ロドス・アイランドの執務室でドクターは頭を抱えていた。頭痛のタネ、ひとりのオペレーターがいた。理由は明確、同行させたオペレーター達からはオブラートに包まれた非難じみた苦情。人員不足による致し方ない配置であったとしても、エリートオペレーターから怒られればさすがのドクターであっても凹む。危うく部屋のスプリンクラーが起動するかと思ったほどだ。
そして、怒髪天を衝く勢いで眉を吊り上げて熱気を振りまいていてるブレイズが目の前にいる。バイザーの奥で泣き出しそうなドクターはその隣に立って笑顔を絶やさない件の問題児に視線を送った。
ラップランド。――反省の色、皆無。
「ちょっと、ドクター! 私の話を聞いてる!?」
「聞いてる。聞いてます。聞こえてます。頭が痛くなるほどに」
バァン! 執務机を叩けば、その上で処分を待っていた書類の山が雪崩を起こしてひらひらり。それには目もくれず、犬歯をむき出しにバーニングムカ着火ファイヤーボイリングバースト状態のブレイズが睨みつけてきている。正直、レユニオンより怖い。
「今回の件、絶っっっ対に次の作戦までに対応しといてよ! いい、わかった!? もしそれが出来てなかったら執務室でアーツ全開にするからね!」
それは新手のテロでは? ――そしておそらく、その後の清掃費諸々は全部自分の懐から出ていくのだろうな、とドクターには容易に想像ができていた。
「はぁー、もう! 失礼しました!」
怒りで肩を揺らしながらも、ブレイズは長い黒髪を波立たせて執務室を後にする。我を忘れそうになるほどの怒りを抱えながらもきちんと退室する時の挨拶は忘れない辺り、多少は溜飲が下がったのだろう。
ブレイズが叩いた執務机を見れば、かなり歪んでいる。目に見えるほどの威力で叩かれていた。これが自分の顔に向けられていなかったことをひたすらに感謝。命って素晴らしい。生の実感。
――静寂が訪れた執務室で、ラップランドは笑っている。しかも武器を携えて。その時点で危うく執務室に血の雨が降るかともドクターは気が気でなかった。
「あ~ぁ、こっぴどく叱られちゃったね。ドクター」
「誰のせいだと思ってるんだ……」
「アハハ。まぁ、ボクの責任だね。悪かったよ」
一応自覚はあるらしい。――らしいのだが、改善の余地が見られないのでドクターも困り果てている。ブレイズに叱られた手前、ドクターも何も言わないわけにはいかない。
気を取り直して。六秒、息を吸う。そして六秒、吐き出す。
「――ラップランド。君も知っているとは思うが、戦闘における君の独断行動が他のオペレーター達の連携の妨げになっている」
「そうだね」
「作戦が成功したとしても。毎回君の尻拭いで怒られる私の身にもなってくれ……」
「それじゃあどうしてドクターは、嫌われ者のボクを頼るんだい?」
「……それはそれ! これはこれ!」
ラップランドの戦闘技術はロドス内屈指の【卓越】という判が押されている。そして彼女の特性もまた、戦場においてこれ以上無いほどの有用性を示した。相手の特技を封じる、ということに特化したスキルにはこれまで助けられている。
実際のところ、今回の作戦でブレイズはそれに助けられた。……までは、いい。問題はその後。
ラップランドが指示を無視して先行、同エリアに配置していたブレイズが孤立。急遽配置の変更を余儀なくされてその場で緊急の対応。事なきを得た――ドクターが説教される以外は。
そして現在に至る。これが初犯ではないだけに、困り果てていた。
「しかし、こう繰り返されるとこちらとしてもなにか対策を講じないとならなくなる」
「へぇ……面白そうだ。ドクターはボクに、どんなことをするつもりなんだい?」
「うーん……」
謹慎。減給。反省文――頭の中を巡るありきたりな処遇ではラップランドに効果はない。なまじ普段は礼儀正しいだけに、対処が難しかった。それらが意味をなさないこともドクターは理解している。なぜなら、ラップランドの加虐性は戦場で発揮されるのだから。
「……うーん、そうだなぁ」
