ロドス・アイランド号、購買部。備品管理室――という名の倉庫。
薄暗く、肌寒い倉庫の中は、普段クロージャが用いる端末によって在庫の管理がされている。もちろん、クロージャ個人が利用したものも履歴にはちゃんと記録されていた。それを気にかけるオペレーターはいないし、ケルシーやアーミヤも個人のプライベートまで詮索したりはしない。
その内部で火災でも起きれば話は別だが、長居するだけならば周囲に言いようもある。
「んッ……」
――その内部で淫行に及んだ際には、もはや言い訳のしようがないが。とはいえ二人だけの秘密にすれば丸く収まるだけのこと。
ドクターの肉棒を手で確かめながら、クロージャはその熱く脈動する性器を頬張っていた。
「クロージャ……本当にこれ、初めてなんだろうな……」
「ぷは、ドクター。アタシのこと疑ってるの? そりゃ、ちょっとくらいストレス発散に玩具使ったりはするけど……こんなことするのドクターが初めてなんだから」
「そうだったのか。疑ってすまない」
「わかればいいの。じゃ、続けるね――はぷっ」
疑問も程々に、再びクロージャがドクターの肉棒を咥え込む。先端を舌で舐め回し、飴玉のように転がしながらもサイズを覚えるように手で竿を包み込むと、根本からゆっくりと搾り取る手付きで射精を促す。
連れ込まれた時の話では、テストプレイに付き合ってほしいということだったが、それがどういうわけかこんな状況になってしまっていた。
「っ……クロージャがテストしたいっていうのは、どういう……?」
射精を堪えながらも、ドクターが尋ねる。
「んー? プレイの一環、ドクターの反応と、あと個人的趣味で取り寄せたグッズの使い心地」
「なる、ほど……!」
「言っておくけど。手と口と、胸なら使ってあげるけど本番はなしだからね」
「……おしりは?」
「おし、りは――その、アタシも慣れてないっていうか、シたことないから怖いし。とにかく、本番だけは絶対に無しだからね。ゴム使っても駄目!」
目尻を釣り上げて言われては仕方ない。
「クロージャ、その……強壮剤の在庫はあるだろうか」
「ん、あるよー。終わってからね」
クロージャはドクターの反応を窺いながら、あの手この手で陰茎への刺激を変えていた。どういった手淫が最も反応が良いのかを確かめつつも、焦らし続けている。
舌先で亀頭の裏筋を舐めつつ、鈴口を指でこねるように弄るとカウパーが溢れてクロージャの手を濡らしていった。それを啜ると、ドクターが腰を跳ねさせる。
「ねぇ、ドクター。どこに出したい?」
「そうだな……ッ」
「そろそろ我慢の限界でしょ? スッキリさせてあげる」
「じゃあ……クロージャのご厚意に甘えて、口で頼む」
「おっけー」
汚れを落とせるようにすぐ手元にティッシュを用意しつつ、クロージャが大きく口を開けた。
ドクターの顔を見つめながら、髪をかき上げて先端からゆっくりと頬張っていく。陰茎の半ばほどまで含んでから、口内で舌全体を裏筋の形に合わせるとそのまま頭を前後させる。
普段から世話になっているだけに、いつもと違うクロージャの顔はドクターを確かに興奮させていた。
(あのクロージャが……、こうした性行為に積極的だとは思わなかった……)
同時に、それだけロドスでの多忙な生活にストレスを抱えているのかもしれない。それとも単に趣味なのか。おそらく後者だろう。少しだけ苦しそうな表情を見せながらもクロージャは動きを止めようとはせずに、ドクターは押し寄せてくる快楽の波を堪え続けていた。一秒でも長くこの快感に囚われていたい欲があると同時に溜まった熱を一気に吐き出してしまいたい欲もある。
淫猥な音が薄暗い中に木霊する。意識が下半身に集中していただけに、思わず腰が動いてしまった。
「んっ、ぐッ……!?」
急にドクターが動いたからか、予想外に深く咥えこんでしまったクロージャが驚いた顔をしている。喉の奥まで陰茎でいっぱいになってしまい、呼吸が苦しくなったのか目尻に涙を浮かべた。口がふさがってしまっているだけに睨みつけるだけに留まるが、それが裏目に出た。
既に根本で暴発寸前にまで昂ぶっていたドクターの性欲がクロージャの唇に触れて、決壊するまで秒読みとなっている。ドクター自身も限界を迎えようとしているのはわかっていた。
「クロージャ、すまない」
「んむッ!?」
「少しだけ我慢してくれ――すぐ、出すから……!」
頭を押さえ、乱暴な腰使いでクロージャの口から喉までを肉棒で突いていく。腰を引くたびに、唇の柔らかさと舌がなぞっていく裏筋とで違う感触が癖になりそうな快楽を与えてくる。
そして、ドクターが堪えていた欲が遂に決壊した。吐き出される白濁液は勢いよくクロージャの口内に溢れ出し、有無を言わさず喉に直接流し込まれる。
「んっぶ、んぐぅぅぅ――!!」
飲み込んでいる間もなく、とめどなく口内を犯してくるドクターの一方的な射精に、成すすべもなくクロージャはただ治まるまで陰茎を頬張っていた。やがて、収まりきらなかった精液が口から垂れて倉庫の床に落ちていく。
勢いが収まってきたのを見計らって、クロージャが喉を鳴らしながら少しずつ口の中の精液を飲み込む。
「ふーっ、ぅーっ……んっく、っむ……!」
「ぅ、お……」
まだ肉棒の中で溜まっていた精液が搾り取られるように吸い取られていく。腰が抜けそうなほどの快楽に、ドクターがクロージャの頭を開放した。
まだ口の端から垂れる精液を手で受け止めながら、クロージャが涙目で睨みあげてくる。その目には明らかな抗議の意思が見て取れた。
「えほっ……けふ、えっふ! ……ど~く~た~あ~!? アタシに言うことあるよねぇ……!」
「その……すまなかった。気持ちよくて我慢できなかったんだ」
「うぇ、変な味……精液ってこんな味なんだ……」
「無理に飲み込まなくてもよかったのに」
「飲まなかったら汚れるでしょ? あ、やば。垂れてくる……んっ」
手のひらで受け止めていた精液が床に落ちる前に、自分の手を丹念に舐め取っていく。その姿はなんとも官能的で、そそるものがあった。
舌を出して手を舐め取り、指の隅々まで舐めていく。唾液で濡れた手と、汚れた口元。そして飲み込むたびに喉が鳴る。倉庫に静かに響く音は背徳的で、興奮が冷めやらない。しかし、ここで再び手を出せばクロージャが今度こそ激怒するのは想像に難くない。ドクターは自制した。
