※この作品はR-18です。

トリアージX~夢幻の剣客~   作:ハルカ

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話の都合上、戦闘回です


旧き飛城の終幕

飛城家を襲撃した日のことだ。長男である京児を捕獲したムゲンは、屋敷のより奥へと歩いていった。血糊で汚れた太刀を引きずれば、無駄に豪奢な装飾をされた床が削られていく。それは、ここの主に反逆を示すのと同義だ。向かってくる警備隊の弾丸を斬りはらい、一人、また一人と首を撥ねていけば、遂に目的の部屋に辿り着く。

 

「邪魔だなぁ……」

 

太刀を払い、鞘に納める。それは引き金を併せ持った機械仕掛けの鞘だった。ムゲンが構えを取ると、バチリと鞘から柄頭に至るまで電光が走る。引き金を引かれた瞬間に射出された太刀を宙でつかみ取ると、神速の域に達した剣閃が横薙ぎに振りぬかれた。

 

斬――!!!!

 

紫電をまとった斬撃が分厚い鉄の扉を両断すると、固く閉じられていた壁が崩れ落ちた。中にいたのは二つの人影。仮面で顔を隠した老人に、装飾華美な椅子に座った弱弱しい老人。ムゲンを見下ろして射抜くような眼光を向けている。

 

「……貴様、自分が何をしているのか、理解をしておるのか?」

 

座っていた老人が口を開いた。しわがれ掠れた声音には、焦りや恐怖を感じない。自分の縄張りなのだから当たり前だ。いつでもムゲンのことを排除できると思っているのだろう。この老人は、何時だってそうだった。何もかもが自分の思い通りになり、そうならないものを排除する。

 

「お変わりないようで安心しましたよ、飛城穣太郎。十三年前から、貴方は何一つ変わっていない」

 

鼻で笑ったムゲンに仮面の老人が殺気を飛ばす。そんなものをものともしない剣圧を纏いながら、落ち着いた様子で太刀を鞘に納めた。戦う意志がないと証明するためではない。自分の顔を覆う包帯を解くためだ。目の前にいる老人たちに、相対した襲撃者が誰なのかを知らしめるためだ。

 

「ッ! あ、貴方様はッ!」

 

仮面の老人が息を呑んだ。その顔に見覚えがあったからだ。火傷のあとが残り、成長したとは言え、見間違えようもない。

穣太郎もそれは同じだ。息子である京児よりも鋭い目付きに、獰猛な口元。自分の悪辣な部分を色濃く継いだ、自分の栄華のために抹殺した忌むべき存在。

 

「お久しぶりです、お父上。御壮健で何よりでございます」

 

思ってもいないであろう言葉をつらつらと吐く仕草は、憎き二人目の息子のものに他ならない。刃のように鋭い眼光に獣を思わせる獰猛な笑み。礼をする姿までが穣太郎の気分を悪くさせた。先程までの余裕な態度はどこへ消えたのか、高齢とは思えないほどの剣幕で怒鳴り声をあげる。

 

「どうして、貴様が生きている、誠児……!!」

 

椅子の手すりを握り締めて震える穣太郎を見たムゲン、誠児は口元を釣り上げた。これだ。これが見たかったのだ。慌てふためく哀れな老人を遥か下からゲラゲラと嘲笑う。彼が地獄から返り咲いた理由の一つとして、飛城穣太郎を絶望の淵に叩き落とすというものがあった。

だが所詮、理由の一つだ。存外面白くも無かったと溜息を吐き、態度を崩して嘲笑を放つ。

 

「銃で撃ち、剣で突き刺し、火をつけてもまだ足りなかったなぁ? あんたは火をつける前に俺の身体を切り刻んで、炭になるまで焼けるのを見届けるべきだったんだよ」

 

普通の人間ならば死んでいる行いをされても、誠児は生き残り、ムゲンとして甦った。それはひとえに、この土地の龍脈が彼を守ったからに他ならない。父よりも、兄よりも、誠児は幸運に愛された。武の才に恵まれた。知の力を授かった。

 

だからこそ、恐れを抱いた父兄は彼を抹殺しようと謀った。

 

