三島・喜作(ルキフグス)・・・・日本が誇る巨大企業の一つ、三島重工の会長。
その正体は、魔王・ルキフグス。
爵位は、侯爵。
大変好色な悪魔で、喜作と契約後は、気に入った女を弄びそのマグネタイトを喰らう。
狭間・偉出夫を崇拝しており、創世の神にするべく様々な謀略を巡らす。
南山・葉子は、厳格な両親の元で育った。
曾祖父の代から続く官僚一族で、一番上の兄は、某テレビ局のアナウンサーを勤めた後、無所属で立候補し、政治家へ。
二番目の兄は、医者の道へと進んだ。
母は、葉子が幼い時に、病気で他界し、以来、祖父母に育てられる事になる。
勝ち組だ、と周囲の友人から良く言われる。
葉子は、映画女優だった母の美貌を受け継ぎ、学生時代に短期間ではあるが、モデルの仕事をしていた事もある。
そのまま、モデルを続けていれば、芸能界入りも出来たが、葉子は敢えてその道に進む事は無かった。
ルポライターとして、各地を取材し、アングラな世界を覗き見る事に、一種の快感を覚えてしまった為である。
名家の一族として生まれ、社会的にも認められる兄達や実父から見たら、自分はかなり異端に見えただろう。
アングラ世界に首を突っ込む要因を作ったのは、大学時代のボーイフレンドであり、大手出版社に勤める聖・丈二だった。
帝都大学を首席で卒業し、高い知性と穏やかな物腰から、聖は異性に良くもてた。
勿論、葉子も一時期は、本気でヒジリに夢中になった事もある。
しかし、この男の本性を知った時、少しだけ距離を離す事にした。
ヒジリという男は、フランクな口調で誰からも好感を持てる人物ではあるが、好奇心旺盛で、目的達成の為ならば、恋人すら平気で斬り捨てるドライな人間だったからである。
西新宿一帯を支配する”赤犬”の構成員に捕まり、事務所へと連行された時、葉子は、それまで自分が信じていた世界が脆く崩れ去るのを感じた。
一週間前に”阿修羅会”と抗争をしていた”黄虎”について、探りを入れていた。
”黄虎”は、アジア最大の秘密結社(フリーメーソン)”天智会”の末端組織であった。
近年、”天智会”は、兵隊を集め、勢力をどんどん広げていた。
兵隊と言っても、”ブルー・シード”で、人間性を破壊された哀れな連中である。
”天智会”は、各国に魔薬をばら撒き、中毒者を大量に生み出して、各国のマフィア組織を疲弊させていた。
当然、そんなやり方をすれば、敵を多く造る事になる。
現に、イタリアの最大マフィア組織『コーサ・コステロ』は、”天智会”と小規模ではあるが諍いを幾度か起こしていた。
きっと、その裏には何かある。
”天智会”の無謀とも取れる行動の要因が、”新宿区”にあると、葉子は推察した。
突き付けられたイチモツを躊躇いも無く、咥える。
潮辛い味が口内に広がり、強い雄の匂いが葉子の理性を吹き飛ばした。
すぐ傍らには、大原の無惨な亡骸が転がっている。
男の急所である睾丸を潰され、苦痛の悲鳴を上げる事も叶わず、苦しみながら死んだ。
自分もいずれああなる。
知っている情報は、全て吐いた。
もう何の利用価値すら無い。
どうせ死ぬなら、男達の男根を咥え込み、存分に快楽を貪ってから、殺されたかった。
スカートとパンティが剥ぎ取られ、指と舌で性器を嬲られる。
男達の愛撫は絶妙だった。
死の恐怖が、身体を敏感にさせているのかもしれない。
行為の最中、誰かが応接間に入って来たが、男達の愛撫に溺れきった葉子は分からなかった。
口内に汚液を吐き出され、喉を鳴らして飲み干す。
両腕の拘束を外し、セーターとブラを脱がされ、全裸にされる。
後ろの男が尻を抱えた。
一気に貫かれ、葉子の口から、悲鳴が漏れる。
激しい律動。
男の腰が女の尻を叩く。
絶頂に達する刹那、あらゆる刺激が止まった。
尻が解放され、絨毯の上に頽(くずお)れる。
どうやら、誰かが行為を無理矢理中断させたらしい。
中国語で、何か言い争う声が聞こえる。
欲情で濡れ切った双眸を開くと、上品な背広を着た30代半ばぐらいの男がいた。
下半身剥き出しの二人の男に、二言三言何かを告げる。
忌々し気に舌打ちし、尻を犯していた男が、葉子の髪の毛を掴み、引き起こした。
口を犯していた男が、葉子の腕を抑えつける。
右頬から顎に掛けて、醜い刀傷がある男が、葉子の腕に注射針を突き刺した。
歌舞伎町二丁目にある移民キャンプは、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
タクティカルアーマーを着た兵士達が、銃火器を乱射し、移民達を物言わぬ肉片へと変えていく。
彼等は、”赤犬”が子飼いにしている民間軍事会社の傭兵達だった。
