※この作品はR-18です。

信頼度限界突破オペレーター(仮)   作:アメリカ兎

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ドクターがじめっとしたシャチと沢山仲良しするだけの話

 

 ――前回までのあらすじ。ローレンティーナがドクターを襲った。以上。

 

 

 

「はぁ…………」

 様々な形ではあるが、彼女は狩人としてよく知られる。以前は、名うてのバウンティ・ハンターとして。そしてアビサルハンターとして。今はロドスの前衛オペレーターとして。それと同時に、一匹狼であることも――そんなエーギル人、スカジは深い溜め息をつく。

 その原因が自分の同郷の仲間であることに頭を痛めていた。

 グレイディーアに関しては「穢らわしい――」とスペクターに吐き捨ててからというものしばらく口を聞いていないどころか顔も見ていない。

 おかげでこちらにあらぬ噂が流れている始末。

 曰く――エーギル人がドクターを襲った、と。それが果たしてどのような意味なのか、スカジには興味がなかった。ただ、ケルシーにはとんでもなく怒られた。クロージャにもだ。

 あの時は緊急事態だったということもあり、思わず力任せに壁をぶち抜いたのだが……それがいけなかった。

 

「あらぁ、元気がないわねシャチ。大丈夫かしら?」

「誰のせいだと思ってるのよ」

 自分とは別。隣の独房にはスペクターが監禁されていた。このような形だけの拘束、抜け出そうと思えば抜け出せる。無意味なものだが、それは形式上必要なことだとケルシーは言っていた。

 帽子を指に引っ掛け、くるくると回しながらスカジは冷たい懲罰房のベッドに腰掛けている。

 ――あの騒動の後、ドクターは医療オペレーターの手によって救助された。様々なことは伏せるとして、結果として過労と酷い筋肉痛ということで落ち着いた。言及しようとするロドス職員は誰一人としていなかったのが幸いしている。

 その張本人にして犯人であるスペクター(ローレンティーナ)はけらけらと笑うばかりだ。

 

「私のせいだとでも?」

「そうでなければ誰のせいだと?」

「んー……何を間違えていたのかしら……」

 何もかもだ、と強烈に言ってやりたかったがスカジは堪える。

 仮にも組織のトップを強姦しました、なんてバカな真似をなんでしてしまったのか。しかし、スペクターが当時着用していた修道服がこれまた幸いして「もしかすると彼女は夢遊病のようなものでドクターを求めてしまったのではないか?」という仮説が建てられた。自分たちがロドスから叩き出されていないのはつまり、そういうことである。

 

「スカジ」

「なによ、サメ」

「いやね、そんな邪険にしないで頂戴? 私だって反省してるわよ、ええ。これでも」

「はぁ…………それで。なに?」

 ほとほと呆れて何も言えないし、言いたくない。だが話を聞くくらいはしないと気が紛れない。

 

「ドクターと交尾してみない?」

「…………」

 死にたいのかこいつは? スカジは硬く握りしめた拳をどうすべきか思考する。以前の自分であれば躊躇なく壁をぶち抜いてスペクターをぶん殴っていただろう。だが今は抑え込むことができる程度に自分も成長しているのだ。うん、偉いぞ私。自分を褒めつつも拳を下ろす。

 

「なにそれ遺言?」

「あらやだ物騒ね。ふふ、別にそういうわけじゃないわ。私、やっぱり思ったのよ。ちょっとやり過ぎちゃったかもしれないけれども、仲良くするのは悪いことじゃないって。だから陸のやり方でドクターと仲良くしてたのだけれど……加減って難しいわね」

「……そうね」

「だ・か・ら、次はシャチの番。頑張ってちょうだい☆」

「サメ」

「なぁに?」

「後で一発ぶん殴るから、歯を食い縛る覚悟しておいて」

 

 ――スカジは釈放直後に全力でぶん殴って更に一週間追加で拘置された。あらぬ噂に尾ひれがまたひとつ。

 

 

 

 そして、ようやく自由の身となったスカジは以前にも増して一般オペレーター達から距離を置かれていた。別にどうでもいいのだが、それよりもぶん殴ったスペクターが変なことを吹聴して回っていないかどうかが気がかりで仕方ない。

 ふと、その時見慣れたオペレーターの顔が見えたので声をかけようとしたがこちらの顔を見るなり早足で逃げられてしまった。

 行き場のない手と、やるせなさ。全部サメが悪い。おのれローレンティーナ。

 

(……別にいいのだけれど)

 そういえばグレイディーアはどうしているだろうか。スカジはドクターの部屋に向かってロドスの通路を歩く。その途中、何か女性オペレーター達から小言を言われたような気もするが、一瞥しただけで小さな悲鳴と共に逃げられる。別にそんなつもりはなかったのだが……。

 

(あ、そうだ)

 ふと、思い立つ。スペクターのせいでドクターに迷惑を掛けてしまった。せめてなにかお詫びの品を持っていこう。うん、偉いぞ私――スカジは自分のことを褒めながらも、今度は購買部に向けて足を進めた。

 

 クロージャの経営している購買部に辿り着くと、人の顔を見るなり身体を強張らせる。何かしただろうか? そういう反応をされると流石に傷つく。身体的強度なら負けない自信があるのだが。

 

「クロージャ」

「ひゃっ!? どうしたの? 珍しいね、うちに来るなんて」

「そうね。大した用事でもないのだけれど……ドクターに差し入れを持っていこうと思ってて。何か良いものはない? お金なら持ってるわ。それなりにだけど」

「え、えー……いやまぁお金出してくれるっていうならこっちも文句はないけど。んー、ドクターへの差し入れかぁ……」

「こっちの方では差し入れに甘味を用意するって聞いたのだけれど」

 渋い顔をするクロージャが目を逸らしながら空っぽの棚を見せる。

 ――完売御礼の札が、でかでかと貼られていた。

 

「……というわけだから、ごめん」

「――は?」

「ひィん!? いやこればかりは仕方ないんだって! あ、じゃあドクターへの差し入れにちょうどいいのあるよ! ほらこれとかどう! 超強力強壮剤! 眠気覚ましと栄養剤も兼ねてるからコレ一本で元気ハツラツ!」

「……じゃあそれ貰っていくわね。幾ら?」

 クロージャはだいぶ値段を低く見積もってスカジに提供した。何故ならそうしなければ拳が飛んできそうだったから。アビサルハンターこわい。

 