となれば――ラップランドの行動そのものを制限するしかない。しかし、首輪を物理的につけるなんて真似はできない。指揮をする手前、手元に置いておくにも問題があった。
「…………調教?」
――我ながら、バカな言葉が不意に出てきたと気づいた頃には既に遅く。ラップランドが一瞬、キョトンとした表情を見せる。驚愕とも、呆気にとられたとも見て取れる。
ロドスのオペレーター達の過去がどれほど苦難の色で塗りつぶされているかはわかっていた。だからこそ極力刺激しないように努めてきた。風船に針を刺さないように、細心の注意を払ってきていたが、今回ばかりは失策だった。ドクターが身構える。ラップランドがどのような反応をしてくるのか想像もつかなかったからだ。
「――フフッ、アハハ! そっかぁ……。確かに、悪い子には“お仕置き”が必要だよね。うん、いいよ。面白そうだし」
「え、いいの?」
「いいよ。ドクターが望むなら、ボクは躾けられてあげるさ」
「あー……うん」
いやに協力的な態度と姿勢は反省、というよりも好奇心の色が強い。言い出したはいいものの、ドクターに調教の経験などない。記憶がないのだから、あったとしても無いのだ。
「じゃあ……そうだな……、夜になったら私の寝室に来てくれ」
「わかった。それじゃあ楽しみにさせてもらうよ」
――ロドス購買部。執務室で書類を泣く泣く整理したドクターは、クロージャの下へ訪れた。
「あ、ドクター! ヤッホー!」
「やぁ、クロージャ。購買部の調子はどう?」
「そこはドクターのお財布次第かな」
「そっかぁ……そこで、ものは相談なんだけど……」
「うん?」
ドクターは周囲に他の人影がいないことを確認してから、手招きする。なにか他では言えないような話である、ということを察したクロージャは耳を近づけた。
「その……調教、とか。お仕置きとかに使えそうなものって置いてない……?」
「……ど、ドクターってそういう、激しいのが好みだったの?」
「違うんだ。違うんだクロージャ。待って、聞いて」
「えっとー、じゃあこういうのとか……」
「あるんだ……」
丁寧に梱包して小箱を手渡してくるクロージャに代金を支払おうとしたが、手を止められる。
「ちょっと大きな声では言えないんだけどー……その、それ中古品というか、えっと……処分に困ってたところだったからドクターが引き取ってくれるならあたし的にはオールオッケーでお代は結構といいますか……」
「……もしかしてこれ、クロージャが使っ」
「はい毎度ありー! ドクターいつもご愛顧ありがとうございますー! 他に買うものなかったら帰って帰ってー! あー忙しいなー! 在庫整理しないとなー! 明日の仕入れもあるしなー!」
回れ右から背中を押して購買部からドクターが締め出された。トボトボとどこか寂しげに廊下を歩く背中を見つめながら、クロージャは恵まれた胸を撫で下ろす。
「……うん、悩みのタネがひとつなくなったと思うことにしよう……」
正直なところ、興味本位で仕入れたが購買部で販売するわけにもいかず、試しに自分で使ってみたりもした。一時期はちょっとハマっていたこともあったが、最近はドクターが復職したということもあって忙しくなって忘れていたところに、天の助けと言わんばかり。
(でもドクターもああいうの興味あったんだ……)
ドクターのつゆ知らないところで、またひとつ問題のタネが芽吹いたことは別なお話――。
その日の夜。ドクターは自分の寝室でラップランドが訪れてくるのを待っていた。
ベッドに腰掛けているが、来る気配がない。落ち着かないまま部屋を歩いたり、特に理由もなくインテリアの配置を見直してみたりする。
テーブルの上にはクロージャから渡された小箱。その中身が気になっているものの結局開封する暇もなく業務に追われてしまった。
(ラップランドが来る前に中身の確認をしておくか……)
いつも世話になっているクロージャが仕入れたグッズなのだから動作に問題はないとは思いつつも、不意に「中古品」という言葉を思い出してしまう。
――つまり、この箱の中身は、一度クロージャの身体を愛撫していた品々……?
