「ほら、入って」
「ん、お邪魔します」
大刀石花に肩を貸したまま、私は自宅に帰った。とりあえず安静に出来る場所で休ませた方がいいよね。
ソファでもあれば良かったんだけど、一人暮らしの部屋にそんなものあるわけないのでベッドに寝かせることにした。
おでこに手を当てると、少しだけ熱があるようにも感じた。
「ここでゆっくりしていってよ」
「うん、そうさせてもらう」
ベッドに大刀石花を寝かせると、コップに水を入れてタオルと一緒にベッドの近くに置く。
見た感じ熱っぽいけど、タレンテッドキーの副作用となると対処法が普通とは限らない。何もせずゆっくりさせた方がいいだろう。
横たわってからすぐに大刀石花は寝てしまった。体育終わってすぐ下校だったし疲れてるのだろう。
大刀石花が寝ている間、特にやることもないので私は床に座ってスマホを眺めていた。
一人暮らし用の部屋は狭く、隣を見れば目の前に大刀石花の寝顔がある。
多少は体調が良くなったのか、頰に赤みが戻ってきた。今では心地よさそうに寝ている。
ここ数日一緒にいるようになって、私の中で大刀石花がどんな人間なのか、大体イメージが固まりつつある。
普段は気怠そうにしていて、ちょっと歳上のようにも感じるけど、今こうして私の目の前で寝ている大刀石花はあどけない少女のようだ。
そういえば、こんな風にじっくりと大刀石花の顔を見るのは初めてな気がする。
インドアな彼女らしい色白の肌、長いまつ毛、滑らかそうな髪。一度見てしまうと、不思議と目が惹きつけられる。
「って………」
私は我に帰り首を振った。
何見惚れてるんだか。それに寝ているとはいえ、人の顔をジロジロ見るのは失礼だろう。
そう思っても小さな寝息を立てる大刀石花を、私はしばらくの間眺める。
すると大刀石花の瞼がピクッと動いてゆっくりと開かれる。
「んっ………んん………」
「あっ、大刀石花」
「海金砂?………私、どれくらい寝てた?」
「一時間くらいかな」
「そっか。ふわあぁ〜、よく寝たぁ。気分も良くなったし、もう大丈夫かな」
大刀石花は身体を起こすと、欠伸をして大きく伸びをした。まだちょっと微睡んでいるのか、目がとろんと垂れている。
「うわ、結構汗かいちゃったなぁ」
「あ、タオルそこに置いておいたよ」
「おぉ、気がきくねぇ」
大刀石花はタオルを手に取ると、制服のリボンを解いた。ボタンを外して制服を脱ぎ始める。
「ちょ、ちょっと大刀石花!」
私は叫ぶと慌てて後ろを向いた。
「ん?どうかした?」
「いや、その………一応、私もいるわけだし、いきなり脱ぐのは………」
「え?別に海金砂なら大丈夫じゃない?」
「いや、それでもさ………」
いくら女子同士とはいえ、急に肌を見せられたらそれなりに慌ててしまう。その辺りは個人差があるんだろうけど。
「え?あぁ、そうなの?それじゃあ、ちょっとの間向こう向いててくれるかな?」
「う、うん」
私はそのまま大刀石花から目を逸らして固まっていた。背後から衣擦れの音が聞こえてくる。
なんだかここにいたらいけない気がしてきたが、かと言ってここで恥ずかしがって離れるのも変な意味に捉えられそうなので、私はその場にただ座っていた。
「あっ、海金砂。ちょっといい?」
「ど、どうしたの?」
しばらくしてから大刀石花が後ろから声をかけてきた。私は振り向かずに尋ねた。
「私背中まで手届かないんだよね。悪いんだけど、そこだけ拭いてくれないかな?」
「え、あ、いいけど………」
自分の意思で、というより流されるようにして私は大刀石花からタオルを受け取った。
あれ?これ了承して良かったのかな?
