※この作品はR-18です。

このすばらしい仲間と恋愛を!   作:てつろう

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酔った勢いで書いたので後で修正するかもです。





諦めない女達 めぐみんのターン!(後編)

 

 

 

(めぐみん視点)

 

 

 

私とアクアは朝からウィズ魔道具店に来ていた。

 

 

「いらっしゃいませ〜、あらアクア様とめぐみんさんじゃないですか!お久しぶりですね。」

 

 

元気よくウィズが出迎えてくれる。

 

 

「久しぶりねウィズ、今日はお菓子はなくていいからお茶を頂戴。温かいお茶でいいわよ」

 

「なぜ貴様にお茶を出さねばならんのだ、厄災女神よ。さっさと帰るが吉。今ならこのガラクタ商品も持ち帰って良いぞ。」

 

 

アクアとバニルは店の中だというのに暴れ始める。相変わらず二人は犬猿の仲のようだ。私は二人に巻き込まれないように近くにあった商品棚に目をやる。

 

 

「衝撃を与えると爆発するポーションに、衝撃を与えると洪水を発生させるスクロール、衝撃を与えると首を絞めるチョーク……ってなんでここには衝撃を与えるとろくな事にならないものばかり置いているのですか!」

 

 

ここの店はどうなっているのだろう。私が嘆息しているとウィズが店にある商品の一つを手に取ってこちらに寄ってくる。

 

 

「こちらのポーションなんてどうでしょう。衝撃を与えるだけで好きな場所にテレポートできる一級品ですよ。しかも、テレポート阻害の結界があっても使うことができるんです!」

 

 

また衝撃を与える商品か。ウィズは辟易してる私に構わず笑顔で商品の説明をしてくる。衝撃を与えるだけで勝手にテレポートしてしまう商品など使い勝手が悪くて売れないと思う。

 

 

「他にデメリットはないんですか?」

 

「ええ、ないですよ。強いて言うならテレポートするのは人間だけで服や持っているものはテレポート出来ないことくらいでしょうか。」

 

 

ただのガラクタではないか。

 

 

「そんな商品買うわけないでしょう!もし使ってしまったら裸でテレポートすることになりますよ!」

 

 

ウィズの商才は相変わらず皆無のようだ。私が棚に商品を戻そうと手を伸ばしした時、

 

 

「待て、意中の男が次々と他の女に取られ内心どす黒い感情を持つ娘よ。」

 

 

いつの間にかアクアとの喧嘩が終わったバニル。私は商品を置こうとした手を止め嫌々ながら振り向いた。

 

 

「私に何か用です?」

 

「何か用かとは失礼な物言いだな。ただ助言をくれてやるだけだ。そのテレポートできる商品を持っていくが吉と出た。」

 

 

こんな欠陥商品が何の役にたつと言うのでしょう。バニルが何か私を騙そうとしているのではと疑ってしまう。

 

 

「そんな事言ってただ在庫処理をしたいだけじゃないのですか?」

 

「めぐみんの言う通りよ!こんな悪魔の言う事なんて聞いたらダメよめぐみん!」

 

 

アクアが私とバニルの間に割って入り私を守るように立ち塞がる。

 

 

「ほう、薄っぺらくてどうとでも捉えられる言葉を垂れ流す神達より未来を見据える吾輩の方がマシだと思うがな。特に営業妨害に精を出すアクシズ教の元締めなど信用できまいて。」

 

 

アクアはむむむとバニルを睨みつけていたが、やがて視線を下に落とし小さくため息をついた。

 

 

「はぁ……まあアンタがそう言うなら従った方がいいかもね……」

 

「ふむ、これはどうしたことか。いつも吾輩に食ってかかる厄災女神が大人しくなるとは。明日は雪でも降るのか?」

 

 

珍しくアクアはバニルに反抗しなかった。体調でも悪いのだろうか。

 

 

「あんた本当に天罰食らわすわよ?……ただあんたがめぐみんに助言したならそれを聞き入れても損はないと思っただけよ……」

 

 

普段は空気を読まない女神であるアクアが悪魔のバニルの意見に耳を傾けている。それだけ私の為を思ってくれているのだろうか。

 

