※この作品はR-18です。

バトランティスの覇王   作:歩輪気

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今回、結構長いです。


10ー2話

 

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 夕陽が沈み、青い空が黒へと姿を変貌させる夜のアトランティス。普段なら星1つ無い漆黒の空が広がっている頃なのだが、創世の御柱へエッチな魔力が供給されたことで、今宵は何十億という数の星々が光を照らして自身の存在をアピールしていた。おかげで、夜なのにも関わらず、辺りは不思議な明るさに包まれていた。

 

「ふぅ」

 

 夜空下の宿の露天風呂にて、タイガは白い湯気に覆われながら、疲れたように一息着いた。

 

 ここは帝都ゼルティスから離れた山中に建てられた、ゼルシオーネ御用達の知る人ぞ知る秘密の宿である。各地方で天変地異によって世界の崩壊が進む中、ここだけは変わらず営業していた。

 温泉に浸かりながらも景色を一望できる程度に低い柵の向こうでは、遠くの帝都と天を貫く創世の御柱、そして荒野と雪を被る山岳などが広がっている。

 

「(怒ってるよなぁ、ゼルのやつ)」

 

 タイガは、今頃部屋の中で不機嫌になっているであろうゼルシオーネの怒顔を想像しつつ、湯で顔を洗う。

 

 ここへ立ち寄ったのは、タイガがレムリアの機械を真似て造らせた二輪のマシーンを大破させたのが原因である。というのも、タイガは初運転にも関わらず、マシーンが出せる最大速度まで一気にとばしてしまい、数十メートルはある崖を思いっ切り飛び出してしまったのだ。

 

 勿論、マシーンは飛び出したまま綺麗な放物線を描いて地面目掛けて落下し、衝突と同時に爆発四散、開発者の血と汗と涙と努力共々、光の塵となってしまった。幸い2人は直前に魔導装甲を装着して何とか脱出、懲罰四剣の4人へのプレゼントも無事に回収できた。

 しかし夕食用に購入した食材は黒塵と化し、オマケに危うく死にかけたということで、ゼルシオーネはおかんむりになってしまったのだ。そのお詫びとして今回の宿泊代を彼が全額負担することになったのだが、それだけでは済まされないだろう。

 

「…………悪いことしたなぁ……どうすっかなぁ……」

 

 あの時の彼女の表情は思い返しただけでも縮こまってしまうほどに恐ろしかった。そんなゼルシオーネに対してタイガはこの後どう謝ればいいのか考えつつ、無惨に散っていったマシーンと食材とかかった費用に念仏を捧げる。

 

 それを終えると、湯の表面を優泳しているお盆を引き寄せ、上に乗った酒器に入った酒を小さな杯へと注ぐ。注ぎ終わると杯を掴み、空を見上げながらグイッと酒を流し込んだ。これは旅館が行っているサービスの一つで、絶景をつまみに楽しむものである。

 

「…………?」

 

 不意にタイガの耳に何者かの足音が届く。今宵はタイガとゼルシオーネの2人しかいない貸切状態のため、他の客が来るのはありえない。有り得ないということは、その正体は従業員かゼルシオーネということになる。しかし従業員がこの時間帯に、しかも客がいるこの風呂場になんの用があるのだろうか。

 

 そうしている間にも、ピチャリピチャリと足音はどんどん近づいて行く。

 

 そしてタイガが視線を向けた瞬間、モワモワと沸き立つ白い湯気を払うように、足音の主がその姿を現した。

 

 スラリとした体に程よく鍛え付けられた筋肉と引き締まった尻、大きいながらも形を保った2つの果実、その先に着いた乳輪と大きめの乳首、割れ目を隠す整えられた下半身の茂み等々、隠されていたそれら全てが今、タイガの目の前で露わになっていた。

 さらには長い紫髪が後ろに束ねて結上げられたことで首筋も姿を見せており、それが余計に彼女の色気を際立たせた。

 

「なんだ、ゼルか。来たのか」

 

 簡単に拝めるものではないゼルシオーネ隊長の裸だと言うのに、タイガは薄い反応を返す。それが気に入らなかったのか、ゼルシオーネは不機嫌そうに口をへの字にする。

 

「私が来たら何か不都合なことでもあるのか」

「や、そういうわけじゃないが」

 

 蛇の睨みに汗を流すタイガを横に、ゼルシオーネは彼にやや近い距離で湯の中に腰を下ろす。

 

「…………」

「…………」

 

 しばらく沈黙が生まれた。

 水滴がちゃぽんと落ちる音が聞こえてしまうほどの沈黙を初めに破ったのはタイガだった。

 

「あー、その」

「…………」

「さっきはごめんな。危ない目に合わせて」

 

 タイガは頭を下げるが、ゼルシオーネは真顔のままじっと彼を見つめる。

 

「……怒ってるか?」

「……別に、怒ってはいない。ただ慣れすぎて、その気力すら湧かないだけだ」

「……悪ぃ」

「全く、昔からお前はそうだった。何かある度に私をトラブルに巻き込んで。おかげで私がどれだけ苦労したことか」

「やっぱ怒ってるだろ」

「だから怒ってないって言っているだろ」

 

 早々にポーカーフェイスを崩して額に青筋を立てるゼルシオーネ。結局は怒っていたようだ。

 

 

 タイガは詫びをするように盆の縁をちょいと押し、ゼルシオーネの方へ泳がせる。ゆっくりゆらゆらと泳ぎに来た盆をゼルシオーネは受け取ると、乗っている酒器を掴み、手酌で杯に注いでちびちびと舐めるように飲む。

 

 とりあえず一杯を終えると、彼女は軽い息を吐いて視線を外に向けた。

 

「まあまあな眺めだ。昔はもっと美しかったが、今も観れない程ではない」

「ああ、流石はゼルの行きつけだ」

 

 タイガは極楽気分を味わうように石縁に両手を伸ばしながら、夜景を眺める。

 

「ここにはよく他の者を連れ込んでいたが、皆、目を輝かせてここからの絶景を褒めていた。本音かどうかは分からんがな」

「愛人か。昔っからよく飽きないな、女遊びも程々にしろよ」

「今のお前にだけは言われたくない」

 

 隊長になる以前から女癖の悪さで名を馳せていた(と云われている)ゼルシオーネ。そんな彼女が親衛隊隊長ともなれば、帝都内以外にも各地方に愛人の1人や2人がいてもおかしくないのだ。

 そして、彼女達から毎度のように『タイガ様は連れてこないんですか?』と言われて苦笑を浮かべて誤魔化しているのはお約束である

 

「だが、懲罰四剣を連れてきたことはないな。そもそもあの4人を向かい入れてからここに来てすらいなかった」

「だったら今度連れて来るか。こんなにいい眺めなのに勿体ねえだろ」

「……そうだな。少し落ち着いたら、連れてきても良い」

 

 ゼルシオーネは左の手のひらでお湯を掬うと、二の腕から手先にかけて掛け撫でていく。

 

「ついでにラグルスとヴァルデも誘うか? あいつらもたまにはこういう所に連れてくるのもいいだろ」

「やめておけ、また殴られるぞ」

「あれは単なる事故みたいなもんだ。ちゃんと言えば大丈夫だろ、多分」

 

 殴られるというのは今から数ヶ月前、タイガが誰もが寝静まった夜中に大浴場に入ろうとした際に、偶然遅めの入浴を終えたラグルスと鉢合わせしてしまった件のことである。ラグルスは苦手なタイガの逞しい肉体と下半身に生えた雄の象徴を、タイガはラグルスのツルツルペタペタとしたあられも穢れもない裸体を目にしてしまい、怒りと恥ずかしさに混乱した彼女が彼の顔面を思いっきり殴ってしまったのだ。

 幸い、魔導装甲を纏っていないラグルスのパンチにそれほど威力はなく、タイガは鼻血を流す程度で済んだ。そして、その後はお詫びとして彼女にアイスクリームを奢り、パディなんちゃらという現地民から貰ったレムリアのぬいぐるみを渡した(本人からは『こんなのすぐに捨ててやる』と吐き捨てられたが)。

 

 因みに、タイガはラグルスの裸を見ても興奮しなかったようで、その理由に関しては『あいつはそういう目で見れない』とのこと。タイガにとって彼女はそういう目で見れないらしい。なお、彼女から煙たがられていることにも気づいていない。

 

「第一、私がここに連れてくるのは愛してやってもいいと思った相手だけだ。ラグルスはまだ子どもだし、ヴァルデに手を出そうとも思っていない」

 

 尤も、ヴァルデに関しては既に目の前の誰かさんの虜になっているから、もともと狙ってなどいなかったが。

 ゼルシオーネがそんな言葉を胸の内で呟いたことなど知らず、タイガは「そうか」とだけ答えた。

 

 暫くして、2人は再び景色に目を向ける。天を貫くほど恐ろしく高い創世の御柱が見えるのは言わずもがな、壁から輝きを漏らした帝都、白い頭の山岳、荒野に点々と存在する草原と街、星の光に照らされた暗闇色の森林等々、崩壊が進んでいるとはいえ、その美しさは1つの芸術である。

 

「ゼルティスがあっちってことは、花畑はあそこら辺にあったのか」

「花畑? 何の話だ?」

「あるって。ほら、昔嬢ちゃんに言われて行っただろ。丘の上の綺麗な花畑」

「……あれか」

 

