※この作品はR-18です。

信頼度限界突破オペレーター(仮)   作:アメリカ兎

5 / 10
 スペクターってえっち好きそうだよねって偏見\ビーッ!!/


ドクターが深き海よりきたサメに食べられちゃうだけの話

 

 

 

 ――ドクターは、ここ数日謎の視線に追われていた。それは例えば、艦内を歩いている時。誰かと話している時。食事をしている時。不快感というよりも、単純に不気味な心地だ。

 

「……うーーーん?」

 首を傾げて、心当たりを探る。大抵の場合、オペレーター達は直接声をかけてくれる。積極的なオペレーターならともかく、消極的な性格のオペレーターだとしても何かしらアプローチしてきてくれるはずだ。

 はて。

 一体、誰が。なんの目的で。ドクターを監視しているのか。

 ストーキング行為をされても別段身に危険が迫るわけでもなく、ただ落ち着きがないというだけのことだ。

 そのことについてケルシーから小言を言われてもドクターはあまり気にしないことにした。

 

 

 

 ――作戦行動中。

 ロドスの臨時オペレーター達の練度向上を口実とした連携強化。ドーベルマン教官からの提案であり、それに合わせて危険度の低い感染生物の駆除に乗り出したドクターと、数名のオペレーター達。だが、それでもやはり謎の視線の正体は定かではない。逃れられるどころか、より確信をもってドクターはオペレーターの顔ぶれを見回す。

 ――この中の誰かが、自分を常に見ている。

 

 危険度の低い任務とはいえ、それはあくまでも“普段と比較して”の話だ。感染生物といえど対処方法を誤れば万が一という可能性も出てくる。迅速な対処と行動が求められるが、如何せん作戦行動に不測の事態はついて回るものだ。

 そのため、一部のオペレーター達に身辺警護も兼ねて同行を依頼したのだが――以下、今回の主要メンバーである。

 特殊オペレーター、スペクター。

 前衛オペレーター、スカジ。

 

 アビサルハンターニ名の同行については、単純に暇を持て余していたからだ。同じようなニェンとは似て非なる理由である。

 様々な要因はあるが――彼女たちの出自ないし、人柄だ。

 スカジは一匹狼、スペクターは……記憶を取り戻す以前の彼女を知る職員たちはいまだに近寄りがたいのだろう。

 

「……なに、ドクター。ジッと見て」

「いや。せっかくの機会だから言っておこうと思って」

「改まってどうしたの?」

「――最近、視線を感じるんだ。ここ数日間、いや数週間かは定かではないが。ずっと誰かに見られている」

「そう……」

「あら、気づいてくれてたのね?」

 

 …………。

 

 ――――なんて?

 

「スペクター? 君は今なんて?」

「白状しないと斬るわよ」

「あら、怖いシャチだこと。別に悪気があったわけじゃないのよ」

 コロコロと鈴を鳴らすように笑うスペクターに対し、スカジは既に大剣の柄を握っていた。手綱を握り損ねれば次の瞬間には風切り音が響くことだろう。

 

「ただ、ね……ほら。私って記憶喪失――みたいなものだったじゃない? だからその間の記憶とすり合わせてたのよ。ドクターの人物像っていうのかしら?」

「それなら直接聞いてくれないか……」

「ふふ、それについては本当にごめんなさいね。忙しそうにしてたものだから」

 誰かさんのストーキング行為が怖くて業務に逃げていたなんて言えない。

 

「記憶がなかった時と、相変わらず接してくれてとても嬉しいのよ。これでも、ええ」

「そ、そうか……」

「だから、ね――ドクター。わかるでしょう?」

「……なにを?」

 目を細めて笑うスペクターに、ドクターはどこか薄ら寒さを覚えた。背筋を氷柱でなぞられているような、そんな冷ややかさ。赤い瞳を見ていると身動きが取れなくなる。だが、そんなスペクターと見つめ合っているドクターが面白くないのか、スカジが艶やかな髪で視線を遮った。

 

