※この作品はR-18です。

このすばらしい仲間と恋愛を!   作:てつろう

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諦めない女達 ダクネスのターン!

 

 

 

 

(カズマ目線)

 

 

クレアと話した後俺は部屋に戻る。ベッドでは、アイリスとクリスが生まれたままの姿で眠っていた。もう夜も遅い。二人とも眠たかったのだろう。俺は二人を起こさないように気をつけながら、そっとベッドに寝転がった。

 

 

「お兄ちゃん、話は終わったのですか?」

 

 

起こしてしまったのかアイリスが目をうっすら開けて聞いてくる。最近気づいたがアイリスは性行為をしている時だけ俺の事を”お兄様”から”お兄ちゃん”呼びに変えるのだ。つまり、アイリスがこの呼び方をしているということはまだセックスしたいということである。

 

 

「悪い、起こしちゃったな。」

 

「いえ、お兄ちゃんが帰ってくるまで起きてましたよ。クリスさんは寝てるようですし私と二人きりで続きをしましょう?」

 

 

アイリスは慣れた手つきで俺のパンツを脱がしてくる。まだ幼いにも関わらずアイリスは性に積極的だ。多分クリスに俺を取られたくないという理由で俺にマーキングしているのだろう。俺はそれに応えるようにアイリスと熱いキスをする。

 

 

「お兄ちゃんの”ここ”、まだ元気じゃないですね」

 

 

アイリスが俺の肉棒を握りながら囁く。俺の息子はふにゃふにゃしていてまだ臨戦態勢には入ってない。

 

 

「仕方ないだろ、今日だけでも四回は出してるんだぞ。俺も絶倫じゃないし今日は勃たないと思うな。」

 

「じゃあ私と勝負しませんか?」

 

「勝負?」

 

「はい。お兄ちゃんが精子を出したら私の勝ち、我慢出来たらお兄ちゃんの勝ちで」

 

 

負けず嫌いなアイリスは何かにつけて勝負をしたがる。今日は俺とエッチな勝負をしたいらしい。

 

 

「まぁ多分今日は出ないと思うし別にいいぞ。」

 

 

俺が勝負を受けるや否やアイリスは口から唾液を垂らす。月光に唾液が照らされて妖艶な輝きを放っていた。そのまま唾液は垂れていき俺の息子を濡らしていく。アイリスの手の動きによってぐちゅぐちゅと下品な音が部屋に響いた。

 

 

「おふ……アイリスもエッチ上手くなったな……」

 

 

一見雑に手を動かしているようだが、カリや裏筋を適切に刺激してくる。射精とまでは行かないがそこそこの快感が流れた。

 

 

「クリスさんとどっちが上手いですか?」

 

「げっ……クリスの名前を出すなよ……。」

 

 

アイリスが上目遣いで俺の事を見つめる。その大きな瞳に吸い込まれそうになる。私の方が上だと言ってくれと訴えかけているようだった。

 

 

「ここだけの話だが、エッチの上手さで言えばアイリスの方が上だぞ。クリスはいつも同じパターンのエッチが多くて退屈なんだ。」

 

「じゃあ、お兄ちゃんにとっての一番は私なんですね……。」

 

 

アイリスが嬉しそうに微笑む。その笑顔を壊したくなかったので、俺は世間話をするかのようにさりげなく聞いた。

 

 

「なぁアイリス、もし……仮にの話なんだが……アイリス以外の人との子どもが出来たら……どうする?」

 

 

ピタッとアイリスの動きが止まる。

 

 

「……折ります」

 

「ど、どこを……?」

 

「おちんちんです、お兄様のおちんちんを折ります」

 

 

アイリスの目に光が灯っていない。本気で折るつもりかもしれない。結局、この時のアイリスの顔がトラウマで、その日は俺の息子は勃たないまま終わった。何としてでもダクネスの妊娠のことを秘密にしないといけないと悟ったのだった。

 

 

 

+

 

 

 

