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時刻は夕方の少し前、外ではいつものように黒く染った帝都の建物が長い影を作ろうとするこの時間帯。
今日も今日とて軍事国家なバトランティス帝国では、天変地異により住処を奪われた人々が帝都ゼルティスにごった返していた。ある女性は歩き疲れて足を引きずり、ある母親は空腹に泣き叫ぶ子供を抱き抱えてあやし、またある女児はたった1人でただ黙って表情を曇らせていた。
各々様々な絶望を抱えながら、彼女達は生きる希望を見つけるためにこの帝国まで逃げてきている。そうとなれば、帝国は彼女達を救わねばならない。それが多くの隣国に侵攻し、アトランティスの半数を領土にしているバトランティス帝国の、軍事国家としての義務なのだ。
「…………」
そんな親衛隊達が休む暇なく働く帝都ゼルティスから早くも場面は切り替わり、親衛隊本部の地下。アトランティス唯一の男であり、親衛隊の裏隊長と呼ばれている魔導騎士タイガは今、1人で特秘部屋の中にいた。身にまとっているのは自身用に作らせた下着1枚のみで、額からウォーミングアップでかいた汗を流しながら、キングサイズベッドの縁に腰かけ、目を閉じてその時を待っていた。部屋を照らす明かりも雰囲気を出すために、既に淡い桃色に変わっている。宝石製のオブジェも相変わらずそれを跳ね返している。
普段の接続改装なら、彼の部下である懲罰四剣の4人のうちの誰かが傍に座っているはずなのだが、その姿も見当たらない。そしてなぜこれほどまでに彼は静かなのか、そんなものは本人にしか分からない。
ただひとつ言えるのは、今宵、彼ははまた新しい女性と繋がるということである。
『タ、タイガ様……私です』
しばらくして、特秘部屋の扉がノックされ、外から女性の声が聞こえた。
「ああ、入ってくれ」
タイガは閉じていた瞼を開き、ドアに顔を向けてそう言った。
そして扉がゆっくり開かれるとともに、隙間から一人の女性がひょこっと顔を覗かせる。
「そう緊張しなくていいぞ、ヴァルデ」
「は、はい……」
ヴァルデはタイガに招かれるとすぐに部屋に入り、ゆっくり扉を閉めた。
「あ、あの……今日は、よろしくお願いします」
おどおどとしながら頭を下げるヴァルデに、タイガは「おう、よろしくな」とだけ返し、隣にずれて1人分のスペースを空ける。
彼女の名はヴァルデ、バトランティス帝国皇帝親衛隊の一隊員であり、現在、異世界から研究員として訪れている飛騨那由多の監視役を任されている。
長い紺色の髪におどおどとした表情で、周囲にはいつも何処か弱々しく控えめな態度を取っているヴァルデ。それとは裏腹に、身体は一般女性と比べれば大きく秀でていおり、膝下が見えるフィッシュテールスカートで下半身を隠しながら、乳先を隠して胸元を大きく開けたその服装は、彼女のスレンダーな体とたわみを持つ乳を惜しげもなく露出させていた。
「……………………」
「……………………」
緊張からか、こんな卑猥な雰囲気で2人きりになるのが初めてなのが理由からか、そのままの体勢のまま、二人の間に沈黙が生まれた。
何故このようなことになったのか。それは、ナユタが実行した創世の御柱への魔力供給実験が行われた次の日に、ヴァルデがゼルシオーネにタイガとの接続改装を申し出たことが始まりであった。
彼が接続改装の能力に目覚めてからというもの、バトランティス帝国親衛隊の隊員は彼と性的行為を積極的に行うことが推奨されている。それが魔導騎士の魔力回復に加えて、創世の御柱を起動させるための魔力を調達するためなのは言うまでもない。
ただ男という既にこの世に存在しないはずの生物、自分たちとは性別が異なる彼との行為に拒否感や抵抗感を覚えている女性は少なからずいるため、自らやりたいという者は今までいなかった。タイガ自身も他の女性と無闇に体を重ねるような真似をするつもりは無いため、現在彼との行為を行っているのは直属の部下である懲罰四剣の4人だけである。
これには現皇帝も隊長のゼルシオーネも頭を抱えており、かと云って部下達に『お前、今日あいつとS〇Xしろ』などと言えるはずもなかった。
そんな中、一人の隊員が頬を赤く染めながら自ら接続改装の相手を名乗り出た。それがナユタの監視を任されていたヴァルデである。これにはゼルシオーネも一瞬目を点にして自身の頬を1、2回程抓り、夢でないことを確かめたとか確かめなかったとか。別に彼女がタイガに対して何かしらの特別な感情を持っていることに気づいていなかったわけではない。ただ、いつも影でタイガを追っていた彼女が自分からやりたいと言い出したことに驚いたのだ。
────というのが、この沈黙に至るまでの経緯である。もちろんタイガもこのことを初めて聞かされた際には驚いて断ろうとしたものの、世界の崩壊が始まっている今、あの4人以外との接続改装をしなければならないことは理解していた。
ちなみに今回の件に関しては懲罰四剣の4人も了承しており、恋人であるエルマは『貴方様は緊張すると力加減が下手になるんですから、気をつけてくださいね』と言い残して、仲間と共に避難民たちの支援に出かけている。
「…………おい、そんなところに突っ立ってないでこっちに……おわっ」
しばらくして、タイガはいつまで経ってもこないヴァルデに声をかけようとした。
が、扉前に人影はなく、その代わりに自身の空けたスペースに彼女が座っていた。