「他になにかない?」

「え!? じゃあこれとか……」

 

 

 

 ――購買部を後にしたスカジはドクターの寝室に立ち寄った。お詫びの品も持って、扉をノックする。電子ロックキーの解除音を聞いてから、電子扉が開いた。隣の壁を見れば、一部が真新しくなっている。壊したのは他ならぬスカジだが。

 

「やぁ、スカジ。なにか用事?」

「ドクター、忙しかったかしら」

「ちょうど一段落したところだよ」

「……そう」

 帽子を直しながらスカジはドクターの机に小瓶を置いた。それとクロージャから半ば強引に取引したタブレット錠剤など。懐は少し寂しくなったが、特に使う予定もなかったので問題ない。

 

「これは?」

「サメ……ローレン……スペクターがあなたに迷惑を掛けたでしょ? そのお詫び、というか……」

「迷惑――――」

 ドクターが思い返し、顔を逸らした。スカジが眉をひそめる。

 

「どうかした?」

「いや、その……迷惑、というよりは、そのぉ……私にも責任がある、というか……」

 歯切れも悪い、しどろもどろになりながら淀んだ言葉遣いに――何故か、スカジは無性に腹が立った。誰に対して、とか。何に対して、とかはよくわからない。だが自分の胸の内側に確かに存在するわだかまりから、頭に血がのぼる。

 

「それで?」

「え」

「――それで? ドクターは。迷惑とかよりも、気持ちよかったわけ?」

「あ、いや……それは……」

「サメに襲われて、“仲良し”になって、いいわね。羨ましいわ。私の方が先に来て長いのに、私とは“仲良し”じゃないって?」

「ソンナコトナイデス……!」

「そう。じゃあなんで?」

「え”っ!?」

「私と“仲良し”になるのは嫌なの? サメとはあんなに“仲良く”してたのに?」

 気づけば、たじろぐドクターを前に自分が詰め寄り、身を乗り出していることにスカジが気づいた。バイザーの奥で目を泳がせ、困った顔をしているのが見える。それを見て、何故か自分の胸中が錨に繋がれたように、重く沈みこむ。

 

「…………ごめんなさい。貴方を困らせるつもりはなかったの」

「い、いや……私の方こそすまない……」

「……これじゃ私の方が迷惑ね」

 身を引いて、居心地が悪そうにスカジが帽子を目深に直す。そんな姿を見て、ドクターは何か話題を探そうと視線を泳がせる。そこで、すぐに目についたのは小瓶だった。

 

「そうだ、これ。ありがとう、わざわざ用意してくれて」

「……大したものじゃないわ。気にしないで」

「栄養剤かな。ちょうど補給したいと思ってた頃なんだ、気が利いてるね」

「無理に褒めなくてもいいわ」

 優しいドクターのことだ。落ち込む素振りを見せた自分を慰めようとしているのだろう。

 渡す物は渡した、さっさと自分の部屋に戻ろう――スカジはドクターの寝室から出ていこうとしたが、すぐに呼び止められた。

 

「スカジ、もう少し待っててくれないか。残りは書類を仕分けるだけだから」

「そこまで言うなら、もうちょっとだけ待たせてもらうわ」

「――ところでこれ凄い味したんだけど、なに?」

「え? それは確か、超強力な強壮剤よ」

「それで、こっちのタブレット錠剤は……」

「なんだったかしら……クロージャの説明なんて聞き流してたから。身体にいい物のはずよ」

 ベッドに腰掛け、ドクターの仕事が一段落つくのを待つ。

 帽子を脱いで、そのまま身体をベッドに預ける。

 スカジは仰向けになったまま、ぼんやり天井を見つめた。

 

(…………この部屋で、ドクターとローレンティーナが……)

 あの日の光景を思い出す。

 ――全裸のローレンティーナの肢体。汗を流すほど激しい運動をしていたのだ。汗ばみ、蒸れた身体を赤らめながら恍惚とした表情をしていた。性器から精液を滴らせて。

 

(……このベッドで、ずっと……)

 枕も、シーツも、ゴミ箱も。新品同然に交換されている。ロドスの物資も限られている以上、全部まるごと交換というわけにはいかなかったのだろう。薬品の匂いに混じって、嗅いだことのない匂いがあった。

 そうした行為に興味はなかったし、中身もよく知らない。だが、あんなに充実した顔のローレンティーナはあまり見たことがなかった。

 

 ――むにっ。スカジはなんとなく、自分の胸に手を伸ばした。

 

(少なくとも、小さくはないわよね……なんならサメよりも大きいはずだし……)

 髪の毛だってサラサラで自信もある。ローレンティーナに比べればストレートできめ細かい。負けていないはずだ。そんなことを、指で掬って雨だれのように垂らしながら考える。ならば何が悪いのか。自分に足りないものがなんなのかを考える。

 ドクターの方を盗み見ると、まだ書類が終わらないのか悩んでいる様子だった。

 

「ドクター」

「もうちょっと待ってて、スカジ」

「……おっぱいは大きい方が好き?」

 バサバサバサッ! ドクターの手から書類がこぼれ落ちる。

 

「ローレンティーナよりも私の方が大きいし、髪の毛だってサラサラで自信があるわ。それに私は身体も頑丈だし……何がいけないのか教えて?」

「ちょ、っと……待ってもらえないだろうか……」

「それに――アレよりも、使いやすいと思うわ」

 大切な仲間であることは間違いない。だが、それとこれとは話が別だ。

 

「ドクター……私じゃダメかしら」

「――――」

 どこか切なそうに、どこか寂しそうに、夜の海に響くさざなみのような穏やかな声でスカジが呟く。ドクターは書類を拾い上げてまとめると、机の上に置いてから深く息を吐き出した。

 

「私とは“仲良く”……してくれないの?」

「――――そんなことはない。けれど……」

「けれど?」

「その……いいんだろうか。ローレンティーナに続いて君まで……」

 コードネームではなく、本名で呼ばれたことにスカジの怒りのボルテージが溜まる。なぜか。

 

「じゃあ、こうしましょ――これはあくまでも“業務”ってことにしておけばいいわ」

「それは」

「ええ。それなら仕方ないわ。ロドスのオペレーターとして、貴方の“業務”をサポートするのも仕事の内よね? だからこれは、ただの“交流”よ」

 ベッドから起き上がったスカジがドクターに早足で詰め寄った。そして、首根っこを掴むなりベッドへ踵を返す。

 そのまま突き飛ばすと、ドクターがベッドの上に倒れ込む。すかさず押し倒してスカジは上から見下ろした。

 その胸の内側を、嫉妬の炎で焦がして。

 

