【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了 作:ぷるっと企画@園島義船
アンシュラオンは、少女たちを見て回る。
このエリアにいる少女の数は八人なので、さして時間がかかるわけではないが、自分の身代わりだと思うと迷ってしまう。
ざっと外見だけを見た印象が、これ。
(うーん…あまりぱっとしないな。まあ、いたいけな女の子なんだからしょうがないか。戦闘用スレイブじゃないしな)
あくまで遠くから見てホワイトだと思わせればいいので、細かいところはどうでもいい。
問題は、雰囲気。
当然ながら、アンシュラオンのような威圧感を放つ者はいない。そもそもそんな人物はこの街にいないので、求めるのは酷だろう。
こんな男が山ほどいたら、そこはもう完全なる世紀末である。
(見た目は…もちろん可愛い。どの子もそれなりに可愛いが…サナには及ばないな。サナと比べるほうがかわいそうだけど…。さて、どうするか。どれも似たようなものなら能力を見て決めようか)
見た目はどの子も大差ないので、今度は能力で判断することにした。
どうせ手に入れるのならば、それなりに使えるほうがいいに決まっている。
情報公開を使用して見て回る。
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名前 :アリア・ナ
レベル:1/30
HP :30/30
BP :0/0
統率:F 体力:F
知力:F 精神:F
魔力:F 攻撃:F
魅力:D 防御:F
工作:F 命中:F
隠密:F 回避:F
【覚醒値】
戦士:0/0 剣士:0/0 術士:0/0
☆総合:評価外
異名:
種族:人間
属性:
異能:
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(アリア・ナ…一般人だな)
さすがに可愛いので魅力はDだが、特に異名もない一般人の少女である。
取り立てて何かに長けているわけでもない。
(まあ、言ってしまえばサナもそうだから、その点に関して文句を言うのもかわいそうだな)
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名前 :エステル・ラト
レベル:1/40
HP :40/40
BP :0/0
統率:F 体力:F
知力:F 精神:F
魔力:F 攻撃:F
魅力:C 防御:F
工作:F 命中:F
隠密:F 回避:F
【覚醒値】
戦士:0/0 剣士:0/0 術士:0/0
☆総合:評価外
異名:
種族:人間
属性:
異能:信仰心
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(エステル・ラト…一般人か。『信仰心』というスキルがあるが…これは何だ? まあ、信心深いとかそういうことかな?)
『信仰心』スキルは精神耐性の一種であり、特定の精神攻撃に対する防御機能を持っている。また、特定の環境下で精神の値にプラス補正が付くスキルである。
ただし、信仰というものはある種の「精神汚染」でもあるので、何を信じているかによって新しい概念を許容しづらくなり、成長が遅くなる面もある。
一般的にこの世界の人間は「女神信仰」が基本なので、特に表示がなければ女神に対する信仰心なのだろう。
その場合、特にデメリットはない。単純に忍耐強くなるスキルとでも思っておけばいい。
それを加味したとしても彼女は一般人だろう。アンシュラオンが言ったように、ただの信心深い少女だ。
(そういえば、名前についても少し調べたんだった。この二人は同じタイプ…【一体型】かな)
ホロロにもさりげなく訊いたので、この世界の名前の作り方も知ることができた。
まず、姓名が分かれているタイプの【分離型】。
小百合・ミナミノも、マキ・キシィルナもそのタイプで、地球でも一般的にあった名前の表記である。
ミドルネームがあれば、何かしらの身分を表すものという点も似ているので、さほど困惑せずに見ることができるだろう。
ベルロアナ・ディングラスのように、長く続く家の出身者に多い名前である。普通の家柄でも、長く続いていれば姓が独立してくっついてくる。