翌日。俺はクレアに連れられダクネスが投獄されている拘置所へと案内される。妊娠したというダクネスに会いに来たのだ。王都と言えど牢屋の作りはアクセルとそう変わらず簡素な作りだった。

 

 

「お待ちしておりました、クレア殿」

 

 

拘置所に入るや否や警察官がビシッと敬礼する。もう既に話は通してあるみたいだ。警察官に連れられるまま拘置所の中を進んで行くとドアの前まで案内される。

 

 

「ここから先にダスティネス卿はおられます。では、自分はこれで。」

 

 

警察官はロボットのようなかしこまった動きで来た道を帰って行く。残されたのは俺とクレアだけになった。

 

 

「もし、ダスティネス殿と話しにくいのであれば私が同席しようか?監禁されていたし恐怖心もあるだろう。」

 

「いや、これは俺とダクネスの問題だ。ちゃんと俺一人でケジメをつける。」

 

「そうか、行ってくるといい。」

 

 

思い切ってドアを開けるとそこには当然ダクネスが居た。ただ椅子に座っていて後ろ手に手錠で拘束されている。その椅子とテーブルを一つ挟んでまた椅子がある。

 

 

「カズマ……!」

 

「よう……一週間ぶりだな、ダクネス」

 

 

監禁生活以来の再会だ。長いことここに収容されてダクネスも気が滅入ってることだろう。慰めの言葉の一つでもかけてあげようかと思ったが、先にダクネスが話し始めた。

 

 

「やっと来たか……。ここでの生活は退屈でな。めぐみん達と話していると気は紛れるのだが、カズマへの寂寥の念が込み上げてきて……。ああ、嬉しいぞカズマ!ようやく迎えに来てくれたのか!」

 

 

ダクネスは気が滅入ってなどいなかった。それ所か俺が来て嬉しいと言っている。

 

 

「……ちょっと待てダクネス。お前は何を勘違いしてるんだ?」

 

「ん?ああ、私が焦らされて興奮していない事か?まぁ普段ならこういう焦らしプレイも悪くないと思っていただろうが、カズマが相手だとどうしても純情になってしまうのだ。」

 

「いや、そういう事じゃなくて……。」

 

 

どうやらダクネスは、俺がここにダクネスを助けに来たと勘違いしているらしい。それどころか俺はダクネスのお腹の赤ちゃんを殺しに来たというのに。

 

 

「ダクネス、お前にも分かるようにハッキリ言っておくが、俺はお前に子供を堕ろして欲しいと思ってる。」

 

 

途端にダクネスから喜色が消えた。お前は本気かと目で訴えかけている。

 

 

「何を言っているのだお前は。そうだ、もう子供の名前もいくつか考えてあるのだ。私の服のポケットに入ってるから取り出して見てくれ。」

 

 

手錠で拘束されているダクネスが首でクイッと服の一部を示す。少し嫌厭したが俺はダクネスのポケットから小さな紙切れを取り出す。中には書いては消した名前の候補が五、六個並べられていた。

 

 

「お前……俺に同情させるつもりか?そうはいかないからな!監禁生活でお前らには容赦しないと俺は学んだんだ。この名前のメモも俺が処分しといてやるよ。」

 

 

俺は無造作にポケットにメモをしまう。ダクネスは『ああっ!』と声にならない声を上げる。

 

 

「待て、本気なのかカズマ!私とお前の子だぞ。嬉しくないのか?」

 

「嬉しいも何も……」

 

 

嬉しくないと言いたかったが、それはダクネスのお腹の中にいる子供に悪い気がして言えなかった。俺の様子を見たダクネスが追撃にかかる。

 

 

「ほら、私のお腹を触ってみろ。もう既にお腹が少し張っているのだ。これを触ってみればカズマも気が変わるはず……」

 

「ドレインタッチ」

 

 

俺はダクネスの言葉を遮って話す。俺の言葉の意味が分からず、ダクネスは怪訝な様子で俺を見つめていた。

 

 

「通常なら魔力を奪ったり逆に魔力を譲渡したりするのに使う。だが、このスキルは本来はリッチーの専用スキル。限度を超えて使えば人を殺すことなど容易い。特に赤子ならな。」

