このすばらしい仲間と恋愛を! 作:てつろう
約7000字あります。
「うーん……」
いつの間にか眠っていたらしい。まだ怠さが残る中俺は意識を覚醒させる。確か昨日はアイリスの部屋でーーー
「アイリス…………?」
辺りを見回すがアイリスの姿は見当たらない。先に部屋を出たのだろうか。よく見ると俺は裸のままだ。テーブルの上には俺の服が綺麗に畳んで置いてあった。アイリスが畳んでくれたのだろう。
コンコン
部屋のドアがノックされた。不味い、俺は今裸だ。こんな状態でアイリスの部屋に居た事がバレたらタダじゃ済まないだろう。とりあえず毛布を深く被り潜伏スキルを発動した。
やがて部屋のドアが開けられ中に人が入ってくる。
「遂にアイリス様のパンツが……ふふっ、笑いが止まらん!」
この声の主はクレアか、クレアが部屋に入って来た。そういえばクレアはアイリスの部屋の清掃をしていると言っていたな。
「ベッドのシーツの交換もしておくか」
するとこちらに足音が近づいてくる。こんな姿では言い逃れはできない。俺は目をつぶって潜伏スキルを発動させ必死に体を縮める。
「貴様、何をしている?」
クレアのひどく乾いた声が耳に響く。布団をめくられたのだろう。そっと目を開けるとこちらを見ている碧眼と目が合った。
「す、すみません……」
「しかも服を着てないじゃないか……一体アイリス様の部屋で何をしていた?」
クレアは声を荒らげるでもなくじっくりと俺に質問していく。これは俺の返答次第では殺されるやつだ……。と、とにかく逃げるんだ。
「こ、これには深い事情があってだな……」
「覚悟は出来ているな?」
『フラッシュ!』
俺は部屋から逃げ出した。
裸のままで、
「捕らえろおおお!曲者だあ!」
クレアの怒号が城に響く。ヤバい、何がヤバいかって俺が服を着てない事だ。クレアが襲ってきたから服を着る暇もなかったのだ。とにかく必死になって逃げる。暫く走っていると俺の前に甲冑を着た二人の兵士が立ち塞がった。
「そこで止まれ!」
この兵士もクレアの命令には逆らえないだろうし、捕まったらクレアに折檻される事は確実だ。捕まるわけにはいかない。
『フラッシュ!』
俺は目眩しの魔法を使い兵士の間を抜ける。クレアの弱点はただ一つ、アイリスだ。アイリスの所まで行けば俺は助かる。裸の男を見て驚くメイド、何の騒ぎだと見物する使用人、みんなを無視して幾度もぶつかった人を押し倒し一直線にアイリスの部屋へ向かった。後ろからは兵士やクレアの足音が迫る。
流石に長い事走ったため疲れがどっと押し寄せてくる。俺は足を止めよろよろと二、三歩歩いてその場に倒れ込んでしまった。ダメだ、もう俺は走れない。そもそも俺の貧弱なステータスで怒ったクレアから逃げ切れるわけが無い。しかも俺は素っ裸だ。なぜこんな格好で城中を駆け回らなくてはならないのだ。どう見ても俺の方が悪役ではないか。
「はぁ……はぁ……よくもアイリス様を……!許さん!」
疲れた様子のクレアが俺の前に立つ。地面に倒れ込む俺をぐるりと兵士達が囲む。とうとう捕まってしまったか。と、その時
「お兄様!」
騒ぎを聞きつけたのであろうアイリスがレインと共にやって来た。俺は大きく安堵のため息をつく。
「お兄様をいじめてはダメですよ!」
クレアと俺の間に割って入り込むアイリス。素っ裸の俺だが気を利かせてレインがマントをくれた。
「ち、違うのですアイリス様。その男がアイリス様のベットで裸で寝ていたのですよ!」
「はい、それは存じています。」
「……はい?」
クレアが何を言っているのだと言う顔でアイリス様を見つめる。それはレインも一緒なようでまさか……という顔をしている。クレアは絶句して何も言えなくなったがレインが代わりに質問した。
「えっと、なぜカズマ殿は裸でアイリス様の部屋に居たのですか……?」
「それは……その……お兄様とそういう事をしたからと言いますか……」
アイリスは顔を少し赤くして小さな声で言った。絶句する面々。ただ一人クレアは剣を握る手に力を込めて、
「貴様、殺してやる!」
クレアが再び暴れ出した。
+
クレアは酷い暴れようだった。周りの兵士達がどうにかクレアを押さえつけその場は解決したが、
