「――ペンギン急便指名の配達物?」
それは、いつものトランスポーターとしての仕事だった。ロドス・アイランド号に身を寄せるオペレーターのテキサスは、ループス族の特徴である狼耳を立たせて目の前にいるドクターからの指示に意識を向ける。
執務机に肘を置いて、静かに頷くと依頼内容の詳細を説明し始めた。
「龍門でも有名なペンギン急便に、ぜひ頼みたいらしくてね。ただ生憎とエクシアもクロワッサンも、バイソンも今はちょっと別任務であちこち離れてる」
モスティマは論外。いつ帰ってきていつ出ていっているのか誰も把握していない。
そのため、ロドスの貿易所で勤務中だったテキサスが選ばれたとのこと。
報酬は悪くない。ただそうなると、気になるのは配達物の内容だ。
「わかった。私は何を運ぶんだ?」
「この小箱みたいだ。場所は龍門のとある公園に隠してある、とのこと」
「了解した。回収次第、配達を開始する」
「内容物の詳細は……いくつかの素材と、書類。それと端末資料。依頼主からはいくつかの勢力からの妨害行為が予測されるとも書いてある」
「私一人か?」
「いや、流石に危険過ぎる。かといって今、手の空いているオペレーターともなると……彼女くらいしかいない」
彼女、ということは女性だろう。だがなぜか胸騒ぎがした。
そして、それは間もなく的中する。
執務室に入ってくる足音に、テキサスの尻尾の揺れが止まった。
同じループス族。そして、白髪。左眼の傷痕に、黒いコート。病的な白い肌。
――ラップランドが入室してくる。
「入るよ、ドクター。ああ、テキサス。今回はよろしくね」
「…………」
テキサスから投げられる視線は、当然猜疑の色を含んでいた。ドクターとて二人の関係を知らないわけではない。だがこれにも理由があった。
まずひとつ、活動できるオペレーターの選抜。龍門近衛局のオペレーターは当然不可能だ。
もうひとつ。トランスポーターの護衛をこなせる人材。出来るだけ穏便に済ませたい。
そして最後に――ロドスの運営において、現在手の空いている人材がラップランドしかいなかったというだけのこと。いわば、消去法でこうなってしまったのだ。
それらの理由を簡潔に述べてから、ドクターは申し訳なさそうに手を合わせる。
「頼めるだろうか、テキサス。もちろん私からの個人的な報酬も用意しておくから」
「………………わかった。気は進まないけれど、仕事なら仕方ない」
「ラップランド。君にも何か用意しておくよ」
「ははっ、ドクターは気前がいいね。ボクは特に文句はないよ。それじゃテキサス、早速だけど行動しようか」
「ふんっ……」
背を向けて、テキサスは素っ気ない態度のまま執務室を後にした。その後に続くラップランドは尻尾をいつもより少し大きく振っている。二人の後ろ姿を見送ってから、ドクターは深く息を吐き出して――執務机の両端を占領する書類の山と睨み合った。今日中にかたづけなければ……。
――依頼内容をまとめれば、差出人不明の小包を龍門の公園から回収して配達するだけの仕事。その妨害行動に及んでくる相手も、まぁなんとなく想像がつく。武装勢力、マフィア、強盗その他諸々。依頼人個人に恨みなどを持った人間関係など、テキサスには興味がなかった。
目下、問題といえる問題と言えば。助手席で上機嫌に鼻歌交じりに資料を眺めているループス族くらいのことだ。
「あんまり楽しそうな仕事じゃないね、テキサス」
「面倒だけは起こさないでくれ」
「はいはい、わかってるよ。お行儀よくしてろって言いたいわけだ」
ラップランドの言う“楽しい”は、他と感性が違う。面倒で、厄介で、とびきり暴力的で刺激的なものだ。狂って壊れたループス族の感染者。
そして、テキサスにとっては、過去からの死神。亡霊。拭いきれない不安の塊。誰だって隣に爆弾を置いて生活なんかしたくない。
ラップランドの武器は後部座席に投げて置いてある。テキサスは源石剣の柄だけを太もものホルスターに収めてあった。龍門の道路を源石エンジンの車両で移動しながらも、渋滞に捕まるとテキサスは苛立った様子でハンドルを指先で叩く。