「す、すみません…………驚かせちゃって」
「いいって。にしても、相変わらずこういうのが上手いな、お前は」
「私、よく影が薄いって言われてるから……そのつもりが無くても…………驚かれてます」
「そうか……悪い」
触れてはいけない話題に触れたと思ったのか、タイガは壁に這うように束になったコードの群れに視線を変えて謝罪した。
「あの……先日は、その……胸を揉んだこと……バラしてごめんなさい」
「ん? ああ、別に謝んなくていいってそんなこと。もともと敵の胸なんざ触っちまった俺が悪いんだからよ」
タイガが苦笑を浮かべると、またもや二人の間に沈黙が生まれた。
いつもの彼なら、面倒を見ているヴァルデには軽い調子で世間話の1つでもしているはずだが、今日は状況が状況なためか、静かに虚空を見るばかりだ。
「ナユタの監視はいいのか?」
「は、はい……ナユタ様には、ラグルスが代わりに監視してくれているので……」
「ラグルスがなぁ……あいつとは仲良くできてるか?」
「仲良く……と言われれば、多分……」
お互いに顔を合わせず、一言二言言葉を交わし、そしてまた生まれる沈黙。
「…………どうしてやろうと思ったんだ?」
少し間を置いてから、タイガはヴァルデに視線を向けてそう言った。それに対してヴァルデは答えることなく、伸びた前髪で顔に影を作るように黙って俯く。
「……やる前に1つ言っておく。嫌ならやらなくてもいい、俺も嫌がってる奴と無理やりやろうだなんて思ってねえからな」
「………………」
「もしやりたくないのに我慢してんなら、やる必要はないぞ。俺とあいつら(懲罰四剣)だけでも十分やっていけてるんだ。お前が無理する必要はねえ」
予防線でも張るかのような言い方をするタイガ。しかしヴァルデはただ黙って彼の言葉に耳を傾けている。本人自体は嫌ではなさそうだが、どこか後ろめたいものでもあるかのような雰囲気だ。
「…………ナユタに何か言われたか?」
その言葉にヴァルデの表情は益々暗くなる。
しばらくして少し身動ぐと、ヴァルデは恐る恐る左手を差し出した。手のひらには、小指よりも小さな小瓶……というよりは、カプセルのような入れ物を乗せている。
「……つい先程、ここに来る前にナユタ様から渡されました…………身体検査の1つだって…………ほんの少しだけ……せ、せい……えきを……採るだけでいいって…………」
ポツポツと白状していくヴァルデ、しかしタイガとは目を合わせようとしなかった。いや、合わせることができなかった。
タイガも特に顔を歪めている訳ではなく、表情は変えていないが、その目にはある感情が湧いていた。
「ありがとよ、話してくれて……悪いな」
そう言うと、タイガは立ち上がろうとする。しかし、ヴァルデは右手で彼の手を掴んで静止させた。
「そういうのが理由なら、今回のことはなしだ。俺は」
言葉を続けようとするタイガだったが、それでも尚、ヴァルデは手を離さず、上目で彼を見ながら首を横に振って口を開いた。
「……私は……私は昔から、ずっと一人でした。生まれた時から、家族もいなくて…………いつもみんなの影に隠れて生きてきました。けど、そんな私に、タイガ様は初めて声をかけてくれた…………隅で蹲っていた私に……あなたは声をかけて、手を差し伸べてくれました」
「…………」
「私にとって…………あなたは恩人なんです……だから、今回のことは、嫌でやってるわけでも、ナユタ様からの依頼のためでもない…………本当に自分で決めたことなんです」
ヴァルデは顔を上げると、今度は真っ直ぐな瞳でタイガを見つめる。今まで口に出せていなかった秘めた想いを話し、さらに部屋の明かりで桃色に照らされている彼女の姿は、淫猥さを出しながらも、本当にタイガに抱かれてもいいという覚悟をその身で現していた。
タイガは何も言葉を返さず、しかし、鋭い眼差しで彼女と目を合わせながら、その肩にゆっくり自身の腕を回してそっと抱き寄せた。
「…………いいか、ヴァルデ。俺も加減はする、痛かったりとかしたら言えよ」
「…………はい」
視界がピンクの靄がかかったように塗られたまま、2人はお互いの目を見つめ合い、ゆっくりと、顔を近づけ合う。
「……んっ……! …………んっ」
そして初めに喰らいついたのはタイガで、彼は自身の口をヴァルデの唇を覆うように喰らう。突然の感触に驚いたヴァルデは目を見開いて小さく唸るが、直ぐに目を瞑り、彼からの口付けを受け入れた。
「(ああ……これが、キス…………キスの味…………タイガ様の味)」
初めて味わう口付け────キスの味。それは噂に聞いたレモンという果実のような味なのかは、食べたことがないヴァルデには分からない。しかし、微かに眉を顰めるほど苦くて、どこか癖になる甘い味なのは確かだった。
「…………っ!」
キスを味わっている最中、ヴァルデの唇にニュルニュルとしたもの……即ち彼の舌が入り込む。舌先はヴァルデの唇をこじ開けると、そのまま口内に潜り込み、彼女の舌を無理やり捕まえるように絡みつく。
彼が螺旋を描くように回すと、絡まれたヴァルデもそれに合わせて動く。エルマ達と違いキスの駆け引きなど知らないヴァルデが抗えるはずもなく、ただ一方的に押されて奥まで彼に犯されてしまう。
「(…………これは…………♥)」
連撃で味合わされたヴァルデは肩を震わせながらも、顔は火照り、目元はとろんと蕩けるように緩んでいる。
