このすばらしい仲間と恋愛を! 作:てつろう
約一万字あります。前編と後編をまとめて見た方がスッキリするかもです
(めぐみん視点)
私は今、牢屋に収容されている。王女様の婚約者を
「ダクネス、カズマとの面会はどうでしたか?」
何気なくダクネスに聞いてみる。昨日の面会から一言も喋らなくなったダクネスは私の言葉を聞いてぶるりと身体を震わせた。
「……カズマに子どもを堕ろせと言われた。」
ダクネスの発言に絶句してしまう私。隣のアクアを見れば彼女も信じられないという顔をしている。あのカズマが子供を堕ろせと言うなんて……。
「もう私はおしまいだ……。カズマは助けに来ない。それどころか私の赤ちゃんまで奪うつもりだ。」
ダクネスは酷く怯えてるようだ。そんな彼女を慰めるためにアクアがダクネスを抱きしめてあげた。
「大丈夫よダクネス、私からカズマさんをどうにか説得してみるから。絶対ダクネスの赤ちゃんを守ってみせるわ」
こうしてアクアの慈悲深さを目の当たりにすると本当に女神なんだなと実感する。私も彼女の優しさに何度も救われてきた。ダクネスはアクアの胸の中で嗚咽を漏らしていた。
「112番、113番、114番、出ろ」
突然、看守の人が冷淡に言う。112番〜114番は私達に振り当てられた番号だ。ダクネスが泣いてるのに空気を読めと言いたかったが、彼らにアクアのような優しさはないようだ。泣いているダクネスもアクアに支えられながら牢屋を出た。看守に言われるがままついて行く私達。
「もしかしたらカズマが来たのかもしれない。今度こそ終わりだ……!もう私の赤ちゃんを守りきれない……!」
ダクネスが悲痛な声を上げる。その度にアクアが励ましてあげる。もしかして今から処刑されるのだろうか。婚約者を誘拐したので死刑も充分あり得る。そのまま看守に案内されたのはこの前カズマとの面会に使った部屋だ。私達が中に入ると、クレアとレインがいた。
「お勤めご苦労だったな。突然だが、お前達は釈放だ。」
クレアの言葉を合図に私達に嵌められていた手錠が外されていく。未だ状況を上手く呑み込めない。
「いきなり釈放ですか……?なぜ急にそんな事に?」
「カズマ殿の温情だ。特にダスティネス殿が身ごもったからお前達を罪に問うのをやめたらしい。」
思いがけない幸運に驚く。てっきり私達はこのまま処刑されてしまうものだと思っていた。
「それとカズマ殿はダスティネス殿を妻に
クレアの話を聞いてへたり込むダクネス。子どもを無事に守れたことで安心して腰が抜けたのだろう。その上カズマと結婚出来るときた。ダクネスがカズマと結婚出来るなら私もカズマと結婚出来るのでしょうか。
「ダスティネス殿は今から王城へテレポートで送ります。めぐみん殿とアクア殿はここでお別れです。」
レインの発言に固まってしまう私。
「ちょっと待ってください。王城に行くのはダクネスだけですか?私も妻にするんじゃないですか?」
カズマのことだ。ダクネスだけを妻にして私を見捨てるなんてありえない。
「……はい。カズマ殿はダスティネス殿だけを妻に娶りたいと言っております。」
現実は非情だった。私は選ばれなかったようだ。
「そんなはずありません!カズマは私のことを選ぶはずです!きっと何かの間違いです!」
私がレインの胸元を掴み問いただそうとした時、ヒュンと剣が私の前髪を
「貴族に対してあまり無礼な態度を取るな。首が飛んでもおかしくないのだぞ」
クレアは冷淡に言う。貴族のダクネスと仲良くしていて忘れてしまっていたが今目の前にいるクレアもレインもアイリスの護衛を任されるほどの身分だ。
「では、行きましょう。『テレポート!』」
「ちょっと、まだ話は終わって……」
私がレインについて行こうとした時、私の目の前からダクネスとクレアとレインの姿が消えた。
「カズマ……どうして……!」
カズマに選ばれなかった私はただ立ち尽くすしかなかった。
+
