小説の林堂 三次創作 小説「ソードアート・オンライン SAO ~黒を冠する戦士たち~ キミのために 作:イバ・ヨシアキ
イバ・ヨシアキです。
SAO~黒を冠する戦士たち~ 第四十九技 伝えあう想い
の、四十九.五技のお気に入り登録と感想まことにありがとうございます。
本郷さんに許可を頂き、創作させて頂きました作品にさまざまな感想を頂本当にうれしい限りでうございます。
さて今回、キリトさんサイドの小説となっております。
最初はアスナさんサイドとして書き上げましたが、やはりキリトさんからの視点も必要かと、いや、是非キリトさんからのアスナさんに対する想いを表現したいと欲望がわき、その想いで書かせていただきました。
創作に当たっていろいろとご質問にお答えいただいた本郷さん。
本当に感謝いたします。
では、本編へどうぞ。
楽しんでいただけたなら、幸いです。
なお今回は前後に分かれております。
ご容赦を。
──俺は、倫理解除コードを選択しようとしていた。
──彼女を……アスナの思いに応え……彼女を愛する為に。
このVRMMOゲーム──ソードアート・オンラインにおいて、倫理解除コードは本来ありえてはならない筈のVRセックス・システムだ。
ティアさんがこのシステムの噂を聴き、シャインと……まあ確認し、噂の信憑性とシステム内容の詳細を、二人を通して知った時の俺や他の黒衣衆の仲間達の心中はどこか複雑だった。
そもそも、俺や黒衣衆のみんながベータテスターとして参加していた際も、身体の創りのリアルさに色々と問題と疑問と
論議があった背景を覚えている。
長時間のゲーム・プレイのアバターの身体的なあるべき部分の欠落……まあ、あるべき性器など無い不快感や、アバターの身体の創りの違和感、意識が感じ身体を動かす時の反射性などと色々な問題が発生し、それら多くの問題をいくつも修正しながらこのゲームはより現実性のあるものとして完成に近づいていった経緯がある。
それがベータテスト終了後のサービス開始までの間にさらに追及と開発と結論が出され、結果、ほぼ現実と変わらないこの完成された仮想世界が出来上がったが、まさか性行為まで可能にしていたとは。
もしVRゲーム内でリアルな性行為が出来るとなれば、それは社会的かつ倫理観や未成年者における道徳的な配慮の欠如やその他諸々の問題とやらで、間違いなくその方面からのゲーム運営も難しくなるくらいに追及が発生していた筈にも関わらず、そんなことを懸念することなく現実感を追求しすぎだと、茅場の飽くなき追及をどこか呆れてしまっていた。
──そもそも……このゲームになぜこの性行為のシステムが組み込まれているのか?
バーチャル・リアルティの基本研究と概念が出来上がると同時に倫理面で懸念されていた一つに、性の問題も含まれていたのを昔、専門書で読んだ事がある。
まだ基礎理論が出来る前の、机上の空論の中でも、仮想世界を主題とした幾つもの問題が取りだされていた。
仮想世界における戦争の為の疑似的戦場体験。
仮想世界の理想の自分と現実社会における非理想の自分における解離性不安。
そして仮想世界における理想的女性との非生産的な恋愛。
その内容をあえて簡略に説明すれば、仮想の中の自身の理想的な女性を愛し、結果、人類は子孫が残せなくなり、人類は緩やかに死滅していくと言う、どこか極論を織り交ぜた仮設の内容だったが、ナーブギアによって、ようやくに完成されたと言っても良い、この新世界と言ってもさほど問題のない仮想世界は、まぎれもない現実のものとなり、その仮説の信憑性は、これから議論されていく問題なのだろう。
その仮説の根幹にある仮想世界の販売元であるアーガス社がソードアート・オンラインの繁栄の裏側で、その仮想世界を利用した性サービスを企画・計画していたとしても、なんらおかしい事は無い。
仮想世界を利用した人件費や医療面などを気にせずに行える安全な性ビジネスの需要は、企業にとって一番の安定な利用者を見込める部門の筈だ。
この完成度の高い仮想世界を流用した、子会社を介してアダルトサイトの開設も裏側で計画し、このゲームにも試験的にこのシステムが組み込まれていたんだろうと、すこし考えたらわかる事だ。
このゲームには年齢制限も付いていたぐらいだから、それを見越した上でのシステムだったんだろう。
例え、このゲームがデスゲームとして機能せず、ログイン、ログアウト可能な気軽なVRMMOだったのなら、そのコードは、俺みたいな未成年者がプレーしていても、運営側からの管理とチェックが入れば、ゲーム・プレー開始と共に、運営元の個人データのシステムチェックで選択できないようにされる筈だったとは思うが、デスゲームと化した今、そのチェックをする運営の存在すら、あやしい。
唯一の運営は、茅場晶彦ただ一人なのだから。
たぶん、アーガスすらもう存在していないだろう。
こんな一万人も囚われ、今日まで3000人以上もの死亡者まで出した前代未聞の大事件が発生すれば、運営側の責任追及と保障賠償などは決して逃れないし、会社の存続もほぼ不可能だ。
このデスゲームの運営と管理は政府機関の元、アーガスと同じ規模の技術力と財力を持つ大企業レクト社に委任されている可能性がある。
そしてふと、思ってしまう。
その委託を受けているレクト社の誰かに、この今の俺達の生活は見られているのだろうか、と。
唯一、この世界を傍観できるだろう権限を持つゲームマスターである茅場くらいだが、あれだけの天才がわざわざ出歯亀見たく男女の行為を見ているとは思えない。
いや、たぶん、俺達のこの世界での行動も外からは記録ログは確認できても、映像までは見れないようにしている筈だろう。もしこのゲーム内の内容を外から見る事が出来るのなら、今頃何らかの外部のアプローチが試みられている筈なのだから。
この2年間。
外から音沙汰も無く、それすらないのだから、このゲームのプロテクトは相当固いのだろう。まあ茅場晶彦なら、この世界を外の人間に見られたくないように手を尽くしいるのには間違いないだろう。
なぜなら、俺ならそうするからだ。
この世界を作った人間なら一万人の人間がこの世界でどう生き、どう死に、どう生活しているかを他人に覗かれるなんて、着替えを覗き見されるのと一緒だ。
それを思えば、アスナとのこれからの行為を見られる心配は杞憂だろうが、このシステムを俺はどこか忌々しくさえ思っていた。
このコードが存在すれば性行為が出来る。
下卑た輩ならこのシステムを悪用する事を容易に思いつくだろう。
現に、女性プレイヤーをレイプするレッドプレイヤーからイエロープレイヤーに至る、犯罪ギルドが当然のように行ってきた行為があった。
アスナがこのコードを知った経緯は容易に推理できる。以前、攻略組の間でもこの手の犯罪が会議に議題として挙がっていた。
各大手の攻略ギルドでは、女性プレイヤーを守る為に色々な対策が練られたが、どの大手のギルドも警察みたく取り締まる余裕などは無く、結果として護衛を傍に置く事で自分たちのギルドの所属する女性プレイヤーだけを守ると、なんとも付け焼け刃な対策しか思いつけないのが現状だ。
アスナの護衛の件も、自分たちのギルドの攻略の象徴に何かがあったらと、血盟騎士団の名誉と尊厳を守る為にと、アスナの傍にレベルの高いあいつを置いたが、でも結果としては……アスナを護衛するよりは、より危険にさらしていただけでしかない。アスナがこのコードを知っている背景も、その護衛を置くに絡んでその対策会議に、責任感の強い彼女の事だ、副団長の責務から参加し、このコードとシステムの詳細を知ったのだろう。
そして嫌な思いをしたはずだ。
アスナは表面では臆面にも出してはいないが、内面では相当怖いと思っている事は解る。治安の良いセルムブルグに居を置いているのも、その不安からなんだろう。
デスゲームと化したあの日。
その完成された現実感が、攻略に置いての最大の障害となってしまった。
Modとの戦闘におけるアバターの四肢の欠損における恐怖感。痛みは無くても精神を蝕む不快感。そして近しいものの死における喪失感などを生み、それらの精神を蝕む負の感覚は現実とは何ら変わりはしない。
プレイヤー達の精神を疲弊させていく仮想世界の現実感。
目の前で迫り狂う野生の本能と捕食者たる、現実と変わらない獣の殺意を向けてくるModの恐怖は、さらにプレイヤー達の精神を蝕んでいき、純粋に攻略を望むものを、現実世界への帰還を希望するものを徐々に減らしていった。
そして、人を傷つける感触。人を殺す際に感じる感覚。人を殺すまでに感じる殺人快楽までもが、ほぼ現実と変わらないものとなってしまった。
そして、それに合わせたように発生した性犯罪。
女性プレイヤーを強姦する……犯罪。
俺がプレイヤーキル・キラー・ギルド──《嘆きの狩人》の標的にも、女性を強姦し、殺す事に快感を持った相手と、斬り合ったこともあった。
俺は、心の底からそいつらが許せなかった。
そいつの手を裂き、身体の全てを斬り捨て、たとえどんなに命乞いをしようとも、俺は……そんな輩を絶対に許しはしなかった。
……殺した……
……ころした……
……コロシタ……
相手の尊厳の全てを奪おうとする輩を、俺は許せなかった。
例え、そいつらを黒鉄宮に捕らえても、このゲームがクリアされても、法的に裁かれることは難しい筈だ。
よくてもカウンセリングや保護観察処分。
刑務所に似た治療施設での精神的治療など、このゲーム内での犯罪は緊急時における心理的な不和が引き起こしてしまった極限状態の精神的な問題と、殺人として裁くには曖昧な部分が多く、重い刑事罰で処分されることは無いだろう。
もし、そいつらが現実に戻れば……のちの災いの種にしかならない。
だったらここで確実に葬ってやると、その黒い想いが常に俺達──いや俺の心の中にある。
そう……俺には、黒い心がある。
だから犯罪者をたくさん殺せたんだ。
あいつ……クラディールが、俺の事を殺人鬼と吐き捨てて死んだ、最後の言葉。
……呪詛を俺に残して、奴は死んだ……
「おまえは、人殺し以上に……殺人鬼だ……」
あながち、間違いではない。
否定もしない。
拒否もしない。
俺は受け入れている。
……ユルスナ……
……コロセ……
……コイツハ……ユルセナイ……
……ダカラ……コロセ!……
この世界に来た時……始まりの町の広場で茅場晶彦からデスゲームの宣言がされた時、俺の中で何かが、黒い何かが湧き出していたのを、今も覚えている。
無法となり。
秩序のなくなった、あの瞬間。
ただ一つの混沌だけが生まれていた事に、俺は混乱しながらも、どこか興奮していた。
生きる事にも必死だった。このゲームをクリアする事にも。でも俺は、Modと戦う恐怖や、殺意を持つ相手との殺し合いや、フロアクリアのために命をかけて戦う事に、心のどこかでは胸を躍らせ興奮していたんだ。
それが戦う人間の気質としての片鱗だったと気づくまでには、対して時間はかからなかった。
戦場に身を置けば、嫌でも闘争本能が刺激され、学んできた闘いの技術を思う存分に使う事が出来き、いつしか俺は、命がけで戦う事に喜びを見出していた。
現実世界では制限され、全力で使う事を躊躇らなければいけない神霆流の技を使える事に、武人としての喜びを自然に感じていた。
そして徐々に黒いものが、俺の心に生まれだしていた。
デジタルの集合体であるはずのMod、フィールド・ボス、フロア・ボスと殺しあう時、俺は死んで砕けて、現実世界の俺の脳が焼き切れてしまう恐怖よりも、いや、その恐怖を受け入れ、歓喜を沸かしていたんだ。
その歓喜の中に黒い心はさらに膨れ──
──いつしか俺は、この世界の命がけの戦い魅入られていたんだ。
襲いかかるModやフロアボスを倒したとき、俺は心の底から打ち震えるものがあった。
人を救えた時、俺はどこか満たされる思いがあった。人に感謝をされる時、俺はどこか安堵する想いがあった。長い間、現実世界でも蝕んでいた孤独が乾いていく感覚があったんだ。でも、それは結局、俺の錯覚と満身でしかなかった。
あの日。
嘆きの狩人の結成を黒衣衆のみんなと決意したあの日。
全ては、あの日から始まった。
黒衣衆の仲間たちと迷宮に行き、そこで出会った他のギルドメンバーとパーティーを組みながら、その迷宮を攻略していた。
偶然出会ったそのギルドメンバーは、この世界の攻略を願う、強い想いを持つ気の良いプレイヤー達だった。
周囲からべーターの集まりと蔑まられている俺達黒衣衆とすぐに打ち解け、普段のより強くより先にと殺伐とした感覚ではなく、一時的にデスゲームの感覚を忘れられるような、攻略に協力し合う、そんな気の良い空気に俺は油断していたんだ。
あの邪気に気づけず、俺は迷宮の攻略とModの戦闘に夢中になっていただけの自分を許せなかった。
もし、もっと俺が注意をして、あの邪気に気づけていたのら、あのギルドのメンバー達を全滅させずに済んだのではと、今も受け入れない後悔を抱いていた。
狡猾なpoHの悪意と邪気に気付けなかったあの日……初めて人を……5人を殺したあの日……俺の中の何かが……そう、黒い心が表に出てしまった。
俺が殺した5人。
あいつらと殺し合う時、俺は……どこか冷静だった。相手が殺意を向けてくるよりも、その殺意に仕返し、殺し合える人間になってしまっていた。
いや、最初からこうだったんだと、俺は相手との殺し合いを受け入れていた。
狩人の剣士(セイバー)の仮面をつけ、犯罪ギルドを、レッドプレイヤーを躊躇なく調伏させていった衝動も、すべて、この内にある黒い心で成せた事なんだ。
黒衣衆の仲間達と共に、俺は……オレンジ・レッドプレイヤーを狩った。
もし現実世界に戻った時、俺は犯罪者として裁かれても覚悟はある。他の仲間達も同じ思いで狩人になった。
それがせめてもの、あの日の償いと思えたからだ。
あの殺されたギルドメンバー達は、この世界から無事に帰れる事を純粋に望み、多くの人の解放に希望と勇気を持ち、現実世界で待ているだろう家族、想い人や、その人たちと再び出会える夢など、それぞれの純粋な想いを持っていた。
それを……あいつは!
