起きたらなんか男女比がやばい 作:ロースト大将軍
そしてこのキャラたちもまた……
この世界での男女比は、1:10。割合に直すと、0.0909……って感じで、百分率的には9%だ。他のエロ小説なんか見るともっとぶっ飛んだ値で、100人に1人とか、10000人に1人とか希少価値がインフレする。
単純計算で、子孫繁栄のために最適解とされる男女のつがいの内部比率も、この世界では1:10。夫1人に妻10人だ。
さて、このぶっ飛んだ世界では、治安の維持は最重要課題の一つとして、国会でもよく議論されている。
戦いは数だよ兄貴ィ! ってどっかの宇宙のお偉いさんが言っていた通り、例え生物学的に筋肉のつきやすい男性であっても、女性10人には勝てるはずがない。司法機関が潰れ、アナーキズムがこの世を席巻すれば、男性の命など風前の灯火だ。
数の暴力に対抗するため、男性保護法時代の文化がずっと残っているのか、男には武器の携行が許可されている。テーザーガンをはじめ、警棒、電気バトン、スタンガンに果てにはライオットガン。
過剰防衛もまかり通るくらいには、男性の権利は保護された世界なのだ。
たかが9%、されど9%。このわずかな割合を無くしてしまえば、世界は一気に均衡を失ってしまう。
未だ人権意識の低い国では、男性のことを「異性資源」なんて呼ぶところも存在する。男性人権保護団体が聞いたら怒りに顔を染めるであろうそれは、まるで人間を人間として扱ってないなんて言われている。
さて、少し話はずれたが、俺がこの世界で記憶の混乱を起こしてから、8日目の出来事。何やら寝不足かつ挙動不審な洋奈が起きてきて、こちらを見てはモジモジしてるところを尻目に、俺はネットサーフィンを楽しんでいた。
「エアガン、違う。警棒、違う。トンファー、珍しいな、でも違う。催涙ガス? 化学兵器売るなし」
今世助成金で絶賛ヒキニート生活をしてきた元俺は、最低限の外出を除き、ほとんどの生活を室内で完結させていた。
物が欲しい時はAmazonとUberに頼り、積み上がった段ボールは家が建てれるほど。食費は大体社会保障で賄えるから、嗜好品と最低限の家具さえ買えれば問題なかった。
人畜無害だが、碌に役に立たない木偶の棒。大体そんな感じの評価を受けながら、俺は部屋の中にずっと引きこもってた。
さて、そんなわけで現在絶賛自衛手段なしのこの状況。テーザーガンのバッテリーは既に上がっており、心もとないおもちゃみたいな警棒がひとつ。いくら洋奈が守ってくれるとはいえ、強姦魔や脅迫犯に対して対抗手段の一つや二つ用意しておいて損はないだろう。
「お、病院からメール」
「っ!?」
うわっ、びっくりした。急に洋奈がびくつくものだから、危うく携帯を取りこぼしそうになった。一体何があったんだろうか。
調子の悪そうな洋奈に、エナドリかビタミン剤でも持ってこようかなんて考えながら、先日行った大学病院のメールを開く。タイトルは確かに精子提供についての診断結果となっており、少しのドキドキとワクワクを持ちながらスクロールをした。
総合評価は最高クラスのA++。量、濃度、運動率、正常精子形態率共に基準値を大幅に超えた、まさしく満点の精液だった。
「おお、なんか達成感あるな」
額縁かなんかに「我、精液評価A++ぞ?」って感じに飾りたくなる衝動を抑えながら、洋奈にも検査結果が帰ってきたという旨を伝える。何やら評価についても知りたがっていたようで、俺が堂々と最高ランクであることを自慢すると、放心したままトイレに行ってしまった。大丈夫かな、洋奈。
どうやら検査結果が高ければ高いほど支払われる謝礼金も多いらしく、精子提供で金を稼がなければならない一部の苦学生や債務者なんかは、部屋のグレードを下げてでも健康用品に金を投資しているらしい。やっぱりなんだかんだで男性側も大変なんだなあ。
「一、十、百……」
人工授精などが確立され医療レベルが向上し、性病を治療する手立ても、男性が貴重なこの世界では飛躍的に進歩している。不治の難病なんて言われているエイズも、数少ない男性を一人でも生かすために世界中で研究された結果、何例か治療例が報告されている。
そんなわけで、病気にも何にもかかっていない俺は病院、および国から支払われる謝礼金の桁数を数えて、一人にやけていた。
