※時系列はヘンプリキャラ全員がまだプリズンにいる時を想定しています。
===
★場所:医務棟
【絵里子】
「……さてと、これで全員集まりましたかね」
【葉月】
「一体なんなのかしら、こんな夜中に呼び出して」
【夏海】
「…………」
【ソフりん】
「どうしたんだ絵里子さん。緊急の案件か?」
【絵里子】
「詳細については樹里亜さんのほうから、はい」
【樹里亜】
「皆さんもご存知の通り、現在プリズンの食料が
【姫瑠】
「そういえば、最近食事が質素になってきているせいか、文句を言う囚人が増えていますね。由々しき事態です」
【葉月】
「ここ連日、悪天候が続いてることで輸送船が動かせないからでしょう」
【夏海】
「まし……逆茂木が畑でとれる野菜を定期的に届けはしますが、どう見ても供給が追いついていません」
【ソフりん】
「食糧難問題については当然存じておりますが……なにか進展があったんですか?」
【樹里亜】
「この問題を解決すべく、実はわたくしのほうで”とあるもの”を開発したんですよぉ」
【葉月】
「……とあるもの?」
【樹里亜】
「ええ、こちらです」
【ソフりん】
「錠剤? のようですが……これは?」
【樹里亜】
「栄養補助剤です。一日分の栄養素すべてを補うことができます。空腹感も満たされます。これをしばらく食事に取り入れれば解決するかと」
【姫瑠】
「え……これをお姉様が作ったのですか?」
【樹里亜】
「これでも製薬会社の娘ですので」
【葉月】
「限度があるでしょう。ひとりで作れるものではないと思うのだけど」
【絵里子】
「で、本題はここからです。私もこの話は樹里亜さんからあらかじめ聞いていたんですけど、実は未検証なんです。この薬剤の効果」
【ソフりん】
「えっ、じゃあまさか」
【樹里亜】
「ここにいる全員で飲んでみて効果を確かめてみましょう、ということです。いわゆる治験ですね」
【葉月】
「……は? 冗談でしょう。なぜお前が作ったものを口にしなければならないの。危険すぎるわ」
【ソフりん】
「というか、こういう話は水城所長を通すべきでは?」
【樹里亜】
「通してますよ? 実は一任されてるんですよ、わたくしに。きっと薬袋製薬のツテに期待していたんでしょうねぇ」
【葉月】
「聞いていないのだけれど」
【樹里亜】
「葉月ちゃんのことですから、言ったら口出しするでしょう?」
【葉月】
「…………」
【樹里亜】
「そういうことなので、この問題の解決のために最も手っ取り早いのは……栄養を補えるものをこちらで作ってしまえばいい――という考えで、これを作ったんですよぉ」
【姫瑠】
「なるほど! さすがはお姉様!」
【ソフりん】
「しかし我妻看守長。ひとつ問題が」
【樹里亜】
「……なんでしょう」
【ソフりん】
「我々刑務官はともかく、囚人たちのほうはどうするんです? まさか食事に錠剤をそのまま出すわけにも――」
【樹里亜】
「それなら大丈夫ですよぉ? 実はこれ水に溶けるので、お味噌汁にでも溶かして提供しちゃえばいいんです」
【ソフりん】
「えぇ……」
【絵里子】
「説明もなしに、というのはよくないことなんですけど、緊急事態なのでこの際仕方がありません」
【絵里子】
「それで、先ほどお伝えした通りまだ効果が未検証なので、一度皆さんに飲んでみていただきたいんです」
【ソフりん】
「……集合場所が医務棟だったのは」
【絵里子】
「そう。もし万が一体調に異常が見られた場合、あたしのほうですぐ診れるようにするためです」
【ソフりん】
「はぁ……やっぱりそうか」
【姫瑠】
「私は賛成です! これもプリズンのため、刑務官自らが体を張るべきかと!」
【夏海】
「でも、葉月さんになにかあったら」
【葉月】
「別にかまわないわ」
【夏海】
「……葉月さん?」
【葉月】
「要はそれを飲んで24時間過ごし、体調に問題がないか確認するというだけのことでしょう? どうってことないわ」
【夏海】
「……そう、ですか」
【樹里亜】
「まぁ! さすがは葉月ちゃん! 『危険すぎるわ』と言っていたのがまるで嘘のよう!」
【葉月】
「いいからさっさと寄越しなさい」
【樹里亜】
「はーい。……では、皆さんもどうぞ」
【夏海】
「え。私も、ですか」
【樹里亜】
「はい。せっかくなので警備隊の方にも是非」
【絵里子】
「ちなみにあたしは飲みません。もしなにかあったら診れる人間がいなくなってしまうので」
【絵里子】
「あ、それと飲んだら1時間はこの部屋で待機してくださいね。なんらかの症状が表れないか確認したいので」
【ソフりん】
「ということは、これを飲むのは絵里子さん以外の5人になるのか」
【絵里子】
「あたしにはほら、この缶コーヒーがあるから」
【ソフりん】
「エナジードリンクを栄養剤扱いする医者ってどうなんだ?」
【姫瑠】
「それでは飲んでみましょう! せーのっ!」
●SE:5人分の嚥下音
【葉月】
「…………」
【姫瑠】
「…………」
【ソフりん】
「…………」
【夏海】
「…………」
【樹里亜】
「…………」
【絵里子】
「……? あれ? おーい、もしもーし。みなさーん?」
【絵里子】
「…………どうしちゃったんだろ。これはちょっとまずいかも……」
【葉月?】
「…………んっ」
【絵里子】
「あっ、目を覚ました。よかっ――」
●SE:床に倒れる音
【絵里子】
「!! ちょっ、ちょっと!! 大丈夫ですか!?」
【葉月?】
「……平気です。脚がなんか変で……ってあ、あれ? うまく動かせ……!! な、なんで……って、これは、葉月さんの杖? こ、声も変……一体何が……?」
【絵里子】
「…………え?」
【姫瑠?】
「……な、なんだ? 一瞬意識が……っ!? 声が、おかしい? い、いや体がなんか変? 目線も低いような……」