そう考えた瞬間、開けるのが急に躊躇われた。なんというか、とてもいやらしい気がしたのだ。それでも中身を確認しないわけにはいかず、ドクターが考え込んでいると寝室の扉がノックされて心臓が口から飛び出すかと思った。
「ぴゃーん!!」
「――ドクター、いるかい?」
「あ、あぁ……ラップランドか……」
自分でもヘンテコな声が出たと思う。ドクターがドアのロックを解除すると、そこにはラップランドが笑顔で小さく手を振っていた。
「こんばんは、ドクター。早速だけど中に入るよ? いいよね」
「そうだな。誰かに見られる前に入ってくれると私も助かる」
寝室に入ってから、ラップランドが室内を見渡す。こうして他のオペレーターを寝室に招き入れる機会というのはほとんどない。アーミヤ、ケルシー……数える程度しかいない。
「へぇ~、ドクターの寝室なんて初めて入ったけれど……悪くないじゃないか。今度から此処で休憩しようかな」
「止してくれ。何を言われるか堪ったものじゃない」
「残念。でも気が変わったらいつでもボクを誘っていいよ」
それは冗談なのか? 尋ねる前に、ラップランドが耳元で囁く。
「――本気だからね?」
ぞわり、と背筋がなぞられるような蠱惑的な声色に思わずドクターが離れた。それを見て面白そうにケラケラと笑っていたラップランドだが、テーブルの上の小箱に気づく。
「面白いなぁ、ドクターは。テーブルのこれは、ボクへのプレゼントかな。開けてみていい?」
「あ、ああ……購買部で買ってきたはいいが、じつは私もまだ中を確認していないんだ」
「ふーん。そうなんだ。じゃあ一緒に中を見てみようか」
ラップランドが小箱の封をしていたテープを剥がし、蓋を開けると――アダルトグッズがきっちりと詰められていた。使用された形跡のあるローション。開封済みのディルド。アナルビーズ。唯一、手のつけられていない革製の手錠まであった。ちゃんと掃除されていて清潔感はあるものの、それを見たラップランドも少し意表を突かれた顔をして、無造作に手にしたのは男性器を模した玩具……俗に言えばバイブ――の、電源を入れた。
ヴィイイイイ――。
無言の寝室に、無機質な振動音が響く。なぜかそれを聞いているこっちの方が恥ずかしくなってきて、ドクターが顔を覆った。
「へぇ……ロドスにはこういう“玩具”も沢山売ってるんだねぇ。誰の趣味かな?」
クロージャの趣味です、とは言わなかった。
「それで。ドクターは、ボクにお仕置きするためにわざわざこんな玩具を用意してくれたんだ」
「恥ずかしい話だが、勝手がよくわからなくてな……」
「ふぅん……? じゃあドクターも初体験なんだね。そこはちょっと意外だったかな」
「ああ……、ん――?」
……も? 聞き間違いでなければ、たしかにそう言った気がする。
「……ラップランド、愚にもつかないことを聞くが――まさか君も、初めて?」
「そうだよ、ドクター。ボクは処女だけど、それがどうかした?」
聞き間違いじゃなかった。
「それにしても色々あるね。ドクター。どれからボクで試したい?」
様々なことを配慮して、乗り気ではなかったドクターとは裏腹にラップランドは興味津々といった様子で玩具を指差している。
ふわりと、ラップランドから香ってくる爽やかな石鹸の匂いに気づいた。よくよく顔を観察してみればいつもより血色がいい。
「……ラップランド、もしかして身だしなみを整えてきてたのか?」
「ドクター。ボクだって一応女の子なんだよ? 当然じゃないか。ああ、それともドクターは少しくらい汗臭いのが好きだったかな。こんなものを用意するくらいなんだから」
手にした小型のローターの電源をいれて、振り子のように揺らして挑発してくるラップランドの微笑み方はこの状況を楽しんでいた。そこまでされては、ドクターも黙ってはいられない。
「ラップランド」
「うん?」
「……そろそろ始めるか」
「フフッ、お手柔らかにね――」
「どうだろうな。何しろ私も初体験だ、手加減できるかなんてわからないぞ」
「…………ふむ。これはこれで、中々」
ベッドには、拘束された下着姿のラップランドが横になっていた。