こんな仕事、一人の方が気楽でいい。だが隣にいる昔なじみのせいでさっさと終わらせたい一心だ。
「そんな怖い顔してたら、前の車の人が可哀想じゃないか。もっと気楽に構えなよ」
「うるさい」
「お菓子でも食べながらゆっくり行けばいいさ。これも一応ロドスの業務なんだから」
「…………」
ウェストポーチのジッパーを開けて、テキサスはそこから常備しているお菓子を取り出すと口に咥える。棒状のクッキー生地にチョコレートを付けたお気に入りのチョコ菓子を口直しに食べながらノロノロと進む渋滞の気を紛らわせていた。隣のラップランドは退屈そうに欠伸をひとつ。
「……進まないねぇ、テキサス?」
「…………うるさい」
「なにかあったのかな?」
「何でもいい」
「あんまりお菓子ばっかり食べてると太るよ」
「うるさいっ」
「ボクもひとつ貰っていいかい?」
「ん!」
乱暴に突き出したパッケージから飛び出すチョコ菓子を「おっと」なんておどけながらもラップランドは片手で器用に掴むとそのまま口に咥えた。
無言の車内。テキサスはずっと前を向いていた。ラップランドも代わり映えしない窓の外の景色を眺めている。――お互いに視線を交わすこともなく、ただ時間だけが浪費されていく。
不意に“ぽつ、ぽつ”と、ボンネットを雨粒が叩いた。そこから徐々に足が強まり、あっという間に本降りとなる。そして輪をかけて進まない渋滞に、テキサスがチョコ菓子を乱暴に噛み始めた。
「そんなにイライラしなくてもいいじゃないか」
「……私はさっさとこんな仕事を終わらせたいんだ」
「まぁ、話を聞いた限りじゃ楽そうだったけどね」
龍門は広い。どこの公園にあるかまでは定かではない。まずはその捜索から始めなければならないことも踏まえて、ロドスから離れている。元々駐在オペレーターとしての立場だ、本業のトランスポーターを疎かにするわけにもいかない。その点については、問題なかった。
今回の仕事だって人選以外は何一つ問題はない。人選以外は。人選以外!
「車から降りて歩いた方が早そうだ」
「だったらそうしろ」
「おや、ボクにずぶ濡れになれって言うのかい? 傘なんて持ってきてないよ」
「なら我慢しろ」
「鏡を見て言った方がいいよ、テキサス」
ガンッ!!
テキサスが思わずハンドルを膝で蹴りつけてしまった。車内でなければぶん殴っているところだったが、何を思ったのかラップランドはそんな様子を見て笑っている。
「あっははははは! わかったわかった。いいよ、テキサス。それじゃボクが先に探しものを見つけてくるから、宿の方は頼んだよ。君たちのアジトじゃなくて、どこか適当なホテルでも予約しておいてよ。いい場所を知らない?」
「――ん!!」
テキサスはポーチからメモ帳を取り出して、なぐり書きした住所とホテルの名前をラップランドに投げつけた。それを厚手のコートの裏ポケットにしまうと、後部座席の双剣を持ち出して車から降りていく。
ニコニコと笑いながら手を振って。
「それじゃあ、また後でね」
――それから二時間後。ようやくテキサスは龍門の道路渋滞から抜け出した。
合流予定のホテルへ移動すると、まだラップランドは来ていないらしい。後から連れが来ることをフロントに伝えて、テキサスは先に部屋の鍵を受け取った。
安いことに越したことはないが、高すぎても意味がない。そのため選んだのは、雑誌でもオススメされていたビジネスホテルだ。もちろんベッドはツインで。
部屋に入るなり、まずは安全の確保。盗聴器の類が無いかを入念に調べる。
浴室も確認して問題がないことをダブルチェックしてから、テキサスはポーチを外してベッドに投げて腰を下ろした。
あれから結局、交通整理や事故などで遠回りさせられてしまったが、結果として目的としていたホテルに到着したもののラップランドはまだ来ていない。既には日が落ちて、夕飯時も過ぎてしまっていた。
(どうせ一人で暴れてるだろう……)
心配なんてしていない。アレの戦闘技術に不安などなにひとつ。ただ背中を預けられるかは少々不安が残るところだが。