しばらく息を整えていたが、顔は赤いままで落ち着かない様子だ。呼吸も少し乱れている。
「クロージャ?」
「……なんか、エッチな臭いのせいでちょっとアタシも、そういう気分になっちゃったっていうか……ちょっと、濡れてきちゃった」
「なら、テストプレイに丁度よかったんじゃないか?」
「そういうことにしとくね。今回は大目に見てあげる――じゃ、早速……」
クロージャが持ち出したのは、バイブだった。一見すると普通の代物だが、なにかあるのだろうか? そう疑問に思ったドクターが好奇心で尋ねる。
「なにか変わった機能でも?」
「ちょっと特別らしくて。というのも、実はこれ正規の品じゃなかったりしてさ……」
「……裏のルートから、ということか。大丈夫なのか、それは」
「ちょーっと改造されてるらしいんだけど、それがどんな機能なのか知らなくて……ただ、ヤバいぐらい気持ちよくて飛んじゃうって話」
「…………」
そんなものになんで手を出したのか。いや、手を出すのはこれからだが。とはいえ、それでクロージャがどういった反応を見せるのか興味もある。
「少し貸してもらえるか?」
「いいよ。はい」
「ほほう……どれどれ……」
自分の手と指の長さと比べてみると、関節一つ分くらい短い。自分のより短いことになんとなく安堵しながらドクターはバイブの手元のスイッチを確認していた。通常であれば、振動の強弱程度だろう。しかし、後から付け足したようなボタンが二つほど。つまりは、そこが爆弾だろう。
まずは弱めにスイッチを入れる。微かな振動音に、クロージャが生唾を飲み込んでいた。
「ど、ドクター。早く試してもらっていい?」
「わかった。それじゃあクロージャ。パンツを脱いでくれ」
「パ――、あ、うん。わかってる、わかってるんだけど……その、やっぱ見られると恥ずかしいっていうか」
「見ないと挿れられないだろう」
「だよね……」
クロージャがロングシャツの裾をまくると、すぐに下着が露わになる。そこはドクターが触れたわけでも、自慰をしていたわけでもないというのに既に性器の染みができていた。顔が真っ赤になっている相手をよそに、ドクターが手を伸ばす。
指で触れてみればそこは確かに熱く湿っており、クロージャが驚いて足を閉じた。そのせいで余計に手が密着し、手のひらで刺激する形になる。まるで熱く熟れた果実のように、それでいて手触りは下着の滑らかさでずっと触っていたくなる感触にドクターが唸りながら手のひらで揉み込む。
くちゅくちゅといやらしい音を立てる度にクロージャが死にそうなほど顔を赤くしていた。
「ちょ、ドクター……そこ、さわっちゃ……」
「そう思うのなら足を開いてくれないだろうか……」
思いのほかクロージャの力が強くて引き抜けそうにない。
「も、ばかぁ……! ほんと、変態ドクター……」
「これじゃテストにならないぞ」
少し力を込めて、ドクターは無理やりクロージャの内股に囚われていた手を引き抜いた。そのときに擦れたからか甘い声が少し大きく倉庫の中に響く。慌てて口を閉じるクロージャだが誰にも聞かれないことを思い出すと、胸を撫で下ろした。
このままでは埒が明かないと思ったドクターが、強引にでもテストプレイをしようと下着をずらす。ぴっちりと、きれいに閉じられた割れ目からは漏れ出すように愛液が垂れていた。
バイブの丸い先端部分で割れ目に沿ってなぞる。しっかりと慣らすように上下に優しくこすりつけていくと、抵抗感のある入口を小突く。
「ん、ひぅ……ひゃうっ……ちょ、ちょっとドクター。挿れるなら早くして?」
「いや、そうは言うが……」
膣口に沈み込むたびにクロージャがビクビクと身体を震わせる姿がおかしくて、ドクターもついつい意地悪をしてしまう。とはいえ、時間をかけすぎても不本意だろう。
「挿れるぞ、クロージャ」
「う、うん……」
ぐっと力を入れて、ドクターがゆっくりとクロージャにバイブを挿入していく。強い抵抗感があったが、無理やり頭だけでも咥えさせるとまたもや足を強く閉じられた。
「……こんな調子じゃ朝になる。普段はどうしてるんだ?」
「ひとりでする時はこんなじゃないんだけど……誰かの手を借りるの初めてだからかも」
なるほどと納得しながらも、ドクターは手を止めずに入り口を広げるようにしてバイブを挿入していく。弱い振動で秘部が全体的にいじられているからか、クロージャの意思とは関係なく身体が反応して愛液が溢れ出してきた。バイブだけでなくドクターの手にまで伝ってきており、その滑らかさと人肌程度の熱さを持つ蜜は感触だけでなく視覚的にも興奮を覚えてしまう。手が濡れる嫌悪感よりも勝る性的興奮に後押しされて、ドクターはバイブをクロージャの割れ目へ徐々に徐々にと押し込んでいく。
「ふぁ、あぁ! んっ、ちょっと、ドクター。少し、ゆっくり……!」
「無茶を言わないでくれ。私も用事があるんだ。もう少しいけるか……」
「ひあぁ!」
愛液をかき出しながら、少しずつ深く挿入させると振動を強くする。咥えこんで離さないクロージャの膣は、ドクターがバイブから手を離しても貪欲さで手放そうともしなかった。その間に手を拭きつつ、反応の変化を観察する。
足を開き、背中を丸めながらクロージャは必死にバイブの振動による快楽を堪えているようだがバッテリーが保つ限り稼働を続ける装置相手では敗北するのは目に見えている。
ドクターも早期解決に努めようと、早速バイブの機能をテストしようと再び手をかけた。
「よし、クロージャ。そろそろ頃合いだろうし、ボタンを押すぞ」
「え、もぅ? もうちょっと、待ってくれても」
「待たない。いくぞ」
ボタンを押すと、クロージャの身体が跳ねる。
「ひッ、ぃん! 中、で動いて……! や、なに、これ、ぇ……!!」
「どう動いてるんだ?」
「なん、か……ひんっ! ぐねぐね、ってぇ……!」
「……ヘビのように?」
「そんにゃ、かんぅぅ!」
「ほうほう……」
中で蠢くバイブは窮屈に閉じられているクロージャの膣の中で動き回り、肉壁を押し広げながら回転しているのだろう。それは確かに、耐え難い快感を与えてくる。そこに振動機能までついていたら、この通り。絶頂に達する寸前にまで追い込まれている。
「ならもう一つのボタンはどんな機能なんだろうな。押すぞ」