だが誠児はここにいる。ムゲンとして現れ、飛城を滅ぼそうとしている。怒りと憎しみ。口惜しさと恐怖が混ざった瞳を向けると、ムゲンは鼻で笑いながら芝居がかった仕草で手を広げる。

 

「勘違いするなよ、俺は自分のものを取り返しに来ただけだ。飛城の権力と財力、御庭番に、四天衛鬼。まぁ、とりあえず全部だ」

 

欲望にまみれた言葉に、今度は穣太郎が鼻を鳴らした。そんなことが出来るわけもない。生きていたことには驚いた。飛城の兵隊を退け、ここまで辿り着いたことにも慄いた。だが、所詮はその程度だ。ムゲンが言った四天衛鬼を用いれば、話は済む。

 

「ふんっ、下らん。茶番はここまでだ。劔龍(つるぎ)!」

 

穣太郎の呼び掛けに答えるように、闇の中から新たな影が姿を現した。

 

それは、腰に刀を携え、鬼の仮面で顔を覆った背の高い女性だった。

 

身に纏っているのは、ボディラインのよく分かるピッチリとしたラバースーツ。胸元をザックリと開けて強調した、挑発的な格好だ。歩く度にユサユサと揺れる乳肉は、恐らくメートルを超えるだろう。

臀部にもいやらしく肉が乗っており、伸縮する生地を押し上げて主張していた。

それに比べて腰周りはホッソリと美しい括れを生み出している。

 

正に男の理想とするような体型だが、それと同時に彼女が纏う闘気は尋常ではないほど鋭く、重かった。

 

「殺れ、飛城に奴の席はない。再び地獄へと送り返してやるのだ」

 

クツクツと喉の奥で鳴るような穣太郎の笑い声を聞きながら、劔龍は刀に手をかける。距離は離れているが、彼女ならそれを一気に詰めてくることをムゲンは知っている。同じように太刀に手をかけて鯉口を切ると、劔龍が動いた。

 

ゾワリと大きく残像を生みながら居合を放ち、連なる二撃の刃がムゲンを襲う。太刀を抜き、横薙ぎに振るった刃で一撃目を弾き、二撃目の突きを斬り上げる。

二人の斬撃が火花を散らす。一秒の間に何度斬り結んだか傍観者たちには分からない。劔龍が振るう剛の剣をムゲンの変則的な太刀がいなし、ムゲンの放つ我流の刃が劔龍の柔の剣に受け流される。美しさすら感じる演武に御庭番の長はホウと息を吐く。

 

四天衛鬼において最強とされる劔龍とここまで斬り結べるものなど、飛城家どころか世界中を探してもそうはいないだろう。叶うことならば、この行く末を見届けたい。いつまでもこの剣戟に見惚れていたい。だが、長の願いが叶うことは無かった。所詮自分は飛城穣太郎の手足だ。主が望むのならば、美しい戦いに横やりを入れなければならない。

 

(ああ、ほんとうに、口惜しい……)

 

生まれる時代と場所が違えば誠児は、ムゲンはきっとこの世を動かす英傑の一人として名を馳せただろう。そんな可能性を幻視しながら、主を害するものを撃つように影に潜む部下へと指示を出す。

 

隙を突けという指示だが、劔龍という凶悪な相手を前にしてそんな隙を作るわけもない。袈裟に振り下ろされる刀を、鋸のような刃の太刀で弾く。重心は深く重い、剛の剣を防げる位置だ。脇に構えた太刀を横薙ぎに払えば、僅かに劔龍のスーツを掠め、ジッパーの部分に切れ込みを入れた。

 

「先手は、俺かな?」

 

ギラリとした笑みを向けたムゲンに、劔龍は何かを言うことは無い。仮面のせいで何を思っているのかも分からない。しかし刀を持ち直す仕草や、ブーツのつま先をトントンと鳴らす仕草から、何かを感じていることは分かった。

首をゆっくりと鳴らすと、谷間の間に沈んでいたジッパーを一気に降ろした。彼女の顔よりも大きな乳房が露わになり、ダプンっ♡ と音を立てながら大きく揺れる。臍下までが晒され、引き締まりながらも淫靡な体つきが見せつけられる。乳首と乳輪をニプレスで隠しているが、それが逆に淫らな魅力を引き立てていた。

