このすばらしい仲間と恋愛を! 作:てつろう
ちょこっとグロい描写があります。お気をつけて
【追記】:ちょっと展開を変えました
(めぐみん視点)
「うえっ……ひぐっ……うぐっ……」
私はカズマの胸に抱かれて泣いていた。どうして私はこんなにカズマの事を想っているのに、カズマは私の事を好きでいてくれないのでしょう。
「ごめん、ごめんなめぐみん」
カズマはただ平謝りするだけだ。私の気持ちに応えてくれる訳ではない。それでもカズマの優しさに触れて私は余計に涙を流してしまう。
「どうして……どうしてダクネスなんですか……」
「俺もめぐみんと恋人になると思ってたよ。でも、ダクネスに真剣に気持ちをぶつけられてさ……。俺の中で何かが吹っ切れたんだ。」
「なら私が今から真剣に告白しますから私と……」
「それは出来ない。」
カズマが私の発言を最後まで聞く前に拒否する。その冷たい態度に私は心がズキズキと痛む。
「俺はもうダクネスと恋人同士なんだ。出来るだけダクネスの事は裏切りたくない。だからもう他の人と交際する事はない。」
ああ……もう手遅れだ……。なんでもっと早くカズマと恋人にならなかったのだろう。強い後悔だけが私の心を支配する。
それから暫く泣いていた私は時間が経つにつれて徐々に落ち着きを取り戻してきた。そのせいか私の中で一つ引っかかっている事があると気づく。
「……そもそもこの前はアイリスと付き合ったと言ってたのに、いつの間にダクネスと付き合う事になったんですか?」
「……そんな事言ったっけ?俺が付き合ってるのはダクネスだけだぞ。いつアイリスと付き合ったんだよ」
なにか様子がおかしい……。あの日の夜、確かにカズマはアイリスと恋人になったと言っていましたし……覚えていないのでしょうか……?
「じゃあ、私とエッチな事したのは覚えてますよね?」
「いやいや何言ってるんだよ。そんな事してないだろ」
……え?……。私との事も忘れている……?
「もしかして記憶が飛んでたりしませんか?」
「いや、そんな事はないは……ず……あれ?俺は確かアイリスと何か重要な事を約束したような……」
これは間違いない、カズマは何者かに記憶を消されたのだ。一体誰がそんな事を……?カズマの記憶を消して得がある人が犯人ですよね。そもそも記憶を消すポーションなんて滅多に手に入らない筈。確か昔カズマの記憶が消された時はクレアが……あ。分かりました。これはアイリスの仕業ですね。
その時、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「ごめんくださーい、お兄様はいますか?」
+
(カズマ視点)
玄関に行くとアイリスが居た。泣いているめぐみんを連れてくるのも気が引けたので俺は一人で出迎える。隣には護衛として付いて来たであろうレインも居た。
「おう、久しぶりだなアイリス。」
「お兄様!」
アイリスが出会い頭に俺に抱きついてくる。後ろのレインが少し驚いたような顔で見ている。
「あ、アイリス?なんか距離が近くないか……?」
「もう恋人同士なんですからこれくらいするものでしょう?」
「……は?恋人?誰が?」
「私とお兄様がですよ?」
この
「いやいやいや、いつ恋人になったんだよ」
「あ!泥棒猫!」
いつの間にか後ろから来ていためぐみんが声を荒らげる。
「私のカズマをよくも誑かしてくれましたね!」
血気盛んな様子でめぐみんがアイリスに詰め寄る。しかしアイリスも毅然とした態度でめぐみんに対峙する。
「いつお兄様がめぐみんさんのものになったんですか?」
「はっ、私はカズマとエッチなことをする程の仲なんですよ?アイリスは精々カズマとキスしたくらいで喜んでるのでしょうけど」
めぐみんはアイリスと睨み合っている。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。二人ともさっきから何を言ってるんだ?身に覚えが無いことばかりなんだけど」
その時、玄関のドアがガチャリと開けられる。ドアの向こうにはバニルが居た。
「フハハハハ!自分の知らぬ間に周りの女達と関係が進展している事に悩む男よ!」