「だから、ね……ドクター。貴方は何も気にしなくていいの。何も悪くないわ。だから遠慮しないで。私を“交流”の道具として、使ってくれればそれでいいのよ」

 

 

 

 ――生まれたままの姿になって、ベッドで仰向けに寝転がるスカジに対してドクターもまた同じように裸のまま覆いかぶさる。

 

「……安心して、ドクター。抵抗なんてしないから。そんなことしたら、怪我をさせてしまうでしょう? 備品を壊して慣れない始末書を書かされるのはもうウンザリだもの」

「――――本当に、いいの?」

「ええ。好きにして」

「……、なら」

「っ……」

 ドクターの手が、頬を撫でた。その手つきは優しくて、まるで怯える子犬を落ち着かせるようだった。確かに、怖くないと言えば嘘になる。なにせ初めての経験だ。戦闘よりも、未知への体験に対する不明瞭さが恐怖の原因と言えた。だが、ドクターとなら怖くないと思える。

 驚いて身体を強張らせるスカジに、あくまでも優しく手で撫でていく。

 

「……子供じゃないのよ?」

「なんだか、怖そうだったから」

「……サメはどうだったの?」

「あー……彼女は、その……なんというか、凄い乗り気だったよ……積極的で」

 それを聞いて、拗ねたのかスカジは唇を尖らせた。

 

「何か、してほしいことはある? なんでもしてあげるわ」

「……ずっと気になってたんだけど、スカジ」

「なに?」

「……もしかして、スペクターに嫉妬してる?」

「だったらなに。悪いのかしら」

「だからって、ここまでしなくても……」

「……こうする以外にどうしろっていうの」

「もしも君が、自暴自棄になってこうした行動に及んでいるのなら――」

「ケルシーみたいな言い方しないで」

 目頭が熱くなる。自暴自棄? そんな風に思われるほど、自分には似つかわしくないだろうか。スカジは思わずドクターを睨みつけていた。

 好きでもない相手にこんなことしない。それに誰かにこんな風にしたのもこれが初めてだ。何もかも初体験で、どうしたらいいのかわからないのに、それでも考えて、これが精一杯なのに。

 胸が苦しい。目が潤んで、涙で滲んで何も見えない。ドクターの顔がどんな表情をしているのかも、今は見たくなかった。

 スカジがドクターを押しのけて部屋から出ていこうとベッドから起き上がる、しかし、その手をドクターは離さなかった。

 払い除けてしまおうかと考えて、すぐに思い悩む。その程度に自分はどうしようもなく惹かれてしまっていたのだな、と。スカジは我が身のことながら驚く。

 

「離して。貴方を怪我させたくないわ」

「すまない」

「なんで貴方が謝るの? 何も悪くないじゃない」

 悪いのは全部サメだ。その誘惑に乗ってしまったドクターになんの罪があるのか。断ればきっとひどいことをされたはずだから。

 ドクターが手を引き、再びスカジを引き止める。出ていこうとしていた足が止まり、一歩も踏み出せない。頬を伝う熱い滴が止まらない。

 

「君を泣かせているのだから、私が悪い」

「ッ……これは」

「スカジ」

「……なによ?」

 少しだけ力を込めて、スカジの手を引く。そのままベッドに腰をおろして、抱き寄せる。すぐさま離れようとして、それでも力加減がわからないスカジはお互いの心音を重ねていた。子供をなだめるように抱きしめられて、頭を撫でられる。

 

「君にしてほしいこと、今ならひとつだけ思いついた」

「言って、ドクター」

「このまま、抱かせてくれないか」

「……なら私からもひとつだけお願いしてもいい?」

「聞こう」

「……あなたの好きにして」

「――わかった。そうさせてもらう」

 不器用なのはお互い様だった。それでも手探りで歩み寄ろうとしてたのは、ドクターも同じだったのに、自分の気持ちと感情ばかりぶつけてしまった。スカジは身体を預けて、しばらくそのまま大人しく頭を撫でられる。

 

(……温かくて、気持ちいい)

 眠気を誘う人肌の温もりに腕を回してしがみつくと、ドクターの肩に頭を預けた。

 そうして抱き合って、どれほど経っただろう。お互いの素肌が触れているのも気にならないほど密着していたドクターが、まっすぐ目を見つめてくる。

 

「スカジ」

「ん? ……、ん」

 顔を近づけてきたかと思うと、そのまま頬に短く唇を当てた。何度か軽いキスを繰り返し、再び見つめ合ってからドクターは唇を重ねてくる。スカジをそれを抵抗なく受け入れ、ファーストキスの感触に戸惑っていた。不快感というものはない。むしろ、心地よい。思考は落ち着くが、身体が落ち着かないという状態にもどかしそうに身体を震わせる。

 

「……舌、入れてもいい?」

 ドクターの言葉に、スカジが小さく頷いた。口を開けると、生暖かい物体が間もなく入り込んでくる。粘液同士が混ざり合う音を立てて絡み合う。慣れない舌の動きでたどたどしくドクターの舌と絡ませるが、思った以上に息苦しい。

 

「ん……ぷ、は……これ、結構大変なのね……ん、っちゅ……ぁ……」

 息継ぎをしながら何度も何度も、触手のようにディープキスを繰り返す。自分の下腹部に当てられる固い熱に身体を強張らせて。

 

「どく、たぁ……気持ちいい? 私と、キスをするの……」

「ああ……スカジのことを抱きしめながらこうしていると、疲れもどこかに飛んでいってしまう」

「そう……嬉しいわ……もっと、私で気持ちよくなって……?」

 熱い吐息と共に、再び熱い抱擁と接吻を交わす。今度は自分から求めるように。

 思考が溶けていく。ぼんやりと、脳が霞んでいく。なのに、身体は自然と動いてしまう、まるでそう作られたかのように。

 ドクターの背中に手を回して、腰を押しつけて。このままお互いの身体が溶け合ってひとつになってしまえばいいのにと、スカジは少しだけ力を込めて抱きしめる。

 