もはや性的興奮よりもドクターは知的好奇心が勝っていた。耳を澄ませてみれば、単調な振動音となにか回転している音が聞こえてくる。
「や、ァァ! な、ん……中でおっきくなって……、イッ、~~~~ッ!!」
何が起きているのかわからないまま、ドクターの目の前でクロージャが腰を抜かしていた。床にへたり込むも、だらしなく腰を浮かせたまま痙攣している。それでもバイブは刺さったまま振動を繰り返していた。そのあまりに唐突な反応に、ドクターも流石に慌てて停止させようとバイブに手をかけて――引き抜く。それが後押しとなってクロージャが絶頂に達したのか、必死に声を押し殺していた。
少し強引だったかもしれない、と思いつつドクターがバイブに視線を移して驚く。
怒張し、波打つ表面には凹凸ができており、イボ芋虫のような凶悪なビジュアルとなっていた。それがクロージャの膣内をかき乱し、絶え間なく蠢いていたのだと思うとどれほどの快楽に襲われていたのかは定かではないにせよ、反応を見るに想像を絶するものだろう。
腰を浮かせ、痙攣しているクロージャは両手で顔を覆い快楽の波が引くのを待っていた。ドクターの前には、蜜が溢れる肉壷が露わになっている。
ボタンを押して電源を切ると、停止した後に一拍を置いてから元の形に戻っていく。
「クロージャ、大丈夫か?」
「フ、ぅ……! ~~、大丈夫に、見える……?」
「腰が抜けているように見えるな」
まじまじと、いやらしくヒクついている秘部を観察する。陰核が盛り上がっており、ドクターが興味本位で触れるとクロージャの腰が跳ねた。
「ふむふむ。なるほど……?」
「なッ、るほど……じゃ、なくてぇ~~……! なんで触るの!?」
「いやらしかったから。それと後学のため」
小さな突起を摘み、引っ張ってみる。勃起したクリトリスの刺激が強かったのか、クロージャが身体を震わせていた。どういった反応を見せるのか、構造を把握するようにドクターは動けない相手の秘部をじっくりと触診していく。
「ふむ。ほほう……」
「ッ~~、んっ、――も、う! ドクター!」
ぽこん、と頭を叩かれてドクターの手が止まった。身体をよがらせて、よだれまで垂らしていたクロージャが小刻みに震えながら手で秘部を隠す。
「さわりかた、やらしすぎ……!」
「すまない。さて、怒られたところでそろそろ私も用事を片付けてこないとな。テストプレイはもういいだろう?」
「う、うん……」
「強壮剤をいただいてもいいだろうか」
「まいどあり、ドクター。確か、その辺りに在庫があった気がする」
指された場所を探してみると、たしかに小瓶があった。
「クロージャ、支払いは?」
「明日でいいから……今ちょっと、腰がぬけてて……」
「わかった。なら明日用意しよう」
ドクターは倉庫から強壮剤を二本拝借して購買部を後にする。
床にペタンと座ったままのクロージャがしばし放心状態となっていたが、やがて思い出したように汚れを拭き始めた。
「……あとでもっかいしよ」
癖になってしまうとダメだと理解していても、身体の奥底の疼きが止まらない。ドクターが止めていなければどうなっていたことか。
「よし、そうと決まれば早いところ今日の業務を片付けておかないと」
まだ少し震える足腰に力を入れてクロージャが立ち上がる。その内股を熱い蜜が一筋、線を描いていた。
――ドクターは自分の寝室に戻るなり、早速シャワーを浴びる。念のため服も着替えておき、部屋へ持ってきていた資料に目を通していた。
(そうだ。ラップランドのご褒美も用意しておかないとな)
強壮剤の準備よし、諸々の玩具よし。それらの小道具のチェックをしていると、扉がノックされる。すぐに開けると、そこにはラップランドがいつものように薄ら寒くなるような微笑みを浮かべて立っていた。相変わらず武器を帯びて。
「やぁ、ドクター。おまたせ。色々と準備していたら遅くなっちゃったけれど――いいよね?」
「かまわない。さぁ、入ってくれ」
「お邪魔するよ」
ラップランドが寝室に入るなり、鼻を鳴らして部屋の匂いを嗅いでいた。
「どうかしたか?」
「……、別に。なんでもないよ、ドクター。じゃあ――始めようか」
「その前に、ラップランド。君に渡しておきたいものがある」
「これは?」
「強壮剤だ。ここ最近出撃が続いていたからな」
「へぇ……気が利くね。ふふ、それともドクターは、別な意味でこれを用意してくれたのかな? まぁいいさ。ありがたく飲ませてもらうよ」
小瓶を開けて、そのまま一気に飲み干していくラップランドは、空になった小瓶のラベルを眉をひそめながら見つめる。
「美味しくはないね」
「そういうものだ」
「“良薬口に苦し”とは聞くけど、苦いというよりはからいよ?」
「どれどれ……、――――からいな」
ドクターもまた、一気に飲み干した。ラップランドの感想通り、苦いを通り越した辛さが喉の粘膜ごと胃の中へ落とし込まれるような飲み口にラベルの成分表を確認する。
市販されている通常の強壮剤に比べて成分表がざっと二倍近く埋め尽くされていた。養分だけを凝縮して液状にしたものに口当たりの良さを求めても虚しいだけだ。
「さて、と……それじゃあドクター」
ラップランドがコートのボタンに手をかけて、外していく。肩からまるで流れるように落ちる厚手の黒いコートの下は、下着同然の薄着だった。
「……電気、消さないのかい?」
「消す前に脱いだじゃないか」
「ボクはドクターが見たいなら、このままでもいいけど?」
いつもの格好ではあるとはいえ、こうして眺めるのは二度目か。肢体をなめるように見つめるドクターの視線に興奮しているのか、ラップランドの頬が赤い。両手を頭の後ろに回して、見せつけるようにポーズをとっていた。
「今までなんともなかったんだけどね。ドクターに見られていると思うと……昂ぶってくるじゃないか。ドクターはこういうのが好みなんだね。そんなに真剣にボクの身体を見つめて」
「……というよりも、見るな、という方が無理な気がするが?」
言っている間に、ラップランドは寝室の電気を消す。暗闇の中でも迷うことのない足取りでドクターの手を引くとベッドへ突き飛ばした。なんとか受け身をとるものの、すぐにラップランドにのしかかられて身動きが封じられる。
「さて、と。それじゃあドクター? ――ボクへの“ご褒美”は、たっっぷり期待していいんだよねぇ?」