一番多いタイプなので、六割から七割の人間が、この分離型だと思っていいだろう。
次に【単一型】。
アンシュラオンやゼブラエスのように、名前しか表示されないタイプである。この場合、これ一つで姓名を兼ねているので、それ以上言いようがない。
名前自体に大きな意味がある場合、単一型になることが多いらしい。
たとえば、歴史に名前を遺す英雄は単一型が多い傾向にあるらしく、特殊な人間に多いとされている。
また、姓名がありふれていて一族間で区別が付きにくい場合、統合して一つにしてしまうらしい。
これも一例だが、日本人で一番多い苗字である「佐藤」かつ、名前がありふれている「太郎」などの場合、自分でリメイクして「サタロウ」と名乗ってしまうことがあるようだ。
べつにそれは何でもよく「サロウ」でもいいし、「サロー」でもいい。思いきって「サ・ロウ」にしたっていい。
つまりは名前が気に入らないから変えちゃった、という感じである。その名前が定着すれば、情報公開でもそれしか表示されないようになる。
最後に【一体型】である。
一見すると分離型に見えるが、その二つで一つの名前になっているタイプだ。アリア・ナもエステル・ラトも、「ナ」と「ラト」は苗字ではなく、名前の一部である。
これはサナもそうで、サナ・パムで一つの名前になっている。面倒なので、普段はサナと呼んでいるにすぎない。
よって、単一型の亜種みたいな感じだが、こうした名前になっている人間は【地方部族】に多いようだ。
その地域だけに伝わっている特殊な文字や読み方を組み込み、独特の韻を作って意味を成しているという。
だから馴染みのない印象を受けるし、最初は苗字なのかなと思ってしまうこともしばしばある。
(見分け方は難しいんだよな…。これも地球と大差ないな)
地球でも名前に関しては各国各地方で違うので、この世界でも事情は同じようだ。
こうなると単一型のほうが楽なので、自分がそうであってよかったと思う。呼ぶ側も、いちいち名前で呼ぼうか苗字で呼ぼうかと迷わずに済む。
唯一の欠点は、同じ名前の人間がいた場合、非常に紛らわしいという点。それはどうしようもないので、改名するのが嫌ならば一号二号と呼ぶしかないだろう。
と、完全に意識が離れてしまったので、改めて見て回る。
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名前 :ジェニファー・フロックマイ
レベル:1/30
HP :30/30
BP :0/0
統率:F 体力:F
知力:F 精神:F
魔力:F 攻撃:F
魅力:D 防御:F
工作:F 命中:F
隠密:F 回避:F
【覚醒値】
戦士:0/0 剣士:0/0 術士:0/0
☆総合:評価外
異名:心に傷を負った愛多き少女
種族:人間
属性:
異能:慈愛、傷心
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(ふむ…やはり心に傷を負った子もいるんだな。そりゃそうだよなぁ)
さまざまな事情でここにやってくるので、彼女たちの中にはつらい記憶を持っている子もいる。
幼少期に受けた傷は簡単には癒えず、下手をすれば人格形成に大きな悪影響を与えてしまうだろう。
その意味でも、サナが特殊でよかったと思う。
(ただ、この子は『慈愛』というスキルがある。優しい子だということかな。幸せになれることを祈っているよ)
男と違って女には最大限の優しさを持つので、こうしたことを思ったりもする。
『慈愛』は加護系スキルで、与えた愛情の分だけ一定期間魅力が上昇し、周囲から守られやすくなるというスキルだ。
彼女が傷心に負けず他者に愛を与え続ければ、きっと素晴らしい人生が待っていることだろう。
そして、中にはこんな少女もいた。
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名前 :フェンティーヌ
レベル:1/40
HP :40/40
BP :0/0
統率:F 体力:F
知力:F 精神:F
魔力:F 攻撃:F
魅力:C 防御:F
工作:F 命中:F
隠密:F 回避:F
【覚醒値】
戦士:0/0 剣士:0/0 術士:0/0
☆総合:評価外
異名:男性不信の美しき愛玩少女