カーテンから僅かに外の様子を眺めると、相変わらず雨脚は止む気配がない。傘を持っていないと言っていたが、なんとかは風邪を引かないから大丈夫だ。
別に心配しているわけではないが、念のためポーチの応急手当道具を確認しておく。軽い怪我ならなんとか対処できそうだ。
フロントには自分の名前を出してある。すぐ合流するだろう、何事もなければ。
……だが、日付が変わろうとする時間になってもラップランドは訪れなかった。
不安になるのは仕方ないにしても、それほど探しものが見つからないのだろうかとも考える。しかし、ここで下手に自分まで動いて入れ違いになっては面倒になる。だから、テキサスは先にシャワーを浴びていた。
連絡手段がない訳では無いが、こちらから連絡をいれるのは癪な気がする。
シャワーの熱が、冷えた身体に心地良い。
このビジネスホテルは噂に聞いていた。なんでもシャンプーの質が良いと。部屋が簡素な割にそうしたサービスが充実しているために相場と比べればやや高い。
適量を手にして、早速髪に馴染ませていく。匂いが目立たず、それでいて髪のダメージを補修する成分を多量に含んでいる。コンディショナーもセットのようなものだが、髪がきしむ様子もなかった。
(なるほど、これは確かに……)
尻尾の手入れにも使って、テキサスはいくらか損ねた機嫌を直して浴室から出る。どうせ今しばらくはやることもない。色気のない無地の白い下着で部屋の中を彷徨く。
髪を乾かして、火照った身体を冷ますために水分補給も欠かさず。
手持ち無沙汰にしばらくそうして部屋で待機していると、部屋の扉がノックされた。テキサスは源石剣の柄を握り、用心しながら覗き窓から廊下の様子を伺う。
そこに立っていたのは、紛れもなくラップランドだった。頭から尻尾までずぶ濡れで、髪が顔に貼り付いてしまっている。傘もなしに走り回ればそうもなるのは当然だ。黒い厚手のコートはしっかりと前を閉じている。そして小脇には小箱。今の今までずっと捜索に走り回っていたらしい。
扉を開けると、素早く中に入ってきた。そして、テキサスに小箱を渡して自分の顔に満面の笑みを貼りつける。
「待たせちゃって悪いね、テキサス。思ったよりも見つけにくくてさ」
笑ってはいるが、その足元。滴り落ちる水滴に朱が混じっていた。テキサスがラップランドのコートのボタンを外して前を開くと、下着にも近いチューブトップの上着に血が滲んでいる。手傷を負った姿を見られてラップランドはやはり、笑った。
「ああこれ? はは、思いのほか妨害しようとしてくる連中が多くてさ。ちょっともらっちゃったんだ。別に痛みはないから心配しなくてもいいよ」
「……さっさとシャワー浴びてこい」
「そうさせてもらうよ。服もこれしかないからね、乾くまでは裸かな。あはは」
似たようなものだろうに。そう思っているテキサスの目の前で、ラップランドは双剣をベッドに放り投げた。そして黒のコートをテキサスに預け、躊躇なくショートパンツのベルトとボタンを外して脱ぎ捨てる。
同じように、色気のない白のインナーショーツ。
テキサスの目の前でラップランドは全裸になるなり、浴室に向かっていった。
「ああ、別に覗きに来てもいいよ? ボクは歓迎するからさ」
「バカ言ってないで早くシャワーを浴びろ」
くっくっ、と忍び笑いをこぼしながら、白いオオカミは扉を閉める。
「テキサス、ちょっと痛いよ」
「うるさい」
テキサスは風呂上がりのラップランドを捕まえるなり、ベッドに座らせた。髪もろくに乾かさないで室内を全裸で彷徨くものだからバスタオルだけは巻いてある。
雨で身体が濡れていたせいで重傷に見えたが、幸いにして浅手だ。持っていた道具だけで十分手当出来る。少しばかり腕に強く包帯を巻きつけてやると、ラップランドがケラケラと笑った。
なにがそんなにおかしいのか。そもそもにして頭が少し“おかしく”なってしまった相手に理性を期待しても仕方のないことだ。