 

「アクアがそこまで言うなら分かりました。この商品買いますよ。いくらですか?」

 

「一万飛んで四万六千エリスである。丁度汝らの所持金全額であるな。フハハハ、どうした、今更払えないとでも言うつもりか?」

 

 

堪忍袋の緒が切れたアクアがバニルに神聖魔法を使い再び二人は暴れ始めた。私は仕方なく商品をポケットにしまうのだった。

 

 

+

 

 

 

私は背中の大きく空いた黒のワンピースを身にまとい、アクアに薄化粧をしてもらい、初めての香水までつけた。カズマに会う準備はバッチリだ。私はアクアと一緒に城の門まで行く。城の門番は私の姿を見て驚いた顔をする。以前、私が毎日のようにお城に突撃していた際お世話になった兵士達だ。また私がお城に襲撃に来たと思ったのだろう。門番が私を取り押さえようとこちらへ近づいてくる。

 

 

「ちょっと!めぐみんはちゃんと面会の許可を取ってるわよ!」

 

 

アクアは私を守ろうとするが、門番は前科のある私を威圧するように見下ろす。仕方ないので私がパンチをお見舞いしてやろうと思っていると、

 

 

「お待ちください!その者達はカズマ殿が招いた客人です!」

 

 

城の中からレインがやって来る。門番もレインを前にしてビシッと敬礼し私達を威圧するのをやめた。

 

 

「お待ちしておりましたアクア殿、めぐみん殿。」

 

 

厳格な兵士達とは異なり穏やかな表情で私を出迎えるレイン。彼女は私達を城の中へと案内する。

 

 

「アイリスは元気にしてますか?」

 

 

元気であって欲しくないが、社交辞令として一応言う。レインは私の真意を見透かしたように見つめ答えた。

 

 

「アイリス様は元気ですよ。ただ……最近、あまりにもワガママになってしまって……。習い事を受けずにカズマ殿と一緒に居たいだの、カズマ殿と夜更かしして昼過ぎまで起きてこなかったりだの、あのカズマ殿から悪い影響ばかり受けてます。その上、クリス殿やダスティネス殿とは喧嘩ばかりしますし、この前なんて身重となるダスティネス殿を階段から突き落とそうとしたのですからね!あの頃の気高く優しいアイリス様はどうなってしまわれたのやら……。」

 

 

レインからはアイリスへの愚痴が大量に出てきた。なんだかんだで一番の苦労人はこのレインなのかもしれない。アイリスへの愚痴を聞きながら廊下を歩いていると奥からアイリスが歩いてきた。噂をすれば影がさすとはこの事だ。

 

 

「昨日ぶりですね、めぐみんさん」

 

「ええ、まさか私がもう来ないとでも思いましたか?私は諦めが悪いですからね。どんな手を使ってでもカズマに会いに来ますよ」

 

 

私とアイリスは互いに睨み合う。一触即発の空気が私達の間に流れる。

 

 

「お兄様には会わせません」

 

 

アイリスは私達を通す気はないようで、堂々と言い放つ。

 

 

「何言ってるのよ。今日はちゃんとカズマさんに会う許可貰ってるんだから、そこを通しなさい!」

 

「アイリス様、アクア殿もこう申しておりますしここはどうか穏便に……。」

 

 

アクアとレインがアイリスを説得する。私も、もう少しでアイリスと掴み合いの喧嘩になる所だった。

 

 

「どうしてもお兄様に会いたいのなら私を倒してから行ってください。私が相手になりますよ」

 

 

昔の引っ込み思案だった王女様はどこへやら、アイリスは私に向かってファイティグポーズを取る。いつもの私ならここで喧嘩していただろうが今日の私は一味違う。ふと私はバニルのことを思い出したからだ。

 

 

「王女様を相手にしては敵いませんし、ここは素直に帰りましょうかアクア。」

 

 

私の発言を聞いて大きく目を見開くアクア。アクアはこの一ヶ月間私をカズマに会わせようと画策していた。それなのに私があっさり帰ってしまうと言うものだから肩透かしを食らったのだろう。

 

 

