体から薬物を分泌できるようになった大学生の話 作:ヒモになりたいナマケモノ
早速付与された超能力というのを確認するべく脳内のメニューバーを選択すると、項目は『超能力』『バージョン情報』しかなかった。ずいぶんと寂しいメニューだ。これじゃあメニューの意味がないじゃないか。
とりあえず本命の超能力は置いておいて先に『バージョン情報』を確認してみるが、何の情報もなかった。書いてあるのはバージョンを表しているであろう数字の羅列と「詳細は天界ホームページにて確認ください」という注意書きのみ。一応スマホで天界ホームページを探してみるものの、引っかかるのは怪しげな宗教団体だけだった。
何の情報も得られずがっくりしながらも今度は本命の『超能力』を確認する。
『超能力』
能力名:薬物分泌
レベル:0
能力:自身の体から薬物を分泌することができる。分泌した薬物の効果は設定が可能だが、分泌可能な薬物の数、効果の強さはレベルによって変化する。生成した薬物は能力者本人には効果がない。
分泌薬物:<空きスロット>
薬物分泌ねぇ……思っていたよりも地味なものが出たなという感想だ。超能力言えば念動力やテレポート、サイコメトリーなどわかりやすいものを想像していたが、薬物分泌か。効果の強さも分からない段階で判断するのは早いけど、うまくやればかなりいい思いができそうだ。
試しに分泌できる薬物を設定しようとしたところで乗っていた車が止まる。どうやら焼き肉屋についてしまったようだ。正直今は焼き肉なんかよりも超能力の方に興味が行っているが、せっかく親が俺の卒業祝いをしてくれるのに俺が居ないわけにもいかない。ありがたく祝ってもらおう。
一通り食べ終わり、満腹になった腹を押さえつけていたベルトを緩める。父さんはまだ肉を食べ続け、母さんはデザートに舌鼓を打っている様子だ。俺はもうデザートも入らないので、スマホを弄るふりをして超能力の調査を再開、先程できなかった分泌する薬物の設定を確認する。
『超能力』
分泌薬物設定
効果:
分泌方法:
効果時間:
効果は文字通り薬がどのような効果を持つかの設定で、自由に書き込める。しかし、「死ぬ」や「不老不死になる」などの強力な効果を設定しようとしても弾かれてしまった。そもそも不可能な効果なのかレベルが足りないのかは要検証だな。
分泌方法はどこからどうやって分泌するかの設定だ。イメージしていた薬を指先からピュッと出すことはできず、汗や唾液など俺が分泌したものを薬に変えることしかできない。今のところ選択肢は汗か唾液のみだが、他の方法がレベルアップで追加されるかもしれないので同じく要検証。
効果時間は速攻・遅効、そして効果持続時間の設定ができる。レベル0では一番長くても1分しか保たないが、これもレベルアップで増えるだろう。
結論、現段階では碌な薬を生み出せない。強い薬を分泌するにはまずレベル上げが必要ということが分かった。そしてそのレベル上げの方法だが、薬を一度誰かに飲ませればいい。レベル0から1へのレベルアップだからか、だいぶ簡単な条件に思える。
飲ませる相手だが、赤の他人に汗や唾液を飲ませるのは少し難しいのでここは父さんと母さんに飲んでみてもらう。薬の効果や効果時間を調整すれば問題はないだろう。とりあえず二人に飲ませる用の薬を作ってみる。
『超能力』
分泌薬物設定
効果:胃もたれ軽減(低)
分泌方法:唾液
効果時間:速攻・1秒
こんなもんかな。少なくとも害はなさそうだし、大丈夫でしょ。あとは飲ませる方法だけど……
「二人とも飲み物空っぽじゃん、俺ドリンクバー行って来るけど何か飲む?」
「ん?おお、ありがと。じゃあ父さんは烏龍茶をくれ。」
「じゃあ母さんは珈琲をちょうだい。」
「ん、了解」
こうして二人のコップを受け取ってドリンクバーへ行き、父さんのコップには唾液を一垂らし、母さんのコップには指を舐めてふちの部分に薄く塗る。これはどの程度の量を摂取させることで効果が発揮されるかの実験のためだ。あとはそれぞれのコップに飲み物を注いで席に戻る。
「おまたせ、はい。」
「ありがとな。」
コップを受け取った二人は同時に飲み物に口を付けた。そしてそれと同時に頭の中にメッセージが送られる。内容を確認するとどうやら無事にレベルアップしたらしい。これで少なくともどちらか一人には薬の効果が現れるはずだ。
「おお、流石烏龍茶だな。スッキリするというか、一瞬胃が軽くなったみたいだ。」
「こっちも甘い物ばかり食べてたせいか、珈琲でも同じ感じがあるわね。」
二人の感想を聞くにどうやらどちらにも効果は表れたらしい。またスマホを見るふりをしながら脳内でレベルアップ条件を確認すると今度は薬を飲ませる回数が2回になっていた。しかも今二人に飲ませた影響ですでに達成度が1/2になっている。もう一度誰かに飲ませればすぐにレベル2になれる。なんて考えているといきなり達成度が2/2になり、頭にレベルアップのメッセージが届いた。何が起きたのかと顔を上げると、父さんが烏龍茶の二口目を飲んでいるところだった。どうやら薬を混ぜた液体全体が薬判定されているらしい。だけど母さんが二口目を飲んでもカウントはされなかったことから、薬を薄めるのにも限度があるようだ。
レベルの上げ方も分かったし、効果も確認できた。あとは能力の研鑽を積むだけ。
そして目指すは億万長者のウハウハハーレム!