「作戦行動するんでしょ。パパっと片付けましょ」

「まぁ今回私達の出番はなさそうだけどね」

「……ないと、いいんだけどねぇ。その時は、ささっと頼むよ」

 その後は何事もなく、予定していた作戦時刻まできっちり時間通りに作戦行動は終了する。

 

 ――だが、その最中もずっと。ドクターは自分の背中に刺さるような視線を感じていた。

 記憶を取り戻す前からもそうだった。

 なぜか、スペクターはずっとこちらを見ることがあった。なにを考えているのか、やはり時々わからなくなる。

 

 

 

 ――ロドスへ戻ってきたドクターが自室で資料を整理していると、スペクターが入室してきた。何故か以前着ていた修道服を着用して。

 

「ちょっとドクター、聞いてくれる? ふふ、ここの人たちったら私がこの服を着ただけで子猫みたいに震えちゃってかわいいわねぇ」

「…………心臓に悪いからやめてくれ、スペクター」

「あなたまでそんなこと言うの? ローレンティーナ泣いちゃう」

 ドクターが頭を抱える。あとで職員達には事情を説明しておこう。

 当のスペクターはと言うと、修道服の裾をつまんで一回転していた。着慣れているというのもあるのだろう。ふわりと浮かぶ生地の隙間からストッキングが覗く。

 わざとなのか、それとも単なる偶然なのか。スペクターは笑いながら前垂れを持ち上げる。

 隠している内大腿まで露わになる、という瞬間に手を放して生地が垂れた。その様子を見てなぜかこれまたスペクターは上機嫌に笑う。

 

「そんなに見つめられたら照れ臭いわ、ドクター」

「……なにか用事があってきたんじゃないのか?」

「用? そうねぇ……」

 小首をかしげて、スペクターが手を伸ばす。電子ロック錠のかかる音に、ドクターが眉をひそめる。だが、優雅な足取りで相手はこちらへと距離を詰めてきていた。上機嫌な鼻歌を乗せて。

 

「ねーぇ、ドクター。もっと、私と“仲良く”なりたい?」

「……それは」

「陸の人たちがどうやって親睦を深めるのか興味があるの。それで色々な物を調べていたら面白い物を見つけてね。ドクターと試してみたいわ」

「……ど、どういう?」

「あなた達は他人が交尾しているところを鑑賞して興奮するのでしょう?」

 誰だ艦内にポルノ映像記録を持ち込んだオペレーターは。

 

「それから気になってたのよね。ドクターはそんな素振りひとつ見せないものだから」

「そんな素振りって、どういう」

「ん~~? 聞きたいの?」

 鼻先をぐいっと近づけて、スペクターが口角をつりあげる。するとドクターの肩を掴み、片手で軽々と持ち上げてしまった。アビサルハンターの怪力の前には並のオペレーターでは対処が困難となる、それどころかいい玩具だ。

 

「そぉ~~~~、れっ!」

「うっぼぁ!?」

 思い切り背中から仮眠用のベッドの叩きつけられ、ドクターが軽く咳き込む。そのままスペクターに両腕を押さえ込まれて、起き上がる前に押し倒される。

 

「もしかしてドクター、女の子に興味が無いのかしら?」

「そんなことは……」

 無い、と断言できる。だが、それ以上にスペクターの赤い瞳がいつも以上に輝いて見えた。それはまるで、獲物を見つけた獣のようで――自分の背筋に走る悪寒の正体が「恐怖」であることを理解する前に、身体が強張る。

 

「じゃあ……私のことも“女の子”として、扱ってくださる?」

「……それは、もちろん、だが……」

「ならぁ、問題ないわよね?」

 頬を紅潮させながら、スペクターが覆いかぶさってきた。相変わらず両腕は押さえ込まれたまま、マスク越しに見つめあう。

 

「それじゃあドクター……陸のやり方で“仲良し”――しましょ?」

 囁いて笑うスペクターの顔は紅く、綺麗に生え並んだ白い歯はまるで深淵の鮫を彷彿とさせた。だがその顔を見て、恐怖よりも美しさが勝ってしまったドクターは言葉を返せずにただ頷く。