「何言ってるのよめぐみん!あれだけカズマさんに会えることを楽しみにしてたじゃない!」

 

 

案の定怒るアクア。私はアクアを無視して今朝ウィズの店から仕入れた物をアイリスに渡す。

 

 

「アイリス、私は帰るのでこれをカズマに渡してください。衝撃に弱いのであまり乱暴に扱わないでくださいね。」

 

「殊勝な心がけですね。分かりました、お兄様に渡しておきますよ」

 

 

アイリスは私からのプレゼントを上に掲げポーションの中身をゆらゆらと揺らす。彼女は一時ポーションの様子を確かめた後ニヤリと口元を歪めた。

 

 

「ふふっ、私が素直にお兄様に渡すと思いましたか?こんなもの捨てちゃいますよ」

 

 

アイリスがポーションを地面にポイと投げる。ポーションは放物線を描いて地面に落ちた。と、同時にアイリスの姿が消える。但し、アイリスの服だけを残して。

 

 

「あ、アイリス様!?どこへ行かれたのですか!?」

 

 

慌てるレイン。このまま何も教えなくてもいいのだが親切な私は彼女に教えてあげることにした。

 

 

「このポーションは衝撃を与えるとテレポートできる代物です。但し、テレポートするのは人間だけで身につけている服や持っている物はテレポートされません。」

 

 

私の発言を聞いてレインの顔が青ざめていく。

 

 

「で、でも王城にはテレポートを阻害する結界が張ってあるはずです!」

 

「このポーションはテレポート阻害の結界がある所でも使える超一級品です。つまり、アイリスは全裸で外に放り出されたということですね。」

 

 

私の言葉を皮切りにレインが急いで外へと駆けて行った。今頃アイリスは全裸で王都のどこかへテレポートしていることでしょう。私があれほど衝撃を与えないようにと言ったのに。自業自得です。

 

 

「ねえめぐみん、まさかこうなる事を全部分かってたの?」

 

「さあどうでしょうね。まぁこれで、昨日カズマとイチャつく所を見せてきた時の借りは返しましたよ。」

 

 

昨日アイリスに散々詰(なじ)られた分の復讐は出来た。心の中でバニルに感謝しながら私はほくそ笑む。一悶着あったが今日ここに来た目的はカズマに会うことだ。私はアクアと一緒に廊下を進んで行く。すると、奥から懐かしい人影が見えてきた。あれはカズマだ。

 

 

「おっ、アクアと……めぐみんか。久しぶりだな」

 

 

若干気まずそうに私に話しかけるカズマ。ようやくカズマに会えて嬉しくて抱きつきたくなる気持ちを必死に抑える。

 

 

「ええ、お久しぶりです」

 

「まあ立ち話もなんだし、部屋で話そうぜ」

 

 

カズマに連れられ応接室のような部屋に入る。部屋の中にはお腹を大事そうにさするダクネスがいた。

 

 

「ダクネス、昨日ぶりですね」

 

「ああ、めぐみんならどうせ来ると思っていたぞ」

 

 

彼女はカズマの妻として勝者の余裕があるように見えた。昨日私を虐めた仕返しをしても良かったがカズマが居るので今はやめておこう。

 

 

「それにしてもひどいじゃないですかカズマ。どうして私に暫く会ってくれなかったのです。」

 

「だって俺の身にもなってくれよ……。逆レや監禁したやつと今まで通り一緒に話せるか?ダクネスみたいに子供が出来たならともかく普通はもう会ったりしないって。」

 

 

言われてみればカズマの言う通りだ。カズマに恋するあまり私の常識的な部分が抜け落ちていたのだろう。今日会えただけでも奇跡と思うべきだ。

 

 

「それならなぜ今日は私に会ってくれたのです?」

 

「それはアクアからめぐみんに他に好きな人が出来たって聞いたからだよ」

 

 

……はい?他に好きな人が出来た?私は生涯カズマを愛するつもりなので他に好きな人なんかいません。

 

(どういうことですかアクア、カズマに嘘をついたのですか?)