後ろ手に縛られ、口にはギャグボールを噛まされている。身じろぎするが、そう簡単に外れないようにキツくしていた。
白い肢体を舐めるように見つめながら、ドクターは手を伸ばして落ち着かせるように撫でていく。頭を撫でて、オオカミの耳を毛並みに沿って優しく梳いて緊張をほぐしていく。ラップランドとしてもこうして縛られるのは不本意だろう。しかしどういうわけか触れるたびにくすぐったそうに身体をよがらせている。息も荒く、心なしか顔も赤い。
「もしや……ラップランド。君は縛られて興奮してるのか?」
意外だ。まさかそんな趣味があったとは――かくいうドクター自身、今の状況を楽しんでいた。
素肌をすり合わせるだけで、口から熱い吐息がこぼれる。目隠しもあったが、そちらは使わないでおいた。
しきりにラップランドの頭を撫でて、ドクターはこれから自分が何をするのかを説明する。
「これから調教を始めるが、私はなにも無抵抗の君を痛めつけようというつもりはない。むしろその逆だ。どこまでできるかわからないが、できる限り痛くないようにする。いいな?」
ドクターの言葉に、ラップランドが頷いた。
「それじゃあ、まずは愛撫からだな……よいせ」
身体を抱き寄せて、手で触れていく。肩や、腰のくびれ、ハリのあるお尻に、鉱石の生成された太もも。それでいてラップランドの耳元で囁く。
「……あまり眺めることはなかったが、結構いい身体をしていたんだな。興奮してきた」
「ん、むぅ!」
「嫌がらないでくれ、これでも褒めているつもりなんだ。胸も形が良くて、とても柔らかくて――コレは癖になりそうだな」
手に合わせて形を変える、程よく実った胸を揉み始める。くすぐったそうに身体をよがらせるがドクターが逃げ出さないように抱きしめた。
「おっと。ダメだぞ、ラップランド。これはお仕置きを兼ねた調教なんだから。悪い子にはちゃんと罰を与えないと、な」
「んんぅッ」
先端部をつまむと、一際甘い吐息がこぼれる。そのまま後ろから抱きしめる形で胸を集中的に弄ぶ。円を描くように揉んでみたり、下から持ち上げて撫でていったり。胸の形に合わせて指でなぞっていったりと趣向を凝らして触るたびにラップランドが違う反応を見せた。
……どれほどそうしていただろう。時計の秒針が刻む規則的なリズムと、ラップランドの声にならない嬌声が寝室に響き続けていた。口を塞がれていてもわかるほどに、声が甘ったるい。太ももを閉じていても、腕を拘束されていては下腹部の熱も秘部の痒さも解消できない。
シーツを濡らすほどに溢れる愛液を見つめながらも、ドクターは愛撫を止めようとしない。何度も達しそうになっていたが、絶頂には至らなかった。それを乞おうにも、口からは言葉が出ない。
「ん、んぅぅぅっ。ん、ふぅッ! んんんぅむぅ!」
「最初に比べると、すごくいい反応をするようになってきたな。そろそろ、いいか……私もラップランドのかわいい姿を見ていたら我慢できなくなってきた」
手を離すと、ようやく解放された波が引いていくのを感じているのか肩で荒い息を整えながら頭を擦り寄せてくる。言葉にできない以上は行動で示してくるしかない。
子供のような求愛行動に、ドクターは頭を撫でてから耳を触る。頬を手で包み、優しく言葉を投げかける。
「かわいいかわいいラップランド、君は本当に悪いことをした。私に迷惑ばかりかけている。だから少しくらいイジワルしてもいいだろう?」
ドクターが手にしているものは、クロージャの用意した男性器を模した道具。それを見て、ラップランドがしきりに首を横に振る。欲しいのはそれじゃないと否定の意思を示して。しかし、足腰に力が入らないラップランドの尻尾の付け根をドクターが叩くと、腰が浮いた。
「んゅっ!?」
「前々から触ってみたかったんだ。君の尻尾はとても毛並みが良いから」
想像以上の手触りに、思わずドクターは手で尻尾を掴む。とはいえ包むように優しく触れているだけだったが、その中でラップランドの尻尾が激しくうねる。逃げ出そうとする生きた猫じゃらしのように乱れた毛並みだが、決してそれは手触りが悪いわけではない。