 ゼルシオーネは奥底にしまっていた記憶を鮮明に甦らせる。

 それは昔、タイガとゼルシオーネは1度だけアイネスから課せられた極秘任務として、グレイスを含めた4人で花畑へと散歩に出かけたことがあった。2人に怪我をさせれば自身の出世が終わるという何とも理不尽な任務であったが、それはそれで4人は幸せな時を過した。

 

「よく覚えていたな」

「ああ、結構楽しかったからな。お前の花冠も良く似合ってたし」

「なっ、どうしてそういう余計なことまで覚えているんだ」

「覚えてて悪いのか」

「今すぐ忘れろ……もう」

 

 キッとした顔でタイガを睨み、ゼルシオーネは湯に濡れた頬を紅くする。

 

「でもなくなっちまったかぁ。あいつらも連れていきたかった。花なんかに興味があるか分からないけどな」

「…………」

 

 色とりどりの花が咲いていた花畑があるはずの遠くの丘、しかし今は、目で見て分かるほどに形を変えてしまっていた。おそらく、アイネス達と戯れた色とりどりの花はどこにもない。

 あそこだけではない、自然災害が多いこのご時世、もしかするとここから見える場所全て、下手をしたらこの宿も、いつ消えてもおかしくないのだ。

 

「タイガ」

 

 呼ばれたタイガは視線をゼルシオーネに向ける。彼女の目は、いつにも増して真剣なものであった。

 

「お前は……帝国は今のままで続けていけると思うか?」

「……どうした、突然」

「私達は、一刻も早くアトランティスの崩壊を食い止めるために他国へと進行している。レムリアへの侵略も、そもそもはそのために実行したものだ。実際に魔力確保のための案もいくつかあった。

 しかし、今やお前のトラムの力(接続改装)によって解決の兆しを見せている。それは魔力が枯渇していた帝国にとって、強いてはアトランティスにとっては思いもしなかった幸運と呼べるだろう。

 …………だが、このままお前が他の女性と接続改装をして魔力を生み出すことが、アトランティス崩壊の根本的な解決にはならない気がして仕方がないのだ。実際に空の裂け目は防げても、創世の御柱の崩壊は改善できていない。それを防ぐ方法を探るために帝国は尚侵略を続けている……これでは、見えない何かと終わりのない小競り合いを続けているみたいだ……」

 

 1度溢れ出たものは止まらず、ゼルシオーネは現在のアトランティスが立たされている窮地への本音を漏らす。言葉の一つ一つが重く、それを吐き出す彼女の姿はどこか弱々しかった。

 

「レムリアへの今後の扱いについても課題は残っているが…………第一、お前はこれで良いのか? 下手をすれば死ぬまで接続改装を、他にも複数の女と関係を結ばなければならなくなるかもしれないぞ?」

「…………そうか………………そうだなぁ」

 

 タイガはぶつぶつと呟き、口を一旦閉じる。

 そして数秒ほど顔を空に向けると、口を開いた。

 

「…………俺はな、記憶もなにも無い状態でここに連れてこられて、殺されそうになっていたのを嬢ちゃんとお嬢に助けられた。あねさん(前皇帝)にも色々と世話になったし、今の俺があるのは、お前や嬢ちゃん、今いるみんながいたからだ。それに占領地やあそこに住んでる奴らのこともある。俺にとって、この力はいわば恩返しのために使ってるようなもんだ」

 

 今までアイネスやグレイスに忠誠を誓ってきたタイガ。女性を愛し抱くという行為に対しては多少面倒くさい考え方をしている彼だが、幾多の行為を経たことで、帝国を、世界を救うためなら完全にゲネシスを修復する方法が見つかるまで、命が果てるまで魔力を作り続ける覚悟は出来ていた。そのためなら、複数の女性との接続改装も厭わない。

 

「けど……本当は…………」

 

 かこんっ! と硬い植物で造られたししおどし擬きの乾いた音が響くなか、彼の言葉をハッキリと聞き取ったゼルシオーネは彼の答えに「そうか」とだけ返した。

 

「……すまないな。つまらないことを聞いてしまった」

 

 捨てるように言うと、ゼルシオーネは立ち上がり、豊乳をぷるんと揺らしながら濡れた床を踏む。

 

「お、もう上がるのか」

「先に部屋に戻る。少し逆上せてしまった」

 

 水気のある足音を立てながらゼルシオーネは入口へ向かう。

 

「そうだ」

 

 と思いきや、ある程度進んだところで振り向いた。

 

「懲罰四剣はお前が連れて行け。彼女達はお前の女だ。自分の女ぐらい自分で楽しませろ」

「え? お、おう」

 

 それだけ言い残すと、ゼルシオーネは白い湯気へと消えていった。

 

 残されたタイガは最後の言葉について考えながら、ゆらゆらと浮遊していた酒器を掴み、中の酒を直に飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

 

『紹介する。我々の同士となるタイガだ』

 

 ──なんだ、ここ。全く見覚えがねえ。

 

 ──あれ、誰だっけ……この子。すげー虚しそうな目をしてやがる。

 

『ふむ、男性型とは、珍しいですね』

 

 ──誰だ、この姉ちゃん。いや、姉ちゃんって歳……なのか? 

 

『ええ、確かに感じるわ。あなたの中に隠れる覇気が…………さぁ、あなたの力がどれほどのものか、オレに見せてちょうだい』

 

 ──いきなり喧嘩売ってくるなんて。すげぇ好戦的だなぁ、この姉ちゃん。

 

『へー、君もボクらと同じなの?』

 

 ──あれ、この子……なんか覚えてるような……名前は確か。

 

 

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

『君って変わってるね。こんなことを楽しむのが趣味だなんて。ボクらには無意味なのに。ま、暇つぶしにはちょうどいいかな』

 

 ──なんていうけど、なんだかんだ君も楽しそうじゃないか。

 

『また野生動物を狩って食べているの? あなたには必要のないことでしょうに。そんな無駄なことをするぐらいなら、オレとこの前の決着を付けましょう? あそこまで追い込まれたのは初めてなの、血が騒いでしょうがないわ』

 

 ──そういうなよ、こういうのも結構楽しいぞ? 

 

『あなたは、また私の可愛い僕に悪戯を働いたようですね。ここはきついお仕置が必要かしら?』

 

 ──いや、イタズラじゃなくて……ごめんなさい。

 

『そうか……お前は、有り得たかもしれない可能性(完全なるイレギュラー)なのだな』

 

 ──俺は俺、君は君だ。

 

 

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

『どうしてかな。君と一緒にいると、奥底で眠っているものが蘇りそうな気がするんだ……これ、なんだろう?』

 

 ──それはな……。

 

『……へへ、そっか』

 

 ──いい笑顔だ。

 

 ──いつか、俺が思い出させてやるさ。

 

『……うん』

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

『今回も引き分けね。それにしても、あなたにグングニルの因果律は無意味ね』

 

 ──そうか? 当たるとまあまあ痛いんだが。

 

『まあまあで済む時点でおかしいのよ。叩き落とすなんて以ての外。けど、だからこそ殺りがいがあるわ』

 

 ──褒め言葉として受け取っておくよ。

 

『……どう、タイガ。いっそのこと、オレの世界で暮らさない? あなたなら余裕でランキング上位に立てるはずよ。いいえ、間違いなくオレと同等になれるわ』

 

 ──はは、遠慮しとく。そういうのは趣味じゃないんだ。あんなんでも、俺にとっては大切な世界だ……それに、毎日殺されそうになるのは勘弁だからな。

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

『ホルスとセクメトを手懐けられるだなんて、後にも先にもあなたしかいません』

 

 ──笑ってないで助けてくれよ。デカい上に結構重いんだそ、こいつら。

 

『ふふ、あなたが懐かせたんですから、自分でどうにかしてください』

 

 ──はぁ、もう。

 

『…………タイガ』

 

 ──ん? なんだ? 

 

『……あなたは、死についてどう思いますか?』

 

 ──そうだな……。

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

『タイガ。試しに────にやっていたことを私にしてみせろ』

 

 ──別にいいけど……ほら。

 

『……やはり理解出来ぬ。何故こんなことで────はあれほど笑みを浮かべている』

 

 ──君にもいつか分かる時が来る……かもな。

 

『……タイガ、いつまでやるつもりだ』

 

 ──ん? ああ、ごめんごめん。

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

『あははっ! ホント楽しいよ!』

 

 ──だろ? 

 

『ほら、タイガも笑ってよ!』

 

 ──ああ。

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

『……ねえ、タイガ』

 

 ──なんだ? 

 

『最近、やけにあの3人のこと見てない? 特に胸の辺りとか、そういうの好きなの? (ボクだって大きいはずなのに……)』

 

 ──そうか? 俺はいつも君を見てるつもりだけど? 嫌か? 

 

『……ずるいよ、そういうの』

 

 ──なんなら、これからもずっと────のことを見ていようか? 

 

『……それって、一緒にいてくれるってこと?』

 

 ──ああ。

 

『……ホントに……ずっと、ボクと一緒にいてくれる?』

 

 ──約束するよ。

 

『じゃ、じゃあさ……約束の印に、しようよ』

 

 ──何を? 