 

 

俺は立ち上がりゆっくりと手をダクネスの腹の方へ近づけていく。ダクネスは今から何をされるか分かったのか激しく抵抗した。

 

 

「嫌だ!やめろ!私の子に手を出すな!」

 

「こら!何を暴れてる!」

 

 

あまりに大声で騒ぐので看守の人がダクネスの様子を見に来た。俺も人前で赤ちゃんを殺したくなかったので手を引っ込める。ダクネスは暴れながらも看守の人に連れて行かれた。その姿がなんだかとても可哀想で見ていられなかった。

 

 

「あの……もう一人カズマ殿にどうしてもお会いしたいという方が居まして……。」

 

 

看守の人が申し訳なさそうに言ってくる。よほど懇願されたと見た。俺は嫌な予感がしつつもそれを受け入れた。

待つこと数分……ドタドタと廊下を走る音が聞こえる。ドアから顔を出したのはめぐみんだった。先程の看守の人も付いている。

 

 

「はぁ……はぁ……カズマ、待ってましたよ。」

 

「そんなに慌てなくてもいいだろ。看守の人も困ってるし。どうもすいません、うちの爆裂狂が」

 

「い、いえ……」

 

 

謝られることに慣れてないのかたじろいだ看守。とりあえず今はめぐみんの相手だ。

 

 

「それで俺に何か話でもあるのか?もう帰ろうと思ってたんだけど」

 

「カズマ、私も子供が欲しいです。今ここで精液をください!」

 

 

この娘(こ)は何を言っちゃってるのだろう。看守の人も口をあんぐりと開けている。

 

 

「却下だ。帰ってクリスとアイリスの相手をしないといけないんだから早くしてくれ」

 

「今のは冗談ですよ。それより、今クリスの相手をしないといけないと言いましたか?一体どういう事ですか?」

 

 

めぐみん達にはクリスとアイリスの二人を妻にしたことはまだ言ってない。そこをめぐみんは疑問に思ったのだろう。

 

 

「もしかしてアイリスだけじゃなくてクリスも妻に迎え入れましたか?それなら何故私達を見捨てるのです!妻の一人や二人増えたっていいじゃないですか。」

 

「こっちにも事情があるんだよ。クリスの結婚は監禁生活から抜け出す時に半ば無理やりさせられたものだしな。」

 

 

俺の話を聞いためぐみんは人差し指を軽く顎に当て考え込む素振りを見せる。彼女は一体何を考えているのだろうか。

 

 

「……ひょっとしたら私達はクリスに騙されているのかもしれませんよ。だって最初にカズマの監禁を提案してきたのはクリス本人なのですから」

 

「ほーん、それは…………ひょ?」

 

 

クリスが監禁を提案した?クリスは俺を監禁された部屋から助け出してくれたんじゃなかったのか?

 

 

「どういうことだめぐみん、なんでクリスがそんな提案する必要があるんだよ。」

 

「私にもそんなこと分かりませんよ。あくまで推測ですが、監禁されていたカズマを外に出す代わりに結婚する約束を取り付けたとかそんな所ですか?」

 

 

めぐみんの鋭い推理に目を丸くする。俺がコクコク頷いたのを見てめぐみんが深くため息をついた。

 

 

「まったく、あの腹黒エリスにしてやられましたね。私達が警察に捕まることもカズマと結婚することも計算内だったという事です。ええ、本当に腹立たしいですよ!」

 

 

とにかくこの事はクリス本人に直接聞いてみるしかない。俺はダクネスから奪った名前のメモをポケットにしまったまま部屋から出た。ひょっとしたらめぐみん達はクリスの手の平の上で踊らされていただけなのかもしれない。少しずつこの監禁事件の全容が分かっていくような気がした。

 

 

 

+

 

 

 

「で、どういうことだよクリス」

 

 

俺は城に帰って即刻クリスを問いただしていた。

 

 

「あはは、バレちゃったね」

 

 

クリスはあっけらかんとした様子で笑っている。その笑顔の下で彼女は腹黒さを隠している気がしてならない。

 

