※この作品はR-18です。

起きたらなんか男女比がやばい   作:ロースト大将軍

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洋奈をよろしくお願いします。


その3 白川洋奈の満たされた夜 ♡

 白川さんがちゃんと守ってくれるなら、きっと白川さんがいいと思います__だって。

 その日、アタシの男性保護官としての日々が始まった。

 

(初めは物珍しい男のコって感じだったかな)

 

 慣れない敬語を必死に勉強して、いざ初めてのお仕事。相手のプロフィールは一文字も残さず読み通したし、アタシが送られてきた経緯も把握済み。正直言って少し年下の男のコなんて気が合わないって思っていたのに、すぐにその被害妄想は打ち砕かれた。

 

(今見ても部屋着て。もうちょっと自分を大事にしなよ、男なんだから)

 

 警護に従事する仕事とはいえ、相手は女だ。女は狼であり、男は羊。そう教えられてきたから、アタシは羊の皮を被ろうとした。意味なかったよね。

 前任者のいい加減な警護に痺れを切らした彼は、違約金を払ってアタシを雇用した。というより、代わりがアタシしかいなかったんだ。多分、イヤイヤだったんだと思う。

 

(正座で向かい合って座った時は婚活かな? って思った。礼儀正しいのは好感がもてたよ)

 

 少し常識からズレている部分は、プロフィールを見ても確認できなかった。女性に物怖じしたり、高圧的に接するのは男として生まれ持った性のようなものだとずっと思っていた。

 でも違った。彼はいつも寄り添ってくれるし、心配してくれる。彼は彼なりにこの男性優位な社会に適応しようと頑張ってるけど、正直無理をしているのは誰がどう見てもバレバレだ。突き放そうとしているのに、服を掴んでいては意味がない。それと一緒だ。

 

(お茶だっけ、茶柱が立ってた)

 

 希少種であり上位者でもある男性が女性をもてなすなど、それ専門の教育を受けてきた者にしかできないのではないかなんて与太話が浮かび上がるくらいには、世の中は男性に対して何も期待していない。

 お茶を淹れて持ってきたなど周りに伝えれば、それこそ与太話だとこぞって馬鹿にするだろう。

 でもそれは違う。彼は思いやりのある温かな男性だ。ちょうどあのお茶のような。

 

(あの時、アタシは確信した。彼は何があってもアタシを突き放したりしない。羊だと思っていた彼は羊飼いで、アタシは狼ではなく、羊)

 

 神話に出てくる救世主なんて大層なものじゃないけど、アタシには確かに光に見えたんだ。

 それから、彼との生活が始まった。怠惰な私は週六勤務と聞いてモチベが死んでたけど、それもガラリと彼が変えてしまった。

 

(普通保護官に二部屋しかないうち一つ渡す?)

 

 普通、局の経費をつかって保護官は近くに部屋を借りて、そこで普段を過ごす。緊急時に出られるようにいつでも待機して、呼び出しがあったらすぐに向かう。

 養成所に入ったら、まずこの生活リズムを叩き込まれる。さながら空軍のスクランブル発進と言えば良いだろうか。いついかなる状況でも主人たる男性の元へ飛び立たなくてはならない。

 

(ま、稼げてる人なら部屋なんて余ってるだろうけどさぁ)

 

 お世辞抜きで言うと、男の生活は平均そのものだ。社会福祉と助成金で男性として最低限の暮らしをして、たまの精子提供で少し豪遊する。それが男性のスタンダード、国の求める男としてのあり方。

 

(けど、なにやら様子がおかしい)

 

 彼が風呂に入っている時や、もしくは物音が完全にしなくなった深夜の時。アタシは隣の部屋のドアを開け、少しだけ中を覗き込む。プライバシーなんて彼の安全の二の次だ、それに洗濯の関係上部屋に入らざるを得ない状況もある。

 

(男の匂い? それにしてはなんか、湿ってる感じ?)

 

 アタシの知っている男の匂いは、もっと乾いた感じのツンと刺すような匂い。たまに洗濯の時シャツからするような匂いだ。

 どこかで嗅いだことのあるそれは、少しクセになりそうな感覚がした。

 

(そう、イカの匂い。というより栗の花かな?)