いや、女子同士だし特に問題は無い、はずだ。でもそんなに深い仲でも無いのにこういうことは………って、何を意識してるんだ私は。
ダメだ、さっき襲われたせいかまともに頭が働かない。あんまり深く考えると迷走しそうだ。
大刀石花の背中を拭く、ただそれだけなんだし、他は考えないようにしよう。
私は小さく息を吐いてから振り返りベッドに座った。
既に大刀石花は上半身の服を脱いでいて、白い背中が剥き出しになっている。
綺麗………
一瞬頭の中によぎった言葉に私は驚いた。
わ、私は何を考えているのだろう。今日の私は色々と変だ。
ベッドの上には大刀石花のシャツとリボン、そして水色のブラが置いてある。
また変な考えがよぎる前に終わらせてしまおう。
「それじゃ、拭くね」
「うん、お願い」
私はタオルで大刀石花の背中を拭き始めた。
強過ぎず弱過ぎず、力を加減しながら丁寧に拭いていく。
「これくらいで、どうかな?」
「うん、ちょうどいいよ。何か悪いね、何から何までお世話になっちゃって」
「ううん。大刀石花に少しでもお返しが出来たなら、それでいいよ」
これまで助けてもらったばかりだったわけだし、こうやって少しでも自分の出来ることで恩返しがしたい。
「海金砂は本当に真面目だねぇ。気にしなくてもいいのに」
「いや、まぁ………一応、危険なことしてもらったからさ。何もしないのは、不公平だよ」
「不公平、ねぇ………」
大刀石花は何かを考えるように少しだけ私から目を逸らした。そして私をチラッと見てから微笑んだ。
「それならさ、一つだけお願いしていい?」
「え?まぁ、私に出来ることなら」
何かするとは言ったが、まさか大刀石花からお願いするとは予想していなかったので、私は首を傾げた。
「だったら、ちょっと失礼して」
そう言って大刀石花はこちらを振り返ると私の腕を掴み、自分の方へと引っ張った。
「ひゃっ⁉︎」
予想外の行動に、私はバランスを崩して前に倒れ込んだ。
大刀石花にぶつかるかと思ったが、彼女は私を上手いこと避けて、私はそのままベッドへと身を沈める。
気がつけば、私は大刀石花によってベッドに押し倒されていた。
「えっ?た、大刀石花?」
状況に頭が追いつかず、私は覆い被さってきた大刀石花を見上げた。彼女の長い髪が垂れて私の頰を撫でる。
「うわぁ、実際見てみると結構すごい光景だね」
大刀石花が私を見下ろして目を細めた。
「あの、何してるの?」
私の間近に迫った大刀石花の顔が少しだけ赤くなっている。
まさか、まだ、熱があるの?熱に浮かされているのかな。
「ん?ちょっと身体温めたいから、協力してもらおうと思って」
「ッ⁉︎」
混乱している私に大刀石花は身体を預けてきた。抱き合うような体勢になり、大刀石花の温もりと感触が伝わってくる。
じんわりと広がる体温に私の心臓が跳ね上がった。
「海金砂はあったかいねぇ。もうちょっとこうしてていい?」
「あ、う、うん………」
いや、いいわけがない。色々おかしい。
しかし混乱しているせいか、はたまた心地よい温もりのせいか、私は頷いてしまった。
「よかった。それじゃ、もうちょっとね」
大刀石花が私を抱きしめる力を強めた。決して痛くはないが、強い抱擁に胸が締めつけられる。
動こうと思えば動けるのに、身体が硬直して動かない。喉が渇き息苦しさを感じて、息が段々と荒くなっていく。
「ん〜、気持ちいい………」
「そ、そっか………よかった」
上半身裸の同級生に抱きつかれているという状況を客観的には理解しているものの、それじゃあ自分がどうすればいいのかが分からない。
普段とは違い子猫のように甘えてくる大刀石花は、私に抱きついたまま離れない。
むしろより私に絡み付こうと、背中にまで腕を回して、私の首筋に顔を埋めた。
大刀石花の唇が首筋に触れて、思わず声が出てしまう。
「んっ!」
自分でも知らないような声が出て、私は慌てて口を塞いだ。
しかし私の声をちゃんと聞いていた大刀石花は、顔を上げて微笑む。
「へぇ、海金砂って結構可愛い声出るんだね」
一応襲われてるような形ではあるものの、大刀石花のイタズラっぽい笑みに、不思議と嫌悪感は感じはしなかった。
とはいえ混乱と戸惑いはあって、この状況を素直に受け止められるわけでは無い。
「もっと………その声聞きたいな」
「え、あ、いや、大刀石花………!」
けど大刀石花はそんな私にさらに追い討ちをかけてきた。
再び首筋に唇を触れさせながら、抱きしめていた手を蠢かせて身体を撫でてくる。
「んっ、あっ!た、大刀石花、何して、んんっ!」
ここまで人に身体を触られるのは久しぶりだ。多少の危機感もありながら、心地よい感覚に身体が痺れる。
いつも暴力を振るわれる時とは違う。優しくも執拗に撫で回されて、身体の力がすぐに抜けていく。
こうなってしまってはもう抵抗できない。私はただされるがままになっていった。
「はぁ、んっ!くっ、あぁ、はぁっ!」
大刀石花が触れるたびに背筋が震えて、抑えようとしても声が出てしまう。
すると甘えてくる大刀石花は私の耳元で優しく囁いた。
「ねぇ………海金砂も温まろうよ」
プツ
耳元に吐息混じりの声が響いてくると同時に、首元でリボンの外れる音がした。
私のリボンを外した大刀石花は、さらにシャツのボタンも外していく。
温まり出していた身体が若干冷めて、私は冷静さを取り戻した。
「た、大刀石花⁉︎も、もうダメ………ッ!」
さすがにこれ以上を許容するわけにはいかない。熱に浮かされてとかの言い訳で済まなくなる。
大刀石花を引き剥がそうとするが、そんな事お構いなしに大刀石花は手を止めない。
「えぇ………ダメ?」
私が肩を押さえると、大刀石花は少しだけむくれたような表情で見つめてくる。
普段見せない可愛らしい顔に私は言葉が詰まった。
「もうちょっとだけ、ね?」
そう言って再び私の身体に腕を絡めてくる。
私は大刀石花を止められず、大刀石花は私の制服のボタンを外していく。
あっという間にボタンを全て外されて、制服がはだけて下着が露わになった。
こんな姿………誰かに見せるのは初めてだ。
私、何やってるんだろう。下着姿を見られて恥ずかしいのに、何故か大刀石花に身を任せようとしてる。我ながらどうかしてるな。
けど………
私は大刀石花の姿を見上げた。
さっきまで背を向けていたから隠されていたけど、こうして向かい合ったことによって大刀石花の胸が見えていた。
私よりも少しだけ大きくて、膨らみの先は赤い突起がその存在を主張している。
私は大刀石花の肩を押し返そうとした手の力を緩めた。それを見て、大刀石花は嬉しそうに笑った。
「それじゃ、温まろうか」
こうして私は、出会って数週間の友達と身体を重ねた。
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