 

 

 

 ――スペクターがどのような映像作品を鑑賞したのかはわからない。それにそもそもにしてそうした知識があるのか、エーギルではどうだったのか、不明な点は多くある。だが、ドクターの目の前にさらけ出された女体はそんな言葉など意味をなさなかった。

 優しい手つきで衣類を剥いでいく指先はフェザータッチで素肌を撫でていく。そのたびに舌なめずりをされているような感触に陥る。

 その至上の肉体美を前にして、ドクターはただ生唾を飲み込んだ。

 透き通るような白い肌。だが病弱というわけではない。

 ゆるくウェーブのかかった銀の髪は穏やかな波のように揺れている。

 女神の彫刻があれば、それはきっとこんな形をしているのだろうとさえ思う。

 ドクターは目の前にあるスペクターの柔肌を隈なく観察する。

 

「そんなに熱っぽい視線を向けられると……ちょっと、恥ずかしくなってくるわね。サメの肌は敏感なの。だから今、ドクターが私の身体の、どこを見てるのか手に取るようにわかるわ」

「そうか……」

 疑っているわけではないが、それならば。ドクターはスペクターの胸を凝視した。

 主張が激しいわけではない。かといって控えめでもない。整った形の乳房はハリがあり、まるで実った果実のようだ。乳輪もまた綺麗な色をしており、先端の蕾は果実のヘタのように頭を出している。

 

「……~~」

 スペクターは、そんなドクターの舐め回すような視線を一身に受けながらもどこか性的興奮を感じている自分に素直だった。見やすいように少しだけ足を開き、髪をかきあげる。

 

(結構、楽しいわねこれ……♪)

 映像作品では、もっと女性が乱暴に取り扱われていたが――そんなことはスペクターの頭から抜けた落ちていた。今はもっと、ドクターの視線を自分だけのものにしていたい。

 胸から外した視線は、少しずつ下へ降りていく。腰回りを見つめているのがわかる。

 ドクターはただ、何も言わずに見つめていた。その眼が自分を“女”として見てるのがひしひしと伝わってくる。不快感はない、むしろ快感だ。興奮さえ覚える。――これがもし他のオペレーターだったら分からないが。

 あの頭でっかちで、いつも多忙なドクターを独り占めしているというだけでスペクターは自分の内から湧き上がってくる熱に驚かされる。この情欲の思うままに肉体を従わせたらどうなってしまうだろう。きっとひ弱なドクターは必死な抵抗もなすすべなく流されてしまうはずだ。

 だがそれをぐっと堪える。はたして今、品定めをしているのはどちらか。

 

「ふふ……♡」

 ドクターの目は、それでもスペクターの身体を見つめ続ける。その視線の向けられている先は、露わになっている股間だ。身動き一つせず、穴が開くほど見つめてくる姿に背筋が震える。

 

「ねぇーぇ、ドクター。見づらくないかしら?」

「……スペクター。もっと近くに」

「はーい」

 手を伸ばせば届くほどの距離で、スペクターは裸体を晒し続けていた。部屋の灯りを点けたまま隠しもせずに堂々と。もちろん羞恥心が無いと言えば、多少はある。だが何よりも楽しんでいた。

 ドクターの股間はすでに盛り上がっている。隠すのも馬鹿らしくほど怒張しており、それはスペクターの視線を惹きつけるのに十分な効果をもたらした。

 

「もう……ドクターの方はずいぶんとやる気に満ちてるみたいね」

「……君の方もそうみたいだが」

 ドクターの視線の先。割れ目からは愛液が垂れていた。

 

「ぁ……あらぁ、困っちゃうわ。ドクターがそんなにいやらしい目をしているものだから私の方まで感化されちゃったかしら」

「それはつまり……スペクターもいやらしい気持ちになっているということか。興奮してきた」

 床に向かって垂れていく銀糸を見て、スペクターの顔が紅潮していく。

 視線が蛇のように身体に絡みつく。スッと足を差し出して身体を近づければ、鼻息が腹部をくすぐる。吐息をもらせば舌で舐めるように素肌を撫でていく。それだけでスペクターの身体は身を焦がす思いで情欲を抑えていたが、ゾクゾクと背筋を這う背徳感にこらえきれずドクターに触れる。

