「んっ……、ふむぅ……」
静かで、穏やかな。それでいて、熱い想いの込められた口付け。
「んっちゅ……っ、あ、ふうっ……」
酸いも、甘いも、内包された、愛情籠もる口付けは、まるで終端などという言葉が見合わぬよう。
幼い少年と、その少年と抱き合う女の間で、止まることなく繰り返されていた。
「んっ、んん……っ、」
抱いて欲しい――そう、コープルに告げていた筈のイシュタルが。幼くも強く、そして強くも弱き、純粋なる少年コープルに抱いた愛おしいという気持ちを伝え。
コープルは彼女のその愛に必死で応えながら、重ねるだけでは終わらないそれは続いていた。
男と女としての、最も深き交合へと至らぬままに。
「はっ、んむ…っ」
互いの身体を抱き締め続く。
「ちゅっ…。ちゅる…っ、あむっ」
コープルに抱いて貰いたいのではないのか。
抱かれたいのではないのか。
掠め過ぎる思いに、されどイシュタルは先を促すことなく。
抱くという次のステージへと進まされないコープルは、ただただされるがままで。
やがて体位と身体を入れ替えるように、ベッドへと身体を横たえるべきはずのイシュタルは、もう確かめるまでもない愛情を交わし合いつつも、先までの態勢とは反対に、コープルの側を寝かせるよう誘導していた。
「ちゅっ、ちゅ…っ」
なにも分からない少年。
分からないから泣いた少年。
経験のない自身。
ないから急いたのかも知れない自分。
ならばそう、もう少しだけこの純粋なる少年を愛でてみよう。
この少年に甘えて貰いながらも己を愛して貰おう。
イシュタルの偽らざる思いであった。
元より想いを交わして愛し合う事を決めた身だ。
お礼だけのつもりが。
ただ助け、助けられた。そんな間柄であったろう筈が。
このほんの僅かな語らいの中で愛情へと昇華してしまった。
自身とコープルの気持ちをイシュタルは振り返る。
ユリウスを愛していたその残滓を抱え持っていたというのにこの有り方を鑑み、自身はこれほどまでに軽い女であったのか――と、僅かばかりそう考えるも、しかしそれを直ぐさま否定し、彼女は頭を振った。
もしも肯定してしまえば、そんな軽い女を愛してくれている純真なコープルに申し訳が立たない気分になったが為に。
だが、それその事自体はこうも考えられよう、人の出逢いとは、その時その時の、刹那の邂逅から始まる。
人と人が愛の火を灯すのもまた、その一瞬の出逢いにより成される事が有るのかも知れないと。
彼女の眼前の少年は確かに幼さを残す――否、幼げな少年その物である。
が、同じくしてひとりの男でもあるのだ。そして自身は女だ。
男と女が出逢ったときに、何かしら運命線の変動が起こりえるのだとすれば、それこそが愛という名の感情の発露なのではなかろうか?
事実として、イシュタルという女性は、身持ちの堅い女であった。
彼女は最早自身の知る幼き日のユリウスではないと理解しながらも、暗黒神となった彼の皇子の傍らより離れなかったのだ。
それ程までに一途であり、一途であるが故に愛していてはならない存在へと成り果ててしまったユリウス=ロプトウスの呪縛に縛られ続けた。
しかし、そのユリウスへの思慕もまた、彼の暗黒の皇子がまだ本当の少年であった幼き日に刹那の出逢いを持ち、その場で落ちた恋である。紡いできた時間もまた当然としてあれども。
恋は一瞬であり刹那に落ちる。
たとえ道ならぬ恋であろうとも。
ユリウスが、呪われた皇子と成ってもなお、彼女は思い続け、誤りの道と知りながらも、彼女は今までを歩いてきた。
それだけの一途さを誇る女性、それがイシュタルという女なのだ。
そして時は移り行き、彼の皇子を死に至らしめ、彼の皇子の姿をした存在より戦場で散る事で決別するつもりであったイシュタルは、その先のこの場所で、再びの刹那となる邂逅を経て、漸く長き呪縛より解き放たれた。
呪縛となり彼女を苦しめていたユリウスへの思慕を、この幼き少年コープルに断ち切られたことで、そう、今の新しい道が彼女に開けたのだ。
そうして彼女は幼き頃のあの日のように、その心を射止められるに至った。
奇しくも、その相手たるコープルと共に、互いに互いの心を重ね合わせるように、心と心を射止め合う形で。
だから。
そうであるからこそ。
もっと愛して、そして愛されて、互いに刻を懸ければいい。
想いを深く共にする事に、懸ける時間の限りなど存在しはしないのだから。
お互いの、この一瞬の恋に滾る感情を交わり合わせれば、きっとそれは真なる強き結びつきへと昇華し行く。
恋人として。
愛し合う者同士として。
イシュタルはそう考えながら、想いのままに身体を入れ替え、少年をベッドへと押し倒していた。
「ん……」
離れる唇。紅い髪留めで頭の右上で一つ括りに纏められた、青銀色をしたイシュタルの長い髪の毛の束が、滝の如く流れ落ち、彼女の眼下にある少年の左頬をさらりと擽り、触れた。
「ふ、う……」
唇と唇を繋ぐのは一筋の銀糸。唾液が混ざり合った口付けの残滓。
つー、と長く伸びゆく唾液は、彼女と少年の唾が撹拌された、愛の証の一つだった。
それは上方に存在する物が下方へと落ち行く様を描くように。
或いは、上流より下流へと流れゆく川の流れのように。
ただ今の有り様の赴くがままに、王女の唇より下方へ落ちていき、幼き神官の少年の唇へと入っていく。
「ハァ、ハァ、……ん」
開かれた唇。漏れ出す熱い吐息。その中に落ちていく唾液。
つつー、イシュタルは彼を見据えたまま、己が口内に残る唾液を開かれたままでいる少年の口内へ垂らしていく。
「んっ、こくっ」
イシュタルの甘い唾液を受け入れる少年も、なにも言葉を口にする事無く、ただ唾を垂らしている女を見つめていた。
左頬にさらさらと触れる長い髪束の香り。
口の中へ入ってくる甘酸っぱい唾液。
髪と同じか少し濃いめの青銀か薄紫かの透き通るような色をした瞳。
(綺麗、……イシュタル様……)
見下ろし来る女性の全てがコープルの胸を熱くさせる。
美しかった。子供ながらの幼心にも分かるほどに唯々美しかった。
幾度も感じた彼女の美しさに繰り返し抱かざるを得ない思いは、反芻する毎に感じ入る美を強く実感させるように、少年の心を釘付けにする。
「――こくん」
その美しい女性から落ち行く糸が途切れたとき、口に溜まった唾液が喉の奥へと嚥下され、そして消えていく。
誰に言われるまでもない。恋したイシュタルに訊ねることもない。彼も彼の想いのままにそうしただけであった。
「あ、あのイシュタル様……」
「ん…? なあに」
「抱く……んじゃ、なかったのですか?」
主として、好意を寄せ合う男女間で成される“抱く”を、未だ“抱き上げる”と違う事なのだとしか理解してないコープルの問い掛け。
イシュタルは『抱いて欲しい』と話し、コープルは『抱く』と応じた。意味は分からずともそう約束した。そのつもりでイシュタルはベッドに仰向けとなり、一度はその身を横たえたのではないのだろうか?