poHは!
……ワライナガラ、コロシヤガッタ!
poHは仲間としてそのギルドに入り込み、最初からそのギルドメンバーを残酷に、絶望を味合わせて殺す為に、プレイヤー・キルの計画を練り、そして見事にその目標を達成させた。
奴がそのギルドに入り込んだのも、楽しむ為の下準備だ。
レベルを上げさせ、純粋にこのデスゲームを攻略したいあのメンバー達の期待と希望を大きくし、最後には全てをご破算にする。
乱戦の中、俺は5人も殺しておきながらpoHだけを仕留めそこない、結果、のちに多くの被害者を出した殺人ギルド・笑う棺桶《ラフィン・コフィン》の跳梁跋扈を食い止める事が出来ずにいた。
多くの犠牲者を作ってしまった原因の全て、あいつを殺せなかった俺にあるんだ。
俺の責任なんだ。
あいつの悪意に気づけず、ギルドの全員を死なせ、生き延びた奴は新しく作った殺人ギルド名前の通り、笑いながら人々を狩り殺し、暗い底のない棺桶へと無造作に命を放り込んでいくあの悪魔を殺し、償わないと。
あのギルドの奴らに顔向けできない。
絶望に染まり、信頼と希望と夢を裏切られ、夢と未来を散らしてしまった、あのギルドメンバーの想いはどこにやればいい。
生命の石に死を刻まれ、わずかな記憶が残され、この世界で生きた想いを、生きた日々を、人生をどこにやればいい。
だから俺たちは誓ったんだ。
同じ思いを生ませはしないと。
poHの、殺人ギルド・笑う棺桶《ラフィン・コフィン》を狩り、償わせてやると。
俺は、その思いで犯罪者を狩った。
捕らえれることも可能だったかもしれなかったが、俺は誰よりも狩った。
黒衣衆の仲間達の誰よりも、俺は犯罪者を狩った。
ただ黒い心の声に従い、犯罪者を狩る感覚に、俺は染まりすぎた。
……いつしか犯罪者を……
……人を、平気で殺せるようになってしまっていた。
……それを……
……ソレヲ……
……アクトウヲコロスコトガ、トウゼンダト、オモイハジメテイタ……
心が黒く染まり相手を殺すことに違和感が無くなり始めていた時、俺は自分に恐怖もなにも抱けないでいた。
人を殺したのに、なぜ、俺は満足している。
……俺は優越感を感じている?
……俺は達成感を感じている?
……人を殺すことが怖くない。
……そうだ、おれは……
……オレは……
……オレハ……
ただ闇の中に眠る様な感覚。
黒い心に溶けていく日々を過ごしていく中で俺は彼女に……アスナに出会ったんだ。
細剣を抜き、このゲームの攻略に勇猛果敢に挑む女性プレイヤーの彼女に。
……風に揺れる豊潤な黄金色の世界を連想させる。柔らかな優しさがこもった栗色の長い髪。
……淡い柔和な蜂蜜のような甘さをヘイゼルの色を宿した光彩を眩やかし宿す瞳。
……愛らしさと愛しさを見る男性に、心奪わせる美貌を彼女は持っていた。
女性の望むすべての理想を追求して創られたアバターではない。
現実のままの姿が投影されているなら、彼女の存在は奇跡のように想えるほどに、とても美しい存在だった。
最初、彼女を見た時、俺はその惹かれる美しさに瞳を奪われ、魅了されていた。
……俺は何故、彼女のような可憐な女性が、この世界にいるのかが解らなかった。
……彼女がMod相手に、あんなに勇敢に戦う事が出来るのかが解らなかった。
……普通なら、恐れて何も出来ないでいる筈の彼女が……
……何故、恐れずに戦える事が出来るのか……
いつしかアスナの事を考えるようになり、彼女の事を気にしている自分がいた事に気づいた。
そう俺は……彼女の事を考えてしまう頃から恋をしていたんだ。
……俺にとっての初恋。
この世界で、まして初恋をしてしまうだなんてと、夜を迎える今、いまさらながらに呆れてしまう。
でも、女性を見て好きだと想えたのは、彼女──アスナが初めてだったんだ。強く。気高く。誇らしい彼女を、俺はいつしか愛しはじめていた。
なのに俺は、その気持ちが恋だと最初、まるで気付けなかった。
あの日を迎えるまでは──俺の内の想いを恋として気づけず、アスナに抱いていた想いに胸を焦がれさせたまま、彼女と初めて決闘をしたあの日までは。
56層のフィールド・ボス攻略会議の時、アスナにはどこか余裕が無かった。今にすれば解る。早く現実に帰りたいと攻略を焦って、あえて非情の戦略を取ろうとする彼女に俺は、違和感を抱いていたんだ。
彼女の戦略は、生き死にのかかったデスゲームの戦略として別に間違ってはいない。
むしろ正しい。
プレイヤー側の被害を出さないで戦うには、その戦略は間違いではないだろう。攻略組からすれば最良の戦略でもある。
でも、それはアスナが取るべきではない戦略だった。
──村に誘い込み、NPCを囮にフィールド・ボスを倒す。
──NPCには子どももいる。
もしその子どもが殺され、リポップしても、アスナの心の中に大きな傷を残してしまうだろう。子どもを殺した事の罪悪感に耐えられる筈は無い。
なぜなら彼女は優しい。
危険を顧みずどんな異形の恐ろしい敵の前でも怯まずに、この世界にとらわれた多くの人を助けるために、身を出し戦う彼女。
その優しさを押し殺し、あえて非情となり、戦い進もうとしている。
いずれ、心を壊してしまうかもしれない。
それに聡明なアスナの考えた戦略とは思えない、あまりにも無情かつ非情なその戦略は、あの困窮した会議の中で、自分を押し殺して考え出した非情の戦略なのだろう。
その戦略をあえて推し進めようとしたアスナは誰よりも副団長として責任を持っていたからこそ、誰も死なせないとの思いで、あえて非情な選択を選んだんだろう。
現にアスナが率いる血盟騎士団は、アスナが副団長に就任してから大きな被害を出してはいない。
アスナは多くの団員を救う為に努力をし、必要な戦略を考え導きだしていたのは知っている。
でも俺は、その非情な選択を選んだ彼女にどこか憤りを感じてしまっていた。
誰よりも強く前へ、先に進もうと剣を振るっていた、血盟騎士団の副団長──閃光のアスナ。
主人公のいない、このデスゲームのヒロインに祀り上げられ、本来誰かが先頭に立ち、攻略へと進んでいかなければいけないこのデスゲームの前に出されてしまった主人公。
……生贄にされたんだ。
自分が穢れるのを恐れて、周りから押し出されるように、この世界の恐れと穢れに立ち向かう事を周りから羨望され、希望を受け、責務を無理やりに背負わされたアスナ。
その重責の果てに消えてしまいかねない不安を厭わずに戦う彼女のあまりの儚さに、俺は憤りを感じたんだ。
なんで戦えるんだと、俺は君のそんな眩やかさに不安を覚えていた。
そんな戦略を取り、誰も犠牲を出さずに最良の結果を残せても、君を残酷だと、陰から罵る悪意を俺は耐える事が出来なかった。
この世界を受け入れ、戦うことに喜びを感じていた俺とは違う彼女。
君は、みんなを助ける為に、死を恐れないで立ち向かっていたのに、俺は自身の慢心のせいで自分を見失い、多くの想いと夢を失わせた愚か者でしかないのに、君は自らあえて、その愚か者になろうとしていた。
そんなアスナの行動を、俺は……嫉妬していたんだ。
そう、俺は君に嫉妬していた。
君は俺が、人の事を想える人間だと言ってくれた。でも君は、俺以上に人の事を思い、人の事を助けられる人間なんだ。
正直に言えばアスナに戦いで心も身体も穢れてほしくないと、非情な決断を取らないでほしいと勝手に願い、それでも尚も人の為に傷つくことも汚れることも厭わない君の行動を恐れ、一人で勝手に怒っていただけの子どもだった。
ましてその気持ちをただの苛立ちに感じてしまっていた俺は、やはりただのガキだ。
俺達が黒衣衆のみんなでフィールド・ボスを倒した後も、危ない攻略をしたことに、アスナは純粋に怒ってくれていた。
攻略組の威信だの権威なんて関係なく、ただ純粋な気持ちであんな戦い方は危ないと注意し、今後こんなことはさせまいとする、純粋な人を想う君の優しい心に、俺は久しい温もりを感じていたんだ。
惹かれていたんだ。
羨ましいと想えた、そんな気持ちを変わらずに持てるなんてと。
そして、関わらないでほしいと、思っていた。
出来れば攻略に参加してほしくは無い、どこかで剣を持たずに生きてほしいと、願っている俺がいたんだ。
アスナに挑まれた決闘で君と闘う中で、俺は彼女の心中を察してしまった。
繰り出される細剣の剣線は速く凄まじくとも、焦りと迷いが入り混じり、アスナの剣からは、早く戻りたいと、早くこの世界から出ていきたいと願う、彼女の純粋な焦りが込められていた事を知り、俺は、もう戦うなと君に対する思いが生まれていた。
アスナの剣技には、
焦り。
憤り。
不安。
恐怖。
──言わば、恐れがあった。
現実世界に隔離、隔絶され、取り残される恐れに、彼女は心を病んでいた。
このデスゲームに参加している人間なら、その恐れと向き合わなければいけない。
だがアスナは、その恐れを血盟騎士団の副団長として、胸に仕舞い、人前で取り乱さずに、必死に堪えて戦っていた。プレイヤーの誰も犠牲にさせずに、無事に帰還させようと、人々を隔てなく救おうとした高潔な想いを俺は、君との決闘の中で知ったんだ。
だからこそ彼女は、NPCを犠牲にしても、非情を前に出し、無理やりに押し出し、闘う事を心に決めて、先頭に立っていたんだと、君の重責の想いを知ったんだ。
でも、理不尽だとおもった。
なんで彼女がそんな重責を背負わせるんだと、怒りが込み上げ、俺は感情のまま君の細剣を折り、決闘に勝利し、そっけなく去った。
もうこれで話しかけないと、どこか安心していたが、不安も感じていた自分がいた。