「あれ、貴方はハチベエではありませんか?」
後ろに控えていたレインがバニルに尋ねる。
「いかにも。ある時はハチベエ、またある時はウィズ魔道具店のバイトである。本日はちょっとした商談があってこの場へ来たのだ。」
バニルはニヤリと口を歪ませるとこちらへ向き直った。どうやら俺に用があるらしい。
「このポーションを飲めば小僧の悩みは全て解決するだろう。料金は後払いで構わぬ。使ってみると良い。」
「なっ!?それは宝物庫にあった万能薬では!?ハチベエ殿、どうして貴方がそれを!?」
「レイン、どうやらお兄様の様子おかしいです。ここはハチベエに任せましょう。」
「し、しかしですね……」
俺はバニルから万能薬と言われていたポーションを受け取る。後払いの額が一体いくらなのか気になるが……。だが、飲んでみるか。俺は一思いに万能薬を飲んだ。
「あっ……」
「ああああああああぁぁぁ!!!」
俺は何でこんな重大な事を忘れていたんだ。アイリスと付き合った事、めぐみんに無理やり犯された事、ダクネスに記憶消去のポーションを飲まされた事。その全ての記憶が蘇ってきた。
「……お前らに大事な話がある」
+
屋敷のリビングにはめぐみん、ダクネス、アイリス、そして俺の四人で座っていた。護衛として来ていたレインには席を外してもらっている。めぐみんとダクネスはどこか表情が硬かった。
「それじゃあ今までに起きた事を全部話してもらうぞ。まず、ダクネス、お前は俺に記憶消去のポーションを盛ったな?」
「……はい」
やはりダクネスが犯人か。『貴族がポーションをこっそり盗んでいくやもしれぬ。』とバニルが言っていたがまさかその貴族がダクネスの事だったなんて。屋敷の中ではポーションを盗まれないだろうと完全に油断していた。
「で、俺が何もかも忘れてる間に俺と肉体関係を結んだわけか……」
「そ、そうだ。私はこの中で唯一お前と肉体関係を持っているのだ。ちゃんと責任を取ってくれるだろう?」
ダクネスには俺の剛直を穴の中に入れてしまっている。あんなにアイリスの事を裏切らないようにしてたのに結局こうなってしまったのか……
「責任については後で考える……。次はめぐみんだが……」
めぐみんがビクリと身体を震わせる。先程ダクネスと俺に言われた事が相当堪えているのだろう。目もまだ腫れたままだ。
「無理やり手こきしてきた事も全部覚えてるからな」
俺は少し威圧感を与えるようにして話す。めぐみんは小さな体を余計に縮こませ、いつもの自信に溢れてる姿とは程遠い姿となっている。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
もう謝るだけになっためぐみんは充分だろう。少し責めすぎたかもしれない。
「最後にアイリス、恋人同士になったのにこんな事になってごめん。この通りだ。」
俺はアイリスに向かってみんなの前で土下座した。本当にアイリスには申し訳ない。俺が不甲斐ないせいでここまで裏切ってしまった。
「大丈夫ですよ、お兄様。お兄様も悪気があったのではないのでしょう。」
アイリスは優しく言ってくれるがそれでは俺の気は済まなかった。もっと彼女の前で誠意を見せたい。その為に俺は宣言する事にした。
「いいかお前ら、よく聞けよ」
「俺はアイリスを選ぶ。だからお前らとの浮ついた関係もこれで解消する。」
「お兄様……!」
俺の言葉を聞いてアイリスは心底嬉しそうな顔をしていた。その顔を見て俺は少し罪悪感が薄れる。だが、問題は他の二人だ。めぐみんは先程あんなに泣いたというのにまた涙を流していた。ダクネスは納得いかない表情で俺を見つめる。
「待てカズマ、私とお前は恋人同士になったはずだ。その責任はどうやって取るつもりだ。」
「そんな事になったのもダクネスが俺に記憶消去のポーションを飲ませたからだ。少し酷いかもしれないがお前との関係もこれまでだ。」
「そんな……嘘だ!私がお前を手に入れる為にどれ程頑張ったと思っている!」
ダクネスがテーブルを叩くとドンと大きな音を立ててヒビが入った。その様子に俺は思わず怯える。俺はこいつに殺されるんじゃないだろうか……