暗闇で妖しく光る、オオカミの瞳に気圧されるドクター。その口からは不安と恐怖と、少しばかりの期待と、口約束をした後悔が混じった言葉が絞り出された。
「……おてやわらかに頼む」
「ふふ、どうかなぁ。ボクの機嫌次第さ」
吐息を耳元に吹きかけながら、ラップランドが鼻を鳴らして匂いを嗅いでいく。
ドクターの衣類を脱がしていくと、素肌を触れ合わせて、まるで人肌のぬくもりを求めるようにぴったりと身体をくっつけてきた。
「~~♪ んー……」
「……くすぐったい」
「ボクもだよ。でも焦らした方が盛り上がるじゃないか」
クスクスと笑うラップランドの言葉には同意せざるを得ない。鼓動が早鐘を打つのは、先程の強壮剤の効果が早くも出ているからか、それともこの状況に興奮を覚えているからか。どちらにしても、今は相手の好きにさせておこうとドクターは判断した。
首筋を舐められて、くすぐったさに身体を震わせる。そのまま舌を這わせながら大きく息を吸い込み、まるでこちらの匂いを覚えるような……マーキングにも似た愛撫が、どうにもじれったい。
なにが面白いのか、ラップランドの手がドクターの胸板を撫で回し、指に触れた乳首を何度も擦る。ゆっくりと円を描く動きにくすぐられて声が漏れた。その間も顔はへそから更に下腹部に向けて蛇みたいに這っている。やがて、目的の場所へ辿り着くとすぐに口を大きく開けた。
かろうじて残されていた衣類越しに甘く噛みついて、ドクターへの反応を窺っている。否が応でも反応してしまう肉体に、ラップランドが嬉しそうな吐息をこぼす。
「ハァ……ドクターは正直でいいね。こんなことをされたらボクは、好きになっちゃうじゃないか」
「今までは、好きじゃなかったと?」
「もちろん、ドクターから回される仕事は好きだよ。ボクの力を存分に振るえる絶好の機会に恵まれすぎているほどにね。でもそこまで。ドクターの身体には興味がなかったから――この間までは、だけど」
「むしろ、私としては……ラップランドが色を知らなかった方が、少し驚きだったが」
「あっはは! ボクは色々と嫌われているみたいだからねぇ。むしろそんなボクに、こうも身体を許しているドクターの方がどうかしているんじゃないかい?」
それを指摘されては、何も言い返せない。
鼻と舌を使って器用に下着の隙間から陰茎を出すと、ラップランドが舌なめずりをして舐めあげた。何度も往復するその舌使いは、ドクターの敏感なところを探し出すようにねちっこく、それでいて乳首を責める指の動きも止まらない。
「ん、……! 器用、なんだなラップランドは……!」
「ひょうかな? ん、はぁ……ドクターはやっぱり、こうして攻められる方が好きみたいだ。この辺りはどうだい?」
舌先で執拗にカリ首裏を攻め立ててくる。その絶妙な刺激は、ドクターの性的興奮を呼び起こすのには不自由なく、ますます血流を促していった。先端部を集中的に刺激するラップランドの愛撫はしばらく続いたが、やがて唇を離すと笑みを浮かべたまま残っている下着を脱がしてくる。そのあとで自分も裸になると、今度は跨ってきた。
いきり立つ陰茎がラップランドの割れ目によって、まるで布団のように優しく押さえ込まれる。そのかたわら、両手首を拘束して身体をくっつけてきた。胸板に当たる形が良く、発達した胸からはなんとも言えない柔らかさが伝わってくる。さきほどよりも早い鼓動も添えられて。
「ドクター、今日は随分と身体をキレイにしたんだね……ふふ、嬉しいよ。ボクも念入りにキレイにしてきたから」
「そうか……」
確かに、いつもよりも毛並みが良い気がした。身体から漂う石鹸のような、淡く爽やかな甘い香りも。いつも以上に小綺麗なラップランドの姿と、体温の上がった素肌が擦り付けられるというのは官能的で、刺激的だった。
耳元に熱い吐息が吹きかけられて、耳たぶを甘噛みされる。
「――ところで、ドクター。知ってたかい? ボク達ループス族は、鼻がいいんだ。他の種族に比べて。サンクタや、ウルサスや、コータスのウサギちゃん達に比べて。とても、とっても――ボクの気の所為ならいいんだけどさぁ……ボク以外の、雌の匂いがするのはどうしてかな」
ヒヤリと、背筋が凍りつくような一言を添えて。手首を拘束する腕の力がぐっと込められる。血が止まる勢いでラップランドがドクターを拘束していた。これではまるで肉食獣を前にした生き餌も同然だ。
スンスン、と。またもや鼻を鳴らして匂いを嗅いでいる。
「フェリーンのこわーいエリートオペレーターかな? それともこれは、テキサスかな? どっちも違うなぁ……誰だろうねぇ、ボクの、ドクターに、ちょっかい出してくる悪いオペレーターは――ねぇドクター?」
「…………」
「――なぁんて、冗談だよ。あはは、そんな青い顔しないでよ。ちょっとからかっただけじゃないか」
「君が言うと、冗談に聞こえない」
「ごめんごめん、こわがらせちゃったりして。そうだよね、ドクターはボクのものじゃないし。キミが誰と愛しあおうが、関係ない。そしてこれは、ボクへのご褒美なんだから」
そうでしょ? そう問いかけるように、ラップランドが手首を解放して微笑みかけてきた。どこか寂しげに見えたような気がする。
「ドクターばかり気持ちよくなるのもズルいし……そろそろボクも気持ちよくしてよ」
まるでそんなドクターの視線を遮るようにして、ラップランドが目の前に自分の秘部を見せつけた。指で大陰唇を開けば、性的な熱の籠もった唇が口を開く。ドクターの顔に向けて腰を下ろしていくと、そのまま口を塞いだ。
「んッ……あ、ふふ……ドクターがボクのにキスしてる。まぁボクもさっき、ドクターのを舐めてたからおあいこだね。それとも、口でシてあげたほうがいいのかな」
「むぐっ、んぅ~……」
「くすぐったいじゃないか、ドクター。そんなにしてほしいなら、サービスしてあげるよ」
ぐりぐりとラップランドは腰を押しつける。
ドクターの唇を塞ぐ、ほどよい肉の厚さと籠もった雌の香り。呼吸するだけでも理性が奪われていくような目眩すら覚える。だが息を止めているわけにもいかない。観念して、舌を伸ばして割れ目に沿って舐め取るとラップランドの身体がわずかに震えた。
「はは、ドクターもノリ気になってくれたみたいだね。それじゃあボクも……」
