人の心は、思ったより脆い。
外から押されれば容易く歪み、もとには戻らない。
でもそれが、幸せでもある。気がつかない限りは。
相談する相手を間違えた、とは言わない。見守ってくれる友達はいても、積極的に動いてくれるようなのはいなかったわけだし。
ただ、だ。この女は即物的すぎやしないだろうか。
それはまあ、
上手く行かないよりは良いんだけど、風情と言うか情感ってものが足りないと思うんだ。
でもま、今さら言っても仕方無いか。
大喜は私のモノ、誰にも渡さない。それは一応、私の意思なのだから。
「いのたと蝶野さんが上手く行くように、菖蒲が応援してあげる!」
そう言ってくれるのは多少なりとも心強さを感じはしたものの、それ以上に不安がやたらと大きかった。
なにしろこの子、私の名前さえ知らないまま声かけてきてるし。て言うか
これなら匡の方がまだマシかな、メガネの分だけ。あれもあんまり手伝ってはくれないからなぁ、不憫だとか言いやがるし。
まあ、とりあえず話を動かしてくれるなら悪くないか。今は正直、膠着状態だから。
大喜は千夏先輩が好きで、千夏先輩もまんざらじゃない。そして二人は同じ家にいるわけで、下手をすれば一晩で決着が着いてしまう。私が介入する隙なんか、どこにもなくなってしまう。
それを覆す切っ掛けになるなら、私としては御の字だ。
いやまあ、二人には少しだけ申し訳ないけど、さ。私だって大喜が好きなんだから、ちょっとだけ周りの助けを借りても良いじゃない。
――そう。これだってフェアな戦いのうちだ、向こうはアドバンテージが大きすぎるんだから、ブレーンをつけるくらいは許してほしい。
「とりあえずさぁ、いのたの気持ちとかは置いとこうよ。そんなの気にしてたら動けないよぉ」
……そこを無視しちゃいけない気がするんだけど、それはそれで正しいかもしれない。大喜は千夏先輩が好き、だけど私は大喜が好き。そこを押して通るには、多少強引に進むしかないから。勿論大喜を哀しませるような事はしない、そんなのは嫌だ。千夏先輩を大喜から遠ざけるだけなら簡単だ、同居の事をリークしてやれば良い。スター選手に降って湧いたスキャンダル疑惑は、栄明の教師陣どころか理事会にまで火種をバラ撒くことになるだろう。そうなれば二人は確実に引き離される。もしかしたら千夏先輩、栄明を去ることになるかもしれない。
でも、だ。そんな卑怯なことをしたら、私が私でいられなくなる。
正々堂々の範囲内で、全力を尽くさなければ。
「いのただってさぁ、蝶野さんみたいな一途な子に好かれて悪い気してない筈でしょぉ? 結局いのたの為になるんだもん、それでいいじゃん」
まあ、ね。告白した時も、戸惑ってはいたけれど嫌がってはいなかった。俺は千夏先輩が好きだから、とは言ってたし私もそれで良いと応えたけどさ。
もしも強引に押していったとして、それで一時的には拗れたりするかもしれないけど――最終的には上手くいくかもしれない。
始めなければ、始まらない。一歩踏み出したら、そこから突破口が拓ける可能性もある。
一気に大喜の懐へと詰め寄る、確かにそれが今の最善手。
……なのかなぁ……。
どうもこの子、考え方が極端なんだよね。私は大喜を好きでいること自体を楽しんでいるんだけど、ゴールしか見てないと言うか。
大丈夫かな、こんなのを参謀にして。
大丈夫なわけなかった。ええ、大丈夫じゃないよ。大丈夫なもんか、これが。
「ふっふーん、準備ばんたーん。好きなようにして良いよぉ、蝶野さん!」
青ざめる私の前で菖蒲は楽しそうに笑っていて、そして。その後ろには――大喜が転がされている。目と口を塞がれた姿で。
どうしよう、明らかに絵面が犯罪だ。今警察が踏み込んできたら、拉致監禁でお縄じゃないか。一応高校新体操塊では日本トップクラスの私だけど、これが明るみになったら破滅するんですけど。
いやそもそも、なにやってるんだコイツは。
準備万端もへったくれも、何が――。
と叫びそうになって私は、ようやく思い当たった。このバカがさせようとしている事に。
今の大喜は手足も縛り上げられ、抵抗一つ出来ない無力な状態。この状態なら、
専門的な言葉で言えば――据え膳、か。