初めてのことに震える一方で、本心はその気持ちよさの虜になっており、もっと欲しい、もっと攻めて欲しいと訴えていた。
「(口の中が……)」
まるで口の中のものが全て熔けて、このままタイガの口内と混ざりあってしまう、そんな感覚がヴァルデを襲い、さらに頭の中を白く茹でさせる。
…………むにゅりっ♡
「んっ………………あぁっ」
蕩けていると、タイガはヴァルデの背中に手を回し、後ろから右乳を鷲掴みにする。胸に走る痛みにヴァルデは唸るような小さな悲鳴をあげて驚き、思わず口元を離す。舌先からはお互いの唾液で作られた粘り気のある糸が引かれ、2人の間を繋げる。それが下へと落ちきったころ、タイガはヴァルデを見つめながら口を開いた。
「悪い、痛かったか?」
「……いえ、全然……寧ろ、もっとして欲しいです」
心配するタイガに対して、ヴァルデは求めるように腰を捩らせる。暗い瞳にはラエルのコアと同じ水色の光が灯り、身体からも同色の粒子がほんのりと湧いている。
いつもの控えめで暗い表情ばかりするヴァルデからは想像もできない性を逆撫でするような色気、まるで飼い犬のように更なる褒美を欲しがる潤んだ上目遣い。彼女から向けられたそれら全てが、タイガの目には扇情的に映り、内で眠る性欲の獣を呼び覚ました。
むぎゅうっ♡
「ふあぁ……♥」
獣となったタイガは先程よりも強くヴァルデの右乳を掴み、先端の隆起にかけて何度も揉みしだく。程よいやわもち感を持った彼女の乳は揉みし抱きに合わせてぐにゅりぐにゅりと形を変え、ヴァルデの中に性的な刺激を送り、喘ぎ声をあげさせる。
「ぁ、あっ……た、タイガ様、私、変に」
乳先を中心に体にピリピリとした未知の感覚が走り始め、ヴァルデは息を荒くしながらタイガに助けを求める。
「………………」
「あ…………」
だがタイガは何も答えず、無後のままヴァルデの首に顔を近づけ、白い肌に噛み付いた。肉食獣が獲物を仕留める際に首元に噛み付くように、タイガも彼女の汗でしっとりと湿ったそこに優しく噛みつき、全身から徐々に力を抜けさせる。
「(…………いい匂いだ)」
タイガの顔にまとわりつくヴァルデの艶のある長い髪からはふんわりとした花の香りが匂ってくる。本番ということでいい洗髪剤を使ったのか、それとももともとこういう香りがしていたのか…………どちらにしろ、タイガにとっては興奮を掻き立てる一味でしかない。
「あぁ、はあっ…………あっ」
握るように揉みながら、タイガはヴァルデの胸を僅かに包んでいた服布を下へずらす。ズレると同時に、ヴァルデの胸先で収まっていた乳首が微かにふるりと揺れてその姿を現した。
白くて艶のある胸先についているそれは穢れを知らない程に薄く初々しい色で、タイガからの攻めを受けたのもあってピンと固く勃起していた。
「や、そこは…………あぁっ♥」
恥ずかしがる余裕も与えることなく、タイガは彼女の堅い乳頭を指先で抓り、か細い声をあげさせる。
「はぁ、はぁ、んぁっ(なに……これ♥)」
乳頭を指先で潰すように捏ねくり回しながら、時折爪で先を引っ掻いて、残りの指で胸全体を揉みしだく。これはタイガが普段の接続改装の際に用いる攻め技で、懲罰四剣の4人はこのテクに毎度絶頂させられている、そんな技を初めて味わうヴァルデが無事なはずもなく、コリコリと捏ねられる度に微弱な電流が彼女の頭に流れる。
「あっ、あんっ♥……ぁぁっ」
甘噛みと突起への刺激に甘声を洩らすヴァルデ。その姿を見たタイガは無言のままさらに興奮し、撫でるように彼女のスカートの中へ手を入れ、指先で股の中に隠れている割れ目に触れる。
「ひゃぁっ!?」
突如襲いかかる下半身の違和感にヴァルデは思わず高い声を上げる。だがタイガの指は止まらず、下着越しに彼女の割れ目を下から上で撫でる。
「だ、だめ、す……はっ、んんっ、変になりそう……♥」
これまた味わったことのない感覚にヴァルデは身を捩り、細い腕でタイガの手を剥がそうとするが、体はがっちりと掴まれているため身動きのひとつも取れない。
「んっ、あっ、あぁん……」
しかし悲しいことか。性的刺激に嫌よ嫌よと抵抗する彼女の体温はそれに反してさらに上がり、喘声も何処ぞの初夜を迎える姫様のように色気のついたものに変化していく。
……くちゅっ
「……っ!? ぁ、そんむぐっ……!?」
割れ目を数回往復し、下着にシミがつき始めたことを確認したタイガの指先は、そのまま流れるように彼女の下着の中へと入り込み、隠れていた口に触れる。そして驚いたヴァルデの唇を食らいつくように再び塞ぎ、抗議を遮る。
先程よりも激しく、レムリアの蛇のように舌が畝り、一方的にヴァルデの喉奥まで犯していく。互いに唾液が絶えず溢れ出し、それが舌を通じて二人の中を行き交い混じり合い、独特の風味を生み出した。
「んんっ……んふ、ふっ……♥」
ねちょり、ねちょりと粘着音が口内で響き、ヴァルデの表情はさらに緩みに緩み、うっとりとしたものへと変わり果てる。
「(ああ、頭が……白く……♥)」
途切れ途切れの意識の中、ヴァルデの脳内はぱちぱちと白く弾け始める。と同時に、指で弄られている下半身の唇からもねっとりとした粘液が溢れ出し、タイガの指を粘り気で汚す。
「ふぅっ、んんんっ、んちゅ……ぁぁっ、ん♥」
ヴァルデは諦めたかのように体から力を抜き、タイガの抱擁に身を任せるように抗おうとする手を下ろす。
「んんっ! んぅっ」