 

(だって仕方ないじゃない!めぐみんがカズマさんを好きでいる以上カズマさんは決して会ってくれなかったの。めぐみんがもうカズマさんに危害を加えるつもりがないと思わせないといけなかったのよ。)

 

アクアは良かれと思って私がもうカズマを好きじゃないと嘘をついたようだ。

 

 

「それにしても嬉しいな。めぐみんが新たな恋を見つけてくれて助かったぞ。」

 

「そんなに私がカズマの事を好きなのが嫌ですか?」

 

 

若干涙目になりながらカズマに尋ねる。そんな言い方をされて傷つかない乙女はいないだろう。

 

 

「い、いや別に嫌って訳じゃないけど……。俺には奥さんが三人もいるからさ。これ以上増えても困るっていうか……」

 

「なんて冗談ですよカズマ、もう私には好きな人が出来ましたから気にしないでください」

 

 

私は嘘をつくことにした。

 

 

「ほう、因みにその好きな人とは誰なのだ?」

 

「えっと……だ、ダストとか?」

 

 

皆が私の言葉を聞いて静まり返った。私もなぜダストの名前を出してしまったのか分からない。アクアまでも私の発言に驚いている。アクアはちゃんと嘘だと分かっているのでしょうね?

 

 

「めぐみん、悪いことは言わないからダストだけはやめておけ」

 

 

珍しくカズマが真面目な顔で言ってくる。まぁダストなんて好きじゃないんですけど。

 

それからダクネスの赤ちゃんのことや私の近況など他愛もない話をする。今となってはこのパーティメンバーでこうやって話すのも随分と久しぶりだ。一度はバラバラになってしまった私達が再び一緒になれた気がした。

 

 

「よーし、今日はジャンジャン飲むわよ〜!!」

 

 

私が部屋に入った時からこの部屋にはお酒が置いてあった。アクアがそこにあった酒を飲み始めるのは自然なことだろう。

 

 

「俺も自室からお酒持ってくるよ。こんな日の為に取っておいた高級ワインがあるんだ。」

 

 

カズマはそう言いながら部屋を出る。自分の部屋からワインを持ってくるつもりだ。私はここがチャンスとばかりにカズマの後をついて行った。応接室からカズマの部屋まではそう遠くなく同じ階の三つほど隣の部屋だった。

 

 

「どうした、めぐみん?お前もお酒が飲みたくなったのか?」

 

 

カズマが部屋に入ると同時に私も一緒に部屋に入る。部屋の中にはテーブルがあり、その上には食事をする際に使ったのかナイフが置いてあった。

 

 

「実はカズマに伝えたいことがありまして」

 

「ほーん、今日はこの酒にするかな。アクアが喜びそうだ」

 

 

カズマは自室の酒を吟味するのに夢中で私の言葉にあまり耳を傾けてない。

 

 

「やっぱりカズマのことが諦められません。私を第四夫人にしてくれませんか?」

 

「……」

 

 

カズマは私の言葉を聞くと酒を物色していた手を止め私に向き直った。

 

 

「ダストを好きになったって話は嘘だったのか?」

 

「ダストなんか好きになるわけないじゃないですか」

 

「……確かにそうだな」

 

 

私はカズマの返事を待つ。カズマは面倒な様子で頭を搔いて答えた。

 

 

「第四夫人にするのは無理だな。」

 

 

僅かな期待を込めて聞いたが断られてしまった。

 

 

「なぜですか?もう妻が三人いるのだから私が一人くらい増えてもいいでしょう」

 

「はぁ……理由は二つある。まず、俺達が幸せにならないからだ。今俺の奥さんは三人いる。出来るだけ平等に愛するように心がけているがそれでも限度がある。既にダクネスが妊娠しただけあってアイリス達も自分の子供が欲しいと毎晩毎晩セックスに付き合わされてるんだ。そこにめぐみんが加わってみろ。アイリス達の争いは激化すると共に俺は種馬としてこき使われることになる。これ以上は無理なんだよ」

 

「じゃあカズマとのセックスを全面的に禁止にすればいいじゃないですか。」

 

「アイツらがそんなルールに従うと思うか?二つ目の理由だが、俺と結婚することはめぐみんの幸せにならない。」

 

「そんな事ありませんよ。私はカズマと一緒に居られることが何よりの幸せなのです。」

 