「それは違いますよララティーナ」
荒んだダクネスに答えたのはまだ幼いアイリスだった。怯えていた俺とは対照的に、彼女は王女なだけあって凛とした態度で言う。
「貴方がやってきた行いは卑劣なものばかりです。どれも悪徳貴族がやるようなもの。そんな行いで愛が実を結ぶと思いますか?いいえ、そんな訳ありません。」
「アイリス……様!貴方さえ居なければ……!私はカズマと一緒になれたのに……!」
ダクネスには僅かな理性しか残っていない。少し間違えば彼女はアイリスに手を出すだろう。そうなる前に早くこの場から逃げよう。
「まあそういう訳だ。俺は暫く王城に行くよ。この屋敷もお前達にやる。」
そう告げると俺はリビングから出てレインの元へ行こうとする。だが、泣いてばかりだっためぐみんが初めて行動に出た。
「待ってくださいカズマ!お願いですからここに居てください!」
めぐみんは泣いて立つ気力もないようで這いつくばって俺の足を掴んだ。しかし、彼女の力は弱々しく簡単に手を振りほどく事が出来る。
「ごめんめぐみん、俺はもうアイリスを裏切りたくない。」
俺はアイリスを連れてリビングのドアを開ける。
「話は済んだようですね。」
部屋の外でレインが待っていたようだ。多分俺達の話を聞いていたのだろう。
「カズマ、待ってくれ!せめて屋敷に居てくれないか……?」
ダクネスが俺達の元へ駆け寄ってくる。しかし、彼女が追いつくより先にレインはもうテレポートの詠唱を済ませていた。
『テレポート』
俺達は王城へと向かった。
+
(ダクネス視点)
カズマが私達の前から消えた。その事実が悲しくて悲しくて私とめぐみんはただひたすらに泣いていた。失敗した。何もかも失敗した。せっかくカズマを自分の物に出来たと思ったのに、カズマも私の事を好きと言ってくれたのに。でもそれらはアイリス様が居なければの話だ。私は二の次に過ぎない。一体何を間違えたのか。
「うああああああ!!カズマああああ!なんで私の事を見捨てるんですか!カズマあああ!」
隣でめぐみんが大声でカズマの名を呼ぶ。いつもなら『しょうがねえなあ』と言いながら解決してくれる彼の姿はない。
「うぷっ……うげえぇぇぇ!!」
私は何もかもが嫌になって胃液を外にぶちまけてしまった。ああ、きっとこれは悪い夢だ……。目が覚めたら私はカズマと結ばれているはずだ。そうに違いない。
「うぐっ……大丈夫ですか?」
めぐみんが嗚咽を漏らしながらも聞いてくる。私に言っているのだろうか。あんなにめぐみんの事を虐めた私に情けをかけてくれているのか?
「大丈夫です。私が必ずカズマを取り返してみせますから……うっ、おえぇぇ」
めぐみんも私の吐瀉物を見て胃が刺激されたのか食べ物を吐き出した。彼女もカズマを失った悲しみは同じはずだ。いや、その前にカズマから拒絶されてるのだから私以上に辛いはずだ。それなのに私の事を励ましてくれる。
「ううっ……カズマ……どうして居なくなっちゃうんですか……」
リビングは私達の吐瀉物で酷い臭いだ。かと言ってそれを処理するほどの精神力が私達にはない。どうすることも出来ない。
「ただまー」
この声は聞き間違うはずもない。私達の仲間の声だ。アクアが帰ってきた。
「ちゃんとおかえりを言ってほし……う、うわあ……な、なによこれ」
水の女神は、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにした私達と嘔吐物を見て何を思うだろうか。女神のように慈愛に満ちた心で許してくれるだろうか。
+
カズマが居なくなってから一週間が経った。
「ダクネスー!ダクネスー!起きてるわね!」
アクアがノックもなしに私の部屋へ入ってくる。私は布団にくるまったままアクアを中に入れた。
「もういつまで寝てるのよ。今日こそは部屋から出てもらうからね」
カズマが屋敷を出てから私は一日中部屋に
「めぐみんも一日中部屋に引きこもってるし……この屋敷でニートじゃないのは私だけよ」
アクアから聞いた話だとめぐみんも私と同じように引きこもりになってるようだ。それだけカズマが居なくなったことがショックだったのだろう。