 

刹那――

 

劔龍が乳肉を揺らしながら迫ってくる。今までとは比にならないほどの威圧感と速度に誰もが息を呑む。僅かに反応が遅れたムゲンの頬を突き出された剣先が掠め、緩く巻かれた包帯を裂いた。確実に首を落す意志の籠った動きに、流石の彼も恐怖を覚えたのだろう。久しく感じていなかったうすら寒さに、血が滴る傷を撫でて太刀を構えなおす。

 

連続して放たれる突きを袈裟斬りで迎え撃ち、相殺する。空気を震わせ、衝撃波が床や壁に亀裂を生んだ。解れた包帯が宙を揺蕩い、筋肉を唸らせ、勢いを殺すことなく逆袈裟の斬り上げを放った。劔龍の流麗な刀と、ムゲンの荒々しい太刀が擦れ合い、火花を散らした。

 

駆け上がってきた切っ先を、劔龍は上半身を反らせて回避。太刀を上空へと受け流すと、両の手に持ち替えた籠手面を狙う連撃が迫りくる。腕を斬り落とし、脳天を叩き割る。キレも膂力も、先ほどとは大違いだ。胸元の拘束が消えただけでここまで変わるのか。

 

紙一重の差で腕を退き、一撃目を避ける。繋がれる二撃目はなりふり構わず放たれた横薙ぎの太刀で迎え撃った。受け流すと言うにはあまりにも荒々しく、暴力的な太刀を後ろに傾け、劔龍からバランスを奪った。

 

二人の位置が逆転する。

 

ジリジリと距離を測る二人の剣士が残像を描きながら疾駆した。互いに殺意を抱き、殺気をまとって得物を振るっている。数秒の内に十何合もの剣戟が繰り広げられ、互いの身を削り合う。ムゲンの太刀が火花を散らし、劔龍の刃が銀閃を払う。

 

そして。

 

ギャリンッ、と鋼の擦れ合う音を鳴らしながら、二人が距離を取った。

 

劔龍は指先で柄を持つ、独特な構えを取る。それは、彼女の流派における最大の技だ。医療用のメスを持つような、張り詰めた空気から逃げられるものは誰もいない。

 

対してムゲンは、太刀を鞘へと納めて抜刀術の構えを取る。機械仕掛けの鞘が電子音を響かせ、紫電を纏いながら一瞬を見極める修羅は、殺意と闘気を纏いながら引き金に指を掛けた。

 

穣太郎は息を呑んだ。この一瞬で、ようやく邪魔者を排除することが出来ると。

 

長は不審に思った。なぜ部下たちはムゲンを撃ち殺さないのか。隙は無いが、劔龍の援護をすることは出来たはずだ。そうならないということは。思考が回転し、最悪の可能性を描く。

 

「狭霧流、奥義……!」

 

劔龍が動いた。必殺の斬撃。数世紀にわたって飛城を守ってきた絶対の刃。どんな外敵も、狭霧(・・)の一撃に耐えることなどできない。剣筋は見えない。見えたとしても防ぐことなどさせないという殺意がムゲンへと襲い掛かる。

 

だが、だとしても遅かった。鞘に備えられた引き金を引く。扉を斬り伏せたときよりも鋭く、まばゆい紫電が太刀へと流れ込み、射出された。音を置き去りにする抜刀が劔龍の奥義を弾き、勢いを殺さずに上段に振り下ろされる。

両断されたのは、彼女の美しく、一歩踏み込むたびに大きく揺れる乳房をもった肢体ではない。彼女の顔を隠していた悪趣味な仮面が、一刀のもとに両断され、床に崩れ落ちた。

 

「ようやく届いたぞ、耀子さん」

 

仮面がはがされた劔龍、狭霧耀子が妖艶な笑みを浮かべて刀を収める。納得したかのような、むしろこうなることを望んでいたかのような自然な動作に、椅子に座ったままの穣太郎は息を呑む。薄暗く照らされた淫靡な肢体の剣士は、穣太郎が知る中で何よりも美しかった。コツコツとブーツを鳴らしながらムゲンに歩み寄った彼女は、優しさと妖しさの混じった声を漏らしながら頬に出来た刀傷を撫でる。