”赤犬”の幹部の一人、一(わん)が、報復行為をする為に、手練れを搔き集めた。
アサルトライフルが火を噴き、逃げ惑う移民達の身体に風穴を開け、内臓を地面にぶちまける。
その中に、頭からフードを被った黒い影があった。
凄まじいスピードで、兵士達の間をすり抜け、屈強な体格をした移民の一人へと襲い掛かる。
女、子供を逃がしていた男は驚き、手に持っていた鉈で斬り掛かるが、意図も容易く影はその攻撃を避けると、回し蹴りを顔面に放った。
顔面が陥没し、千切れた舌と歯が周囲に飛び散る。
たった一撃で、フードの暗殺者は、男を即死させた。
次の獲物を求め、影が動く。
金色に光る双眸が、理不尽に親を殺され、泣き叫ぶ幼子へと向けられた。
柔らかい肉の感触が口内に広がり、舌なめずりをする。
幼児へと襲い掛かるフードの影。
しかし、一発の弾丸が、額を抉り、反動で大きく後方へと吹き飛ばされる。
驚く傭兵達。
アサルトライフルの銃口が、六連装大口径リボルバーを右手に持つ銀髪の少年へと向けられた。
機械仕掛けの機動大剣『クラウソラス』を背負う銀髪の少年- ネロの怒りに燃えた双眸が、重武装した兵士達を睨み付けた。
週二回行われる移民キャンプでの検診。
女医の直子が運転席に乗り、気を使ったのか、何時もは後部座席にいるサブロウが、助手席へと座る。
後部座席は、二組ずつに分かれており、1列目を鋼牙とネロが、最後尾をウルが座っていた。
「直子さん、一つ質問良いですか? 」
「何? 」
「貴方は、どうして僕の正体を知っているんですか? 」
この女医は、鋼牙が壬生家の人間である事を知っている。
当然、超国家機関『クズノハ』の構成員である事も承知済みだろう。
「さぁ、一体どうしてかしらね?」
そんな鋼牙の質問を、直子が何時も通りにのらりくらりと躱す。
この女医は、決して本心を語らない。
質問すれば適当にはぐらかして、勝手に終わりにしてしまう。
「何故、貴女は重沼さんに協力しているんですか?」
「単なる気まぐれ。」
「貴女が働いている娼婦館は、”阿修羅会”の持ち物だ。 タヤマを裏切れば、只では済まないのは知っている筈ですよね?」
「そうみたいね、怖いわ。」
「なら、どうして裏切るんですか? 」
「タヤマのやり方が気に喰わない・・・・それだけよ。」
もう、質問は終わりと、冷酷に切って捨てられる。
憮然となる鋼牙。
隣に座るネロを横目で眺める。
「君が意地でも娼婦館(あそこ)に残っている理由が分かったよ。」
「・・・・・。」
運転席に座る直子にも聞こえる様に、嫌味たっぷりに言ってやる。
この女は、普通の人間ではない。
長年、悪魔狩人(デビルハンター)として培ってきた経験から分かる。
自分達と同じ、狩人側の人間だ。
ネロ達を乗せたワゴン車が、歌舞伎町二丁目に近づくと、最後尾に座っているウルの様子がおかしくなった。
顔を真っ青にして、頭を抱えている。
「人・・・・沢山の人の叫び声・・・・この先で、いっぱい人間が死んでる。」
優れた感応力を持つウルは、数メートル先で行われている殺戮劇を敏感に察知する。
途端、顔色が悪くなる直子。
視線の先で、黒々とした煙が幾つも上がっているのが見えた。
青海街道を走る黒塗りの大型電動トラック。
タクティカルアーマーを装備した兵士達の中に、六(リウ)は居た。
”天智会”の幹部である寐龍(めいろん)の命令で、歌舞伎町二丁目にある移民キャンプを襲撃する為に、子飼いにしている民間軍事会社に招集をかけた。
何故、移民キャンプを襲撃するのか理由が分からない。
同胞である”黄虎”の報復をするなら、新宿御苑にいる”阿修羅会”会長のタヤマを襲えば良いだけである。
寐龍曰く、タヤマは”新宿区”を支配している牛頭天王の力に護られている。
そう簡単に首を狙う事が出来ない。
それよりも無限発電炉”ヤマト”の燃料である、移民キャンプの奴等を始末した方が、阿修羅会に打撃を与える事が出来る、との事であった。
じゅるじゅると啜り上げる音が聞こえる。
見るとシートに座った弟が、胸を露わにしたショートカットの女に奉仕をさせていた。
女は、”黄虎”が所有していた賭場場を嗅ぎ回る日本の雑誌記者であった。
最初は、”阿修羅会”の連中かと勘違いし、配下にしている学生ヤクザを使って、自分達の根城にしている西新宿の雑居ビルへと連れて来た。
女の連れにガタイが良い男もいたが、末弟が始末した。
賭場を調べていた日本人が、”阿修羅会”とは無関係どころか、奴等がシノギとしている”ゼブラ”を調べている事を知ったからだ。
六は知らなかったが、現在、出版業界は大氷河期に直面している。
紙の媒体から、電子書籍へと移り、それに伴い、読者を獲得するのに、心血を注いでいるのだという。