【ソフりん?】
「……んっ。……おかしいですねぇ、こんなはずでは……っ、おやぁ?
【夏海?】
「……少し眠っていたよう……ね……っ!? な、なに!? 体が大きく……!! い、いえ声も、それに、脚が……動かせる!! ど、どういうことなの……」
【樹里亜?】
「……ね、寝てしまってたのか……っ!! えっ、い、
【絵里子】
「こ、これは……なんらかのパニック症状?」
【絵里子】
「……皆さん落ち着いてください! おそらく副作用による幻覚かなにかが――」
【ソフりん?】
「――いえ、そうではないと思いますよぉ」
【絵里子】
「あっソーニャさん。体のほうは大丈夫?」
【ソフりん?】
「ソフりんちゃんじゃありません。――わたくしです。我妻樹里亜です」
【絵里子】
「……あのね、ソーニャさん。いまはふざけてる場合じゃ――」
【ソフりん?】
「信じられないかもしれませんがそうなんですよぉ。皆さんの様子を見てれば……なんとなく分かりません?」
【絵里子】
「? 様子って…………まあ、たしかに……まるで
【ソフりん?】
「この現象は私がまちがって違う薬を持って来てしまって、それを皆さんが飲んでしまったからと思われます」
【絵里子】
「違う薬? えっと、どういうこと……ですか?」
【ソフりん?】
「――入れ替わり薬です。飲むと飲んだ者同士の魂が入れ替わってしまうんです。趣味で作ったんですけど、見た目が似てるせいでまちがって持ってきてしまったんですねぇ」
【絵里子】
「え……医者としては到底信じられないんですけど」
【夏海?】
「話は聞かせてもらったわ」
【絵里子】
「あっ、夏海さん。体は大丈夫?」
【夏海?】
「夏海じゃないわ。夕顔、夕顔葉月よ。どうやらそこのソフィ……樹里亜? の言った通り、中身が入れ替わってるわね」
【絵里子】
「……ほ、本当……ですか?」
【夏海?】
「えぇ。……ねぇ、
【葉月?】
「は、はい……。……くっ! ば、バランスが……!」
【夏海?】
「きちんと杖で脚を支えなさい。これ以上転ぶのは許さないわよ」
【絵里子】
「う、嘘……! 本当に入れ替わってるの……?」
【姫瑠?】
「――どうやら、そのようだ。姿が自分のそれと違うのがわかる」
【絵里子】
「……一応聞きましょう。あなたは――誰ですか?」
【姫瑠?】
「ソフィーヤ。ソフィーヤシコレンコ。……ソーニャです、絵里子さん」
【絵里子】
「ソーニャさん……。えっと、見た目ソーニャさんの中身が樹里亜さんだから、樹里亜さんの体は……」
【樹里亜?】
「お、お姉様の……!! か、体……!!」
【絵里子】
「おーい、鼻血出してますけど、大丈夫ですかー?」
【ソフりん?】
「……まさかあれ、姫瑠ちゃんですかぁ?」
【姫瑠?】
「残りを考えたら、おそらく……」
【ソフりん?】
「よりによって……最悪ですねぇ」
◆
【絵里子】
「状況を整理します。正直今も半信半疑ですが……本当に魂? が入れ替わってるんですね?」
【ソフりん?】
「はい。製作者のわたくしが言うのですから、間違いありません」
【姫瑠?】
「私もいまだに信じられないけど……そういうこと、だと思う」
【絵里子】
「どうやら受け入れないと先に進めなさそうね。えっと、入れ替わりを信じるとして……誰が誰なんだっけ?」
【夏海?】
「私のほうでまとめてみたわ。おそらくこうね」
◆入れ替わりまとめ
・葉月 ⇔ 夏海
・姫瑠 → 樹里亜
・樹里亜 → ソフりん
・ソフりん → 姫瑠
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「つまり、夕顔看守長と太田部筆頭が互いに入れ替わって、山岸刑務官、我妻看守長、そして私の三人が一周する形で入れ替わった、ってことか」
【葉月(in 夏海の体)】
「どういう規則性なのかしら」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「とくにありません。完全ランダムです」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「…………!!」
【葉月(in 夏海の体)】
「いつまで興奮で悶えてるの。起きなさい」
●SE:蹴る音
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「あ゛た゛っ゛!!」
【絵里子】
「こらこら、暴力はいけませんよー」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「ちょっと葉月ちゃん、わたくしの体蹴らないでもらえますかぁ? 今の葉月ちゃんはただでさえ力強いんですからぁ」
【葉月(in 夏海の体)】
「この事態を引き起こしたのは樹里亜でしょう? 立場を弁えなさい。夏海の体をもってすればお前など容易に滅多打ちにできるのよ? あははははははは!!」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「太田部筆頭の強い体を手に入れたせいかテンションが高い……」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「葉月ちゃんには脚の問題がありましたからねぇ。自由に動かせる喜びで興奮してるんでしょう」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「太田部筆頭もあまりいい気分じゃ――」
【夏海(in 葉月の体)】