君を怖がらせてしまった事に、俺は変なざわめきを持ち、君が怖がる事に、どうしようもない恐怖があった。
でも君は何も変わらずに、俺と接してくれていた。
変わらない君の優しさ。
変わらない君の強さ。
変わらない君の存在。
59層で昼寝をしていた俺を怒り、隣で眠りに落ちたアスナに俺は、ようやくに自分の想いに気付いたんだ。
穏やかな歳相応の乙女のような無垢な寝顔の君の顔に、俺は久方ぶりの、張り詰めた思いが和らぐような思いを抱き、心を癒すアスナの存在に、俺は君に対する思いを理解したんだ。
でも、素直になれないでいた。
俺は人殺しだ。
もし、この想いを遂げても、君を不幸にしてしまう。独りよがりな好意で君を傷つけたくは無いと、この想いを殺すことを決めた。
でも俺は全ての羨望を背に受け止め、剣を持ち戦えるアスナに、さらに魅了され、彼女を汚したくないと、彼女を守ってやりたいと思う気持ちが、日増しに強くなっていった。
その中で俺は知ってしまった。
アスナが、俺に好意を持ってくれていた事に。アスナも恋をするのは初めてなのだろう、精一杯の勇気を振り絞って俺に好意を向けてくれる彼女のいじらしさに、俺は素直にうれしかった。
俺と一緒で。
初めての恋の温もり。
彼女の初めての恋の相手になれた事に、俺は何処はかとなく安らぎを覚えていた。
自分が《嘆きの狩人》である事すら、忘れてしまえそうになるほどに。
俺は君と過ごせる時間がとても大切に思えた。
理由をつけて俺と手を繋ごうとしてくれる君の精一杯の勇気。
あまりものだからと、おいしい手料理をふるまってくれる優しさ。
一緒に過ごす中で俺の名を呼び、微笑んでくれる君の暖かさが、俺の黒い心を拭ってくれる。
俺は君に恋をしていた。
いや、愛しはじめていたんだ。
だからこそ俺は……アスナの夢を……君を……汚す夢を見てしまったんだ。
……アスナを汚してしまう夢。
なんで俺とアスナがそこにいるのかが解らなかった。
暗い、暗い場所で、俺とアスナは何もまとわずに、裸のまま互いの身体を求めあっていた。
「……キリトくん……」
快楽に濡れた瞳から淫美な涙を流し、口づけてくるアスナのキスに俺は言葉を失い、彼女のキスをただ受け入れていた。普段の彼女からは想像できないほど強引に、にゅるっと柔らかい舌を口内に這わせ、俺の舌を深く味わうように唾液を飲もうとして舌を刺激してくる。時折、俺の唇をきゅっと噛み、俺の情欲を刺激してくる彼女からの情熱的なキス。
そして、
「……大好きだよ……キリト君……」
アスナが何も身につけず、穢れのない白い肌を晒し、俺の前でふくよかな乳房を見せ、甘く笑みをこぼし誘惑してくる。俺は身体の奥から劣情を沸かし、男性器──陰茎に血が巡り、彼女は劣情をさらに沸かしてくる淫靡な姿で近づき、
「……キリトくん……わたしに……感じてくれたんだね……」
アスナが微笑むにはあまりにも妖しい笑顔で、細剣を握りしめ戦っていた、あの優雅で華奢な指と両手で、俺の陰茎をそっと手なれたように握りしめながら、
「……もっと……気持ち良くしてあげるね……」
情欲と欲情で熱くなった頬にキスをし、そのまま流れるように額へと強いキスを流し、細い腕で俺の頭を拘束し、そのまま抱く様にその柔らかく豊かな双丘の乳房で俺の顔を埋めてくる。
あまりにもの、アスナの乳房の柔らかさに俺の陰茎はさらに硬くなり、膨張を強め硬くなっていく。
逸る心臓に息を切らし、俺は何も出来ないでいた。いや、必死に欲情を押さえていた。そんな俺にアスナは満足そうにしながらさらに妖しい笑みを漏らし、
「……きょうも……ううん……これからずっと……きもちいことしよう……」
何の迷いも羞恥も無く、アスナは俺の上へと跨り、陰茎を自分の膣へと導こうとする。
「……アスナっ! だめだっ! こんなこと……」
穢せない。
綺麗な彼女を。
……なんでこんな事をしてしまうんだ……アスナいったい……
理性で思うも俺は声が出せずに、そのまま深く落とされようとしていた彼女の腰を両手で止めようとするも、アスナは拒むように俺の片手を掴み上げ、豊かな双丘の乳房の間にぎゅっと埋め込み、乳房を押し上げ、柔らかく抗いがたいその柔和な拘束具で俺の片手を拘束しながら、指を一本ずつ小指から咥え、五指全てをゆっくりと味わうように舐めていき、
「……がまん……しなくていいんだよ……わたしを……」
掌に舌を這わせながら、
「……汚して……わたしの純潔を奪った時と同じように……」
妖艶な。
あまりにも妖艶な、それでいて無邪気な頬笑みを向け、
「……俺が……アスナを……」
解らなかった。
ここがどこで、なぜ彼女とこうなってしまったのか。
彼女がこんなにも変わってしまったのか。
俺が、彼女の純潔を。
「……そうだよ……わたしは……きみのモノだよ」
くすっと頬笑み桜色の唇が甘えるように俺の唇を防ぎ、俺の戸惑いの声を押し込め、脳を刺激させるように舌を動かし、俺の舌を擽ってくる。劣情をビリビリと刺激しながら、アスナは俺の興奮する陰茎を膣へ通し込み、
「……あぁああ……ああぁあああ!」
アスナのあえぐ甘え声に、俺は激しく心をざわめかせ、内から来る感情の高ぶりに身を震わせていた。
「……きりとくぅんの……きもちいい……」
そんな感情の高ぶりに反応しているのかアスナは、
「……わたし……キリトくぅんのものだよぉ……」
腰を妖しく動かし、俺の陰茎を膣の内でぎゅっと包み込み、離そうとはせずに、ぎゅぎゅっと膣壁を強めてくる。
俺は、
……モット……ヨゴシタイ……
嫌悪してしまう、君にこんな思いを抱いてしまった自分を。
でも、黒い心がざわめく。
……オシタオシテシマエ……
……キレイナ……カノジョヲ……
……オカセ……
衝動を必死に堪えても、心のざわめきは止まない。
このままざわめきに任せてアスナをと、欲情に駆られそうになってしまう。
「……いいのぉ……いいのぉ……きりとくぅん……きもちいい……」
俺の理性を外そうと喘ぐアスナを、俺は──
「おねがい……もっと……もっと、わたしを汚して……」
その言葉で、俺は理性を切り捨ててしまう。
上で淫らに快感に喘いでいたアスナを押し倒すように身を起こし、抱きかかえながら俺は、アスナを……犯した。
「き、きりとくぅん……ああぁああ! いいのぉ!」
抱きかかえたアスナの背を強く抱きしめ、逃げれないように柔らかなアスナの臀部を力任せにぎゅっと鷲掴み、俺はアスナの膣口に膨張した陰茎を動かしていく、
「ああぁああ! き、きりとくぅん……良いぃ……きもちいいのぉ!」
淫ら声により俺の陰茎が硬くなる。
柔らかい臀部の両方を鷲掴み、そのまま握りつぶしてしまいたい衝動に駆られてしまう。でもそれよりも激しく、激しく、彼女の膣を責め、子宮を汚したい欲望に駆られてしまう。
「アスナっ! アスナっ!」
止める事が出来なかった。
理性が利かない。
いや、もう理性なんか擦り切れてしまっていた。アスナの喘ぐ声に俺の中の劣情はさらに強くなり、
「……おねがい……もっと、もっとつよくしてぇ!」
アスナの懇願に、俺は力のままに彼女の膣を責め、ぎゅっぎゅ、と、彼女の子宮まで陰茎を押しこみ、亀頭の先を打ち付けるように、アスナの膣を蹂躙する。
「あんっ! き、きもちいぃい! きりとくぅん! だいすきぃ! すきなのぉ! だからぁだからぁもっとよごしてぇ!」
限界が来ようとしていた。
ドクドクとした陰膿の中がざわめき、何かが流れだそうとしていた。それが、何かを知っていた。
……だめだ……
……イインダ……
……よせ、だめなんだ……
……ダセ! アスナヲ……
……ケガセ!……
こぷっと陰茎の内に熱が走る。ドロドロとした熱が液体となって、亀頭の先から吹き出そうとしていた。
彼女を。
アスナを。
俺の欲望で汚す為に。
「あ、ああ! あああぁぁああ! き、きりとくぅん! きりとくぅん! いいのぉ! このままよごしてぇ! わたしを、きりとくんでよごしてぇえ! わたしをきりとくんだけのものにしてぇ!」
「アスナっ!」
勢いのままに俺はアスナにキスをし、そのまま彼女の内に深く陰茎を押しこみ、亀頭を深く射し込み、沸き起こる精液を彼女の膣と子宮、そして胎内へと性を注ぎこむ。
「ああぁああ! あん! あああ! ああああぁぁぁああああ!」
彼女の内に注がれる精液の放流に意識を失いそうになってしまう。でも俺は必死に、彼女の内に精液を注いでいく。
アスナは快感にビクビクと激しく震え、涙を流し喜びながら、
「……ずっと……一緒だからね……」
激しくキスをし、俺をさらに求める。
「……もっと……よごして……きみに……もっと汚されたいの……」
「……ああ……もっと、よごしてやる……アスナ」
「……うれしい……だいすき、きりとくん……んんん!」
息を、彼女の全てを奪ってしまうような、激しいキスをしながら、俺は彼女の切なる懇願を受け入れ、再び彼女の膣を責める。
精液を何度も、何度も、彼女の胎内へと注ぎ、乳房も、臀部も、全てを汚し支配していく。
そして……気づいてしまう。
俺が欲望のままにアスナを汚してしまった事を。
こんなにも淫らで、俺を受け入れていく、俺だけを愛する彼女──アスナは、俺が創ってしまった欲望の結末だった。
黒い心のままに、彼女を抱いてしまった結末だった……事に。
……目を覚ました時、俺は衝動的に自分を殴りつけた。
園内の自分の部屋で、何度も、何度も殴りつけ、自分を痛めつけた。衝撃が伝わり、脳が何度も揺れ、痛みは感じはしないが、自分を殴り戒めたかった。
