【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了 作:ぷるっと企画@園島義船
アンシュラオンが少女を見たとき、最初に目に入ったのが緑色の小さな宝石であった。
なぜ気になったかといえば、明らかに術式とわかる波動が出ていたからだ。
術士の因子がある者は、術式を感知できる。因子のレベルによって感知できるものは異なるが、アンシュラオンの術士因子は5。術はまだ使えずとも、たいていの術式ならば解読することが可能だ。
解読の結果、精神術式の一種だとはわかっていたが、それが何のものかまではわからなかった。それが、男の説明ですべてを理解できた。
「あの精神術式で、逆らえないようにしているのですね!?」
「そうだな。契約に逸脱するような行為や、犯罪行為ができないようになっているんだ。便利だろう?」
「人権侵害じゃないんですか!?」
「そこにこだわるね、お前さんは」
「いえ、そこが解決できれば、あとはもう情欲の赴くままにウハウハの予定なんで!」
「正直すぎる!! 少しはオブラートに包んでくれ」
「正直者であることが取り柄なんで! それで、続きは?」
「何百年か前、スレイブ階級の人間が反乱とか大きな事件を起こしてね。それから安全装置として付けられるようになった、っていう話だったかな」
単に契約に違反してしまった、という話ならばよかったのだが、最初から契約を破るつもりで入り込み、中からクーデターをするという事件が起こった。
それ以来、契約遵守のために、こうしたものが認められるようになった。当然、自らの意思でつけるので人権侵害ではない。
(見た感じ、かなり粗雑なんだよな。あれで制限できるとすれば、反抗意識を持たせにくくする、っていう程度かな)
精神術式にも多様な種類と、強弱のレベルが存在する。
アンシュラオンが見る限り、ロリコン妻にかかっている術式はあまり強いものではない。
せいぜいが、「~しようと思わない」程度の軽いものだろう。完全なる強制力を持つ凶悪な精神術式とは異なる。
(たぶんオレにはまったく通じないだろうけど、一般人ならばあの程度で十分ってことか。そういや、姉ちゃんは竜を簡単に支配していたけど、あれを人間にかけたら精神が壊れそうだな。そういう意味合いもあって、軽いものになっているのかもしれないな。そのあたりは専門領域だし、おいおい調べていこう)
それより、である。
「先生、ラブスレイブとは!? やはり、アレですか!?」
「まあ、アレだな。そういう目的のためのものだ」
「何でもしていいんですか!?」
「それも相手によるというか、どういった条件で売りに出されているかが重要だ。ちゃんと確認しないと、後で台無しになることもある」
「ふむふむ、メモメモ!」
左腕に火気を使って「ラブスレイブ」と大きな焼き文字を入れていく。
その異様な執念にロリコンは戦慄した。
絶対に忘れないという気概が見えたからだ。この小さな身体のどこに、これだけの情念が宿っているのだろうか。恐ろしい少年だ、と。
「なるほど、なるほど、だいたいわかりました!」
「そうか。納得してくれてよかったよ」
「先生、オレでも買えますか!?」
「え? あ、ああ。もちろん買えると思うが…。年齢制限は特に無いな。それと場所によって、いろいろと条件があることもある。たとえば市民権が必要な都市もあるから、そこは確認したほうがいい。辺境に行けばいくほど緩和されるが、それだけヤバイ代物もあるってことだから注意しろよ」
「ためになります! それで、いくらですか!? 何円なんですか!?」
「顔が近い! やる気がありすぎる!?」
「従順な女の子なんですよね!? それって、逆らわないんですよね!? 逆らっちゃ駄目なんですよね!?」
「契約でそうなっていれば、だけどな」
「エッチなこともしていいんですよね!?」
「ラブスレイブだったらな。普通のスレイブでも、そういった条項がある者もいるから、そういうのならば…」
「買います!! どこで買うんですか!!!」
(これだ! オレが求めていたものは、これだったんだ!!)
この時、アンシュラオンは気がついてしまった。
自分の目的は、姉とは違う従順な女の子とイチャラブしたい、というもの。
「なら、スレイブでいいんじゃね? 逆らわないし、何でも言うこと聞くし。金で済むのならば、こんな素晴らしいものはない!!」
と。
最低の発想である。人間としてどうかと思う。
だが、そういう仕組みがあるのならば利用しない手はないだろう。もし嫌なら、やめてしまえばいいのだから、まずは気軽に利用してみればいいだろう。
そう、何事も試してみなければならない。それが人生経験であり、社会勉強というものだろう。
何が悪いというのだ。うん、悪くない。むしろ素晴らしい!!