なのにどうしてか今は自分が下で仰向けになり、イシュタルが上で見下ろし、熱く優しい接吻だけを交わしていた。
至極当然の疑問に問い掛け。
赤く顔を染めている幼い少年に彼女はふっと微笑んだ。
「ええそうね。今していることは“抱く”ではなくて接吻だった……でもコープルは嫌だったかしら?」
「そんなことっ、ないですっ。イシュタル様との接吻、何回されても……気持ちいい、から……」
でも、と恥ずかしそうで、赤く上気した頬もそのままに、少年は続ける。
「さっきは、僕が抱くって」
確かにそう話してベッドへと上がった筈なのに、どうしてまだ抱かせてくれないのだろう?
抱くの意味さえ知らずに、だがそれが恋慕い合ったイシュタルと自分の間でだけ成立する事なのだという事、自分たちだから成せる、成さねばならない事柄ではないのだろうかと、薄々分かってはいた彼の抱くもやもやはまだ晴れない。
「僕は、イシュタル様を抱きたいです」
分からないながらもイシュタルを“抱きたい”と思っていたコープルは、異なることをしている現状に戸惑っているのだ。
「ふふっ、ありがとう。だけどごめんなさい」
謝るイシュタル。しかしながらその表情は柔らかい笑みを浮かべたままだ。
「抱かせて、いただけないの、ですか?」
不安になる少年に彼女は違うと頭を振るう。コープルの頬に触れたままでいる銀の髪束が、さらさら――彼の頬をまた撫で擽った。
「私もコープルに抱いて欲しい。あなたに私を抱かせてあげたい。けれど、なにも知らないで私を抱く事はできないでしょう。私も教えると言ったわ。でも口で教えても理解できないかも知れないと思ったの」
男女の何かを知るには早いも早い、早すぎるコープル。子供故に。
だからこそ教えるよりも経験を通す方がより良く理解しやすい。
彼女はそう考えて唐突となる方針転換を計ったのだ。
「だから私が抱いてあげる」
静かに顔を近づけてコープルに頬を擦り寄せるイシュタル。
「駄目……?」
擦り寄せられたコープルも、幼子が母を求めるようにしてイシュタルに頬を擦り付ける。
「ん、イシュタル、様……」
「ふふ、……コープル」
頬を合わせたまま、微笑む二人。
そうして触れ合いながら、少年は。
「僕、イシュタル様に抱かれたい」
彼女からの申し出を受け入れた。
きっと“抱く”と“抱かれる”は本質的には同じ行為。
なれど、抱くのか抱かれるのかではまた違うのだろうと彼なりに考えつつも。
「でも、本当は、抱きたいです」
本音を語り、それでも彼は抱かれる方を選び取った。
「んっ、分かっているわコープル。私もあなたに抱いてもらいたいもの」
コープルはイシュタルを抱きたい、イシュタルはコープルに抱かれたい。頬を擦り寄せ合う二人の互いの意見は一致していた。でも。
「今日は、ね?」
そう、今日は我慢をお互いに。
する事、行う事は同じなれど、今日は次への布石として女が少年を抱く……それでいいのだ。
「は、い……ん、くすぐったい…」
「そうね。でも、気持ちいいわ……」
「僕も……」
まるで、母と子の様に頬をすり合わせている。
イシュタルはこのままただ何もせず、穏やかな時間だけを過ごしても良いのでは、と考えぬわけでもない。
(ふふ、穏やか、ね。今までを歩んだ激戦の日々からすれば、こうしている事それだけがもう既に穏やかなのかしらね)
癒し、求めるだけのこの時。そこには、傷付け合う要素など欠片ほども無いのだ。これが穏やかではないのならば、何を以て穏やかとするのか。
合わせていた頬を静かに離しイシュタルは、少年の小さな体躯を優しく抱き起こした。
「イシュタル様?」
起こされたコープルがきょとんとする。愛らしい彼の頬に手を添え、ひと撫でした彼女は、まだ触れていたい彼の顔からその身を離して、少しだけ身体をずらた。
「あなたを抱く前に、もう少しだけあなたを愛でさせて」
少年の下半身へと胸部を合わせながら、自身の大振りな果実を両手で左右に分け開き、そして小さくも背伸びをしている彼のそれを、開いた隙間に挟み込む。
「くぅ…っ」
大きな果肉と果肉の間にすっぽりと収まる肉の棒がびく、ひと痙攣した。
彼女は挟んだそれを、二つの実りを上下に動かしつつ、すりあげていく。
「どうかしら、それなりに自信があるつもりなのだけれど」
すりつけている事、愛撫についてではなく、胸その物の大きさについてだ。
誇るつもりは無くとも、大きな方だという自負は彼女にもあった。
少年の小さな物は事実、狭間にすっぽりと収まりほとんど姿を見せておらず、豊満なる実りの中で揉まれていた。
「や、柔らかい、柔らかくて温かいです、はうっ、く、口とはまた違って」
「気持ちいいの?」
「は、はいっ、いいです…っ、すご、く……!」
満足のいく回答の通り、痙攣を続けている幼い肉は、彼女の谷間で挟まれすられる間にも、時折その先から汁を吐き出している。
一つ響けばびゅるっと、二つ震えれば更に多く。絶え間ない柔らかさの中で少年は感じ、有りの侭の形として露わにしていた。
「はっ、あ、くっ、また…っ、また出てしまいそうです…っ」
さっきと同じ物が。小水とは別の物、イシュタルを愛しているから出るそれが。