記事の内容が過激なら、より多くの新規ユーザーを取り入れる事が出来る。
そんな愚かな理由で、彼等は自ら毒蛇の巣へと脚を踏み入れた。
激しい舌なめずりと女の吐息に、タクティカルアーマーを着る傭兵達が、生唾を呑み込む。
戦争を前に、性行為に耽る等、非常識も良いとこだ。
「何時までやってんだ? いい加減にしないと一(ワン)の兄貴にドヤされるぞ?」
半ば呆れた様子で、六は末弟を見下ろす。
「だ、だってよぉ、寐龍(めいろん)の野郎が、途中で邪魔しやがるから・・・。」
子供の様な言い訳をして、不貞腐れた様子で末弟は六を睨んだ。
弟の言う通り、応接間で女記者を犯し、膣内に放出寸前、寐龍に止められた。
”ブルー・シード”を改良した魔薬を、この女で試したい、と寐龍は言った。
長兄の手前、逆らう事は出来なかった。
歌舞伎町二丁目、移民キャンプ。
アサルトライフルが火を噴き、移民達の身体を引き裂いていく。
怒号と人々の悲鳴。
建物が焼かれ、あちこちに上がった黒煙が天を埋め尽くす。
阿鼻叫喚の地獄絵図と化した移民キャンプを、六は無感情に眺めていた。
その隣では、大量のマグネタイトを奪われ、真っ青な顔になっている末弟が、常備用のエーテルを飲み干している。
「ったく、貴重なアイテムを無駄に消費しやがって。」
「仕方ねぇだろ? 全部、あの女が悪い。」
空になった瓶を投げ捨て、末弟が悪態を吐く。
此処へ来るまでの道中、末弟は女記者に性的奉仕を強要していた。
魔薬を打たれ、悪魔化した女とセックス等、正気の沙汰ではない。
案の定、欲望に溺れていた事もあり、女の体内に大量のマグネタイトを注ぎ込んでしまう。
そんな二人の耳に、男の悲鳴が聞こえた。
見ると、此処の住人らしい若い男の上に、ガウンを着た女記者が跨り腰を振りたくっていた。
手足があらぬ方向にへし折られ、ロクな抵抗も出来ない男は、女にマグネタイトを喰われている最中であった。
歓喜に黄金色の双眸を細め、仰け反る女。
膣内に射精を強要されていた移民の若者は、みるみるうちに枯れ枝の如く細くなり、最期は骨と皮だらけのミイラとなって息絶えた。
「一(わん)の兄貴が、女子供には手を出すなだと。」
胸ポケットから、愛用の煙草のケースを取り出し、一本口に咥える。
「は? そんなん無理に決まってんだろ? 」
マグネタイトを吸い尽くした女は、次の獲物を求めて、逃げ惑う移民達へと襲い掛かる。
母親らしい女の首がねじ切られ、我が子を庇おうとした父親の腕を引き千切った。
「兄貴達は忘れられないのさ、盤古様に仕えていた当時の栄光がな。」
「天地開闢の創造神か・・・・うん千年前の話だろ? 俺等には関係ねぇよ。」
「だな、兄貴達もいい加減現実を見てもらわねぇと。」
使い捨てライターで火を付け、肺一杯に煙を吸い込む。
六は、歳の大分離れた兄達を馬鹿にしていた。
蜥蜴(ピンイン)達との勢力争いに敗れ、配下となる事で生き延び、現在まで裏社会で様々な犯罪に手を染めて来た。
そんな彼等にとって、盤古が唱える理想論は、絵に描いた餅にしか見えず、当然、それに何時までも縋る兄達が滑稽で仕方が無かった。
売春、人身売買、違法賭博に臓器の売り買い、そんなモノに手を染め、”天智会”の為に大金を献上する兄達に、正義を唱える資格など無かった。
なのに、兄達はスプーン一杯分の理性を決して捨てない。
家族を敬え、弱き人々を傷つけるな。
好い加減うんざりする。
その時、一発の銃声が轟いた。
頭からフードを被った女が吹き飛ぶ。
驚く重武装した傭兵達。
彼等の視線の先に、大口径六連装リボルバーを右手に持つ銀髪の少年の姿が映った。
「直子、車から出るんじゃないぞ? 」
霊的国防兵器の一体であるコウガ・サブロウは、運転席に座る美貌の女医を振り返る。
「私も一緒に戦うわ。」
「駄目だ。お前に何かあったら、テンカイの奴がうるせぇ。」
「でも・・・・。」
「良いから、此処は俺と”探偵部”の餓鬼共に任せろ。」
サブロウはそれだけ告げると、両腕をブレード状の鋭利な刃物へと変形させ、先に戦場へと向かったネロ達の後を追う。
後に残される直子。
ダッシュボードから、護身用のS&W M&Pシールドを取り出し、弾数を確認すると、運転席のドアを開けた。
目の前に広がる陰惨極まる光景に、ネロは激しい憤りを感じた。
タクティカルアーマーを着た傭兵達が、無抵抗な移民達を銃撃し、逃げ惑う女子供を捕らえて暴行する。
そのおぞましい光景に、愛用の六連装リボルバーをホルスターから引き抜き、フードの殺戮者を狙い撃つ。
鋼の凶器は、見事頭部を貫き、フードの殺戮者を吹き飛ばした。
「ち、”阿修羅会”の連中か? 」