熱い感情が俺の中に渦巻き、夢の中を思い出す度、俺は必死に忘れようと殴り続けても、脳裏にしみ込んだアスナへの劣情は消せず、壁に頭を叩きつけたい衝動に駆られても、彼女の劣情を消せなかった。
俺は、沸いた欲情を押さえる為、フィールドを彷徨い、迷宮区を巡り、Modを狩ることでその欲情を、黒い心を満足させようとしていた。
でも、そんなのは一時的だった。
夜になれば、アスナの夢を見てしまう。
……アスナを犯してしまう淫夢。
どんなに眠気があろうとも、必ず見てしまう夢。いつしか俺は朝まで熟睡してしまい、その夢を受け入れてしまっていた。
アスナを汚す。
欲望のままに。
俺だけのものにしたい。
古き神話や英雄譚の物語に出てくる聖女のようなアスナを、俺の欲望のままに汚す。
彼女の人生の全てを奪い、俺だけのものにしたいという、この黒い心の欲望は殺人よりも恐ろしく、俺はどうすればいいのか解らなかった。
でもアスナを見る度、俺は彼女に癒される思いがあった。
他のプレイヤーから攻略の鬼と言われるも、彼女は現実世界では何の穢れを知らない普通の少女で、もし彼女がこのデスゲームに囚われていなかったら、それなりの幸せな出会いと、脳を焼き切られる残酷な死に巡り合うことのない平穏な生活があり、それに相応しい男性と過ごせる幸せがあったはずなのに、彼女はそんな不釣り合いな俺に好意を寄せてくれている。
人殺しに慣れ、殺し合いに慣れ、黒い心を宿している俺に、君は何で、そんな純粋な暖かい想いを寄せてくれたんだ。
もし、想いが通じ合っても君を不幸にするのに。
狩人である事。
プレイヤー・キル・キラーを行っている人殺し。
このゲームをクリアした後に何が待っているのかなんて今は考えられない。でも、現実に戻れば、俺は君にふさわしい人間にはなれない。
それにもし俺が狩人である事を知れば、君は恐れてしまうのかもしれない。
……怖い。
……俺に向けてくれる君の暖かい優しい表情が恐怖に彩られる事を。
……もしアスナに恐れられたら……
……もしアスナが拒絶したら……
……もしアスナを失ってしまえば……
……だからか……
……夢の中の俺が、アスナを穢し……
……アスナが俺だけの事を想い、俺だけしか見ないようにしたのは……
……アスナを黒く染めてしまったのは……
……俺の欲望なんだ……
俺はなんてやつなんだ。
心の奥底でアスナの事を欲している。彼女の好意を受けてはならないと否定しても、俺はアスナを手に入れたいと思っている。
あの純粋に精一杯の勇気を振り絞って誘ってくれるアスナと一緒にパーティを組み、彼女の想いと温もりがこもった手作りの弁当を食べ、共に時間を過ごしていく中で、俺の中の君への想いをさらに強くなっていった。
君の中の俺の想いも感じる事が出来る程に。
……アスナが好きだと言う想いを。
……アスナを愛したいと言う想いを。
いつかは、この想いを押さえる事が出来なくなるかもしれない。
彼女が純粋に好意を向けてくれるその穢れのない優しさを、俺は自分のものだけにしたいと黒い心がある。
君を汚したい。
純粋無垢な清廉な君を、俺は欲望のままに汚したい。
俺の黒の色で染め、白い君を思うさま汚し、俺だけのものにしたい。誰にも渡したくない。触れさせたくも無い。
自分で恐ろしいと思う君へのこの想いを、押さえ続ける自信が無かった。
いつか、この黒い心にままに君を汚してしまう。
蒼い目の悪魔を一人で倒せたのも、ヒースクリフ団長を倒せたのも、全て君が……アスナが居てくれたから成し得た事なんだ。
君を副団長の責務から解放し、より君を近くに手にし、欲望が、黒い心が、歓喜していく自分がいた。
アスナの好意がさらに強くなり、君の想いがより近くなった事に、俺の中にある君の想いは、もう押さえがきかなくなりそうだった。
だが、それが大きな油断を作ってしまった。
俺はヒースクリフと取り付けた条件。アスナの脱退の後、一日だけ血盟騎士団の訓練に同行する任務の参加。
あいつ。
クラディールが参加していた事に、もっと気をつけておくべきだったのに、俺は、アスナを手に出来た事に、どこか油断をしていたんだ。
大休止に手渡された食料と飲み物の中に麻痺独が仕掛けられ、その事に気づけないでいた己自身の油断。
ゴドリフや若い団員が殺される中、俺は何も出来ないでいた。
痺れていたからと、油断をしていたからと、言い訳する気は無い。ただ、俺の中で油断があったからだ。
俺が油断しなければ、あの2人を殺させずに済んだはずなのに。
俺はこのまま殺されてしまうのも、自分が招いてしまった結末だと受け入れ、せめて一矢報いてやるつもりで剣を抜き、奴に抵抗した。耐麻痺スキルをつけていても、奴の緩慢な動きにすら遅れを取り、クラディールに殺されかけた時、俺の中にはアスナの想いが強くよぎった。
もし俺が死んだら……こいつは、アスナを殺す気だ。
黒衣衆のみんなならアスナを助けられる……でも、アスナは……どうなる?
俺が居なくなった後、アスナはどうなってしまう?
一瞬、脳裏に結末が浮かんでしまう。
……アスナがModに殺され、散ってしまう光景が。
アスナが死ぬ。
死んでしまう。
俺が死んだらアスナは……どうなってしまう。
いや、そんなの解るだろう。
一瞬。
脳裏に浮かんだアスナは、なにかに取りつかれたようにModと戦い、フロアボスと戦い、自分の命を擦り減らし、やがてその命が終える時、何か微笑んでいた。
〝……キリト君……わたしも……君の傍に……〟
笑みの後、跡形も無くなり砕け散ってしまう。
俺は深くアスナに関わり過ぎた。
いや、関わりすぎてしまった。
──アスナが死ぬ……
──……攻略と戦いの果てに死んでしまう……
いや、杞憂なのかもしれない。
いや、こんなのは思いあがりだ。
アスナが俺の後を追って自殺は。
──……自殺……
脳裏に浮かぶ。
泣き。
嘆き。
ひとしきりに泣き明かした後、アスナは細剣の剣身を両手に握り、心臓に突き刺し、満面の頬笑みの中で散っていく姿が。
〝……私も、君の元へ行くよ……〟
なんで。
アスナが死んでしまう事を想像するのか。
だが、彼女が死ぬわけがないと、振り切れる想いは無かった。
俺は、アスナの事に深くかかわりすぎ、彼女の想いに深くかかわりすぎてしまったんだ。
──俺は、死ぬのが怖いのか……
なぶり殺すように緩慢なクラディールの大剣の軌跡に、情けなくじわじわと追い詰められていく中、俺の内に後悔が生まれていた。
脳裏によぎる彼女が消滅する光景。
割れたガラスのように散ってしまうアスナ。
燃え尽きた彗星のような儚さ。
情けない事に、俺は誰よりもアスナの事を生きてほしいと、死なないでほしいと、彼女が生きる事を願っていた。
自分が死ぬ事よりも、彼女が生きていてほしいと願う俺がいた。
目の前の戦いに集中できず、アスナの死を恐れている。
自分の死が、彼女に関わっている事の重さに、俺は後悔していた。
偽善だと思う。
滑稽だと思う。
今まで殺してきた俺が、そんな事を願うのは、間違いだとは解る。
こんな奴に殺され死にゆくのは自明の理だ。
殺してきた今までの流れがあれば、俺は殺されても仕方がないのだろう。
でも、アスナだけは、死なせたくは無い。
身勝手な思いだとは解る。
死を恐れた、手前勝手な命乞いだとも思える。
自分の番が来た。
ただそれだけなのに、俺は、死ぬことに恐怖し、命乞いめいた想いを巡らせ動きがさらに緩慢になり、クラディールの振り下ろした一撃を受け止められずに、地面にぶざまに転がり下卑た高笑いを上げながら奴は焦らすようにわざと緩慢に剣を振り上げ、斬り降ろそうとしていた。
……死ぬのか……
でも、彼女だけはと、クラディールの大剣が降り下ろされた瞬間まで、俺の脳裏にはアスナの姿があった。
アスナと過ごした日々があった。
走馬灯と言っても良いのか、麻痺毒を盛られていたとはいえ、目の前の事に集中できないほど、俺の内には、アスナの事だけが想いだされていた。
確実な死が近づいているのに、恐怖も、後悔も、すべてアスナの事だった。
……彼女をこの世界に残してしまう。
……彼女を置いてってしまう。
……すまない……アスナ……
……きみは……絶対に……死なないでくれ……
クラディールのような奴の邪剣で命を落とす結末を、我ながらにお粗末な最後とうすら笑い、当然の結末だと死を受け入れ、溶け込むように意識を暗闇に沈めた刹那。
彗星のような一閃の疾走がクラディールを大剣を弾き飛ばし、体勢を崩させ、完全な虚を突いた。
その一閃は、
「キリト君! 大丈夫!」
アスナだった。
彼女が俺を助けてくれた。
いつもの強い表情を子どものように崩し、今にも泣きだしてしまいそうな安堵した笑みを向けてくれていた。
俺に駆け寄ってくれた彼女は、俺の倒れた身体を抱きかかえ、解毒薬を飲ませながらも、心の内に静かな怒り──否、殺意を抱いていた。
……アスナ……
……君は……
……奴を……
……殺す気なのか……
静かにすっと立ち上がり、この現状をどう言い訳しようと、取りつくろうと、気を乱していたクラディールを睨みつけ、
「アナタは、わたしが……殺すっ!」
アスナは冷たい殺意を抱いていた。
とても彼女の言葉とはとても思えないほど冷たく、繊細な造りをしていた細剣をクラディールに向かって躊躇なく突き放ち、奴を追い詰めていく。
攻略ギルド血盟騎士団の副団長のアスナの殺意のこもった剣技に、奴は成す術も無く地面に倒され、ぶざまに命乞いを始め、彼女の虚を突こうとしていた。
アスナは躊躇していた。
人を殺すことに。
当然だ。
彼女に人を殺すことはできない。
でも、
──なにかが起きる前に奴を殺せ、アスナ。
……ソウダ、コロスンダ!