ほとんど裸だというのに恥じらう様子もない、同性だというのもあるがそれにしたってもう少し何かあるだろうに。
腕にキツく縛った包帯を留めて、テキサスは応急手当を終える。ラップランドは腕の感覚を確かめてから、静かに頷いた。
「うん、これなら解ける心配もなさそうだ」
「髪ぐらい乾かせ」
バスタオルを剥いで、今度は頭にかぶせると雑な手つきで拭き始める。どうせ痛んだ髪だ、手入れなんてろくにしていない。まとまりのない跳ねた髪を適度に拭き終えると、ラップランドと目が合った。
色褪せた、灰色の瞳。まるで世界から抜け落ちた色。興味の行く先などどこにもないようで、それでいてその瞳には自分が映っている。まるで縋りつくように――。
身を乗り出して、顔を近づけてきたラップランドの頬が赤い。お互いに息を止めて、触れる鼻先から唇が触れ合う。
静かに顔を離してから、吐息をこぼす。
「──テキサス」
「…………、」
――嗚呼、きっと。こいつは誰かに縋らないと正気でいられないほど蝕まれている。
哀れなオオカミ。可哀想な同族。昔馴染みの面。過去から何一つ進んでいない。
(それは、お互い様か……)
顔に垂れる髪を指でどかしながら、テキサスはラップランドと唇を重ねる。
求められれば応じるだけのこと。それが男でも女でもいい。誰でもいいわけではない。ただ、今夜は外の雨のせいで酷く冷え込む気がした。
たった、それだけのことだ。
ベッドの上に押し倒されたテキサスが指を絡めてくるラップランドの手を握り返す。尻尾を振りながら、執拗にキスを迫る。何度も何度も、息継ぎを挟みながら。涎で口の周りを汚して。
重なる身体の鼓動がやけにうるさい。鼓膜を叩かれる度に、相手に聞こえていないだろうかと考えてしまう。それでも押しつけられる胸の柔らかさに、つい意識が逸れる。
「テキサス……テキサ、ス……!」
「ん、……ぅ……! しつ、こいぞ……!」
「ハ、ァ……その割に、抵抗しないね?」
「めんどうな、だけだ……」
どうせ止めても聞かないくせに。こいつはいつもそうだ――。ラップランドの足が、太ももの間に滑り込んでくる。膝が内股をさすりながら股間に迫った。
「ふふ、キミもこんな風にしちゃうなんて。ちゃんと女の子してるじゃないか」
「……うるさいっ」
「それとも、こんな風にされるのを期待してたのかな……?」
絡めていた指をほどいて、ラップランドの手が身体を這う。蛇のように肌を撫でながら、下腹部を一度通過して、薄い陰毛をかきわけて、その先にある秘部の唇をなぞっていく。
熱を帯びた秘部の口から僅かに涎が垂れる。指ですくい、ラップランドはテキサスに見せつけるように指をすり合わせた。まだ粘性の低い透明な液体は、僅かに糸を引いて消える。
「キミの身体だから、欲しがりさんだね」
「……さっさとしろ」
「そんなに急かさなくてもいいじゃないか。まだ夜は長いんだしさ」
ぶっきらぼうな言い草にラップランドは微笑みながら身体を起こした。テキサスの身体を見下ろしてから、両足に手を添えると開かせる。露わになる秘部に顔を赤くしながらそっぽを向いていた。
そして、顔を股間に埋めるとラップランドの舌先がなぞりはじめる。焦らしてくる愛撫に背中を跳ねさせるが、背筋をなぞる弱い快楽の波にテキサスがシーツを握った。
「そんなに身体を強張らせなくてもいいじゃないか。大丈夫だよ、キミを傷つけたりなんかしないから……ん、っちゅ……はぁ……熱くなってるね、テキサスのここ」
「っ……、んっ……!」
窓を叩く雨音が、やけにうるさい。
室内に響く水音が、やたらに耳に障る。
それに悦んでしまう自分の身体も、癪に障る。
なのに、ラップランドの口淫は自分の欲しい場所にすぐ応えていた。
それが、ますます腹立たしい。身体に力が入ってしまうが、それを解すようにじっとりと優しくて甘い舌使いに足を閉じようとする。だが、それができないのはラップランドの手がまだ足を押さえ込んでいるからだ。
「ふ、ぅ……! んぃ、っ……!!」
「ハァ……、ふふ。かわいいなぁ、テキサス。そんなに必死に声を出すの我慢しちゃってさ」