 

 さっそく手がかりを掴んだアタシは、スマートフォンで栗の花に類似する匂いについて調べる。追加で「男」や「男性」をつけて調べるものだから、検索履歴は他人が見たら少し引かれるようなものになってしまった。

 でも、ようやくその匂いの原因を特定することができた。それはアタシが予想していなかった、衝撃的なものであった。

 

(せ、精液!?)

 

 アタシが癖になりそうだったのは、精液の匂いだった。精液。男性が持つ凸型の生殖器から出される精子を含んだ液体。

 保健体育の授業では、すけべな女たちが、こぞってアホなことを叫んでいた。やれ受精したいだとか、動物のセックス見てるだけでご飯何杯はいけるとか。

 そんな女どもが好んで話のネタにしていたのが、精液だ。

 

(そっか、隣の部屋で出してたんだぁ……)

 

 いつか役に立つからと言われて教えられた男の射精の仕方について思いを馳せる。確か、継続的に刺激を与えてあげて、海綿体が最大限に膨張した時が射精の合図。膣の形を模したオナホールなんてものが刺激を与えるのに最適だなんて話も聞いた。

 でも、彼の部屋でオナホールなんて見たことがない。どうやって刺激を与えているのだろうか。

 

(口……は骨格的に無理だし、まさか、手?)

 

 手で輪っかを作れば確かにオナホールの代用にはなるかもしれない。

 それに、アタシだって人肌恋しい夜がないわけではない。手を使って自分自身を慰めることは嫌いじゃないし、むしろ好きだ。

 そうか、手。手を使うのか。彼の手はゴツゴツしているし、当たる刺激は硬いほうがいいのだろうか。

 

(やっばぁ、想像してきたら……なんか……♡)

 

 少し呼吸が浅くなってきた。もしかして、興奮している? 何に? もしかして、彼の手に?

 まさか、ありえない。彼が求めてきたなら話は別だが、今は男性保護官と保護対象の関係。守るべき相手に性的欲求を持つなど、あってはならない。どんな気持ちであろうと、線引きは大事だ。

 

(けど……実際保護官とその男性の結婚って多いよねー……♡)

 

 吊り橋効果、という奴だろうか。ストレス状態に陥った際、鼓動の上昇を異性がいるから、と錯覚してしまうそれは、一種のおとぎ話として女性たちの間で語り継がれてきた。だからこそ勤務時間の長く、キツい職業である男性保護官が人気の職業であるかの説明がつく。

 

(ん……♡ もし、彼と結婚できるなら……♡)

 

 そういう願望がないわけでは、ない。

 認めよう、アタシは彼のことが好きだ。

 自分でもチョロい女だとつくづく思う、あって僅か一週間、ほんの少しの間だけ一緒にいただけなのに、心は彼を求めてやまない。

 言葉や沈黙で取り繕うことがなければ、どれだけ楽で、どれだけ苦しいだろう。

 私には、男性保護官である私には、気持ちを伝えることができない。伝えてしまえば、元の関係には二度と戻れないから。

 

(うう……♡ すき♡ すきっ♡)

 

 だからこの気持ちは、こうやって一人で発散させるしかない。疲れ果てるまで体を弾ませて、ただひたすら眠りの時を待つ。

 もうそろそろ寝なくては。睡眠時間が足りないと、きっと彼に迷惑をかけてしまう。

 でも、それでも。この恋する気持ちは、捨てていたくはないのです。

 

(部屋着で会って♡ もてなしてくれて♡ 守ってなんて言われて♡ 無警戒に部屋まで渡して♡ 美味しい料理作ってくれて♡ エッチな匂い撒き散らしながら♡ んうっ♡)

 

 無意識に股間を押さえた腕を擦り付ける。もはや性的欲求を持っていないなど言えるはずもないほどに乱れきったアタシは、彼の名前を何度も唱えた。

 今日の昼頃、彼が見せた雄の片鱗。

 大学病院内にある個室から出てきた彼は、私の大好きなもう一つの匂いを携えて、隣を歩いてくれた。

 

(んっ♡ すごすぎるってぇっ♡ あんな量のせーえき♡ 考えたこともない♡ 絶対孕ませるためのせーし♡ おなかたぷたぷになるまで注がれて♡ 卵子犯されちゃうんだぁっ♡)

 

 股間を押さえてきた腕はいつのまにかショーツの中にまで進んでいって、湿った秘奥をカリカリ♡ カリカリ♡とくすぐる。

 