暴れる尻尾から手を離したドクターは、露わになっているお尻を鷲掴みにする。こちらも丸々としているが、ハリがあって、良い具合に引き締まっていた。こうしてラップランドの身体を触るたびに彼女の中にある雌という性別を感じる。これほど女性として魅力的な肢体に恵まれていながら処女であると公言したのは、恐らく彼女が恐れられているからだろう。――白状してしまえば、こうして拘束している今でも恐怖を感じないわけではない。
それでも、ラップランドがこちらに牙を向けてこないで身体を預けてきているということは普通以上の信頼を寄せていることに他ならなかった。
「……ふふ、かわいいな。正直なところ、私は君のことが好きかもしれない。君の身体が、君の声が、君の顔が。今こうして、私の手の中でいいようにされている姿がとても魅力的でたまらない」
「ふぅー……ふぅー……、んむぅ……んぁ、ふぅ……」
ギャグボールを噛まされている唇を、指でめくれば犬歯がずらりと並んでいる。肉食獣のような鋭くも整った歯並びを観察して、触診していく。顎からは涎がしきりに垂れていた。
ギャグボール越しに唇を塞ぐ。大きな飴玉を二人で頬張るようにして口づけを交わす。
「これを外してほしい?」
「……ん、ぅん」
おずおずと頷いた姿に、ドクターはラップランドの口からギャグボールを外した。その瞬間に噛みついてくるのではないかとも思ったが、意外にも大人しい。噛み合わせを確かめるように何度も口を大きく開けては、閉じている。
「……、ドクター。ひどいじゃないか。ボクのことを、こんなにしちゃうなんて……」
「普段から君お手製の“ミルフィーユ”に比べればかわいいものじゃないか」
「んぇ……?」
「舌はそんなに長くないんだな……ほう、ふむふむ……」
指でラップランドの口から舌を引っ張ってみると、喉奥から甘く生暖かい吐息が出ていた。考えてみれば、喉も乾いているだろう。口をずっと開けっ放しだったのだから、その上よだれだけでなく身体から水分も出ている。
ドクターは常温保存していた飲料水を取ると、自分の口に含んでからラップランドに口移しをした。喉を鳴らして飲む干すほどに乾いていたのか、ドクターの口内を濡らしている唾液すら舐め取ろうと口の中に舌を入れてくる。
「ん、はぁ……! もっとぉ……どくたぁ……」
「焦らないでくれ。まだ水も、時間もあるんだから」
水を口に含み、唾液を交えてラップランドの口内に流し込む。それを繰り返しているうちに、水分補給のことなど忘れて貪るように舌を絡ませ合う。蛇の交尾もこんな風にしつこいくらいに身体を絡ませるのかと思いながら、ドクターは自分の口から唾液が舐め取られていく感触を確かに味わっていた。
ラップランドは乱れた吐息を整えようともせずに、拘束された身体のままこちらに身を乗り出してきている。跨った太ももに濡れた秘部をしきりにこすりつけながら。
熱い愛液が塗りたくられるたびに滑りが良くなった太ももで身体の燻りを慰めている。しかし、それでは物足りないだろうとドクターが手を伸ばした。
「ちゅ……あぁ、いいよ、ドクター……そのまま、ボクの中に挿れてよ……熱いのに、痒くて痒くて手が届かないんだ……!」
指で入り口をさすれば、溢れ出る愛液が手に塗りたくられる。その淡い刺激が耐えられないのかラップランドが腰を落として腰を前後に振っていた。
「ドクター、ドクター……! 焦らさないで、早く……!」
先程よりも強い快楽が欲しくて欲しくて堪らないのだろう。無意識のうちにねだってくるラップランドの誘惑に負けそうになるが――ドクターは不敵に笑った。
先程見せたディルドを手にして、ラップランドの秘部にあてがうとしきりに擦りつける。
「ぁ、ちが……! ドクターのがいい! 玩具じゃなくて、ボクのはドクターがいいっ!」
「ラップランドの口からそんな言葉が聞けるとは思わなかった。でも、そうだな……これはお仕置きだから――それじゃあこうしよう。ラップランド」
「えっ……?」
「君の望み通り、私のをあげよう。だけどこれは、“ご褒美”だ。わかるな」