それと同時に、タイガはヴァルデの果実をより激しく揉みしだく。エルマと比べて小さいものの、掴むには十分な大きさと柔らかさを持つ彼女のそれをタイガは力強く、しかし優しく鷲掴みにする。時折指で突起を挟み潰すと、ヴァルデから呻き声に近い嬌声があがる。
左手も同様により激しい動きに変わり、指先が唇に隠れていた蜜口と小さな突起を弄り回す。
「(これが……男との、タイガ様との……こんなの……♥)」
3箇所に与えられる性的な刺激、そしてタイガと性的行為をしているという事実に、ヴァルデの脳内は室内と同じ色に染まり、体からさらに粒子が湧き上がる。それはタイガも同じで、真紅色の粒子が彼の身体から湧き出る。両者ともに準備は出来たようだ。
「んっ、ちゅるっ、はむっ」
ヴァルデの絶頂を察したタイガは、舌先で暴れるように彼女の口内を犯し、指先の力を強めて2つの突起を虐める。
「んっ、んんんっ…………ん゛んんんんっっ!?」
トドメと言わんばかりにタイガはヴァルデの先端をつまみ上げる。瞬間、ヴァルデの体に電流が走るかのような凄まじいもの流れ、彼女に絶頂の雄叫びを上げさせながら脳内を真っ白にショートさせる。
それとともに、2人の体から出ていた光の粒子が絡まり、部屋中を満たすと、やがて収まって云った。
「ん……んちゃ…………ぁ」
数十秒後、絶頂の余韻を堪能したヴァルデとタイガから唇を離す。何度も蛇に舐め回され犯し尽くされたヴァルデの口内は、2人の苦い唾液で作られた愛液で十分に満たされており、彼との間にべっとりとした粘着質な糸橋を走らせた。
「タイガ様……」
口を離して早々、ヴァルデは彼の名を呼ぶと、まるで人の変わったかのようなうっとりとした表情を向ける。
「ヴァルデ」
そんな彼女の淫猥な笑みに動じることなく、タイガは秘部を弄っていた左手を上げ、彼女の鼻先に近づける。左指は唾液とは違った粘り気を持った液体、絶頂によってヴァルデの蜜壷から流れ落ちた透明な蜜によってねっとりと濡れていた。
「……はむっ」
朦朧とする意識の中、ヴァルデは何も言わずに目の前に差し出された左指にしゃぶりつく。自身の体から湧き出た蜜の味、少しばかりしょっぱいそれを、彼女は赤子が母親の母乳を吸うようにちゅうちゅうと小さく音を立てながら吸っていく。
その姿にタイガの獣並の性欲はさらに刺激され、血液を彼の龍へと集中させる。
ちゅう、ちゅう…………ぷっ
「ぷは…………美味しい…………ふふっ」
堪能し終えたヴァルデは淫らに笑うと、更なる刺激を強請るかのように彼の体に身を任せる。
「タイガ様……その、もっと欲しいです。今日は私とタイガ様の2人きり……2人だけで気持ちよくなりたいです」
豊乳を押し付け、彼の胸板に指を添え、熱の篭った白い吐息を吐きかけながらお強請りするヴァルデ。
これが催淫によって引き起こされたものなのか、はたまた彼女の心の奥底で眠らせていたタイガへの本心なのか────どちらだとしても、タイガはそのつもりである。
「分かった……だが次はかなりハードだ。覚悟はいいか?」
「はい」
無垢に答えるヴァルデの返事を聞くと、タイガは彼女の身体を優しく抱き抱え、対面させる形でちょこんとベッドに座らせる。
「? タイガ様、それは?」
ふと、ヴァルデはタイガの下着の一部分が盛り上がっていることに気がつき、指を指す。本来ならそれがどう言うことなのか薄ら理解しているはずなのだが、今の彼女は無知な子供のように小首を傾げている。
「…………!?」
そんなヴァルデに対して、タイガは無言のまま下着の紐を解き、弾けるように獣棒を露にさせた。
一際黒光りする亀の頭首に似ているそれは、ヴァルデの指先よりも長く、大きな頭に、首に太い血管を浮き上がらせている。何よりこのサイズ、エルマの果実でさえ包みきれないのだから、例えヴァルデの豊乳で包んだとしても、先の方は余裕で顔を見せるだろ。
突如現れた龍頭に、ヴァルデは只管目と意識を白黒白黒させながら驚き、口を開いて声にならない声をあげる。噂には聞いていたものの、こんな歪で禍々しいものなど初めて見た彼女にとっては、今までで1番の衝撃的な光景に違いない。
「これが、タイガ様の……こんなに恐ろしいものが収まっていたなんて……でも」
ヴァルデは恐る恐る手を伸ばし、細い指先でそれに触れる。自身にはついていない、硬くて長い獣のような首は、人肌よりも熱を持っており、浮き出た血管が脈を打っている。
「(硬くて、熱くて……不思議な感覚)」
ヴァルデは指の1本1本を黒い首に巻き付けていき、軽く握りながら獣棒を上下に扱いていく。
乾いた手のひらが擦れてちょっぴり痛い、しかしぐにぐにと海綿体を潰される刺激をタイガは感じ取っていた。
そんなタイガにチラチラと熱い視線を向けながら、ヴァルデはもう片方の手で根元からぶら下がる2つの球体を皮袋越しに添えるように掴み、弱い力で握り始める。誰から学んだ訳では無いが、本能がそうした方がタイガにとって気持ちのいいことだと彼女に伝えていた。
「はぁ、はぁ……」
気がつくと、ヴァルデはタイガの獣棒の先についた頭部に顔を近づけ、熱い吐息をかけながら鼻先で臭いを嗅いでいた。本来なら顔を歪ませてしまうほどの独特の臭いなのだが、ヴァルデには自身の眠っている雌としての性欲が掻き立てられるだけだった。
「……あ、むっ♥」
数回扱いた後、ヴァルデは龍頭に口先でキスを交わし、そのまま口の中へと挿入させていく。じゅぷぷっと飲み込まれる音が静かに鳴り、彼女の喉の奥へと進んでいく。
「んっ、んふっ、んんんっ♥」