 何度も舌を絡ませ、唇を食みながら繰り返したディープキスの隙間から、涎が顎を伝う。

 喉を鳴らして唾液を飲み込むたび、栄養剤の味がした。だが、それも不快ではない。それどころか甘く溶ける味わいにスカジは自分から舌を絡ませていく。

 ドクターが息継ぎのために少しだけ顔を離すと、お互いの舌先から糸が引いた。互いの吐息すら感じられる距離で見つめ合い、ごくりと喉を鳴らす。

 

「ドクター、私……なんだか……」

「どうしたんだ?」

「……おなかの辺りが、すごく……むずむずするわ……ちょうど、ドクターのが当たって――」

 熱く滾る陰茎は期待に満ちて怒張している。スカジの下腹部に擦り付けると、熱く湿った感触にドクターが視線を向けた。

 期待の裏返しなのか、秘部から愛液が垂れている。

 

「……そんなに見られると、はずかしいのだけれど。貴方になら、いいわ。好きなだけ私のことを見て?」

「スカジの身体、すごく綺麗だ」

「んっ――!」

 ドクターの手が背中を撫でて、そのまま肉付きの良いお尻を揉み始めた。手のひら全体で感じとるような触り方には流石にスカジも恥ずかしくなったのか、小さく声を漏らす。身体をよがらせながらも耳元で小さく喘ぎ声を繰り返す。

 鼓膜を優しく叩くスカジの声に理性が削られていくのを感じつつも、ドクターは手を止めることができなかった。

 指先まで感じるハリの良さと弾力に病みつきになる。その度にスカジは甘い吐息を耳に吹きかけてくる。

 

「……ね、ぇ。ドクター? あの、ごめんなさい……その……あんまり焦らさないで……?」

「もう少し我慢――は、ちょっと私もできそうにない……スカジ、ちょっとだけ乱暴にするかもしれないが」

「かまわないわ。えっと……こうしてあげたらいいのかしら?」

 スカジが手を伸ばし、ドクターの陰茎をさする。そのまま自分の割れ目にあてがい、腰を前後させた。たったそれだけのことだが、腰が勝手に動きそうになる。熱く湿った秘部を何度も先端に擦りつけて、その度にドクターが声を押し殺した。

 

(ドクター、気持ちよさそう……)

「っ……――スカジ、挿れてもいい?」

 これ以上焦らされると、こちらの気が触れてしまいそうだ。ドクターが亀頭を秘部に押し当てると、窮屈な入り口は異物を拒むようにピッタリと閉じられている。それを無理やり広げる形で押し込むとスカジが苦しそうな声を挙げた。

 

「んっ、んっぅぅ……!」

「痛かったら、すまない……!」

「いえ……だいじょうぶよ。ドクターのこと、もっと感じさせて……? もっと、奥まで貴方を感じたいの――だから、来て……」

「スカジ……!」

 

 ――理性の糸が、軋む音が聞こえる。鼓膜から脳内を揺らしてくる優しい囁き声は、異性の獣性を開放するに十分な効果をもたらした。

 衝動のままに突き上げた陰茎が、熱い肉の壺に包まれて悦に浸る。染み出してくる潤滑油は赤く滲み、二人の太ももを伝う。自分の体内から感じる鋭い痛みにスカジの目尻に涙が浮かんだ。どれほど物理的な強度に富んだ頑丈さであっても、内部からの痛みは痛い。

 

「いっ――!」

「う、っく……! スカジ、ごめん……!」

「――ぁ、はぁ、はぁ……! ドクターの、すごく熱くて……痛いわ……でも」

 スカジは、自分のお腹を撫でる。強引に侵入を果たした陰茎の形をより感じるように、手で軽く押した。より強く密着してくる膣の内部が、はっきりと伝わってくる。磯巾着のような無数のヒダに絡みつかれてドクターの背中を快楽が駆け上がった。

 “ウットリ”と、恍惚とした表情を見せるスカジが吐息を漏らす。

 

「でも――なんだか、すごく満ちた気分……痛いのに気持ちよくて……こんなの初めて」

 今度こそ、理性の切れる音が聞こえた。

 ぐっ、と。ドクターが力を入れる。それを合図に、スカジの腰を掴んだ。

 

「……? ドク、タ、ぁ――ッ!?」

 息を荒くして、不意打ちのようにドクターは腰を突き上げる。半ばまで入り込んで馴染みつつあった肉棒は更に奥まで押し込まれ、スカジの知らない箇所にまで到達した。

 

「ぁ、はぁ――!」

 身体の中にねじ込まれた肉棒の滾る欲望は留まるところを知らず、腟内で痛いほど熱を放っている。呼吸を一瞬忘れるほど強烈な衝撃だった。ゆっくりと引き抜かれていくと、熱波が引いていくのに合わせて息を整える。しかし、それも束の間。再び自分の膣を陰茎が広げていく。

 痛みと一緒に心地よさがないまぜになって押し寄せてくる。それを処理する暇もないほど情緒がかき乱されていくスカジに、ドクターは一心不乱に腰を打ちつけていた。

 

「あっん! ドク、ター! どくたぁ、そん、なっ、はげしく……!」

「ふっ、うっ……! スカジ、くっ……! こんな、すごくいやらしい身体で我慢なんか――できるはずないじゃないか……!」

「ごめ、んぅ……! ごめ、なさ――! あ、あぁっ!」

 視界いっぱいに揺れる豊満な胸を見つめながら、ドクターはスカジの身体に性欲をぶつける。ローレンティーナの時は、されるがままだった。その腹いせと言わんばかりに乱暴な腰使いでスカジの膣をかき乱す。

 あふれる朱混じりの蜜に白みがかかる。一方的に身体を使われているにもかかわらず、スカジは確かにその行為に拒否感もなく、むしろ快感を覚えていた。

 

「ぁ! んっ! 必死に、動いてるドクター。かわいいわ……!」

「スカジも……! まさか、君がこんな風に……! っ、いやらしいなんて思わなかった……!」

「ん、んぅ! いやらしいだなんて、そんな――!」

 腰を掴んでいた手を離し、身体を抱きしめる。豊満な白い果実に頭を埋めて、ドクターは胸いっぱいにスカジの匂いを吸い込む。

 

「っふー……すー、はぁ……!」

「そん、な。嗅がないで……あまり、良い匂いじゃないでしょう?」

「そんなことない」

 即座に否定し、素肌に舌を這わせるドクターの頭をスカジが優しく抱きしめた。子供をあやすように髪を撫でて下腹部を満たす熱の塊に火照る身体は腰が砕けそうになる。尿意にも似た感覚がこみ上げてきて、その羞恥を堪えるだけでドクターの陰茎はますますキツく締め上げられた。

