っている。まるで俺達を逃がさない様に立ち塞がっているようだ。そんな何だかキナ臭い雰囲気に居並ぶ冒険者達がざわめきだす。
「なあ、一刻も早くここを逃げた方がいいって俺の勘が告げているんだけど」
「奇遇ねカズマさん、私もそんな気がしてきたわ。」
待てよ……?確かこの光景には見覚えがあるような……何だったか……喉まで出かかっているのだが……
気づけばこの街のほとんどの冒険者が揃ったようで最後に入ってきた冒険者を通すと入口の前に職員が立ち塞がった。いよいよ逃げ道も無くなってしまった。みんなが集まったことを確認したのか受付のお姉さんが一際高い台の上に立つと拡声器を手に持ち、話し出した。
「皆さん、納税の時期がやってきました!まだ税金を納めてない方は今ここで手続きをお願いします!」
冒険者達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
+
「どどどうしましょうカズマさん!?私の納税額なんてとんでもなく高いに決まってるわ。絶対に払いたくないんですけど!」
「俺の方が沢山税金を取り立てられるんだからな!そもそも今は夏だろ!税金を取り立てられるのは秋じゃなかったか!?」
「去年の徴税で痛い目を見た人が秋になると遠くに出かけるだろうと思ってな。法務省に掛け合って納税の時期を夏の初めの月までに変えてもらったのだ。」
なんて迷惑な話なんだ。だが夏の初めの月は今日で最終日。昔アクアから聞いた話によると最終日まで納税しなければもう徴税されることはないそうだ。つまり今日さえ乗り切れば税金を取られなくて済むということだ。
ガチャ。
「何してんのお前」
横を見ればめぐみんが鎖のついた枷を俺の左手に嵌めていた。その枷は鎖でめぐみんの右手と繋がっている。
「カズマ、今年は大人しく納税しましょう。」
めぐみんは諭すような表情だ。畜生、こいつは今回の納税騒ぎを知っていやがったな!
ガチャリ。
「お前もかよ!?」
今度はダクネスが俺の右手に手枷を嵌めてきた。勿論それはダクネスの左手と鎖で繋がっている。ダクネスはニヤニヤしながら俺に語りかけてきた。
「納税は国民の義務だ。さあカズマ一緒に納めに行こう。」
左手にはめぐみん、右手にはダクネスと手錠で繋がっている。これでは両手もまともに動かせない。この状態で受付に行くのかなり恥ずかしいのだが。こいつらはその後のことを何も考えなかったのだろうか。
「おいダクネス、俺は目的の為なら手段を選ばない真の男女平等主義者だ。俺を敵に回していいのか?」
「ふっ、カズマの納税額に比べたら下着の一枚や二枚軽いものだ。やれるものならやってみろ」
『スティール!』
俺はめぐみんと繋がれている左手で向かい側のダクネスにスティールを使うと、手が淡白く光る。光が止むとそこには大人びた紫色の下着が握られていた。ダクネスはもっと純情な女の子らしいパンツだと思ってたから少し意外だ。
「くうっ!そんな情欲に満ちた目で私のパンツを見るとは……やるなカズマ!流石は私が見込んだ男だ!」
この程度ではダクネスにとってはご褒美のようだ。勿論このまま終わらせるつもりはない。
「めぐみん、ちょっと右手を上げてもらえるか?」
「右手?……こうですか?」
めぐみんは疑問に思いながらも俺の指示に従ってくれる。俺は左手を上げダクネスのパンツを頭の横辺りに持っていくとそのまま顔をパンツに突っ込んだ。
「「なっ!?」」
今の俺は変態仮面のような格好をしていると言えば分かりやすいだろうか。徴税騒ぎでみんなが逃げ惑う中一人こんな格好をしているため周りの人がゴミを見るような目でこちらを見ている。
「このまま捕まるようなら俺は今日一日この姿で過ごすからな。勿論納税する時もこのままだ。」
「ななな、何をしている!?き、汚いからやめろ!」
ダクネスと言えどこの脅迫はかなり堪えたのか顔を真っ赤にしている。俺はとどめを刺す為に深く深く息を吸った。
「スウゥハアァ、うーん、いい匂いだ」
「やややめてくれ!分かった!もう邪魔しないから!」
必死に掴みかかってくるダクネスに頭に被っていたパンツを返してやる。ダクネスはもう充分だな。後はめぐみんの説得だけだ。
「おいめぐみん、一緒に走らないならどうなるか分かってるよな?無駄な抵抗はやめて大人しく……」
「分かりましたから!パンツを顔に被るのだけはやめてください!」
めぐみんが食い気味に答える。そんなに嫌だったのか。少し俺の良心が痛むが仕方ない。兎に角この包囲網から抜けなければ。俺は左にめぐみん、右にダクネスを連れて走り出した!
「では、次の方、……あっ!カズマさんが、引き止め役のダクネスさんとめぐみんさんまで!職員の方々!何としてでもカズマさんを捕まえてください!」
「俺のスティールを食らいたい奴は前に出てこい!」
そう叫びながら俺は出口付近の職員に突っ込んでいく。職員のうち女性は男の人の陰に隠れ、残った男性職員が女性職員を守るように立ち塞がった。なんだアイツらカップルなのか?しかし、俺は誰にでも公平な男。例え女の前でいい所を見せようとする男に対しても容赦はしない。
『バインド!』
ワイヤーが紆曲しながら相手の体にまとわりつく。俺達は無力化された人の上を走り抜けた。
+
俺達は夜の街を駆けていく。後ろからは『待て!』だの『止まれ!』だの叫ぶ声が聞こえてくるがそんなものに従うわけがない。目指すは警察署だ。
『ファイアボール!』
「あぢいいぃ!」
追手の一人が放った魔法で背中が熱くなるのを感じる。慌てて背中にフリーズとヒールをかける。めぐみんとダクネスには当たってないことから俺をピンポイントで狙ってきたのだろう。俺を殺すつもりですか?
「大丈夫ですか?カズマ」
「大丈夫なわけあるか。体力的にももう限界が近いぞ」
「カズマ、今夜は馬車も既に職員が占領しているし外に出る為の門にも門番が待ち構えているぞ。もうどこにも逃げられないはずだ。素直に諦めたらどうだ?」
「俺が向かってるのは警察署だよ。またお巡りさんのお世話になって独房に入ろうと思ってな。あそこなら職員の人達も入って来れないだろうし。」
俺は次々に家の前を通り過ぎる。両脚に気合いという鞭をいれ、勢いよく地面を蹴る。そしてとうとう交番が見えてきた。
「……はぁ……はぁ……よし、このままパンツをスティールしてゴールだ!」
思い切りドアを蹴破り中へ勢いよく入るとそこに居たのは……
税務署の人と思わしき大量の職員だった。
「「「…………」」」
「……ま、間違えました、失礼します。」
「「「確保ー!」」」
次々と職員が俺の上に伸し掛ってくる。さっきまで息も絶え絶えだった俺は逃げることも叶わず捕まってしまった。
「嫌だー!俺は死んでも税金を払わないからな!このまま断固拒否してやる!それ以上やるつもりならスティールするぞ!おい!やめろー!」
俺は赤子のように喚きながら職員の人に連れていかれる。無論両手にめぐみんとダクネスを連れて。