 

『ほら、前に言ってた…………口と口を合わせる……あれ』

 

 ──いいぞ。

 

『じゃあ……んっ』

 

 ──…………。

 

『…………ほんとに、ずっと一緒だよ? 何処にも行っちゃダメだよ?』

 

 ──ああ、約束する。

 

『……えっへへ、なんだか体が熱い気がする』

 

 ──俺もだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────

 

「…………?」

 

 タイガの泊まっている旅館の一室。

 

 壁や天井には帝都と同じ真っ黒な素材が使用されており、それを高品質、一級品な絨毯や家具達が自由に彩っている。窓壁は全面がガラス張りで、寝ながらも外の風景を眺めることができる。旅館自体の外装は古風な旅館だが、内装は高級ホテルに近い。

 

 その部屋の中で、逆上せ気味だったタイガは、何故か一定の距離を取るゼルシオーネを横に夕食をたらふく食べてから、自身の背丈よりも大きいベッドの上ですぐに熟睡していた。のだが、謎の違和感に目を覚ましてしまった。先程まで悪夢に魘されていたような気もするが、今の彼は曖昧にしか覚えていない。

 

「(おめぇ…………)」

 

 タイガは体にのしかかる何かの重さを感じ取る。自分の体とは違うそれは生暖かく、腹部に柔らかい感触が走っている。さらには、乳首辺りをザラついた何かが撫でるように触れている。

 

「……はっ?」

 

 タイガは頭を少し浮かせ、自身の体を見る。

 

 そこには、毛布の代わりに謎の人影が体を覆うように乗っかっていた。紫髪には見覚えがあり、その首からは自身がプレゼントした紫色の宝石がついたペンダントを下げている。その人影は、本来なら別の部屋で眠っているはずである。

 

「ぜ、ゼル……?」

「んっ……起こしてしまったか」

 

 名を呼ぶと、影の主であるゼルシオーネは動かしていた舌を止め、両目で彼を見つめる。彼女の身体はポカポカと温まっており、その熱が薄めのバスローブ越しにタイガにも伝わっていた。バスローブからはみ出した脚がタイガの脚に絡まるようにつき、彼の動きを封じる。

 

「なにやって……うっ……」

「いいから、じっとしていろ」

 

 タイガの制止も聞かず、ゼルシオーネは彼の体を舐める。舌先で熱い胸板の先に着いた乳首を遊び、そのまま流れるように鎖骨辺りまで舐めていき、はむっと骨にしゃぶりつく。彼女の動きに合わせて、大胆に胸元が開いたバスローブから姿を見せている大きな谷間も潰れながら彼の体を撫でる。

 

「れろっ……んっ」

 

 そして這うように動き、流れるように頭を首元に移動させると、蛇のように彼の右首筋に噛み付き、白い歯をくい込ませる。

 

「くぁ……」

 

 タイガは小さな苦声を漏らした。毒など流れていないはずなのに、噛まれた場所から熱い毒々しいものがタイガに流れ、体中を痺れさせる。

 

「ふぅ……んっ♥」

 

 湿った鼻息をかけながら右から口を離すと、今度は左の首筋にも噛み付き、同じように毒を流し込む。ゼルシオーネの束ねられた紫髪からはほんのりとした甘い香りが漂い、直に嗅いだタイガは思わず意識を飛ばしそうになる。

 

「ゼル……おま、何して」

「んちゅ……安心しろ、旅館の者には私達の行為を気にしないよう暗示をかけている」

 

 ゼルシオーネは顔を上げ、彼を見下げる姿勢で色っぽい視線を向ける。見下げると言っても、唇と唇が触れ合うギリギリまで顔を近づけていた。

 

「いや、そういうわけじゃねえ……」

「悪用はしていないし、ちゃんと必要な場面で使っているのだから、文句はないはずだ」

「お前、答えになぐっ……っ!?」

 

 つらつらと文句を垂れようとするタイガの口を、ゼルシオーネは自身の唇で塞ぐ。ぷっくりと潤みを持った彼女の唇はタイガの口角も塞ぐようにピッタリ吸い付き、その自由を奪う。

 

 そして吸い付いたまま、ゼルシオーネはタイガを喰らう。彼女が唇を動かせば、彼の唇もそれに合わせて窄み、彼女が舌先を入れれば、彼の舌も誘われるかのように彼女の方へと舌を伸ばす。

 

「んっ♥はむっ、ちゅっ♥」

 

 2人の舌肉は互いを確認し合うと、蛇の交尾のように体を巻きあい、螺旋を描くように絡め合う。表面の甘い唾液が混ざりあって愛液へと変わり、2人の口の中へそれぞれ溶け込んでいく。

 

 あまりにも強引なやり方にタイガはゼルシオーネを止めようとするが、毒を流し込まれた彼の体は一切の自由を奪われ、ただ一方的に彼女に翻弄されるしかなかった。

 

「んっ…………ぇっ♥」

 

 ゼルシオーネが口を離すと、中で絡み合っていた大量の唾液が外へ溢れ出し、舌先と舌先の間に濃いめの糸の橋を繋げる。

 糸が切れるころ、ゼルシオーネは口を開いた。

 

「言っただろう。ここには、愛してやってもいいと思った者しか連れてこないと……肌を許すのも含めてな」

 

 暗闇で卑猥に輝きを跳ね返す瞳が、タイガの姿を映す。

 

「……お前、俺の事は」

「……ああ、そうだ。私はお前という男が嫌いだ。お前みたいな奴が向こうの世界にわんさかいると思うと、ストレスで胸焼けが起きそうになる。

 だが、タイガという人間はこの世に一人しかいない。鈍感で馬鹿で阿呆で、親衛隊としても異質で、これほどまでに手間のかかる奴はお前だけだ……そんな奴に、私はこの体を許してやろうというのだ」

「ゼル……シオーネ」

「…………可笑しなものだ、あんな最低な出会いをしたのに…………」

 

 自分でも不思議でならない、そう言うとゼルシオーネは、すっとタイガの体から退く。タイガも痺れから戻った体を身動ぎ、上半身を起き上がらせてゼルシオーネと向かい合う。

 薄いバスローブの肩部分を肌蹴させ、ペンダントを間に挟み込む大きな胸で作られた谷間、ぺたりと両足を広げる彼女の姿は、帝国一の実力者とは思えない乙女であった。

 

「お前は、私を狂わせた。お前さえいなければ、今ごろ私は親衛隊のトップとして、好きな女性を調教して、あらゆるものを意のままに支配していたのに…………お前は長い年月をかけて、ゆっくり、無意識に、無自覚に……私の大切な時期の殆どを奪っていった。

 けど、不思議と不快には感じない、これでもいいと思えた…………だから、お前になら許してもいいと思えた」

 

 ゼルシオーネは両手でタイガの右手をすっと掴むと、そのまま自身の果実へと誘う。

 

「私のためにも、この世界のためにも……この体を抱くがいい」

 

 そして右手を果実に押し付けさせる。程よい柔らかさを持った豊胸に指の一つ一つが沈み、それに合わせて形を変える。

 

「…………」

「……お前は、この世界にたった1人の、我がバトランティス帝国の覇王だろう…………そんな男が、何時まで怯えているのだ」

「………………」

「お前の彼女達への思いが狂いそうになったら、その時は私がテロスで暗示をかけてやる…………だから、今は私のことだけを見ろ」

 

 逡巡するタイガに、ゼルシオーネは静かに発破をかける。

 

 暫くしてタイガは呼吸を整えると、答えるように右手に力を込めて豊乳を優しく握る。バスローブ越しでも分かる柔らかさを持つゼルシオーネの豊乳は、揉む度に彼の手にふわふわとした感触を跳ね返す。

 

「ん……そう、それでいい、私を満足させ、ふぁっ♥あっ♥」

 

 ときに指がピンと立った突起を挟み、その度にゼルシオーネは甘い声を漏らす。

 ある程度揉みしだいたあと、タイガは左手を伸ばして彼女の右肩を掴むと、ゆっくりと抱き寄せる。ゼルシオーネも従うように彼に体を任せる。

 

「タイガ……」

 

 甘くうっとりとした瞳を向けるゼルシオーネ。素肌から伝わる彼の熱が自身の胸を高鳴らせる。

 

「…………んっ」

 

 そして2人は2度目の口付けを交わす。今度は一方的なものでなく、お互いに了承した上でのディープキスであり、タイガもゼルシオーネの口内に舌先をねじ込ませる。

 

「んちゅっ……はぁ、はむ、ぢゅるっ♥ぢゅぅっ、じゅるっ♥」

 

 水気を帯びた舌は畝り、求め合うように体を交わらせる。ねちょっとした卑猥な音が唇の隙間から漏れだし、時に離しては軽い息継ぎをする。その際に出るゼルシオーネの甘い吐息がタイガの顔にかかり、彼の興奮と野生の性欲を掻き立てさせた。

 

「んっ……んんっ♥」

 

 もっと奥へ伸ばそうと、タイガはゼルシオーネの左胸を揉みしだきながら、背中に手を回してさらに引き寄せる。ゼルシオーネも離れまいと、腕を彼の背中に回し、同じく抱きつく。

 より近く、深く抱きついた2人の熱はほんわりと上昇し、火照った肌が触れ合う。2人がベロを塒を巻くように動かせば動かすほど、甘い唾液が口内から溢れて糸を引いてシーツへと垂れ落ちる。

 

 しばらくして、タイガとゼルシオーネの腹部に熱くて硬い感触が伝わる。ゼルシオーネは物惜しそうにしながら、一旦顔を離して真下に視線を向ける。向けた先では、タイガの股間辺りから不自然な盛り上がりが出来ていた。