牢屋を釈放されてからというもの、私は毎日王城へ突撃しては兵士に捕まっていた。私達が釈放されてから一週間後、今日もお城へ行ったが返り討ちに会い、アクセルの屋敷まで帰ってきた。
「ただいま、帰りましたよー」
「おかりー」
広間へ行くと案の定アクアがいた。晩ご飯の用意をしてるのかキッチンで何かを炒めている。
「丁度夜ご飯が出来た所よ。これ持っていくの手伝ってちょうだい」
私はアクアから皿を受け取りテーブルに並べていく。と言っても二人分の食事しかないのですぐに配膳は終わってしまった。アクアが料理を持って席につき、二人でご飯を食べる。
「それでどうだったの?カズマさんには会えた?」
ご飯を食べながらアクアが聞いてきた。
「今日もダメでしたよ。こうなったら爆裂魔法を使って脅すしかないかもしれませんね……。」
「そんな事したらまた捕まるわよ。はぁ、まさかダクネスがカズマさんと結婚するなんてね……。」
牢屋から釈放された後、ダクネスから聞いた話によるとカズマはアイリス、クリス、ダクネスの三人を妻にしたらしい。そんなに妻が沢山いるなら私がカズマと結婚してもう一人くらい増えても構わないだろうと思ったが、カズマは私との面会を一切拒否していた。
「なんで私はこんなにカズマを愛しているのに、カズマは私を愛してくれないのでしょう」
私の言葉にアクアは困った顔で苦笑いする。
「それなら私も明日からお城に行くわよ。私からカズマさんにめぐみんに会ってくれるように説得してみるわね。」
こういう時のアクアはとても心強かった。私がカズマを監禁してる時もメンタルが不安定な時はいつもアクアに慰めてもらっていた。アクアに頼るのは今でも変わらないらしい。だが、今はそれより……
「あのアクア、さっきからベタベタしてきて……ちょっと邪魔なのですが……。」
アクアは四人用のテーブルなのに、向かい側に座らず隣に座って私に抱きついていた。
「めぐみんの匂いを嗅いでいるのよ。昨日お風呂にちゃんと入った?なんだか汗臭いわよ」
「うっ……!」
昨日はカズマをストーカーしようと思い立ち、ずっとお城の前で待ち伏せていた。そのせいでお風呂に入る暇がなかったのだ。つまり、アクアの指摘は図星だった。
「分かりましたよ!今からお風呂に入りますから離してください!」
「ダメよ、もし目を離した隙にお風呂で溺れちゃったらどうするの。私も一緒に入るわ。」
「そんな死に方しませんよ!」
アクアが無理やり私に付いてくる形で一緒にお風呂に入る。なんだかんだ言いながらも彼女が私と一緒に居てくれるのはありがたかった。私達は脱衣場で衣服を脱ぐ。アクアがパンツを下ろした時にアクアの秘所を見て気づいたがアクアには毛が一本も生えていなかった。
「どこ見てんのよめぐみん……」
アクアの秘所を見すぎていたのかアクアが恥ずかしそうに股を隠す。
「……はっ!?ち、違いますよ!偶然アクアの股が目に入っただけです!偶然ですよ!」
「いいからお風呂に入りましょう。そんなに慌てなくていいから……。」
「だから違うと言っているでしょう!」
アクアは喚く私を押してお風呂へと入る。体を洗う前に風呂に入るのはマナー違反かもしれないが今日は私達二人しかいないので別にいいだろう。
「ねえめぐみん、今日爆裂魔法の音が聞こえなかったけど今日は爆裂してないの?」
お風呂でゆっくりしているとアクアが尋ねてくる。確かに今日は爆裂魔法を撃ってなかった。だが忘れてた訳ではなくちゃんと理由がある。
「ええ、カズマを手に入れるまでは爆裂魔法を封印しようと思いまして。」
これは辛い気持ちを味わいカズマを愛する気持ちを忘れないようにする為だ。この我慢によってより一層カズマへの愛が深まる気がした。
「そう……」
アクアは私の言葉を聞いて小さくため息をつく。
「ねえめぐみん、カズマさんを諦めた方があなたは幸せになれるはずよ。」
アクアは諭すように私に語りかける。