「本当にそうか?俺がアイリス達とセックスするのを横で見てられるか?ダクネスが妊娠したのを知って嫉妬しなかったのか?第四夫人で本当に満足しているのか?」

 

「うぐっ……」

 

 

カズマの指摘はどれも的を射ていて私は何も言い返せなかった。もう私が生きてる内はカズマと結ばれるのは無理なのだろうか。生きてる内は無理……。私は近くのテーブルに置いてあったナイフをじっと見つめる。

 

 

「カズマ、今私もカズマもきっと幸せになれる方法が見つかったのですがやってもいいですか?」

 

「?、まぁ好きにしていいぞ」

 

 

私はテーブルに置いてあるナイフを手に取りカズマに向き直る。カズマはぎょっとした顔で私を見た。

 

 

「おい、何やってんだめぐみん……?」

 

 

私は勢いよくカズマへ走っていきカズマのお腹にナイフを刺した。

 

 

「一緒に天国に行きましょう?」

 

 

 

 

+

 

 

 

 

先日アクアが言っていた。”カズマと一緒に死ねば二人で天国に行くことも可能だ”と。二人で天国に行けばもうアイリス達にカズマを取られることもない。ずっとカズマと二人きりだ。

 

 

「めぐみん……どうして……」

 

「カズマ、私はカズマを愛しています。」

 

「あ……う……」

 

 

カズマはナイフを刺されると二、三歩後ずさりバタンと倒れた。脇腹にはナイフが刺さっており血がどくどくと溢れている。

 

 

「天国に行ったら何をしましょうか。エッチなことは出来ないそうですし、ずっとお話するのでしょうか。まあカズマと一緒ならそれも楽しいでしょう」

 

 

カズマは虚ろな目で私のことを見ている。

 

 

「めぐみん……ごめん……」

 

 

私に刺されたのにカズマは私に謝罪の言葉を述べた。

 

 

「カズマ、なぜ謝るんですか?」

 

 

もうカズマは返事をすることも無く仰向けになっている。床には血の水溜まりが出来ており事の悲惨さを物語っていた。

 

 

「生きてますかカズマ?」

 

 

一応聞いてみるが返事はない。今頃天界にいることだろう。後は私もカズマの後を追い自殺するだけだ。カズマに刺さっていたナイフを抜き深呼吸する。いざ自殺するとなると恐怖を感じる。痛いのは嫌だな、楽に死にたいな、などと考えていると

 

 

「カズマさーん、お酒まだ〜?もう待ちくたびれたんですけど〜?」

 

 

呑気な声でアクアが外から呼びかける。カズマが死んでる所をアクアに見られるのはマズイ。私はアクアが入ってくる前に部屋を出てアクアを出迎えた。

 

 

「あら、めぐみんもここにいたの。カズマさんはいるかしら?」

 

 

カズマを探しに来たようだ。私は出来るだけ平静を装って答える。

 

 

「カズマは体調が悪いので暫く休むそうですよ」

 

「さっきまで元気だったのに?それなら私が看病してあげるわよ」

 

 

なおも食い下がるアクア。

 

 

「大丈夫ですよ、私がカズマの面倒を見ます。」

 

「ふーん、……ねえめぐみん、あなたに前々から言っておきたいことがあったの」

 

 

アクアはそこまで言うと一呼吸置いて私の目を見て言った。

 

「めぐみんはカズマさんを愛してるの?」

 

何を今更言っているのだろう。勿論カズマを愛している。

 

「当たり前じゃないですか。誰よりも愛していますよ」

 

「本当の愛ってものはね、相手を好きなだけじゃダメなの。相手の幸せを願うのが本当の愛よ。めぐみんはカズマさんの幸せの為に行動してる?」

 

 

アクアの指摘に言葉が詰まる。私はカズマを誰よりも愛している自信がある。だが、それは一方的なものでカズマの為の行動は少ない。

 

 

「まぁ二人の仲を邪魔しちゃ悪いから私は先に帰るわよ。ちゃんとカズマさんと話してケジメをつけてきなさい。」

 

 