「ふふ、もう少し出ているわ」
「だ、だって僕っ」
時遅しというにはあまりに早すぎる出た分の汁が、果肉の狭間に塗りつけられて、にゅるにゅると小さなそれを、摩擦無く実りと戯れさせている。
このままで行けば直ぐにも達しきってしまう。しかしこれを止めることは不可能だった。
「イシュタル、様、くう…っ」
大人であればまだ余裕もあろう、だが子供にはとても耐えられない事なのだ。
イシュタルの胸の狭間に収められるという、大切ながらもたったそれだけの事が。
口で愛されて箍が外れているのもある。
一度達しているから暫くは大丈夫?
そんな事はない。若く幼い少年の、青過ぎるまでも無尽蔵な性と体力、根底に根差した彼女への愛が尽きるなど愛情から来る行為に、限界の壁が立ちはだかっても容易く回復するだけの物を、彼の身体は持ち合わせていた。
だが、耐えることはできない。残念ながら、幾度もの行為が可能であったとしても、これだけは子供だからとなってしまう。
敏感な反応を示す子供の身体は、彼女からの愛撫に我慢を押し通すことを良しとさせなかった。
びくん――。
「っ――!」
紅潮させた表情に浮かぶ苦悶の色。或いは開放感を感じさせる少年の顔。
歯をぐっと食いしばりながら、耐えるように、でも解き放つ悦びに打ち震えている。
胸の狭間に爆ぜた白濁。
生温かく濃密なそれは彼女の身体にこびり付き、肌を這うように双丘の間を垂れ落ちていく。
一度の大きな震えと、数度の小さな震え。
体液を迸らせながらも歓喜の声を我慢するコープル。
愛おしさを感じたイシュタルは、自身の胸の狭間に感じる彼自身の温かな体液に、解放しておとなしさを取り戻したそれを滑らせながら実りから抜け出させる。
ぬるり、滑り抜けたそれに彼女は間を開けず左手を添えてさすり、落ち着きかけていたそれの付け根からゆっくりと指を走らせていく。
「は、うっ…!」
さすられたり揉まれたり、挟まれて愛され。
何度かその行為を通してもなお、依然変わらずの気持ち良さのみがコープルには伝わり続けていた。
終わりなんて無い、終端の見えない心地良さに嬉しさが込み上げてくる。
二人は共に、こうしているだけで、幸せを感じていた。
追い求める姿勢も勢いも衰えずに、身体が欲するままに先を促す。
幼いそれから離されていた実りは、いま少年の顔の前にあった。
イシュタルがそうした。
薄く桃色に色付いた双丘の先。
高い頂にあるその蕾は明らかなるまでに立っていた。
彼女自身には分かる常とは異なった己の乳房のそこ。
コープルには分からない母性溢れる膨らみの先。
「イシュタル、さま……。ん――」
色付き、先の膨らんだその大きな母性に、何も分からないまでもコープルはその小さな口を付けていた。
口を付けながら、子供の本能がそうさせるのか、彼女の母乳を飲もうとするように、彼は母性の実りを吸い始めた。
「ふっ…、んん――」
左の乳房に感じた暖気と水気に、擽られて喘いだ、イシュタルの顔に差す朱の色が濃くなる。
ちゅう、ちゅう、乳飲み子のようにおっぱいを吸われ、疼くイシュタルの胸。
乳房の奥から何かが吸い出されていくような不思議な感覚。
――心地良い――。
思わず彼のそれへの愛撫を忘れてしまうほどに、言葉にしがたい心地良さであった。
これが母親の気持ちなのかも知れない。
この日に出逢い、この時に恋慕う心を芽生えさせ合ったばかりの相手。
しかしいまこの少年は、母を知らない少年は、母を求めるかのようにおっぱいを吸っている。
唾液を付けたり舌で弄ぶような事は微塵もない。
愛する者へと求める類の荒々しさはそこになく、あるのはただひたすらに“吸う”という行動だ。
吸っても出ない母乳を飲むように。
くちゅ、ちゅうっと、吸う音と、吸われるときに感じるくすぐったい感覚だけが二人の間の繋がりとなっていた。
この時だけは、恋心を抱くイシュタルへの男としての愛情と、彼女に母を求めてしまう幼心がコープルの中で併走していた。
どちらもあって、どちらも本物。
「あっ…、コー、プル……」
お乳を吸われている。
おっぱいを吸われている。
母乳を飲んでいる。
「んっ、あ。優しく吸って……いい子……」
出てはいなくとも、本当には飲めていなくとも。
確かにコープルはイシュタルの母乳を飲んでいた。
喉を鳴らせて飲み下していることが分かる。
奥から奥から吸い出されていることが分かる。
求められているからこそ彼女には分かったのだ。
女として愛されていることも。
母として求められていることも。
「う、ん…っ」
ならば自らもその二つを両立させよう。
こうしてまた、この少年が母性を求め来た時には応えてあげよう。
母親にはなれない。どうあってもだ。
だが、女として、また妻としてなら、その中に於いて母性を与えてあげることもできる。
「ん…、ん…、」
母性のその物を吸い続けているコープルも、雑念のないその頭の中。
思考の海には、愛する女性イシュタルへの確かな恋心だけがたゆたっていた。
無意識にその母性を求めながらも、母を求めるのではなくイシュタルという女性を求めていたのだ。
イシュタルに母を求めている。