ぬるりとした感触が、自分の中に入ってくるのを感じる。舌が潜り込んできて膣が震えた。浅瀬を何度も何度も、執拗に弄る舌では物足りない。そんな浅いところだけじゃなくて、もっと奥にまで満たしてほしい。溢れ出す愛液で喉を鳴らしながらラップランドが顔を離すと陰核を舌先で突いた。
「テキサスのここ、かわいがってあげるよ」
「~~っ、あ!」
思わず声が出る。痛くはない、だが、それでもねちっこい舌の愛撫がどうにも焦れったくて仕方ない。膣から溢れてくる愛液も時折舐め取りながら、ラップランドからの口淫は止まらなかった。
一方的に攻められてもテキサスは無抵抗なままそれを受け入れる。ただ、耐えた。別に我慢しているというわけではない。ただ、それでも物足りなかったというだけのこと。
どれほどそうしていたか。ラップランドも諦めがついたのか、ようやくテキサスの秘部から口を離した。自分の口元を拭いながら、顔を寄せていく。
「……まったく、テキサス。そんなに我慢しなくてもいいじゃないか」
「ふ、ぅ……! ふー、ふっ……っる、さい……」
「強情だねぇ……こっちは、そうでもないのかな?」
「――っ、待っ……!」
ラップランドの指が、膣に入り込んでくる。求めて止まなかった刺激を受け入れて、滑らかに指を肉壺が締め付ける。その素直な反応に、ラップランドも何か意地の悪い笑みを貼り付けていた。
「へぇ、テキサスの口と違ってこっちは随分素直でかわいいね。ほら、ボクの指をこんなにしゃぶっちゃってさ」
中指だけで浅瀬を弄り、指の関節をさらに深く沈み込ませていく。天井をまさぐりながら、なぞるようにして。
テキサスの腰が跳ねる。何度も焦らされていただけに、身体が敏感に反応してしまう。こんなにも愛撫に時間をかけられるとは思わなかった。
「あはは、さっきとは全然反応が違うね。いいよ、テキサス。もっと気持ちよくしてあげる」
「っ、こ……の――! ん、っ! 調子に、のる……な、ァっ!」
一度引き抜かれた指が、薬指を含めて二本で入り込んでくる。少し窮屈なくらいだが、それでもすんなりと自分の身体が呑み込んでしまったのが悔しい。先程よりも複雑な指の動きで執拗に奥までかき回してくる。
空いている片手で胸を鷲掴みにすると、耳元に息を吹きかけてきた。
「どうだい? ボクの指で満足できそうかい?」
「ん、っくっ……! うぅ!」
「さっきよりもキツくなってきてるよ。こっちに聞いた方が早そうだね」
「は、ぁ! くぅぅ、んっ!」
優しく撫でるような指が、今度は激しく腟内を前後する。かき回され、かき乱されて、愛液を潤滑油にしてラップランドの指がテキサスの肉壺を丹念に、執拗になぞる。
背筋を這い回る快楽にテキサスが身体を震わせた。背を反らしながら、それでも堪える。奥歯を食い縛って絶頂に耐える顔を見て、ラップランドは恍惚とした表情で瞳を覗き込んできた。
「我慢しなくてもいいんだよ、テキサス?」
優しい声が。甘い吐息が。愛おしくてたまらないといった顔が。惚けた表情が、何もかも不愉快なのに――こんなにも、身体を悦ばせてくる。こんな奴に手綱を握られて、リードされたままなのに。それでも自分の頭の何処かで、それに抗う理性があった。
達したい、という本能的な欲求と。こんなやつにイカされたくない気持ちがテキサスの中でせめぎ合う。だが、そんなことは知らず容赦なくラップランドの濡れた指は陰核をこすりつける。指で潰すようにして、だが器用に腟内を弄る動きは止めようとしなかった。
こらえようとすればするほどに、指を締め付ける。
「や、め……! くそ、やめろ……! っ、それ以上……んうっ!!」
「あはっ、イキそうになった? ほーら、いいんだよ。ほぉら、テキサス……♪」
「んっ! こ、の――おぼえて……っ~~~~!!」
一瞬の緩急。気の緩んだ隙に指の付け根まで挿入された感触にテキサスの腰が跳ねた。仰け反り、それでも声だけは出さまいと必死に食い縛るものの、歯の根が合わず唾液が口から垂れる。