アクアはそれだけ言うと帰って行く。私はカズマの部屋に戻り一人で考え込む。

 

 

「考えてみれば……私は本当にカズマを愛していたのでしょうか……。」

 

 

カズマをこの上なく愛していると思っていた。だが、アクアの発言でその考えが揺らぎ始めている。今までの自分の行動を振り返ってみよう。ある時はカズマを逆レイプして、ある時はカズマをストーカーして、ある時はナイフで刺して……。一体私は何がしたかったのでしょう。カズマを手に入れたかっただけなのでしょうか。

 

 

「ち、違います!私はただカズマに振り向いて貰いたかっただけで……。」

 

 

カズマに振り向いてもらいたかった。だが、実際はカズマを傷つけただけじゃないだろうか。積極的にアプローチしているつもりがいつの間にか自分を認知してもらうことに目的が変わっていたのだ。

 

 

「と、とりあえずカズマを触って落ち着きましょう。」

 

 

部屋の方に目をやるとそこにはピクリとも動かなくなった遺体があった。

 

 

「か、カズマ……?」

 

 

遺体の顔に触れてみるとひんやりと冷たい。それはもうカズマではなくただの肉の塊となっていた。

今になって自分がやってしまった事の罪深さに気づく。私は自分の手で愛する人を殺してしまったのだ。逆境に弱い私はオロオロするばかりで何も出来ない。

 

 

「何してるのさめぐみん」

 

 

いつの間にか部屋のドアを開けて入って来ていたクリスと目が合う。

 

 

「く、クリス!」

 

「ふーん、カズマくん殺しちゃったんだ。まあいつかめぐみんならやると思ってたよ」

 

 

クリスはカズマの死体を見てもあっけらかんとした様子だ。

 

 

「ど、どうすれば良いのでしょうか!?このままだとか、カズマが死んでしまいます。」

 

「別にカズマくんが死んでもいいんじゃない?私は天界でエリス様としてカズマくんの魂を案内する立場にあるからね。カズマくんが死んでくれればその魂は私が手に入れられる。本当はカズマくんが寿命で死んでから魂を手に入れる予定だったけど、めぐみんが殺してくれたなら早めにカズマくんの魂が手に入って丁度良かったね」

 

 

どうやらこのままカズマが死ぬと、私と一緒に天国に行く訳ではなくクリスの手にカズマの魂が渡るらしい。

 

 

「だからねめぐみん、カズマくんを殺してくれてありがと」

 

 

クリスの声を合図に私の中で何かが吹っ切れた。

 

 

「あなたにカズマは渡しませんよ!」

 

 

私はカズマを置いて一目散に部屋を出る。

 

 

「人が死んでから蘇生出来るまでの時間は三十分だよ。先輩はとっくに城を出たしもう間に合わないよ」

 

 

クリスの発言を聞きながら部屋を出る。とにかくアクアを探そう。アクアならカズマを蘇生出来るはずだ。このままカズマが死んでしまったらカズマはクリスの物になってしまう。絶対にそんな事はあってはならない。私はすぐにさっきまでいた応接室のドアを開けた。

 

 

「ダクネス!アクアはどこですか!」

 

「アクアならついさっき帰ったぞ。王都で美食巡りをするとか言ってたな」

 

 

もうアクアは行ってしまったらしい。私はすぐに城を抜け出し王都へと踏み出す。一刻も早くアクアを探さなければいけない。クリスによると、カズマが死んでから蘇生できるまでのタイムリミットは三十分。その間にアクアを見つけ出さなければ。

城を出ると大量の人が行き交っているのが目に入る。私は必死に前に進もうとするが、如何(いかん)せん王都は人通りが多くて中々進めない。それでも前に進むため人にタックルしながら足を進める。私のタックルを受けて倒れる人が喚くが私は気にしなかった。

だが、やはり人の多さには勝てないのかそれでもほとんど進むことが出来ない。人の濁流の中でアクアの声を何度も連呼するがそれに答える者は居なかった。もう時間がない。どうにかアクアを探す方法はないだろうか……。

 

 

 

 

いや、ある。一つだけだが、私は確実にアクアを呼ぶ方法を知っている。でも、これは最終手段だ。私は一度立ち止まり呼吸を整える。

 