つまり菖蒲は「ここでモノにしてしまえ」と言っているわけだ、そうすれば話は片付くからと。
いや、いやいや。いやいやいやいや、そうじゃない。思いっきり間をすっ飛ばし過ぎている。
そらまあ大喜が好きだし付き合いたい、そうしたらキスとかその先のあれこれとかもするんだろうなーとは思うけどさ。でもそんなのはもっと先の話、高校一年生の私たちにはまだまだ早すぎる。
ここは良識ある学生として、この犯罪者をどうにかして大喜を助けないと。
そう思った矢先菖蒲は薄く笑いを浮かべ、大喜へと歩み寄った。
「じゃーぁ、まずは
その手は大喜の身体をまさぐり、そして――。
「おぉ~、思ったより逞しいねぇ。これでまだ未使用なんてもったいなーいぃ」
軽口を叩きながら、大喜のそれ……オトコノコを慣れた手付きで引きずり出してしまった。
私だって高校生だ、そういう知識くらいある。あれがどういうものか、そういう事は多少なりとも知っている――筈なのに。
こんなのは、知らない。こんなものは、私が知って良いものじゃない。
大喜の一部だとさえ、思えない。
ああ、でもそんなものを菖蒲は愛しげに弄っている。信じられないくらいに、楽しそうな顔で。
そのまま更に顔を寄せて「あー……んっ」、菖蒲は大喜のオトコノコを、口に含んでしまう。
そう言う行為があるのは私だって聞いて事あるし、好奇心で画像検索して見たことだってある。でも、まさか。こんなにも至近距離で、フェラチオというのをリアルで見る日が来るなんて。
もがく大喜の塞がれた口から漏れる呻きと、菖蒲が頭を上下させながら奏でるじゅぷじゅぷという粘っこい水音。あまりにも生々しくて、凄まじい。
顔が動く間にわずかだけ見えるオトコノコは、太く血走っているように思える。
気持ちいい、んだ、大喜は菖蒲に、気持ちよくさせられているんだ。
その様を見ているだけで、お腹の奥でなにかが沸き立ってくるのが分かる。
見たくない、でも見たい。そんな背中合わせの思いと共に、私は二人の結合部を見つめ続けた。
水音はどんどん激しくなり続け、やがて大喜の身体が跳ね上がるように震える。それが何を意味するか、私には察しが付いてしまう。
射精した、ということ。大喜が菖蒲の口の中で、精液を放った。
「んむ、んー……んっ」
菖蒲が喉を鳴らしてそれを呑み込み、ゆっくりと口を離すのを私はただ呆然と眺めるしかない。
目の前で起きている、異常な事態を。
「あ、うぁー、……ぁ」
菖蒲の指先に翻弄され、私は壊れたオモチャのようにただ切れ切れの喘ぎを上げるだけ。
普段のオナニーでは気持ちよくなりだしたくらいで指を止めて余韻に浸るのに、菖蒲はお構いなしに攻め続けてくる。どんなに上っても上っても、降りることを許さない。それどころかまるで私の内側を知り尽くしているかのように、的確に。
グチャグチャに掻き回されていく私のオンナノコは、まるでお漏らししたかのように絶え間なく汁を垂れ流していく。
痛くないように解してあげる、という菖蒲の言葉にのせられて私は延々と快感に落とされているのだ。
この先の為に。
菖蒲は私と大喜に、……セックスをさせようとしている。そうなってしまえば、私たちは特別な関係になる。誰も入り込めない、絶対に引き離されない間柄に。私たちが幸せになれるように、菖蒲は策謀を巡らせていたのだから。
「これくらいで良いかなぁ、そろそろいのたと
嬉しそうな菖蒲に促されるままに、私は服を剥ぎ取られてノロノロと大喜に跨がらされていく。
頭の中は白い快楽の光に呑まれて、もうなにも見えない。このまま菖蒲に任せておけば、私はそれでゴールに辿り着ける。それは確信出来る、間違いない。
だけど、でも。
最後の最後で、残った理性が私を踏みとどまらせた。
「ダメ、……だよ。大喜は千夏先輩が、好き……だから……」
大喜の気持ちより自分を優先するのはまだ良いかもしれない、そこまでなら。それでも、これ以上は許されない。
正々堂々勝たなければ、意味がないんだ。千夏先輩だって大喜を、――好きなんだから。
そう思っていた私はでも、思いがけない角度からの不意討ちを受けることになってしまう。
「いのたがちーちゃんを?