壁にぶち当たり、真っ赤な鮮血の花を描く女を一瞥し、末弟が舌打ちする。
「丁度良い、”新商品”の性能とやらを試させて貰おう。」
頭に鉛の弾をぶち込まれた程度で、女は怯まない。
夥しい鮮血で、上半身を汚しながらもゆらりと立ち上がる。
フードが取り払われたその素顔を見た瞬間、ネロはハンマーで頭を殴られた様な衝撃に襲われた。
殺戮者は、女であり、数日前に移民キャンプで出会った日本人であった。
闘気を帯びた数本の鉛筆が弧を描き、特殊素材で造られたヘルメットを意図も容易く貫通する。
地面に脳腫瘍がぶちまけられ、閃く斬撃が、襲撃者達の手足を斬り落とす。
鋼牙の動きは、全く無駄が無かった。
優れた対人戦により、敵は引き金を引く暇さえ与えず、物言わぬ肉の塊に変えていく。
そのすぐ傍では、ウルが敵の首を斬り落としていた。
落ちたアサルトライフルを拾い、何の躊躇いも見せず引き金を引く。
魔力を十分帯びた、鉛の弾だ。
紙細工の如く、ボディアーマーを貫き、肉の塊へと変えていく。
まだ幼さが残るとはいえ、彼等は人を殺す術を熟知していた。
鋼牙の場合は、組織『クズノハ』暗部、”八咫烏”出身である為、要人暗殺を幾度か経験している。
ウルは、渋谷区にあるキャンプを襲う略奪者から、仲間を護る為に、戦闘訓練を受けていた。
「ネロさん、大丈夫でしょうか。」
命乞いをする兵士の頭を無慈悲に撃ち抜き、ウルが数歩離れた位置に立つ鋼牙を振り返る。
「一応、魔剣教団の騎士だったからね。 それなりに経験は積んでるでしょ。」
粗方、襲撃者を始末した鋼牙は、アルミ製の定規に付着した血を払い落とす。
「人間(ヒト)を殺す事に慣れていない様に見えました。」
移民キャンプの惨状を見て、真っ先に車から飛び出したのが、ネロだった。
本来、「殺し」に慣れている人間は、現場の状況を把握する事を優先する。
しかし、頭に血が昇ったネロは、その大事な行為を完全に忘れていた。
実戦経験に乏しい”素人部隊”だから良かったが、これが『13機関(イスカリオテ)』の異端審問部隊だったら、恰好の餌食である。
「仕方ないね。 何事も経験を積まないと、前には進めない。」
「・・・・。」
「彼が一人で立てる様になるまで、僕か明のどちらかが面倒を見て上げるしかない。」
薄情な物言いだが、それ以外”日本(此処)”で悪魔狩人を生業とするなら、避けては通れない道である。
ネロは、自分や明と違って『殺し』に慣れていない。
義憤に駆られ、すぐ逆上する。
「僕も手伝います。」
何処か寂しい笑顔を向ける鋼牙に、ウルは何かを決心すると、自分から申し出る。
当初は、渋谷区に住む仲間達を救う為に『四神相応』復活の手伝いをしていた。
しかし、今は違う。
自分は、彼等”探偵部”の立派な仲間なのだから。
葉子は、舌なめずりをして目の前の新たな獲物を値踏みしていた。
今度の相手は、10代後半辺りの少年だった。
背に、機械仕掛けの大剣を担ぎ、銀色の髪に整った容姿をしている。
額に風穴を開けたのは、恐らくこの少年だろう。
みるみるうちに肉が盛り上がり、傷口が再生していく。
股間が疼いて疼いて仕方が無かった。
少年の手に持っている大口径六連装リボルバーで、愛液で滴る性器を抉って欲しかった。
”赤犬”の事務所に連れ込まれ、男の精液を口に受けたが、性交までは至らなかった。
後一歩で絶頂に達する寸前、寐龍という男に邪魔をされた。
変な薬を打たれ、気分が高揚した。
誰かに抱いて欲しかった。
硬い男根で性器を抉り、膣奥に熱い精液を注ぎ込んで欲しかった。
しかし、男達は一歩も自分に触れ様とはしなかった。
鉄の首輪を付けられ、地下の牢獄へと繋がれる。
一人、放置された葉子は、激しく身悶えた。
欲情の炎が身体を焼き、性器からとめどなく愛液が溢れた。
獣の様な唸り声を上げながら、葉子は自分を慰めた。
指を二本揃え、白熱する性器に宛がいクリトリスを擦る。
もう片方の手で、豊満な乳房を揉んだ。
でも足りない。
自慰だけでは、とても満足出来なかった。
数時間後、大原を殺害し、自分を弄んだ二人の黒服が現れた。
今すぐ、男達に襲い掛かり、その男根を口いっぱいに頬張り、疼く肉壺に埋めたかった。
しかし、身体が動かない。
理由は、分からないが、男達の言葉に身体が従順に従う。
武装した兵士達と一緒に、改造した黒塗りの大型電動トラックに乗った。
黒服の一人が、葉子に「しゃぶれ」と命令した。
葉子は嬉々として従った。
シートに座る男の前に跪き、ズボンのジッパーを下げ、青黒い大筒を取り出す。
一気に喉の奥まで呑み込み、すぐに戻して横に咥えた。
滴る唾液を啜り上げ、カリ部分に舌を大きく這わせる。