それは反面で相手が彼女だからこそ求めたと言えよう。
ずっと一緒に、共に在り続けたいと望んだ女性だから無意識に甘えることもできる、意識的に甘えることも適う。
その甘えたい、母性を求めたい欲求が、童心を残す彼を突き動かしていた。
彼の持つ子供心の部分を動かして、彼女の母性を求めたのだ。
母を知らない少年の持つ思いの行為は、イシュタルを前提にして成り立つこと。
それを感じ取りながら少年は飲み続けた。
愛する女性の与えてくれる母乳を。
味わい深く、心から美味しいと感じるお乳を。
本当には飲めていなくても、柔らかい乳房と口に含んでいる少し硬い突起から、甘く優しい味を感じ取っていた。
彼女の右手は彼の頭を抱き寄せ、左手は男子のそれに添えられ、さすりあげながら竿を、首を、細やかに擦る。
彼女の乳房は求め来る母乳を少年に与えている。
淫靡でいて優しく、穏やかでいて温かな時間。
心も身体もお互いが望むまま。
そんな幸せな時間は時を止めることなく先へと進む。
少年が母乳を飲み終えたときに。
「ん……」
小さな唇が離れる。吸われていたことでほんのりと色付いていたその乳房に、確かに口で含んでいた証たる濡らした後を残して。
「もう、いいの?」
イシュタルの問いに小さく首肯したコープルは、恥ずかしいのか耳が紅くなっていた。
「ごっごめんなさい……僕、赤ちゃんみたいに」
自分のした行いに恥じ入るコープル。その様な歳ではないのに、夢中でおっぱいを吸ってしまった。
けして恥ずべきではないはずの行為に、しかし少年は俯いてしまう。
横たわる事実を垣間見させられた。包容力ある大人と、何も知らない子供。
イシュタルとコープルの間にあるそれが真実なのだ。だがそれは悪い事なのでない。事実が事実としてあるだけのことなのだ。
男は強くあり女性を守る――男なら持つ矜持はコープルも持っていた。
その矜持が自身行った赤子の様な行為に彼を恥じ入らせてしまっている。
しかし、イシュタルは言った。
「なにも恥ずかしいことではないのよ。あなたは何も悪い事はしてないのだから」
子供は誰しも母の温もりを求めずには居られない。
母性に溢れた大人の女性に甘えることの何が悪いのか。
求められた側である彼女は寧ろ、他でもない自分にそれを求めてくれたことが誇らしいくらいだ。
そうは言っても彼の中のもやっとした気分は晴れないだろう。実際に晴れてはおらず、思い出してはまた深く俯くという意味を成さない様子を見せていた。
「さ、コープル」
恥ずかしいのなら恥ずかしいでいい。純朴な少年の感受性がこれを持ち変わるなど無いのだから。
故にイシュタルは立ち止まらず先を進める。不必要に足踏みをするのではなく、歩を進めることを優先させる。
「あ……イシュタル様……」
恥じ入っていた少年はまた静かに押し倒された。今度こそ起き上がらせることはない。
彼女は慈愛の微笑みを向けながら、ゆっくりとベッドに倒されたコープルと身体の位置を入れ替える。
今までは顔を向け合っていた、そこから替わり反対へ。
イシュタルの上半身がコープルの下半身と向き合い、彼女の腰が少年の小顔を捉えるように。
入れ替わった態勢のままに腰を下ろす。
降り来るのはイシュタルの腰、臀部。
迫り来るのはコープルの下半身。
互いに向かい合った相手の大切な所が、秘めやかな接触を果たした。
「むうっ!?」
コープルは顔に乗せられ押し付けられた臀部の下で口籠もる。
声の出ない声を出して呻き、両の眼を見開きながら柔らかい臀部の暖かさを感じ取った。
「んむぅーっ、ふ、ふむぅ――っ!」
息苦しい。押さえられた口が上手く呼吸を成せない。その一方で、何かが沸き上がってくる匂いに鼻腔の奥までを支配されていた。
顔全体に広がる臀部の温もりと、口と鼻の周囲を押さえている薄く開いた紅色の秘所。
男の自分とは全くその様相を異とするそこが、目に見える形で迫り、彼の口鼻と触れ合っていた。
「んっ…! 暴れては駄目よ……」
掛かる吐息と接触した唇と“唇”。
“唇”の粘膜に感じた小さな唇の湿り気に、イシュタルはぶるりと震えながら、自身は背伸びをする不完全なそれの頭に口を寄せては軽く口付けた。
ちろっ。
出した舌先でそれの捲れた皮と頭の境界部を彼女はなぞる。
つんと鼻を突く匂いが、それの先から出る汁より漂う。
余韻に浸ることはせず彼女は、唇を滑らせながらそれを口内へ含み、唇をすぼめて全体を頬張りながら二回首を上下させて扱いた。
「ふうう――っ」
そこをなぞられ、続き様に頬張られた僅かな合間。せり上げてくる何かの感覚に耐えきれないコープルが接触している彼女の“唇”に吸い付き息を吹きかける。
「ふあっ!?」
熱と湿気の入り混じった息は、付けられた口を通じて“唇”の中に空気を送り込もうとするも、微かに開いた“唇”から滲み出ていた甘い蜜に遮られて通らず。
代わって彼女の口を開けさせて、咥えていたそれから彼女の口を離させてしまった。
つ~~、とろり。
離れた唇その舌先から唾液が伸びて、屹立するそれの中央部の立て筋に落ちて、筋伝いに流れていく。