その様子を見ていたラップランドは満足したように震える肢体を見つめ、やがて痙攣する膣から指をゆっくりと、ゆっくりと時間を掛けて引き抜いていく。最後まで吸い付いて離そうとしない膣口から指先を一息に抜くと白く濁った愛液がべっとりと粘ついた糸を引いた。
「嬉しいよ。ボクの指でこんなになっちゃうほど、気持ちよかった? 見なよ、テキサス。こんなにいやらしく糸を引いてるよ?」
深く、大きく肩で息を整えているテキサスに見せつける。その目は鋭く、怒りに満ちていた。端正な顔立ちを怒りに染めている相手を見て、ラップランドは興奮を隠しきれずにいる。
「ははっ、そんな怖い顔したってダメだよ。今度は――」
身を乗り出そうとしたラップランドの頬目掛けて、テキサスの鋭い拳が突き刺さった。腰が抜けそうになりながらも、それでも捻りの聞いたパンチはラップランドも予想外だったのかまともに食らう。そのまま相手の手を引き込みながらテキサスが押し倒した。
「ッ……いたいじゃないか、テキサス」
「ふーっ、ふーっ……! 調子に、のるな……!」
顎を持ち上げて、ラップランドの唇を強引に塞ぐ。舌を絡めて、唾液を流し込みながら息継ぎを繰り返す。
自分がやられたようにテキサスが秘部に手を伸ばすと、すでに熱く濡れており、入り口に触れた指が愛液で満たされた肉壺へすんなりと挿入される。その内部は別な生き物のようにうねってテキサスの指を締めつけた。
「ん、っふぁ……! っ、ぷ……ん、ぁ! テキサ、ス……」
「だまってろ、っん……!」
舌先を絡ませながら、口を開けて涎で汚していく。ラップランドの膣に挿入した指を折り曲げて、こちらも弱点を探る。肉壁をなぞり、感触の違う場所を押し上げると素直な反応を見せた。腰を浮かせて、本能的に足を閉じようとしている。だが、そうはさせまいとテキサスは自分の身体でそれを阻んだ。
「さっきの……お返しだ……、好きなだけイけ」
「っ、ぁ! テキサス、ちょっと……痛いよ」
「好きなくせに、どの口で」
何度も往復させていると、ラップランドが身体をよがらせて抜け出そうとする。愛液をかき出す度に腰を震わせて、快楽から逃げ出そうとするのをテキサスは腰に手を回して押さえつけた。
自分の口を手で押さえながら、ラップランドは自分の秘部に挿入されるテキサスの指を見つめている。
「んぅ、んっ! っふ! ん……!」
「どうした? そんなに自分が犯されているのが見たいのか」
殴られた頬が痛む。いつもよりも語気の鋭いテキサスを見ていると、背筋がゾクゾクする。恐怖ではない。もっと別な感情で。そんなテキサスの顔をずっと見ていたいと思ってしまう。
挿入する指を一本から二本に増やして、先程よりも乱暴に腟内をかき回す。ゴムのような弾力ではあるが、しっかりと押し返してくる。それでいて熱く濡れた内部は複雑な凹凸で指にからみついて離そうとしない。これが全部、男を悦ばせるための物だと思うとテキサスは少し腹が立った。
少しだけ力を入れて、陰核を指で押し潰しながら柔らかい感触の天井を擦るとラップランドの口から甘い嬌声が出てくる。足を震わせて、尻尾の毛まで震わせながら腰を浮かせた。
「さっきまでの威勢はどこに行ったんだ」
小刻みに身体を震わせて、目尻に涙を浮かべながら、それでも恍惚とした表情は崩さずに。ラップランドは自分の膣をかき回すテキサスの手を見つめる。口腔から漏れ出す荒い呼気も、甘い声も手で押さえていても止まらない。
腰を浮かせそうになって、イキそうなのがわかる。だが中々ラップランドが達しないことにテキサスが少し腹を立てた。
指を引き抜いて少しだけ間を置くと、切なそうにこちらを見つめてくる。
「……? テキサス……なん、でぇ……?」
「這いつくばれ」
有無を言わせない鋭い口調に、ラップランドが従う。子犬のように、ベッドにうつ伏せになると次に何を言われるかわかっているのか、そのままお尻を突き出した。尻尾を立てて、邪魔にならないようにもしている。