電動の大型トラックが、歌舞伎町二丁目に到着するまで、葉子は二回ほど絶頂に達した。
まだ足りなかった。
もっともっとマグネタイトを喰らいたかった。
屈強な兵士達と一緒に、トラックから降りる。
美味そうな移民の男を見つけ、舌なめずりする葉子に、黒服の男‐六が囁いた。
「食っても良いぞ。」と・・・・・。
槍の様な手刀がネロを襲う。
咄嗟に身を捻って躱すネロ。
女が歓喜の表情を作る。
肩甲骨が異様に盛り上がり、皮膚を突き破って節足動物特有の脚が現れる。
鋭い鎌の付いた脚が、ネロへと襲い掛かる。
ネロが、常人離れした膂力を活かし、後方へと跳ぶ。
だが、逃がさない。
口から夥しい量の涎を垂らした女が、炯々と金色の双眸を輝かせ、少年へと肉薄する。
と、女の身体が突然、見えない力によって吹き飛ばされた。
空中で、器用に態勢を直し、蜘蛛女が地面へと着地する。
突然な出来事に、背負った機械仕掛けの大剣『クラウソラス』の柄を握ったネロが固まる。
その眼前へと舞い降りる白い影。
「お前に人は殺せないよ? アベル。」
一同の前に現れたのは、ネロとそれ程歳が変わらぬ日本人の少年だった。
白のダウンジャケットに灰色のシックなシャツ。
黒のチノパンにスニーカーを履くその少年は、『エルバの民』の首謀者、狭間・偉出夫だった。
南青山7丁目。
高級な住宅街が連なるその場所に、一際豪奢な屋敷があった。
数百坪にも及ぶ広大な敷地面積には、手入れが行き届いた日本庭園があり、ヘリポートまで完備されている。
日本が誇る巨大企業の一つ、三島重工会長、三島・喜作の邸宅であった。
50畳はあろうかという広い和室。
70代半ばぐらいの老人と、モデル並みに均整が取れた女達三人が、淫靡な快楽に耽っていた。
二人の女が胡坐をかいた老人の股間に顔を埋め、もう一人が四つん這いの姿勢で蜜がたっぷりと詰まった尻を高々と上げている。
愛液でぐっしょりと濡れた性器を、枯れ枝の如き老人の手が嬲り、股間に顔を埋めた二人の女が、老人のイチモツへと舌を這わせていた。
「朝っぱらからおさかんね? ルキフグス。」
呆れた様子の女の声。
老人-三島・喜作が其方の方へと視線を向けると、襖を背に、一人の女が立っていた。
「この身体は燃費が悪すぎるんだよ。 リリス。」
親指で陰核を刺激しつつ、膣に入り込んだ中指と人差し指を巧みに動かす。
途端、女が背をしならせ、もっと刺激が欲しいと尻を振りたくった。
「可哀想に・・・イカせてあげたら? 」
蝋細工の如く白い肌を持つ女が、喜作に性器を嬲られている女を見下ろす。
アングロサクソン特有の白い肌と彫の深い美しい顔立ちを快楽で歪め、涙と涎を垂らしている。
女は、六本木の高級クラブに勤めるホステスであった。
幾度も絶頂を外され、息も絶え絶えの状態だった。
「うーん、流石に限界かな? これ以上やると死ぬかもしれん。」
異常な発汗に、激しい呼吸。
女の脈拍が速くなり、このままでは心破裂を起こしかねない。
喜作が、膣内に入った指を奥に入れると女は激しく痙攣してオーガズムに達した。
口から、赤い煙が吐き出され、それが喜作の口内へと吸い込まれる。
布団に頽(くずお)れ、女は安らかな寝息を立て始めた。
「ほれ、次はお前達だ、何時になったらワシの肉槍を立たせてくれるんだ? 」
喜作が自分の股間に顔を埋めて、必死に奉仕している女二人の尻を叩く。
この女達も、喜作の性技で気絶した外人ホステスの同僚であった。
一人がコーラの缶ぐらい太い陰茎を掴み、喉の奥まで吞み下す。
顎が外れてしまいそうなぐらい化け物染みたイチモツであったが、女は愉悦に頬を赤く染め、顔を上下に振る。
もう一人は、陰嚢に舌を這わせ、口の中に含むと、玉を舌で転がした。
「そういえば、貴方が崇拝している坊やが”阿修羅会”と接触しているらしいわね? 」
女達のしゃぶる音とくぐもった喘ぎ声を聞きつつ、黒いレディーススーツにタイトスカートを履く女- 石神・百合子が言った。
「ああ、あの御方は、牛頭天王に興味津々らしい。」
自分の股座に顔を埋め、持てるテクニックで奉仕する女達の頭を優しく撫でる。
老人班が浮き出た腕を、女達の尻へと滑らせた。
長時間の口腔性交で、相当興奮しているのか、女達の性器は分泌した愛液で十分潤っている。
老人の細くて長い指をあっさりと受け入れ、陰核を弾くと女二人は、男根から口を離し、身体を大きく仰け反らせた。
「牛頭天王というよりも、奴が持っている龍脈を手に入れたがっている。」
「呆れた。 本気で”壁”を破壊するつもりなのね。」
女の性器を愛撫しつつ、乳首を口に咥え舌で転がす。
ああっ、ああっ、と襖を背に立つ百合子に届けと言わんばかりに、二人の女が善がり声を上げた。