渓谷に流れる川の水のように落ちていく唾液、傘の下の隙間に入り込むと見えなくなった唾液を見送りながら、彼女は自らの陰唇に感じた痺れる快感を耐え凌ぎ、両の乳房を左右に開いてその二山の間に少年のそれを挟み込んだ。
そうして挟み込んだ乳房で圧力を加えながら右の乳房を上へあげ、左の乳房を下へさげ、左右交互に入れ替えて動かし、仕上がりきっていたそれに更なる刺激を与えて扱き倒していく。
「う、ふあ~~っ、イ、イシュタルさま、そんな、おっぱ、いで、」
己が両の乳房を外側より掴み込んで持ち上げ、乳房の狭間へ包んだそれを、イシュタルは確実に責め立てていく。
「ふ、わ、ああっ」
上へ下へ膨らみを擦らせながら、液で濡れたそれには摩擦にも成らない摩擦を用い。
時に舌先を絶妙なタイミングで付けてあげてはちろちろと舐め。
やがて自身の陰唇より滲み出す愛液と対と成る透明の液が、立て筋よりその量を増して漏れ出し、少年の限界を彼女に伝えた。
もう限界。
もう止めて。
思い、叫びは動きとなる。
言葉では上手く伝えられないコープルは、キスをしたままでいた彼女の下の“唇”に舌を滑らせた。
「ひはぁっ――」
奥へと続く唇の中に湛えられた水をつうっとすくい。
「じゅる、じゅ……イシュタル……、さま……ぢゅ――」
傷口を舐めるように唇の周囲、唇の中も。
余すことなくねぶりながら、そのつもりは無くともイシュタルの性感を掻き立て刺激して行く。
「ぷあっ。あ、ァァ、コープル、そんなところを舐めては、あっふうっ、だ、駄目――!」
堪らず彼のそれから口を離し、挟み込んでいたそれ自体を解き放ってしまうイシュタル。
――じゅ、ぢゅくっ、くち――。
明確にひくつくデリケートな“唇”を、自分のそれがされていたのと、否、或いはそれ以上に。
心を込めてコープルはねぶり続けた。
「くっ、あっ」
舐めて、舐めて、すくい、舐めて。
溢れ来る泉を、溢れ出させないように舐め取っては飲む。
溢れ出してくるそれは、一体どれくらいに舐め取れば全て無くなるのか。
蠢く温かいそこは蜜を出す、止め処なく、終わり無く。
コープルのそれがそうであったように、イシュタルのそこも枯れることなく泉は湧き出していた。
イシュタルはコープルを攻めて、コープルはイシュタルを攻めて。
図らずも二人がお互いを刺激し合った事で、二人共にが揃ってどちらともなく同じ状況に置かれる。
置かれたからこそ分かる。共に限界は近いのだ。
このまま達してしまえばいい。
最後まで至ってしまえば。
流れに従うのならばそれでよかった。
だがイシュタルは“唇”を舐められながらに思う。
コープルのそれを眼前にしながら、引きつりを起こしたかの如き痙攣をしているそれを前にして。
――これ以上コープルは耐えられるのか?
幼い子供であるだけに、果たして更に先を見る自身に付き合わせるだけの体力や精気が保てるのかを。
「ちゅ――、あ、イシュタルさ、ま?」
だから無理矢理にでも立ち上がった。その場に立った。
彼のそれを放したまま、彼の舌からも一度自身を離していた。
もしかしたら最後まで愛し合えないままに彼が果ててしまわないかと危惧を抱いたから。
舌先に伸びる糸。
それは唾液と先走った液。
方やそれは唾液と愛液。
同じ種のものが、同じ様に、逆さに合わさる唇の元から糸を引いて落ちた。
「ありがとうコープル……でも、これ以上は駄目よ。私から誘導しておいて勝手な事だけれど、ここから先へ進みましょう。私は愛するあなたの最後を私の中で迎えてもらいたいの」
「最後……それって、僕がさっきイシュタル様の口に出してしまった小水みたいなの、ですか?」
「ええ、あれはね、出し続けていると次第に疲れてくるものなのよ。もしもいま此処でまた果てて、お互いにこの先へと進めなくなってしまうことは、それはとても寂しいことだわ。コープルを抱けなくなるのは嫌なのよ」
無理はさせたくない。
何度か果てたり、果てそうになったりを繰り返した彼はそれなりに疲れが溜まっているだろう。
若さ故の有り余る体力や漲る精気は未だ衰えることは無いかも知れない。
しかし、子供は子供。また自身初めてでもある。
初めて同士、無理をせず、させず、心を一つにしてただ愛し合いたかった。
刹那の時しか持たない可能性がある以上は、愛撫に終始する訳には行かなかったのだ。
「見てご覧なさい。私の両脚の付け根の間、コープルのそれがある場所と同じところにはなにが見えるかしら」
イシュタルはコープルの腰を跨ぎ立ったまま、両脚の付け根を手で押さえて、迷い無くそこを左右へと開いて見せた。
なにも知らないコープルに見えやすいように、わかりやすいようにと。
「あの、ぼ、僕のような物がなくって、縦に一つの筋があって、なにか裂け目みたいになっていて……少しきらきらした水みたいなので潤っています。その、すごく綺麗です」
コープルから見たイシュタルのそこには自分にあるそれがない。代わりに縦に割れた裂け目のような筋があって、潤いを帯びきらきらした場所となっていた。
いま舐めていたそこは、まだ水が滴っている。樹液のような、蜜のような、そんな粘りととろみを持ち落ちる水滴が、彼女の跨ぐコープルの腰のそこに勃つそれの先へとかかっていた。
