5時限目。
保健体育の授業。
「おちんちんプレートの用意ができたら、各自起動してね」
今朝からずっと機嫌の良い
昨日の午前中、散々使い倒したプレートを教室の後ろの棚から持ってきて僕の机の上に置く。
学習進度が記録されるみたいなので、自分のプレートは自分で管理しなきゃならないんだ。
金属のような、でもガラスのような質感の黒いプレートに僕の両手を置くと、プレートの表面に同心円の図形が浮かび上がり、起動ロゴのアニメーションが始まった。
しばらくするとプレートから起動音が鳴り響き、僕のちんちん画像がプレート表面いっぱいに表示される。
……まあ、いいんだけどさ。
初回ほどのショックはもう無い。
昨日、女子が僕のちんちんの包皮を剥くのに夢中になってたのを見て、もう慣れたというか悟ったというか。
つまり、もうどうにでもなれと思っている。
「プレートが立ち上がったら昨日のフェーズ2の最終画面まで進めて、【完了】のチェックマークを入れてね」
先生の言う通りに操作していく。
スタート画面の僕のちんちん画像で亀頭の包皮を剥いた状態で亀頭をダブルタップすると、学習フェーズを選択できるようになるんだ。その画面でフェーズ2の横にある完了のチェックボックスにレ点を入れOKボタンを押した。
すると『フェーズ3に移行しますか? Y/N』と表示が出たので『Y』を押す。
──プレートの表示が切り替わった。
プレート表面の左上に赤文字でフェーズ3と、そして僕のちんちん画像がプレート中央に表示された。
花胡先生がプレートを使って撮影した僕のちんちん画像じゃない。
男性器だけが切り出されて映し出されている。
具体的には、腰、下腹部、太ももが映ってなくて、陰茎部分と亀頭部分、そして陰嚢だけがピックアップされた状態で表示されているのだ。
プレート右端に表示された赤い枠線で囲まれた横幅5mmくらいのバーみたいなものも気になる。
「このバーみたいなものは……」
プレートに表示されている僕のちんちんが微妙に揺れ動いている。
こんな動画は撮られた覚えはないし、男性器だけしか映ってないから、きっとこのプレートが僕のちんちんのデータから生成した3Dモデルをリアルタイムで動かしてるんだろう。
亀頭の包皮剥きアニメーションと同じで、本物そっくりだ。
「…………」
なんとなく。
念を押すけど、なんとなくだよ?
これが何を意味してるか分かったような気がする。
指先をプレートに近づけ、プレート表面で微妙にぷるぷる揺れている亀頭をトンっと
僕の指先で
「…………やっぱりか」
自分の直感が外れていることを願っていたけどダメだったようだ。
「わぁっ♥」
「すごい……♥」
「うわぁ♥」
「眼の前に和くんのおちんちんが本当にあるみたい♥」
「ごくりっ♥」
「和兄ちゃんのおちんちん♥」
女子全員が僕がさっきやったみたいにプレートに表示された男性器を刺激したみたいで、そのリアルな反応を喜んでいる。
「うん、みんな無事にフェーズ3に入れたようね。このフェーズ3では、より実践的に男性のおちんちんを射精させる方法を学びます」
「……マジですか」
「プレートに表示されているおちんちんのモデルは例によって和くんのデータから生成されたものです。デフォルトの状態では和くんのおちんちんとそっくりになっているはずですが、学習が進めばおちんちんのカスタマイズもできます」
先生が教壇に立ったまま、手でプレートを指し示す。
「さて、みなさんはフェーズ2までで基本的なことは学び終えています。あとは練習あるのみです。おちんちんプレート右端に表示されているバーが一番上端まで赤くなれば射精するようになっています。おちんちんを刺激するやり方次第で、赤いバーの増加率は変わります。創意工夫して自分に合った刺激方法を編み出すこともできます。みなさんの頑張りでやり方は無限に広がります。思いついたことをお互いに教え合ったり、一緒に考えたりすることもとても大事です」
先生の発言を受けて、女子たちが「よし!」とか「頑張ろう!」とかやる気に溢れたセリフを喋りまくってる。
「では各自始めてください」
「いや、待って!?」
言わずにいられない。
こんな保健体育の授業、ありえないだろ!?