 

「全部カズマくんのせいなんだよ?」

 

 

クリスがぽつりぽつりと話し始める。

 

 

「カズマくんがダクネスやめぐみん達とイチャイチャしてる間もアタシはずっと天界でカズマくんのことを見てたんだよ。その時のアタシの気持ちが分かる?それはもうすっごく寂しかったんだよ……。

だから、アクア先輩達を全員犯罪者にさせる事にしたんだ。アタシがダクネスにカズマくんを監禁させるように吹聴したの。案の定盲目的にカズマくんに恋してるダクネス達はカズマくんを誘拐した。ダクネス達は見事にカズマくんを監禁した罪で捕らえられて結果は大成功。アイリス様という邪魔は入ったけどアタシとアイリス様の二人でカズマくんを独占することが出来たってわけ。」

 

 

つまり、この監禁事件はクリスが仕込んだことで、ダクネス達が警察に捕まることも俺と結婚することも計算内だったらしい。

 

 

「……クリス、お前腹黒いな」

 

「まぁ自覚はしてるよ。カズマくんを手に入れる為ならアタシは鬼にでも悪魔にでもなるからね」

 

 

クリスは悪びれる様子もない。エリス様をメインヒロインと思ってた時期もあったがその本性を知ってみれば狡猾な一人の女だった。

 

 

「なぁ……もしもの話だが、俺が他の女の子との間に子どもを作ったらどうする?」

 

「え、アイリス様妊娠したの?」

 

 

クリスが驚いた様子で聞いてくる。まぁ普通ならダクネス達よりアイリスが妊娠したと思うよな。

 

 

「アイリスはまだ妊娠してないぞ。仮定の話って言っただろ?」

 

「そうなの、びっくりさせないでよね。」

 

 

それからクリスはうんうんと唸って考える。出来ることなら子どもを作ることを許して欲しいのだが。

 

 

「そうなったら、その子どもを殺しちゃうかもね。」

 

 

クリスから出た答えは俺の願望と真逆のものだった。結局クリスもアイリスも子どもを作ったら怒り狂う事は確定だ。やはりダクネスの子どもは殺すしかないのだろうか。俺は悩みながら一日を過ごすことになった。

 

 

 

+

 

 

 

クリスが監禁事件の真犯人だと知って俺の心は揺れていた。今にして思えばダクネス達はクリスに唆(そそのか)されていただけだ。そんな彼女達に対してこんな仕打ちをしていいのか。子供を殺していいのか。俺は明確な答えを出せないままだった。

だがダクネスの子供をこのまま放っておく訳にはいかない。時間が経つほどダクネスが妊娠したということがバレてしまう可能性も高まる。

その日の夜。俺は再びダクネスが収容されている拘置所へと向かった。

 

 

「カズマ殿ではないですか。面会の時間はもう過ぎていますが、どうかされましたか?」

 

 

今日クレアと一緒にここに来た時に対応してくれた人が出てくれた。クレアがいないせいかあの時の畏まった動きではなく普通の対応だ。

 

 

「あの……どうしてもダクネスに会いたくて。無理を言ってるのは分かるんですけど会わせてもらえませんか?」

 

「それは無理ですね。また明日に出直してきてください。」

 

 

ぶっきらぼうに断られた。俺としては何としてでも今日会いたいのだ。ここで折れる訳にはいかない。

 

 

「そこをなんとかお願い出来ませんか?」

 

「はは、そこまで言うならチップでもくださいよ。私はね毎日毎日犯罪者共の相手をしているんですよ。たまにはそのご褒美があってもいいと思いますがね。」

 

 

こいつ……昼間は真面目な警官かと思ってたのにとんでもない奴だな。俺は仕方なく財布から金銭を取りだし警官に渡した。

 

 

「話が分かる人で良かったです。今日面会に使った部屋に連れてきますので少しお待ちください。」

 

 

俺は警官と一緒に昼間通った道を歩く。途中で筋肉隆々ないかにも強そうな人が目に付いた。その人は俺達を見ると片手を上げこちらに近づいてくる。

 