「何を言っているのですか。そんなハズありません。私の幸せにはカズマの存在が不可欠なんです。」
「大丈夫よめぐみん……いつかきっと私の言っていることが理解できる日が来るわ……。その日まで私がずっと傍に付いてるからね……」
アクアの目には涙が浮かんでいた。私は訳が分からず困惑するばかり。アクアを困らせないように頭を撫でてあげたり背中をさすったりしたが、アクアの目から涙が止まることはなかった。
+
それからアクアが一緒に城へ付いてくるようになった。その甲斐あってかアクアだけが城の中へ入れてもらえることになった。そう、アクアだけだ。私は城に入れて貰えなかった。仕方ないので私はお城には行かずアクセルの屋敷でアクアから話を聞く毎日を過ごすことになった。
私が釈放されてから二週間後、夜の帳が下りて、私はアクアと一緒に夜ご飯を食べていた。
「それでカズマの最近の様子はどうでした?」
今日もカズマの話をアクアから聞く。これは私の日課になっていた。
「色々あったわね。まず、カズマさんはダクネスとアイリスの親にちゃんと結婚の挨拶に行ったそうよ。貴族と王族を同時に妻にするのは前代未聞のことで親の説得に相当手間取ったらしいわ。まぁでも誠意を見せて最終的にはどちらの両親からも許可を貰えたそうよ。」
カズマは着実にハーレムの準備を整えているらしい。そこに私が含まれていないのが不満だ。
「それと今日カズマさんに会ったけれど、一日中ダクネス達とイチャイチャしてたわ。ヒキニートの癖に生意気よね」
私がカズマに会えない間もダクネス達はカズマとの仲を深めているらようだ。私も一刻も早くカズマに会わなければいけない。
「カズマとはいつ会えそうですか?カズマの顔を見ないと胸がソワソワして落ち着かないのですが。」
「そうね、今頑張って説得してる所よ。そんなに心配しなくてももうすぐ会えるわ。カズマさんのことが気になるなら私がカズマさんと出会った頃の話をしようかしら。」
それからアクアはカズマが、トラックという乗り物に轢かれたと勘違いしてショック死した話を始めた。カズマがそんな死に方をしていたのは初耳だった。そんなカズマのかっこ悪い所も好きなのですが。
「それでね、死んじゃった人には三つ選択肢があるのよ。一つ目は生まれ育った世界でもう一度赤子からやり直すこと。二つ目は天国で一生おじいちゃんみたいな暮らしをすること。そして三つ目が異世界に転生することよ」
アクアの話によるとカズマはこの三つ目の異世界転生を選んだらしい。
「アクア、今言った二つ目の天国について詳しく教えてくれませんか?」
「まさかめぐみん、天国に行きたいの?あんな場所オススメしないわよ。諍いがない代わりに体の実体もないの。エッチなこともできないし、やることと言えば同じ天国にいる人と一日中お喋りするくらいよ」
アクアの話を聞く限り天国は退屈な所のようだ。何よりエッチなことが出来ないのは辛い。痴女ではないが、私もカズマとエッチしたいのだ。
「仮にの話ですが、カズマと私が一緒に死ねば二人で天国に行くことも可能なのですか?」
アクアは私の発言を聞いてぎょっとしたような表情をする。
「めぐみん……可能かもしれないけど、そんなことしたらダメよ。」
「分かっていますよ。”今は”そんな事するつもりはありませんから」
もしカズマを手に入れられないようならカズマを殺して一緒に天国に行くのもアリだなと私は考えるようになった。そんな私をアクアは心配そうにみつめるのだった。
+
私が釈放されてから三週間後、今日もアクアからカズマの話を聞いていた。
「カズマさんが『よーし、お前ら全員孕ませてやるから覚悟しておけ!』って言ってたわね」
「それは私もドン引きです」
アクアからの話は大抵カズマがハーレムを作って鼻の下を伸ばしてる事とダクネス達がカズマに色仕掛けをしている事の二つだった。身ごもっているダクネスを除いてアイリスとクリスは毎日カズマとセックスしているようだ。このままでは、どんどんアイリス達に遅れを取ってしまう。私としては何としてもカズマに会わなくてはならなかった。
