体から薬物を分泌できるようになった大学生の話 作:ヒモになりたいナマケモノ
逆ナンしてきた女子に連れられて到着したカラオケは街によくあるような大手チェーンではなく、地元民の俺でも知らないような個人経営のカラオケ店だった。一応カラオケスナックとは違うらしく、中に入ると受付と個室の扉がずらりと並んでいた。受付にはおじいさんには話を通してあるようで、俺たちが個室に向かっても何も言ってこない。
「お待たせ―!逆ナン成功したよー!」
「待ってました!今回はどんな子引っかけてきたの!?」
「お!結構かっこいいじゃん!身だしなみしっかりしてるのもポイント高いよぉ。こっちおいで!お姉さんの隣に座らせてあげよう!」
「ちょっと!連れてきたのは私たちなんだから横取りしないでよ!」
「いいじゃん!一番はこの子に楽しんでもらうことでしょ!私は楽しませる自信あるね!」
部屋に入ると部屋にいるほぼ全員の目線がこちらに集中する。そして一拍置いてから部屋中から黄色い歓声が上がり、俺は思わぬ歓迎に驚いてたじろいでしまう。部屋には12人ほどが居て、そのうち10人が女性だ。全員かなりの美人で、露出度の高い服装をしている。これは女性経験のない男には目の毒だな。
一方、2人だけいる男性は端の方の席にひっそりと座っている。ガタイが良いわけでもなく、喧嘩が強そうな感じでもない。高校の先輩から最低限ではあるが男性も参加すると聞いて、女性陣のボディガード役がいるんだろうと予想していたが、とてもそうは見えない。何か役割があるんだろうか?
中をきょろきょろと見回していると、いつの間にか俺の座る位置が決められたようだ。俺を連れてきた二人に連れられてコの字型ソファの真ん中あたりに座る。そして二人もそのまま俺の両隣に陣取る。
「いやー、来てくれてうれしいよ!私の名前は水野美紀、3年だよ。」
「私は河野まりか、同じく3年です。」
二人は座ってからも組んだ腕を放すことなく、胸は腕に当たったままだ。腕に感じる柔らかい感触に鼻の下を伸ばしていると今度は俺の顔を至近距離で見つめながら自己紹介してくれた。かわいい系が水野美紀さん、綺麗系が河野まりかさんというらしい。普通の男が美人さんの顔をこんな至近距離で見ていたらあっという間に恋に落ちてしまうだろう。俺も優子さんが居なかったら危なかった。
「美紀さんにまりかさんですね。俺は薬師寺忠雄です。むしろこんなにきれいな人がいっぱい居るところに誘ってもらってうれしいですよ。」
「お!いきなり下の名前呼び?しかも早速目移りしてるし。」
「忠雄君さてはだいぶ遊んでるね?チャラ男だね?」
「いやいや、そんなことないですよ。彼女だって出来たことないし、周りが綺麗な人ばっかりで戸惑ってるんです!もちろん、お二人だってとてもきれいです!」
「お、うれしいこと言ってくれるじゃん!」
「しかも聞いた?忠雄君フリーだって!私狙っちゃおうかなぁ?」
狙われてもお断りである。現状二人は俺にとって実験対象であって恋愛対象には入っていない。優子さんを好きになったのは恋人ごっこをしてしまったせいであって、それさえしなければ俺は冷静に実験を進めることができる!……はず。
とりあえずこの二人を薬漬けにして俺から離れられないような体にする実験を開始する。まずは依存性を付与した多幸感(低)を作る。分泌方法は唾液にしておく。汗の多幸感はもうスロットにあるからね。
「それじゃあまずは乾杯しようか!何か飲みたいものある?」
「さっきも言ったけど、お酒で飲みたいのがあれば言ってね?私が代わりに頼んであげるから。」
「ありがとうございます!それじゃあまずはビール飲んでみていいですか?とりあえずビールってのに憧れがあるっていうか……」