 

「…………」

 

 

……やるしかない。カズマを救うためだ。私は爆裂魔法の詠唱を始める。私の体に魔力が流れ周りの空気が一変する。周囲の人も私が甚大な魔法を使うと理解したのか一気に私から逃げていく。私を中心にして円状に人だかりができた。私は詠唱を終えると目をカッと見開いた。

 

『エクスプロージョン!』

 

私は空に向かって爆裂魔法を放つ。幾重にも魔法陣が重なり大きな爆発が空で起こった。一拍遅れて爆音が骨身に染みる。私は魔力を使い果たしその場に倒れ込んだ。これだけ盛大に爆裂魔法を使えばアクアは私の所へやって来るだろう。突然の爆発に街の人はパニックになっている。私は地面にうつ伏せになりながらアクアを待つのだった。

 

五分程経っただろうか。そろそろアクアがやって来てもいい頃だと思う。まさかもう王都に居なくてアクセルに帰ってしまったのだろうか。嫌な予感がして冷や汗をかいてしまう。

 

 

「めぐみん、めぐみーん!」

 

 

アクアの声が後ろから聞こえる。私は地面にうつ伏せになったまま声の方に目をやった。

 

 

「やっと来ましたか」

 

「めぐみん……あなた自分が何をやったか分かってるの?」

 

 

アクアはうつ伏せになる私の前にしゃがみこんで神妙な面持ちで聞いてくる。

 

 

「ええ、全て覚悟の上です。」

 

「契約のせいで爆裂魔法を使ったらもう二度とカズマさんに会えないわよ。今までの努力が全部無駄になるのよ。本当に良かったの?」

 

 

そう、先日アクアと契約を結んだ。”私がカズマと結ばれる前に爆裂魔法を使ったらもう二度とカズマに会えない”。まだカズマとは恋仲になってない。だが、私はもう爆裂魔法を使ってしまった。それはつまりカズマに二度と会えないことを意味している。

 

 

「ええ、もういいんです」

 

 

私はカズマに会えないと分かっていてもどこか清々しい気持ちだった。本人の為に自分を犠牲にして行動する。これが本当の愛なのだ。私はカズマに対する愛を見つけることが出来た。それだけで充分だ。

 

 

「アクア、こんな所で爆裂魔法を使ったのですからもうすぐ警察が来る頃です。早くお城へ戻りましょう」

 

 

アクアは私を慣れない手つきで背中に負うと王都へ向かって走り出した。上下に揺れて振動がものすごいがこの際贅沢は言ってられないだろう。私を遠巻きに見ていた群衆の中に紛れ込み私達は王城へと戻った。

 

 

 

+

 

 

 

一週間後……

 

 

 

私は牢屋の中にいた。カズマを殺害しようとした罪で捕まったのだ。私が捕まるのはカズマを監禁した時も含めて二回目だ。もう無罪になることはないだろう。

 

 

「カズマ……」

 

 

私に刺されたカズマはアクアがどうにか蘇生してくれたらしい。なんとか制限時間内に間に合ったようだ。カズマも元通りになって日常生活に支障もないそうだ。全てアクアから聞いた話だが。

 

 

「これで良かったのです」

 

 

私はカズマを救うことは出来た。だからカズマの隣にいられなくても何も辛くない。それなのに……

この心に穴がぽっかり空いたような感覚は何なのだろう。今まであったものがなくなったような感覚は。

 

 

「ああ……これが失恋なのですね……」

 

 

私はカズマに振られたのだ。遂にその事実を認識してしまった。

 

 

「カズマ……会いたいです……」

 

 

私は一生カズマに振られた事実を背負いながら生きていくのだろうか。そんな人生は嫌だ。カズマの奥さんは三人もいるのに私は選ばれなかった。あの三人には嫉妬してしまう。

 

 

「カズマカズマカズマ……」

 

 

カズマのことを考えないように意識するほどカズマのことを考えてしまう。悪循環に陥っていた。もう死ぬこと覚悟でカズマに会ってしまおうかと考えていたその時、

 

 

「よおめぐみん、久しぶりだな」

 