「あんまり大っぴらに行動し過ぎると、ヘブライ神共に目を付けられるわよ。」
「大丈夫、壁を壊したがっているのは、偉出夫様だけじゃない。」
乳首から口を離すと、唾液の糸が引いた。
半狂乱で喘ぐもう一人の女の口を吸うと、自分から舌を挿し込み、老人の口蓋を舐める。
「各地を支配する神族共も、虎視眈々と創世の玉座を狙っている。」
「・・・・。」
「”天智会”が良い例だ。 あの蜥蜴共、此処最近、兵隊を集めて勢力を増している。」
「・・・・。」
「セルビアの”黒手組(ブラックハンド)”も、北ヨーロッパの”デーオルの嘆き”も水面下で動いている。呑気に穴倉探索しているのは、日本(ウチ)ぐらいなもんだ。」
堪らなくなったのか、乳首を吸われた女が、老人の前で四つん這いになり、入れて欲しいと大きな尻を振った。
この女が、三人の中で一番肉厚的な肢体をしていた。
老人が、吸っていた唇を離し、98cmのボリュームたっぷりな女の尻を抱える。
「ズリュン」と音をさせて、埋まる肉槍。
膣から伝わる刺激が脳を直撃し、女は白目を剥くと大きく仰け反る。
舌を突き出し、激しいオーガズムを迎えると、意識を失い布団へと突っ伏した。
「ち、三度の飯よりセックスが好きと豪語しておきながら、このザマか。」
肉壺から男根を引き抜き、残った最後の女に口で綺麗にさせる。
愛液で汚れた男根を舌で綺麗に掃除し、頬を強く窄めて激しく上下に顔を振った。
「さて、当然、お前はワシを満足させてくれるんだろうな? 貴子や。」
老人に奉仕する30代半ばぐらいの美女の頭を、優しく撫でる。
女は、喜作が贔屓にしている高級クラブの経営者だった。
震災前は、歌舞伎町でも一、二を争うトップホステスで、政財界でも彼女のパトロンは多数いる。
「ええっ、勿論よ。」
貴子と呼ばれた女は、しゃぶりながら頷いた。
震災後は、喜作のよしみで六本木の一等地に店を構えさせて貰っている。
年齢を全く感じさせない素晴らしいボディラインを誇るマダムは、仰向けに寝る老人の上に跨り、自慢の大筒を手で支えると、たっぷりと濡れた自分の性器に宛がい、腰を下ろした。
途端、衝撃が脳天を突き破り、身体が激しく痙攣する。
普通なら、一瞬で失神するところではあるが、貴子は持ち前の気丈さをフルに発動し、何とか意識を保つ。
尻を上下に揺らし、激しいグラインドを始める。
ああっ、ああっ、と喘ぎながら、豊満な乳房を揺らし、自分だけの快楽を追い求め始めた。
愉悦で顔を歪ませ、頬を真っ赤に染めて鳴く女の姿を、喜作は下から満足そうに眺める。
すると、女の背後から突然、白くて繊細な手が現れた。
和室の入り口で、喜作達の狂宴を眺めていた女- 百合子だった。
上下に揺れる汗まみれの乳房を掴み、乳首を指に挟むと軽く捻る。
途端、断末魔の叫び声を上げ、貴子が仰け反った。
結合部から潮を噴き出し、舌を吐き出して魂が抜ける程のオーガズムを迎える。
「おい、何て事をするんだ。」
貴子の口から流れ出るマグネタイトを喰らいつつ、喜作が失神した貴子を優しく抱き留める百合子を睨み付けた。
「貴方、彼女を殺そうと思ったでしょ? 」
蛇の様な鋭い視線に睨まれ、喜作がバツが悪そうな表情になる。
百合子の言う通り、喜作は女のマグネタイトを全て搾り取り、殺害しようとした。
別に、飽きたから殺そうと思った訳じゃない。
今迄、抱いたどの女よりも貴子は、素晴らしいベッドテクニックを持っており、男を持ち上げる手腕も申し分ない。
正直、殺すのが非常に惜しい女だ。
「ちょ、ちょっと本気になっただけだ。」
布団に寝かされる女を横目に、喜作は起き上がると、枕元に置いてある着物を手に取る。
羽目を外し過ぎた。
大悪魔である自分が、本気で女を抱けば、どんな末路が待っているか理解している。
しかし、止める事が出来なかった。
「セックスを鑑賞するのは良いけれど、流石に殺しは拙いわね。」
慣れた手付きで、着物を着る老人を、百合子が呆れた様子で溜息を零す。
大量のマグネタイトを吐き出され、貴子の顔色は真っ青になっていた。
百合子が手を翳すと、苦痛の表情がみるみる安らいでいく。
「反省してるよ。だから小言はそれぐらいで勘弁してくれ。」
自分を責める百合子の棘を含んだ物言いに、喜作は大きく息を吐き出した。
歌舞伎町二丁目、移民キャンプ。
死屍累々と散乱する無惨な死骸と、重武装した数名の傭兵達。
対峙する狭間・偉出夫は、武器を携帯していない丸腰の状態であった。
「てめぇ、何で此処に?」
「噂の”新宿区”に初めて来たからね? どんな街かと色々調べている最中だった。」
偉出夫は、今にも斬り掛かりそうな程、殺気をぶつけてくる銀髪の少年- ネロを振り返る。