「――ぁ」
「ラップランドには普段、助けてもらっているからな。今回だけだぞ?」
察しがいいのか、その言葉が意味するところを理解したラップランドが少しだけ考える素振りを見せた。
「じゃあ、ドクター。ボクがいい子にしてたら、ちゃんとご褒美――くれる?」
「もちろん」
「約束だよ? 嘘吐いたらどうなるか……わかるよね」
「そんな風に脅さないでくれ、血の気が引いてしまう」
「ならいいよ、ドクター。ボクの初めても、これからも、キミのものだ。だから、早く」
「ラップランドは欲張りだな」
とはいえドクターも自分の理性が音を立てて崩れていくのを感じている。自分の中にある浅ましい獣性をむき出しにしてもラップランドなら受け入れてくれる、そんな確信があった。むしろそれを求めている節もある。
彼女は退屈や平凡を嫌う。なら、少々過激で刺激的な方が好みに違いない。
跨るラップランドの割れ目に、恥ずかしくなるほど固く勃った性器を押し当てた。キスを繰り返せば、たちまち涎が溢れてくる。
愛液が伝って漏らしたようにドクターの股間を熱く湿らせていった。
興奮しているラップランドの口からは乱れた吐息が繰り返されている。その視線は、今にも自分の処女を奪わんとしている結合部に向けられていた。
亀頭で割れ目をなぞり、一際沈み込む穴に向けて腰を浮かせると待ちきれない様子で自分から腰を落としてきていた。肉壁に包まれた肉棒から言葉にならない快楽の波が伝わってくる。
「ラップランドの中、とても熱く濡れているな……さっきのでそんなに感じたのか?」
「ドクターがボクのことをイジメるから、ぁ――! ねぇ、もっと奥まで挿れてよ。もっとドクターを感じさせて!」
「ならお望み通り――ッ、ご褒美だ」
「んん、くゥ……!」
生々しい音を立ててラップランドの窮屈な未開通の膣を押し広げていくのがわかった。乱れた吐息を必死に整えながら、自分の身体に侵入してきた熱く硬い異物を愛おしそうに見つめている。
「はぁ、あ――フフ、ボクの処女……ドクターに奪われちゃった。ねぇ、ホラ……わかるよね? ドクターの熱いのがココに入ってるよ」
「ぅ、お……ラップランド、勝手に動かないでくれ……」
「どうしてだい? ほぅら、ちゃんとボクのことを犯してくれないと困るよ。ボクの飼い主なんだから、さぁ」
腕を後ろ手に拘束されたままだというのに、ラップランドは器用にバランスを取りながら腰を浮かせて落としてきた。ドクターは初めての挿入する感覚にまだ戸惑っているというのに、相手はすでに快楽を貪ろうと勝手に動いている。
「ホラホラ、どうしたの。ドクター? もしかして気持ちよくって動けないなんて言わないでよ。ボクはもっともっと気持ちよくしてもらわないと満足できないんだからさ!」
「くっ、この……!」
思わず伸ばした手が腰を掴み、乱暴に突き上げてしまう。半ばほどまで咥えていた性器がラップランドの膣を強引に攻めていく。さすがにそれは刺激が強かったのか、背中を反らせて身体を震わせていた。
「んん、ああぁぁッ――! ……ふッ……んぅ!」
「……すまない、ちょっと今のは痛かったか?」
「ああ……たまらないね、この高揚感。ボクの身体を疼かせてくれる、ドクターの身体と相性がいいのかな?」
ドクターは少し申し訳なく思い、深く繋がったまま胸に手を伸ばす。きれいなピンク色の乳輪を指先で優しくなぞる。そのもどかしさに眉を寄せて、腰をくねらせるとその動きに合わせて膣からの刺激も四方八方から色を変えてドクターを刺激した。その反応を見ていたラップランドが息を荒げながらも笑う。
「へ、ぇ……ドクター。こんなのが良いんだ……それ」
「うっ……本当に、初めてなんだろうなラップランド……腰使いが、エロいぞ……」
「やだなぁ。ボクは本当に、んぅっ、正真正銘の初体験だよ? ただドクターがかわいい反応を見せてくれるから……あッん! はぁ……、こうしたら気持ちいいんじゃないかなーって、思ってるだけさ! こんな風に!」