「これぐらいあれば、当分は豪遊できるな」
護身用のアレコレに加え、QoLを向上させるための家具類なんかを探しに、大型ショッピングモールにでも行こうか。確かバスで行けるあの場所には、男性向けの住まい探しグループ、Suumanの案内所みたいなのもあったはずだ。この際引っ越ししてもうちょい広い家に住んでみるのもありかもしれない。
「もしや継続的に精子提供し続ければ、一戸建ても夢じゃないか……?」
精子提供だけでブルジョワな生活を送ってきた人なんて記憶を探っても前例がないが、メールを見る限りそれも可能なくらい桁数がすごい。
政府からの謝礼金ということで、恐らく税金面での心配はないとは思うが、それでもそういう面に詳しい人に聞くのは大事だろう。
男女比の問題で、マイノリティーである男性に関する情報はかなり少ない。税金についてネットで調べれば何十万、何百万も記事がヒットするが、そのほとんどは女性向けだ。いわゆる「その道の専門家」レベルでないと正確な情報は手に入らない。
「やることは多いな……」
外に出る準備をしながら、最寄りのバス停と、運行時刻を調べる。ここは住宅地で田舎でもないし心配はいらないはずだが、念のためだ。どうやらこのままゆっくり歩いても、十分間に合う時間にバスが到着するようだ。
もちろん、男性に対する社会福祉制度の一環で、バス代無料、タクシー代一割なんてイカれた制度も存在する。安全面を考慮すればタクシーを使うべきだが、無料の誘惑には勝てなかった。
「んっ……♡ あれ? どっか行くの?」
「おお、ちょっと向こうのショッピングモールにな。洋奈も来るか?」
「……君って変なところで抜けてるよね。男性は基本外出は保護官と一緒じゃなきゃダメ。社会の常識だよ?」
ああ、またやってしまった。つい前の世界のノリで一人で外出しようとしちゃうんだよな。初日の時深夜にコンビニ行こうとした時は、大声で捲し立てられたっけ。
だとしたら、洋奈もついてくるのか。まあ、特に支障はないし、逆に心強い。いつも悪戯っぽく笑っているだけに見えても、各種武道の有段者だ。礼儀作法や素行を除けば、養成所でもかなりの腕前を持つ彼女がひとたび警棒でも握れば、勝てるものはそうはいない。
「ついてくよ。痴女られたら嫌でしょ?」
「ああ……俺が好んで触られると思うか?」
「……知らない」
ぷいっとそっぽを向いて、洋奈はそのまま外出用の上着に袖を通す。何かコミュニケーションを間違えたような気がする。やはりこの世界に馴染むには、もう少し時間がかかりそうだ。
お互い忘れ物がないか確認し合って、玄関のドアを開ける。バス停までは徒歩10分くらいか。あまり話すことはないが、何か話題がないか探ってみる。
「なあ、洋奈は趣味とかある?」
「んー、ゲームとか。ブレワイ、スプラ、たまにエペ。でもなんで?」
「俺の部屋って結構殺風景だろ? 何か趣味の一つでもあれば豊かになるのかなって。ギターの一つでも置いとけば風情が出るかもしれないけど、あいにく騒音とかが心配でさ」
記憶の中にある俺は、それはもう無趣味な人間だった。強いてあげるとするならば、読書か、ネットサーフィン程度だ。
最近までパソコンを持っていなかったってことは、ずっとスマホの通信量無制限プランで画面と睨めっこしていたわけだ。この体でキーボードを触った時は違和感がすごかった。
「昼間ジャンジャカ弾くくらいなら怒られなくない? ってかギター弾けんの?」
「触りくらいは。まだ上手く弾けないコードとかもあるし、素人に毛が生えた程度だけどな」
前の世界のとあるシンガーソングライターの曲が好きだったから、ネットで楽譜を探しては慣れない指さばきでかき鳴らしていたあの頃を思い出す。この世界ではあの曲は存在しなくて、代わりに女性シンガーがトレンドを席巻していた。
そういうわけだから、前の世界に未練がないわけでもない。新作ロボットアニメはまだ一話も見れていないし、あのラノベの結末も知らない。
この世界の娯楽作品は女性向けが多く、男性向けのニーズも一握りで発展の兆しがない。女児アニメ好きの友人が言うには、じきにトリコになるなんて言っていたけれど、まだまだ違和感が拭えなかった。
