このすばらしい仲間と恋愛を! 作:てつろう
約4000字あります
(カズマ視点)
今日俺は結婚式を挙げる。だが、ただの結婚式じゃない。アクア、めぐみん、ダクネスとの結婚式を同時に挙げるのだ。そう、巷で話題のハーレムクソ野郎とは俺のことである。五人の妻を持つ俺は王都やアクセルでは名の知れた者になっていた。今の俺はかつてヒキニートだった頃の見る影もない。
結婚式場には冒険者を始めとしてダクネスと懇意にしている貴族、庶民で一夫多妻という珍しい結婚をした俺を報道しに来た記者などが参列している。式場にはパイプオルガンの大きな音が響いており厳かな空気を醸し出していた。
「はぁ、本当に結婚するんだな……」
祭壇の近くで新婦を待つこと数分、遂にその時は訪れた。
純白のドレスに透明なヴェールで顔を隠している。乙女の最も美しい姿であるウェディングドレスに身を包んだアクア、めぐみん、ダクネスだ。三人は並んでバージンロードを歩いてくる。彼女達の人並外れた美貌にその場にいた全員が見惚れているようだ。見てくれだけは良いんだよな……。
やがて三人は祭壇の前に着く。彼女達はそっと俯いていた顔を上げ俺の目を見据える。美しい、綺麗だ。上手く言葉で言い表せない自分が悔しい。
「ぷっ、カズマさん全然タキシード似合ってないじゃない!」
「アクア、それは言ってはいけない約束ですよ!……ぷふっ!」
「くくっ、やめるんだお前達。結婚式の最中だぞ……くふっ!」
こんのアマー!先程までの荘厳な空気はどこへやらアクア達の声が聞こえていたのか参列者の中に笑いの混じった声がする。緊張していた俺もこいつらのやり取りを見てその思いは吹き飛んだ。
「大体お前らがドレスに似合いすぎなんだよ!お前らの横に並ぶ俺の気持ちにもなってくれよ!」
「か、カズマ……。あまりみんなの前で褒められるのは私の好みじゃないのだが……。」
俺の言葉にダクネスが照れた様子で俯く。そんな反応をされたら俺まで恥ずかしくなってくるだろ!俺とダクネスは互いにチラチラ様子を伺い初な反応をしていた。
「まあ私に見惚れるのは仕方ないわね!だって私は女神ですもの!」
「……やっぱり今になってもアクアは女として見れないんだよな。」
「冗談よねカズマさん?……え、本当に女として見れないの?……めぐみんより胸だってあるしスタイルもいいはずなのに!」
「おい、なぜ私を引き合いに出したのか言ってもらおうか。返答次第では、この会場が灰燼と化すでしょう。」
「あのう……そろそろ式を始めても宜しいでしょうか」
神父が申し訳なさそうに口を挟んでくる。このままではいつまで経っても式が終わりそうにないので丁度良かった。全く……俺達はいつもこんな調子なのだろうか。ため息をつきながらも俺はどこか居心地の良さを感じていた。これからもこんな日々が続くと思うと不思議と安心できる。
神父がオホンと大きな咳払いをして、場の空気を一変させる。
「汝サトウカズマは、この女達アクア、めぐみん、ダクネスを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、愛を誓い、妻を想うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「はい、誓います。」
「汝らアクア、めぐみん、ダクネスは、この男サトウカズマを夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、愛を誓い、夫を想うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「「「誓います」」」
「それでは、誓いのキスを」
俺はアクア達に誓いのキスをしようとして……。困った、誰からキスをすればいいのか。結婚式の用意は前々からしていたのに肝心なことが決まっていなかった。
「カズマさん、ここは最初に私からキスしましょう。女神である私が一番のはずよ!」
「待ってください。一番最初にカズマに告白したのは私です。私が最初にするべきです!」
「それを言ったらカズマと最初に結婚したのは私だぞ。私がカズマとキスするべきだろう。」
コイツらが俺を取り合っているのを見るとなんだかニヤニヤしてしまう。もっと俺の事を取り合ってくれなどと思っていると、
「カズマさん、新しい変顔の練習でもしてるのかしら?」
「何だとおいこら」
こいつらの前では甘酸っぱい雰囲気などにはならないようだ。
「うーん、じゃあアクアから行くぞ!」
話が平行線を辿っているので適当にアクアを選ぶ。既に参列席にいる人達も待ちくたびれている様子なので早く終わらせよう。
「わ、私!?ちょ、ちょっと待ちなさいよ。まだ心の準備が出来ていないから……」
さっきまであんなに自信満々だったのにいざやろうとするとアクアはヘタレてしまったようだ。頬も朱を散らしたように赤くなっている。俺はアクアのヴェールを脱がしてあげる。
先程までは隠れていたアクアの顔を見ると俺の思考は吹き飛んだ。とても美しいのだ。白い肌に艶やかな唇。深い青色の瞳は俺のことをまっすぐ見つめている。こんな女神が自分のことを好きでいてくれる事に感謝しながらもアクアの頬に手を添える。
「ーーーー」
アクアと唇を重ねようとしたその時だった。バタン、と会場の扉を開ける音がする。俺もアクア達もその場にいた冒険者、貴族、記者に至るまで、全ての人が後ろを振り向く。皆の視線を集める中、扉から現れたのはアイリスだった。
「結婚式は中止です!お兄様がめぐみんさん達とイチャイチャするのは私が許しません!」