 

「誰だこの人は。一般人の面会時間は過ぎてるぞ。」

 

「すいません、どうしても会わないといけない人がいて。ダクネスと言う奴なんですが」

 

 

俺が出来るだけ低姿勢で用件を話す。俺の言葉を聞いたマッチョは一瞬驚いた表情を見せた。

 

 

「その囚人は俺が世話してる奴だ。俺が案内してやるよ。」

 

 

俺から金を取った悪人はマッチョに敬礼した後、元来た道を戻っていった。

 

 

「お兄ちゃん、あいつにチップを渡しただろ?」

 

 

悪人が居なくなった後にマッチョが俺に尋ねてくる。首を縦に振るとマッチョは大きなため息をついた。

 

 

「あの新入りは拝金主義なんだよ。代わりに日当を減らしといてやる。お兄ちゃんもあんな奴にチップなんて渡すなよ」

 

 

このマッチョは怖そうな見た目に反していいい人だった。お金を悪人に渡してしまったがその分給料を差し引いてくれるらしい。心の中で感謝しながらマッチョに付いて行く。

 

 

「もしかしてお兄ちゃん、ダクネスとかいう女の旦那さんか?」

 

 

旦那かどうかと言われると曖昧な関係だ。どう答えていいのか分からず沈黙しているとマッチョは肯定と受け取ったのか話を続けた。

 

 

「あの女妊娠したんだってな。女は罪を犯したかもしれないが、子どもに罪は無い。子どもが産まれたらお兄ちゃんが可愛がってあげてくれ。」

 

 

マッチョの言葉を聞いて耳が痛かった。ダクネスの子どもを殺すのにも躊躇しそうになる。弱気になる度に俺はアイリス達の顔を思い出して自分を奮い立たせた。

それから昼ダクネスと面会したあの部屋に案内される。待つこと数分、マッチョがダクネスを連れてきた。

 

 

「嫌だ!私の子供を奪われてたまるか!やめろ!私はカズマに会う気は無い!」

 

「おら!静かにしろ!」

 

 

大声で叫んで抵抗するダクネスを無理やり連れてくるマッチョ。ダクネスは俺に子どもを殺されると思ってここに来るのを相当嫌がっているようだ。だが、マッチョも怪力なのかダクネスをどうにか椅子に座らせ手錠で手を拘束させる。

 

 

「嫌だ嫌だ……子どもを奪われたくない……!絶対にこの子は守るからな。」

 

 

マッチョが部屋から出ていき俺とダクネスの二人きりになる。ダクネスは終始俺を警戒した様子で見つめていた。その目には涙が滲んでいる。

 

 

「ダクネス、ごめんな。」

 

「やめろ……私に触るな……お願いだ……子どもだけは奪わないでくれ……」

 

 

ダクネスは懺悔の言葉をひたすら口にする。こんなに弱々しいダクネスを見たのは初めてだ。それだけ子どもに対する愛情が深かったのだろう。俺はそんなダクネスの元へと近寄りそっとしゃがむ。身重となるダクネスの腹に手を当てた。

 

 

「ひっ……!」

 

 

ダクネスは怯えた様子で目をぎゅっと閉じている。腹を触ってみると少しお腹が張っているような気がした。やはりダクネスは妊娠しているのだろう。

 

 

「お願いしますエリス様……!どうか私の赤ちゃんを守ってください……。お願いしますお願いします……。」

 

 

今度は神頼みをし始めたダクネス。彼女の痛々しい様子を見たくなくて俺は早くドレインタッチを使おうと思ったが体が動かない。金縛りにでもあったかのようにただダクネスのお腹に手を当てるだけだった。

このお腹の中に赤ちゃんがいる。少し張ったそのお腹が俺に訴えかけてきた。

 

 

「…………」

 

「……カズマ?」

 

 

俺が暫く何もしないことを不審に思ったのか、ダクネスがうっすらと目を開け俺の事を見てくる。その目で見られるのがいたたまれなくなって俺はダクネスから手を離してしまった。