 

「……♡」

「――スペクター。今、だいぶ怖い顔をしているぞ」

「どんな?」

「獲物を捕まえたような顔」

 間違っていない。ただし、あくまでも主導権はドクターに委ねる。

 

「いきなり本番、というわけにもいかない。もう少しだけ前戯を続けようか」

「私は何をしてあげればいいかしら?」

「そうだな――――」

 

 ――どんなことをしてほしいか、というドクターの願望を聞き入れたスペクターはその趣旨がわからなかったし、そんな趣味を持っている相手もいるのかと驚いた。

 

「…………こんなのがいいの? 陸の趣味は、よくわからないわね」

 勃起したペニスに髪を巻きつけて、スペクターは細心の注意を払いながら手で上下に擦る。なまじアビサルハンターとして力があるだけにいつも以上に気を使う。

 

「ドクター、手本を見せてくれない? 力加減が難しくて困っちゃうわ」

「なら、少し手を借りるよ」

 ペニスを髪で包み、その上からスペクターの手で押さえる。こぼれないように手のひらを受け皿にして。ドクターは手を握り、少し力を込めた。より鮮明に感じ取れる熱と脈動にスペクターが淡い吐息をこぼす。

 

「思ったよりも力を入れていいのね。ふぅん……私の手の中で、ビクビクしててかわいいわねぇ。まるで死にかけの恐魚みたいよ」

「そういう言い方はちょっと……」

「あらごめんなさいね。悪気はないのよ? でも、そうね。確かこういう時は、応援してあげるといいのかしら」

 どんなポルノ映像作品を視聴したのか気になってきたが、それは後ほど男性オペレーター達に問い詰めるとして。

 スペクターは小さく咳払いを挟み、言葉を探す。

 

「ドクター、ほーら。がんばって♡」

「う、うぅ……スペクターの髪の毛サラサラして気持ちいい……!」

「あらぁ……またビクビクさせちゃって。そんなに私の髪が気に入ったのかしら」

「癖になりそうだ……」

「髪に興奮するだなんて、ドクターも変わった趣味ね」

 ドクターの手を借りながら、少しずつ力加減を覚えていくスペクターが不意に力を抜いた。ペニスの先端に顔を近づけていくと、深く息を吸い込む。

 

「ん、んー……なんとも言えない匂いだけれど……こうしてあげると、もっと悦ぶのかしら?」

 舌を伸ばし、亀頭を舐め回していく。根本を緩く握りしめて先端に向けて搾り取るような手つきで射精を促してくる。

 

「そこ、は……ちょっと、敏感だから……!」

「なら私の肌と一緒ね、おそろいで嬉しいわドクター♡ たぁっぷり、かわいがってあげるわね。よしよし♡」

 子供の頭を撫でるように、スペクターが舌で亀頭を撫でた。そのたびに甘く焦らしてくる快感にドクターが素直な反応を見せる。それを楽しむように上目遣いで顔色を窺いながらリズミカルに手を動かしていた。

 搾り取る手つきを緩めたり、激しく動かしたりと緩急をつけた変則的な動きでペニスを弄ぶ。

 

「じー……♪」

 毛先で亀頭をブラッシングしていくと、指とも舌とも違う感触が刺激してくる。柔らかく、それでいて芯のある絹糸が敏感なところをなぞっていく。

 

「ぁ、ちょ……スペクターまって……!」

「ん~? なんでかしら~?」

「ちょっと、我慢できそうにないから……!」

「ドクターってばおかしなことを言うのね。元々こういう行為なのでしょう? なら、我慢しないで射精しちゃえばいいじゃない」

「それ、は――」

 そのとおりだが。ドクターの微かな理性が歯止めを掛ける。当のスペクターは何がおかしいのか小首を傾げていた。

 