 

「……なるほど、これがあいつらの言っていた」

 

 ゼルシオーネは体を離すと、タイガの両足の間に入り込み、盛り上がる山を確認する。バスローブ越しでも伝わるその巨体は、姿を見せる前から獲物を求めて蠢いている。

 ゼルシオーネはバスローブの腰紐を掴み、するりと解いた。

 

「……っあ」

 

 抑えられていた獣がその身を振るわせながら姿を現すと、ゼルシオーネは目を剥く。もともと裸の付き合いはしているため、彼の下半身にぶら下がるものは何度も見てきたはずなのだが、どれも彼が興奮していない時の軟弱な状態のものである。

 だからこそ、今目の前でその倍以上に首を長くし、太く固まった黒き獣に恐怖と驚愕を隠せなかった。女性の体を貫き、快楽に堕とすと噂の凶器が今、目の前で自身を求めていた。

 

「ふふ、ふふふ……そうか、ようやく私で興奮したのか」

 

 額から汗を流しながら、ゼルシオーネは不敵に笑う。さっきまで自身の裸を見ても何の反応を見せなかった彼が、今は自分に興奮して獣を勃起させて揺れている。

 

「ん……んっ」

 

 吐息を吹きかけつつ、ゼルシオーネは手で彼の巨体を支える。そして先端にキスをするように唇を密着させると、そのまま根元へと向かってゆっくり頭を下ろし、獣を包み込んでいく。

 

 …………ぢゅるるっ

 

 ある程度まで含んだところで、ゼルシオーネは搾り取るように獣を吸い始める。タイガとのキスで唾液に満たされた彼女の口内は、彼の獣棒を暖かく包み込み、そのまま飲み込んでしまいそうな感覚で彼の性欲を刺激した。

 

「(これが、タイガの味か……)」

 

 自分の秘部にはついていない獣棒、どの部分よりも黒いその味は、生臭くて苦い。しかしゼルシオーネはそれを離さず、寧ろ求めるようにむしゃぶり味わう。

 

「んぢゅ、んんっ、ふっ♥……ぢゅっ♥じゅるっ」

 

 じっくりと味わった後、ゼルシオーネは顔を動かし始める。火傷しそうなほどに熱い獣は、ゼルシオーネの口の中いっぱいに収まるほどに逞しく、奥へ進む度に彼女の喉奥をつく。しかし彼女は嗚咽を吐くこともなく、舌先で幹をくすぐりながら獣を口から出入りさせる。

 

「んっ、んぶっ……じゅるっ♥」

「ゼル……うぁっ」

 

 初めてにしては激しく、慎重性のない口内奉仕。大胆ながらも頬肉で器用に獣を擦り、タイガを快感に浸らせるそのテクニックは、親衛隊隊長である彼女を体現しているようだ。

 

「ちゅっ、ぢゅるっ♥ちゅ♥…………じゅるるるっ……れろっ♥」

 

 ゼルシオーネは潤んだ上目遣いでタイガを見つめながら、舌肉を器用に動かして獣頭の首根っこを舐める。裏筋を押せばタイガの腰が震え、吐口を攻めればビクリと獣が跳ねる。

 

「うっ…………あっ」

 

 歯を立てず、肉で包み込む彼女の口壺はまさに一流の類に入る。そんなもので獣棒を包まれてしまったタイガは耐え難い快感に襲われてしまい、すぐに2つの玉に溜まっている種の素を通り道へと這い上がらせた。

 

 彼の呻く声を合図と受け取ったゼルシオーネは、頭を動かす速度を上げる。2人の体から無意識に光の粒子が湧いた。

 

「ゼル、そろそろ…………うっ……!?」

「んうぅぅぅぅぅっ………………んっ」

 

 そしてタイガは絶頂を迎え、ゼルシオーネの中へと熱いものを吐き出した。獣棒の先から大量にドロドロと流れ出すタイガの白濁液は、あっという間にゼルシオーネの口の中を泳いで汚す。

 その苦い味にゼルシオーネは眉を顰めながらも、落ち着いた様子で1回1回、よく味わうように飲み込んで胃の中へと落としていく。

 苦いながらもどこかほんのりと甘い味が隠れているタイガの熱いものを、ゼルシオーネはごくごくと喉を鳴らしながら一滴も零すことなく、口を窄めて吸い出す。さらに促すように、指先で2つの玉を優しくくにくにと握り始めた。

 

「んっ、んぐっ♥」

 

 白濁液を搾り取る最中も、ゼルシオーネはタイガに視線を向けた。その瞳には光の粒子が踊り、更なる快感を求めるように彼を見つめていた。

 

「んくっ、んくっ…………んっ」

 

 ようやく獣が震えを止めたところで、ゼルシオーネは音を立てて通り道の残り汁を吸い出す。全てを吸い終えたあと、ゼルシオーネはゆっくりと獣を口から抜き取り、口内に残った分をゴクリと飲んだ。

 

「……美味しい……ああ、これなら永遠に舐めていられる……」

「……じゃあ、今日は舐めて終わるか?」

 

 タイガの言葉に、ゼルシオーネは「ふふ、まさか」と淫らな笑いを返す。そして体を起こして纏っているバスローブの紐を解き、はらりとベッド上に落とす。

 

 再び露わになった彼女の裸体。

 

 腰周りも臀部分も、体の全てが鍛えられたことによって引き締まっている。そんな中で、彼女の2つの豊乳はより強調され、先に付いた大きめの突起は固く立っていた。裸にペンダントだけ身につけているのもあって、余計に淫猥に見える。紫の茂みに覆われた下半身の秘部からも透明な液体が流れており、既に彼女が軽い絶頂を迎えていたことを示していた。

 

 その姿にタイガもタイガの獣も反応したようで、獣棒は瞬時に硬さを戻していた。この速さ、これは獣を通り越して化け物だ。

 

「……溜めてきたもの、たっぷりと吐き出させてもらう。お前も吐き出すが良い」

「ああ」

 

 タイガは胡座をかいて姿勢を整える。その上に乗る形でゼルシオーネは跨り、彼の両肩に手を置きながら膝立ちで獣の頭に茂みの中の秘部をあてがう。

 

 ──ずぶっ♡

 

「んあっ、はぁっ……♥」

 

 狙いを定めると、ゼルシオーネは腰をゆっくりと下ろし、獣頭を2つの小丘の谷間へと押し付ける。獣頭は徐々に秘裂を開かせながら穴の中へと進み、彼女の肉道へと目指す。穴自体は獣頭の直径よりも小さいため、無理やりこじ開けられるようね感覚を彼女に伝える。いや、むしろ彼の獣自体が大きすぎるのかもしれない。

 

「ふぁ、あぅ……くうっ」

 

 獣が肉道に辿り着いたところで、ゼルシオーネは肉穴を守っていた大切な何かが破れたことを感じ取る。だが不思議と痛みは感じない。そのまま下ろし続け、獣を中へと挿入していく。

 引き締まった彼女の中もまた、同じく引き締まっており、通すだけで獣棒を締め付けている。途中の壁についた襞襞としたものが、タイガのものを中へ中へと誘いこむ。

 進む度にビクビクと震える彼女の体と表情、それに合わせて果実もふるりと揺れる。

 

「ゼル、無理はするな」

「私を誰だと思っている……んひんっ!」

 

 そして根元付近まで挿入されたところで、ゼルシオーネはらしくない甲高い悲鳴をあげた。

 

「おい、大丈夫か?」

「ん…………んん」

 

 ゼルシオーネは顔を顰めながら、下腹部を襲う謎の快感に必死に耐える。少しでも力を抜けば、だらしのない雌の声を上げてしまいそうだ。

 

 少し刺激に慣れてきたところで、ゼルシオーネはやっとの思いで口を開いた。

 

「ああ……分かるぞ。お前のものが……あっ、私の中に収まっているのが……これだけのモノを持っていながら、何故隣にいた私を襲わなかったのか……ん、不思議でならない」

「……ごめん」

「……お前はエルマ一筋な頑固だからな。こういうことに目覚めたのだって、あいつと恋に落ちたからだろう」

 

 もしあのまま接続改装に目覚めなければ、タイガは死ぬまでエルマと惚気けていただろう。いや、目覚めた後も挿入行為はエルマとしかしてなかったのだから、どちらにしろ懲罰四剣がグルになって罠に嵌めなければ、どうにもならなかったに違いない。何ともめんどくさい男だ。

 

「……もし初めてが私だったら、今頃私はお前と……」

 

 言葉の続きをタイガの耳元で囁くゼルシオーネに、タイガは背中に手を回し、彼女を支える。

 

「…………んひゅっ♥ああっ♥」

 

 ゼルシオーネはゆっくりと腰を浮かせ、そのまま下ろす。初めてなのでスローで数回往復させるが、すぐに慣れるとそのまま一定の速度で腰振りを始める。

 

「ふぁ、これはっ、あぅっ♥ああっはぁっ♥」

 

 腰を振る度にゼルシオーネは高い声を上げる。獣は肉道にみちっと収まり、その形を彼女の性器に記憶させる。中の肉の襞は、出入りする獣を離すまいと絞るように吸い付く。それが擦れ合うことで、ゼルシオーネに未知の快感を伝えているのだ。

 

「あっ、はぁっ、あっ! 、んんっ!」

「うっ、くぅ……っ!」

 