俺は城を出てアクアの元へ向かう。アクアは門番に連行されそうになっていたが俺を見ると余計にジタバタと体を動かした。とりあえずアクアを助ける為門番に事情を話す。
「あのー門番さん、そいつは俺の仲間だから大目に見てやってくれませんか?」
「はっ!了解しました!」
アイリスの婚約者というだけあって俺の要望であっさりとアクアを解放してくれた。拘束から逃れたアクアはズカズカと俺の方に歩いてきて大きく手を振りかぶって言った。
「カズマさんのバカっ!」
渾身の怒りを込めて俺の頬をアクアの手の平が叩く。いきなり叩かれて何が何だか分からない。さっきまでアクアを取り押さえていた兵士達も心配そうに見ている。今度は俺の胸ぐらを掴んで言った。
「カズマさんが居なくなって私が、私達がどれほど大変だったと思ってるの!?ふざけんじゃないわよ!今すぐ屋敷に帰ってきなさい!」
「ご、ごめん」
アクアの勢いに押されて思わず謝罪してしまう。ここまで怒ったアクアを見るのは初めてだ。
「いい!?あんたのせいでめぐみんやダクネスがおかしくなっちゃったの!とにかく帰るわよ!」
俺はアクアに無理やり屋敷へと連れて行かれた。
+
俺とアクアはアクセルの屋敷へと向かっていた。道中でアクアから聞いた話によると、俺が城へ向かった後に、めぐみんとダクネスがショックのあまり嘔吐した事、二人とも部屋から一歩も出てない事、ご飯もほとんど食べてない事等を話してきた。
「……それは本当なのか?」
「本当よ!めぐみんなんて何度か窓から飛び降りようとしたのよ!もうカズマさんが帰って来ないとみんな大変な事になるの!」
どうしよう……思った以上にアイツらの傷は深かったようだ。俺のせいでアイツらが自殺する事になったら……考えただけでもおぞましい。
「クソっ、どうすればいいんだよ」
「とにかくお城に住むなんてバカな事言ってないで屋敷に帰ってきなさい!」
はぁ、本当にアイツらは俺に迷惑をかけるな。だがアイリスも居るし俺がずっと屋敷に居るのは無理だ。
「悪いけどアイツらの顔を見たらすぐに城に帰るよ。俺が思うにアイツらの心の傷が癒えるのも時間が解決してくれると思うんだ。だから暫くすれば元通りになるって。」
「随分呑気な事を言うのね。その発言は実際にめぐみん達を見てから言ってみなさい。」
暫く歩いていると懐かしの屋敷へ着く。アイリス達には屋敷に行く事を伝えていないし、早めに帰ろうと思っていたその時、
「カズマああああ!カズマあああ!!」
そっと玄関のドアを開けると中から俺の名前を叫ぶ声がした。声の主はめぐみんだ。アクアから聞いていたが実際に狂った所を目の当たりにすると少し引いてしまう。
「ね?このままじゃ大変でしょう?とりあえずめぐみんに顔を見せてあげなさいな」
廊下をアクアと一緒に進んで行くに連れてどんどんめぐみんの声が大きくなってくる。めぐみんの部屋は開いたままになっており中にはめぐみんを宥めるダクネスの姿があった。
「大丈夫だめぐみん、アクアならカズマをきっと取り返してくれる。」
ダクネスがめぐみんを抱きしめながら話す。ドアから顔を出すと喚いてるめぐみんと目が合った。彼女は俺を見ると名前を呼ぶのを止め、どんどん顔が青ざめていった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
そんな彼女になんて声をかけていいのか分からない。とりあえず許してあげたらいいのだろうか。
「め、めぐみん?大丈夫か?」
「ごめんなさいごめんなさい、お願いですからどこにも行かないでください。ごめんなさいごめんなさい……」
めぐみんはひたすら謝るだけだ。めぐみんの背中を優しくダクネスがさすってあげている。
「それ以上謝るならもう帰るからな」
「ごめんなさ……」
強引にめぐみんが謝るのを止めさせる。めぐみんは俺の顔を見詰めて何と言われるか怯えているようだった。
「そんなに罪悪感を持ってるならもう充分だって。その……めぐみんに色々された事も全く嫌なわけじゃなかったしさ。あまり気にするなよ。」
「ううっ……カズマ!」
涙ぐむめぐみんを正面から抱きしめてあげる。なんだかんだ言いつつも俺はコイツらに甘い。結局許してしまうのだ。
「カズマはいつまでここに居るのだ?」
「お前らの顔を見たらすぐにでも帰ろうと思ってたんだが」