根本から優しく、ゆっくりと陰茎を撫でながらラップランドが亀頭をアイスキャンディを頬張るように咥える。舌を添えて、形に合わせると飴玉を転がすみたいに口内で丹念に丹念に、これでもかと言うほどいやらしく舐め回す。
「んー……♪」
少しずつ深く咥えていくと、溢れ出る唾液を塗りつけていく。頭を前後させながら、卑猥な音を立ててラップランドはドクターの陰茎をしゃぶる。唾液をローション代わりにして摩擦が減ったことにより、ますますそのフェラチオは激しさを増していた。
ドクターの腰が浮く。根本から先端に向けて熱いものがこみ上げてくるのが自分でもわかるほどに心地良い刺激が絶え間なく襲ってきていた。されるがままでは持たないことは明白。ドクターも負けじとラップランドの割れ目を広げる。
目と鼻の先には、きれいな色の膣口が餌を求めるようにヒクついていた。舌先でその周囲をなぞるように舐めていくとラップランドの口から甘い吐息が漏れ出す。隠れている陰核も舌先でつつくと、身体をよがらせる。
「ん、っぷ……ほぉら、ドクター♪ がんばらないと、先にイカせちゃうよ?」
「ッ……!」
的確に弱いところばかりを攻めてくるラップランドの口淫は、なんとも耐え難い。抵抗をしなければ快楽の波にもまれて理性が奪われてしまいそうになる。どこで学んだテクニックなのか、ラップランドの手淫は的確に睾丸から精液を搾り取ろうとしてくる。浅瀬を攻めてきたと思えば、根本を集中的にこすり、じっくりと先端に向けて吸い上げる。
意識を途切れさせてしまいそうになる前に、ドクターはその目鼻の先で開かれている蕾に向けてしゃぶりついた。相手がその気ならば、とラップランドの陰核を皮から剥がすように舌で集中的に攻める。
「あっ、んはァ……! 急に、そんな激しくするなんて――ふふ、もしかして……ッ~!」
なんとしても先にイカせないと堪えきれない。そう判断しての攻勢だったが、膣から溢れる愛液に混じってますます色づき、メスの匂いが肺いっぱいに充満してくるといよいよ我慢の限界が近くなった。粘度が高く、熱い愛液はまるでローションのように喉を通っていく。
お互いの性器を夢中で舐めて、溢れる愛液とカウパーをすすり、頭を押しつけて唾液まみれになりながら淫らな愛撫を繰り返す。
「ドクター、そろそろ、ボクもイキそうだ……! ほら、もうガマンしないでイッちゃいなよ!」
「うっく……! ラップランド――」
「いいよ。ドクターの精液、全部ボクが受け止めてあげるから、さ!」
声を押し殺すようにドクターが口いっぱいにラップランドの股間に頭をうずめる。大きく息を吸い込みながら、溜まりに溜まった精液を吐き出す。
口内射精の勢いは激しく、熱く脈打ちながらせり上がる精液は瞬く間にラップランドの口内を白く満たし、それだけで収まらず喉から直接食道までも犯していった。
「く、ぅぅ……ッ! う、お……まだ出る……!」
ドクターの射精はしばし続き、二回、三回と陰茎が震えてようやく収まりを見せる。
大きく喉を鳴らしながらラップランドは精液を飲み込んでいき、まだ陰茎に残っていたものまでしっかりと搾り取っていく。
完全に射精が収まってから、ようやく顔を上げる。まるで吟味するように何度も咀嚼を繰り返してから、ラップランドが最後の精飲を終えると手についた精液を舐め始めた。
「ん……♪ ん~……、ぷはっ……ごちそうさま、ドクター♪」
キレイに舐め取った手をヒラヒラと振りながらラップランドは上機嫌な笑みを浮かべている。白い尻尾も嬉しそうに揺れていた。
「でも、なんでかな。前よりもちょ~っとだけ。薄味な気がするんだよね? 量は……うん、まぁまぁだったかな――ボクの、気の所為だといいんだけど」
じっと。ラップランドが細目で見つめてくる。
――おそらく、ラップランドは気づいたその上でこちらを問い詰めてきている。とはいえこれも冗談の一種だ。口元は緩く、だが口を塞ぐように押しつけてきている。火照った身体は汗ばんでおり、しっとりと濡れた太ももの弾力がなんとも心地良い。
体位を変えて、今度は向かい合う形でラップランドが腰を下ろした。
「まぁ、いっか♪ ドクターにはボクが満足するまで付き合ってもらうつもりだし。さっき貰った強壮剤も効いてきたから……ちょっとくらい激しくても大丈夫だよね」
愛液でぬれそぼつ割れ目を押し当てて、股間に塗りつける。唾液まみれだった陰茎が再び活力を取り戻して固くなっていくのを感じてラップランドの背中を興奮がくすぐった。
ぬち、ぬち――静かな寝室に響く、いやらしい音。耳にするだけで、これから何をするのかがわかってしまう、生殖本能をかき立てられる。
「すごーく、いやらしい音してるね……ゾクゾクするよ。これからドクターのことをめちゃくちゃに犯していいって考えると――ああ、どうにかなってしまいそうだ。ボクへのご褒美なんだから、ドクターは動いちゃダメだよ?」
「ど……どういうことだ……」
「わからないかな。ボクが欲しいご褒美は、これだからさ」
腰を浮かせて、固くなった陰茎をさすると自分の割れ目にあてがう。興奮しているのか、息を荒くさせていた。
「ドクターの、これ。ふふ、言ってほしいのかな?」
そっと、顔を近づけて耳元に熱い吐息を吹きかけてから囁く。
「ボクが欲しいのは、ドクターの固くて、おおきな、おちんぽなんだけど――さっきのは、熱くて、ビクビク跳ねててとってもかわいかったよ? だから……ボクが満足するまで、がんばれー♡」
ぞわぞわと背筋がくすぐられる感覚に、ドクターが生唾を飲み込む。
「フフ、安心してよ。痛くしないからさ。それじゃ……いただきます」
腰を下ろして徐々にラップランドの膣の中へ飲み込まれていく陰茎に腰が動きそうになる。
「ほぉら、見てよドクター。ボクの中に入っていくよ。ズプズプ~って……はは、挿れただけでそんなに嬉しそうな顔をしないでよ」
半ばほどまで挿入して、動きを止めたかと思うとそのまま腰を上下に動かし始めた。
「フフっ。かわいいなぁドクター。ボクなんかよりもずっとかわいい顔をするじゃない、か!」
「つぉ……!」
「ンッ~~……! ははっ、ほら……見えるかいドクター。ボクに全部食べられちゃったよ?」
不意に腰を浮かせて、一気に根本までくわえ込んだままラップランドはドクターに結合部を見せつける。溢れる愛液によって蒸れた肉壺が陰茎を包み込み、内部の細かなヒダが絡みついてくる。まるで精液をねだるように。
