「森久保は初めてだったのに……責任を取ってもらいたいんですけど」
「いいよ」
「え?」
「だから、いいよって言ったんだ」
森久保と一緒に夕飯を食べようと思ってなんとなく自宅の
アパートに誘った時、なんとなくムラムラしたので森久保を
ベッドに押し倒して犯してしまったプロデューサー。
本当に自分でも何をしたのかいまだに理解してない。
なぜこんなことになってしまったのか。過去を振り返る。
仕事は順調だった。順調すぎて担当アイドル達にあらゆる
局から仕事が舞い込み、仕事量が増えるに従い彼の残業時間が増える。
本当に目の回るような忙しさだった。
忙しいのは嬉しいこともでもあるが、さすがに30代を
過ぎた体には大きな負担となり、寝不足から目の下のクマが
ひどいとアイドル達から指摘を受ける。
「プロデューサー君」
和久井留美だ。
「その辺で一息入れたら?
毎日コーヒーばかりだと体に悪いだろうから紅茶を入れてあげるわ」
「ありがとうございます……。心配していただいて。
はい。今取引先に送るメールを仕上げちゃいますから、
そうしたら一緒に休憩しましょうか」
「あら。今日は素直に休憩してくれるのね」
「……まあ、そうですね」
「あなた、本当に大丈夫?
担当している仕事の量が多すぎるなら、上司に相談して
少し減らしてもらったらどうかしら」
「俺もそれは考えたんですけど、あ、すみません。
すぐメールを終わらせるので少し待っててくれませんか」
カタカタと、プロデューサーがすごい勢いでキーボードを叩く。
5分くらいそうしてからプロデューサーが机の上で伸びをする。
バキバキ……と骨が鳴る。相当に凝っている証拠だ。
週に一日だけある休みの日は家で12時過ぎまで寝て、
適当にご飯を食べた後はまた夕方まで寝る。
そして気が付いたら深夜まで起きてしまい、
後悔しながら月曜の朝を迎える。
彼が休みの日に行っているのは買い出しの他には
スマホゲームだけだった。無駄に給料はもらっているので
課金はしている。しかし平日にプレイする時間がないのが難点だ。
ソファに座り込むプロデューサー。その隣に留美が座り、顔を近づける。
「ねえ、この時間ならもう誰もいないわよ」
「やめてくれよ留美……。俺達はもう終わった関係じゃないか」
「ふーん、冷たいこと言うのね。
アイドルなんて所詮はお金を稼ぐための道具だから飽きたら捨てちゃうんだ」
「そうは言ってないだろ。……ただ、俺が特定のアイドルと付き合ったりしたら
マスコミ以上に他のアイドル達にとって良くないことだから」
21時を過ぎると事務所からは人影が完全に消える。
ちひろも残業で忙しい身だが、それでも20時前には帰宅する。
プロデューサーは夕方以降は事務仕事が多く、次の関係各社との
電話でのやり取りから次のイベントの企画書の作成など
仕事内容は幅広いが、なんと担当アイドル達とのメールのやり取りまで
していた。彼を慕うアイドル達と個人的に仲良くなっているのだ。
彼にとってはこれも仕事の内だし、可愛いアイドル達を
悲しませないためにもメールは絶対にするべきだと考えていたが、
悲惨なことにそんなことをしていたら仕事が進まない。
「プロデューサー君ってすごく可愛い顔してるわ……。
私はその儚げな顔がたまらなく好きなの」
「お、おい。そんなに密着するなよ。胸が当たってるって」
「当ててるのよ」
「……」
「どうしたの? 触りやすいようにブラを外してあげましょうか。
あなた、好きだったわよね。誰もいない事務所で私の胸を触るのが」
「留美。俺は疲れてるしストレスも溜まってて正常な判断ができないんだ。
それ以上俺を誘惑するなら、本当に襲ってしまうかもしれないぞ」
「何言ってるの。私はいつでも準備できてるのよ?」
次の瞬間。プロデューサーが留美の唇を自らの唇で塞ぎ、
ソファの上に押し倒してしまう。服の中に手を突っ込んで
胸を触ってみると留美の乳首は固くなっている。その手が
次第に下腹部の方へと移っていき、彼女のパンツを脱がそうとすると、
留美が優しく彼の手に自らの手を添えてこう言う。
「ここで最後までするのはダメでしょ。
続きはホテルでしましょうか」
その日の夜、彼は獣になった。
ホテルに用意されていたゴムは、留美の悪だくみによって
先端に穴があけられていた。留美と生でするのはこれで何度目になるだろうか。
本当に妊娠していたらと思うとプロデューサーは冷や汗が止まらないが、
仮に妊娠したとしてもこれで会社を首になるのだったら
その方が楽かとも思っていた。もちろん社会人としては無責任な発想なのだが、
会社から過度な期待に対しこれ以上答えられそうにないのが現状だ。
先月の会議で、部長から「プロデューサー君にはジュニア・アイドル方面でも
腕を振るってもらうつもりだから、新しいユニットを作るために
最低でも3人くらいはスカウトをしてもらいたい」と言われた時は吐き気がした。
確かに、自分が担当しているのは留美のように大人組が多く、
彼女らは一度仕事を覚えてある程度の人気が出ればプロデューサーの
手を煩わせることはない。彼女らは自分の足で現場へ行き、
その後の報告を電話かメールで必ず送ってくれる。
中にはデートや飲みの誘いをしてくる人もいるが、
たまにこんなメールをしてくる人もいる。
「昨日は留美さんと二人きりで何をしていたのか説明してください」
無視しようかと思ったが、相手は担当アイドルの高垣楓だった。
文面から怒りが伝わってくるのが怖い。