……違う。
──やめろ、アスナ。君が手を汚す必要は無い。
……君は、絶対に殺しちゃ駄目だ。
アスナがもしあいつを殺してしまえば、君は壊れてしまう。
人を殺した罪悪感に苛まれ、命を散らした喪失感に、あの感覚に君を苦しませたくない。
自分勝手な偽善だと思われても良い。
いまさらながらの綺麗事だと思う。
でも俺は……君に人殺しをさせたくは無い。
そうだ。
それが俺の本心なんだ。
「……もう二度と……わたし達には関わらないで……」
剣を修めた彼女の姿に、俺は安堵を抱いた。
そうだ、俺は彼女を守りたいんだ。
愛しているから。
好きなんだ君の事が。
この気持ちはもはや崇拝とも言っても良い。
俺は、君に焦がれている。
俺の全ては、君のものなんだ。
もうクラディールに成す術は無い筈だ。
奴を黒鉄宮に送れば、それで事が終わる。
……ソンナワケ、ナイダロウ。
そう、クラディールの命乞いなど、聴くに値しない猜疑に満ちた声でしかない。
奴は大剣を再び取り、
「あめぇんだよぉ!」
奴はアスナの虚を突き、細剣を弾き、その振り上げた大剣を彼女に振り降ろそうとしていた。
その一瞬。
俺は、
……コロサセルカァアッ!
……アスナハ、オレノモノダァアッ!
黒い心からの怒声に心奥から怒りが込み上げ、身体から消え切っていなかった麻痺毒の不快感や倦怠感など燃えつかせるほどの憤怒に脳が焼き切れてしまうような衝撃に俺は、理性を砕いた。
沸き起こる感情のまま駆け、跳び出し、アスナを殺そうとしたクラディールの振り降ろそうとした、薄汚れた大剣を『エリュシデータ』の耐久力など構うことなく力任せに砕き割り、『ダークリパルサー』を握りしめた手で、型など構わずに、ソードスキルなど使わずに、憤怒の、殺意の、ただ〝コロシテヤル〟との稚拙で醜い感情に任せた、力に任せただけの突きを奴に喰らわしてやった。
突きは奴の下種な鼓動を発てる心臓を貫き、汚らしい息を吐く肺を破裂させ、悪意の快感を全神経に伝えていた脊髄を砕き、確実にクラディールを絶命させた感触が伝わっても、俺には、不快感……罪悪感なんて無かった。
むしろ足りない。
もっと苦しませてやる。
恐怖を与えてやる。
生きている事を後悔させてやる。
殺意だけが湧いていた。
殺したい、殺してやりたいと、理性的な殺意を通り越した、純粋な感情の殺意に、
……キリキザンデヤル!……
……イキタママ、バラバラニシテヤレ!……
……クダケルヨリマエニ、ゼンブキリキザンデヤレッ!
……アスナヲ、コロソウトシヤガッテッ!
……コノ、ゲスガッ!
黒い心の声のまま切り刻んで殺してやろうと、両手が動こうとしたが、アスナの視線に俺は恐怖を覚えた。
アスナが見ている。
いや、見せてしまった。
俺が相手を殺すところを。
俺の表情を読んで勝ち誇ったような笑みを浮かべ、最後にクラディールは笑いながら、
「人殺し野郎が……」
ざまあみろ、お前のその姿、彼女に見られたぞと、呟くあいつの声が……呪詛が、俺の心の内に食い込んでいく。
……それがどうした。
……俺は、
「……我、狩りし者を狩る者、『狩人の剣士』也」
そうだ。
おれは狩人だ。
お前ら悪党を殺す為の狩人。
お前はその俺に手を出したのだから、こうやって殺されるのは必然だ。
やつは絶望に染まり、手を出した事をいまさらながらに後悔しながら、
「……おまえは……人殺し以上に……殺人鬼だ」
最後の抵抗なのか醜く薄汚い呪詛を吐き捨て、奴は砕け散り、このゲームから、いや世界から完全に消え去った。
「……そんなことは百も承知だ」
奴の姿が完全に散った安心と、生き残れた幸運に安堵し、力なく俺は、その場にへたり込んでしまう。
不様だと思う。
哀れだと思う。
この結末はいつかと、予測できたことだ。
アスナの前で人を殺し、彼女を怯えさせてしまう。
……わかっていただろう。
……こんなことは……
アスナはもう俺の事に関わりたくないだろう。
早く去ろう。
早く消えてしまいたい。
もう、俺はこの世界にはいない。
そう、俺はいてはいけない人間なんだ。
自分に甘かった、俺は結局アスナに甘えていただけだった。
彼女の気高さに包まれたく、彼女の温もりに縋りたく、ただ、自分の欲望を満足させたいだけの卑しい人間だった。
俺が殺した悪党達と、今しがた殺したクラディールとたいした差はない。
もう二度とアスナの前に姿を見せない事を心に誓うも、俺の中の想いはアスナから離れたくないと願う彼女への満たされることのない渇望だった。
でももしこのまま彼女のことを想えば、俺は君を欲して、独占しようとして、君を汚してしまうのかもしれない。
あの夢見たく。
それなのに、
「……キリト君……」
彼女は恐れることなく俺の背に身体を寄せ、そのまま強く抱きしめてくれた。
一瞬、何故だと思った。
もう、触れる事すら許されないと思ったアスナの存在に、そのまま甘えてしまいそうになってしまう。
「すまない、心配かけたな……アスナ?」
アスナが震えていた。
でもその震えは恐怖からくるものではなく、後悔と悔恨、懺悔と贖罪から発せられる切なく、弱々しい声だった。
「ごめんね……わたしの……せいだね……」
アスナは泣いていた。
強い彼女が。
人前で涙を流さないと、心を強く持っていた君が泣いていた。
あいつに殺されそうになった恐怖じゃなく、その涙が俺の為のものだと自然に感じ取られた。嗚咽を殺せずに、ただむせび泣く彼女の声と涙の温もりが背中から、内に伝わってくる。
俺は君を傷つかせてしまった。
全部、俺の慢心が生んだ自業の結果なのに。
……君は、それを……
そんなことはない、君のせいじゃない──と、発しようとしても、声を紡げなかった。
アスナの涙に俺は動揺してしまっていた。
君の目の前であいつを殺し、君は恐れることに怯え、拒絶されると思っていたのに、君は俺を拒絶せずに、抱きしめ、自分のせいでと涙する声には、アスナが自分を、自分自身を責めさいなむ想いが込められていた。
君のせいじゃないと、安易なことを言うと、君はよけに自分を責めてしまう。
これ以上悲しませたくはない。
それなのに俺は何も言えないでいた。
自分がこんなにも、言葉を紡げないなんて。
「……わたし……もう、キリトくんには……あわない……」
その言葉に、俺は身を凍らせた。
アスナに会えなくなることが恐ろしく、俺自身もう君から離れるべきだと思ったのに、君からその言葉を言われる事が恐ろしかった。
一瞬、恐ろしいと思う自分の決意のあまりな弱さを許せなかった。でも俺の本心は、君と離れたくないと、願っている。
このまま何もいわずに、君の言葉を受け入れたら、君は離れていってしまうんだろう。
最後の一言を発しようとしていた君の声を、不安をどうにかしたかった。
そして、
「ほんとに……ごめ……っん!?」
アスナの恐怖を奪いたかった。
後悔と俺に逢わないと誓った今しがたのその想いと恐怖を奪う為に、俺は、無意識にアスナの唇を塞いでしまう。
「ん……ん……!」
衝動的に強くキスをし、感覚的な感触で彼女の最初の純潔を奪ってしまう。
アスナの唇の柔らかさを覆うように、どこか乾いていた俺の唇を重ね、
「……ん、はっ……キ、キリト、く……ん」
感情的な本能のままに奪うようなキスをアスナにする中で、俺の内にある恐怖と絶望の全ては拭われていた。
彼女の唇の柔らかさ、それを受け入れてくれる優しさが、心地良く、唇を離し、キスを終えた後、アスナは朦朧としたまま俺を見つめてくれていた。熱と涙が入り混じる、その女性らしい眼差しにキスを続けたい衝動が沸き起こるも俺はその衝動を押さえながら、
「アスナ……俺の命は君のものだ……ずっと傍にいて、君を守る……」
俺は誓う。
君を絶対に元の世界に返してみせると、そして絶対に離さないという想いを込めて抱擁し、君の悲しみを奪いたかった。
俺は、もう離れない。
君を置いて死にはしない。
俺は君のものなんだから。
「わたしも……わたしの命も……キリトくんのものだよ……」
アスナの両腕が俺を包み、彼女の優しさが伝わってくる。
そう。
アスナの最愛の想いが、最愛の証しが、俺に与えられたことに、俺はうれしかった。
……そう、俺はアスナ君のものなんだ……
……そう、アスナ……君は俺の全てなんだ……
……君がいてくれたから、俺は……
……踏みとどまることができたんだ……
……もし、君が捕まえてくれなかったら……
……おれは、いなくなってしまったのかもしれない。
……君がいてくれたから、俺は自分を。
……おれは、君のことが好きなんだ。
……アスナ……
……俺は君の事を好きになっていいのか?……
──俺は告白した、いや白日にさらした。
俺が狩人であること。
プレイヤー・キル・キラー《嘆きの狩人》の創設者であり、そのリーダーである事。
「結局は……俺も自分の望みの為に殺しているんだから……」
懺悔と言っても良い、俺は全てをアスナに告げた。黒い心の思いのままに、レッドプレイヤーを殺し、拒絶されるかと不安がよぎり、アスナが俺を見て恐怖すると恐れがあった。
でも。
「……奴らと大して変わらな──」
俺の言葉をアスナは、
「──そんなことないっ!」
違うと言ってくれた。
普段の凛とした血盟騎士団副団長の顔ではなく、歳相応の少女として泣いてくれる彼女は、
「……キリ、ト……くんは……あんな……あんな奴らなん、かとは……ちがうよ……」
嗚咽を繰り返しながらも、彼女は〝違う〟と、、俺に告げてくれた。
「キ、リトくん、は……やさしくて……みん、なのことを……ちゃんと……想っている……だって……」
「泣いているよ……」
そう、俺は泣いていたんだ。アスナの前で、彼女と同じようにボロボロと涙を流し、泣いていた。今まで人前で泣いたことは無かったのに、アスナの前で泣いていた。
いや、泣きたかったんだ。
そしてその涙を受け止めてほしかった。
思いっきり。
気持ちのままに泣きたかったんだ。
俺の中にある黒い心を軽くし、罪悪で重くしていた心が和らぐように、彼女の温もりを感じながら俺は泣いていた。
互いの温もりを感じ合いながら、アスナと俺は泣いていた。
……そう、アスナも泣きたかったんだな。
……いいよ、泣いてくれていても……
……俺も君の前では素直に泣くよ……
そうだ。
俺は、君の事を愛しているんだ。
この仮想世界で君は恐れに負けずに、何ものにも染まらずに、自分のまま、アスナとして生きた君のつよそ差に俺は焦がれていたんだ。
染まらない君の傍に居たい。
……傍にいたい……
……君の事を愛してる……
俺は感情のままにアスナを強く抱きしめ、逃がさないように彼女を拘束する。
混乱し慌てだす彼女の可愛らしさに、愛しさが増してしまいさらに強く抱きしめ、俺の内の君に対する感情がさらに増していく。
俺は、
「……アスナ……君の事が好きだ……」
告げた。素直な自分の気持ちを隠すことなく取り繕うことなく、正直に君に告げたかったから。
いきなりの事でアスナは混乱してしまい、顔を真っ赤にして、俺からの言葉を受け入れながら、
「……わたしも、キリト君の事が好き……大好きです」
アスナの精一杯の告白に、俺は歓喜に満ちた。フロアボスを倒した時の喜びではなく、生きのびた喜びに近い、そんな歓喜だった。
でも。
でも俺は君を愛せるのか。
一瞬、あの時の夢の内容を思い出してしまう。
……アスナを汚してしまう夢を。
怖気づいているのか。
あの夢と同じ事をしてしまう事が怖いのか。
違う。
俺は君を抱きたいんだ。
逃がしたくは無い。
本音は、
……アスナを抱きたい……
……君がほしいんだ……
……乾いている、この心を満たしたい……
俺の気の迷いを感じたのか、アスナは不安げに俺を見詰めてくる。
駄目だ、彼女を不安にさせたくない。
愛らしく涙が乾いた、熱に紅く染まる頬の痕。
心を洗い清らかに潤んだ、俺を見詰めてくれる瞳。
愛しい彼女の存在に俺は自分の気持ちを押さえ切れる理性が薄くなりかけていた事に気づき、それを察したアスナの気持ちを奪いたく、唇にキスを交わす。
「……ん!……んんん!」
初めて交わした時とはまるで違う、互いに求めるような淫靡なキスを交わす。
「ん……んむ……ん、アスナ……」
「んむ……んちゅ……んん……キリトくん」
抑え込むままにキスをし、彼女は拒むことなく俺のキスを受け入れてくれる。
アスナを支配していく。
アスナを染めていく。
アスナを汚していく。
「……んんん……んあ……んん!」
清楚な穢れを知らない純真な清らかさを持つ彼女の最初の純潔である唇を奪い、聴き手に安らかな声音を告げる舌をくすぐり、いやらしいほどに唾液を分泌させていく。
「……やぁん……だめぇ……んむぅ……んんん!」
それでも奥に逃げようとするアスナの舌を絡め奪い、俺の口内へと吸い込む。
「んんん……んんんん……んん……」
こく、こくと、互いの唾液を飲み合い、キスを感じ合う程に互いに酔い、背徳的なこの身悶えするような感覚に俺は、感情を押さえる事が出来なかった。
さらに舌を入れ込み、彼女の口の内を責めていく。
「んあ……だめぇえ……はげしぃ……んんんん!」
怯えるように舌を逃がそうとするアスナの舌を逃がさないように、俺は彼女の言葉を塞ぎ、キスを強める。待ってと、キスを止めようとする言葉を出せないように、いや、その言葉を彼女から発せられる事を恐れるように、俺はキスをさらに強め、彼女の口内を蹂躙していく。
「んん……ん……んん……んんん」
羞恥による抵抗力がしおしおと緩くなるも、俺は完全に抵抗を出来ないようにと、欲望のまま、本能的なキスでアスナを責め続ける。
「んんん……んむぅんんん……」
ガクガクとアスナの細い身体が震え、力が抜けるように、彼女は無抵抗にその色香悩ましい身体を俺に預けるように、身体を寄せながらも懸命にキスを続けようとする。
俺はそんな彼女の健気な好意に余計に本能が刺激され、押し倒してしまいたい衝動に本能が疼き始めていた。
……コノママ、オカシテシマエ!