突如式に乱入してきた少女はアイリスだった。彼女を止めるべきである職員も相手が王女様であるからか誰も手を出さない。扉から現れた彼女はまるでヒーローのようで不覚にも少しカッコイイと思ってしまった。参列席にいる冒険者はアイリスの登場に
「アイリス様なら来ると思っていたぞ」
ダクネスがどこか感慨深げに言葉を漏らす。彼女が来ることは俺も予想していた。俺から何か言った所で彼女は言うことを聞くような人じゃないのだ。
「カズマ殿、こちらです!」
俺達のことを呼んだのはレインだ。実はこうなることは既にレインとも打ち合わせている。レインの方へ走るとそのまま結婚式場の裏口へと出る。
「ああ……アイリス様があんな風になられて。後処理は全部私がしないといけないのでしょうか……はぁ……。」
深刻そうな顔のレイン。彼女もアイリスのワガママに付き合わされて大変そうだな。結婚式場を抜けると馬車とめぐみん達の装備一式、それと幾許かのお金が置いてあった。俺達は今からこの馬車に乗りアクア達と新婚旅行へと行くのだ。勿論この事はクリスにもアイリスにも伝えていない。
「皆さん、どうかお幸せに」
レインの言葉に俺達は大きく頷く。と、その時ドゴオン、と大きな音が馬車を揺らした。骨身に染みる爆音。この音には聞き覚えがある。かつてアイリスがドラゴンに斬撃を放った時と同じ音だ。
「アイリスが暴れたんだな」
「もう……アイリス様……!」
レインがアイリスの暴れる音を聞いて大きなため息をつく。彼女はいつも苦労しているようだからその努力が報われて欲しいものだ。
俺達は馬車に乗り込み、一息つく。馬車はレインが派遣した御者が馬を操ってくれるようだ。
「さてお前ら、これから新婚旅行に行くぞ」
「ねえカズマさん!最初はアルカンレティアに行きましょう!きっと私の信者達が盛大に祝ってくれると思うの!」
「却下ですよ。どうせアクシズ教徒に絡まれて疲れるだけです。紅魔の里に行きましょう。ゆんゆん達に自慢しなくてはいけませんからね。」
「私はアクセルの街でのんびり暮らすのも悪くないと思うのだが……。こうして四人で居られるのも久しぶりだろう。たまには屋敷に戻ってみないか?」
なんとまあ、こいつらはバラバラの意見を出してきた。今回もコイツらには振り回されるようだ。だが、今ではそれをどこか嬉しく感じている自分がいる。
「なぁお前ら」
俺の言葉にみんなが耳を傾ける。
「これからもずっと一緒に居ような。」
彼女達は笑いながら俺の言葉に頷く。死んでもコイツらを離したくない。そんな想いを胸に抱きながら俺達は新婚旅行へと向かうのだった。
「ねえ、私のこと忘れてない?」
声がしたのは馬車の荷台の方。慌ててそちらを振り返るとクリスが座っていた。
「クリス!いつからそこに居たんだ?」
「結婚式が始まる前からずっと居たよ。ねえカズマくん、まさか新婚旅行に私を置いていくつもりだったとかじゃないよね……?」
クリスの腰元を見ればダガーがある。その短剣にクリスは手をかけ今にも戦闘態勢に入りそうだ。俺は彼女を刺激しないように下手に回る。
「そ、そんな訳ないだろ!クリスも誘う予定だったぞ。だからダガーを置いてくれませんか……?」
「ふーん、ならいいけど」
クリスが怒るのは免れたようでほっと一息つく。少し予定が狂ったがクリスを加えての新婚旅行だ。
と、その時。ドゴオン!、と爆音と共に裏口の扉が吹っ飛ばされていく。扉から出てきたのは案の定アイリスだった。扉の周囲のクレアやレインがアイリスを止めようとしている。だが、彼女はワガママな王女様になってしまったのだ。二人の静止を振り切りアイリスは俺達の乗っている馬車へ走ってくる。
「お兄様!私も新婚旅行に連れて行ってください!」
馬車はもう既に走っているが、アイリスは素早いスピードで追いつき馬車の荷台に飛び乗った。
「私を置いていくなんて酷いですよお兄様!」
「アイリス様、あまり周りの人を困らせてはいけませんよ。王女様が城を出るとなればレイン殿達にも迷惑がかかります。」
「そんな事言ってララティーナはお兄様を独り占めしたいだけでしょう!そうはさせませんからね!」
「なっ!?ち、違います!私はアイリス様の為を思って……」
「まあ良いではありませんかダクネス、こうしてみんなで一緒に居る方が私達らしいですよ」
「そうよ、今日は朝までみんなでどんちゃん騒ぎよ!」
どうやら俺はずっとこいつらに振り回され続けるようだ。だが、それも俺達らしいだろう。
「はぁ、しょうがねえな。」
俺は騒がしくしているアクア達の元へ加わり新婚旅行へと向かうのだった。
この素晴らしい仲間と恋愛を!〈完〉
遂に最終話ですね。あとがきや次に何を描くかなどは活動報告か最終話の後に描こうと思います。
さて、完結出来たのは偏に読者様のおかげです。よく感想をくれたりお気に入り登録が増えたりするのを見ているとモチベーションが上がりました。今作ではここまでとなりますが、if話や閑話が思いついたら描き始めるかもしれません。
ですが、折角完結させたので暫く小説を描く作業からは離れようと思います。だって小説を描くのってめちゃくちゃ大変なんですよ!プロットを作ろうにも中々進まないし、本文を描くのも展開が急にならないように神経を使うし、推敲するのも面倒だし……。
正直、他の方の作品がエタるのもしょうがないなと思いました。本当に小説を描くのって大変なんです。読者の方にはそれをちょっとでも知ってもらえると有難いなと思ったり。
とまあ、長くなりましたが今作品はここで終わりです。この作品のいい点や悪い点なんかも教えてくれると有難いです。特に悪い所は自分で気づきにくいので是非!それでは、次の作品でまたお会いしましょう。
この素晴らしい仲間と恋愛を! by てね