「今日は朝からエリ……クリスも来てるから元気出しなさいよ」
「……ああ」
私は無愛想に返事する。私の事を気にかけてくれるアクアは有難いが今回の事は私の心に大きな傷を残した。これも全てアイリス様……いや、あの王女のせいだ。
「ほら、いい加減部屋から出なさい!」
アクアに無理やり手を引かれて部屋の外に出される。トイレ以外で部屋から出たのは久しぶりだった。私はアクアに連れられてリビングに入る。テーブルにはクリスが座っていた。
「久しぶりだね、ダクネス」
「…………」
一週間ぶりにリビングに来てカズマが出て行った時の事を思い出す。ここで、カズマが私を拒否してあの王女を選んだのだ。あの日の事を思い出すだけでなんだか気分が悪くなってきた。
「……クリス、悪いが私はもう部屋に戻るぞ。ここではあの王女の事を思い出して嫌な気持ちになってくる。」
「私も一緒に部屋に行くよ」
リビングに入るなりすぐに引き返した私にクリスが付き添う。この一週間寝ても覚めてもあの女の事が頭に
「カズマあああああ!カズマああああ!!」
めぐみんがひたすらにカズマの名前を呼んでいる。めぐみんはカズマが居なくなった日から突然カズマの名前を大声で連呼するようになった。一日中叫んでいる訳ではないが、朝や真夜中になるとめぐみんが狂って大声でカズマを呼ぶのだ。その度にアクアがめぐみんの部屋に行き宥めるようになっていた。
「アクアさんから話は聞いてたけど、これは大変そうだね……一人じゃ大変だからアタシが呼ばれたんだね」
かつては私もめぐみんの事を恋のライバルとして敵対視していたが王女の略奪の事件以来、その気持ちもだいぶ薄まっていた。彼女もあの王女にカズマを取られた被害者にすぎない。そういう意味で私はめぐみんに強く同情している。私とクリスは部屋に入る。部屋の中にはアクアが持ってきていた朝ごはんがあった。食事が喉を通らない私の為にお茶漬けが置かれていたが、私はそれを無視して毛布にくるまる。
「ダクネス、ご飯食べないの?」
「……食欲がない。」
「ダメだよ、ちゃんと食べないと。ほら、私が食べさせてあげるから」
クリスはお椀を片手にスプーンでお茶漬けを私の口の前に持ってくる。このまま食べないとベッドに落ちて汚れてしまいそうなので私は仕方なく体を起こしご飯を食べた。
「カズマはもう帰ってこないのか……」
「そんな事ないよ。アクアさんが必死に説得してなんとか屋敷に戻ってくるように頼んでるみたい。」
「それで帰ってくると思うか?カズマは自分の意思で屋敷を出ていったのだ。それにあの王女もレインもそれを了承している。もう二度とカズマとは会えないと考えてもおかしくないと思うが」
「…………」
私の言葉にクリスは返す言葉もないのか黙ってしまった。私はクリスからお椀を取ると自分でご飯を食べ始めた。そんな私の様子を見てクリスがゆっくりと口を開いた。
「……でも、カズマくんはなんだかんだで君達に甘いでしょ?ひょっとしたら帰ってきてくれるんじゃない?」
「……そうだといいな」
私はご飯を食べ終えてお椀をクリスに返す。今朝からあの王女の事が頭に
「ねえ、ダクネス。このままでいいの?」
毛布にくるまろうとしていた私は動きを止めてクリスの言葉に耳を傾ける。
「カズマくんがアイリス様のものになっちゃうんだよ。そんなの耐えられるの?」
「……カズマが選んだことだ。私はカズマに選ばれなかった。もう諦めるしかない。」
今となってはカズマの事もあの女の事も考えたくない。私はもうこの苦痛から解放されたいだけだ。
「ダクネスは甘いね。カズマくんと王女様が何をしてるかちゃんと考えてないんだよ」
クリスが言ってくることが少し怖くなってくる。それ以上言わないでくれ……お願いだ……
「このままだとカズマくんとアイリス様は結婚、そしてエッチな事もするかもね。毎晩毎晩二人は愛し合うのさ。ダクネスが屋敷で塞ぎ込んでいる間にも二人は…………」
「やめろ」
これ以上クリスの話を聞きたくない。私は強い憎しみを隠すこともなくクリスを睨む。私の反応を見てクリスは満足そうな顔を浮かべて私に提案してきた。