そして喉奥に龍頭が当たったのを感じ取ると、そのまま頭を前後に動かし、獣棒を扱いていく。
「(臭い、これが、タイガ様の……)」
男の物の熱と味、硬さと長さ、その全てを初めて味わうヴァルデは戸惑いながらも、催淫効果によって高まった性欲の思うままにタイガの獣を咥える。
「んっ、んふっ、ふぐっ、んんっ♥」
しかしタイガの戦士としての力強さを表しているかのように、獣も大きさで口内を犯す。頭が喉奥を突き上げると、ヴァルデは苦しそうに嗚咽に近い甘声を漏らす。かと云って抜こうとすれば、首裏が内頬肉を捕まえ、離そうとしない。その苦しさにヴァルデは声を漏らす。
が、今の彼女にとってはそれら全ても快感に変換され、より深く肉を捕らえようとする。
「(苦い……)」
しばらくして、龍亀の口から生命の原液が放たれる前段階の苦液が漏れだし、ヴァルデの口内を苦味を広げる。それすら、ヴァルデにとっては珍味なものに感じられた。
「(タイガ様……気持ちいい、ですか?)」
ヴァルデは上目の熱い視線でタイガに問いかける。いつの間にか玉を握っていた右手は下腹部へ移り、腰を畝りながら疼く割れ目を指でさすっている。
これらを見たタイガもまた、彼女の気持ちに察して口を開く。
「ああ、初めてにしては上出来だ、ヴァルデ」
「はひはほうほはいはふ」
「だがこれじゃあ俺だけが気持ちよくなるだけだ。一旦離れろ」
「? ……ンプ……はい」
ヴァルデは少し口惜しそうに獣棒から口を離し、細い糸を引きながら体を起こす。愛液にたっぷりと塗れた性欲の獣証は暗いピンク色の部屋の中で卑猥に光を跳ね返しててかっている。
「いいかヴァルデ、今から尻を向けて俺の上に跨ってくれ」
「お尻を、ですか? どうして?」
「簡単に言えばお互いの敏感な所を舐め合うんだ」
タイガの言葉にヴァルデはポケっとした表情のまま一瞬固まる。しかし催淫状態になった彼女はすぐさま意味を理解し、指を上下両方の唇に添えて答える。
「……お願い、します」
「……よし。じゃあまずは俺が横になるから、お前は下着とスカートを脱いだら、俺の顔に尻を向けろ」
そう言うと、タイガは獣棒を立たせたままベッドに仰向けで倒れる。ヴァルデはスカートと下着を脱ぐと、丁度タイガの顔に自身の秘部があたり、自身の目の前に獣棒が来るように彼に跨る。
「(ほんとに大きい……竜みたい)」
先程とは違った視点から見たタイガの獣棒、例えるなら獣を上から見た視点と言えば良いか。別視点から見た獣棒は天井を目指すように反り返り、龍のように長い首と太い頭をヴァルデに向けている。
ヴァルデが見とれている一方、タイガの目の前には、下着を脱いで露わになった彼女の秘部が映っていた。薄らと生える陰毛の中に隠れている割れ目からは、先程の絶頂で排出された愛液が漏れ溢れており、一部がタイガに向かって垂れ落ちようとしている。
「…………はむっ……♥」
ヴァルデは唾を一飲みすると、口を大きく開き、頬張るように龍頭にしゃぶりつき、再び扱いていく。体勢が違うおかげか、長い獣棒はヴァルデの喉奥をあまり突き上げずに、そのまま咽頭の奥へとぬるりと入り込む。
「んっ、んぐっ、ふっ……」
自分の口内と喉を泳ぐように出入りし、時折呼吸を阻害する獣を、ヴァルデは息を確保しながら頬張り嬲る。
「(ああ、美味しい……こんなに苦いのに)」
獣の口から次から次へと透明な苦汁が溢れ出る。普通なら口にするのも嫌なものなのだが、ヴァルデの味覚は催淫状態になったことで完全にバグを起こしたようで、もっと絞り出そうと舌を畝らせて口を押す。
…………ちろっ♡
「んふぅっ!?」
しかしタイガも一方的に奉仕される訳には行かず、ヴァルデの艶のある尻肉を掴んで割れ目を開くと、口を開いて垂れ落ちそうな蜜ごと彼女の下唇にしゃぶりついた。むわっと汗で蒸れたあそこの味は、少々酸味が強く、味覚を通してタイガの性欲を刺激する。
じゅるっ、ぢゅるるるっ
「ぅんっ! んんんっ……」
蜜口を吸われながらヴァルデも負けじとは必死に獣棒を咥えて体を揺らす。が、蜜口を吸われる快感度は相当なもので、一吸いする度に生命エネルギーを吸い出されるかのように彼女の全身から力が抜ける。
「(こ、このままじゃ……意識が……)」
今にも飛びそうな意識を保とうと、ヴァルデは両手で龍の首元を掴み、内頬の柔らかい肉とともに擦っていく。血液で充血した獣棒は火傷しそうな程に熱く、ヴァルデの手の中で激しく脈を打つ。
そして先程までタイガに揉まれ遊ばれた果実、その先についた乳頭はピンと立っており、ヴァルデが体を揺らす度にそれが彼の股間辺りを擦り、獣の快楽を促す。
「んんっ、はぁん、んふぅっ」
お互いの体から溢れ出る汗が混ざり、体をぶつける度に静かな水音を鳴らす。また、獣を挿入するための穴となったヴァルデの口内から聞こえる柔らかい口肉が首を擦る音、そしてタイガがヴァルデの蜜壷の穴へ舌先を挿入させて愛液という名の蜜を吸い出す音。
じゅるるっ、じゅぽっ、ぱちゅっ
それらの音が混ざり合い、薄暗い部屋中に水気のある擬音を奏でる。しかしここにいるのは2人だけ、2人は今、誰にも邪魔されず、自分達だけの空間を作り上げている。
「(あ、ダメ、い、いっ……)」
絶頂を迎えようとヴァルデの脳が白く焼き始め、タイガの方も玉から生命の種が這い上がり、龍亀の喉へと流れる。
同時に、2人の体からそれぞれの魔導装甲のコアの色が発生し始める。
「んんっ…………んっ」
…………びくんっ!