ラップランドがぐりぐりと腰を小刻みに動かす度に四方八方全方位から快感が怒涛のように押し寄せてくる。ドクターがシーツを掴んで耐えようとすると、それを阻むように手を握って満面の笑みを浮かべていた。
「ダメだよー、ドクター? ちゃぁんと、男らしく我慢しなきゃ。ほらほら、頑張れ、頑張れ♪ あははははっ」
無邪気に笑いながら、ラップランドがリズムよく腰を上下に動かし始める。根本からしゃぶられる陰茎はそのまま持っていかれそうなほどヒダが絡みついてきていた。先端まで腰を持ち上げると再び腰を打ちつける。外気に触れた陰茎が再び肉の熱が籠もった壺の中に飲み込まれた。
「んっ。んぅっ! まだ出しちゃダメだよ? ふふ、だんだん固くなってきてる……!」
「くっ、うぅ……!」
「そんなに切なそうな顔をされたらたまんないなぁ、ドクター。ほら、ボクのおっぱいでよかったら好きに触ってていいよ?」
指を絡ませていたドクターの手の甲にキスをしてから、ラップランドは自分の胸にドクターの手を当てる。形が良く、ほどよく膨らんだ胸の先端は固くなっていた。それはラップランドも性的興奮を覚えている証拠に他ならず、ドクターは生唾を飲み込みながら手に力を込める。
指の形に合わせて沈み込んでいく肉の柔らかさ、それでいて先端だけは固い感触。やられてばかりだったドクターもこれ幸いと、ラップランドの乳輪をつまむ。
「ん、はぁ! ドクター、そこは……!」
爪でカリカリと、浅く掻いてやるとラップランドが背中を伸ばして身体を小刻みに震わせた。強く摘むと身体をよがらせてむず痒そうな顔を見せる。顔を赤くして、息も荒い。
「あぁ、もう。ドクターはイジワルだなぁ。ボクをこんなに悦ばせてどうするつもりだい?」
腰を深く落として、根本から搾り取る腰の動きにドクターが思わず震える。先程射精したばかりだというのに、既にもう爆発してしまいそうなほどの熱溜まりが下腹部に充填されていた。このまま何も考えずに吐き出してしまいたい。全部手放して楽になってしまえばどれほど気持ちいいだろうかとすら考える。
「ラップランド――!」
力任せに胸を揉みしだくと、わずかにラップランドが顔をしかめた。
「ん、ッ――ドクター。もっと、優しく……って、聞こえてないよね。しょうがないなぁ……!」
痛みよりも快感が勝る。ラップランドはそのまま激しく腰を打ちつけ、ドクターの反り返る陰茎が脈打つのを感じていた。根本が膨らみ、精液がこみ上げてきているのがわかる。射精を焦らすように股間を押しつけながら、どこかわざとらしく腰をくねらせてみせた。
「ドクター、早く出してよ……♡ ボクのここに、あっついのたくさん欲しいんだぁ」
「っ~~、おねだり上手なんだな……!」
「はやく、ほぉら、はやく……! ビュ~ッて出しちゃいなよ!」
ラストスパートをかけて、ラップランドがドクターの射精をねだる。何度も激しく擦れ合う性器の熱に、身体の境界線も曖昧になってきた。津波のような快楽にとうとうドクターの射精管が決壊するとラップランドの膣で暴れ始める。激しい勢いで精液が膣を染め上げていき、子宮口から注がれていく。
下腹部からじんわりと広がる熱い感覚にラップランドが達しそうになり、動きを止めた。その隙にドクターが腰を掴み、突き上げる。ポルチオに直に注がれる精液にラップランドが腰をのけぞらせた。
「ん、あ……あぁぁぁッ――!! ふ、ゥ――んぅぅっ……!! あ、はは、すごい……まだ出てる……そんなにボクの中は気持ちよかった?」
肩で息を整えながらも、ラップランドはまだ自分の下腹部に広がる熱に手を添える。そこにはドクターの陰茎が子宮口まで達しており、その硬さが伝わってきた。
「ハァ、ハァ……ん、もういい……? あっ……んん……、あふれちゃった……勿体ないなぁ」
二度目の射精をたっぷりと終えたドクターの陰茎を引き抜くと、ラップランドの膣から精液が吐き出される。それを手で受け止めてから、自分の口元に持っていくと舌で舐め取っていく。
「……ん……ドクターの味、クセになっちゃうなぁ……この匂いも、味も、感覚も……すぅー……あ、はぁ……♪ たまんないよ」
ゴクッ――と、大きく喉を鳴らしながらラップランドがドクターの目をじっと見つめながら手にした精液を飲み干し、手のひらに残った匂いをいっぱいに嗅ぎ取る。“トロン”とした目つきで、顔を寄せてくると今度は口を開けて首に噛みついてきた。
「いっ、……!」
「んぅ……あ、む……ちゅう……、んっく……」
わずかな痛みと、力が抜ける感覚にドクターが疑問に思っているとラップランドが口を離す。その口元には血が着いていた。それを舌で舐め取り、いつものようにギザギザの歯を見せて笑う。噛まれた箇所に触れるとジンワリと痛みが広がった。おそらく噛み傷になっている。
「ドクターの苦いの、たくさん飲んだから少しくらい甘いのが欲しくなっちゃった」
「……おいしかったか?」
「もちろん。ねぇ、ドクター……」
(イヤな予感がする……)
身体を擦り寄せてきて、猫なで声で上目遣い。ラップランドの顔が整っているだけに悪魔的な誘惑にドクターが震えると胸板に手を当てて、円を描く。
「ボク、おかわりが欲しいなぁ――」
「……ダメと言ったら?」
「拒否権があると思ってる?」
「…………」
なら何故聞いたのか、という疑問はさておいて。
ふと、思い出したようにラップランドが部屋の中を見渡した。
「どうした?」
「ドクター。この間の“玩具”はどこ?」
「ああ、それなら……」
探しものを隠してある場所を教えると、寝室を素っ裸で歩き始める。羞恥心の欠片もないが、なまじその肢体が魅力的なだけに目のやり場に困ってしまう。
揺れるオオカミの尻尾に、長く白い手足。その肌が汗ばんで艶めかしい質感と、雌の匂いを漂わせながら寝室の中を探っていた。
「――――」
つい、今しがたまでそれが自分と交わっていたと思うだけで心臓が跳ねる。まるで麻薬を吸い込んだみたいに思考が霞む。眠気にも似た感覚が頭を真っ白にしていく。
隠そうともしない尻を見せつけながら、ラップランドが嬉しそうに玩具箱を漁っていた。