「あ~……、ドクター。もしかしてぇ、私のことを気遣ってくれてるのかしら。お優しいのね。でもそんな優しいドクターが、よもやこんな変態行為におよぶなんて他のオペレーター達は知らないでしょうね? いいわよ、受け止めてあげる。ほーら、ドクター。我慢なんてしてないで早く。ほーら、はやく射精しないと食べちゃうわよ~♪」

 綺麗に並んだ歯を見せながら、スペクターは大きく口を開けてペニスに迫ってきている。髪に包まれた陰茎の根本にははち切れんばかりの欲望が固まっていることがわかっていた。このまま射精すればスペクターの身体を白く汚してしまう。

 ――脳裏をかすめる、女神のようなスタイル。それがまずかった。それを汚す背徳感を想像した瞬間、ドクターの微かな理性は欲望を放つ方を選んだ。

 亀頭から溢れていたカウパーが白く濁った瞬間、まるでトイレに駆け込むようにドクターはスペクターの頭を押さえつけてペニスを頬張らせて射精する。

 

「ん、っぐ!? ん――!?」

 想像していた以上の溜まりに溜まった獣性を解き放つ開放感は、しばしドクターを放心状態にした。脈打つたびに吐き出される白く濁った精液がスペクターの口内へと注ぎ込まれていく。

 咄嗟のことで反応できず、飲み込む間もなく溢れた精液が口の端から垂れる。だが、喉全体を鳴らして飲み込み始めると、まだ尿道に残っていた精液までもが吸い出されていった。勢いが収まって落ち着いた頃合いを見計らってスペクターがゆっくりと口を離すと、舌なめずりをしながら汚れた自分の髪を見つめている。

 

「――…………ひどいわ、ドクター。貴方ってこんなことをする人だったのね」

「それは……とにかくすまない、スペクター」

「ローレンティーナ」

「え?」

「だって、女の子として扱ってくださるんでしょう? なら業務上のコードネームなんかではなくてちゃんと名前で呼んでくださらないかしら。でないと……ね?」

 粘ついた精液が糸を引く。綺麗な髪が汚れて不機嫌なのか、そうでないのか。胸元にこぼれた精液を見つめて、スペクター……ローレンティーナが笑う。

 

「私も「自分」が堪えきれないかもしれないわよ。もしそうなっちゃったら……多分ドクターは壊れちゃうわね」

 手を伸ばし、迫ってくるローレンティーナに気圧されてドクターがベッドに背中を預ける。

 銀の髪が優しい雨のように仄かな体温と共に素肌にまとわりつく。赤い瞳の中に狂喜の色を滲ませながら、笑っていた。

 今にも獲物に喰らいつかんとするサメのように、大きな牙を覗かせて。

 

「……ローレン、ティー……ナ?」

「……はぁーい♪」

 ケラケラと、打って変わって明るい笑みを見せる姿にドクターは深く息を吐き出した。九死に一生を得たような感覚に安堵感を覚えつつ。

 

「それで、ドクター。この後は……貴方をいただいてしまってもいいのかしら? ああ誤解なさらないで頂戴ね? 上の口なんかじゃなくて、こっちの話よ」

 馬乗りになって、自分の股間を見せつけるように跨る。女性特有の象徴である割れ目はすでに涎を垂らして餌を待っていた。指を添えて、口を開ける。

 柔らかく、汚れのひとつも知らない純潔さを保ってきたローレンティーナの性器は開いた大きな唇から透き通った体液を溢れさせた。それは太ももを伝い、艶めかしく艶やかに引き締まった大腿に一筋の線を描いていく。

 

「ああ、私ったらなんてはしたないことをしてるのかしら。でもこうされると、やっぱりドクターも興奮しちゃうみたいね」

 ドクターが答えるよりも先に、性的興奮を待ちきれないペニスが奮起していた。先程射精を終えたばかりだというのに、目の前にぶらさげられた女性フェロモンの濃厚な香りにつられてしまう。

 そのままローレンティーナが腰を落としていくと、ドクターの口に自らの性器を押しつける。

 