「ねえ、カズマくんを誘拐しない?」
何を言っているんだとクリスの顔をじっと見る。彼女はどこかワクワクした表情だ。
「冗談はよせ……」
「私は真面目だよ。このままじゃカズマくんは王女様のものになっちゃうでしょ?」
「なら奪っちゃえばいいんだよ」
この人は本当に私の知るエリス様なのだろうか。エリス様はもっと品行方正で悪事を嫌う方だと思っていた。それが誘拐だなんて……
「エリス様、女神ともあろう方がそんな事をしてはいけません。」
「エリス様はやめてください…………。でも、これは仕方ないことなんです。このままだと私の大事なダクネスが不幸な人生を送ってしまうのですから」
見た目はクリスのままだが、エリス様は私の事を抱きしめてくれた。エリス様は慈悲深い心を持っているようだ。
「女神エリスの名においてこの件についてすべての罪を赦します。」
その言葉で私の心は洗われていくようだった。あの王女への怒り、カズマに拒否された絶望、何も出来なかった自分への後悔。あらゆる負の感情が薄まっていく。
「……ありがとうクリス」
「ふふっ、親友だから当然だよ」
私がクリスと抱き合っているとドアの向こうからアクアが顔を出した。アクアは私の笑顔を見て少し驚いたような顔をする。
「あらダクネス、ちょっとは元気が出てきたんじゃないの?」
「……まあ、少しはな。クリスのおかげだ。」
クリスは私の言葉を聞いて少し照れくさそうだ。
「後はめぐみんさえ元通りになってくれればいいのだけれど……」
アクアは不安そうな顔で呟く。今日見た限りではまだまだめぐみんは心の傷が癒えてないようだ。仲間として私が彼女の面倒を見てあげよう。
「私がめぐみんと話してもいいか?」
+
所変わってめぐみんの部屋の前。何かあってもすぐに駆けつけられるように部屋のドアは開けっ放しだ。一応部屋に入る前にノックをした。
「めぐみん、入るぞ」
めぐみんは見るからに弱々しくとても気が滅入っているようだった。そんな彼女はボーっとしたまま横になって天井を眺めてる。私は彼女の視界に入るように顔を近づけると両手をめぐみんの頬に添えた。
パン!
そしてめぐみんの頬を両手で包むようにして叩く。
「目を覚ませめぐみん!カズマを取り返しに行くぞ!」
「カズマを…………?」
めぐみんの意識はまだぼんやりとしているが、”カズマ”という単語には反応した。めぐみんにはカズマが居ないとダメなのだ。
「ああ、取り返すのだ。あの王女に奪われて悔しくないのか?」
「…………無理ですよ。だって私カズマを怒らせてしまいましたし…………」
めぐみんはカズマに手こきして一度逆鱗に触れてしまっている。今でも怒ったカズマの事がトラウマなのだろう。
「大丈夫だ。ちゃんと話し合えばめぐみんの事も分かってくれる。」
「……無理です。」
「じゃあ諦めるのか?」
「…………だってどうしようもないじゃないですか」
めぐみんはあの王女と戦う気力が残っていないようだ。いつもの威勢のいいめぐみんはどこに行ってしまったのだろうか。
「カズマに選ばれた時のあの王女の嬉しそうな顔を見ただろう?」
「…………」
「あれを見てどう思ったのだ?憎たらしく思わなかったのか?」
「…………ましたよ」
「?」
「思いましたよ!ぶっ殺してやりたいです!でも、もう無理なんです!もしこれ以上何かしたらカズマに嫌われちゃうかもしれないじゃないですか…………。それが怖くて……!いっその事諦めた方が気が楽になると思って……!」
「大丈夫だ、私も怖い。カズマに拒絶されたらと思うと足がすくんで泣きそうだ。」
「それなら……どうして……!」
「もう私は後悔したくないんだ。私にはカズマしかいない。この機会を逃せば私はもう女としての幸せを掴むことは出来ない。」
「めぐみんもそうだろう?」
「…………私はいいです。カズマを取り返すならダクネス達でやってください。」
ここまで説得してもやる気が出ないならこれ以上話しても無意味だろう。時間が経てばめぐみんも少しは立ち直れるかもしれない。こうなった以上、めぐみん以外でカズマを奪還するしかない。私はクリス達と今後の計画を立てるため、部屋を出た。