結合部を深く押しつけて、しゃぶるように腰を小刻みに動かされるだけで膣のザラついた凹凸がドクターのペニスを溶かさんばかりに絡みついてくる。ドクターも、性器の根本にマグマのような熱の塊を感じていた。手に感じる柔らかな乳房の感触と、下半身から伝わってくる肉の擦れ合う淫猥な音。肌で感じる相手のエロスにドクターの欲望は爆発寸前だった。
「ボクの中で、おっきくなってるよドクター? もしかしてこのまま射精するつもりじゃないよね?」
「それは――!」
まずい、とは頭で考えても身体が言うことを聞かない。そしてそれを知ってか知らずか、ラップランドは笑みを浮かべている。
「いいよ、ドクター。ボクが欲しいご褒美、ちゃんと中で出してくれないと気持ちよくなれないじゃないか。一番奥で、思いっきり出してよ」
「う、くっうぅ……! ラップランド、もう、出てしまうから――」
ドクターが咄嗟に引き抜こうとするが、騎乗位のラップランドは足で挟み込んで逃さないどころか腰を強く打ちつけて前後にねちっこい動きを繰り返して搾り取ろうとしていた。
「ほぉ、ら……! ドクター、いいんだよ。我慢しないで? ボクだけに思う存分欲望を吐き出しちゃいなよ。キミの射精を見ててあげるから」
「っ、お……ラップランド、すまない――!」
――遂には、ドクターが根負けしてラップランドの膣内に思いっきり射精する。溜まりに溜まった精液が土石流のように性器を駆け上がって膣を白く染め上げていく。自分が犯され、汚されて精子で満たされていく子宮の感触にラップランドが全身を震わせた。
「あっ、くぅぅ――んんんうっ!!! ドクターの初めても、ボクが貰っちゃったね――ごちそうさま。悪くない、ね……熱いのを注がれるのも……ハハッ、なんて顔してるのさ、ドクター」
「……これじゃ、まるで私が調教されているみたいじゃないか」
ゾクゾクと背筋を駆け巡る高揚感と満たされる嗜虐心でラップランドの目に狂気に近い色が灯される。白濁液が溢れ、汚れていくお互いの性器をジッと見つめてから、顔を擦り寄せてきた。
それから、耳元で甘い声で囁いてくる。
「ねぇ、ドクター。ボク、もういっかいしたいな……だめ?」
「……ダメ」
「次はドクターの好きにしていいから――なんて言っても?」
「――――ダメったらダメ」
「……ねーぇー、どくたぁ……?」
「う、うぅ……そんな、えっちな声出してもダメなものはダメったらダメ!」
持ちこたえてくれ理性。自制心がなくなってしまったらラップランド思う壺だ。
頬を膨らませて猫のようにすり寄っていた相手を、ドクターはかろうじて残った理性で押しのけていまだに繋がったままの性器を引き抜く。
「んっ……、♪ ぁ、ふふ……ドクター、見てよこれ。溢れてきちゃった」
「……そんな風に足を広げないでくれ」
「もっとよく見ていいのに」
大きく足を広げて、ラップランドは割れ目から溢れる精液を見せてくる。ドクターはティッシュを用意して、溢れる精液を拭き取るとゴミ箱に捨てた。その際に、ふと視界の端に映ったのは先程使うのを中断したディルド。……少しくらいは、やり返してもいいだろう。
「ラップランド。まだ、物足りないんだったな?」
「その気になってくれた? ドクター」
「さっきは使いそびれたからな――そんなに物足りないなら、私も君を玩具にして楽しませてもらうぞ」
「あっ……ちょっと、ドクター。そんな乱暴にしちゃ……あっ、くっ……んぅぅぅッ! コレ、ドクターのより太くない……!?」
「そんなにコレがいいなら、もっと奥まで挿れてあげよう。そらっ」
毛並みが大きく広がる尻尾に、ラップランドの浮いた腰の反応を見てドクターはディルドを押し込んでからゆっくりと引き抜いていく。浅瀬を弄り、かき回すように挿入していくと嬌声が漏れていた。愛液がシーツに散っていく。
ドクターがそっと、耳元で囁いた。
「夜は長いんだ。楽しもうじゃないか、ラップランド――」
――後日。ドクターの執務室にて。
「ちょっと、ドクター! どういうこと!?」
「ひぃブレイズ!? 私なにもしてないのにどうしたの!?」