彼女を押し倒して、思う様に汚したい。
……彼女がほしい……
……夢の内容みたく、アスナを俺だけのものにしたい……あんな風にアスナを……
ぞくりとした歓喜に俺は身を震わせ、アスナとのキスを唐突に終えさせた。
唾液の糸がつうっと一線を引き、ピンと切れてしまった後、彼女はようやくに意識を取り戻したのか、
「……はぁはぁ……キリト、くんの……はぁはぁ……キス……はげしいよぉ……」
泣きそうな声で抗議してくるアスナにより欲情を湧かせ、もっと泣かせてやりたい、この綺麗な顔を羞恥と快楽で汚したいと欲情に押され、
「これで激しいって言ってられないぞ……いまから、もっと激しい事をするのに」
その言葉にアスナは困惑し、
「……それって……まさか……」
この世界で唯一男女間の性行為を可能とするシステム──倫理コード解除設定を訊ねてみると、彼女は答えようとはせずに、視線をうつ向かせ、俺と合わせないようにしながら、こくんと可愛らしい動作で頷き、
「アスナ……嫌なら嫌と言ってくれてもかまわないから……」
追い詰めていく。
我ながら狡猾だと思う。アスナの好意を利用し、嫌がらせないように、じわじわと追い詰め、彼女の羞恥を刺激し、
「……いやじゃないよ……その……わたしでよければ……」
逃げられないように彼女に俺の意思を抱かせ、
「……アスナがいいんだ……」
本能からの本音を告げ、
「……あ……はい……」
彼女を捕まえた。
そのままアスナの寝室のベットへと向かい、部屋の明かりを消し、互いの倫理コードを解除し、肌を重ねようとしていた。俺は自分の装備をすべて外し、彼女よりも早くに肌を晒していた。
我ながらどれだけ彼女を欲しているんだと、どこか呆れてしまう。
こんなにも欲情に身を燃やし、アスナを欲している俺はどこか滑稽に見えて、間抜けに思えてしまう。
今、おれはアスナに……どんなふうに見られているんだろうか?
今の様子から見たらアスナは今まで男性の裸を見た事は無いのだろう。
あるとしても、それは映像か資料ぐらいの筈だ。現にいま彼女は、俺を裸を見ないように視線を必死にうつ向かせていた。
瞼を閉じる羞恥に頬を紅めるアスナ。
懸命な硬い操作で、あの可愛らしい服を脱ぎ、あまりの羞恥で泣きそうな表情のまま下着を解除し、露わになった乳房が柔らかく揺れ、絶対な処女性を持つ膣が晒されてしまう。
「……いやぁ……」
俺の前で露わになった秘部の羞恥に耐えられずに、アスナは咄嗟に両手で乳房と膣を隠してしまう。
その羞恥に対する動作すらも可愛らしく、余計に俺の欲情を熱く刺激し、陰茎が硬く反応してしまう。自分でも情けないほどにアスナの露わになった裸に興奮し、内心ではそのまま押し倒してしまいたい衝動が俺の中に渦巻いていた。
アスナの隠した柔らかなあの果実のような甘さのある乳房を触り、口に含みたいと、口内が乾いていく。乳房を触れ、激しく掌に深み、思う様に握りしめ蹂躙したいと欲情が湧き、アスナの羞恥に赤面し反応していた陰茎で完全に全てを奪いたいと、押さえられない男性の衝動が湧いていた。
……襲いたい……
……このまま、感情のままに……
……抱きたい……
両肩を激しく揺らすほどに、俺は本能を理性で抑えていた。
鼓動がそれにあわせ早くなり、これ以上自分を押さえることはもう不可能だった。自分からアスナへと向かおうとした時、
「……キリト君……見て……」
彼女は隠していた両手を下ろし、俺に全てを晒した。
隠してしまいたい気持ちを精一杯に堪えているのだろう、反射的に隠そうと動いてしまう手をぎゅっと押さえながら、アスナは全てを俺に見せてくれた。
……美しかった……
月並みな感じ方ではない。
適当なほめ方でもない。
ただ純粋に、アスナの裸を見てそう思えた。
自分の中に余裕が無くなるほど、俺はアスナの身体に魅了されていた。あの鎧の下に隠れていたアスナの胸……乳房は、本当に純白の果実のような、ふっくらとした柔らかさと甘みが凝縮され、乳輪は小さな幼花のように綺麗で、乳首は少し純潔し硬そうな蜜の芽のように桃色で、それに歯をたててしまえば儚く破裂してしまい、一口も食す事の出来ないような淡い美に満ちていた。
でも、それでも尚も男性の本能でどんな苦難があろうとも齧りたくなるような、どんな依存性が含まれていても、歯をたて噛みつきたい衝動に駆られてしまう程に、彼女の乳房は甘美な果実のように思えてしまう。
アスナの身体も全身が細く、掌を滑らせたい衝動に駆られそうな滑らかな曲線の腰に、乳房と同じ柔らかさに包まれた臀部に、そのまま流れるような綺麗な脚線に見惚れてしまっている自分がいた。
かつて現実世界で中学生として生きていた頃、仲の良い普通の同級生が見てみろよと、俺の前に差し出してきた、扇情的なポーズをした裸の女性の雑誌を見せてくれた事があった。
普通の男性なら、それなりの反応をするものだが、俺は何も感じることはできなかった。
俺は女性に欲情や愛情を持てる人間なのかと、不安を持っていた事がある。好きな女性と出会い、その女性と添い遂げ、いつかどこかの誰かを好きになれるのかと、その人の事を愛してやれるのかと、思い悩んだ事がある。
でも、それは杞憂だった。
いま目の前にいる女性──アスナの事を愛している。
その彼女が勇気を振り絞って俺の前に素肌を晒し、求めてくれている事に、俺は視線をそらすことなく彼女の身体を見ていた。
今日まで攻略の前線で戦い抜いていたとは思えないほどに、女性の持つ柔らかさに満ちていたアスナ。乳房の大きさに反するかのように、無駄な肉のない細い腰に、そのなだらかな流れに続く様に丸みのある臀部の柔らかさ、口付けしたくなるようなふっくらとした太股に綺麗な曲線を描いた脚。
そして、膣に眼をやってしまう。
アバターで簡略化されているとはいえ、そこにはちゃんとした女性気が存在し、硬く閉じられた彼女の身体でもっとも清純な処女である事を示し、固く閉じられた彼女の秘所。
いまだに穢れを知らない部分を、いま俺は汚そうとしている。
俺は、さらに陰茎が興奮している事に気づき、逸る心臓の鼓動と共に徐々に高まっていく興奮が止められない。
びくびくっと大きくなる陰茎をアスナに見られている事が恥ずかしくも、彼女の裸体の前に視線を晒す事が出来ない。
俺は堪らずに、
「アスナ」
「え? んん……あん……はみゅ……」
俺の膨張を続ける陰茎に怯え、視線と意識を奪われてしまっていたアスナの両手を掴み、そのまま拘束するように両手の指を奪いからめ取り、身を傍に寄せて、そっとキスを交わす。
柔らかいアスナの唇が強張ってしまっている。そんなカチカチの唇の硬直を解すように、身体の強張りをゆっくりと柔らかせていく。
彼女がほしいと感情のままにキスをする。
アスナの舌を思う様に絡め、舌を吸い、互いの唾液を飲み合う淫美なキスでアスナを麻痺させ、逃がさないようにする。
……アスナがほしい……
……彼女とキスを交わす度に欲情が増していく……
彼女との口づけを深く味わう中、
「……キ、キリト……くん……んん……」
苦しそうに俺の名を呼び、さらに彼女は可愛らしく俺の欲情を刺激してくる。
したいもっとキスを。
もっとアスナにキスをしたい。
彼女の息を奪い、意識を染め、俺以外の事を考えられなくさせたい。
あの夢の中のアスナみたく全てを奪いたい。
そんなかつては否定していた筈の欲情を思いだし、俺は彼女とのキスを深めるように、舌をさらに強く絡め、唾液を分泌させ、互いの唾液を飲ませ、飲ましていく。
アスナと絡め繋いでいた指を離し、細い腰に手をまわし、身体を固く密着させる。彼女も同じように俺を硬く拘束するように、首元に手を廻してくる。
その互いの拘束が、より深くキスを強めていく。
舌先でキリト君のキスを堪能し、入ってくる彼の舌先を口内に受け入れ、こくこくと唾液を飲み合う。
……もっと飲みたい。
こんなにもキスは依存性を高める行為だったのかと、アスナとのキスに夢中になっている俺自身が驚きを隠せないでいた、
アスナのキスがほしい。
この唇を奪われたくは無い。いや、彼女の全てを奪われたくは無い。
……俺だけのものだ……
アスナとキスを交わし彼女の唾液を強く呑み込んでいくと、胸の内からジリジリと熱くなっていく。
奪いたい。
アスナは、俺のモノなんだ。
キスをさらに強めていく中、濡れていく膣を必死に隠そうとするアスナの行為が可愛らしく、その行為が余計に俺を刺激し、彼女に意地悪をしてしまう。
少しだけ強く彼女の舌を吸い、はむっと唇を甘噛みし、彼女と唾液を息を少し強く、さらに強く奪っていく。
「んんっ! んんんん! ああっああ!」
すると彼女は身体を振るわせ、ビクビクッと激しく震えだす。
キスを離そうと身を悶えさせる彼女を強く抑え、達してしまう。
アスナの達した声を奪いながら彼女の唾液をコクコクと呑み込み終えた後に、
「……苦しかった?」
汗で濡れていたアスナの身体を撫でながら、呼吸を切らし乱していた彼女は、
「……く、くるしくなんて……ないよ……きもち……よかったよ……」
意識が薄く、ぼやけていたアスナは途切れ途切れに言い、もう自分で立つことも難しいのか、腰が抜けてしまったかのように、ぽすんとベットに座り込んでしまう。
「……どうしたアスナ?」
汗で濡れたおでこにキスをし、俺もベットに腰を下ろす。そのまま頬をキスし、お互い寄り添う形でベットに座り合いながら、俺は彼女に愛撫を続けていく。
「……ちがうの……その……」
混乱しているのだろうか、懸命に達してしまった事を誤魔化すように声を漏らすアスナは、言葉を紡ぐ事すら難しいのか、俺の胸元に顔を埋めてくる。
キスの余韻に酔い、達してしまった快感に気を乱し、アスナの思考ははっきりしていなんだろう。
俺は耳元に数回ほどキスをしながら、
「……辛い?……」
囁くと、
「……ち……がう……の……」
おねだりをするような可愛らしい仕草で視線を向けてくるアスナ。目線がキスを欲しているような、いや誘惑してくる彼女の視線に、俺もそんな愛らしい彼女にキスをしたく、
「じゃあ……もう一回だけ」
「……んん……」
キスを送る。