「ん゛ぐぅぅぅっっっ!?」
獣棒が喉奥まで挿入されたその瞬間、口元から大量の白濁液が吐き出され、ヴァルデの喉へ放たれる。
ヴァルデも2度目の大きな絶頂を迎え、下唇から蜜をタイガの口内へ吹き出しながら、悲鳴に近い籠り声を鳴らす。
それと同時に、2人の体から湧き出ていた粒子は先程よりも強い光を放ちながら混ざり合い、部屋中に広がり、やがて両者の体に溶け込んでいった。
「ふっ、ん…………」
無事に改装が済んだというのに、タイガの獣棒は未だに生命の原液を吐き出していた。マグマのように熱く、強い粘り気を持ったそれは、どくんと跳ねる度に、ヴァルデに喉を焼くような刺激を与えながら食道を通過し、胃の方へと流れていく。
「んぐっ…………」
ヴァルデは何とか飲もうとするも、あまりの多さに耐えきれなくなり、とうとう口から獣棒を引き抜いてしまう。
「…………あっ♥」
ぬぷりと抜かれると、獣棒の頭からヴァルデの体内に出し切れなかった白濁液が吐き出され、軽く宙を舞い、べちゃべちゃと彼女の髪や顔へ降りかかる。
苦い汁よりも苦く、タイガの逞しい獣よりも生臭い。だが、ヴァルデはそんな粘液に身体を汚されたことに内心幸福で満たされ、瞳にハートを浮かべながらうっとりと絶頂の余韻に浸っていた。
「…………はぁ」
暫くして、ヴァルデの甘酸っぱい蜜を吸い終えたタイガは壺から口を離し、深呼吸をする。
親しい相手とはいえ、性的な行為を行うのは初めてなこと。いくらタイガとはいえ、どうすればヴァルデも共に気持ちよくなれるか頭を悩ませながらやっていた。結局は途中から何も考えなくなったが。
「終わったぞ、ヴァルデ……ヴァルデ?」
タイガは自身に尻を向けながら跨るヴァルデに話しかける。だが彼女からの返事はなく、尻を揺らしても動じない。
「…………すぅ…………すぅ…………」
ふと、タイガの耳に小さな寝息が届く。腹部から肺が膨らんだり縮んだりする感覚が伝わり、自身のものの近くに暖かい吐息がかけられている。どうやら、初めての刺激を短時間で一気に浴びせられたせいで、彼女もすっかり疲れ切ってしまったようだ。
「……おつかれさん」
そう言うと、タイガは逆方向に向いた頭の代わりに尾てい骨辺りを優しく撫でる。そして自分も眠ろうと目を瞑り、視界を闇に落とした。
…………とは言いものの、こんな体勢で寝ようとしても眠れるわけがないので、しばらくしてタイガはヴァルデを起こさないようにベッドに寝かせる。そして彼女が持ってきた入れ物に極少量の自身の原液を入れると、いつものトレーニングを済ませてから特秘部屋を後にした。
──────────────
────私は……生まれた時からずっと1人。
────両親も、姉妹も、守りたい人も、守ってくれる人も、誰もいなかった。
────誰も私を見てくれなくて……淋しくて……
────そんな私に……タイガ様は声をかけてくださった。
────隅に縮こまっていた私に手を差し伸べてくれた。
────まるで孤独な心を包み込んでくれそうな、大きくて逞しいその手を。
────あの人の……タイガ様の役に立ちたい。
────だから私は、親衛隊に入隊してから殺しの技術を磨き続けた。私の力が、少しでもあの人の役に立てるように……
────その気持ちは、ナユタ様に出会ってからも変わっていない。
────分かってる。どれだけ頑張っても……あの人にとって、私をそう見れないことは。私も、あの人のことを思うこの感情が一体何なのか、ハッキリとは理解出来てない。
────それに、あの人には懲罰四剣やゼルシオーネ隊長がいる。私よりも、ずっとあの人のことを理解している。タイガ様もあの人たちを大切に思っている。
────それでも……私はタイガ様のお傍にいたい。
────この手を血に染めてでも……あの人の居場所を守りたい。
────そして、いつかは……私はあの人と…………
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タイガとヴァルデの接続改装が行われた数日後。
相変わらず空が下がったり星が戻ったりを繰り返す、創世の御柱を中心に亀裂の入ったバトランティス帝国の青い空。その空の道を、赤色の船体を持つ大型戦艦が辺りを散策をするように移動している。
これは親衛隊隊員の1人であり、大型魔導装甲『デモン』を操るラグルスが所有している戦艦である。我らがゼルシオーネ隊長から賜ったということもあって、船体も船内も豪華絢爛に飾られている。
「……レムリア人ってこんなのを食べてるのね」
「そうみたい……」
そんな豪華戦艦の船内の窓際にて、ラグルスとヴァルデはともにレムリア産の奇妙な菓子を頬張っていた。2人がそれぞれ座っているソファの間に挟まるように設置されたテーブルの上には、果物やらジュース瓶やら酒やらが並べられており、そのちょうど中央にレムリアの菓子が散らばるように置かれている。この菓子はタイガがレムリアから頂戴してきた土産物の1つであり、懲罰四剣経由でラグルスのもとへ流れてきたものである。
「なんの味よ、これ」
「えっと……や、ヤキニク……だって」
「は? 何それ」
「さ、さぁ?」
ヴァルデは本を読むために、ナユタからレムリアの言葉を少しだけ教えて貰っている。そのため、菓子袋に書かれた文字を読むことが出来た。が、結局なんの味かは分からない。