 

 

「カズマ、私がここに収容されて妊娠が発覚してから毎日産まれてくる赤ちゃんのことを考えてたんだ。名前はどうしよう、男の子か女の子か、カズマに似た顔つきだろうかとか……。」

 

「もうやめてくれダクネス……」

 

「カズマとの幸せな生活が始まると思ってたんだ。私とカズマで子育てに奔走する毎日を過ごしたかったんだ。毎日大変だけど笑いが絶えない、そんな家庭を作りたかった……。」

 

「やめてくれ……」

 

 

ダクネスの赤ちゃんの事や理想の生活を語るのを聞いて俺はもう完全に動けなくなってしまった。もうダクネスの子どもを殺す気力もないし、そもそもそんな勇気もない。俺はポケットから昼間ダクネスから貰った名前のメモを取り出し机の上に置く。

 

 

「これは返すぞ……」

 

「カズマ……!」

 

 

結局俺はメモだけを渡してその場を去った。赤ちゃんを殺すのなんて簡単だと思っていた。でも、ダクネスのお腹を触ってその考えは吹き飛んだ。そこに命があって人生がある事を考えると人は踏みとどまってしまう。俺は為す術なくただ城へと向かうのだった。

 

 

 

+

 

 

 

ダクネスに会った帰り道。俺はとぼとぼと城へ向かっていた。既に夜も深い。もうすぐ日をまたぐ頃だ。早く帰ろうと足を早めていると遠くの地面に何かが落ちているのを見つけた。誰かの洋服か何かかと思って近づていくが違った。

 

それは猫だった。

 

しかも首から血を流している。このまま放っておけば死んでもおかしくない。すぐに助けようと『ヒール』をかけるが効果は薄かった。もっと俺より優秀なプリーストの元に連れていかないといけない。王城につれて行けば優秀なプリーストも大勢いるだろうし、連れて帰ろう。そう思い立ったが、俺はある事に気づいてしまった。

 

本当にこの猫を助けてしまっていいのかと。

 

普段の俺なら何の迷いもなくこの猫を助けていただろう。だが、今の俺はそれが出来なかった。

 

俺はこれからダクネスの赤ちゃんを、人間を殺すのにたかが猫に同情してどうするのかと。こんなことで心を揺さぶられてどうするのかと。そんなことで人が殺せるのかと。

 

俺はここでこの猫を見殺しにしなければいけない。さもないと、ダクネスの赤ちゃんを殺すことなど到底出来ないだろう。早く猫を置いていってしまえ。元々血を流していて死にそうだったのだ。俺は何も見なかったことにすればいい。頭の中の俺が警鐘を鳴らし猫を見捨てろと警告してくる。

 

 

「ごめんな」

 

 

俺は子猫に小さく謝り立ち去ることにした。猫は鳴き声一つ発さずにただ横たわるだけ。俺は早足で城へ向かう。

 

脳裏に今日のダクネスの姿が過ぎった。

 

『嫌だ!やめろ!私の子に手を出すな!』

 

ダクネスは赤ちゃんを殺されそうになった時、そう言っていた。

 

『お願いしますエリス様……!どうか私の赤ちゃんを守ってください……。お願いしますお願いします……。』

 

エリス様にも縋っていた。もう何に頼ってでも子どもを守りたかったのだろう。俺はそんなダクネスを見て何をした。子どもを殺すことが出来たか?いや、躊躇した。

 

 

「はぁ……」

 

 

俺は大きくため息をつく。と、同時に進んでいた足を止めその場に立ち止まった。

 

ようやく気づいたのだ。俺は赤ちゃんを殺せない。

 

俺は先程の猫の所へ駆け戻る。あの子猫を見殺しに出来ない。急いで来た道を戻ると猫はまだ横たわったままだった。

 

 

「体はまだ温かいな……」

 

 

俺は猫を腕に抱いて走った。この猫はダクネスの赤ちゃんと一緒だ。この子猫を救うことがダクネスの赤ちゃんを救うことになる。実際そんな事ないのだがこの時の俺にはそう思えて仕方なかった。