「ふふっ、定番だよね。多分思ったよりもおいしくないというか、苦いけど大丈夫?」
「もしダメだったら言ってね、代わりに飲んであげるから。」
「ありがとうございます!」
俺の希望を聞くと美紀さんは個室から受付へ出て行った。どうやらこのカラオケ店では注文はいちいち受付に行かなければならないらしい。残ったまりかさんは俺を飽きさせないようにボディタッチを絡めつつ話題を振ってきてくれる。せっかく二人(周りに人は居るが)になってるんだから今のうちに薬を仕込みたい。
俺は多幸感(低)の汗を分泌し、俺の膝の上に置いてあったまりかさんの手に触れてみる。
「やんっ♡いきなり触られたらびっくりしちゃうよ♡」
「あ、ごめんなさい。つい……ダメですか?」
「良いよ♡特別に手繋いであげる。」
「やった!じゃあ、繋ぎますね。」
「んッ、手繋ぐのなんて久しぶりで、すごいドキドキしちゃってる///」
今まで多幸感の薬は優子さんにしか使ったことが無く、普通の人に使った時にどんな反応をされるのか気になっていたが、どうやら違和感を覚えるほどでも無いようだ。優子さんとの初対面の時に運命感じちゃったのは優子さんがそういう方向に夢見がちなだけで、普通の人にとっては気のせいの範疇なようだ。あとはこれに依存性を付与したらどんな変化が起きるのか。
「あー!何手なんか繋いじゃってるのさ!」
「ふふ、ごめんなさいね?一歩リードしちゃった♡」
「人が飲み物取ってきてあげてる間にぃ~!忠雄君も手出すの早すぎだよ!」
「手出すだなんて、人聞きの悪い言い方しないでくださいよ。」
俺とまりかさんが手を繋いでる姿を見て、戻ってきた美紀さんから抗議の声が上がる。仕方ない、二人っきりになったらアクション起こしてしまうのは男の性。席を外した美紀さんに責任がある。なんてバカ理論を言えるわけもないのでおとなしく持ってきてもらったビールを受け取る。
これがビール。テレビで見るものよりもだいぶ泡のキメが荒い気がするが、実物はこんなものなのかな?まりかさんは苦くて美味しくないって言ってたけど、人気があるってことはおいしいはおいしいはず。もしもダメだったら飲んでもらおう。
「一応様子見ってことで小さいグラスに入れてもらったから、本当に無理はしないでね?」
「ありがとうございます。それじゃあ、乾杯!」
「「乾杯!」」
とりあえず一口飲んでみようと口を付けるが、ほとんど泡しか入ってこない。コップをどんどんと傾けていくとようやく液体部分が入ってくる。
……苦ッ!!!!!おいしくない!テレビや漫画で見るようなフルーティーさとか甘味とかうま味とか全然感じない!飲み込むのも苦痛なくらいだ。
「あんまり、おいしくないんですね……」
「だから言ったじゃない、おいしくないよって。」
「まぁまぁ、この苦さを知るのも大人の階段だよ。ほら、後は飲んであげる。」
「ありがとうございます……。いや、ちょっともう一回チャレンジさせてください。」
まりかさんはそう言って俺のビールを引き取ろうとしてくれる。正直助かったと思って渡そうとしてしまうが、薬を仕込む絶好のチャンスだと思いもう一度口を付けるて、苦いのを我慢しながら今度は依存性を付与した多幸感の薬をビールの中に流し込む。あまり長く口を付けていると怪しまれるので仕込めた量は少ないが、この小さなコップであれば問題ない。これでコップの中は多幸感の薬になった。
「ごめんなさい、やっぱり駄目でした。」
「はいはい、頑張ったね。後は飲んであげるから。」
そう言うとまりかさんは俺からビールを受け取って一気に飲み干してくれた。そして飲み干した後のグラスを少し訝しげに見ていた。
「なんか、いつもよりおいしい?」