「ま、母親に急かされる結婚ってわけじゃないし? 焦らずいれば見つかるっしょ」
「確かにな。自然と見つけるものか……ひょっとして洋奈は急かされてるのか?」
「……あーあー知らなーい目を向けたくなーい。お見合いはまだしも提供結婚なんか絶対イヤ。声も知らない人の子なんか産みたくないし」
「……大変だな」
成人とはいえ、すぐに結婚相手を見つけろ、子供を産めなんて酷い話だ。この世界の女性はすぐ子供を迎えないと生き遅れなんて言われるから、少しでも男性と触れ合って恋愛結婚を狙おうと頑張っている。だがやはり程なくして、精子提供による受精、「提供結婚」という形で諦めることも多い。前の世界と比べてとてつもなくハードモードだ。
「ほんとだよー……ていうか、さ。昨日のことなんだけど、メモ帳……」
「お、バス来たぞ」
「……あーね? また後で話すわ」
休日だからか、思ったより人がごった返していて、乗りづらい。バスの乗車人数ギリギリのところで、俺たちはICカードを通した。
やはりというか、バス車内も女性だらけだ。物珍しいのか、一斉にこちらを見ている。
とはいえ、狼に囲まれた羊というよりは、「お、フェレットがバスに乗ってる。珍しい、動物病院にでも行くのかな?」って目線だ。奇異の視線に晒されるのは慣れないが、直接性欲を向けられるよりはマシだろう。
「ひゃー混んでるね」
「あそこは駅から遠いのにバカでかいからな、バスぐらいしか交通手段がない」
わかりやすく説明すると、コストコとIKEAとアウトレットをコンクリートミキサーにかけて盛った総合大型モールだろうか。敷地面積東京ドーム数個分のこの場所は、わざわざ地域外からも沢山の人が来る。
「うー、ちょっと酔ってきたかも……」
「大丈夫か? なんだったら目瞑っていてもいいぞ」
「でも……」
「いいから、休んでおいた方がいい。この後歩き回るかもしれないからな」
洋奈を手すりに寄りかからせて、自分は棒立ち状態になる。揺れるバス車内で掴める場所がないのは大変だが、踏ん張ればなんとかなるだろう。
見えないように内股になって、太ももと肩を中心に力を入れる。空手で言うところのサンチンだ。某虎殺しになぞらって腕を構えてもいいが、結構不審に見えるだろうからやらない。
「……!?」
ふと、何かが、いや何者かが俺の尻を触った。
俺が気のせいかと思っていると、さっきより確かな感触でさらに尻を触る。
間違いない、痴女だ。
本物の痴女の登場に、俺は少なからず感動した。男女逆転モノではありふれた存在だが、心のどこかでフィクションを感じていた。
洋奈は気づいていない。目を瞑っているのだから当たり前か。俺が気さくに話しているのを見て、保護官と見抜き、彼女が俺を意識の外にしたのを確認して仕掛けてきた。これは相当の手練れだ。
(……とはいえ、おばさんか。手つきから察するに、常習犯のようだし、きっと何人かがこのおばさんの毒牙にかかってきたんだろうな。よし、この俺が天誅を下してやろう)
ちらっと俺がおばさんの顔を見ると、にやけた顔が見える。ロクに美容に気を使っていないようで、清潔感がない。エロ漫画によくある、汚じさんの逆転版だった。
さしずめ、俺は汚ばさんに痴女られるオスガキってところか。おばさんなんかに絶対負けないんだから!
おばさんには勝てなかったよエンドにならないためには、快楽に対抗する術が必要だ。某対魔忍なんかは3000倍の拷問を気合いで耐えていたりしたが、自分はなんの変哲もない青年。ここはオーソドックスに、親族の顔でも思い出すとしよう。
脳裏に映るのは、親族の宴会。叔父や叔母はもちろん、長らく会っていない従兄弟が出てきて、結婚したという報告に家族が湧く。
父親が「お前はいつなんだ?」なんてしょうもない話題をふっかけてきて、俺は困ったように笑いながら受け流す。
うっ、心が痛くなってきた。やはり好き好んでイヤなことを思い出すべきではない。
そうこうしている内に、おばさんは股の間に手を通し、俺のチンポに這わせていた手を、ズボンのチャックにまで伸ばしていた。ジジジ……と下げられていき、あわやパンツにまで手がふれんとした時。
かかったなアホが! サンダークロススプリットアタック!
「ふんっ!」
「なっ!?」
これを破った格闘者は誰一人としていない!