 

「っく……、スカジ。いい匂いするし、締めつけはすごいし……エッチにも、こんな積極的だなんて――!」

「どくたー、気持ちいいの? 私の身体で、そんなに気持ちよくなってるの? んっ、もっと……もっと、きもちよくなって? あなたのこと、全部受け止めてあげるから――だから……!」

 スカジの声が、耳から脳まで響く。欲望を堪えていた最後の関所が崩れていく気がした。

 

「スカジ、ごめん――!」

「ドクター……? なんで謝っ――、ぁ……!」

 どぷっ――! いっそう強い脈動を、体内から感じたと思った直後……スカジの膣内で陰茎が暴れた。それを抑えつけるように膣が引き締まり、じわりとした熱が自分の中に広がっていくのを感じていく。

 

「んっ……ぁ……、ドクター……もしかして、あなた……射精、してるの……?」

「ぅっ――! スカジ、そんなこと、言わないでくれ……ぁ、まだ出る――!!」

「えんりょしないで、好きなだけ出していいのよ……いっぱい、射精して……?」

 射精を促されれるがままに、ドクターは何度もスカジの奥にまで挿入しては欲を吐き出す。まとわりつく肉の壁が根本から吸い付いて搾り取るように蠢く。

 勝手に腰が浮いてしまう。自分の頭とは別に、身体がスカジのすべてを求めてしまっている。陰嚢に溜め込んでいた精液を全部吐き出したのかようやく落ち着いてきた。

 ゆっくりと腰を引いて初体験を終えたスカジの秘部から陰茎を抜くと、わずかに間を置いてから白濁液が垂れてくる。それを見つめて、切なそうな顔を見せていた。

 

「せっかく、ドクターが私にくれたのに……もったいないわ」

「っ……どうしてそう、君はいちいちエロい言い方をするんだ……?」

 ドクターの脳裏に浮かぶ普段のスカジの姿と言えば――味方と足並みを揃えることなく、大剣を振るい、独断で敵を蹴散らす姿。敵の返り血など気にする様子など見せず、淡々と嵐のように暴虐を尽くす。

 そんな彼女が今、自分の目の前であられもない姿を晒して、こんなにも肉欲に溺れている。それがたまらなく背徳感を覚えさせる。このまま二人で快楽の海に沈んでいきたいとさえ思う。

 

「はぁ……ぁ、はぁ……ん……ねぇ、ドクター……私の身体、気持ちよかった?」

「……もちろん」

「そう……♡ うれしいわ、貴方の力になれて……ねぇドクター……このまま――」

 スカジの後に続く言葉を遮るように、突然アラームが鳴り響いて二人の身体が跳ねた。心臓まで飛び出すかと思ったが、それはドクターが用意していた業務アラームだった。頭から冷水を浴びせられた気分になりながらも、遠くに置き去っていた理性が戻ってくる。

 

「ぁ、ああ……そうだ。業務に遅れが出ないように、タイマーをセットしていたんだった……アーミヤに書類を届けてこないと……」

「そう……なの……?」

 寂しそうに呟くスカジが、眉を寄せて見つめてくるが……ドクターはなけなしの理性で業務を優先した。

 ぐっと、揺らぐ理性を揺り戻してドクターがスカジをベッドに寝かしつける。

 

(部屋を出る前にちゃんとシャワーを浴びておかないとまずいな……)

 ドクターが慌ただしく内線でアーミヤに少し遅れる旨を連絡して、それからスカジに目配せした。当の相手はベッドに寝転がってものさびしそうにしている。子猫のように構ってほしそうな目をしていたが、そんなことをしていたら大目玉を食らうのはどんなバカでもわかっていた。

 

「スカジ、その……また今度……」

「……ドクター」

「ん?」

「……えっ、と……ね……? 私も、こんな気持ちになったのは初めてなの……だから――また、明日来てもいいかしら……?」

「あ、明日!?」

「……だめ?」

 

 ――その言葉には、到底抗えない誘惑が込められていた。

 

 

 

 ……それからというもの、スカジは艦内では普段通り一匹狼として振る舞いつつも、ドクターの寝室へと入り浸る。足を運ぶ理由は様々、報告書の書き方、職員への愚痴、購買部の品揃えがどうだのと、取るに足らない話を持ち込んでくるが――本来の目的はもっと、浅ましい。

 

「んっ……っぷ、ぁ……これを、しゃぶればいいの? それくらいできると思うわ。はい、ドクター……あーー……」

 手が離せない業務中であってもスカジはドクターの身体を求める。サインを入れるだけの単調な業務の傍ら、椅子に座ったままのドクターは下半身を露出させていた。かがみ込んだスカジが口を大きく開けて陰茎を頬張る。舌を使ってまんべんなく唾液で濡らしていくと、間もなくして血流が集中して怒張していく。

 

「ぁ……♡ ん、ふふ……また、元気にしてくれて嬉しいわ」

「す、スカジ……その、できれば手短にお願い。こっちはちょっと長引きそうだから」

「そう? じゃあ私も、ちょっとだけ遊ばせてもらおうかしら……」

「遊ぶって……痛くしないでくれると助かるよ……」

「安心して。貴方を傷つけたりなんかしないから」

 サメと違って。スカジはそう自分の中で付け足しながら、陰茎に頭を近づける。

 裏筋をゆっくりと舐めあげて、先端を舌先で愛でていく。膨らんだ亀頭の裏側までじっくりと唾液で濡らしていくと、顔を離した。愛撫を中断させられた陰茎は物欲しそうに震え、鈴口からはじわりとカウパーを滲み出させる。

 ドクターが手元の資料を仕分けていくが、自分の股間に突き刺さる視線の熱に負けて手を止めて見下ろした。

 

「…………」

 スカジは何もせず、ただ根本に手を添えて見つめている。自分が見られていることに気づくと優しく微笑みながら朱く瑞々しい唇を陰茎に近づけていく。だが、決して口づけをせずに吐息を吹きかける。

 

「ふぅー……」

「はぅっ……!」

「……かわいいわ、ドクター」

「ちょっと、そういう意地悪は感心しないな……!」

「あら、ごめんなさい。それじゃあ……これで、許してもらえるかしら――あ、っむ……」

 やおら、スカジが口を大きく開けてドクターのペニスを頬張った。舌全体を使って裏側を包みこみながらも喉奥まで使って捕食していく。

 根本に添えた手で皮を押さえて、何度も頭を前後させる。

 