 

「十年以上も待たせるなんて、キミも罪な男だね。誠児くん♡ ん、むぅ♡」

 

豊満な身体をこすり付けた耀子はムゲンへと口づけをする。黒いコートに包まれた胸板に、Nカップの乳肉が押し付けられ、淫らに形を変えた。腰をくねらせ、戦士ではなく雄に媚びる雌として振舞う彼女を、ムゲンは拒絶することなく受け入れ、舌を入れたキスをしながら見せつけられた乳肉を揉み上げる。

 

“むぎゅ♡ ぎゅむ♡ もにゅ♡ にゅぎゅ♡ くに♡ タプン♡ ぎゅむり♡“

 

「んぢゅ♡ ぢゅる♡ は、ぁん♡ ぢゅぱぁ♡ れろぉ♡ はぁ……♡ 久しぶりのベロキス♡ あの頃よりずっと上手くなってるわね♡ あん♡ だめ、よ♡ そんな、つよく揉んじゃ、ん♡」

 

穣太郎と長は、目の前で行われている行為に目を疑った。四天衛鬼としての彼女を、穣太郎は何よりも信頼、いや、信用していた。どんな外敵にも負けることは無い飛城の兵器。だが言い訳の余地もなく敗北し、それだけでなく女の顔をして擦り寄っているなど、あってはならないことだ。

 

「き、貴様、儂の衛鬼に、何をしたぁ!」

 

穣太郎が怒声を上げると、耀子と舌を絡めていたムゲンが鋭い眼光を向け、指を鳴らした。するとその周囲に複数の影が姿を現す。御庭番の忍びたちだ。その中には衛鬼である護龍の姿もある。全員がムゲンに傅いている。それはまるで、彼こそが主であるかのような光景だ。

 

「なにって、見ての通りだが、その前に一つ聞いてやる」

 

手招きをして護龍を抱き寄せると、耀子ほどではないが雌としての魅力に富んだ乳肉を鷲掴みにして喘ぎ声を出させる。粗暴ながらも、女を感じさせるのに慣れた手つきは、両脇にいる飛城の鬼を雌へと堕とし、甘い快楽を与えていた。

ムゲンが嗤う。愚かな老人たちを。嘲笑う。

 

「どうして衛鬼や御庭番が、俺のモノになってないと思ったんだ?」

 

衝撃を受けるには充分な言葉。歯噛みし、怒りを顕にするには充分すぎるほどの事実。長は唖然として動くことが出来なかった。いつから、いや、どこまでムゲンは飛城家を掌握しているのだ。誰も気が付かなかった。手遅れになるこの瞬間まで、侵略されている気配すらも感じなかった。

 

「はぁ……♡ ん♡ もう、だめよ誠児くん♡ あんな、粗チンで、勃起もできない老害に♡ あ♡ 刺激的、すぎるでしょ♡ ひぁ♡」

 

「あん♡ む、ムゲンさま♡ そろそろ、制圧が、んふぅ♡ 完了、いたします♡ 動くなら、ふ、ん♡ 今が、よろしいかと、お゛♡」

 

ムゲンの指先が耀子の腹筋を通り、ラバースーツに滑り込んで秘部を弄る。くちゅり♡ と音を立てながら膣穴を濡らしていく。護龍の乳肉を嬲り、硬くなっていく乳首を指先で弾けば、喘ぎ声を吐き出しながら腰をくねらせる。

甘ったるい雌の臭いが二人から漂う。その瞳に映っているのは真なる主の姿のみ。穣太郎も、長も、有象無象の類でしかないのだ。

 

「言っただろう? 俺は、自分のものを取り返しに来ただけだってな」

 

それが勝利宣言だった。

 

もはや抗う術はない。最上位戦力も、最大の軍勢も、何もかもが奪われた。あとはただ、屠られる瞬間を待つだけ。

 

こうしてこの日、旧い飛城家は崩壊した。

 

後日発表されたのは、海外留学から帰ってきた次男が、家督を受け継ぐというニュースのみ。

 

何が起きたのか、誰が亡くなったのか。それは何一つとして語られなかった。

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