「どうしたの和くん?」
手を上げて立ち上がった僕を不思議そうに先生が見ている。
「いや、おかしくないですか!? 本当に学校でここまでやるもんなんでしょうか!?」
「え? 学校の授業で練習しないんだったら、じゃあ女子はどこで学ぶの?」
「え?」
先生からの不意打ちのような質問に、思わず思考が止まる。
目をパチクリさせている僕に先生が不思議そうに聞いてくる。
「練習もなしにいきなり実践になっちゃうの? 例えば深い関係になった彼氏彼女がいたとして、彼氏が彼女に悪意がなくても間違った知識を教えてしまったら? 彼氏自身が思い込みで間違ったやり方を覚えていることもあるでしょ? 夫婦の間でも同じだよね?」
「その……失敗を繰り返しながら学んで行くのは……」
僕の後ろから一枝先輩が喋り始めた。
「例え話になるんだけどさ? 親が初めて子供に自転車を買い与えた時って、自転車の説明だけして後は子供に自分で転びながら覚えろって言うと思う?」
「……言わないと思う」
「だよね。自転車で転んで擦り傷くらいで済めばいいけど、骨折したり頭を大怪我したりするかもしれないよね?」
「……そうですよね」
「なら、最初から丁寧に教えたほうが合理的でしょ? 自転車とこのプレートじゃ全然違うけど根本のところは同じだよね?」
うん……そうだ、言われてみればその通りだ。
むしろ、学校で基本だけ教えるから実践は自助努力で頑張ってね? という丸投げに近いやり方がまかり通っている方がおかしい。
昔はともかく、今は規則やルールで僕たちを雁字搦めにして自由に動けなくしている。その一方で僕たちは大人にバレないようにその規則を破って実践するか、そういう情報にアクセスするようにある意味要求されているのだ。めちゃくちゃ矛盾してる。
この状況では、真面目な生徒ほど身動きが取れなくなるんじゃないか?
……今まで疑いもしなかった部分を考え出すと、自分の思考が枠を乗り越えて一気に広がっていくような感覚を覚えた。
うん。
多分ある程度はこの「丸投げ」でも上手くは行くんだ。
だけどきっと酷く傷つくケースだって当然あるだろう。立ち直れない子だって出てくるかもしれない。じゃあその子たちには諦めろとでも言うのだろうか?
花胡先生に言われるまで、こんなことにも気付けなかった。
思い込みというよりまるで洗脳でも受けてたみたいじゃないか。
僕が言ってることの方が明らかに間違っていた。
極めてプライベートな部分でもこうやって教材にして全員で学べば……ああ、どう考えてもこの学校のやり方のほうが正しい。個人の性格や自助努力に頼ったようなやり方では、こぼれ落ちた一部の生徒の人生が歪みかねない。
「……すいません、僕の方が間違ってました。変な常識に囚われてたと言うか」
花胡先生が嬉しそうに微笑んだ。
「思い込みは誰にでもあるものよ」
材料は全部揃っていて、それを論理で組み上げて行けば確かにこの結論になる。
花胡先生は僕がちゃんと解答に辿り着けたのを純粋に喜んでいるみたいだ。
「はい、じゃあ和くんも納得してくれたみたいだからみんなで練習開始!」
「「「はーい」」」
◇◇◇◇◇◇
僕は納得はしたよ?
それは嘘じゃない。
ただしそれは女子のみんなが学校で男性器を射精させる方法を学んだり練習したりすることについてだ。
僕の机の上に置いたプレートを見るとどうしても微妙な表情になってしまう。
プレートに表示されているのは僕のちんちんだ。
仏頂面をしたまま、プレートに表示されている亀頭部分を指先でついっと擦り上げると、右端の赤色の枠の下端に赤色の線が現れた。
亀頭の角の部分を指で左右に擦りながら、もう片方の手でちんちんの竿を挟み、何度も上下させると赤色の線が徐々に上に移動してくる。
まあね?
分かるとも。
僕自身はオナニーしたことが無くても、やり方くらいは知っている。
それなりに健全な中1男子のつもりだし。
友達なんかの男の子ネットワークで性に関する情報は結構回ってきてた。
……まあこの学校には男子は僕しかいないからそのネットワークは無くなっちゃったけどさ?
それでもやっぱり男子の僕がこのプレートを使って、ちんちんを射精させる練習を積む意味はないと思う。
たしかに僕はオナニーで射精した経験はないけど、この半年間毎日夢精で射精を経験しているのだ。友達の場合だと夢精はせいぜい一週間か二週間に1回くらいと聞いたことがある。
自分でもこの回数は凄いんじゃないかと思う。射精に関してだけなら僕は超高校級、いやこれはもうプロレベルなんじゃないだろうか?