目的の玩具を手にしてベッドへ戻ってくると、今度はドクターの耳を甘噛みしてから舌を使って耳の穴を舐め始める。鼓膜に響く唾液の絡む音と熱く甘い息遣いが脳を蕩けさせた。
ラップランドの手は、蛇のように身体を這いながら束の間の休息を味わっていた陰茎を擦る。裏筋を指先で根本から先端に向けて、フェザータッチをしながら。
「今度は玩具を使って遊ぼうよ、ドクター。好きだよね、こういうの。ボクのこと、あーんなにしちゃったんだから、さ……♪」
思い出されるのは、ラップランドが手にしている玩具を使った一夜のこと――お仕置きを口実にして、確かに好き放題した。
アナルにバイブを挿れたり、クリトリスに電動マッサージ機を当ててみたり。胸にローターを押し当てたまま何度もキスを繰り返したりと――、とても人には言えないようなことを山程。
ローションを手にして、ラップランドがバイブに塗りたくる。
「――――」
猛烈に、嫌な予感がした。だが、そんなドクターを逃さまいとラップランドはしっかりと身体を擦り寄せてきている。片手は陰茎を握り、余ったローションを塗りつけてきていた。
しっかりと目を見ながら乳首に舌を這わせて弄び、それでいて濡らしたバイブをこれ見よがしに振ってみせた。
「ん、しょっと……さぁドクター。覚悟はいいかな?」
「なん、の……?」
「なにって……もちろん、お尻の処女の話だけど」
絶句するドクターの嫌な予感は、的中する。菊門に押し当てられる硬い感触。玩具の頭が押し当てられていることに危機感を覚えた。だが、これもラップランドの悪い、いつもの冗談だろうと一縷の望みをかけて尋ねる。
「――冗談だろう、ラップランド?」
「ひどいなぁ、ドクター。ボクのおしりをめちゃくちゃにしておいて、自分は嫌だなんて――あんなに激しいの初めてだったんだから。ボクもドクターの“初めて”をもらってもいいよね?」
「ちょっと、待っ――」
ドクターの制止も聞かず、ラップランドが力を込めて菊門をバイブでこじ開けた。
初めて異物を飲み込み、不快感と未知の経験に反射的に身体が反応してしまう。
「わぁ。ドクターのこっちも、ビンビンになっちゃったね。ふふ、喜んでくれて嬉しいよ」
「っ……ラップランド、抜いてくれ……」
「ん~? どっちを、抜いてほしいのかな? 当然、こっちの意味だよね♪」
ピン、と。指で震える陰茎を弾き、ラップランドが再びドクターに跨った。無理やり勃起させられた陰茎に手を添えて、そのまま腰を下ろしていく。
「やっぱりボクは……っ……、はぁ。こうしてドクターのかわいい顔を見れるこの体位が好きかな? 後ろからケダモノみたいにされるのも嫌いじゃないけど、さぁ……」
菊門から響く振動が内側から陰茎を刺激する。引き抜こうにも、ラップランドに両手を拘束されたままでは抵抗もままならない。これではまるで強姦だ。しかしそれが最も興奮する要因となっているのか、狂気的な色を宿してラップランドが恍惚とした笑みを見せる。
「あぁ、コレだよ。この感覚、たまんないね! ドクターを力でねじ伏せている、この状況……サイコーだよ! ん、んんっ!」
打って変わって激しい腰使いでピストン運動を繰り返すたびにベッドが軋む。
ドクターは自分の肛門から響いてくる振動と、慣れない異物を挿入されてますます陰茎を隆起させる。血流を促されて完全に勃起した敏感な陰茎からは、ラップランドの膣の形がより明確に伝わってきた。一度は精液で満たされた膣はそれを潤滑剤にしてますます滑りを良くしているだけでなく、より卑猥で、淫靡な、耳に残るいやらしい音を立てている。
オオカミの耳を立てて。オオカミの尻尾を揺らして。腰を反らしながら、胸を揺らして。
だらしなく緩んだ口元からよだれを垂らしながらもラップランドの腰の動きは一向に衰えない。それどころか、ますます巧みな腰使いでドクターの睾丸から一滴残らず精液を搾り取ろうとしている。大きく腰を上下させたり、根本からしゃぶったり。焦らすように小刻みな動きから、ゆっくりと、ゆっくりとした動きで先端から根本まで飲み込んだりと。
「あ、あァ……っ。いいね、いい顔だよ、ドクター。ボクだけに見せてよ、誰も知らないキミの表情――あっんっ! あの小さくて、かわいいウサギちゃんはドクターのこんなところ、知らないだろうねぇ――♪」
「うっ――!」
「あはっ、固くなった♡ イキそう? イッちゃいなよ。やめないけどね!」
顔を寄せて、ドクターの耳元でラップランドが脳が蕩けそうな甘い声を繰り返す。
「ドクター、すっごくイイよ。ボクの気持ちいいところ、よく知ってるじゃないか。んぅ……。これなら他のオペレーターもきっと満足させられるんじゃないかな? 例えば、ほぉら――きみのことが大好きな、アーミヤとか」
「っ、……やめてくれ、ラップランド」
「ふふ、いいのに。そんなこと言わないでよ。ボクでいっぱい練習したらいいじゃないか。女の子の悦ばせ方♪ でもドクターはもうちょっと体力をつけた方がいいんじゃない、かなっ!」
一際強く腰を打ちつけて、肉のぶつかる音が寝室の暗闇に消えていく。
「こんなんじゃ、フェリーンのこわーいエリート様は満足いかないんじゃない? ボクなんかよりずーっと体力ありそうだしさ。……想像しちゃった?」
他のオペレーターの顔を思い描くだけで、背徳感と興奮とで頭の中が真っ白になる。だが、ラップランドに拘束されたままの自分では抵抗する術もなく、彼女の玩具だ。
「ドクター……ドクター……! 君のことを全部受け止めてあげられるのはボクだけだよ? いつもどおり、ボクの力が必要ならいいなよ。ボクの身体が欲しい時はいつでも、付き合ってあげるよ。だから――んんぅ! ドクターは……あっ、はぁっ……! はぁ、んはぁ……、ふふ、ボクもイキそうだ……!」
互いの吐息が届くほどの至近距離。目の中に映る自分の顔を見つめながらラップランドが舌を伸ばした。最初こそ拒もうとしたドクターだが、それでも押しの強さに負けて口内に入り込んでくるラップランドの舌を受け入れる。
歯並びから、舌の裏側まで。全部舐め尽くす勢いで口内を陵辱されるだけでも、息が続かない。至近距離で吸引するラップランドという雌の匂いに脳が溶けてしまいそうになる。
「んぶっ、ふぅ、んんっくぅ……! ちゅっ、はぁ……どくたぁ、もっとボクを感じてよ」
