※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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20話 「遭遇、戦艦の脅威 後編」

 

 クルマは沈黙。

 

 戦艦に攻撃されて無事である存在は、まずいない。当然の結果だ。

 

 それを確認した砲手が、司令室に連絡を入れる。

 

 

「目標、撃墜」

 

 

 その言葉は、人の命を奪ったという報告。何人乗っていたかはわからないが、殺したということだ。

 

 その報告を聞いた指揮官の男は、静かに目を瞑る。

 

 

「運が悪かったな。間が悪かった。…それも言い訳か。殺した者の台詞ではない」

 

「いえ、まさに運が悪いのです。仕方のないことです」

 

 

 隣にいる副官の男が答える。

 

 たしかに運が悪かったのだ。わざわざこのルートを走らなければ、鉢合わせることもなかったのだから。

 

 

「このルートは誰も使わないと聞いていたが?」

 

「情報では、そのはずです。民間人が使うものは、東に二百キロほど行った先のルートです。ここに一般人は近寄らないはずです」

 

「では、軍人か?」

 

「そのわりには一般車両のようでした。ただ、西側のクルマでしたので、他国の軍関係者かもしれませんが…」

 

「その場合は最悪だな。調査に来られると面倒だ」

 

「グラス・ギースやハピ・クジュネの領主が断るのでは?」

 

「それができればな。RBやニアージュあたりが出てくれば抵抗はできまい」

 

「やつらは南の地の入植で手一杯…だと思いたいですな」

 

「希望的観測で動かねばならないほど、我々には余裕がないということだ。…起こったことは仕方がない。しかし、本当に見えていたのか? 視認防壁があったのだろう?」

 

「そのはずですが…対象と接触した際、自壊したようです」

 

「自壊? そのようなことがあるのか? 俺は術式に詳しくないから細かいことは知らないが…あまり聞かないぞ。普通は損耗して効力が消えるとかではないのか?」

 

「はい、普通はありえませんが……ここに来るまでに劣化したのかもしれません」

 

「…そうか。長旅だったからな。だが、そうだとすれば防げた事故だぞ」

 

「申し訳ありません! 即座に見直します」

 

「そうしてくれ。これ以上のトラブルは御免だ。この戦力で大規模な戦闘は極力避けたい」

 

 

 この戦艦には、視認を防ぐための術式結界がかけられていた。視認を完全に防ぐものではなく、周囲と同化することで見えにくくするものである。

 

 ただし、わざわざ夜を選んで移動しているのだ。普通の人間がこの距離で視認することは不可能に近い。

 

 もし見えたのならば、相当目が良い人間に違いない。それだけで貴重な人材であるといえる。

 

 

「いい素質を持っていたのだろうが……惜しいものだ」

 

 

 その男、煤けた深い金髪、梅幸茶(ばいこうちゃ)の色合いの髪をした壮年の男が呟く。

 

 色合いは多様だが、金髪自体は西大陸に多い髪色である。この男もまた身体的特徴によって、自身が西側の人間であることを図らずとも主張していた。

 

 

「また誰かに発見されては困る。先を急ぐぞ。今はまだ、この艦を見られるわけにはいかない。早く隠さねばな」

 

「了解しました」

 

 

 そして、自身の腰にある剣を触りながら、深い闇に映った灯火を見つめた。

 

 

(どんな目的があろうと、その手段がいかようなものだろうと、犠牲は少ないほうがいい。だが、最初からこれか。結局、誰かを殺さずには我々は生きてはいけないのだ。ならば、これからいったいどれだけ殺すのか…。それも魔剣使いの宿命だということか。…因果なものだ。それでもここで生きていくしかない。希望を見つけるしかないのだ)

 

 

 

 

 

 

 戦艦が遠ざかっていく。

 

 それを感覚で把握しながら、さらに用心のために五分ほど、じっとする。

 

 その後、何も起こらないのを確認して顔を上げた。

 

 

「もう行ったよ。こっちへの敵意は消えたかな」

 

「なんだよ…いったい。どうなってんだ?」

 

 

 炎上したクルマから二百メートルくらい離れた場所に、アンシュラオンとダビアはいた。

 