「それと、奥に続いているみたいな窪みが……これは、何ですか? 見ていると、なんだかその……とても胸が熱くて、顔も熱くて……、変な感じになるんです」
ただでさえどきどきと胸の鼓動が早くなっているというのに、顔も身体も風邪を引いたときのように熱くなってくるのだ。そう、ただ見ている、それだけで。
これはなんだろうと、コープルが思い巡らせてもわからない。幼い彼にとってはまだ未体験以前の話だ。子供なのだからそも当然の事として、だからこそイシュタルは教える。
「この場所にコープルのこれを入れるのよ」
「ここに?」
「そう、私のここが、この窪んでいる私の奥まで続くこの場所が、いま大きくなってしまったコープルのそれが入りたいと願っている場所で、互いを恋慕う私とあなたが、熱くなった身体を一つにして愛し合うという行為を行う場所」
「僕の物がここに入りたいから、僕のが大きく」
「そう入りたがっているわ。入りたいからそうして大きくなっている。私が髪を巻き付けさせながら撫でさすっていたときも、口で触れていたときも、胸に挟んでいたときも、それぞれで同じ事になっていたけれど、いまはここに入りたいって、それで大きくなっているの。そして、私のここもよ……、私のここも、あなたのそれに入ってほしいと言っているの」
「イシュタル様のそこも」
「そうよ……さあ、コープル。わからない事ばかりだと思うけれど怖がらないで」
未知への好奇心と、そして見え隠れする怖いという感情。
ここへ、イシュタルのそこへ入ってみたいと思う気持ち。入ることが怖いと思う気持ち。
口許に愛液を付着させたまま、依然として戸惑うばかりのコープルを、イシュタルは優しい声で誘う。
「私のここはコープルのそれが入る為の場所……。私と恋慕い合うコープルしか入れない場所、難しく考えなくてもいいの」
「難しく、考えないように」
「そう、私のここへあなたが入るのは当然の事なのだから」
彼女はその優しい声で誘いながら、少年のそれを左手の人差し指と中指で挟み、鎌首を持ち上げるようにして。
自身はゆるりと腰を下ろし、きらきらとした潤いを見せる朱に近い桃色の場所へと近付けていった。
小さな頭を覘かせながら勃つそれが、彼女の筋に添えられる。
「濡れていて湿っているけれど、温かい……イシュタル様のここ」
「コープルのこれが熱く濡れているようにね」
「ふふ……そうですね」
イシュタルの言う冗談めかした本当のことに、赤く火照った顔が小さくはにかむ。
どんな状況、どの様な状態にあっても、この可愛らしい純粋な笑顔がこの少年には一番似合う。
彼女は改めてそう感じながら、蜜で潤う自分のそこに添えられた幼いそれに腰を落とし、据えた入り口へと潜り込ませた。
「んっん あっ――くうっ」
思いの外に滑らかに入って行く幼いそれ。頭が入り、蜜を押しだし、中をゆっくりと掻き分けて来る小さなそれ。
小さくはあっても、幼いと言えども、しかし擦れ合う摩擦から生じた感覚は、イシュタルに声を上げさせるほどの痺れと快感をもたらした。
「は、ァァァ――」
小さな頭はイシュタルの中を奥へと進んでいく、進みながら閉じた中を押し開いていく。
押し開きながら、男を知らぬ証を緩やかに引き裂いた。
「ああっ――!」
男を迎え入れた、コープルを、愛する少年を己の中へと導き入れた。
それを痛みとして知らされたイシュタルは、大きく喘ぎ背を反らせる。
応じて彼女の名が呼ばれた。
「う、っあく、イシュタル、さま…っ」
イシュタルへと入れる、迎え入れられた少年は叫びの如き声を上げた。
頭がズッと奥に食い込み、頭の下で捲れ膨らんでいた皮が狭くも入りやすい、ざらざらとしながらも液で濡れて滑らかである彼女の中で強く擦れた事で、引きつり裏返っていく。
一つになる為のこの過程を通して剥かれ行く痛み。
堪えるように伸ばされた小さな手が、降り来るイシュタルの太腿に触れた。
「コー、プルっ…!」
瞬間、少年と女は一つとなった。
一つになる為に生まれてきたような感覚を共にしながら。
イシュタルの腰が落ちきったところで、彼女の膝はコープルを跨いで座り込むように曲げられた。
「はあっ、はあっ、コープル、感じる? 私とあなたが……一つになったのよ」
全体を飲み込み強く締まる彼女の中。
包み抱かれた一皮が完全に剥ぎ取られた少年の男たる証。
「い、痛いですっ、強く締め付けられるみたいに僕のが圧迫されて、押し潰されてしまいそうっ……です……っでも」
――気持ち良い――。
気持ち良く、安心する。ただ、こうしているだけで。
そう言うコープルに。
「私も、同じよ。痛い、わ……けれど、痛い以上に嬉しくて……安心する」
彼女もそう答えた。
コープルも、イシュタルも。感じることは同じなのだ。
その感じるままに、彼女は少年の身体を抱き起こしながら、彼の頭を胸へ掻き抱く。
「う、ん……イシュタル様……むぐ――」
「ああっ、コープル」
豊かな胸にうずまる彼の少年の顔。
動かず呻かず、荒めの呼吸だけを繰り返している。
腰は、身体は自然に動いていた。
初めてだから、痛みがあるから、限界は超えている。
あらゆる懸念、あらゆる憂いを置き去りに、イシュタルの身体は動いていた。