「…………!」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「喜んでますねぇ」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「なんで?」
【葉月(in 夏海の体)】
「ところで、どうやったらこの入れ替わりは解除されるのかしら。もう夜中よ。このままでは仕事に支障が出るわ」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「飲んで6時間経てば自動で解除されますのでご安心を」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「ということは……朝まで、このまま?」
【葉月(in 夏海の体)】
「嘘でしょう……」
【絵里子】
「幸い深夜は誰もここに来ないので、ここに居れば見つかることはありませんけど……」
【葉月(in 夏海の体)】
「朝になるまでここにいるしかないわね。……徹夜なんて修論以来かしら」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「まあ一徹くらいなら」
【絵里子】
「慣れてるかのような言い方するね」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「姫瑠ちゃんは健康優良児ですので、徹夜はキツいと思いますけどねぇ」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「いたた……。……も、申し訳ありません。つい取り乱してしまいました……」
【絵里子】
「あ、起きた」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「山岸刑務官、大丈夫か?」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「えっ私!? ……まさか、ドッペルゲンガー!?」
【葉月(in 夏海の体)】
「馬鹿なの?」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「入れ替わりの話聞いてなかったんですかぁ? 今の姫瑠ちゃんの体にはソフりんちゃんが入ってるんですよぉ」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「おっと失礼。そういえばそうでした。どうも
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「――――っ!!!!」
【絵里子】
「……視界が、灰色? 副反応……? にしては変だけど、なにか異常があるなら診察を」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「いいえ大丈夫ですので――――姫瑠ちゃん」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「シコ……お姉様? …………あっ!!!」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「――”色盲”のことは秘密と、むかし何度も何度も言いましたよねぇ? ビンタでわからないなら殴ったほうがいいですかぁ?」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「ご、ごめんなさい……つい……」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「これ以上余計なことを口にしたら……どうなるかわかってますよねぇ」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「い、以後気をつけますので、何卒ご容赦を……!」
【絵里子】
「ほらソーニャさん、よくわかんないけど喧嘩はだーめ。手、放してあげなさい」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「絵里子さん、私はこっちなんだが……」
【葉月(in 夏海の体)】
「端から見たらソフィーヤが樹里亜を傷めつけてるようにしか見えないけど……いい気味ねぇ」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「…………」
【夏海(in 葉月の体)】
「……これ以上の喧嘩は、警備隊として見過ごすわけには――」
●SE:床に倒れる音
【夏海(in 葉月の体)】
「……うっ!」
【葉月(in 夏海の体)】
「夏海!」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「ゆうが……太田部筆頭――!」
【夏海(in 葉月の体)】
「……すみません、葉月さん。脚、うまく支えられなくて……」
【葉月(in 夏海の体)】
「……不便な体で迷惑かけるわねぇ、夏海」
【夏海(in 葉月の体)】
「い、いえ。葉月さんの体であることを忘れて普段通りに振舞おうとする私が悪いのであって……」
【葉月(in 夏海の体)】
「それはそうね。反省なさい。――――私の苦労が少しは分かったでしょう?」
【夏海(in 葉月の体)】
「……はい。葉月さんのことをより理解できた、そんな感じがします」
【葉月(in 夏海の体)】