ドクン、と心臓が強く瞬く。それは、どういう事だ。私はだって、でも確かに千夏先輩から感じていた。大喜への、強い好意を。
まさかそれは、勘違いだったのか。単に同居人として仲が良いだけで、そういう感情は無かったのか。
千夏先輩は私のライバルでさえ、無かった。ただ私がずっと勝手な思い込みで、七転八倒していただけだった。
だとしたら、だとすれば。私は、何に遠慮する必要があったのか。
大喜の恋は、実らない。絶対に実らない。ならここで、終わらせてあげて良いんじゃないか。私がその傷口を埋めて余りあるほど、愛してあげれば良いじゃないか。
一度は止まった腰を、私は再び落としていく。今度は菖蒲に手を引かれてではなく、自分の意思で。
聳え立つオトコノコの真上に私の
「蝶野さん、あと半分くらいだよぉ。頑張ってねぇ~」
今一熱量が低い応援を受けつつ、私はそのまま一気に身体を落とし込んだ。
聞いていたような痛みは無く、込み上げてくるのはただただ強い満足感。大喜と一つになれた、という事実だけがここにある。
お腹の中はパンパンで、一分の隙も無いほど完全に大喜と私は密着しあっているんだ。
それだけでもう、気絶しそうなくらいに気持ちいいのに。菖蒲はさらに、その先を求めてきた。
「蝶野さんさぁ、スクワットするよね? あんな風に、動いてみようよ。抜けきらないようにしてさぁ」
全く簡単に言ってくれる、ここから動けだなんて。そんなの――、試したくなるに決まってるじゃないか。
そろそろと腰を上げていくと、私の中は引っ掻かれるように抉られて。その快感に耐えかねて腰が落ちると、今度は一番奥がドスンと突き上げられて衝撃で腰が浮いてしまう。一旦浮いた腰は快感に再び落ちて、落ちた時の突き上げでまた跳ね上がる。
止まらない、止められない。大喜を
指ではどうやっても得られない、この快感。いつまでも浸っていたい、そう心のそこから思う――けれど。
「んあ、ぁっ、――!!」
身体の一番深い場所で、なにかが弾けとんだ。何が起きたのか、私は大喜の身体が
大喜は私と繋がったまま、私の膣内に射精したのだと。
健康的な女子高生である私が膣内射精を受けるという事は、少なからず
「おぉ~、蝶野さん顔蕩けてるぅ~。上手く行って良かった良かったぁ」
ぱちぱちと手を叩いて祝福してくれる菖蒲の声を聞きながらも、私は再び腰を動かしていく。もっともっと、したい。もっともっと、欲しい。
私はこの幸せを、もっともっと貪欲に味わい尽くす。
だから、このままずっと大喜を愛したい。少なくとも、身体が動かなくなるまでは。
あれからどれくらい過ぎたか、それももう曖昧だ。一年にはならない筈なんだけど、さ。
散々愛し続けたお陰で、大喜は私を好きになってくれた。もう千夏先輩を見ない、私だけの大喜になってくれたのだ。
当の千夏先輩は、菖蒲が言っていた男バドの帰国子女と少しの間付き合っていたけれど――二ヶ月もしないで別れてしまったそうだ。どうしてかは知らないし、追求するような事でもない。そういうものだ、としか思えない。最近はあまり顔も会わさなくなったし、正直そこまで興味も持てない。千夏先輩には千夏先輩の人生があって、私がどうこう言うべきではないんだ。多分、きっと。