ディープキスを繰り返しながら、ラップランドの腰の動きが激しいものから緩やかな動きに変わる。上も下も、まるでドクターの全てを味わい尽くすように。
喉を鳴らして唾液を飲み込み、口の周りを汚しながら。ラップランドは首筋から鎖骨まで舌を這わせると背筋を震わせて身体を起こす。
「それじゃあラストスパートといこうか、ドクター♡ あっついの、たくさんぶちまけてね」
「お、あっ――あぁ……!!」
声にならない嗚咽を口腔から漏らしながら、ドクターは遠のく意識と共にラップランドの膣に大量の精液を吐き出す。振動で刺激され続ける前立腺から分泌される量は先程よりも多く、干上がるほどに搾り取られていく。
「ん、ッ~~~~………!!! あぁ、はっ、ぁあ……~~~~♡ やっ、ぱり……キミはサイコーだ、ドクター。ますます気に入ったよ……」
遠ざかる声に、猛烈な眠気を覚える。視界が霞む中で、ラップランドの白い髪と穏やかな声が頭に残った。
「――おやすみ、ドクター。キミはボクのことを置いていかないよね」
ガクリと、ドクターの首が横になる。身体から力が抜けていくのと同時に、ラップランドが自分の膣から陰茎を引き抜く。溢れ出し、お互いの性器を白く汚すだけでなく、垂れた精液はシーツまでも染みにしていた。愛液と精液と、汗とその他でめちゃくちゃになってしまっている。
寝室も二人の体臭が混じった、なんともいえない、甘く痺れるような肉の臭いが籠もっていた。
ラップランドはドクターの肛門に挿していた玩具を引き抜き、腸液を拭き取ると元の場所に戻す。使ったものは元通り――ただし、ドクターだけはそうとは限らないが。
寝室に備え付けられているシャワールームで汗を流し、ラップランドは鏡で自分の顔を見つめる。指で頬をなぞり、首を触り、鎖骨から胸をたどって、へそから、秘部に触れた。自分の指を入れて広げれば、背中をくすぐられるような感覚と共にお湯に混じって白く濁った液体がひねり出されていく。
糸を引き、粘ついた精液が床に垂れて流されていくまでラップランドは黙って見ていた。
堪えきれない高揚感。背筋を駆け上がる快感。自分だけに見せてくれたドクターの本性。
「ああ、テキサスは知らないだろうなぁ……他の誰も、ドクターのあんなところ。ふふっ……ふふふ、あっははは! ああ、どうしよう……また、欲しくなってきちゃったなぁ……」
だが、もうドクターは“おねむ”の時間だ。流石にこれ以上欲張るのは難しい。
となると……我慢するしかないだろうか、と考えるラップランドが閃いた。
手頃な獲物がいたのを忘れるところだった――。
――深夜のロドス購買部。
在庫管理の通常業務に加えて、ロドス・アイランドのシステム点検。発注業務に備品管理と、クロージャは追加の業務も全てこなした上で机に突っ伏していた。
もう無理。今日は無理、これ以上の仕事は色つけた残業代でもノーセンキュー。
「ぐ~え~……やぁっと終わった……よしっ!」
あとは思いっきり楽しんで、シャワーを浴びて、おたのしみっ! 誰がなんと言おうと今日の購買部ならびにエンジニアとしての仕事は終わり! 今のアタシは一人の女、クロージャ! などと意気込んでいるかどうかはともかく。業務が一段落したクロージャが深夜の購買部で後片付けをしていると、通路から誰かの足音が聞こえてきた。
こんな深夜にまで作業をしているのと言えば、医療スタッフくらいだろう。あそこは昼夜を問わず治療法の模索に研究を続けている。栄養剤くらいは調達してもいいが、それ以上は断固拒否。
今日のクロージャは完全にスイッチが入ってしまった。業務に没頭しなければ手が秘部に伸びそうになるほど。
(こんな時間に誰よもー)
とっくに閉店時間は過ぎているし、艦内の販売機の補充も済んでいるはずだ。どこかでエラーでも出たのなら、明朝に回してほしい。今夜は適当にあしらってしまおうと思っていたクロージャだったが、顔を出した瞬間に息を呑んだ。
――そこに立っていたのは、満面の笑みを向けるラップランド。
「こんばんは、クロージャ♪」
「……コンバンハ」
いやに、上機嫌なのが気にかかる。だがなんの用事だろうか? こんな夜更けに。
「どうしたの? もう今日は閉店だし、アタシはお仕事する気ないけど」
「ああ、そこは安心しなよ。キミに用があっただけで、何か買いに来たわけじゃないんだ」
「……? アタシに? なにか頼み事?」
「んー……というより。ちょっとした確認、かな。失礼するよ」
「んひゃあ!? な、なに!?」
ラップランドが腰をかがませながら、クロージャの匂いを嗅ぐ。すんすんと鼻を鳴らしながら。
「あれぇ、おかしいな……ボクの気の所為かな? どうして、キミから、ドクターの匂いがするんだろうね?」
「ひゅ――――」
その刹那、生きた心地がしなかった。心臓が凍りつくような寒気を覚える。だが、ラップランドはそれでもニッコリと笑顔を貼り付けたままだ。サメのように鋭利な歯を覗かせて笑っている。
「やっぱり、ボクの予想通りだ。あの玩具はキミからだったんだね、クロージャ」
「あ、ははは……」
愛想笑いと苦笑いと冷や汗が止まらない。
「いい趣味してるじゃないか。さっきも愉しませてもらったんだ、ドクターに」
「そ、そうなんだー……へー……」
「でも、ちょっと物足りなくてさ。困ってるんだよね」
「……アタシに、用事って?」
「別に難しいことじゃないよ。ちょーっと、責任とってもらおうかなって思ったんだ」
「なん――っ!?」
「ボクからドクターのご褒美を横取りしたんだから、当然だよね?」
「あ、いや、あれは、その……!」
魔が差したというか、なんというか。カモがネギしょってきたというか。とにもかくにも、違うのだ。クロージャがラップランドを言いくるめられる言い訳を考えている間に、手を握られる。
「だ・か・ら♪ キミで我慢しようと思ってさ♪ まだ隠してるんだろうから、ボクに隠さず見せてみなよ。大丈夫、二人だけの秘密にしてあげるからさ」
「あっ、ちょ――いや、待っ……! だれか――」
誰かに助けを乞おうとしたが、深夜にうろつくロドス職員はそうそういない。
ラップランドに手を引かれてクロージャが再び倉庫の奥に消えていく。
――その暗闇から、肉を打ちつける音が微かに響いていた。時折、水が滴る音も。
それを聞いていたのはロドスの中で静かに稼働し続けている空調設備だけだった。