「ビバっ!! 素晴らしい!」
「どわっ、びっくりした!? まだ答えてないぞ!?」
「あっ、そうだった。どこですか!? どこでぇえええええ!」
「ぐえっ! だから首を…絞めないでくれ。大きな街とか、スレイブ商がいる場所ならどこでも…」
「どこだ! 近隣なら、どこにいる!?」
「そこらの集落にもいるかもしれんが……最初なら大きい店がいい。大きい店は信用もあるから、初めての客にも親切だ。そうだな…南東にグラス・ギースっていう大きな街がある。そこなら多くのスレイブがいるはずだ。もともと俺もそこで働いていたからな」
「グラス・ギースですね! メモメモ! じゅうう」
また焼き付ける。
それにロリコンは再び戦慄した。
「先生! ありがとうございます!!」
「う、うむ。感謝したいのはこちらのほうだ。あんな凄いものを六十万で売ってくれるのだから…」
「スレイブって、いくらですか?」
「ピンキリだな。三級にもなれば、百万以上は…」
「やっぱり、違うところで売ります!!」
「心変わりが早すぎる!? 売ってくれ!! 教えたじゃないか!!」
「ええい、放せ! オレにはスレイブが必要なんだ! こんなはした金で売れるか!! このロリコンが!!」
「わかった。わかった! あそこの雑貨でいいなら、いくつかやるから! それでどうだ! 俺とあんたの仲じゃないか!」
「…ちっ、しけてやがるな。全部渡すとか言えよ」
「どうせ持てないだろうに。それに、どさくさで嫁さんまで持っていかれたら困る」
「信用ねえな。オレは他人のものには興味ないんだけどな…」
交渉成立である。
よくよく考えれば、もともといらないものだし、歩いている時に拾った程度のものなので、この値段で売れるのならばボロ儲けである。
「楽しそうでしたね」
「あんなロリコンと一緒にされたくないけどね」
「はは…。あの人も久々に楽しそうでした」
「いくつか好きなものを持っていっていいって言われたけど…大丈夫?」
「はい、大丈夫です。お好きなものをどうぞ」
再び日用雑貨テントに戻ったアンシュラオンは、少女の旦那さんをロリコン呼ばわりしつつ、いくつか品物を物色する。
あのロリコンに対しては遠慮しないが、この子の生活もかかっている。なので、最低限のものだけを選ぶ。
当然、最初に選ぶのは地図。それから野菜や芋などの食材とフライパン、それとあの良さげな包丁を一本もらっていくことにした。
「それじゃ、このリュックもどうぞ。一緒に入れておきますね」
「ありがとう。助かるよ。…で、あのロリコン、夜は激しいの?」
「えっ? その…それは…あはは」
「サイズは大丈夫? 入るの? それともロリコンのが小さいの? ねぇねぇ、何分でイクの? あいつ、早漏でしょ? ねえねえ、どうなの? 満足してるの?」
「えっと、その…あの……それは……」
セクハラである。特に理由はない。
「おい、俺の嫁にちょっかい出すなよ!」
遠くからロリコンの抗議の声が飛ぶが、無視である。
「変態的行為を強要されたら、これを使うんだよ」
そう言って、包丁を指差す。
男など、いざというときはそれで切ってしまえば、おとなしくなるものだ。その時はニューハーフ協会を紹介してやろうと思うのであった。もちろん、伝手などないが。
ただ一つ、訊いてみたいことがあった。
「…なんでスレイブになったの?」
「私の家、子沢山で。口減らしのために自分からなったんです。このあたりは、そんなに豊かではないですし…」
「そうなんだ…ごめん」
「いいんですよ。今は幸せですから」
「そっか。じゃあ、またいつかどこかで。ロリコンにもよろしくね」
スレイブでも幸せになれる。
それを知って、少しだけ安堵した。
「よっしゃ! それじゃ! オレは行くよ! 絶対にスレイブ(従順で可愛い女の子)を手に入れるぞおおおおおおおお!!」
新たな目標を得て、アンシュラオンは旅立った。