「……」
花胡先生を見ると、ほとんど瞬きしてないのか教卓に置いたプレートを操作してる先生の目が充血して血走っていた。
……聞ける雰囲気じゃないな。自習していいかどうか花胡先生に聞くのは後にするか。
僕的にはこのフェーズ3のモードから抜けてフェーズ2の百科事典モードに戻り、そこで色んな知識を覚えた方が有意義に思える。
このフェーズ3のモードから抜ける方法があるはずなんだよな。
例えばこことか。
バーの部分をタップするとバーの下に数字が表示された。
■ステータス
【刺激指数】2/1000
【充填指数】0/400
……あぁ。
なんとなく意味が分かる。
これはアレだな、子供がやっちゃいけないゲームだ。
CEROレーティングZだ。
ここは教室で且つ授業中で、やってるのは女子中学生だけど。
状況のあまりのシュールさに半笑いの顔のままプレートを眺めていると、刺激指数の数字が2から1に減少した。
何も刺激しないでいると醒めていくリアルタイム制か。
んん? これ……もしかして難しいんじゃないか?
簡単だろうと思ったのは僕が男子で、自分の股間にちんちんを装備しているからかもしれない。
ちらりと左の席の
プレート右端の赤い枠に囲まれたバーの下端に赤色の線が現れる気配はない。
天子ちゃんはちょっと泣きそうな顔になってた。
全く変化の現れないバーを見て、可愛い彼女の顔がどんどん絶望的な表情に変わっていく。
あぁ、コレはダメだな。
こんなもの10歳の女の子がノーヒントでできるわけがない。
どうしよう?
教えてあげた方が良いのかな?
だけど内容が内容だけに気軽に言い出せるものではない。
うーんうーんと悩みつつ、自分のプレートに視線を戻すといつのまにか表示が切り替わっていた。
■メンテナンスモード(子プレート制限有)
基準プレート
【適合率】ーーー
起動中プレート01
【適合率】002/100
起動中プレート02
【適合率】000/100
起動中プレート03
【適合率】001/100
起動中プレート04
【適合率】000/100
起動中プレート05
…………▽
「なんだこれ。メンテナンス……、モード?」
なんでこんな画面に?
気づかないうちにどこかに触れて操作してしまったのだろうか?
ガタンっ!
「えっ!?」
横を見ると己紗が自分の机を僕の机にくっつけていた。
「かっちゃん、教えて欲しいの!」
そして彼女のプレートを僕の顔に突きつけてきた。
彼女のプレートに表示されている僕のちんちんは向きと角度が変更されていて正面からのものではなくなっていた。
ああ、視点を変更できたのかコレ。
右端のバーは下端から1cmほど高くなっていたけど、彼女がちんちんを弄るのを止めたせいでゆっくりと下り始めている。
「あのね? おちんちんの向きを変える方法は分かったんだけど、バーが一定以上に上がっていかないの。これってどうしたらいいの!?」
己紗がぐぐっと僕に顔を近づけて鼻息がすごく荒い。
分からないことがあったら躊躇わずに即聞いてくるのは彼女の強さかもしれない。
「いやその、僕もしたこと無いからちゃんと教えられるかどうか……」
視点が変更できることを今知ったくらいだし。
「何言ってるのっ!」
ダンっと机を叩かれた。
「アレ? なんで僕怒られてるの?」
己紗は手をぐるっと回して教室中を指し示す。
「この中じゃ、かっちゃんしかおちんちん持ってないのよ? つまりおちんちんのプロはかっちゃんしかいないの!!」
「おちんちんのプロ!?」
どこかで聞いたことがあるようなフレーズだ。
誰がそんな変な言葉をひねり出したんだ?
「プロだったらぼーっと見てないでみんなをちゃんと指導しなきゃダメでしょ!」
「ご、ごめん。確かにそうだね」
ちょっと強引だけど己紗の言うとおりだ。
天子ちゃんが明らかに困っている様子だったのに僕は見ているだけだった。
内容が性的だとか繊細だとか、間違ってるかもだとかそんな細かいことは後から考えれば良いんだ。
彼女たちはみんな初心者なんだ。
そして僕はプロだ。
椅子を引いて立ち上がる。
教室をぐるりと見渡すと、天子ちゃんだけじゃなく、他の女子も悪戦苦闘しているのが見て取れた。
まずは行動だ。
「みんな! ちんちんを刺激する基本的な方法を今から教えるので、聞きたい人は周りに集まってください」