「ねぇ……せっかくだから、味見してくださらない? こんな機会ないでしょうし」

「む、っぐ……!」

「……んっ」

 溢れる愛液を舌で舐め取られていく感触に、思わず背中が震えた。たどたどしい舌の動きはヴァギナとキスを繰り返し、周囲に溢れる蜜を舐め取っていく。膣口を押し開けようとするドクターの舌にローレンティーナがますます強く腰を押し当てた。

 キツく閉じられていた入り口は、それでも成熟した女性の身体として当然のように異物を受け入れる。それでも窮屈さを覚えるどころか、舌に噛みついてくるような勢いで包み込む。

 

「ドクター、そんなに……っ、私の恥ずかしいところをしゃぶられると――ん、さすがに恥ずかしいわ」

 溢れる蜜をかき出すようにしてドクターがローレンティーナの愛液を飲み込んでいく。空調機器が静かに唸る中、ごくりと喉を鳴らして飲み込む音は思った以上に響いた。

 その音を確かに耳にした瞬間、ゾワゾワと甘い快楽がローレンティーナの背筋を駆け上がる。

 なんてことをしているのだろう。なんていやらしい。なんて恥ずかしい、だが――それがたまらなく心地よい。一時の慰めに縋らなくてはならないほど弱い陸の人間。あの崇高な事業を代表するドクターが、今はどうだ。こんなにも自分の目の前で浅ましい雄と成り果てている。

 ローレンティーナはその瞬間、自分の中にある“なにか”が薄れていく気がした。我が身のことながら信じられない心地で、熱い吐息をこぼす。

 ドクターの顔から腰を浮かせて、噴火を待つ火山のように活性化している陰茎に手を添える。

 

「――――ドクター、ごめんなさい」

「っは……、ローレンティーナ?」

「もう、私我慢できそうにないわ。だから……もしも」

 

 くちゅっ――、亀頭と膣口がキスをする。いやらしい音を立てながら何度も唇を交わす性器同士の音は官能的で、たまらなく興奮させる。だが、それ以上にローレンティーナの赤い瞳が危険な輝きを取り戻していた。

 

「もしも――“壊してしまったら”、ごめんなさいね。先に謝っておくわ」

 重ねて謝罪を繰り返し、次の瞬間には腰を落とす。一息にペニスを呑み込んでいく様はジンベイザメの捕食だ。だが膣壁に包まれた肉棒から伝わってくる快感は堪えるのが精一杯だった。

 入り口はキツく、それでいて温かい。痛みはなく、むしろ優しいくらいだ。だがその内部は凶悪なまでに歯を立てている。無数の粒を感じ取れるほどに敏感なペニスが丸鋸のように柔らかい肉壁に包まれ、さらに奥へと飲み込まれていく。まるで先の見えない快楽に満ちた海の底へ堕ちていくような錯覚さえ覚える。

 

「は、ぁ……んん! ……ふふ、どーぉドクター? 私の中は、気に入ってくださる?」

 言葉にならない。どこか鼻息荒く、ローレンティーナはじっとりと汗ばんだ髪をかきあげる。火照った身体にもじわりと汗が浮かび、血色が良い。その活気に満ちた身体を見て、シーツを掴んでいた行き場のない手が伸びる。それは迷わず腰に向かった。

 汗ばんだ肌に吸いつく手のひらから伝わってくる肌の可憐さにドクターは驚く。新品のシルク素材を撫でるような滑らかさ。それでいてしっとりとして手を離さない。

 

「ん、うぅ! 女の子の肌はデリケートなんだから、もっと優しく触れないと……嫌われちゃうわよドクター」

「うぅ、っく……! ローレンティーナの締めつけ……すごくて、我慢するのが精一杯だ……」

「ダメよ、我慢して。もっと我慢して? 私だって気持ちよくなりたいんだもの」

 蜜壺に浸された陰茎が引き抜かれていく。だが、すぐにまた快楽の海に沈められていった。動くたびにかき出される愛液が潤滑液となってスムーズな動きで陰茎をなぞっていく。

 