俺の言葉を聞いた瞬間にめぐみんが辛そうな表情になる。
「カズマっ!ずっと屋敷に居てください……!カズマの為なら何でもしますから」
「悪いけどそれは出来ない。城ではアイリスが待っているしさ。今日も何も言わずに城を出てきたからな。」
めぐみんの絶望した顔。その顔が俺の心をズキズキと刺してくる。ああ、なんで俺は仲間にこんな辛い事を言わないといけないんだ。
「待てカズマ、それならせめて夕食だけでも一緒に食べていかないか?」
ダクネスの縋るような目。居た堪れなくなり仕方なく俺が折れる事にした。
「はぁ、しょうがねえな」
+
(めぐみん視点)
カズマが久しぶりに屋敷に帰ってきた。でも、夜ご飯を食べたらすぐにお城に帰ってしまうらしい。その事が嫌で嫌でしょうがない。もし、無理やりカズマを屋敷に引き止めたらまた嫌われてしまうかもしれない。だから、私にはどうする事も出来ない。
夕食はとても気まずいものだった。皆表面上は取り繕っているが内面に暗い感情を持っている。他愛もない話をして本心を隠そうとしているのが分かった。そこで私は聞くことにした。
「カズマはアイリスとどこまで関係が進んだのですか?」
途端に皆ご飯を食べる手を止めた。ダクネス達が多分一番気になってる事だ。でも、誰もその事を聞く勇気がなかったのは分かっている。
「べ、別にアイリスとは恋人のまま…………あっ……」
カズマが何かを思い出したかのように話を止める。私は嫌な予感がして席を立とうとした時、アクアがカズマに言った。
「まさかエッチな事をしたんじゃないでしょうね?」
珍しく鋭い事を言うアクアに顔を赤くして俯くカズマ。反応からして女神の推測は当たっているのだろう。もう嫌だ、聞きたくない。
「この際だから言っておくと俺、アイリスと結婚する事になったんだ。」
嫌だ嫌だ嫌だカズマカズマカズマ。お願いだから遠くへ行かないで欲しい。ずっと傍に居て欲しい。
「結婚……だと?」
「ああ、アイリスの誕生日に結婚式を挙げるんだ。」
私は涙を流してしまう。もうこれ以上私を傷つけないで欲しい。私は全身の力が抜けて持っていたスプーンを落としてしまった。
「カズマさん、それ以上はやめてあげて」
「あっ……悪い。」
私の様子を見てアクアがカズマの話を遮る。私はカズマにこんな同情するような目を向けられたかった訳ではない。私が悲しみに暮れた次の瞬間ダクネスが反撃に出た。
パシャッ
ダクネスはテーブルの下に隠し持っていたポーションをカズマに向かって投げたのだ。突然の事に何が何だか分からない私達。ポーションを顔に食らったカズマはフラフラと頭を揺らす。やがて自分が食べていたスープの中に頭を落とした。
「な、何してるんですか!?ダクネス」
「ただ睡眠薬を浴びせただけだ。そんなに慌てるな。」
未だ理解が追いつかない私とアクアを尻目に、ダクネスはカズマを担ぎ上げ、屋敷の外へと運び出した。急いでダクネスの後を追うとそこには馬車が用意してあった。恐らくダクネスが用意したのだろう。ダクネスは担いだカズマを馬車の中に座らせる。
「ちょっと待ちなさいよ!一体何をするつもりなの!?」
「事情はゆっくり話してやる。二人とも付いてくるか?」
私とアクアは顔を見合わせる。元から私達に選択肢は無い。カズマが居る場所に付いていくだけだ。私とアクアは馬車に乗る事になった。
+
馬車はゆっくりと進んで行く。御者台にはダクネスの家の使用人らしき人が座っていて馬車を引いていた。この馬車はどこへ向かっているのだろうか。
「私がこの計画を思い付いたのは昨日だ。昨日クリスがカズマを誘拐したらどうかと提案してきてな。」
”誘拐”、物騒な単語に身構える私とアクア。ダクネスはこのような貴族の権力を使った横暴を人一倍嫌がる人だったはずだ。だが、アイリスにカズマを取られた事でダクネスの心境にも変化があったのだろうか。
「私は思った。あの王女に易々とカズマを取られるくらいなら貴族の特権やこの
正直言うと私の心は期待と不安が半々くらいだった。もしかしたらずっとカズマと一緒に居られるかもしれない。それにアクア達も居る。少し
「……こんな事してもすぐ捕まるわよ」
「勿論既に手は打ってある。絶対に捕まらないとまでは言い切れないが、そう簡単には捕まらないだろう。」