「んっ、っぷ、はっ……! ふぁ、あっむ……!」

「ぅ、お……!」

 卑猥な音を立ててフェラチオを繰り返すスカジの目が、ドクターの反応を窺いながら見つめていた。その赤い瞳から目を離すことができずに行為を見守る形となってしまう。

 資料を整理する手が止まり、スカジの頭に手を置いて引き離そうとするが、それでもスカジはやめようとせずにフェラチオを繰り返す。

 

 じゅぷっ、じゅぽっ――! 尿道のカウパーを吸い上げようと、いっそう強烈に吸いついてくるスカジの唇の柔らかさに、口内の温もりが自分が挿入しているのかと錯覚させてくる。

 

「っ、スカジの唇、柔らかくてきもちいい……! あ、やば……スカジ、もう出そうだから……! このままじゃ……!」

「んむ……? ぁぁ、は――。はぁー、はぁー……んっ♡ ドクターの、すごいビクビクしてるわ……根本も、こんなに膨らんで……射精したいの? それとも……したくないの……?」

 したくない、と言えば嘘になる。ただ、このまますぐに射精して終わらせてしまうにはあまりに勿体無い気がした。

 スカジは喉を鳴らして生唾を飲み込み、大きく口を開けて舌を出している。熱く白い吐息が艶めかしく、艶やかに綺麗な口を彩っていた。喉の奥の小さな口蓋垂が粘液で妖しく光っている。

 

「――――スカジ、このまま口に出させて」

「口に……?」

「そりゃ、あんな状態で止められたら我慢なんてできないから……いいよね?」

「……ドクターがしたいなら、いいわ」

 ドクターは自分の陰茎を押さえながら、スカジの口内へ押し込んだ。再び温かい粘膜に包まれていき、寸止めされていた性欲が再燃する。

 今度は頭を押さえつけて自分の手で使う。性欲を解消するための道具のように。

 苦しそうなスカジだが、そこに抵抗の意思は見せなかった。舌を出して、喉の奥まで使ってドクターの陰茎を飲み込む。

 

「はぁ、はぁ……! スカジ……! そろそろ、射精しそう……! そのまま……!」

「んっ、っぐぅ! ぷ、んぐっ……! ぁ、っむ! っぷ、ぁ……!」

「うっ――スカジ……!」

「ん、ぅ? んんんぅぅ……――!?」

 本能的に背中を丸め、ドクターはスカジの頭を股間に埋めて抱える形で陰茎から吐き出される精液を喉に直接注ぎ込んだ。一度に全てを飲み込むことができないのか、精液が逆流して口内に溜まっていき溢れ出す。だがそれでもドクターの射精が収まる様子はない。

 

「スカジ……! うぅ……!! やば、それ止まらな……!」

 裏筋を舌で舐められているせいで射精が止まらなかった。二度、三度と陰茎が震えて残っていた精液を搾り出すと、ようやく収まる。

 

(苦しくて、熱くて……生臭いわ……でも――)

 ようやく口内から陰茎を引き抜くと、スカジが咳き込んだ。口を手で押さえているが、その指の隙間から白い精液が垂れてくる。

 

「げほ、げほ……! っ、……!」

「スカジ、大丈夫か? その、すまない……こんなに出るとは思わなくて……」

「ん、っ……ぁ……ぺろ……ん、っちゅ……」

 スカジはしきりに垂れた精液を舐め取り、ドクターの股間も濡れているのに気づいて顔を近づけると舌を這わせた。

 

「ぅ、お……出したばっかだから、そんなすぐには……スカジ、なにして……!?」

「んっ、はぁ……なに、って……だって、あなたが私に出したの、こんなにこぼしたらもったいないじゃない? だから、こうして……んぅ……」

「……おいしい?」

「ぺろ……ん、おいしくはないわ……不味いくらいよ」

「なら」

「……でも」

 “とろん”とした顔で、スカジがドクターを見上げる。

 

「でも、あなたのだから……嫌じゃないわ」

「…………」

 そんな健気なスカジの頭を撫でると、嬉しそうに目を細めていた。

 

「そうだ。そういえばこの辺に……」

「? ドクター、それは?」

「昨日君が買ってきてくれた錠剤」

 まだ封を切ってなかったタブレット錠剤を開けて、ドクターはそれを一錠ずつ与える。念のため水と一緒に飲み込んでから、台紙の成分を流し見た。

 成分としては、滋養強壮以外にも様々。睡眠の質を改善、腸内環境改善……おそらくクロージャが昨今の流行を取り入れた錠剤を仕入れたのだろう。味らしい味はなかったが、風味だけはほんのりと感じられた。率直に言って、まずい。

 スカジがペタンと座り込んだまま見つめているが、どこか落ち着きがなさそうにしている。

 

「スカジ……?」

「……その、なんだか。さっきから、ムズムズして……ドクター、診てもらえる?」

 立ち上がり、ドクターの前に自分の股間を差し出すスカジ。内太ももの白さに目を奪われるが、それ以上に籠もった女性の芳醇な香りにドクターが思わず唾を飲み込む。ズボン越しにでもその熱が感じられる。

 

「どれどれ……少し、触るよ」

「ん、……っ!」

 ショートパンツの上からスカジの秘部を刺激してみる。チャックの固い感触、しかしその内部からの熱は確かに指に伝わってくる。僅かな隙間から指を忍ばせて秘部をなぞるように触れてみれば指先に湿り気が感じ取れた。

 

「濡れてきてる」

「……こんなの、初めてだわ」

「スカジも興奮してた証拠だ。変なことじゃない。もうちょっと触らせてもらうよ」

「んぅ……」

 悩ましい声を漏らし、スカジはドクターに秘部を愛撫される。秘部の入り口をなぞるように、ゆっくりと指で撫でられて吐息がこぼれた。

 指先をしっかりと湿らせてから膣口を擦ると、腰を浮かせて反応を見せる。見えないだけに、指先からの感触だけで刺激するのは興奮した。徐々に溢れてくる愛液の熱が伝ってくると、ドクターは手を離す。

 

「……ぁ、ぁ……はぁ……どくたー……?」

「――スカジ、脱がせるよ」

 スカジが頷いて、同意を得たことでドクターはズボンのベルトを外す。そしてチャックを下ろしていくと、焦らすように下ろしていく。飾り気のない白いショーツがスカジらしいと思いながらもドクターは股間を露わにさせた。