「あ、でも我慢しなくてもいいわ。もしそうなっても私はかまわず気持ちよくなるから、ねっ♡」

 強く腰を打ちつけたのを合図に、ローレンティーナは動きを激しくする。ベッドが嬉しい悲鳴をあげる度にドクターの身体は逃げ場を失って快楽を受け入れることしか許されなかった。甘く優しい拷問、絶え間なく与えられる快楽もまた拷問の一種といえる。

 

「ああ、なんて心地よいのかしら! もっと、その顔を見せてドクター。私に、私にだけに」

 ドクターのことなどお構いなしにローレンティーナは本能に任せて腰を振っていた。肉がぶつかり合う度に小気味好い音を鳴らし、とめどなく溢れ出す愛液はお互いの秘部をずぶ濡れにしてシーツにまで染みを広げている。だがその腰のストロークは止まる気配がない、それどころか激しさを増していく一方だ。

 ゴリゴリと肉壁を押し広げる度に自分の腟内が引き締まり、熱く滾った肉棒をしゃぶり尽くす。その中で充填されていく欲の塊を感じながらローレンティーナは激しく求めていた。

 腰に添えられていた手をとり、自分の顔に引き寄せると手の匂いを嗅ぎ取る。手汗混じりに雄の匂いを嗅いで、指に舌を這わせて舐め取ると今度は歯を立てて手のひらに噛みつく。

 

「ッ――!」

「ん、ぁは! ドクター、私の中でもっと硬くなってるわよ。こういうのがお好みかしら?」

 歯型がつくほど噛みつきながら、今度は腰を深く落としたまま左右に振る。より密着して感じられる膣内の形がさらに性欲を加速させた。

 口を離してそこにしっかりと痕が残っているのを確認したローレンティーナ。上機嫌な表情は変わらず、どこか恍惚としたような笑み。ドクターは生唾を飲み込み、不意に腰を突き上げる。それはまさに想像していなかった反撃なのか甘い嬌声があがった。

 

「あ、んっ! くぅん♡ そんなに我慢できなかったの?」

「ローレンティーナ、も――だめだ……!」

 腰に添えた手に力がこもり、欲望に任せて突き上げた陰茎がひときわ強く脈打つとそれはローレンティーナの膣に注がれる。

 

「ぁ――はぁ! びくびくして……」

 ポンプのように汲み上げられる精液は肉壁の動きに合わせて搾り取られていく。根本から一滴残らず吸い出そうと腰を浮かせて、ゆっくりと腰を打ち付ける。はち切れんばかりに膨らんだ亀頭からは子宮めがけて精液を吐き出し続けていた。――だが、それでローレンティーナは満足できない。ドクターが息を荒くしている姿を見て、再び腰を持ち上げると執拗に腰を前後させる。

 

「ぁ、う……ちょっと、まっ……!」

「だって、まだ全然物足りないんだもの。一人で満足するなんてズルイわよドクター」

 子供のように頬を膨らませて、身体を擦り寄せながら腰を浮かせた。

 

「それともドクターは、私と“仲良く”してくれないのかしらぁ……」

「そ、そういうわけじゃ……なくて……」

「ならいいわよね! それっ」

「はうぅっ――!」

 ローレンティーナが容赦なく腰を動かし始める。それは互いの合意など意に介さず、自らの欲望を満たすためだけに相手を利用していた。こうなってしまっては、命の危険を覚えたドクターも抵抗せざるを得ないがいかんせん相手はアビサルハンター。そんなものなど無意味だと言わんばかりにローレンティーナは指と指を絡めて手を握る。

 

「……♡ あらぁ、かわいい抵抗ねドクター。そんな事しても無駄だとわかってるくせに♡ 私がちょっと力を入れたらどうなるかわかってないの?」

 その怪力を頼りにしているからこそこれまで戦場で信頼してきた。いざそれがこちらに矛先を向けられるとなると、死期すら悟れる。本人は軽く力を込めたつもりだろうが、すでに指が痛い。

 