ハリのある臀部の肉は、しっかりと引き締まっていた。鷲掴みにして乱暴に揉みながら、テキサスは露わになってヒクついて口をすぼめている秘部に再び指を挿入する。先程よりも深く、指の根元までえぐるようにして。
「っヒ、ぃ……ッ!! ~~~~、!」
もがくようにしてラップランドが手を伸ばしたのは、枕。顔を埋めて、声を抑えていた。それがますます不愉快で、テキサスからの攻め手は激しくなる一方だ。
聞いているこちらが恥ずかしくなるほど愛液をかき混ぜる。指がふやけて蕩けそうなほど膣を攻めているというのに、ラップランドは強情にもまだ堪えていた。テキサスはそれにますます面白くない顔をする。
根本まで入れた指を一度止めて、奥を刺激するとゆっくりと膣内の壁を撫でながら引き抜いていき、浅瀬で止めた。入り口を広げるように左右に指を揺らしてから今度は同じように指を入れる。手のひらまで愛液でビショビショに濡らしながらも、テキサスは反撃の手を緩めない。
「いい加減、イったらどうだ?」
「んぅ、ん、ぅぅぅっ!!」
枕に顔を埋めたまま、ラップランドは嬌声を押し殺す。それでも身体の反応は堪えきれずに、何度も腰を浮かせては小刻みに痙攣していた。
テキサスは太ももの体表に生成された源石結晶を見て、すぐに視線を外すと尻尾を掴んで引っ張る。
「んっ、っくぅ――!」
「我慢するな」
「んんぅ! んんんんっ!!!」
嫌がるように頭を振る姿に、ますます機嫌を損ねた。なんだってこいつはいつもいつも人の思い通りにならないんだ、等と思いながら。
テキサスが陰核を執拗に攻めると、ラップランドがますます腰を跳ねさせる。
「っ、この――いい加減に、イけッ!」
指を引き抜き、手を振り上げると――テキサスは、ハリのある尻を思い切り叩いた。
パァンッ!
小気味好い、甲高い肉を叩く音を響かせてラップランドが一際強く腰を震わせると遂に我慢の限界に達したのかラップランドが秘部から勢いよく潮を吹く。
「んッ、んぅ、んんんぃぅ~~~っ!!!」
「っ……、まったく。手こずらせる……なっ!」
「ふ、ゥんっ!!」
もう一度だけ強く叩くと、大きく腰を跳ねさせてから力なく横たわる。すっかり腰が抜けたのかぐったりとしていた。
テキサスはラップランドの顔を覗き込もうと髪をかき分ける。
すっかり蕩けた顔になって、肩で息をしていた。どこかうつろな眼で、耳まで真っ赤にしながらだらしなく開けた口からは涎が垂らしている。
「はぁ、ハァ……あ、はぁ……テキ、サス……ひどい、じゃない、かぁ……」
「それで無様にイッたのは誰だ?」
「だって……、あんなに激しくされちゃったら、さ」
「ひとりで惚けてないで、そら……今度は私の番だ」
「待っ……てよ、まだボク……イッた、ばかりだからさ……」
「ダメだ。そら早くしろ――」
「ん、っぷ――! はは、仕方ないなぁ……」
――ホテルで一夜を明かした後、小包を届けたテキサスとラップランドは速やかにロドスへと帰投してドクターへ報告するために執務室へ足を運んだ。
「ああ、おかえり二人とも……どうしたの、その怪我!?」
「……別に」
「ハハハ! いや、ちょっとね。思ったより、激しくて……さ」
首に包帯を巻いたラップランドの足を、頬にガーゼを貼ったテキサスが踏みつける。
咳払いを挟む姿にドクターが首を傾げた。
「ま、まぁ……無事に戻ってきてくれてよかったよ。テキサスもラップランドもおつかれ。今日は自由に過ごしていいよ」
「そういうことなら、私は部屋で休ませてもらう」
「ボクもそうさせてもらおうかな? いいよね、テキサス」
「……~~っ、うるさい!」
「ははは、こわいこわい! それじゃドクター。報酬の方、楽しみにさせてもらうよ!」
源石剣に手を伸ばしていたテキサスから逃げるようにラップランドが執務室から姿を消す。
「……艦内で喧嘩しないでね?」
ドクターの声に、犬歯をむき出しにしていたテキサスがウェストポーチを開けた。
「――努力するっ」
ぶっきらぼうに言いながら、取り出したチョコレート菓子を咥える。
――“ポキン”と、あっけなく折れた菓子を飲み込みながらテキサスは首筋を擦った。