 激しくくねらせた腰つきに、ゼルシオーネの大きな豊乳が縦横無尽に揺れる。乳首も乱れるように揺れ、結っていた髪も解け、紫色の羽を淫らに揺らす。今にも快感で倒れそうな彼女の体を、タイガは両手で支える。

 

「な、なんだっ、これ、やぁぁっ♥いぃぃぃっ♥」

 

 初めて味わう刺激、体の内部から襲い来る謎の感触、手の届かない秘密の場所に走る電撃のような快感に、ゼルシオーネは混乱したように咲き乱れる。

 だがこの快感は決して不快なものではなく、ゼルシオーネも病みつきになったように、ギシギシとベッドの軋む音を奏でながら腰振りを止めない。

 

「あ……っ! た、タイガ……もっと奥まで……ちょうだい」

 

 見せたことの無い甘えた声と瞳で懇願するゼルシオーネ。タイガはそれに応えるために彼女を抱きしめる。大きめな突起が当たり、豊乳が彼の胸板で潰れて広がる。両腕も彼の背中に回し、きつく抱きつく。

 

「は、はぁっ、あっ♥んあぁぁっ♥」

 

 途切れ途切れの息継ぎをしながら、ゼルシオーネは遠い目で部屋の隅の暗闇を見る。タイガもタイガで、体を密着させたことでさらに興奮し、臀の割れ目や腰周りを愛撫する。

 

「はっ、あっ、当たって、あぁっ♥」

 

 タイガの巨獣はゼルシオーネの奥の口に触れると、動きに合わせてキスを交わす。決して自分では届くことのない場所をトントンと突き上げられる快楽に、ゼルシオーネは震えた声を漏らした。

 

「……はむっ」

「ぁ゛♥」

 

 タイガはゼルシオーネの首元に噛み付く。激しい抱き合いで滲み出た汗はしょっぱく、しかし癖になる味をしていた。

 ゼルシオーネが蛇の牙なら、タイガは虎の牙。肉食獣故の獲物を確実に仕留める鋭い噛みつきは、ゼルシオーネを放心とさせる。

 

「(あ、太くなった……)」

 

 中を擦るタイガの獣が一回り大きくなり、さらに蜜壺を押し広げた。男との行為すら初めてのはずなのに、ゼルシオーネにはこれが何を意味するのか、奥深くに眠る雌としての本能が瞬時に理解し、肉道をキツく絞り始めた。

 

「ゼル、そろそろ……」

「ま、待て……」

 

 タイガがラストスパートをかけようとしたところを、ゼルシオーネは声を出して止めた。

 

「どうした?」

「ん……向こうでは、これを中に出すことで子どもを生み出すのだろう?」

「ああ、らしい……な」

「なら、もし私の中に出したら……できるかもしれないのか?」

「……可能性はあるかもな」

「……なら、外に出してくれ。万が一、隊長である私が授かるのは、今の状況ではまずいし、私も……あっ、望んではいない」

「……わかった。じゃあ、直前に外に出すぞ」

「あっ、あぁ、頼む……んぁっ♥」

 

 ゼルシオーネは再び腰振りを始める。

 

 ラストスパートということで、今までよりも強く腰をうちつけ尻肉に波を打たせる。愛液がぐじゅりとかき混ぜれる音も相まって、部屋中には汗と汗がぶつかり合う卑猥音と光が立ち込めている。

 

「タイ、ガ…………んっ」

 

 ゼルシオーネはタイガの唇を奪い、貪るような強引なキスを交わす。激しい目合の最中なので、唇の隙間からは多量の唾液が溢れている。

 

「んぢゅ、んんっ♥」

 

 しかし汚い汚くないなどお構い無く、2人は汗と唾液を体中に浴びながら交尾を続ける。窓から射し込むぼんやりとした光が、部屋の壁に2人の影姿を大きく映す。

 

「(あ、ダメ、い……くっ♥)」

 

 絶頂寸前のゼルシオーネは、よりキツくタイガを抱きしめる。その瞳には青緑色の光、テロスのコアの色が漂っている。それはタイガも同じで、血のような真紅色の光を纏っている。

 だがここはただの旅館、いつもの専用部屋ではない。2人はただ欲望に任せて身体を交わらせた。

 

「タイガ……ぁぁ」

「ああ、俺も」

 

 唇を離し、白い吐息を掛け合いながら、互いに確認をし合う。

 

「いっ、いぐっ……いぐっ♥……あっ……い、くぅぅぅぅぅうううぅうぅんんんんっ♥」

「くっ……うぉっ!?」

 

 ゼルシオーネは体を仰け反らせながら嬌声を上げ、タイガは獣棒を引き抜き、彼女の腹部に押し当てながら2度目の絶頂を迎える。

 2人の体から湧き上がった光の粒子は空中で絡み合うだけに留まらず、全面ガラス張りの窓から外へと逃げる。

 

 ──────びゅぐるるるっ! 

 

 それと同時に、タイガの白く濁った体液が大量に放出される。それらはゼルシオーネの整った顔や腹部、胸に目掛けてべちゃりと飛びつき、獣の脈動が終わるまで放たれ続けた。

 

「はぁっ、はぁっ…………ぇ♥」

 

 最中、口端に付着した白液をゼルシオーネは絡めるように舌先で拭う。苦味と甘味の混ざるそれは、永遠に飲んでいたいほどに彼女の味覚を狂わせた。

 

「…………終わった……のか?」

「ああ、終わった」

 

 光が止み、数分過ぎて落ち着いたところで、2人はお互いの顔を見せ合う。両者ともに体中から汗を流しており、軽い息切れを起こしている。

 

「……お前、昔より少し大人っぽくなったか?」

「……お前は、全く変わっていないな」

 

 白濁に汚れながら、ゼルシオーネは疲れた顔に呆れた笑いを浮かべる。

 そこには隊長としての威圧感は殆どなく、ゼルシオーネという1人の女性の表情を浮かばせていた。

 

「…………」

「……吸う、か? ……あっ」

 

 ゼルシオーネの誘いに乗るかのように、タイガは彼女の豊乳にかぶりついた。汗で蒸れた彼女の乳頭は塩っぽいながらも、どこか甘いとろりとした味をしていた。

 

「ふぁ、んん……ん♥」

 

 舌が乳首を舐め回し、乳輪ごと一吸いする度に、ゼルシオーネの体はビクリと小刻みに跳ねる。絶頂したばかりの彼女にとっては敏感すぎる刺激が走っており、水気のある吸音とともに色気混じりの艶声をあげる。

 

「ぷは…………どうする? このまま続けるか?」

「……そう、だな」

 

 初めての行為に疲れきったゼルシオーネは力が抜けたように後方へ倒れそうになる。タイガは咄嗟に彼女の体を支え、共にベッドに横たわる

 

「疲れてるから休みたい。けど……少しだけ、物足りないから……ここを弄って」

 

 紫の髪をベッドに広げ、ゼルシオーネは涙を溜めた瞳をタイガに向けながら、指先を割れ目に伸ばす。割れ目に隠れた秘穴からは、肉壺で激しくかき混ぜられた愛の蜜が溢れている。処女を捧げた証なのか、極小量の血も混ざって流れ出ていた。

 

「……ああ、分かった」

 

 それだけ言うと、タイガは右手を伸ばし、彼女の秘密の場所を触れる。

 

「ふっ、んん…………♥」

 

 触れて早々、タイガは敏感な部分を探り当て、指先で潰すように擦っていく。擦る度に、ゼルシオーネはぴくんと股と体を震わせる。

 

「た、タイガ…………」

「大丈夫だ、心配いらない」

「でも、私……んんっ♥」

 

 いつにもなくか弱い乙女声を漏らすゼルシオーネ。幾人もの女性を相手にしてきたはずなのに、同じ箇所を奉仕させてきたのに、どうしてタイガの攻めにこんなに感じてしまうのか。彼女自身もその理由は分からなかった。

 ただ分かるのは、彼がやってくれることに意味があるということだけだ。

 

「ふぁ、あ、んんっ♥」

 

 耐え難い刺激にゼルシオーネは体を悶えさせる。と言っても、絶頂したばかりの体に力は入らないので、実際は微動しているだけである。

 

「あ、や…………んあっ♥!?」

 

 途中、タイガは割れ目を少し開かせ、包んでいた皮を剥く。皮を剥がれた突起は割れ目から少し飛び出し、ぷりっとした初々しい身をさらけ出した。

 タイガは慣れた手つきで突起を摘み、乳頭を抓るように捏ね回していく。

 

「だ、ダメ、それ摘んじゃ……ぁぁ♥」

 

 1回2回と摘む度に、ゼルシオーネは雌声を発する。

 剥いたばかりのそれはどの部位よりも敏感で、挿入行為とはまた違った快感を与えた。

 

「ゼル……」

「はぁ、はぁ、あっ、やっ」

 

 帝国一の実力を誇り、周りからは恐怖と尊敬の念を集めているゼルシオーネ。

 だが今は、隊長としての威厳すらない、一方的に与えられる性的な快感に淫らによがる1人の女性でしかない。

 

「ふ、んん……んぁぁぁぁっ♥」

 

 そしてタイガがぷりぷりとした突起を爪で引っ掻いたその瞬間、ゼルシオーネは劈くような悲鳴を上げ、下半身を反りながら裂け目の穴から聖水を吹き出した。肉穴に眠る蜜とはまた違ったそれは、ぷしゅりという瑞々しい音を立てて吹き出され、シーツへと染み込んでいった。

 

「満足したか?」

「はぁ、はぁ……あぁ……」

 

 タイガと顔を見合せながら、ゼルシオーネは上気した様子で答える。そして一呼吸、二呼吸と息を整えると、ゼルシオーネは痺れる体を動かして彼に縋るように抱きつき、豊乳を押し付けながら、脚を絡ませて彼の胸元に顔を埋めた。

 

「しばらく、こうしていてくれ」

「……ああ」

 

 彼の胸の鼓動が聞こえる。真っ赤な血が送り出される音が伝わる。それに合わせて彼女の鼓動も速くなる。

 

 幾数年抱いていたこの感情、ゼルシオーネにとって彼への気持ちは異性としてのものなのか、はたまたタイガという人間に対してのものなのか……どちらにしろ、彼に対する気持ちは確かなのだ。

 

「(いつか、受け止めていいと、思えたら…………)」

 

 ゼルシオーネはある想いを胸に秘めながら、暫し彼に身を委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────

 

 なんだ……どこだ、ここ。

 

 白黒の砂嵐見てえなのが晴れたと思ったら、知らねえ場所に立ってる。

 

 俺は……なんだ? どこから来て、俺の名前は……

 

 いや、名前だけは覚えてる。

 

 俺の名前は……そう、タイガだ。

 

 ……いや、名前が分かったからなんだっていうんだ。俺は一体……? 