喪失しそうだったアスナの意識を揺り戻すように、彼女は無意識なのか俺にすがるように唇を甘噛み強め、誘惑してくる。俺はその誘惑に刺激され、彼女にするキスを長く、さらに長くと求めたい欲求を押さえながらキスを続ける。
俺の欲情を押さえたキスを感じたのか、アスナの感覚が鋭くなり、このままではまた彼女を達しさせてしまうと、短めのキスを終え、せめてと俺はアスナの唇からすべるように首元を口づけ、そのまま乳房にキスをする。
「……あ……んん……」
敏感な声を漏らし、俺はその情欲を刺激する声音に気持ちを熱くし、触れたかった乳房に手をそっと乗せ、彼女の乳房を包む。
「……だめぇ……やん……」
五指で優しくアスナの乳房を掴み、きゅっきゅと揉み、そのまま親指で桃色の乳首をきゅっと押しこみ、アスナの乳房を刺激し、俺は堪らずに、はむっと果実を齧るようアスナの乳房を噛んでしまう。
歯をたてず、唇で歯を覆い、強めに、弱めにと、アスナの乳房を愛撫する。甘い蜜が漏れるような乳房から漏れる汗に、情欲がさらに湧き、
「……キリト君……」
アスナが乳房を吸う俺の頭を両手で抱き締めてくれる。
そしてそのまま、彼女は俺のおでこやつむじにキスをしていく。
……好き……
……スキ……
……大好き……
と、声が響く様に繰り返されるアスナのキスの後に、
「……キリトくん……だいすき……」
声を懸命に漏らし想いを告げてくれたアスナに、俺は理性を煮えたぎらせ、彼女の乳房を愛撫し始める。
交互に乳房を口付けし、両手で彼女の乳房を触れ、両手の中に彼女の乳房を抱き、
「……んん……ん……」
交互に甘噛みし、
「……あっ……んん……」
交互に舌を這わせ、
「……やぁん……ん……あ……んん」
桃色の乳輪に円を描く様に舌を這わせ、乳首に強めのキスを送り、舌を絡める時と同じように、舌先で彼女の硬くなった乳首を刺激し、舌先で強く絡め、アスナの乳首を吸い取る様に吸い、母乳を求めるような男性の本能のまま彼女の乳房を吸う。
そんな俺をアスナは優しく抱き、欲望のままに乳房を吸わせてくれる。
俺の浸食を許してくれるアスナの気持ちに甘え、俺はさらに彼女の身体に夢中になっていく。こんなにも魅惑的で魅了する身体が存在する事に、俺は落ちていく感覚を受け入れようとしていた。
本来なら抗うべき筈の欲望なのに、俺は彼女の身体に興奮している。
アスナの魅力に夢中になり、今愛撫している乳房の甘さを独り占めにしたい欲望を受け入れてくれる彼女に、俺はさらなる欲望を沸かせてしまう。
こんな俺が、アスナを奪ってしまっていいのか。
理性が、本能が、全て焼き切れてしまいそうな中、アスナが俺の耳元にキスを送ってくる。もっとしたいと、俺は彼女の身体を抱きしめ、ベットに倒れ込む。
そのままアスナの上に覆いかぶさるように、身体を擦り寄せる。
アスナを組み伏せるように、手を指を絡めていく中で、彼女と視線を重ねてしまう。
彼女のヘイゼルの光彩の瞳に映る俺は、アスナと同じように顔を欲情で赤くし、口元は彼女のキスの唾液でびしょびしょに濡れてしまい、今もなおも興奮を冷まさず発情のままにそり立つ俺の陰茎は、余計にそり起っていく。
無理も無い。眼に涙を浮かべ、息を乱し、両頬を真っ赤にして、口元は俺の唾液でいやらしく濡れ、乳房の双丘も俺の唾液と発情した汗に濡れているアスナを見て、興奮しない男はいないだろう。
無論、こんな乱れたいやらしい姿の彼女を他の誰にも見せる気は無い。
……俺はアスナを、誰にも渡したくない。
……こんなにも蹂躙しているのに満足できない。
……ひとつ満足しても、アスナに対する欲情が尽きない……
……俺は乾いてし方が無いんだ……
……満たしてほしい、アスナ……
俺は我慢が出来ずに、無意識にキスをしてしまう。彼女の甘さを味わいたく、湧きあがる欲情を静めたく、ただ無意識にしてしまう。
アスナとのキスが俺の中の不安を消してくれる。
「んん……んんん」
このキスを独占したいと思う中、アスナも同じように舌を入れ、俺の舌先を積極的に舐めてくる。俺もそれに呼応するようにアスナの舌先をくすぐる。
彼女の舌から分泌されていく唾液はとても甘く、恐ろしいほどの依存性に満ち、彼女とのキスをさらに求めてしまう。
アスナも欲情の理性が緩んだのか、唇を追うように、また唇を食すように、はむっと俺の唇を噛んでくる。やわらかいアスナの甘噛みが俺の唇をはむはむと噛み、いやらしく妖しく求めてくるアスナの舌の表面と舌の裏を互いになめ合い、互いの唾液を分泌させようと、舌を懸命に動かす。
乾いていた。
求めていた。
アスナの唾液ほしい。
飲むと、すごく気持ちいいんだ。
甘くて。
熱くなる。
美酒を飲み干すような熱さに、俺は完全に酔い、アスナを欲してしまっている。
「はむぅ……んはあぁ……むあぁ……はみゅ……んんん」
懸命になりながら、一心に求めてくるアスナのキスと舌。
アスナの淫らな気持ちが込められている唾液が流れ込んでくると、それを飲んでいるんだと、
君を汚し犯しているんだと、認識する中でさらに欲情が燃え上がっていく。
あの気高く、戦場の最前線で常に先頭に立ち、凛としている君を、こんな淫らに汚し、乱していく今、俺の中の独占欲が満たされていく。
でも君の肌に触れ、掴み、口付け、舌を這わせ、アスナの感触と薄っすらと浮かぶ汗を受け止めていく中、互いの汗と混じり合わせながら、互いの全身を淫らに濡らし合う中でも、さらに欲望が募ってしまう。
「……きりとくぅん……」
アスナがキスを強請り、俺はその誘惑に負け、またキスをしてしまう。
口付けるだけのキスでは満足はできない。
アスナは自分から舌を入れ、俺の唾液を飲もうと激しく口内を責めてくる。稚拙で感情のままに舌を這わせ、絡めるアスナの淫らなキス。
「んん……はむぁ……んん……あん!」
達してしまいそうな意識を懸命に堪え、それでも尚も、感情のままキスを辞めようとしないアスナのキスは甘く、俺はアスナの懸命なそのキスを受け止めていく。
息もするのも忘れて、窒息してしまうこともいとわないようにキスをし続ける彼女は、
「……やぁん……」
力尽きてしまい、ちゅと、いやらしい音を立てながら唇が離れていく。唾液の糸を名残惜しくたらしながら、息を途絶え、途絶えにアスナはベットに身を沈めてしまう。
「……やだよぉ……まだぁ……きす……したぁい……」
手をたどる様に俺を逃すまいと、アスナの手が空を掴む。俺を捕まえることができないもどかしさに、アスナは子どものように泣いてしまい、まだキスを満足に終えられていない不安に悲しんでいる彼女に、
「……俺もしたい……」
今度は俺から。
途中で終えてしまったキスでは物足りない、今度は俺がアスナの口内を攻めていく。柔らかいアスナの唇を噛み、はむっと食べるように彼女の甘い唇を味わいながら、俺の舌先がアスナの舌に触れ、漏れ出した唾液をごくごくと飲んでいく。
嬉しそうにキスを受ける彼女は、俺の舌の感触を精一杯に感じながら、満足そうにキスを堪能していく。
アスナは嬉しそうに俺のキスを喜び、舌先を刺激する事に夢中になり、快楽の淫靡さが聡明な彼女の理性を麻痺させていく中、快感に膣が濡れ、彼女の太股に愛液が垂れていく。
俺はゾクリト知る感覚に襲われ無意識に、
「きゃあん!」
アスナの膣に触れてしまう。
今まで男性を受けたことも無い、閉じられた膣に、俺は人差し指でなぞり、
「キ、キリト君……だ、だめだよ!……やぁん! やあ……指……触っちゃダメ!」
キスを止め、懸命に膣から俺の手を離そうとアスナは手を動かすも、力が入らないのか弱々しくすがるように俺の腕を掴み、
「キリト君……そこ……さわっちゃだめぇ!」
涙目で抗議する彼女に余計に欲情が高まり、
「……だめ……やめない……」
そっとキスをし、アスナの懇願を押しこんでしまう。そしてより強く、彼女の膣内に指を入り込ませ、濡れてしまったのか、くちゅくちゅといやらしい音が響き、余計にその音が俺の感情を高まらせていく。
「……んんんん……んん」
くちゅ。
「んんっ! んんんっ! んんん!」
くちゅくちゅと、いやらしい淫音を響かせ、キスで声を封じ、アスナの意識を濁していく。 濁された意識に理性は消えてしまい、アスナの手は俺から離れ、力なくシーツの上にぽすんと落とす。
「んんん……んんんんっ!」
快感が俺の脳を痺らせていく。
キスで封じたアスナのあえぎ声が俺の脳裏に響き、余計に強くその響きを脳裏に伝えたく、膣壁を強くなぞり、くすぐり、クチュクチュと音をさらに深めていく。
淫らに溶けていくアスナ。
嬉しそうに俺の指を受け入れ、膣を濡らし、深く、より深く、指を彼女の内に入れていく。
「んんんっ! んんっ! んんんんっ!」
俺からのキスを受け入れ、膣壁を刺激する指も受け入れ、快感の全てを受け入れたアスナは、膣から愛液を幾度も漏らし、指を離そうとしない。
だったらと俺は力を込めて、さらに強く膣を刺激していく。
指で膣壁をぎゅっと押し込み、強く弱く刺激を繰り返すと、アスナのキスが余計に強まり、感情がさらに高まっていく。
そして、膣が激しく痙攣し、まるで抱きしめるようにぎゅっと膣が締まり、
「んんんっ! んんんんんっ!」
アスナは身体をビクビクと痺れさせ、そのまま膣から潮を吹きださせてしまう。
「……やぁん……みちゃだめ……」
ビシャビシャと俺の手を濡らしていく中、
「気持ちよかった……アスナ」
「……うん……」
恥ずかしそうに素直に認めたアスナに、
「よかった」
可愛く返事をするアスナの仕草があまりにも可愛く、
「……んむぅ……」
俺は感情のままにキスをしてしまう。
我ながらに彼女に対する想いが大きくなってしまったと思える程に、アスナが愛おしくて仕方が無い。優しくアスナの口元にキスをしながら羞恥で真っ赤に顔を染めていた彼女を慰めると、彼女は酔ってしまったかのような朦朧とした儚げな表情を見せる。そんな意識のまま、今がすべて夢の中だと思ってしまったのか、
「……すごく……きもちよかったの……じぶんでするよりも……きもちよかった……」
絶頂の余韻ままアスナが呟いてしまったその言葉に、
「じぶんで?」
俺は言葉を失い、もっとも重要な部分を胸中で反芻しながら考察してしまう。
自分でする。
アスナはつまり……俺で自慰をしていたって事なのか?