刹那、その頭上に黒い影が差した。
背中から八つの脚を生やした女が、歓喜の表情を浮かべて、偉出夫へと襲い掛かったのだ。
しかし、女の鋭い爪が生えた脚は、美少年を捕らえる事は出来なかった。
空中から、突如、巨大な腕が出現し、蜘蛛女を掴んだのだ。
「面白いだろ? あの一件から、色々試してみたんだ。」
言葉も出ず、驚愕で固まるネロに、子供の様な無邪気さで偉出夫が説明してやる。
今から一月以上前、矢来区古墳大迷宮で、偉出夫は同胞であるヴィランから、神器『スダルサナ』を手に入れた。
手に入れた・・・というよりも、扱い切れなくなった厄介モノを、押し付けられたと表現した方が正しい。
ヒンドゥー教の最高神の一柱、魔神・ヴィシュヌが宿る神器は、今や偉出夫の肉体の一部となっていた。
氷の腕に捕まれ、葉子であったモノが、みるみるうちに凍り付いていく。
無慈悲にも握り潰される女。
粉々に砕け散り、破片が地面に降り注ぐ。
それを合図に、重武装した傭兵達が、一斉射撃を始めた。
未知の力を持つ怪物相手に、理性を保つ事が出来なくなったのだ。
アサルトライフルの銃口が火を噴き、無数の弾丸が魔少年を襲う。
だが、鋼の凶器が、偉出夫を引き裂く事は出来なかった。
弾丸の軌道が逸れ、次々に重武装した傭兵達の肉体を貫いていく。
魔神・ヴィシュヌが持つ魔法『テトラカーン(物理反射壁)』だ。
不可視の壁が、偉出夫とネロの前に展開され、銃弾を全て弾き返したのである。
「さて、残るは君達だけだが・・・・どうする? 」
時間にして数分間。
それで、全てが終わった。
”赤犬”が子飼いにしている民間軍事会社の傭兵達は、あっけなく全滅し、残るは、炎駒の兄弟二人だけである。
「どうする?兄貴、あの餓鬼化け物だ。」
「・・・・・。」
怯える末弟と違い、六は冷静だった。
はっきり言って、勝てる気がしない。
このまま戦っても、肉片と化した配下達と同じ運命を辿(たど)るだけ。
かと言って、敵前逃亡すれば、上の兄達が赦すまい。
炎駒の恥さらしだと処分されるのは、目に見えている。
「すまん、お前の力貰うぞ。」
「え? 」
訝し気な表情になる弟。
六は、そんな末弟の胸に己の腕を突き立てる。
どうせ処分されるのならば、華々しく散りたい。
弟の断末魔の叫びを聞きながら、六はその身体を己の中へと吸収する。
二人は、醜い肉の塊と化し、そこから馬の脚が生える。
巨大な二本の角に、血錆が浮いた戦斧。
炯々と蒼く光る双眸に、耳まで裂けた口には鋭い牙が並んでいた。
「へぇ、任意で合体出来るんだ・・・流石、神獣の端くれだねぇ。」
「・・・・っ! 」
弟の血肉を喰らい、怪物へとメタモルフォーズする六を眺め、偉出夫が手を叩いてはしゃぐ。
一方のネロは、あまりのおぞましさに吐き気を覚えていた。
今迄、様々な悪魔を見て来たが、人馬一体となったこの怪物は、常軌を逸している。
雄叫びを上げ、巨大な戦斧を振り回しながら偉出夫とネロの二人に襲い掛かる怪物。
凶悪な刃が、頭上から振り下ろされた。
S&W M&Pシールドの銃口が火を噴く。
脚を撃ち抜かれた兵士が悲鳴を上げ、地面に倒れた。
「今のうちよ!逃げなさい!」
直子が、移民の親子に向かって叫ぶ。
幼子を連れ、裏路地へと逃げ込む母親。
数人の傭兵達が、怒りの声を上げ、アサルトライフルの銃口を女医へと向ける。
刹那、その身体が真横へと吹き飛んだ。
身の丈程もある大剣が、傭兵達を撫で斬りにしたのだ。
鮮血が飛び散り、肉片と内臓が地面へとぶちまけられる。
あまりの出来事に固まる直子。
大剣に付着した血を振り払い、真紅の鎧を纏った巨漢の騎士が美貌の女医へと視線を向ける。
「も、黙示録の四騎士・・・・。」
その姿はまさに『ヨハネの黙示録』に登場する死神そのものだった。
セクター・エリダヌス
巨大調査艦『レッドスプライト』号のクルー一同は、メインデッキの巨大なスクリーンに映し出される美しい庭園に、思わず感嘆の吐息を吐いた。
そこは、今迄調査したエリアとは全く違っていた。
”庭師の王であり、王の庭師”と称賛されたアンドレ・ル・ノートルが設計したベルサイユ庭園を彷彿とさせる世界であった。
早速、調査班と機動班が現地へと降り立つ。
その中に、ライドウと番のダンテ、『十二夜叉大将』の猿飛・佐助と遠野・明もいた。
「何か嫌な感じぃ。」
ハイピクシーのマベルが怯えた様子で、特殊繊維で編まれたジャケットのフードへと潜り込む。
「このエリアに出現する悪魔は、デルファイナスよりスキルが高い、皆、気を引き締めろよ。」
真紅の呪術帯で右眼以外を覆った悪魔使いが、機動班の方へと振り返る。
後続部隊として入れ替わった面々は、どれも特A以上の強者ばかりであった。