 

 なにか、大事なもんが抜けてる気が…………駄目だ、分からねえ。

 

『そこの侵入者! 止まれ! ここは帝国の領地内だぞっ!』

 

『貴様は何者だ! どこの国から来た!』

 

『……て、何あれっ!? 下半身のあれなに!?』

 

『変なの生えてる!?』

 

 ……なんだこいつら。変な鎧を着込んで寄って集って囲んで。

 

 つーか、そんな露出してて寒くないのか? いや、俺も真っ裸だけど。

 

『と、とりあえず確保ぉ!』

 

 おい、変なとこら触るな。だからそこは触ったらダメだっ……て! 

 

『きゃあぁぁぁっ!』

 

『吹っ飛ぶぅ!』

 

 やべ、やっちまった。

 

 

 

 

 

 

 

『皇帝陛下、この者は未知の魔導装甲を所持している上に、我が帝国の兵士に危害を加えました。何より体の作りが我々と違いすぎる、即刻処刑すべきです』

 

 なんだ次は……城……の中か? 

 

 確か押さえつけられて、その後散々痛めつけられて、それから…………

 

 つーか、どいつもこいつも薄着のくせに、やけに豪勢なもん身にまとってんなぁ。

 

『お待ちください、この者は恐らく世界に一人しかいない貴重な実験材料です。それに危害を加えたのは我々が接近したからだ。ここは処さずに監禁しておくべきかと』

 

『そんな呑気なことを言ってる場合なの? そこにいるそれは得体の知れない化け物も同じなのよ? 一刻もはやく対処するべきよ』

 

『だからと云ってすぐさま処理しようなど、あなた方の方がよっぽど軽率です』

 

 何かわからないけど、どっちにしろ地獄だな、こりゃあ。

 

 もうどうとでもなれ。

 

『あ、アイネス様!? 近づいてはなりません!』

 

 ……なんだ、この嬢ちゃん。

 

 すげぇ汚れのない目で見てきやがる。

 

『あなた、なにもの?』

 

『ねーさま?』

 

『こら、グレイス。あなたはまだ歩いたばかりなんだから、1人はあぶないわよ』

 

 眩しい、人間ってこんな眩しいものなのか。

 

『ふーん、さみしそうな目をしてるのね……ちょうどいいわ。あなた、あたしとこの子の召使いになりなさい』

 

『アイネス様、そのような世迷い言は』

 

『どうせこのままにしても殺すか解剖するんでしょ? なら、あたしがもらっていくわ。いいでしょ? みんなもそれでいいわよね? 文句があるならハッキリ言ってちょうだい』

 

『……ちょーだい』

 

 随分と強気な嬢ちゃんだ。隣のちっさい嬢ちゃんも真似してやがる。つーか、俺はペットかなにかか。

 

 けどこの子、結構体が震えてやがる。それを必死に我慢して俺を庇うだなんて…………ああ、この子達に拾われるのは悪くないな。

 

『さ、行きましょ』

 

『……さ』

 

 この子達、俺に手を伸ばして…………柔けえしあったけぇ。

 

『名前は?』

 

『……タイガ』

 

『タイガ、ね。よし、きょうからあたしたちがご主人様よ。こうえいに思いなさい、タイガ』

 

『……よろしく』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうか。なーんか見た事あると思ったら……これ、昔の記憶だ。

 

 自分のことを何も覚えてない状態で荒地を彷徨ってて、それで帝国に捕まって、処刑か実験材料にされかけてた所をアイネス嬢ちゃんに助けられたやつだ。あそこで拾ってくれなきゃ俺は今頃薬漬けかバラバラにされてたかもしれない。

 

 あの後、俺は離宮でアイネス嬢ちゃん達の身の回りの世話をして暮らしていた。

 遊戯から絵本、子守唄と掃除、お風呂、着替え、やれることなら何でもやった。

 

『ちょ、ちょっと。もう少しやさしくやって。背中の皮がはがれちゃうでしょ』

 

『タイガ、おうたへたー』

 

 まあ、下手すぎて怒られたけどな。

 

『タイガ、グレイスと遊んであげて』

 

『はい、嬢ちゃん』

 

『じょ、嬢ちゃんって……まあ、あなたらしいけど。ほら、グレイス』

 

『タイガ! ごほんよんで!』

 

『へい、お嬢』

 

『おじょー? なんでおじょー?』

 

『アイネス様が嬢ちゃんだからですよ』

 

『はぁ?』

 

『ふ、ふふ……』

 

『ねえさま?』

 

『あ、な、なんでもないわ。あ、そうだわタイガ』

 

『なんでしょうか?』

 

『あとで庶民の街から何か食べ物を買ってきて。城のみんなは下賎のものだって言って食べさせてくれないの。けど、あなたなら自分で食べるとか言って誤魔化せるでしょ?』

 

『そのぐらい、お易い御用です』

 

 懐かしい。こうやって嬢ちゃんに頼まれては、商店街から食い物を買って持ち込んでたもんだ。

 

 あの頃は嬢ちゃんたちの世話をするだけじゃじれったかったから、皇帝からも仕事を貰っていた。

 

 て言っても、ゼルティスで起きる喧嘩の仲裁やら犯罪者のしばきあげ、あとは半壊した店の建て直しや占領地での手伝いやら、俺がやれそうなやつだがな。男が俺しかいないってこともあって、いい抑止力になったとか。

 

 そのおかげで周りからは未知の生物とか言われて怖がられたけど、繁華街の女将さん達からは気に入られて、時々タダで飯をご馳走して貰っていた。占領地の奴らからも野菜とかおすそ分けしてもらってたけど、あの時の俺は今みたいに料理はできないし、かといって持ち帰っても城の奴らに没収されるだけだから、大体は施設とかに渡してたな。

 

『あの……おまえじゃなくて……ヴ、ヴァルデです』

 

 その時にヴァルデに初めて会って、お前呼ばわりして怒られたっけか。

 あいつとの付き合いも、考えてみると長いのかもな……子どもだったのにいつの間にかあんなに成長したし、歳の差はあるけど、ラグルスとも仲が良さそうで良かった。

 

 

 まあ、俺がそんなんだから嬢ちゃん達にこっそり屋台の売り物を持ってくるのも簡単だった。

 

『ねえさま! おいしいです!』

 

『そう、良かった。でもバレたらタイガが怒られちゃうから、みんなには内緒よ』

 

『はーい』

 

『ほら、タイガ。あなたにも分けてあげる』

 

『俺はいいですよ、あそこの人達にはいつも食わせてもらってるんで』

 

『あら、召使いが主人の命令に逆らうの?』

 

『……参ったな。そう言われちゃなにも言い返せねえ』

 

『なら、大人しく受け取りなさい』

 

『……ありがとう、嬢ちゃん』

 

『はむっ……!? んーっ!』

 

『グレイス?』

 

『あー、辛いやつに当たったようだ』

 

『もう、グレイスったら……くすっ』

 

 楽しかったなぁ、あの頃は。

 

 けど、嬢ちゃん達が成長するにつれて、世話は侍女がするようになって、俺も持て余してたトラムと自分の力のあり方について考えるようになった。俺だってそれぐらいは考える。

 

 そんな時だった、あねさん(前皇帝)から親衛隊に誘われたのは。

 

 どうやら俺の働きぶり、それとトラムのことを考えた結果、軍に入った方がもっとやり易いと判断したらしい。

 

 そりゃあ、反発がなかったわけじゃない。貴族でもない奴が親衛隊になるなんてのは基本的に有り得ないことらしいし、あの頃なんて余計に酷かったもんだ。

 

 だが、そんなことは関係なかった。俺も恩を返せるんだったらなんでもやるつもりだったからな。俺にできるのは力仕事ぐらいだ。

 

 

 

 そして入隊して日が浅い時に、俺はあいつに出会った。いや、喧嘩を売られた。

 

 朝っぱらから嫌がる相手に執拗く絡むあいつを捻って、それで喧嘩を売られて、その喧嘩を買ってぶっ飛ばしたのだけははっきりしている。

 