「あっ…あうっ、はあっ…、あっはぁぁ――! コープル……コープルっ」
あまりにも愛おしいから。
愛おしすぎて胸が張り裂けそうになり、じっとしていることに耐えられなかった。
上へ、下へ、腰の捻りや特別な動きは何もなく。
ただ愛おしいと想うその気持ちを、彼女はあるがままにコープルへ伝える。言葉は無く、行動のみを伴いながら腰を下げ、また上げる。
ひりつく感覚に引きずられながら滑りよく腰が上がったとき、一つになっているところは優しく擦れ合いながらも幾筋かの鮮血を流していた。
赤い筋は二人が沸き立たせる透明の水の中で、泡を掻き立てながら撹拌されていき、彼女の動きに合わせてぱたぱたとベッドの白いシーツに赤い染みを作る。
「むっぐ、んむぐ、ぅぅ」
豊かな双房に固定された少年の顔は、その口からくぐもりだけを綴らせていた。
苦しそうな声はその実息苦しさを物語り、されどこのままで居たい、これで良いのだという気持ちを膨らみさせ行くその形ともなっていた。
擦れ合い、掻き混ぜる。少年のそれと、それを含んだ美しい花園に咲く華。
交わるのは二つにして一つ、イシュタルとコープルの心その物。
一つで居たい。一つで在りたい。結ばれる為に。
ただこうして強く深くどこまでも愛し合う為に生まれてきた。
「あ、ああんっ、あっ、コープル、愛しているわっ、いつまでも、いつまでもっ……この身が果てようともっ――あなたをっ、あなただけをっ……私はっ、私は――!」
小さくも硬く、男である確かな証に貫かれ、激しく擦れる水音が響く部屋の中、イシュタルは少年への想いを叫ぶ。
心の求めるままに叫んで、燃えるように熱い鼓動を刻む胸に抱いた幼い彼の頭を、力強く抱き竦める。
電撃が駆け抜ける。
その雷はトールハンマーのように全身を打ち付ける。
使い手たる自身の身体を撃つ雷に。
「ああっ、あっ、あはぁっ…、くうっ、んっ」
イシュタルは身悶え、嬌声を上げること以外に適わず。
「ぷは、はふぅ、イシュタル様、むぐっ……僕、も……愛して、おります……っ」
彼女の両腕が頭に回され、掻き抱かれる形で胸に顔を埋めさせられていたコープルも、心の内に沸く想いを叫んでいた。強く優しく、柔らかくもきつく、自分自身を締め上げられ、すり合わされる秘処同士の交わりの中で。
愛おしい……どうしようもなく切ない。イシュタルを放っておけない、この御方を一人になんてさせられない。
この方に抱かれていたい、この方と一つになっていたい――。
狂おしいほどの想いが絶え間なく、コープルの幼い心と身体を駆け巡る。
離れた場所で傷付いた者を回復できる、それを己が武器として戦場に立ってきた。
しかし、彼女は、この方に対しては違う。
彼女へは、そうイシュタルにだけは、常に傍らに居て癒してあげていたい、癒したい。
「ふ、ぐう……っ、誰が、誰があなたを責めようともっ――僕は、あなたを信じて、お慕いし続けます!」
自身の全身全霊を以てコープルはイシュタルを癒したいと思った。
身体が傷付けばリブローを、心が傷付いているならその頭を抱き締めて。
こんな小さな体躯でも、子供であっても、コープルは彼女を癒したかった。
どんな形だって良い、彼女と共に歩みたかった。その傍らで。
「ずっと、ずっとっ、生まれ……変わってもっ、ずっと――イシュタル様だけを!」
「アァッ――コープルっ!」
想いと想い、愛しさと愛しさ。 二人が互いにそれぞれ抱く同じものをぶつけ合ったとき。
混ざり合い一つになったその愛情は、心と身体を重ね合わせた二人を、この時に於ける終着へと導く。
「イシュタル様――!!」
どくん――大きく爆ぜる少年の男。
腰が沈みきった場所で、男が届ききったその場所で。
愛する者の名を叫ぶ少年は、身体の奥より沸き立つ熱く白く煮えた想いを解き放っていた。
「コープ……ルッ……アアぁぁ――ッッ!!」
どくん――入り来る白く煮えたる濃厚な想いを、イシュタルは受け止める。
押し広げられ、入り来た少年のそれ。それより解き放たれた愛情の白。
それを最も奥まった場所にて敏感に感じ取りながら、彼女は愛する者の名を叫ぶ。
包み込んだ男を放さないように。
出逢うべくして出逢った――そう思えるこの小さな少年と永劫に添い遂げ続けんが為に、彼女の身体の深奥は、彼自身を抱き締めていた。
強く強く。決して放さないと迎え入れたその場所で。
硬直した少年の身体、その手だけは彼女の腰を抱き締める。
仰け反り、反り返った彼女の背中、右上で束ねられた青銀にも紫銀とも映る一つ括りの髪束が宙を舞い、揺れている。
「は、あッ、あっぁぁ……ん」
艶めいたイシュタルの喘ぎに。
「ふッくぅ…、はあ、あっ……」
熱に浮かされたコープルの声が、同じ喘ぎとして返っていた。
二人が身も心も結ばれているその時、このいまに、イシュタルの中でもまた多くの愛がそれを形として成そうとしている。
多くの愛、無限の愛が、濁る白という愛の形が彼女との愛の成就を目指していた。
やがてコープルの愛の一つが、イシュタルの愛と一つに結ばれる。
確かな一個の結晶と成ったその愛は、さながら今一つとなっているイシュタルとコープルの想いの結実と意味を同じくする、もう一つの結実と成っていた。