少数精鋭部隊ではあるが、どれも一騎当千の実力者だ。
「ダンテ隊長! 」
不意に、ダンテの背に声を掛ける人物が現れた。
デモニカスーツを着た機動班の一人だった。
フェイスガードを押し上げると、ダンテが途端に破顔(はがん)する。
「ハドソンじゃねぇか、懐かしいなぁ。」
ダンテに声を掛けて来たのは、従軍時代の部下だったウィリアム・ハドソンだった。
ハドソンは、特技兵で、主に爆発物のプロであった。
ダンテと同じ半人半妖で、職人(ハンドヴェルガー)と調教師(テイマー)の資格を取得している。
当然、魔具(デビルアーツ)の扱いにも慣れており、チームではスティーブ・ゴードン同様、前衛役として活躍していた。
「俺だけじゃないっすよ。」
そう言って、ハドソンが横に控えている女性隊員を紹介する。
彼女の名は、ジェニット・バスクエス。
”鷹の目”の異名を持ち、優秀な狙撃手だ。
「久しぶり、まだ生きてたんだ。」
「はっ、相変わらず良い女だな。」
バスクエスの軽口に、ダンテは苦笑を浮かべる。
彼等二人は、後続艦である『ブルージェット』の乗組員である。
彼等は、4年前のアフガニスタン付近で起こった悪魔討伐以降、母国に戻った。
しかし、普通の社会生活が送れる筈も無く、アラン・シェイファーの元へと戻り、今回の『壁内調査』に志願したのだという。
「実を言うと、ウチのボスから隊長が今回の調査任務に参加すると聞きましてね。」
「態々、裏技使ってエントリーしたんだよ。」
M56スマートガンを装備するバスクエスが、大袈裟に肩を竦める。
ボスとは勿論USSF(アメリカ陸軍特殊部隊)中将のアラン・シェイファーの事である。
あの堅物の事だから、何かと暴走し易いダンテのストッパーとして、この二人を派遣したのだろう。
「ねぇねぇ? 旦那の知り合い? 」
それまで黙って事の成り行きを傍観していた佐助が、一同に割って入った。
「ああ、俺が軍にいた時の部下だ。」
ダンテが、ライドウ達に二人を紹介する。
ハドソンは、隊のムードメーカー的存在だっただけあり、すぐ佐助と打ち解けた。
一方のバスクエスは、隻眼の悪魔使いへと視線を向ける。
「凄いプレッシャー、噂通りの化け物だね。」
「おい、聞こえるって。」
無遠慮なバスクエスの言葉に、ハドソンが小声で窘める。
バスクエスは、15世紀から16世紀に活躍した占い師、マザー・シプトンの血縁者であった。
優れた感知能力を持ち、数千メートルいる標的の生体オーラを視認する事が出来る。
今、彼女の視界には、二つの巨大な魔物の姿が映し出されていた。
ライドウが所持する二体の最上位悪魔(グレーターデーモン)だった。
歌舞伎町二丁目、移民キャンプ。
戦斧を持つ右腕が肘から綺麗に切断され、紫色の体液を飛び散らせながら飛んで行く。
苦痛の叫びを上げる六(リク)。
憎しみで炯々と光る緑色の単眼が、黒髪の魔少年を捕らえる。
狭間・偉出夫は、想像を絶する程の怪物だった。
円盤型の神器『スダルサナ』を巧みに操り、六の攻撃を悉(ことごと)く往なす。
末弟の血肉を喰らい、魔人と化しても、この魔少年に全く歯が立たなかった。
頼れる配下はもういない。
改良した魔薬で、悪魔化した女記者はあっさりと殺された。
当然、長兄達は助けに来ない。
― 皆、死んでしまえば良い。
六の心に、憎悪と哀しみの感情が溢れる。
思えば、自分や末弟達は、父や兄達の操り人形だった。
過去の栄光に縋りつき、汚い仕事は全て弟達に押し付けた。
思えば、大陸の覇権争いに敗れ、四海竜王の支配下に甘んじている時点で、自分達はそこら辺にいる悪魔と何ら変わる所は無かったのかもしれない。
”赤犬(レッドボーン)”という犯罪組織を造り、薬や殺し、密輸や密造等、ありとあらゆる犯罪行為に手を染め、”天智会”拡大に貢献した。
ー兄達は、決して汚れ仕事を自ら行わない、ならば好き勝手にやってやる。
欲望のままに女を犯し、裏賭博で巨額の金を稼ぎ、請われれば殺しを幾らでもした。
今いる現状に嘆く長兄とは違い、末弟や六は今ある環境を大いに楽しんだ。
自分達を嗅ぎ回る日本人の記者二人を捕らえ、男の睾丸を潰し、殺害しても、別段罪の意識を感じなかった。
怒りの雄叫びを上げる六。
牙を剥き出しにし、不敵な笑みを浮かべる魔少年へと襲い掛かる。
どうせ自分は死ぬ。
ならば、この化け物にせめて一太刀でも報いてやる。
だが、そんな六の覚悟は、永遠報われる事は無かった。
GUMPを操作し、魔獣・ガルムを召喚したネロが、”デビルブレイカー”と融合させ、怪物化した六の頭と胴を切断したのだ。
地響きを周囲に轟かせ、その巨体が沈んだ。
今回もエロ度MAX。
菊地秀行大先生最高。