逆に菖蒲とは、まるで幼馴染みみたいに仲良くなっている。大喜の件で繋がった縁は、途切れること無く続いている。とは言え最短二時間で彼氏を乗り換えるような恋愛体質だけは、いまだに理解できないけれど。いや付き合うまでに分かれよ、とか実際思うわ。恋多き女と言うか、気が多すぎる。もうちょっと落ち着いて、一人をじっくり好きになっても良いと私は思います。
でもま、それも含めて人生だ。これもまた、私がどうこう言うべきではない話。
「大分大きくなったよねぇ~」
すっかり丸々と膨らんだ私のお腹を撫でながら、菖蒲が愛しげに呟く。自分で産む気はないけど赤ちゃんは大好き、と都合の良い事を言う女だけど、何だかんだで優しいから助かる。今日もそれで、わざわざ来てくれたんだし。
テキパキと用意をする菖蒲の前で、重いお腹を揺らしながら大喜のオトコノコにしゃぶりつく私。最初は信じられなかったけど、今はもう慣れたものだ。私だけ……まぁたまに菖蒲も使うけど……の、大事なモノ。私の人生を変えた、大喜のオトコノコは何よりも愛しいから。萎えていたのが口の中で膨れ、喉を貫きそうになるほど隆起するのも堪らない。
口内はたちまち大喜の味に染まり、唾を飲み下すだけで喉が快感に震えてしまう。
このまま精液を呑みたい、とは思うけど今日は我慢。おたのしみは、まだ先だ。
ちゅぽん、と音をたてて口を離した私は、菖蒲が敷いていたベッドシーツの上で脚を広げる。
「じゃぁいのた、
もう臨月を迎えて少し経ち、明日にも赤ちゃんを産み落とそうとしているオンナノコ。子宮もだいぶ降りてきているだろう、もしかしたら両手で拡げてたら子宮口まで見えてしまうのかも。……あんまり見られたい場所ではないかな、やっぱり。
そんな事を考えながら、私は大喜へと呼び掛ける。
「ね、来て。大喜のミルク、直接飲ませてあげてよ」
本当はあんまり良くないんだろうけど、でもちょっとハードな胎教だとでも思えば良いか。それに大喜との愛の結晶なんだから、この赤ちゃんが産まれる瞬間を見て欲しい。羊膜を貫いて赤ちゃんに触れて欲しい、生まれて最初に触れるのを大喜のオトコノコにしてあげたい。
やっぱり浅くなっているのかそれとも大喜が及び腰なせいか、短い抽挿はでもリズミカルに繰り広げられていく。菖蒲は「産まれてくる所録りたい」と言っていたし、きっとこれも録っているんだろうな。気にかける余裕はないけど、
前の私なら、こんな風に思うことなんかあり得なかっただろう。ただでさえ恥ずかしいのに、そんな事されたら死にたくなっていたかも。
馴れてしまったせいか、いや違う。
今の私はきっと、歪んでいる。何処かでおかしくなって、二度と戻れなくなってしまった。
でも、それで良い。
赤ちゃん諸とも突き上げられて気持ちいい、込み上げてくる痛みさえ快感に変換されていく。どうにもならないほど狂ってしまっている、
このまま壊れていこう、このままずっと。
大喜がいて、菖蒲もいる。きっと大丈夫。
まあ実際、お迎え棒ックスする夫婦もいるそうです。