種族:人間
属性:
異能:男性魅了、男性不信、復讐心
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(ほぉ、この子は美しいな。見た瞬間、違うことがわかる)
アンシュラオンでも、その美しさに目を見張る。
さきほどは「威圧感」や「風格」といった要素で少女を見ていたので、あまり大差はないと思ったが、単純に少女として見て回ると美しさが際立っていた。
サナとはまた違う独特の美貌を持っており、将来は間違いなく美女になることがわかる容姿だ。
人形のような美しさ、と言えばわかるだろうか。一瞬、作り物かと思うほどの美を持っている。
しかも、どことなく妙に人を惹きつける力を感じる。その理由はすでにわかっていた。
(『男性魅了』…か。オレの『姉魅了』に近いスキルのようだな。なるほど、こういう感じか)
スキルの力によって男性を魅了してしまうようだ。さきほどの感覚もこれによるものだろう。
ただし、アンシュラオンに対しての効果はさほどではない。おそらく魅力の数値が関係しているのだろう。
彼女はC。Aの自分にはまったく及ばない。だから効果があまりないのだ。
(だが、大人になって魅力が上がれば魔女になるかもな。それが幸せかどうかはわからない。すでに幸せではないようだしな)
最初は「なぜこんなに美しい少女が売れ残っているのか?」と疑問を抱いたものだ。
しかし、その美しい外見に反して、心は怒りや憎しみに染まっていることが雰囲気から察せられた。
(幼いうちに能力が出ると不幸になるな。特に武力がなければ、大人の男に襲われることもあるだろう。ここにいるのだから処女なのだろうが…女性を傷つけるのは性行為だけではない。痛々しいものだな)
何があったのかはわからないが、今のアンシュラオンに彼女は魅力的には映らない。
魅力がCにとどまっているのは、彼女が持っているマイナススキルも影響しているのだろう。せっかくの美貌が台無しである。
(オレだったら癒してあげられるか? いや、傲慢だな。シャイナ一人救うのにも苦労しているやつが、他人の人生を背負えるわけがない。せいぜい目的に沿った利益のある女性でないと、オレには背負えないだろうな…)
その少女に価値があると思えるから、何とか付き合うことができる。デメリットにも耐えられる。
しかし、ただの偽善からでは長続きはしない。そんな偽物の愛では少女の傷を抉るだけだ。それこそ最低である。
そもそも影武者を探しているのだ。あまり女性としての魅力が高くないほうがいい。どちらかというと中性的なほうがいいだろう。
(この子は…平凡だな。この子もそうだ。こっちも一般人…か)
それから三人を続けて見るが、誰もが一般人であった。目を引くような子はいない。
さすがに焦ったので、モヒカンに訊いてみる。
「なぁ、能力測定ってのはどうやっているんだ? 力を持った子は特別扱いしているんだろう?」
「そうっすね。明らかにそうとわかれば違う場所に入れているっすが…白スレイブの中で特別な子は、今のところ見当たらないっすね」
「調べる装置はないのか? ほれ、ハローワークのハンター測定で血液検査があったじゃないか。あんな感じのはあるだろう?」
「それは使っているっす」
「…なるほど。使ってもいなかった、ということか」
「残念ながら、その通りっす」
(調べていたのは血液中の生体磁気だったか? だとすれば、わかるのは【現状】での力にすぎない。子供なんだ。この歳で力を発揮している人間のほうが少ないだろうな)
子供の頃から因子が覚醒している人間は、そう多くはない。いくら才能があっても、あのパッチテストだけで調べられるとは思えない。
ただ、こうして情報公開で見ても、どれもぱっとしないので、あながち間違っているとは言えないが。
そして、何気なく最後の少女を、ふと見た時である。
「なんだ、やっぱり駄目か…どうしようかな……」
最後も凡人であった。どうやらここにいるのは、特筆すべき能力を持たない少女だったようだ。
が―――何かが引っかかった。
脳裏に少しだけ何か違和感が残ったので、再び最後の少女を見る。
(ん? ちょっと待てよ…ん? 気のせいか? いやいや、ちゃんと見よう。見るだけならタダだしな)