 お互いに傷はない。傷はないが、クルマは完全に大破である。回収も不可能なほど粉々だ。

 

 

「ごめん。クルマは捨てるしかなかった」

 

「…それはいい。命あっての物種だからな。むしろ助けてくれてありがとうよ」

 

「拾ってもらった恩があるからね。当然だよ。ただ、もしかしたらオレのせいかも。あの戦艦を見ちゃったから攻撃された可能性があるんだ」

 

「見ちゃったって…相手はそんなことまでわかるのか?」

 

「うーん、あれって術式だったのかな? 妙に見えにくいから、コード式を壊しちゃったんだよね。たぶん、あれで気づかれて方向もバレたっぽい」

 

 

 戦艦を覆っていた蜘蛛の巣ようなもの。

 

 おそらく隠密系の術式だったのかもしれないが、見えにくいのでアンシュラオンが眼力で破壊してしまったのだ。

 

 術式に干渉して式を変更して自壊させる。簡単にいえば、数式の値を変更して式を成り立たせなくするのである。

 

 もちろん簡単にはできない。その術式を解除できるだけの術士の因子と実力が必要だ。因子が低い人間が強引にやれば、術式事故を起こす可能性すらある。

 

 それによって警戒した相手が、敵対反応をしたと考えるべきだろう。しかし、警告もなく戦艦がいきなり発砲したのだ。もとより危険な相手に違いない。

 

 それより、である。

 

 

「あー、いいなー。ワクワクする。やっぱり戦艦って、カッコイイ!」

 

「おいおい、冗談だろう。死ぬかと思ったぜ」

 

「助けたんだから、クルマが壊れたのはチャラね」

 

「あぁ…改めて考えると悔しいな! 俺のクルマがぁ…! ちくしょう! いったい、どこの馬鹿だ! 賠償請求してやるぞ!」

 

「そんなことしたら、もれなく銃弾のプレゼントが来るかもしれないよ」

 

「洒落にならねえよ! 泣き寝入りか!?」

 

「命があっただけよかったじゃん。物はまた買えるけど、命はそうはいかないしね」

 

「はぁ…しょうがねえな。運が悪かったな」

 

「まあ、次に出会ったらお返しくらいはしたいけどね。それに見合うだけの物は奪いたいよ」

 

「完全に強盗の発想だな」

 

「それも荒野のルールでしょ?」

 

「違いねえ」

 

 

 ダビアがこうしてクルマの心配をできるのも、アンシュラオンが助けたからである。

 

 クルマは大破したが、本当に二人は無傷であった。

 

 

「というか、よく間に合ったな。何をやったんだ?」

 

「一つは直前に修殺で迎撃して、二つ目は水泥壁(すいでいへき)で膜を張って防御して、三発目はクルマに当たった瞬間に凍らせて爆発を遅らせて、その間にクルマを壊してダビアを引っ張り出して、ここまで跳んだんだ」

 

「いや、おかしいだろう!? あの一瞬にどんだけやってんだ!?」

 

「そんなに速くなかったし問題ないよ。姉ちゃんの攻撃に比べれば、あんなの楽勝だよ」

 

「それはなんだ? お前のつらい家庭事情に同情すればいいのか? それとも感謝すればいいのか?」

 

「オレもわからないよ。今は感謝かな。ダビアも助かったしね」

 

 

 パミエルキの攻撃を防御していた自分にとって、あの程度の攻撃は生ぬるいの一言である。その点だけは姉に感謝したいものである。

 

 本当は偽装工作のために、着弾と同時に火気を発してクルマに火を付けたのだが、そこは言わないことにしておく。

 

 激しく燃えてもらわないと、相手が調べにくるかもしれないから仕方なかったのだ。

 

 

(にしても戦艦か! 燃えるな!! 相手を殺し、破壊するための兵器。最高だね! オレもいつか欲しいな)

 

 

 攻撃されたらさすがに怒りが湧くものだが、今のアンシュラオンは戦艦の格好良さに惹かれていた。

 

 ここは異世界。

 

 のどかでありながらも、身の危険が常にある未開の土地。

 

 

 それに心躍らせるのであった。

 

 

 

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