「どうもこうもないわよ! 何をどうしたらあの問題児があんな優等生キャラになっちゃうわけ!? 指示は聞く! 無駄な追撃はしない! 独断専行しない、不必要に敵を痛めつけない! ラップランドになにをしたの!?」
「それのなにが問題なのかと私ちょっと理性オリジムシ!」
作戦が無事終わってロドスに帰還してくるなり、ブレイズが乗り込んできた。少し遅れてからラップランドも入室してくる。当然のように武器を執務室に持ち込んで。
胸ぐらを掴まれて問い詰められている姿を見てなにがおかしいのかクスクスと笑っている。
「やぁドクター。もしかしてお邪魔だったかな?」
「そんなことはないから助けて! 燃やされる!」
「…………、腑に落ちない。ラップランド、なんで今回の作戦はちゃんと指示に従ったの?」
「どうして? ブレイズは変なことを聞くね。ボクは普段から命令を聞いているつもりだったんだけど――ああ、そっか。そうだねぇ……強いて挙げれば“ご褒美”目当てかな」
「ご褒美ぃ?」
「そう。ドクターが流石に問題に思ったのか、ボクがちゃーんと指示に従ってくれればご褒美をあげるって言ってくれたからね。楽しみにしてるんだ。そうでしょ、ドクター?」
「あ、ああ……うん。そういうわけなんだ、ブレイズ」
「……ならちゃんと、私達の分も用意しているんでしょうね?」
じろりと、ブレイズに迫られてドクターが狼狽える。その手を振りほどいたのはラップランドだった。
「ほらほら、やめなよエリートオペレーター。ドクターをイジメていいのはボクだけだよ?」
「イジメてないから。あと、それどういう意味?」
「はは、ジョークだよ」
「と、とにかくブレイズ。君からの申請通りラップランドの勤務態度は改善されたんだから、それで納得してはくれないだろうか?」
「……んー、気になることはあるけれど。ま、いっか! 後で作戦記録見ておいてよ、ドクター」
ブレイズが執務室から退室すると、ラップランドがニコニコと笑顔を浮かべたままドクターの手を取る。
「ねー、ドクター……? 今夜は楽しませてくれるよねぇ?」
「……そういう約束をしたからな。ただちょっとその前に、もうひとりお礼を言っておきたい相手がいる」
「へぇ。そうなんだ、ボク以外になんて妬けちゃうな」
「今夜の用意もしておくよ」
頬ずりをしてから、ラップランドはドクターの掌の匂いを胸いっぱいに吸い込む。それだけで顔を赤らめていた。
「じゃあ、綺麗におめかししてから行くよ」
「楽しみにしておいてくれ」
――執務室を後にして、ドクターが向かったのは購買部。そこではいつものように、クロージャが在庫の確認をしていた。
「やぁ、クロージャ」
「あ……ドクター。ハロー。今日はどうしたの?」
「品揃えを見たくてね。ちょっと見せてもらっても?」
「もちろん! さぁどうぞ! 言っておくけどこれ以上は安くならないよ!」
「わかってる」
品揃えを確認して、入荷している必要な素材を交換してからドクターは思い出したように話題を切り出す。
「そういえばクロージャから頂いた品物なんだけど――」
その一言に、身体を跳ねさせたクロージャが顔を真赤にしていた。視線も泳いでいるし、落ち着きがない。
「その……もしよかったら、また入荷してくれないかなと……思ってるんだけど」
「あ、あ~……そういうこと……どういたしまして――えっと、ドクター」
モジモジと、指先を合わせているクロージャの歯切れが悪い。
「流石にロドス名義で入荷はできないからあたし名義で入荷するんだけど、えっと、もし良かったら~……テストに、付き合ってもらえないかなー、なんて……不良品とかあるかもしれないし、万が一もあるから……ね? 品質保証システムの一環だと思ってくれたら、助かっちゃうんだけど」
「――――あー」
「もちろん報酬は“弾む”から」
たゆん。胸を少し揺らしてアピールするクロージャは、そっぽを向いて顔を真赤にしている。
「……テストプレイなら、仕方ないか」
「じゃあ、えっと……早速で悪いんだけど。一個試したいのがあるからこっちに来てもらえる?」
――ドクターとクロージャが、ロドス購買部の奥。倉庫の薄暗がりに消えていった。