「そう、いい子ね」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「…………」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「……お姉様?」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「いいえ、なんでもありませんよぉ」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「……?」
【葉月(in 夏海の体)】
「それより夏海。お前、夕飯は取っていないのかしら」
【夏海(in 葉月の体)】
「……? 食べましたけど。おにぎり10個くらい」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「めっちゃ食べるな……」
【葉月(in 夏海の体)】
「それにしては空腹なのだけれど。なぜかしら」
【夏海(in 葉月の体)】
「あ、私深夜もお腹減るので。いつも夜食にハンバーガーとか」
【葉月(in 夏海の体)】
「太るわよ?」
【夏海(in 葉月の体)】
「大丈夫です。鍛えてるので」
【葉月(in 夏海の体)】
「そういうことを言ってるんじゃないの。……それにしても、空腹がひどいわね。この部屋、なにかないのかしら」
【絵里子】
「缶コーヒーありますよ?」
【葉月(in 夏海の体)】
「エナジードリンクと言いなさい。……趣味じゃないわ」
【絵里子】
「あとグミとカ〇リーメイトがありますけど」
【葉月(in 夏海の体)】
「グミをもらうわ」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「普通カ〇リーメイトじゃありません?」
【夏海(in 葉月の体)】
「葉月さんも葉月さんで偏食なので」
【葉月(in 夏海の体)】
「うるひゃい」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「あ、私ももらっていいですか? カ〇リーメイト」
【絵里子】
「いいよー。この時間お腹減るもんね」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「では私も! エナジードリンクをいただきます!」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「姫瑠ちゃん、この時間にそれは太るので、水で我慢してもらえますかぁ?」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「大丈夫ですよ、お姉様は元々スタイルいいんですからちょっとくらい」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「他人事みたいに言わないでほしいんですけどぉ」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「絵里子さんって毎晩それ飲んでなかったか?」
【絵里子】
「どうせあたしはぽっちゃりですよ……」
【葉月(in 夏海の体)】
「姫瑠、10本くらい飲みなさい。太った樹里亜もそれはそれで見てみたいもの」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「その前にカフェイン中毒で死にません?」
【夏海(in 葉月の体)】
「この缶コーヒー……けっこうおいしいですね。ぐびぐび……」
【葉月(in 夏海の体)】
「待ちなさい夏海。私の体だと言ってるでしょう。一気に飲むんじゃないの。二本目に手を出すのはやめなさい。待ちなさい夏海。待ちなさい!」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「いいですねぇ! あと20本はいけますよぉ! あははははは!」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「なんか深夜の学生ノリみたいになってきたな……」
【絵里子】
「普段もこれくらい平和だといいんだけどねぇ」
◆
【絵里子】
「薬飲んでから3時間ぐらい経ったけど……皆さん、大丈夫ですか?」
【葉月(in 夏海の体)】
「私は問題ないわ」
【夏海(in 葉月の体)】
「私も大丈夫です」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「同じく」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「私も大丈夫だ」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「興奮してます」
【絵里子】
「おや、缶コーヒー飲みすぎた?」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「おそらく別の理由かと」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「お姉様……実は興奮の余り少し
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「本当にやめてほしいんですけどぉ」
【葉月(in 夏海の体)】