一体何をしたのだろう。ダクネスを信用して良いのだろうか。国家反逆罪で捕まるのは御免だ。でも、ダクネスに協力しないとカズマと一緒に居られない。それと……私の中にはもう一つ大事な事がある。
「ダクネスは……こんな誘拐なんてしてカズマに嫌われるのが怖くないのですか?」
「一時は嫌われるかもな。だがそれも一時的な事だ。すぐに私達無しでは居られなくなる。」
なるほど、今のダクネスは狂ってしまっている。完全にカズマを監禁するつもりだ。私もカズマを自分のものにしたいと思った事はあるが、行動に移す事はなかった。しかし今はいつでも実行できる状態にある。
「ふふっ」
私は思わず笑みを零した。私の様子を見てアクアが不審な様子でこちらを見る。
「いえ、またこの四人で暮らせるのが嬉しくて。その計画私も協力しますよダクネス」
カズマにはアイリスの事を忘れてもらう為に徹底的な調教が必要そうだ。これからの事を考えるだけでワクワクが止まらなかった。
「こんなのおかしいわよ……」
ただ一人アクアだけが納得してないようだ。みんなで一緒に暮らせてカズマが他の女と接する事もないのに何がそんなに不満なのだろう。やがて馬車はダクネスの家に着く。ダクネスはカズマを肩に担ぐと中へと入っていった。勿論私とアクアも付いていく。今度こそアイリスに勝ってみせます。
「我が名はめぐみん!爆裂魔法を操りカズマの妻となるもの!」
私は声高に宣言した。
+
(カズマ視点)
眠い。とても眠い。だが、起きなくてはいけない。早く城に帰ってアイリスに会おう。今夜は結婚式の事について話すんだ。俺の意識は泥沼から這い上がるように目覚めていく。ゆっくりと目を開けると知らない場所が広がっていた。
俺が居る部屋はベッド一つに簡素なテーブルと椅子が三つ、周囲は全て壁で覆われており天井部分だけはめ殺しの窓が取り付けてあった。
「どこだここ……」
とにかく嫌な予感しかしない。確か俺は夕飯を食べていたはずだ。それなのになぜこんな所に……
「目が覚めたようですね」
部屋のドアを開けて現れたのはめぐみんだ。しかし、どこか様子がおかしい。上手く言葉にできないがめぐみんの目に光がないような印象を受ける。
「ここはダクネスが所有する別荘の一つですよ。眠ってしまったカズマをここへ運んで来たのです。」
俺はベッドから起き上がり部屋から出ようとするが……
「うおっ!?なんだこれ」
俺の両足にはジャラジャラと鎖が付いていた。鎖はベッドと繋がっており、そのせいで部屋から出ることは出来ない。
「カズマに悪い虫が付かないようにこの部屋に閉じ込めておこうと思いましてね。これからはずっと一緒ですよ。」
「め、めぐみん……これってもしかして……」
「ええ、監禁しました」
「……マジで?」
いつの間にこんなに病んでしまったんだ。いや、前からめぐみんが病む前兆はあった。しかし、俺がそれを放っておいてしまったのだ。俺は今更ながら今までの行いを後悔する。めぐみんはそんな俺を正面から抱きしめると愛おしそうに頭を撫でた。
「これからは私達四人で過ごしましょう。アイリスの事は忘れてください。」
ガチャ
部屋のドアが開けられダクネスとアクアが現れる。
「めぐみんの言う通りだ。これからはお前の面倒は私達で見る。カズマは私を、私達さえ見ていればそれでいい。」
「ごめんねカズマさん、この
どうやらダクネスとアクアも監禁の協力者らしい。これは本格的にヤバいかもしれない。が、俺には秘策がある。
「テレポート!…………あれっ?」
「無駄だ。この部屋は魔法が使えないようになってる。」
「こんな事してアイリス達が何もしないと思うか?どうせすぐ捕まるぞ!」
「確かにアイリスは強敵ですが我々も覚悟の上ですよ。」
テレポートもアイリスがいる事もめぐみん達には効果がなかった。これからどうしようかと考えていると、ダクネスとアクアが俺の左右から抱きついてくる。
「今度こそ手放さないぞカズマ」
「めぐみんとダクネスの為なの。分かってちょうだい」
蠱惑的な彼女達の抱擁を受けながら
「アイリス……待ってろよ」
監禁シーンはこの二次創作を描き始めた頃から描きたかったシーンです。大体ここら辺で半分くらいになると思います。完結まで残り半分、エタらないように頑張ります。