「そうよねぇ、ドクターは聡明だもの。ならもう、自分がこれからどんな風にされちゃうかも……理解できる頭は残ってるわね?」

「――死なない程度にしてくれると、うれしい」

 脳がしびれる。思考が塗りつぶされていく。

 ローレンティーナの優しい声色が。ささやき声が。耳に吹きかけられる甘い吐息の何もかもが。今や自分がサメの餌食となる以外のすべてを奪っていく。

 

 

 

 ――再び室内に響く、激しく肉を打ち付ける音。

 愛液と精液が混ざりあって、雄と雌の濃厚な香りが室内に充満していく。

 髪を乱しながらローレンティーナはドクターの肢体を骨の髄まで味わい尽くしていた。

 その肌に噛みつき、歯型を残して満足気にしながら、どれほどそうしていたか。

 もはやドクターに動けるほどの気力も体力も残されておらず、まさに精根尽き果てる勢いで貪られていた最中、数回目になるローレンティーナの絶頂に再びペニスが締め上げられる。流石に最初ほどの勢いは失われ、その量も枯れ果てようとしていた。それでもまだ物足りなさそうにローレンティーナはドクターに覆いかぶさる。

 

「ドークター♪ もうおしまい?」

 ごきげんなローレンティーナの声になにか返事をしようとするも、息を整えることで精一杯のドクターは首を横に振ることでしか意思表示ができなかった。部屋に置いていたティッシュですら既に空にしているというのに。代わりにゴミ箱は満杯だが。

 残念そうにペニスを引き抜くと、収まりきらずに溢れ出す精液がドクターの股間を白く染めていく。互いに穢しあった痕跡を見つめて頬を赤らめる。さすがに少しばかり疲れたのか、ローレンティーナも息を荒くしていた。

 

「残念、もっと“仲良く”なりたかったのに……」

 名残惜しそうにベッドから降りると、次の瞬間――ドクターの部屋の壁がぶち破られた。扉ではなく、壁である。まかり間違ってもロドス艦内の通路からやるべき狼藉ではない。どのような手段を用いたのかは一目瞭然。

 爆薬でもなければアーツでもない、粉砕したのはただ己の腕力。

 アビサルハンター、スカジが大剣を握りしめて立っていた。

 

「見つけたわよ、サメ」

「あらシャチじゃない。何か用かしら。私今とーっても上機嫌なの♫」

 手を合わせながらニコニコと満面の笑みを向けるローレンティーナは全裸で、股から精液を垂らしながら恥ずかしげもなくスカジに向き合う。

 一瞬、呆気にとられた。なんで裸なのか、どうしてドクターの部屋にいるのか。何をしていたのか――様々な考えがよぎるが、答えは他にない。

 

「なにを、していたの?」

「陸のやり方でドクターともっと仲良しになってただけよ。ねぇ、ドクター?」

 ローレンティーナの髪で隠れていたが、ベッドで仰向けになったまま全裸で動かないドクターの様子は完全に死人に近かった。男性器も天を仰ぐどころかひれ伏している。

 部屋に漂う異臭に気づいたのか、スカジが眉をひそめた。だが、それ以上になぜか堪えきれない怒りが胸の内から沸き上がってくる。

 

「死んでないでしょうね」

「当たり前じゃない。それで何か用なの? なければ私、身体を洗いたいのだけれども……そうだわ! スカジ、あなたも今度一緒にドクターと親睦を深めましょ? いい運動になるわよ」

「なっ――、いや、私は、その……でも」

「まぁ当分使い物にならなさそうだけど」

 まるでお前の分はないぞ、とでも言いたげに。

 ローレンティーナはサメのように生え並んだ歯を見せて挑発的に笑った。

 

 ――スカジは、キレた。なんで自分がそんな感情を抱いたかはわからないが、とにもかくにもムシャクシャした。

 

「今、無性にカマボコが食べたい気分になったわ。龍門の料理人がいるしちょうどいいと思わない?」

「ちょっとやめなさいよね。ここドクターの部屋よ?」

 

 アビサルハンター同士の痴情のもつれによる戦闘は、グレイディーアの介入によって最小限の被害で抑えられた。

 ロドスのシステムエンジニア各方面には壊滅的打撃だったのだが。

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