「それにしても退屈ね。残り3時間……やることがないわね」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「ソフりんちゃんの体はさすがですねぇ。不思議と眠くないんですよねぇ、なぜでしょう。徹夜に慣れてるからでしょうか」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「…………」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「あ、ちょっと用を足しに――」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「待ちなさい姫瑠ちゃん」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「ほぇ?」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「あなたをひとりで行かせることに身の危険を感じましたので」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「えっ……もしかしてお姉様! トイレでそういうプレイを!? あっなるほど! 行かせるとイカせるをかけて――」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「わたくしも少々お手洗いに。ソフりんちゃん、ごめんなさいねぇ」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「あ、いえ。構いませんけど……」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「あっちょっお姉様! そんな乱暴は」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「黙れ♡」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「いだァッ!!」
●SE:扉が閉まる音
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「自分の体を傷めつけることに躊躇いがないなあの人……」
【葉月(in 夏海の体)】
「あの女だもの。気にするような
【絵里子】
「でもそっかぁ。入れ替わりとなるとこういう弊害もあるんだねぇ」
【葉月(in 夏海の体)】
「子供じゃないのだから、気にするほどでもないでしょう。姫瑠は例外だけれど」
【夏海(in 葉月の体)】
「あの人って中身まだ子供のようなところありますよね」
【葉月(in 夏海の体)】
「人のこと言えるのかしら」
【絵里子】
「そういえば夏海さん。その……脚のほうは、もう大丈夫?」
【夏海(in 葉月の体)】
「はい。支えるコツが分かってきたのでもう大丈夫です」
【夏海(in 葉月の体)】
「それに……これ以上転んで葉月さんの体を傷つけるわけにもいかないので」
【葉月(in 夏海の体)】
「…………」
【絵里子】
「あっ、ごめんなさい。無神経な発言でしたね」
【葉月(in 夏海の体)】
「別に。気にしてないわ」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「……ゆ、夕顔看守長は、その、空腹はもう収まりましたか? 先ほどつらそうだったので……」
【葉月(in 夏海の体)】
「正直言うとまだまだね。グミもう一袋はほしいわね」
【絵里子】
「これ以上はどうかご勘弁を……」
●SE:扉が開く音
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「…………」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「ふぅ、スッキリしました! いろんな意味で!」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「…………」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「我妻看守長がツッコまない……?」
【絵里子】
「憔悴しきったような顔してますけど、大丈夫ですか?」
【葉月(in 夏海の体)】
「なにがあったのか容易に想像がつくわね」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「わたくし、本気で嫌がることってそうそうないんですけど、こればっかりは本当に嫌でしたねぇ。もし地獄があるならたぶんこれですねぇ」
【絵里子】
「教誨師の口から『地獄』ってワードが出ちゃったけど」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「あの、一体何が?」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「……聞きます?」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「いえ、やめときます」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「そのほうがよろしいかと」
【葉月(in 夏海の体)】
「まったく……信頼関係を築けていないからそういうことになるのよ。もっと日頃から――」
【夏海(in 葉月の体)】
「あの、葉月さん」
【葉月(in 夏海の体)】
「……なにかしら」
【夏海(in 葉月の体)】
「私も、その……お手洗い行きたいんですけど」
【葉月(in 夏海の体)】
「…………」
【葉月(in 夏海の体)】
「嘘、でしょう…………?」
【夏海(in 葉月の体)】
「実は一時間くらい我慢してました。正直漏れそうです」
【葉月(in 夏海の体)】
「なぜ黙っていたの!?」
【夏海(in 葉月の体)】
「言いづらかったので……」