「そういえばめぐみん、まだ爆裂魔法は撃ってないの?」
アクアが思い出したかのように私に聞く。
「ええ、かれこれ三週間は爆裂魔法を我慢してます。本当は撃ちたくて撃ちたくてたまらないのですが。」
「ねえめぐみん、カズマさんのことを諦めるつもりはないの?もしかしたらこのままカズマさんに会えないかもしれないのよ。それまで爆裂魔法を我慢できるの?」
アクアはどうしても私にカズマのことを諦めさせたいようだ。
「カズマを諦めるなんて言語道断です。でも、爆裂魔法は我慢できないかもしれませんね……。」
「カズマさんを手に入れるまでは爆裂魔法を使わないんでしょ。もし、カズマさんと結ばれる前に爆裂魔法を使ったらカズマさんのことを諦めてくれないかしら?」
そんな約束結べるわけないと言いたかったが、ここ最近アクアがしつこくカズマのことを諦めるように言うので私は仕方なく了承した。
「仕方ありませんね。いいですよ、もう二度とカズマに会わないと誓ってもいいです」
「なら契約しましょう」
「契約?」
「女神は契約を結ぶことが出来るの。もし契約に違反したら死んじゃって蘇生も出来ないわよ。」
アクアはこう見えて女神だからそういうことも出来るのだろう。
「いいでしょう。その契約とやらを結んでおきましょうか」
アクアはどうせすぐに私が爆裂魔法を撃ってしまうと思っているようだ。それなら、暫く爆裂魔法を我慢していかにカズマへの想いが大きいか見せてあげよう。
「『めぐみんはカズマさんとその恋が実を結ぶ前に爆裂魔法を使ったらもう二度とカズマさんに会えない。』この契約を女神アクアの名のもとにおいて、誓いますか?」
仰々しくアクアが契約内容を述べていく。
「ええ、誓います」
私の返事を合図にして私とアクアが淡い光に包まれる。これが契約完了の合図なのだろう。今になって私はもう後戻り出来ないことに少し後悔していた。
「いい?これはめぐみんにカズマさんを諦めてもらう為の契約なの。きっとめぐみんにはカズマさんが居なくても幸せに生きていけるわ」
「アクアは頭が固いですね。今ではカズマなしの人生なんて考えられません。すぐにでもカズマを手に入れて爆裂魔法を撃ちに行きますよ」
私の強気な発言を聞いてもアクアは可哀想なものを見る目のままだった。
「もう夜も遅いし今日は寝ましょう。一人で寂しいなら私が一緒に寝てあげるわよ」
「結構です。」
私はアクアをリビングに置いて廊下を進んでいく。そしてカズマの部屋を開けた。そう、私の部屋ではなくカズマの部屋だ。ここ最近の私はカズマの部屋で寝るようになっていた。この部屋の匂いが私を包み込み全身でカズマの事を感じることが出来るからだ。
「さて、今日はどれにしましょうか。」
私は引き出しを開け中身を物色する。引き出しの中にはカズマの下着やら靴下やらが詰め込まれていた。私はパンツを手に取りベッドにダイブした。今日のおかずはこのパンツだ。
「はぁ……カズマ……好きですよ」
私はカズマのパンツを頭から被り深呼吸する。既に洗っている為カズマの匂いは薄いが充分私の心は満たされていた。
「そろそろこっちも弄りますか……」
私は片手で自分の股を優しく愛撫し始める。股からは僅かに液体が漏れてくるのが分かった。私はパジャマのズボン下着を脱ぎ捨て下半身は裸の状態になる。そのままクリトリスを刺激した。
「んんっ……はぁ……あうっ……」
徐々に気持ちよさが増していく。この快感があるから自慰はやめられないのだ。
「おや?」
私が更に自慰を続けようとした時、部屋の扉が僅かに開いているのに気づいた。私は一旦股を弄っていた手を止め、ズボンとパンツを脱いだまま部屋の扉を開ける。すると床に座っているアクアと目が合った
「何してるんですかアクア」