もともとサンチンのために太ももに入れた力を攻撃に転用し、はち切れんばかりの圧力で股の間に通した腕を締め上げる。
おばさんは慌てて手を引っ込めんとするが、時すでに遅し。バスのドアが開くと、先頭に立っていた女性が異常に気づいた。
「おい! 何やってんだよ!」
「助けてください! 触られました!」
黒いオーバーコートを着た赤毛の女性だ。ピアスに十字架が銀色に輝く中々気の強そうな彼女は、決定的証拠を目の当たりにして果敢にもおばさんをバスから降ろした。それに釣られて、俺と飛び起きた洋奈が降りる。
ひとまず、バスの運行を止めるわけにもいかないので、運転手さんに身振りで行ってもらうようにアピールする。どうやら察してくれたみたいで、バスは目的地であるショッピングモール方面へ向かっていった。
程なくして、2台のパトカーがバス停の少し先に止まって、何人もの警察官が出てきた。何やら物々しい雰囲気だ。
「ガミガミガミガミ!(訳:あなたは自分が何をしたのかわかっていますか?)」
「ガミガミガミッ!(訳:貴重な男性に対してなんてことをするんですか)」
二人の警察官が、ものすごい剣幕でおばさんに迫る。こわっ。おばさんに体を弄られてる時の方がストレス少ないかもしれん。
赤毛の人も洋奈も引いているが、もう片方の二人組はいつものことのように静観している。いわゆる飴と鞭ということだろうか。
そんなことを思っていると、一人の女性がこちらに手帳を見せてきた。大体153cmくらいだろうか。確かに、彼女が怒っても威圧感が足りないかもしれない。
「私は巡査部長の犬黒晴乃。男性の君には心が痛むだろうが、どうか事情を聴取願いたい。保護官の方と、取り押さえてくれた君にも」
「あっ、どうもありがとうございます。といっても、何から話せばいいやら……」
「……男性保護官の白川洋奈、です。彼の警護をしていたのですが、異常に気づけず、忸怩の至りです」
「……薔薇峰凛花。バス停のドアが開いて、異常に気づいた。あのおばさんは手を引っ込めようとしてたんだけど、この人は自分の体を使って抑え込んでた」
「体を……?」
赤毛の人、もとい薔薇峰さんは誤解されそうなことをキョロっと言った。洋奈と小柄な警察官である犬黒さんはそんなことあるのかなんて顔をしながら、こちらの方を見る。
サンダークロススプリットアタックによっておばさんを拘束していたのは事実だ。おかげで決定的証拠を掴むことができたし、おばさんを拘束することができた。俺はゆっくりと首肯する。
「……男性が勇気を持って取り押さえたのは、そう易々とできることじゃないな。覚悟がいる行動だったろう」
「ええ、まあ……」
犬黒さんからの予想外の褒められに、困惑しながらも言葉を受け取る。あまり褒められるのは慣れていないから、とてもむず痒い。
その後なんやかんやあって、詳しく事情を聴取された後、住所と連絡先を提出して、警察の方々からは解放された。おばさんはどうやら、あの怖い警官たちから署まで同行を迫られたらしく、パトカーに乗って行った。
洋奈は終始落ち込んでいた。保護官としての務めを果たせなかったのが悔しかったのか、ずっと黙り込んでいた。
痴漢の第一発見者こと赤毛の薔薇峰さんはとても親切で、事件の詳細を親身になって話してくれた。お陰でスムーズにことが運んだし、犬黒さんも彼女を評価していた。
被害者である俺は、後日アレコレやる必要があるなんて言われて、帰宅を促された。正直この後ショッピングモールに行く予定なんだが、どうしたものか。
「洋奈」
「っ……! 何かな……?」
「あんまり落ち込むなよ。目を瞑るよう促したのは俺だし、元はと言えばおばさんに全責任がある。誰も怪我がなくて良かった」
確かに痴女騒ぎには驚いたが、気を抜いていた自分も確かにあった。される方が悪いなんて露ほど思っちゃいないけど、警戒心が全くないのも考えものだ。
それに、相手が刃物類を持っていなかったのも運がいい。常習犯で警戒心が薄く、手を股の間に通すなんてポカをやらかしてくれたおかげで、容易に捕まえることができた。
「……ちょっとお手洗いにでも行ってくるよ。洋奈は薔薇峰さんのお礼にジュースでも買ってあげて。これカードね」
「……ん。扉の前で待ってる」
……さて、相手がおばさんとはいえ、結構ねちっこく触られたもんだから股間がむずむずする。ここは1発抜いて、すっきりしたまま戻ろうじゃないか。
今回登場した新キャラの薔薇峰凛花と犬黒晴乃ですが、ソーシャルゲーム「ラストオリジン」から実装済みキャラ「薔花」、未実装キャラ「ワーグ」を元ネタにしています。凛花あたりは気づいた人もいるかも。
今回も是非、キャラクターのイラストを照らし合わせて補完していただけると幸いです。
そろそろクロスオーバータグつけた方がいいのかなとは思いますが、どうなんでしょう……
登場済みキャラで誰が好き?
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主人公
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白川洋奈
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薔薇峰凛花
-
犬黒晴乃