◇◆◇
グランベル――暗黒神ロプトウスと、暗黒の神を打ち倒すべく戦っていた解放軍の最後の戦い、バーハラでの決戦から一年と少し。多くの傷跡が今なお残るトラキアに、白い神官服を着た、金髪の幼い少年は立っていた。
「見えるかい? 此処が僕の故郷のトラキアだよ」
その腕に子供である少年よりも、ずっと小さな男の子である子供――赤子を抱えて。
少年の抱いている生まれてより未だ一年も経っていないその赤子は言葉も喋れない。
言葉も喋れずそれどころか、トラキアの城下を見渡すことの出来るこの場所から見る景色を見て、何かを感じていることか、それさえも分からない生後数ヶ月の赤ん坊だ。
赤子なのだ、故に当たり前。しかし、そんな赤子は、視界に映ったトラキアの景色に「あ~う、あ~う」と、某かの感想を述べているように、手を振って口を開いていた。
――喜んでいるようよ――。
不意に横合いから声が掛かる。
赤子を抱く少年は隣に視線を移した。
「喜んでるのですか?」
膝にかかるまでの長い銀髪を、頭の右上にて赤い髪留めで一つ括りにしている、少年よりも頭一つ分以上は背の高い大人の女性の姿がそこにはあった。
全身法衣に身を包んだ少年とは違い、腰の深くまで切れ込みの入った動きやすそうな長いスカートをした濃紺色のドレスに、足首まである裾の長いマントという出で立ちをした女性。
彼女は表地が黒、内側の生地が赤色をしたそのマントと、銀色に輝く髪を風に靡かせながら少年へ言った。
「コープルの育った国ですもの。きっとその街並みを見ることができて嬉しいと、この子なりにそう感じたのだと思うわ」
少年コープルへは女としての愛のある微笑みを、そして、彼の抱く赤子には慈愛の微笑みを浮かべながら。
そうして笑みを浮かべられたコープルは、はにかみを以て返し、彼は抱えていたその赤子を女性の手へと委ねる。
「イシュタル様、あなたの方が僕よりもずっと背が高いです。ですからこの子にもっと広く景色を眺めさせてあげてください」
トラキアの景色を喜んでくれているのなら、もっと見せてあげたい。
その意思を載せた言葉に、銀髪の女性イシュタルは「いいわよ」と、慈しみを込めて“我が子を”受け取り、抱き上げた。
「ごらんなさい、これがコープルの……あなたのお父様のお国よ」
赤子は再び喜びを表すように、明るい声で笑いながら父親の国を見ている。
そんな赤ん坊の姿とイシュタルの言葉を受けて、感慨深そうに、でも少しの戸惑いと共にコープルは言った。
「お父さん、か……僕、お父さんになったんですよね」
イシュタルが聞き返す。
「どうしたの」
「いえ、僕まだ、こんな子供なのに、お父さんを勤める事が出来ているのかなって」
赤子の母親はイシュタルだった。そして、そのイシュタルが我が子にお父さんと言ったそのお父さんとはコープルのこと。
愛し合う二人の間に生まれた子。
イシュタルが生んだコープルの子。
生まれて数ヶ月の子を前に、コープルは少しばかりの不安を口にする。
「それに僕、フリージの王女……女王であるイシュタル様のお仕事、きちんと支えることが出来ているのかな」
「ふふふ、コープルは立派な父親になれているわ。それにフリージの政務にはティニー、もう一人の“女王”もティニーの“夫君”も居るでしょう? コープルが全てを背負うことはないのよ。皆で分かち合って背負えばいいの」
「そうでしょうか」
「そうよ」
だからこそこうして復興の為とは言え、フリージの王族であるイシュタル。戦後の取り決めで彼女の従妹ティニーと共にフリージの女王となったイシュタルと結ばれたコープル、つまりフリージの王配の一人ともなった彼が、子供と共にトラキアへ来れたのだ。
ティニーが自由にするときはイシュタルが、イシュタルが自由にするときにはティニーが、それぞれフリージで政務に就く。二人の女王による二君体制に移行したフリージは、この一年と数ヶ月の間に目覚ましい復興を遂げていた。
民に望まれていた二人が民の思いを汲み取り君主として立った、それは喜ばしきこと。
「そして夫としても」
常に傍に寄り添い、妻を支え、自らがまだ子供ながらに子育てもにもしっかり努め、毎夜その愛を交わし合う。
イシュタルに取ってコープルは立派な夫であり、立派な父親であり、永劫の伴侶であった。
再三再四の言い含めとなる言葉を彼女は愛する夫へと投げ掛ける。
「愛しているわコープル、とこしえに」
「イシュタル様……」
胸を射貫き来た妻の言葉に、コープルは顔を赤くしながら、子供を抱いたまま屈んだ彼女の唇へ、勇気を出して口付けた。
あっさりとした締め方でしたが、フリージは女王二人による統治下となりました。
幼いコープルは王配という重圧がかかっており、不安を抱いたりしておりますが、イシュタル、ティニー、ティニーの旦那様に支えられながら、自分なりに頑張っている。
といった感じですね。
イシュタルのコープルへの接し方や言葉遣いですが。コープルが子供で、ユリウスへの想いも既に断ち切っているということもあって、ゲーム内に置けるティニーへの接し方・話し方と同様のものとさせていただきました。