俺が一人で頭を悩ませていると、
「え……あの……ち、ちがうの……」
しまったと、顔をしどろもどろにしながら声を震わせ誤魔化そうとするアスナに俺は、
「自分でって、どういう意味?」
彼女の困った仕草がみたく、わざと訊ねてみる。
「な、なんでもない」
プイっと誤魔化すように視線をそらす彼女の仕草が余計に可愛く、
「こたえなきゃ……」
「え……ひゃん!」
アスナの膨れた陰核をきゅっと抓り上げ、
「き、きりとくぅん……そんなとこ……つねっちゃ……やだぁあ!」
「じゃあ教えてくれる?」
「……やぁあ……」
いじらしく答えないアスナに、
「じゃあ」
「え? あん! あ! 噛んじゃいやぁ」
乳房を甘噛みし、口の内に含みながら、焦らすように噛む強さをはむはむっと変えていく。そして舐め、尖った乳首を少し強めに噛んでみると、
「ひゃん! ああ、だめぇ……キリトくん……そんなのぉ……あん!」
今度は濡れていた膣を苛めるように指を入れてやり、浅く、深く、指を出し入れし、膣壁を刺激していく。
いやらしい淫音が響く。
感じている声を殺す事が出来ず涙目でアスナは、
「……おねがい……もう……いじめないでぇ……」
切ないほどのアスナからの懇願に、膣をいじめていた手を止めてやり、咥えていた乳首を離そうとするも、まだ止めてやる気にはなれなかった。
つんと尖ったアスナの乳首をぺろっと弾く様に舌で叩き、
「やぁん!」
揺れた先端を止めるように強めにキスをし、
「あぁん!」
咥えたまま舌先を乳首に押し当て、
「あぁあん! もう……だめぇ……やぁ」
乳房全体をいじめてしまう、
いやらしく吸う音を響かせ、達してしまう感覚を懸命に堪えているアスナは、
「……ごめん言うから……もうやめてよぉ……」
涙目で降参してしまう。
「え、言うの?」
少し残念な気がする。
このままいじめ倒しても良いかなと考えるも、
「……ばかぁ……」
頬を膨らまし、怒ってしまうアスナ。
視線をそらしてそっぽを向いてしまう。そんな仕草をされたら余計に苛めたくなるのになと、また激しく苛めてやりたいと湧く気持ちを理性で堪えながら、
「ごめん……アスナ」
「ん……んん……あむぅ……んん」
アスナの潮で濡れた手を彼女の頬に当て、くすぐりながら顔を向けさせ、そのまま膨れた顔に優しくキスをしてやる。
頬や顔も愛しいアスナの全てを優しくキスで愛撫し、拗ねていた気持ちを奪って行く、
そして、
「ゆるしてくれる」
「……だめぇ……もう一回キスしてくれなきゃ……許さないもん」
本当に可愛いなとこの愛しい彼女に、
「お安い御用で」
「んん」
今度は唇を舌先で追うようにアスナにキスを送る。
はむっと柔らかい桃色のアスナの唇を噛み、彼女の甘くとろけた舌の感触を感じながら、アスナとのキスを楽しむ。
「……あむぅ……あっん……んんん……ぷぁ!」
名残惜しく感じてしまう唾液の糸を長く引きながらキスを終えた後、息を整えるアスナの返答を待つ。
恥ずかしそうにアスナは、
「……わたし……きりとくんで……じい……しちゃったの……」
たどたどしく言葉を紡ぎ告白し、そのまままた言葉を詰まらせてしまう。
俺はまた背中にぞくりとした感覚を感じ、
「誰で自慰をしたのか聞こえなかった。もう一回言ってみてよ」
返答に困っているアスナの乳房をきつく摘み、五指の指で強く押しこみ握りしめ、時折そのまま乳首をきゅっと抓ってやる。
「んん! や、やだぁ! キリトくん……そんな……つねっちゃいや……」
「じゃあ、教えて」
「んん……ん」
耳元で囁き、キスをしながら焦らしてしまう。
アスナは顔を羞恥で真っ赤にして、
「……キリトくんに……されていることをかんがえて……じい……をしちゃったの……」
告白する。
自慰。
つまり……アスナは俺としているのを想像して、自分を慰めていたと告白してくれた。
どうやら俺の事が気になっていた事に気づいてから、ずっと、アスナは俺の事を想い浮かべて、この華奢な指で俺との行為を想像しながら、自分を慰めていた。
夜中に俺の事で欲情を抱いていたのか。
アスナが。
俺は、
「どんな事を想像したのか……教えてよ、アスナ」
「そ、その……やん! だめぇ!」
いじめたい。
そんな気持ちのまま、アスナの膣に指を強めに入れ、深く膣内の感触を楽しみながら膣口から指を出し、すすっとゆっくりとした動きでアスナの膣をなぞりながら、攻めていく。
「あん! ああん!」
いやらしい濡れた淫音が響く中、アスナは感じる声を必死におし殺そうとしている。いくら声を堪えても、膣の感じた音だけは消せずに、さらに指を強め奥に押し込んでいくと、さらにアスナの膣は濡れ、愛液が蜜のようにとろとろと漏れてくる。
快感と快楽の涙目で、
「……おねがい……キリト君……」
逡巡しているかのような途惑いに、
「教えてくれたら、止めるけど」
そのまま陰核をきゅっと抓り、
「……そこ、そこだめぇ……はむ! んんん! やぁんん!」
達してしまう快感を懸命に堪えながら、口を固く閉じるアスナの唇を無理やりにひらきキスをし、舌を入れ込み唾液を送ってやる。
すると、
「やぁん! だめぇ! んむぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
ぷしゃっと潮を漏らしてしまう。
今度は思いのほか強く達してしまったのか、アスナは恥ずかしそうにしながら噴き出てくる潮を隠そうと手を動かすも、力がうまく入らず、隠す事が出来ないでいた。
「キ、キリト君……ちがう……の……これ……みちゃやだぁあ!」
ちょろちょろとアスナの膣口から噴き出ていく潮を俺はじっと見てしまう。
アスナは懸命に止めようとするも、快感に達してしまった潮は吹き止まらず、アスナは恥ずかしさのあまり目をつむってしまう。
でも、そんなアスナをさらにいじめたく、
「……アスナ……気持ち良かった……」
ぐっしょりと濡れた膣口を指でつつっとなぞり、膣口を親指と人差し指できゅっと抓ってみると、必死に声を押し殺し、感じた声を出さないように懸命に抵抗してしまう。
「ほらアスナ……言わないと……また」
指の先を膣口へと入れ、少しずつ奥へと入れ込み焦らしてみると、
「いうから……もう、さわっちゃ……やだぁ……」
降参し、俺は、アスナの膣口から指を抜いてやる。
「やぁん」
アスナの快楽に泥酔した熱い視線を俺の手に向ける。アスナの膣の愛液と、先程勢いよく漏らしてしまった潮でビショビショに濡れていた。その滑らかな液体に濡れた手はどこかいやらしく、その液を舐めてしまいたい衝動に駆られてしまうも、俺はその衝動を抑えるが、
……もっと、アスナを乱れさせたい……
……はやく……
……犯したい……
アスナの膣を指ではなく、もう限界がきそうなほど硬く興奮していた陰茎で攻めたかった。でも、最後の最後で俺はどこか躊躇していた。
夢の中で見たアスナと、今のアスナが重なり、俺はこのまま彼女を求めてしまう事が、どこか恐ろしかった。
もし彼女の最後の純潔を奪ってしまったら。
俺は彼女を壊してしまうかもしれない。
でも、
「ほら、アスナ。早く言わないとまた……」
それよりも彼女をいじめたいと、恥ずかしさで染めてやりたいと思う欲情が勝ってしまい、
「あ! やあ! んん!」
アスナの耳元の弱さは知っている。
可愛らしい形をしたアスナの耳元全体をなぞる様にキスをし、舌を入れ込むように愛撫してやる。
我ながらいじわるな焦らしだと思う。
アスナの求めるようにしてやりたいのに、彼女の口から、言葉で聞きたいと願う自分がいる。淫液で濡れた指で、アスナの膣口をくすぐってしまう。
いつまた指を膣に入れられる焦らしにアスナは、
「……キリト君に……襲われるの……」
俺は戸惑い、そのアスナの告白を聴き入ってしまった。
SAO~黒を冠する戦士たち~
第四十九・五技 伝えあう想い
『君にために』 kiritoサイド 後編へ続く。
ここまでお読みの方々まことに申し訳ありません。
今回前後編に分かれております。
自分の考えうる創作をぶつけた結果、40000字オーバーしてしまい、今回分ける事になりました。
申し訳ありません。
でも自分でもまさかそこまで行くとはと、どこか驚いております。
これも本郷さんの作品あってこそできたことと思います。
前編から後編も呼んでいただけたなら幸いです。
では、後編を楽しまれたら幸いでございます。