 

牢屋の鉄格子を挟んだ向こう側にカズマの姿があった。契約のせいで私はカズマに会うと死んでしまうはずだ。だが、最後にカズマの顔を拝めて良かったかもしれない。

 

 

「…………」

 

 

……あれ?私はいつまで経っても死ななかった。おかしい。アクアと契約を結んだはずなのに。

 

 

「アクアから聞いたぞ。俺の為に爆裂魔法使ったんだってな。めぐみんらしいというか何というか……。まぁアクアを呼んでくれて助かったよ。おかげ様で今はこの通り元気だ。」

 

「あの……契約はどうなってるのでしょう?」

 

 

私は、カズマの話は上の空で契約のことばかりが気になっていた。

 

 

「ああ……アクアから聞いた話だけどな、契約は女神が一方的に解除できるらしい。女神と人間とではそもそも立場が違うんだとさ。」

 

 

なんと、衝撃だった。私の爆裂魔法を撃った時のあの覚悟は何だったのか。まぁアクアのことだ。どうせ契約を解除出来るのを忘れていたとかそんなオチだろう。

 

 

「私は……カズマに謝らなければいけません。今まで監禁したり殺したりしてしまって……。本当にごめんなさい。」

 

 

カズマは私の懺悔を黙って聞いていた。そして大きくため息をつくと私に答える。

 

 

「じゃあ俺と一緒に暮らすか?」

 

「…………はい?」

 

 

私の言葉を聞いていなかったのだろうか。私が決死の覚悟でカズマのことを諦めようとしているのに。なんで後ろ髪を引かれるようなことを言うのだろう。

 

 

「……だから何度も言ってますが、私がカズマを愛すれば愛するほどカズマを傷つけてしまうんです。カズマに迷惑をかけてしまうので私はもうカズマの近くには居られません。」

 

「今までお前にどれだけ迷惑かけられたと思ってるんだ。いつも厄介事に巻き込まれるわ、とうとう刺し殺されたんだぞ?これ以上の迷惑なんてないだろ。」

 

「私はカズマの為を思って距離を置こうと……」

 

「もう俺に迷惑をかけてもいいって言ってるんだよ。ダクネス達を妻にしたのにめぐみんだけ見捨てるなんて出来ないだろ?」

 

 

尚も食い下がるカズマ。カズマの言ってる事は本気なのでしょうか。これでバニルがカズマに化けて私を騙しているとかだったら本気で怒るが、そんな様子ではないようだ。

 

 

「……カズマ」

 

「……なんだ?」

 

「泣いていいですか?」

 

「もう泣いてるだろ……」

 

 

私はカズマの前でおいおいと泣く。辛いことがあっても中々涙は流さなかった。だが嬉しいことには涙腺が弱いのだ。

 

 

「めぐみん、一応俺も男としてちゃんと言っておくぞ。俺には妻が三人もいてそれでもいいなら……」

「俺と結婚してくれませんか?」

 

 

カズマは私にプロポーズしてくれた。牢屋の中での求婚なんてまるでムードがないと言いたいが、私は声を上げて泣いてしまう。

 

 

「あの……返事をくれると嬉しいんだけど」

 

「そんなの断るわけないでしょう!もう……カズマは本当にお人好しなんですから……」

 

 

私はカズマの前でへたり込んでしまう。カズマは鉄格子を挟んで私の背中を撫でてくれた。

 

 

「はぁ……ダクネス達にどう言おうかな……」

 

 

私は愛しい人の困った顔を見ながら泣き続けるのだった。

 

 

 








アイリスが全裸で目の前にテレポートしてきたらどうしますか?後書きで色々語ろうと思います。興味ない方は読み飛ばしていいかもです。

ダクネス編、めぐみん編と続き次はアクア編を描いて完結。という流れの予定でしたが、一度カズマの妻達の関係性を描いてみようかと思ったので完結はもう少し先になるかもです。と言っても残り二、三話くらいになると思います。

次の話ですがプロットも書く内容も全く決まっていません。漠然とカズマ達の生活を書く予定ですが、誰目線で描くかも決まってない状態です。例によって更新は遅くなるかもです。


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