 

「……、ふぅ……ふー……♡」

「……綺麗な色をしてて、かわいいな」

「ぁ、ありがとう……」

 陰毛の生えていない綺麗な秘部はじっとりと湿り、柔らかな大陰唇は潤いを見せている。指で開くと、綺麗なピンク色の小陰唇が口を開いた。その中に隠れていた膣口は何度も口をすぼめて寂しそうにしている。

 ドクターは小陰唇をなぞり、外皮に隠れた陰核を指先で撫でた。すると、スカジの腰が跳ねる。

 

「ん、っ――」

「痛かった?」

「いたくは、ないわ……ただ、その……びっくりしただけよ。つづけて?」

 スカジに促されるままにドクターは指先をしっかりと愛液で濡らし、下から陰核を押し上げた。触れる度にスカジの腰が浮く。

 

「スカジのクリトリスは、小さいのに良い反応をする」

「んぅ、ふっ……!」

「スカジ、自分で広げてみせてくれるか?」

「ぇ……? こ、こう……?」

 机に座り、ズボンを脱いでからスカジは自分の指で秘部を露出させた。ドクターは片手でスカジの陰核をつまみ、もう片手で膣口に指を侵入させる。

 すでに一度は異物を受け入れたにもかかわらず、その中は窮屈に感じるほど口をすぼめていた。中指を挿れて、膣内を弄る。

 

「スカジの中、ぎゅうぎゅうに締めつけてきてる」

「どく、たぁ……! ひ、っう! んんぅ!」

 ちゅくちゅくといやらしい音を立てて愛液をかき混ぜながらスカジの肉壁を指で撫でていくと、ヒダが指の腹に絡みついてきた。

 

(そういえば……)

 ドクターはふと、性器の知識を思い出す。

 スカジの膣内、その天井を指で押し上げながら付け根まで挿入していく。感触の違う内部の構造に感心しながらゆっくりと引き抜いていくと感触の違う箇所を見つけた。そこに触れた瞬間だけスカジの腰が浮く。

 

「っ~~!」

「スカジ、ここ?」

「ドクター、そこ……ん、そこ……! どくたぁ、ダメ……!」

 じっくりと。ゆっくり、舐めるような動きで指を前後させる。円を描くようにかき回すとスカジの口から甘い嬌声が漏れた。陰核をつまみ、優しく擦ると腰が激しく跳ねる。

 

「ぁ、んっ! そこ! やめ、ドクター……! なんか、変になっちゃ……、っ!!」

「どんな感じ? 痛くはなさそうだけど」

「もれ、ちゃ……! だ、め……!」

 キツい締めつけはスカジが尿意にも似た感覚を堪えているからだろう。ドクターは天井を押し込みながら指を引き抜く。

 

「ッ~~~~……!!!」

 腰を震わせ、激しく痙攣させながら声を押し殺していた。陰核も勃起して苦しそうに震える。ドクターが手を離すと、スカジが深く呼吸を整えた。

 

「ぁ……ぁー……は、ぁ……はぁ、はぁ、あ……っん……ふ、ぅ……!」

「…………」

 愛液がとめどなく溢れてくる。膣口が震えて涎を垂らし、濃厚な匂いを漂わせた。ドクターも本能的にその光景に性的興奮を覚え、それが絶頂に達しそうになっている証拠に一度は精を吐き尽くした陰茎が再び天井を仰いでいる。

 スカジもそれに気づいたのか、汗で張り付いた前髪を手ぐしで整えながら微笑む。

 そのまま指で大陰唇を広げて見せつけながら無防備な下半身をドクターに見せつける。

 

「……♡ ドクター、挿れて……?」

「スカジ……じゃあ、お尻をこっちに向けて」

「お尻? ん、っ……これでいい?」

 机に寝そべり、スカジはドクターに向けてお尻を突き出した。腰を掴まれて、すぐに膣に亀頭が押し当てられる。

 

「ぁ♡」

「挿れるよ、スカジ」

 濡れそぼる秘部は待ち望んでいたとばかりに陰茎を飲み込んでいく。前回よりもスムーズな挿入に驚きながらも、その中の吸いつきは衰えるどころかフィット感が増していた。腰を抱きかかえながら打ちつけると、スカジの身体が跳ねる。

 

「ん、ぅ!」

「君の身体は、本当に全身綺麗でそそるな……!」

 長く綺麗な髪を手で掬い、その匂いを嗅ぎながらドクターはスカジを後ろから激しく突く。錠剤の成分が効いてきたのか、陰茎が痛いほど勃起しているのが自分でもわかる。

 

「スカ、ジ……スカジ、いい匂いだ……」

「ぁ、ん! ドクターの、すごく熱いわ……!」

 細い腰を掴み、自分の欲望のはけ口のように腰を振り続ける。スカジの身体は愛撫で敏感になっているのか、乱暴な腰使いをされてもキツく締めつけたまま亀頭を余すところなくしゃぶり、絶え間なく射精を促してきていた。

 

「ドクター、射精したくなったら、出して……! あなたの、全部欲しいの……!」

「く……! スカジ……! そんなおねだりするなら、遠慮なく中に出すぞ!」

(あっ、んっ! わたし、ドクターに犯されて……こんな、乱暴なのに――気持ちよくなって)

 胸のボタンを外し、ドクターが手を突っ込むと胸を鷲掴みにする。手に収まらない豊満な胸を揉みしだきながらも腰を打ちつけて奥まで陰茎を挿入させていく。子宮に直接注ぎ込もうと膣奥に何度も亀頭を擦りつけ、根本が膣口で締めつけられ、その内部がまるで別な生き物のように蠢く。

 全身で精液を搾り尽くそうというスカジの身体に、ドクターの脳裏に浮かんだのは一心不乱に肉欲を貪るスペクターの肢体――自分に跨がり、心底楽しそうな表情で腰を振っていた。

 相手の身体に情欲をぶつけるのは、きっとこんな征服欲と優越感に満ちた筆舌に尽くしがたい快楽だったのだろう。今ならあの時のローレンティーナの気持ちがよくわかる。

 

「――! スカジ、出る――!!」

 スカジのことなど意に介さず、ドクターはただその身体を性欲の解消のために使う。

 容赦なく子宮に向けて精液を吐き出す。身体を抱きしめて、ドクターはスカジの匂いを胸いっぱいに吸い込みながら代わりに自分の匂いを擦り付ける。

 