(彼は年上って言ってたけどぉっ♡ 誰なんだろ……っ♡ アタシかな……♡ なんて……♡ ……アタシだったらいいなぁっ……♡)

 

 叶いもしない夢想に耽りながら、ショーツの中に伸ばした手はより激しく奥を刺激する。

 普段誰かを思いながら自分を慰めることなんてなかった。人肌恋しい夜といっても、養成機関での毎日は激務だ。明日への疲労は残せないし、遅刻した場合重い罰則が下ってしまう。

 だから、絶頂に達するのも最低限。奥の部分が少し揺らされたぐらいで、手を伸ばすのをやめてしまう。

 

(んあっ♡ 切ない♡ 苦しいよおっ♡ 一番気持ちいいの欲しいのにぃ♡)

 

 イキたくてもイケないもどかしい感覚に、身を捩ってしまう。布団のシーツは既に汗が染みており、若干の不快感がさらにもどかしさを際立たせた。

 夜もかなりふけてきた。色々な焦りが湧き立つ中、神経もかなり尖っていた。ことん、と一つ物音が立ったとしたら、すぐにそちらを振り向いて何があるかを確認する。

 

(あ……♡ あの人のパーカーだぁっ♡)

 

 室内干しをしていた男のパーカーが、不安定な干し方のせいで、床に落ちていた。

 戻してあげなければ、そう思ってパーカーを拾い上げると、彼の匂いが鼻腔を貫いた。

 

(あっ♡ あっ♡ すご♡ 射精してもう何時間も経つのに、まだあの湿った匂いがする♡ もしかしてパーカー汚しちゃったのかな♡ だといいなぁ♡)

 

 射精した時に精子が飛び散ってしまったのであれば、きっとどこかが湿っているか、染みになっているだろう。

 アタシは夢中でパーカーに鼻を埋めながら、ひたすら匂いの発生源を探す。彼に見られたら社会的に死ぬのは確定しているが、それでもこの欲求は抑えきれなかった。

 ポケットの中に手を入れると、何か硬いものが手に当たる。何か予感がしたものだから、手を弄ってそれを引き抜いてみた。

 

(メモ帳……? あ、でもこの染み……♡ まさか服じゃなくてメモ帳にかけちゃうとはねぇ♡)

 

 もしかして、彼はこれをオカズにオナニーしていたのだろうか。

 彼が求めた年上の女性。それを知ることができたら、きっと彼の理想に一歩近づける。

 どんなタイプだろうか、彼は思いやりのある性格だから、同じような穏やかな子が好きなのだろうか。

 それとも刺激を求めて、苛烈で活発な不良みたいな子に興味があったりするのだろうか。

 アタシはそのどちらでもないので、いわゆる大穴に位置するのだろうか。オシャレにだって気を使ってるし、のびのびとした姿を見せている。時折彼に甘えすぎてしまうこともあるが、嫌がってないようだからきっと大丈夫なはずだろう。

 

(それじゃ♡ 失礼しまぁす♡)

 

 メモ帳をそっと開いて、中身を確認する。染みになった精液の跡が、パリパリと音を立てて剥がれていく。

 中身は普通の買い物メモがほとんどだが、時折変な書き込みが挟まっているのが目についた。

 

(……♡ ふふっ♡ この絵、かわい……♡ 色々あるけど、なんか変なことも書いてあるね……♡ 『男女比1:1』……♡ そんな世界があったら、どんなえっちなことが起きるんだろ♡)

 

 何か創作のアイディアだろうか、略語を使ってあえて他人に読まれるのを避けるかのようなメモは、一枚、また一枚とめくっていくと、かなりの数があった。

 メモ帳の最後の方、何故か折り目がついたそれは、何やら小説のようだった。もしかして、彼はこのためにいくつかアイディアを書き込んでいたのだろうか。

 題名はないし、改行も最低限で読むのには少し詰まりすぎだ。それでも興味が尽きなかったアタシは、メモ帳に書かれた小説を読み進める。

 

(あっ♡ あっ♡ あああっ♡ うそっ♡ うそだっ♡ 出てるっ♡ 私出てるっ♡ 彼の前でおっぱい見せて♡ おちんちんイライラさせちゃってるっ♡♡♡ 淫らに責め抜いて♡ 相互オナニー♡ すごいっ♡ こんなの♡ 我慢できないよおっ♡♡♡)