城まではまだ距離がある。こんな夜中に全速力で走っているやつはこの街で俺だけだろう。俺は必死に走る。五臓は既に疲れ果て、口からは血の味がしている。よろよろと何度か立ち止まりそうになるがその度にえい!と自分に喝を入れ走った。

 

そしてとうとう王城までたどり着く。王城の門番が俺の只事(ただごと)では無い様子を感じ取ったのかすぐに俺の元へ駆け寄ってくる。

 

 

「おい、この猫血を流してるぞ!すぐにプリーストの元へ運べ!」

 

 

後は門番が猫を助けてくれるだろう。俺は安堵の息をつきその場に倒れ込んだ。猫を見つけてからここ王城まで一度も休憩せずに走ってきたのだ。座ってられる体力も残っていない。

 

 

「待っていましたよお兄様。」

 

 

声の方に目を向けるとアイリスがいた。夜遅くに出かけた俺のことを心配して待っていてくれたのだろう。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「ほら、お水がありますから飲んでください。」

 

 

アイリスが俺に水の入ったコップを差し出す。だが、俺はそれを受け取らずアイリスと話す。

 

 

「……はぁ……アイリス、とても大事な話があるんだ。出来ればクリスとも一緒に話したい」

 

 

アイリスは俺の発言を聞いて首を傾げるばかりだった。

 

 

 

+

 

 

 

 

深夜。俺は自分の部屋でクリスとアイリスの二人の前に正座していた。いつもならこの三人でセックスをしている所だったが俺のタダならぬ雰囲気に二人とも色仕掛けはしてこなかった。

 

 

「それで話って何?アタシはもう眠たいんだけどさ。」

 

 

クリスがふぁ〜と欠伸をしながら言ってくる。俺は両手を前につき遂にクリス達に言った。

 

 

「ダクネスを妻にさせてください!」

 

 

俺の発言を聞いてクリスもアイリスも固まる。まさか第三夫人まで娶(めと)りたいと言うとは思っていなかっただろう。

 

 

「カズマくん……?」

 

「はい、なんでしょ……ふごっ!」

 

 

クリスが俺の頭を蹴り上げてくる。かなりお怒りの様子だ。

 

 

「浮気はダメって言ったでしょ!」

 

「ご、ごめんなさふがっ!……これには深い事情がふっ!」

 

 

何度も滅多打ちにされる。俺の様子を心配したのかアイリスが打ちのめされた俺の近くにしゃがみ込んだ。

 

 

「大丈夫ですか?お兄様」

 

「……あ、ああ。アイリスは優しいなぁ……」

 

「はい、優しいので私はビンタだけで許してあげますよ」

 

「え?それどういう……ふぼっ!」

 

 

パンッ、と乾いた音が部屋に響く。何度もアイリスの往復ビンタが飛んできてその全てを俺は受け止めた。

 

 

「今回はララティーナに免じて特別に許してあげます。いいですか?次はないですからね!」

 

「あ、ありがとうございます……。」

 

「はぁ、ダクネスは親友だし特別に許してあげるよ。」

 

 

どうにかアイリス達にもダクネスを妻にする許可を貰えたようだ。

 

 

「あ、ダクネスはもう妊娠してるから」

 

「「!?」」

 

 

この後、俺はクリスとアイリスにボコボコにされたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 






今回はテーマを入れることを意識して作ってみました。いかがだったでしょうか。後書きですが、色々書くことがあります。

まず、次の話についてですが、クライマックスの部分だけ出来ていて他の部分はプロットも全く出来ておりません。ですから、更新が割と遅れるかもです。(次回はめぐみん回になる予定です)

次に、この作品がそろそろ完結しそうです。そこでこの作品が終わったら次回作として見たいものをアンケートしようと思います。ただし、アンケート結果ガン無視で次回作を決める可能性があるのでそこはご了承ください。

読者の皆様のおかげでここまで来れました。いつも私の作品をご覧になってくださりありがとうございます。完結まで是非お付き合いください!
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