「ぅ、お……スカジの中、精液搾り取ってくる……!!」

「んぅぅ! ドクターのが……注がれて……!」

 膣の中で跳ねる精液の熱さにスカジは恍惚とした表情で余韻に浸る。背筋を快楽が駆け抜け、下腹部に熱が灯った。愛おしむように手を添えると、ドクターの顔をじっと見つめる。

 

「ドクター、もう満足……?」

「……、」

「我慢、しなくていいのよ。ね、ドクター……もっと、して……?」

「――スカジっ」

 

 

 

 ――抵抗なんて、しようと思えばいくらでもできたはずだ。それなのにスカジはそんな素振りひとつ見せることなく、身体をベッドに放り投げてされるがまま性欲を受け止めている。だがドクターはそんな魅力的な誘惑を振り払うことができずにいた。

 気がつけば、こうして日を改めて彼女の肢体に性欲をぶつけている。

 口も、秘部も、胸も。全部に精液を吐き出した。サラサラで自慢の髪の毛だって汚した。それなのに彼女は身なりを整えれば、いつものすました顔で艦内を歩く。

 そんなスカジに対する恐怖が勝るのか、普通の職員は声をかけようともしない。業務上の連絡事項だけで済ませている。

 

 ……確かに、最初こそスカジは性的な知識は有していたものの、経験が圧倒的に不足していた。だからこそドクターにされるがまま。流されるまま、言われた通り、命令されるがままに動いていた。人形のようだったが、狩人は学習する生き物だ。

 どうしたらドクターが悦ぶか。何をしたらもっと精液を効率的に搾り取れるか。どんなことをしたら扇情をかき立てることができるのか学習した。だから、ドクターが疲れている時には自分から動くのが最も効果的なのも理解している。

 それでも日々の激務で体力の消耗が激しい時にはスカジが購買部に足を運んだ。

 

「……クロージャ、いいかしら?」

「お。やっほー、また来てくれたんだ。なんか最近はよく来てくれるね?」

「理性剤はあるかしら。ドクターが在庫を切らしたみたい」

「あー……あるにはあるんだけど医療部からキツく言われてるんだよね」

「なら代わりのものは?」

「ないわけじゃないけど」

「そう。見せて」

「理性剤というかー……試薬品みたいな」

「ドクターが元気になるならなんでもいい」

 クロージャが言うには、産地がどこだの、効果がどうだの、何が原因で出回らないだのと御託を並べられるがスカジは右から左に聞き流して代金を支払うと購買部をそっけなく後にする。

 

「――あー、まぁいいんだけど。毎度ありー」

 クロージャもまた、商品を売買する代金に間違いが無ければ文句はなかった。せめてもう少し愛想がよければ、とも思うが。

 

 

 

 ――スカジがロドスの通路を歩いていると、前方から見慣れた顔が見えた。

 まるで踊るように鼻歌を口ずさみ、上機嫌な様子で軽やかな足取りと共に姿を見せたスペクター……ローレンティーナは、スカジの姿を見るとにこやかな笑顔と共に近寄ってくる。

 

「あらぁ。ご機嫌みたいね、スカジ」

「貴方もね、スペクター。どうしたの」

「最近、陸の映像作品を観るのが愉しいの。中々面白いのよ?」

「そう」

「……あら? へぇ~……ちょっと失礼するわね、スカジ」

「なに?」

 すんすん、と。少しだけ顔を近づけて鼻を鳴らす。

 

「どうかしたの」

「ふふ、うふふ……スカジも、随分とドクターと“仲良く”なったみたいで私も嬉しいわ」

 ――以前であれば、拳の一発くらい見舞っていたが今はそれほど頭に来ない。癪に障るのは変わりないが。

 

「そうね。あなたよりも仲が良い自信はついたわ」

「――そ~ぉ? じゃあドクターに確かめさせてもらうわね」

「は? ちょっと、なに、確かめるって……スペクター?」

 スペクターはスカジの手を取って、心底嬉しそうな顔を見せながらロドスの通路を急ぐ。

 当然ながら、向かった先はドクターの寝室だ。

 

 

 

「ごきげんいかがかしら、ドクター♪」

「……ス、スペクター? なんでスカジと一緒に?」

「あら、当然でしょ? だって私達、仲間だもの。ね、スカジ」

 ドクターの視線は、当然スペクターにつれてこられる形で部屋に入ってきたスカジに向けられる。その問いかける視線に、帽子を目深に被り直して遮った。シャチは狡猾。

 

「成り行きよ……」

「ドクター、私とっても嬉しいのよ? こうして、積極的に交流を深めてくれて。ええ、とっても。だけどひとつ問題があるの」

「問題……?」

「ええ。取るに足らないことかもしれないけれども……なんていうか、こう……私とスカジ、どっちのほうが貴方と“仲良し”なのかしらね?」

 ゾッとした。ドクターの背筋を悪寒がはしる。脳裏によぎるのは、あの快楽地獄。

 その様子に気づいたのか、スペクターが目を細めて微笑む。

 

「最近観た陸の映像作品には、複数の男女で交わる物もあったから試してみたかったのよねー♡」

 だから誰だ艦内にアダルト映像作品を持ち込んでいるのは――とはいえ今となってはドクターも強く言えなくなってしまった。スカジはスペクターが何を言っているのかまだ理解できていない様子だったが、間を置いてから頬に紅が差す。

 

「それはつまり、ドクターと……」

「ええ♪ 私と、スカジで。三人でたくさん仲良くしましょってこと」

 楽しそうに笑うスペクターは呆然とするドクターに向けて机に身を乗り出していた。有無を言わさず問い詰めるような、どこか狂気的な熱を秘めた赤い瞳で射抜きながら。

 

「そういうことだから――ドクター。ちょっとは男らしいところを見せてもらえると、ローレンティーナとっても嬉しいわ♪」

「……君がその言い方をする時は、大体私がひどい目にあうんだが」

 スカジに助けてくれ、というアイコンタクトを送るが――相手はその言葉の意味を確かに理解したのか帽子を脱いで髪を縛るリボンを解いていた。

 

「サメ」

「なぁに、シャチ」

「……負けないわよ?」

「そうこなくちゃ♪ さ、ドクター。つまらないお仕事はそっちにポイして私達と――

 

 ――“仲良く”、してくれるわよね?」

 

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