【葉月(in 夏海の体)】
「…………っ!!」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「信頼関係は?」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「また地獄が……」
【葉月(in 夏海の体)】
「……行くわよ」
【夏海(in 葉月の体)】
「……はい」
●SE:扉が閉まる音
【絵里子】
「あたし本当に飲まなくてよかったと心底思ってるよ」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「……絵里子さんだけずるい」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「むかしこういう入れ替わりのせいでトイレでひと悶着起きる話、マンガで読んだことあります。いざ当事者となると大変ですね。苦労が身に染みてわかりましたよ」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「ひと悶着起こしたあなたが言います?」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「当事者になることってそうそうないと思うんだが」
【絵里子】
「まあデリケートなことだからね。でもフィクションにおける入れ替わりの醍醐味って、異性との入れ替わりじゃない? 私たちみんな女だから、そういう意味ではあまり面白くないよね」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「面白くなくていいんだよ! 自分だけ入れ替わってないからって呑気なこと言わないでよ絵里子さん!」
【絵里子】
「あはは! ごめんね? 端から見てるとどうしてもね」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「でも仰る通りかもしれません。どうせなら男性の体になってみたかったですねぇ」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「我妻看守長まで……」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「そう思いません? 性欲を持て余す若い男子の体になってオ〇ニーとかしてみたいじゃないですかぁ」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「それはちょっと…………」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「…………」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「…………同意、しかねます」
【絵里子】
「おっ、ちょっと溜めたね。ソーニャさん、もしかして……実は興味ある?」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「ち、ちがっ……!」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「『溜めた』……! なるほど、オ〇ニーだけに、ですか! お上手ですね!」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「…………」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「な、なんかごめんなさい……」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「わたくしの声でくだらないこと言わないでほしいんですけどぉ」
【絵里子】
「でもあたしも一度くらいは男子の体になってみたいって思うかなぁ。男性器
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「誰もこの部屋来ないからって言いたい放題すぎやしないか?」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「しかしどうなんでしょう。女性器より感度が低い、という話を聞いたことがあります」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「オー〇ズムも女性より短いですからねぇ。いわゆる賢者タイムというものにも興味があります」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「あっわかります! 男の人は射精したら賢くなれるんですよね! どういう感じなんでしょう……!」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「姫瑠ちゃんも男だったらいいんですけどね」
【姫瑠(in 樹里亜の体)】
「そ、それはつまり……私と……!?」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「皮肉が通じないって本当に面倒ですねぇ」
【絵里子】
「あはははは! 樹里亜さんうまいうまい!」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「これ私だけノリが悪いってことになるのか……?」
●SE:扉が開く音
【葉月(in 夏海の体)】
「…………」
【夏海(in 葉月の体)】