 初めは逆恨みしてくるわ、一緒に組み始めてからも軍人としての礼儀だとかどーだこーだ煩いわ、面倒臭い野郎かと思っていたが……あいつはあいつなりにみんなのことを考えていた。最低限の礼儀もあいつが教えてくれたな。

 

 それにあいつ自身、頭は回るし他の奴らを引っ張っていく器量も持ってる。相手が誰であろうと容赦はしない厳しさもある。力馬鹿な俺とは違って隊長としての素質が揃ってる奴だ。

 

 あいつがいてくれるおかげで今も自由にやれてる。俺だってあんな出会い方をしたやつと、まさかここまで長い付き合いになるとは思わなかった。

 

 

 

 ああ、そうだ。

 

 アイネス嬢ちゃんがいなくなって、俺が泣き喚いたとき、あいつは喝を入れてくれたっけか。

 ……俺にとって、嬢ちゃんがいなくなったのは、お日様の光がなくなったのと同じだった。もし、あいつが発破をかけてくれなかったら今頃……。

 

『タイガ先生、よろしくお願いしますわ』

 

『……あの……タイガ、様……あたし、ここにいていいの?』

 

『やっと……会えた……』

 

『…………よろしくお願いします』

 

 それに、あいつがいなかったら、エルマの教師、ましてや恋人になることも、ラムザを拾うことも、ルノーラと再会することも、クレイダに会うことも…………多分、あの四人と一緒にいることすらできなかっただろうな。

 

 あいつにも、みんなにも、世話になりっぱなしだ。

 

 こんなセリフ、偉そうでみんなの前では言えねえけど…………俺は、みんながいる今が、幸せで仕方ない。

 

 …………だから、俺はみんなを失いたくない。

 

 命に替えても、たとえ神が降ってこの世を消そうとしようとも。

 

 こいつ(トラム)と一緒に、跳ね返してやるつもりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

「……」

 

 夜空の光が微かに入り込んだ、明かりのない薄暗い空間。外からの雑音も聞こえない室内で目が覚めたタイガは、ぼんやりと照らされる黒い天井をじっと凝視していた。

 行為のせいもあって、腰辺りに違和感が残っている。しかし幾戦もの修羅場をくぐり抜けているおかげか、痛みはそれほど無い。

 

「…………はぁ」

 

 タイガは疲れたように息を吐く。どうやら先程までの光景は全て夢の中の話であったようだ。手には、自身の手を握ってくれた皇女2人の柔らかくて小さな感触が甦っていた。

 

 タイガは視線を天井から自身の右脇に向ける。

 そこには、小さな鼻息を立てて眠るゼルシオーネの姿があった。1人用の毛布の中に彼と共に体を潜らせ、寄り添うように体をぴたりとくっつけて、乙女のような寝顔を晒している。一戦後ということもあってか、長い紫髪と白い肌は薄暗い部屋でも分かるほどに艶やかとしており、それが余計に彼女の色気を卑しく映している。

 

 そんな彼女の姿に安心したタイガは数秒程見蕩れた後、小さな声で話しかけた。

 

「ゼル、起きてるか?」

「……お前の息で目が覚めた」

 

 ゼルシオーネはそう答えると、ゆっくりと瞼を開き、寝そべりながら彼へ上目を向ける。

 

「汗が酷いな……なにか悪夢でも見たのか?」

「いや、違う。昔の記憶が夢に出た」

「昔の? アイネス様か?」

「それとお嬢と、お前と、他の奴らも」

「……ほぉ」

 

 ゼルシオーネは適当に言葉を返す。

 

 初めてこの地で目を覚まし、白黒の砂嵐が目の前を覆っていたあの時。

 

 アイネスやグレイス達に助けられ、触れ合った一時。

 

 助けられてから始まった、初めてだらけな日々。

 

 周りからの恐怖と貶みを孕んだ視線も気にせず、自分の出来ることを我武者羅に頑張った毎日。

 

 そしてゼルシオーネと出会い、アイネスを失い、あの4人と出会ったあの瞬間。

 

「懐かしすぎて、走馬灯でも見てるかと思った」

 

 タイガはポツリと呟いた。

 

「ゼル」

「なんだ?」

「……俺は…………」

 

 俺は何ものなのか、そんな臭いセリフを吐きそうになったタイガは口を紡ぐ。

 

 ──自分が何者なのか、この地に身を置いてから1度も考えたことがなかったわけじゃない。最近は接続改装の能力が開花したこともあって、極偶に妙な夢(記録)を見るようになった。それが俺の正体に関わることなのかは全く分からない。

 

 ──けど、今更そんなことで悩むのはやめだ。俺は人間、バトランティスのタイガ。正体がなんであれ、俺であることは変わらない。俺には大事なものが沢山あるんだ。

 

 ──こんなしょうもない弱音を吐いてたら、あいつら(懲罰四剣)に尻を蹴られちまうな。

 

「…………なあ、ゼル」

 

 言葉を止めたタイガは少しの間を置いて、改めてゼルシオーネに顔を向け、彼女の目を真っ直ぐ見つめる。いつにもなくシリアスな雰囲気に、ゼルシオーネは小首を傾げた。

 

「ありがとよ。あの時、俺に喧嘩を売ってくれて」

「……なにを言い出すかと思えば、私を煽ってるのか?」

「違う違う、本当に感謝してるんだ」

「気色の悪いやつだ。感謝をするぐらいなら、顔面を殴り飛ばしたことを謝って欲しい。今でも思い出すだけで古傷が傷んで仕方ない」

「いや、あの時は俺もまだチンピラだったから…………ごめ」

「やっぱり辞めだ。いつまでも根に持っているみたいで自分が小さく見える」

「どっちだよ」

「とにかく謝らなくていい……あぁ、折角寝起きで気持ちの良い気分だったのに」

「じゃ、朝になったらあそこで酒でも飲みに行くか?」

「あそこ?」

「ほら、ギリンガムの……お前が俺の顔面に『あれ』をぶっかけたあの店」

「だから、なんで余計なことばかり……しかしまぁ、偶にはいいかもしれないな…………だが、その前に」

 

 ゼルシオーネは上半身を少しだけ起き上がらせ、耳上の髪を軽くかきあげる。

 そしてタイガの体に手を置くと、そのまま体を密着させて乗っかる姿勢になる。彼の目先には、重力に負けて下に垂れる2つの乳袋と谷間が毛布の中に潜んでいた。

 

「もう1回か?」

 

 タイガの言葉に、ゼルシオーネは恥ずかしそうにこくりと頷く。目は緩み、甘えさせて欲しいと訴えている。

 

「じゃあゼル。約束してくれないか」

「約束?」

「……もしこの先、何があっても……あいつらを見捨てないって」

「……はぁ、何を言い出すかと思えば……当然だろう」

 

 奴らは私の可愛い部下だぞ、そうゼルシオーネが返すと、タイガは彼女と目を合わせながら、ふっと安心したように笑った。

 

「なら、私からも一言言わせてもらう」

「なんだ」

「……彼奴らを泣かせるようなバカな真似は、絶対にするな」

 

 ゼルシオーネの言葉に、タイガは間をあけてから「おう」と笑顔で返した。

 彼の返事にゼルシオーネはモゾモゾと這い、自身の顔を彼の顔に近付け、指先でペンダントトップの宝石を摘んだ。

 

「……タイガ」

「なんだ」

「……このプレゼント、とても嬉しかったぞ」

「……気に入って貰えて何よりだ」

 

 正直な気持ちを伝えたゼルシオーネは、紫色の宝石を丁寧に外して口に咥え、にっとした顔でタイガに差し出す。

 タイガは微笑むと、彼女の要望通りに宝石を噛む。そしてそのまま口付けを交わし、宝石を温めるように深いキスをする。

 

 それはしばらく続き、2人は再び交わり合い、朝まで深い眠りに着いた。

 

 そして朝風呂にて、ゼルシオーネは人生で初めてタイガの肩に頭を任せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………ずっと、ボクと一緒にいるって…………』

 

 

 

 ──俺はお前が誰なのか分からない。

 

 

 ──けど……お前に泣き顔は似合わないと思う。

 

 

 ──だから、笑ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────

 

「タイガ様ー、まだなのー?」

「あともう少しだ」

 

 タイガとゼルシオーネが秘密の逢引から数日が過ぎたある日。

 

 やや雲の多い夜空にて、6つの謎の飛行物体……ではなく、ゼルシオーネとタイガ、懲罰四剣は雲の向こうを目指してゆっくりと上昇していた。

 その中の一人、ラムザはバエルの小ぶりな羽をばたつかせながら眠い目を擦る。レムリアで云うところの草木も眠る丑三つ時の少し前、普段の彼女達ならこの時間帯は既に熟睡しているころなのだ。

 

「ふぁぁ……こんな時間に起こして」

「わたし、明日はコロッセオに用が」

「ああ、悪い悪い。けど大丈夫だ、直ぐに終わるからよ」

 

 大きな欠伸をするクレイダとルノーラに、タイガは前に目を向けたまま答える。あまりにも急に起こされたせいか、青髪と金髪にはそれぞれ可愛らしい寝癖がぴょんと跳ねている。

 

「タイガ様、一体どこへ向かっているのですか?」

「エルマ、お前なら分かるはずだぞ。昔はこうして空を飛んだだろ」

 