2人は未知の味『ヤキニク』に舌を困らせながら、病みつきになったかのようにもう1枚とそれを口に運ぶ。
「んっ……で、どうだったのよ」
「へ?」
一足先に嚥下したラグルスからの突然の言葉に、ヴァルデは菓子を咥えたまま呆気に取られたような顔で抜けた声を漏らす。
「へ? じゃないわよ。やったんでしょ? あいつ……じゃなくてタイガ様と……その、あれを」
「……接続改装のこと?」
ヴァルデの言葉に、ラグルスは少し恥ずかしそうに顰めた顔で小さく頷く。ラグルスも接続改装についてはゼルシオーネから話を聞いていたのだが、内容が内容なだけに上手く口に出せなかった。
「でも……ラグルスにはまだそういうことは早い気が……」
「な、なによ。あんたまであたしを子ども扱いする気?」
「そういう訳じゃないけど……」
言葉につまるヴァルデに、ラグルスはその場で立ち上がり、低い身長にしては不釣り合いに長いマントを靡かせた。
「いい? 隊長や
「あ、うん……」
ラグルスは仁王立ちでそう宣言すると、右手に持った瓶酒……ではなく、瓶ジュースをグイッと持ち上げ、中のジュースを胃の中へ流し込み、果実の酸味で喉を焼く。
「ぷはぁ……で、どうなのよ?」
「ほ、ホントに聞くの?」
「あたりまえよ。ほら、さっさと話しなさいよ」
「じゃ、じゃあ……」
ラグルスの威圧に負けたヴァルデはぽつぽつと語り始める。タイガとの甘い夜を、大人しい性格からは想像もできない程に生々しく、ねっとりと説明した。
──────
「…………」
そして数分後、あまりにも生々しい説明に、案の定ラグルスは顔を真っ赤に染める。いつぞやのヴァルデのように目をぐるぐるさせながら、プシューっと頭頂から湯気を沸かせている。
「ラグルス?」
ヴァルデの言葉にラグルスはハッと意識を取り戻し、頭とツインテールを左右に振った。
「あ、そ、そう。そんな感じだったの。あんたにしてはなかなか生々し……えっ……ち、じゃない」
「……大丈夫?」
「あ、あったりまえじゃない! この程度の内容、大したことないわよ!」
ふんすと胸を張って答えるラグルス。しかしデモンのように真っ赤な顔色と額から流れる汗からして、馴れない下話に対して強がっているのは明らかである。
「……とっ、とりあえずこの話はこれでおしまい」
「うん……」
ラグルスはなんとも言えない空気を誤魔化すように話を切りあげ、腕を組んでソファの背もたれに背中と首を任せると、疲れた様子で窓壁から帝都ゼルティスとその周辺を眺める。
この数年間の間に、バトランティスには他国の民が多く移り住んでいる。それもあってか、城下町では人口が減少したとは思えないほどの人間が溢れかえっている。
そして今日も、商店街では数日前に遠方から避難して来たと思われる女性たちが、来た頃とは比べ物にならない程に生気の戻った表情で八百屋や雑貨屋などを訪れている。
その中にはラグルスと同じ歳頃の少女も混ざっており、その表情はここへ来た時よりも明るく、喜びに溢れていた。無論、この距離から人1人の表情が確認するのは無理な話なのだが、ラグルスには何となく少女の表情が見えていた。
「……ここも随分と人が増えたわ」
「皇帝陛下が受け入れに積極的だから……それに……今のアトランティスじゃ、逃げれる場所はここぐらいだろうから」
崩壊が進んでいるのはバトランティス帝国も同じである。しかし他の地域に比べれば、一定の食事や娯楽にありつけるだけでも避難する価値はあるのだ。
「……あそこにいる子どもって、みんな孤児かしら」
ふと、ラグルスは商店街の一角に視線を移し、1メートルほどのモニターを目前に投影させ、その場所を拡大する。そこにはラグルスよりも幼い少女が数人寄せ集まり、親衛隊から貰った炊き出しを分け合っていた。おそらく親を失ったか、元から1人で生きてきた孤児だろう。この世界では特別珍しいものではない。
「あんなに美味しそうに食べて……親がいなくても、人って生きていけるものなのね」
「……うん」
「──けど、いなかったらいなかったで……寂しいものよね」
「……私も、そう思う」
まるで自分たちに語りかけているかのように、ラグルスとヴァルデは言葉を返し合う。
しばらくしてラグルスは「はぁ」と鬱々しいため息を吐いてモニターを閉じ、ソファに全身を任せる。
「……ヴァルデ」
「?」
しばらくの黙りが続いた後、ラグルスは外を見ながらヴァルデの名を呼び、ヴァルデは首を傾げた。
「ゼルシオーネ隊長とタイガ様って、どう思う?」
「どう思う……?」
「どういう関係だと思うってことよ。あの2人って意外と付き合い長いらしいし、前々から隊長が鈍感なタイガ様にやきもきしてるって親衛隊で噂になってるんだから。いつもタイガ様を遠くからじーっと見てるあんたなら分かるでしょ?」
「そ、そんな毎日見てるわけじゃない……けど」
「けど?」
「個人的な意見だけど……多分、ゼルシオーネ隊長の片思い……かも」
「それよ、それ!」
片思い、そのワードを聞いた瞬間、ラグルスは勢いよく立ち上がり、バンっとテーブルを強く叩いて怒鳴るように大声で言い放った。
「隊長があんなにアピールしてるのに、なんであいつは気付かないのよ! 普通あそこまで付き合って貰ったら気づくはずでしょ! それなのにあいつは他の女にばっかうつつを抜かして、挙句の果てには敵の女を……なんなのよあいつは!」
「ら、ラグルス……そ、そんなに怒らないで。落ち着いて」