「ちち、違うの!別にめぐみんがエッチしてる所とか見てないから!ただ私はめぐみんが心配で見に来ただけなの!」
分かりやすくオロオロし出すアクア。私が自慰をする所もしっかり見られていたという事ですか。まぁアクアなら覗きに来るかもと思ってましたし動揺する程のことではありません。
「私には分かりますよ、アクアもカズマの部屋で自慰をしに来たのでしょう?」
ギクッと分かりやすく狼狽えるアクア。女神であるアクアもカズマを前にしたら所詮一人の女でしかない。彼女も性欲に負けてこの部屋へ来たのだろう。
「私はもう部屋に戻りますからアクアは一人でナニしてもいいですよ。」
私の言葉に黙って頷くアクア。もう誤魔化すのは諦めたようだ。耳まで赤く染まっている彼女を横目に見ながら私は立ち去った。
+
私が釈放されてから四週間後、私は朝からお城の前の宿でカズマが出てこないか見張っていた。
「中々出てきませんね……」
時計を見ればもう三時間が経とうとしていた。元々あまり外に出たがらないカズマのことだ。多少の長丁場は覚悟していたが、こうも成果が出ないと落ち込んでしまう。私は一度城を見張るのをやめ食事をとることにした。
「はぁ……やはりカズマのことは諦めるしかないのでしょうか」
カズマと会えなくなってから、アクアに何度もカズマを諦めるように言われていた。アクアはその方が私にとって幸せだと思っているのだろう。
「……はっ!?私は何を言っているのでしょう!?」
アクアの言葉に影響を受けすぎたのかいつの間にかカズマを諦めるという考えが反芻し始めた。この調子ではいけない。
「爆裂魔法を撃ちたいという気持ちをカズマへの愛に変えるのです!カズマカズマカズマ……」
爆裂魔法を撃たなくなって四週間近くが経っている。アクアとの契約のせいで爆裂魔法を撃つとカズマにはもう二度と会えない。だが、爆裂魔法を撃ちたい欲求は日に日に増していった。
「くっ……この調子じゃダメですね。爆裂魔法ではなくてカズマの事を考えましょう」
私が上級魔法を取得しようとした時、爆裂道を後押ししてくれたカズマ。普段はカッコつかないがイザという時は頼りになるカズマ。今までのカズマを思い出しながら窓の外へ目をやると、
「あっ!」
遠目ながら冒険する時の、緑を基調とした服装に身を包むカズマが城から出てきた。しかも隣にはアイリスもいる。私は宿を駆け降り二人の後を追った。
急いで宿から出るとカズマ達の姿が遠くに見える。どうにか間に合ったようだ。私は二人に気づかれないように後をこっそりと付けていく。
「お兄様、いつもみたいに手を繋ぎませんか?」
これみよがしにアイリスがカズマに甘える。カズマはそれに応じてアイリスと恋人繋ぎで手を結んだ。私はそんな二人を見てギリギリと歯ぎしりを立てることしかできない。
「アイリス、久しぶりに外でエッチするのはどうだ?」
カズマがアイリスにとんでもない提案をする。今すぐにでもカズマの所へ突撃して二人の仲を引き裂きたい。だが、カズマが私に会うのを避けている以上、もしカズマをストーカーしてるのがバレたらカズマの警戒心はますます強まるだろう。私は遠くから二人を眺めることしか出来ない。
「そんなことしたら他の人にバレますよ?まぁお兄様がどうしてもと言うならいいですけど……」
「そんな事言ってアイリスもヤリたいんだろ?アイリスはエッチな子だからな」
カズマとアイリスがイチャイチャしているのは見るに堪えなかった。本来ならカズマの隣に居たのは私のはずなのに。二人は散々イチャつきながら近くにあった喫茶店に入っていく。
「お兄様、ちょっとお手洗いに行くので先にお店に入っていてください。」
店の中に入ったと思われたアイリスが外に出てきた。そのままズンズンと私の方へ歩み寄ってくる。
「何してるんですか?めぐみんさん」
アイリスが私に問いかける。どうやら私がカズマを尾行していたのはバレていたらしい。