「んっ♡ はぁっ♡ くっ♡ くふぅぅぅん♡♡♡」

 

 タガが外れ、ついにアタシは嬌声を上げる。

 絶頂。意識が遠くなり、膝をついてしまうほどの最奥。

 まるで死んでしまうのではないかと錯覚するくらいには、目がチカチカしたし、背筋が伸びた。

 かくんと糸が切れたように、全身から力が抜ける。

 ああ、幸せだ。自分はなんで幸福なのだろう。

 今までの行いが全て報われた気分だ、これ以上の喜びは、生まれてきてから初めてだ。

 びくん♡ びくん♡ と体をびくつかせながら、彼のパーカーを抱きしめて、彼の匂いを吸い込む。落ち着く匂いだ。

 気が落ち着いたのは、それからずっと後のことだ。体の痙攣が治った後も、アタシは彼のパーカーを抱き締めるのをやめなかった。

 

「んっ♡ ふっくっ♡ ふうっ♡ くふっ♡」

 

 一度外れてしまったタガが戻るのは難しく、その後もずっと余韻の気持ちよさに喘ぎ声をあげていた。彼が訝しんでこの部屋に入ってこなかったのは、とても幸運だった。

 それから、やっとパーカーから顔を離して、上がり切った息を整える。

 自分がショーツの中に手を入れていたのに気付くのは、そのもっと後だ。

 

「ふー♡ ふー♡」

 

 汗まみれで体はびしょ濡れ、呼吸も浅いし、鼓動もかなり早い。これではとても寝られる状態ではない。

 

(♡……お風呂入ろう)

 

 ここで果てていてもしょうがないので、アタシは力の抜けた体を無理矢理立たせて、風呂場に向かう。

 脱衣所に着いて服を脱ぐくらいには、上がっていた息も落ち着いていた。

 脱ぎにくい服をようやく脱いで、アタシは冷たいシャワーを浴びる。火照った体には、これが一番の清涼剤でもあった。

 

(まさか両想いだったなんて……♡)

 

 これは夢なのかもしれない。まさか保護官として初めて会った彼がアタシに好意を抱いていて、精子提供の時に私を思い浮かべながらオナニーをしていたなんて。レディースコミックでも見ない展開だ。

 途端に顔が赤くなっていく。冷たいシャワーを浴びても顔の火照りは治らないのは自分自身わかっていたので、仕方なく湯船に入ることにした。

 

(ドッキリとかでもないよね……?)

 

 どうにも現実感のない話だから、何度も何度もこの状況を疑ってしまう。もしこれがドッキリだとしたら、偽の文章に踊らされて絶頂した可哀想な女ということになってしまう。

 とはいえ、こんなぽっと出の女を騙す必要性なんてどこにもない。

 口元まで湯に浸かって、いろいろなことを考える。

 

(ん……これからどうしよう。メモ帳について聞かなきゃなぁ、気まずい……)

 

 男性保護官とはいえ、男性のプライベートな持ち物を勝手に覗き見るのは、同性間のものより非難されやすい。「洗濯しようとしたらたまたま出てきて、読んでしまった」と、脚色と理論武装をしっかり固めて、アタシは彼に聞いてみることを決意する。例えどんな反応が返ってきたって問題ない、あの人は優しい人だ、その優しさにつけ込むようで悪いが、答えを知らなくちゃならないから。

 

(両想いなら、その時は……♡)

 

 ぶくぶくと泡を立てて妄想する。彼とアタシが愛し合う未来。アタシは彼の子供を孕んで、沢山の妻たちの間の一人になる。

 独占欲がないわけではないが、それよりも彼に尽くしたい欲求の方が強い。他の女を孕ませたとしても、難なくやっていける予感はしている。

 

(ふふっ♡ だーりん♡ 洋奈は待ってるから♡ いつか、「男性保護官とその男性」という関係を超えられる日を♡)




登場人物の口調が安定しないため、結構四苦八苦しています。
次話から登場する新キャラも口調が安定しないので、わかりづらい所があるかもしれませんのでご注意ください。

登場済みキャラで誰が好き?

  • 主人公
  • 白川洋奈
  • 薔薇峰凛花
  • 犬黒晴乃
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