「…………」
【樹里亜(in ソフりんの体)】
「一気に空気が重くなりましたねぇ」
【絵里子】
「……こりゃ何も聞かない方が良さそうだ」
【夏海(in 葉月の体)】
「……葉月さん、その、本当に」
【葉月(in 夏海の体)】
「今日のことは忘れなさい。いいわね?」
【夏海(in 葉月の体)】
「……はい」
【ソフりん(in 姫瑠の体)】
「一体何があったんだ……?」
◆
【葉月?】
「…………」
【夏海?】
「…………」
【姫瑠?】
「…………」
【樹里亜?】
「…………」
【ソフりん?】
「…………」
【絵里子】
「6時間経ちましたけど……皆さん、どうですか?」
【葉月】
「……どうやら、戻ったようね」
【夏海】
「はい、私の体です」
【姫瑠】
「…………」
【樹里亜】
「うふふ、戻れてよかったですねぇ」
【ソフりん】
「つ、疲れた……」
【絵里子】
「はい、お疲れ様でした。……樹里亜さん、本来予定していた治験はどうします?」
【樹里亜】
「日を改めるしかありませんねぇ。……皆さんごめんなさい、予定を狂わせてしまって」
【葉月】
「ええ、本当に反省なさい。このような事態、二度と御免だわ」
【ソフりん】
「……山岸刑務官? どうした?」
【姫瑠】
「い、いえ。どうも意識がハッキリしないというか……」
【ソフりん】
「えっ、大丈夫か……?」
【絵里子】
「……樹里亜さん。これは?」
【樹里亜】
「効果の離脱中に起こる症状みたいなものです。離脱の速度には個人差があるので、そのせいでしょう」
【絵里子】
「つまり、薬の効果が完全には抜け切っていない状態、ということですか?」
【樹里亜】
「そういうことですねぇ。時間が経てば次第に収まりますので、心配は要りません」
【夏海】
「……そういえば、今何時ですか」
【葉月】
「…………」
【ソフりん】
「…………」
【樹里亜】
「…………」
【看守長トリオ】
「「「あっ」」」
【絵里子】
「こりゃまずい! もう就業時間だよ!」
【葉月】
「くっ……! すっかり忘れていたわ……!」
【樹里亜】
「もうそろそろここに人が来てもおかしくありませんねぇ。せめてこの薬だけでも戻しに――」
●SE:扉が開く音
【水城】
「――ここにいましたか」
【6人】
「!!!!」
【水城】
「あなたたち、ここで何をしているのです!! 始業時刻はとっくに超えています!! 早く現場に戻りなさい!!」
【ソフりん】
「も、申し訳ありません!! す、すぐに――」
【水城】
「……もしかして、我妻看守長。例の件ですか?」
【樹里亜】
「…………」
【樹里亜】
「……はい、栄養補助剤の治験で少々」
【絵里子】
「えっ、樹里亜さん?」
【ソフりん】
「なんて嘘を……」
【葉月】
「もはや関わりたくないわね」
【樹里亜】
「そういうわけで、かくかくしこしこなんですよぉ」
【水城】
「事情は理解しました。そういうことでしたら大目に見ましょう」
【樹里亜】
「ありがとうございます。というわけで仕事に戻り――」
【水城】
「お待ちを、我妻看守長」
【樹里亜】
「……はい?」
【水城】
「つまり、その薬……効果は確認済み。とくに問題はなかった、ということですね?」
【樹里亜】
「……ええ。異常性は見られませんでした」
【水城】
「ちょうどいいですね。その薬、一粒いただきますよ。ここ最近食事が喉を通らなかったものですので」
【樹里亜】
「えっ」
●SE:嚥下音
【葉月・夏海・ソフりん・樹里亜・絵里子】
「!!!!」
【水城?】
「…………」
【絵里子】
「ちょ、ちょっと樹里亜さん! どうするんですかこれ!」
【樹里亜】
「これは……ちょっとまずいですねぇ」
【夏海】
「……あの、この場合どうなるんですか」
【樹里亜】
「……なんの話です?」
【夏海】
「その、ひとりだけ飲んでも入れ替わりって――」
【葉月】
「いいえ、ひとりじゃないわね」
【夏海】
「え?」
【葉月】
「たしか……姫瑠はまだ
【樹里亜】
「!!!」
【ソフりん】
「ということは……まさか!!」
【姫瑠?】
「……なぜ意識が……たしか、薬を……」
【ソフりん】
「あわわわわわ……!」
【水城?】
「……なんか、体が……怠い……っ!! 手、腕が……シワくちゃだ!!!」
【葉月】
「……水城所長の中身は姫瑠でまちがいなさそうね」
【樹里亜】
「じゃあこっちの姫瑠ちゃんの中身は……」
【姫瑠?】
「しかしこの体、妙にエネルギーを感じますね。薬の効果でしょうか」
【ソフりん】
「決まりだ……」
【水城(in 姫瑠の体)】
「よく見たらシワが……なるほど。……我妻看守長」
【樹里亜】
「……はい」
【水城(in 姫瑠の体)】
「――あなた、嘘をつきましたね」
【絵里子】
「おわった」
【ソフりん】
「おわった……」
【葉月】
「おわりね」
【水城(in 姫瑠の体)】
「――まさか、
【樹里亜】
「……え?」
【水城(in 姫瑠の体)】
「ふふっ……この歳にして若きあの頃の体を取り戻すとは。まるで夢を見ているようです」
【夏海】
「…………」
【絵里子】
「…………」
【ソフりん】
「…………えっと、これって」
【葉月】
「どうやら入れ替わっていると気づいていないようね。それどころか別の薬と勘違いしているわ」
【樹里亜】
「首の皮一枚つながったようですねぇ」
【姫瑠(in 水城の体)】
「か、髪が白い……!! まさか、薬の後遺症で……老化!? お姉様、これは一体!? 性欲がまったくと言っていいほど失くなってしまいました!! まだ処女なのに!!」
【樹里亜】
「その見た目でそのテンションはおぞましいのでやめてもらえますかぁ」
【葉月】
「別の地獄がはじまったわね……」