「別に……。たまたま近くを通っただけですよ」
「王城を出た時からずっとつけてきたのは分かってますよ。こんな事してみっともないと思わないのですか?」
アイリスの言葉には私に対する揶揄と嘲笑が含まれていた。彼女はカズマの妻として大きな優越感に浸っているのだろう。
「私はカズマを手に入れる為には何でもしますよ。監禁だってしますし邪魔な女を殺すことだってあります。アイリスも私に殺されないように気をつけることですね。」
実際、憎悪に満ちた今の私はアイリスに怪我を負わせてもおかしくなかった。それだけカズマを奪われた憎しみが大きかったのだ。
「ふふっ」
不敵に笑うアイリス。
「何がおかしいのです……?」
「いえ、あまりにもめぐみんさんが可哀想だなと思いまして。」
「お兄様を好きで諦めきれない気持ちはよく分かりますよ。私もそうでしたから。お兄様を諦めなたくない、何としてでも手に入れたい。めぐみんさんは自分の事を物語の主人公とでも思っているのでしょう。でも、実際はただの醜いストーカー。ゆいゆいさん……でしたっけ?両親が今のめぐみんさんを見たらどう思うでしょうね。娘がこんな犯罪者になってしまったと知ったら……。私ならとても耐えられませんね」
「アイリス……!」
「ただでさえお兄様の妻は三人いるのです。その上妻達の仲は最悪。毎日喧嘩や言い争いが絶えません。そこにめぐみんさんが加わったらどうなると思いますか?私達の幸せの為にもめぐみんさんは邪魔なのですよ。」
「アイリス……!」
「お兄様が待ってるのでもう行きますね。」
怒りに身を任せてアイリスを追いかけようとする。だが、喫茶店の窓にカズマが座っているのが見えてしまった。そこで私の足は止まってしまう。今カズマに出くわしてはいけない。
「お兄様、ちょっといいですか」
「ん?」
アイリスがカズマの顔を手に取り二人の唇が重なった。こんな公共の場で堂々とイチャつく二人に怒りがどんどん溜まっていく。
「全くアイリスはエッチな王女様になっちゃったな。」
「お兄様がこんな私にしたのですよ。ちゃんと責任は取ってくださいね?」
そう言ってアイリスは再びカズマと唇を重ねる。愛し合うように、見せつけるように舌を絡ませキスをしている。キスをする二人だが、アイリスは横目で私のことを捉えていた。
「アイリスぅぅぅぅっ!!」
私は怒りに身を任せ獣のように咆哮する。そんな私に向かってアイリスは笑った。
くすくす、と。
+
カズマのストーカーの結果は散々だった。アイリスに憎まれ口を叩かれ、カズマとの愛を見せつけられる。それがとても耐えられなかった。私はカズマを尾行するのは諦めアクセルの屋敷へと帰っていた。
「ただいま帰りましたよ」
中にいるであろうアクアに帰宅を告げる。だが、私の帰宅の声に反応したのはアクアではなかった。
「おや、めぐみんじゃないか」
そこに居たのはダクネスだった。約一ヶ月ぶりに見たダクネスのお腹は少し膨らんでいる。妊娠しているのは本当のようだ
「わざわざ屋敷に帰ってくるなんて珍しいですね。まさかカズマと喧嘩でもしましたか?それなら私が慰めてあげますよ」
僅かな期待を込めてダクネスに尋ねる。ダクネスが喧嘩してるなら私がカズマに取り入るチャンスだ。
「いや、カズマとは円満のままだぞ。今日来たのはカズマの部屋から幾つか私物を持ってくるように頼まれただけだ。」
見るとダクネスは大きな荷物を背負っていた。今からお城に持って帰るつもりだったのだろう。
「ま、待ってください!カズマの部屋から何を持っていくつもりですか!?」
まさか私が自慰に使ったカズマのパンツを持っていくつもりだろうか。それは非常に困る。
「あの部屋にあったものは全部持っていくつもりだ。カズマ達が待っているから私はもう帰るぞ。」
ダクネスはさっさと屋敷を去ろうとする。そんなダクネスを私は引き止めた。