ヴァルデはヒートアップするラグルスの演説に待ったをかけるが、1度エンジンのかかったラグルスの口は、先程の叩いた衝撃で零れたジュースが床へ落ちるぐらい止まらず、タイガの日頃のゼルシオーネに対する態度への不満を愚痴っていく。
「大体、あいつは隊長……ゼルシオーネ様を蔑ろにし過ぎよ。レムリアで好き放題やれるのだって、ゼルシオーネ様がいるからやれてるっていうのに。
この前なんて……あのゼルシオーネ様が、女に対して目がないあのゼルシオーネ様が、女を抱くかっこいい女って呼ばれてるゼルシオーネ様がよ? 部下であるはずのあいつに対して『何だったら私と接続改装でもするか?』って自分から言ったのよ? しかも誰もいない2人きりの時に。なのに、あいつったら『そういう冗談は言うもんじゃねえぞ』って素っ気なく返したのよ? その時のゼルシオーネ様の落ち込んだ顔がお労しいったらありゃしない」
「なんでそんなこと……知ってるの?」
「偶然その場に出くわしたから、ついでにこっそり聞いたのよ」
ちなみに女を抱くかっこいい女というのはラグルスが勝手に言っていることなので、実際そんな2つ名は存在しない。出くわしたのは真実である。
言いたいことを言い終えたラグルスは力が抜けたようにソファへ倒れるようにもたれ掛かる。
「はぁ……全く、男ってあんななのかしら。だとしたら滅びて当然よ。レムリアにいるとかいう男も滅ぼそうかしら」
「ラグルスは……タイガ様のこと、嫌い?」
「大嫌いよ、ゼルシオーネ様の思いを無下にするあんなやつなんか」
そう言ってラグルスはぷいっとそっぽを向く。
しかしヴァルデは思い返す。
普段からラグルスとタイガの会話……と云うよりは、ラグルスがタイガに対してことある事に突っかかっている姿を目撃しているが、それ程仲が悪いようには見えなかった。いや、どちらかと言えば突っかかるラグルスに対してタイガが子どもを宥めるように軽く受け流しているのだが、端から眺めているヴァルデから見ても、喧嘩と言うよりは遊んでいるようにしか思えなかった。デモンで殴りかかった時も同様だ。まるで本に載っていた、親の浮気現場を目撃して激怒した子どものように……。
「…………ふふっ」
「あ、今あたしが子どもみたいって笑ったでしょ?」
「え、そ、そんなことない……ただ、何のかんの言ってラグルスもタイガ様のこと……嫌いじゃないのかなって」
「はぁ?」
ヴァルデの言葉にラグルスは一瞬唖然とし、すぐさま顔を真っ赤色に染めながら怒り出す。
「は、はぁぁぁっ!? 何言ってるのよあんたは! あ、あたしがあんなの好きなわけないじゃない! あたしはあくまでゼルシオーネ様を尊敬してるだけ、あんたと違ってあんなゼル様の金魚のフンなんか好きでもなんでもないわよ!」
「金魚のフンは言い過ぎ……ふふっ」
「あ、ま、また笑ったわね! ヴァルデのくせに生意気よ!」
ぎゃあぎゃあと子どものように怒るラグルス、それに対して悪いと思いつつも珍しくツボに入り笑いを抑えられないヴァルデ。
第三者からすれば、おそらく今の2人は少し年の離れた友人同士に見えるだろう。
「…………」
そんなガヤガヤと叫ぶ2人を、少し離れたソファ席からヒダナユタはパネルを操作しながら観察していた。
「(ヴァルデとの接続改装で生み出された魔力……懲罰四剣の4人の時と比べれば純度は低い。けど、魔力としては十分な量が取れましたか)」
那由多はふむ、と顎に手を当てる。
初期の頃に比べて、ここ最近の彼らの接続改装てま生み出される魔力の純度や量は上がっている。単にタイガと懲罰四剣が行為を繰り返したことによって経験が積まれているから、という理由も考えられる。
しかし、そんな単純な話ではないだろう。現に、今回の彼とヴァルデの間に生み出された魔力量は初期の懲罰四剣との行為した時と同等な量だった。いくらタイガが経験を積んでいるとはいえ、初めての相手にして、しかもタイガ自身が恋愛感情を抱いていない相手にここまでの魔力量は多い部類だ。
尚且つ、今回のことも含めたここ数日の接続改装……それはまるで接続改装を超えた『絶頂改装』にも酷似していた。
「(まあ、エロスと一緒に調べれば済む話ですから)」
そう思いながら、ナユタはポケットから小さなカプセルを取りだし、親指と人差し指で蓋と底を挟むように持つ。中には白濁色の固まった粘液が入れられており、顔を近づければ微かに生臭さを放っている。
これは、ナユタが身体検査と称して、ヴァルデに採取を依頼したタイガの生命の原液である。とは言うものの、実際に渡してきたのはタイガ本人であり、ヴァルデとの接続改装に成功したその日の夜に、いきなり研究室に押しかけて渡してきたのだ。
ちなみにその際、ナユタはタイガから、
『あんたには色々と世話になってるから、今回は水に流してやる。だがな、二度とあいつにこんなことさせんじゃねえ。欲しけりゃあ直接言え……分かったか』
と脅しをかけられている。その時のタイガの目は、本物の野獣のように鋭かったらしい。ちなみに監視代理を任されていたラグルスは寝落ちしていたため、その光景を目撃していない。
「(トラムが特別なのか、彼が特別なのか……はたまた両方か)」
ナユタは内心に誰にも知られることはない思惑を抱く。
「あ、ラグルス……ジュースが」
「え……あああ! 隊長から賜った絨毯がぁ!」
そしてラグルスが騒ぐ姿も気にすることなく、しばらくナユタは白液を見つめた。