 怪訝な表情をしたエルマだったが、直ぐに言葉の意味を察し、嬉しそうにうふふっと微笑んだ。

 

「ゼル様もいい加減教えてくださいよー」

「行けば分かる、つべこべ言わずに着いて来い」

「ちぇー」

「ほら、見えてきたぞ」

 

 しばらく飛行をしていると、雲が徐々に薄くなっていき、6人は群れを突破した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは……」

「うわー、すっごい」

「綺麗」

 

 そして雲を抜けたその先で待っていた光景に、懲罰四剣は思わず声を上げた。

 

 6人の目の前には今、輝きを取り戻した夜空が広がっていた。一つ一つの星達が点々と散らばりながら十色な光を放つその光景は、ナユタの実験を実行した時とは比べ物にならない程にハッキリと輝いており、初日にあれだけはしゃいでいたラムザも思わず見入ってしまうほどに美しかった。

 

「どうだ? 本部から見るのとじゃ、わけが違うだろ?」

 

 タイガの言葉に、ルノーラとラムザとクレイダは宙を見つめながらこくりと頷く。

 一方のエルマは、手を頬に添えながらどこか懐かしいそうな趣で星々に目を向けていた。

 

「まぁ、なんて美しいのでしょう。まるでタイガ様とのお稽古を終えた日の夜のようですわ」

「ああ、あの時と同じ宙だ。そう簡単には忘れられねえ景色だろ」

「ホント、こんなに綺麗な星空ですのに、大事な部分を忘れた上にパッと思い出せなかったのはどこの誰だったかしら。ねえ、タイガ様?」

「……すまん」

 

 エルマから向けられる気品溢れる笑みを、タイガは顔を逸らして誤魔化す。彼の魔導装甲の性質上、周りからは表情は見えていないが、額からは冷や汗が流れている。

 

「御安心ください。あたくし、もう怒ってはいませんから」

 

 そう言うと、エルマは並ぶようにタイガの隣まで移動して空を見上げた。

 

 この夜空は、彼女とタイガが初めて空中デートをした時と同じ輝きを放っており、2人をあの頃まで引き戻してしまいそうな程に美しい。

 特にあの川のような星々の集まりは、レムリアの空で観察できるという天の川銀河に瓜二つである。

 

「ええ、本当に綺麗……」

 

 エルマは左手を宙に翳し、薬指に填めた指輪を星に向ける。タイガからプレゼントされた純白な宝石は、宙の黒海に輝く蛍の光を跳ね返す。

 

「…………よっと」

「きゃっ!」

 

 星の海に見とれている中、タイガはエルマの背中と足元を掴むと、拾い上げるように抱き抱えた。

 

「タイガ様ったら、いきなり何をなさるのですか?」

「なにって、あの時だってこうして姫様抱っこしてやっただろ? なら久々にやってみるのも悪くねえと思ってな」

「もう、そんな勝手な…………あたくし、気にしてますのに」

 

 悪気の無い清々しい表情で抱えるタイガに、エルマは恥ずかしそうに頬を染めて小さく呟く。昔と違い、大人の女性として成熟した今の自分にこれをやられるのは、羞恥心を覚えてしまう。

 けど、それ以上にこうして愛する人から抱かれるというのは、彼女の乙女心をキュンと高鳴らせてしまうのだ。

 

「(エルマ、前に抱いた時より丸くなった気が…………気のせいか)」

 

 タイガはエルマを見つめながら、彼女が1番気にしているであろう一言を内心で呟き、再び空に視線を戻した。

 こうして、二人の関係に亀裂が走るかもしれないハプニングは回避されるのであった。

 

 甘い雰囲気を漂わせる2人を、ラムザは呆れ混じりなジト目で見ていた。

 

「エルマったら、まーた抜け駆けして惚気けてる」

「抜け駆けだなんてとんでもない。これはタイガ様からあたくしにしてくださったことですもの」

「けどさぁ、フツー空の上に来てまでイチャつくかなぁ」

「それはほら、恋人の特権というものですわ」

「ふーん、そう……それじゃあ、あたしもっ!」

「ぐぇっ!?」

 

 エルマを抱えるタイガの首に、ラムザは飛びつきぶら下がり、彼の体を仰け反らせた。

 

「おいこら。首が折れる!」

「そんな簡単に折れるわけないから気にしない気にしない」

 

 タイガからのお叱りを流しつつ、ラムザはそのまま負ぶられる形で彼の体にのしかかった。

 

「お、おいラムザ……流石に危ないんじゃ」

「そんな遠慮しないで、ルノーラもやったらいいじゃん」

「いや、わたしは」

 

 本当はルノーラもラムザのように飛びつきたい気持ちはあるものの、恥ずかしがり屋な性格とタイガに怪我をさせてしまうかもという気持ちで一歩進めない。しかしこのまま何もしないのは、それはそれで彼女の悶々としたものが落ち着かない。

 

「…………えい」

 

 数十センチだけ体を降下させると、ルノーラはラムザからの飛びつきになんとか耐えたタイガの腰に両手で抱きついた。

 

「……はぁ、ったくお前らは」

「うふふっ、モテる殿方はお辛いですわね」

 

 しっかりと腕に抱き抱えたエルマからくすくすと笑われながら、タイガはそのままの状態で空に視線を向けた。

 

 何時かみんなで空を飛ぶ、彼の願いは早くも叶ったのだ。

 

「ねえねえ、あの星の並びって、なんか尻尾みたいじゃない?」

「え? どれ?」

「あー、あの七つ星のことだろ。レムリアにも似たようなもんがあってな、たしか名前は……」

 

 

 

 

 

「……いつまで経っても成長しないな、あいつら」

 

 わーわーと星空に燥ぐ4人の背中に、ゼルシオーネは腕組みをしながら呆れたように呟いた。彼女の隣に並んで浮遊しているクレイダも「ええ」と返事をする。

 

「しかしゼル様、タイガ様の隣を取られてよろしいのですか?」

「妙な言い方をするな。別に私はアイツの隣など狙ってはいない。そういうお前はいいのか?」

「生憎、ああいう不毛な争いはしないと決めているので」

「ちゃっかり膝の上に座っていた奴が、よく言う」

 

 いつも4人でアイツを取り合っているくせに、とゼルシオーネは続けて言った。とは言うものの、タイガの恋人であるエルマが正妻であることは3人も周知しており、彼に惹かれているクレイダもそこに関しては一線を引いている。それはそれとして隙があったら距離を詰めている。

 

「…………」

 

 3人と共に燥ぐタイガの姿を見ていたゼルシオーネは、先日のタイガとのお出かけという名のデートと旅館での一夜を思い出す。

 

 久々の買い物で青臭い春を体感し、強引とはいえ、十数年も胸中に抱えていた複雑な想いを漸く吐き出したゼルシオーネ。懲罰四剣にも秘密な夜を過したタイガとゼルシオーネであったが、それが終わった後も2人の関係はあまり変わってはいなかった。実際、後に寄った酒場では、気まずい雰囲気もなく、普段のように愚痴を零しあっていた。

 これは、良い意味で言えば、下手に意識せずに普段通りの関係を続けられているということになるが、悪い意味で言えば、体を重ねたのになんの進展もないということなのだ。

 

「だが、その方が気楽でいい」

 

 今以上の関係になるのは……おそらくまだ早い。だから、このままの関係を続けられれば十分だ。

 

 そう呟いたゼルシオーネの脳裏に、あの一夜で体験した記憶が横切る。突然通り過ぎたその記憶は、通り魔の如くゼルシオーネの下腹部に襲いかかり、再び熱を奥に甦らせる。

 

「(思い出しただけでこれ程とは……)」

 

 思い出しただけでも腹部がポッと熱くなる感覚に、ゼルシオーネは諦めの声を漏らす。

 

 タイガとの行為──それは魔力を生み出すための単なる共同作業にすぎない、と、表向きはそう言えば良いだろう。

 しかし、ゼルシオーネは覇王との逢瀬に満足している。嫌悪感など一切ない、魔力生成のことなど考えていなかったあの瞬間を、彼女は心の底から楽しんでいたのだ。

 

「…………いつかは私も……アイツを心の底から受け入れてもいいと思えたら、その時は……」

 

 そう小声で呟いて、ゼルシオーネは胸の谷間に垂れるペンダントの宝石を優しく握った。

 

 バトランティスで最も強く、最も残虐と恐れられている親衛隊隊長ゼルシオーネ。しかし彼女もまた、隊長である前に1人の女性なのだ。

 

「何を受け入れるんですか?」

「ん? ああ、何でもない。単なる独り言だ、気にするな」

「はぁ、わかりました……?」

 

 意味深そうなゼルシオーネにクレイダは首を傾げる。どうやらクレイダ達にもあの一夜のことは勘づかれていないらしい。もしバレているのなら、今ごろ祝いの酒の1つでも盛られているか、ニヤニヤされながらいびられているだろう。

 

「おーい、お前たちもこっちこいよ」

「ゼル様ー! あの星の名前ってなんでしたっけー!」

 

 

 

「……行くか」

「はい」

 

 ゼルシオーネは一声かけると、クレイダを連れてタイガ達のもとへ向かう。

 

「…………全く、手間がかかる」

 

 囁くようにそう零したゼルシオーネ。

 

 

 

 クレイダ曰く、その時の彼女の表情は慈愛に満ちていたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回以降の流れとか、今後の展開とかは大体決めてます。

気長に待って頂けると幸いです。
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