「ダクネス、カズマの部屋の物は置いていってください!あれは私とアクアにとって無くてはならない物なのです。」
ダクネスは私の必死な顔を見て辟易した様子で答えた。
「ふむ。めぐみんはまだカズマの事を諦めていないようだな。そうだ、クリスからめぐみんにこれを渡すように頼まれていたのだ。」
ダクネスは私に茶色の封筒を渡してくる。私は怪訝な顔でその封筒を開けた。中には写真が数枚入っている。そのうちの一つを見て驚き写真を放り投げてしまった。封筒の中身はクリスとアイリスがカズマとセックスしてる写真だった。
「どうした?めぐみん、もっとちゃんと見た方がいいぞ」
ダクネスがわざとらしく私に言ってくる。アイリスに続きダクネスまでもが私に嫌がらせするようだ。
「めぐみん、ハッキリ言っておくがもうカズマの妻はこれ以上必要ない。めぐみんも早くカズマのことなんて諦めて他の恋を探してこい。」
アクアに続きダクネスまでもが私の恋路を邪魔する。特にダクネスはカズマと結ばれているのだからそんな事が言えるのでしょう。
「うっ……どうして……どうしてみんなして私を虐めるのですか……?」
度重なる虐めに私は耐えかねて涙を流してしまう。それにダクネスは私の味方をしてくれると思っていた。一緒に監禁した仲だと言うのに。
「私だってめぐみんにこんな仕打ちしたくない。だが、カズマを取られるのは嫌なんだ。タダでさえカズマの妻は三人いる。これ以上妻を増やすのは無理だ。」
ダクネスは静かに泣く私を置いて屋敷を去ってしまう。
「うえっ……ぐずっ……ひぐっ……」
ただ悲しみに暮れて泣いてしまう。もうこんな辛い思いをするくらいならカズマなんて諦めた方がいいのでしょうか。
「ただまー」
アクアの声だ。ダクネスと丁度入れ違いで、アクアが帰ってきたのだ
「おかりーを言ってほし……めぐみん!?どうしたの!?」
会って早々私の元に駆け寄るアクア。泣いている私を見て心配したのだろう。アクアは私を抱きしめてくれる。私はアクアの胸の中で泣いた。
「大丈夫よめぐみん、私が付いてるからね。怖かったわね、辛かったわね、泣いていいのよ。泣くとスッキリするでしょう。」
アクアの慈悲深さには救われてばかりだ。彼女の優しさに触れて私は泣く声を止めることが出来なくなった。
「よしよし。そんなめぐみんに朗報があるの。なんとね、あのカズマさんがめぐみんに会ってもいいって言ってくれたの。」
アクアの発言にバッと顔を上げる。その目は嘘をついている様子ではなかった。アクアの発言は本当なのだろう。
「カズマさんに無理言って早速明日会うことになったから。ちゃんとオシャレして行くわよ。」
およそ一ヶ月ぶりにカズマに会える。だが、私の心は既に疲れ果てていた。カズマを手に入れたいという衝動も弱くなっている。
「アクア……私はもうカズマを諦めた方が良いのでしょうか……。カズマに近づこうとすればするほど傷ついて……。もうこんな思いはしたくないのです。このままだとカズマのことも諦めてしまいそうで……。カズマへの想いが薄まっていくことがとても怖いのです。」
アクアは私の顔を真正面から見据える。
「よっぽど辛かったのね。カズマさんのことを諦めるのも選択肢の一つよ。でも、まだめぐみんはカズマさんのこと好きなんでしょう?」
アクアの質問に私は頷く。私の返答を聞いてアクアは満足げに微笑んだ。
「なら少しずつカズマさんと仲直りしていきましょう。まずは、監禁した事を謝らないとね。さっ、ご飯の用意するわよ。」
今日もアクアが慰めてくれた。私はアクアに救われてばかりだ。いつかこの恩を彼女に返さなくてはならない。
そして遂にカズマに会う日がやってくる。
起承転結の起の部分が異様に長くなっちゃいました。本当は起を短くした方がいいんですけどね。長すぎたのでクライマックスは後編に回す予定です。退屈してしまったらごめんなさい。後編のプロットは緻密に作ってるので次回の更新は早くなりそうです